説明

粉体吹込み方法

【課題】粉体をフィードタンクから高い精度の排出速度で切り出し、炉に吹き込むことのできる粉体吹込み方法を提供する。
【解決手段】フィードタンク内に粉体受け入れを行っていないときに、前記タンクに設置のロードセルによる重量測定値を用いて粉体流量計の校正を行うことにより、同タンクへの粉体受け入れ時にも高精度で粉体排出速度を測定し制御する粉体吹込み方法。さらに、前記タンク内圧力と粉体輸送配管内圧力との差圧が所定値未満の場合には差圧制御により、また、差圧が所定値以上の場合には粉体流量調節弁の開度制御により、高精度で粉体排出量を制御する。本制御方法によれば、ロードセルまたは粉体流量計のいずれか一方が使用不能となった場合でも、差圧制御と使用可能なロードセルまたは粉体流量計を用いた粉体流量調節弁の開度制御との組み合わせにより、安定した粉体吹込みを継続できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉などの精錬炉や発電所の燃焼加熱炉などにおいて、配管を介して気体により搬送される微粉炭などの粉体を炉内に吹込む場合に使用される粉体吹込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉などの精錬炉や発電所の燃焼加熱炉などにおける微粉炭吹き込みをはじめとする粉体吹込み方法において、粉体を精度良く吹き込むためには、圧力容器(以下、「フィードタンク」とも称する)からの粉体の切り出し速度、すなわち排出速度を精度良く制御することが必要である。操業条件を変更する場合はもちろんのこと、一定の操業条件が設定されている場合においても、微粉炭などの粉体の性状が必ずしも一定していないこと、または連続操業を行いながらフィードタンク内に粉体を供給する場合など、フィードタンクからの排出速度を変動させる外乱要因が存在する。
【0003】
フィードタンクからの粉体の排出速度を制御するためには、排出速度の検出手段と排出速度の調整手段が必要である。粉体の排出速度の検出およびその調整方法としては、下記の方法が公知である。
【0004】
(A)排出速度の検出方法
(a)フィードタンクからの粉体の排出速度を、フィードタンクに取り付けられた重量測定装置(ロードセル)により得られる信号の時間微分演算により求める。
(b)フィードタンクからの粉体の排出速度を、粉体輸送配管に取り付けられた粉体流量測定装置(粉体流量計)により得られる信号を使用して求める。
【0005】
(B)排出速度の調整方法
(c)フィードタンク内の圧力を調節することにより粉体の排出速度を調整する。
(d)フィードタンクの下部に設置されたロータリーフィーダーなどの粉体流量調節弁により粉体の排出速度を調整する。
【0006】
現実の粉体排出または粉体吹込みプロセスにおいては、上記の技術を適宜組み合わせることにより、粉体の排出速度制御が行われている。
【0007】
(1)粉体流量調節弁の開度調節による排出速度の制御方法
フィードタンクからの微粉炭の排出速度をフィードタンクに設置されたロードセルにより得られる信号を時間微分することにより求め、粉体流量調節弁の開度を調節して粉体の排出速度を制御する方法である。
【0008】
図1は、上記の方法を実施するための従来の微粉炭吹込み装置の構成例を示す図である。微粉炭20は均圧タンク1に一時的に貯蔵され、加圧下でフィードタンク2に供給される。このフィードタンク2には、フィードタンク2内の微粉炭の質量を計測するためのロードセル5が設置され、フィードタンク2の下部排出口には粉体流量調節弁3が設置されている。ロードセル5によりフィードタンク2内の微粉炭の質量が計測され、その信号が粉体流量指示調節計6に伝達されると、粉体流量指示調節計6はこの信号の時間微分を演算して微粉炭の排出速度を算出し、この排出速度が所定の速度となるように粉体流量調節弁3の開度を調節する。このような方法によって、微粉炭の排出速度量が制御される。
【0009】
(2)フィードタンク内の圧力調節による排出速度の制御方法
フィードタンクに設置された粉体重量測定装置(ロードセル)により得られる信号の時間微分を演算することにより、フィードタンクからの微粉炭の排出速度を算出し、フィードタンク内の圧力を調節することよって微粉炭の排出速度を制御する方法である。
【0010】
フィードタンク2には、フィードタンク2内の微粉炭の質量を計測するロードセル5が設置され、このロードセル5に接続された粉体流量指示調節計6と、フィードタンク2内の圧力とキャリヤガス本管16内の圧力との差圧を検知して、フィードタンク2内の圧力を調節する差圧指示調節計9が設置されている。ロードセル5によりフィードタンク2内の微粉炭の質量が計測され、その信号が粉体流量指示調節計6に伝達されると、粉体流量指示調節計6はこの信号の時間微分を演算して微粉炭の排出速度を算出し、この排出速度が所定の速度となるように差圧指示調節計9に信号を送る。
【0011】
差圧指示調節計9は、前記のフィードタンク2内の圧力とキャリヤガス本管8内の圧力との差圧が、予め求められた差圧と微粉炭排出速度との関係から得られる適正な差圧となるように、フィードタンク2内に加圧用ガスを導入するかまたはフィードタンク2内のガスを排気することにより、フィードタンク内の圧力を調節する。このような方法により、微粉炭の排出速度が制御される。
【0012】
(3)フィードタンク内の圧力および粉体流量調節弁の調節による排出速度の制御方法
この方法は、キャリヤガスによる微粉炭の連続吹込みに適用される微粉炭排出速度の制御方法であり、例えば、特許文献1に開示された方法が公知である。
【0013】
この方法を実施するための装置は、フィードタンク2内に加圧用ガスを導入するための内圧調節弁12と、フィードタンク2内への微粉炭20の受け入れ時にタンク内圧を一定に保つための排気用調節弁13と、粉体輸送配管8内を通過する粉体流量を検知する粉体流量計4を有している。また、さらに、粉体輸送配管8内の圧力とフィードタンク2内の圧力との差圧を検知し、この差圧が所定値になるように内圧調節弁12の開度を調節する差圧指示調節計9と、フィードタンク2の下部排出口に設置された粉体流量調節弁3を有している。
【0014】
フィードタンク2内と粉体輸送配管8内の差圧を一定に保持し、その差圧により微粉炭を定量的に切り出す機構と、粉体流量調節弁3の開度調節により微粉炭の排出速度を調節する機構とを組み合わせることにより排出速度が制御される。
【0015】
しかしながら、上記の(1)〜(3)にて説明した粉体排出速度の制御方法においては以下に述べるような問題がある。
【0016】
【特許文献1】特許第3083593号公報(特許請求の範囲、段落[0013]など)
【特許文献2】実公昭58−93815号公報(特許請求の範囲、3〜4頁など)
【特許文献3】特開2006−77267号公報(特許請求の範囲、段落[0005]〜[0007])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した粉体の排出速度の制御技術には、下記の問題が残されている。すなわち、前記(1)にて述べた粉体流量調節弁を調節する方法においては、粉体の排出速度をロードセルにより得られる信号を微分演算することにより求めるので、フィードタンクへの粉体の受け入れ中は、粉体排出速度の演算ができない。また、(2)にて述べたフィードタンク内の圧力を調節する方法においては、応答速度が遅いという問題がある。
【0018】
上記(1)および(2)における問題を解決するために、上記(3)の方法、すなわちフィードタンク内の圧力を調整し、かつ粉体流量調節弁の開度調節により粉体の排出量を制御する方法であって、さらに粉体輸送配管内を通過する粉体流量を検知する粉体流量計と、粉体流量計からの信号を受けて、粉体流量が所定の値となるように粉体流量調節弁の開度を制御する方法が開示された。これにより制御の応答が速くなり、フィードタンクへの粉体受入れ中であっても、排出速度の検出が可能となった。
【0019】
しかしながら、例えば、最近の高炉操業においては炉内への微粉炭の吹込み量が増大しており、微粉炭吹込み量の増加にともなって、フィードタンクからの微粉炭の排出速度の変動量も増大傾向にあり、排出速度制御のさらなる精度向上が必要となっている。特に、差圧式または静電容量式に代表される粉体流量計は、粉体の性状や粉体の濃度などにより、流量の検量線が変化するといった特性を有しており、上記排出速度の制御精度をさらに向上させるためには、検量線の校正機能を具備することが必要である。
【0020】
特許文献2には、静電容量式流量計を用いて固気2相流中の固体成分の流量を測定する方法において、誘電率の変化などに起因する測定誤差を補正する技術が開示されている。すなわち、複数に分岐した配管中を流れる流量の相互の差を検出するに当たり、全体の流量を重量法などの別の方法で知ることができる場合には、誘電率の影響は全ての管路に同様に現れるとして、分岐管中の流量を全体流量により比例的に補正する方法が示されている。
【0021】
また、特許文献3には、秤量器を具備したフィードタンクとデストリビュータタンクと粉体輸送配管の支管部を有する粉体吹込み設備であって、支管部に取り付けられた静電容量式粉体流量計に加えて、静電容量式粉体流量計の出力信号について、粉体流量の零点を補正する零点調整部、および粉体の種類や濃度変動による出力信号の変動を補正する粉体濃度補正部を備えた粉体吹込み設備が開示されている。
【0022】
しかしながら、上記の特許文献2に開示された方法においては、数種類の粉体を使用する場合には、粉体が完全には混合されないので、全ての管路において同様に誘電率の影響が現れるとは限らず、したがって、分岐管内の流量を全体流量により比例的に補正することは困難である。また、同文献に開示された方法は、複数に分岐した配管を有する設備では有効な方法であるものの、本発明の方法のように、例えば、フィードタンクから排出される粉体が単一の配管を通過する場合には、比較が可能な分岐管が存在しないため、この方法を用いることはできない。
【0023】
さらに、上記の特許文献3に開示された方法では、流量計の内部に粉体が付着した場合には、検出器の出力信号が変動する。一方、複数種類の粉体や複数種類の成分が混合した粉体を使用する場合において、粉体の種類または成分を変更した際には検出信号が変動する。したがい、粉体の種類または成分を変更した際に、同時に流量計の内部に粉体が付着した場合には、検出器の出力信号の変動要因を特定することが困難であり、正確な補正を行うことはできないと推察される。
【0024】
本発明は、フィードタンクから高精度で制御された排出速度により粉体を排出させるに当たって発生する上述の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、下記の(a)〜(c)を具備した粉体吹込み方法を提供することにある。すなわち、(a)粉体排出速度の検出手段として、粉体重量測定装置(ロードセル)および粉体輸送配管設けられた粉体流量測定装置(粉体流量計)を併用することができること、(b)粉体排出速度の調節手段として、ガスの差圧による制御および粉体流量調節弁の開度制御を使い分けることができること、(c)上記(b)のガスの差圧による制御法として、フィードタンク内圧力と、キャリヤガス供給配管と粉体輸送配管との合流部よりも下流部の粉体輸送配管内圧力との差圧制御を行うことができること、である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、下記の(1)〜(3)に示される粉体吹込み方法をその要旨とするものである。
【0026】
(1)粉体を収容するためのフィードタンクに受け入れた粉体をフィードタンクから排出し、該フィードタンクに接続された粉体輸送配管を通してキャリヤガスにより炉内に吹き込む粉体吹込み方法において、前記フィードタンクへの粉体の受け入れを行っていない状態でフィードタンクから粉体を排出するときは、フィードタンクに設置した粉体重量測定装置による測定値に基づいてフィードタンク内の粉体の質量減少速度を求め、該質量減少速度をフィードタンクからの粉体の排出速度とするとともに、前記粉体輸送配管に設けられた粉体流量測定装置による粉体流量の測定値を前記粉体の排出速度により校正し、前記フィードタンクへの粉体の受け入れを行いながらフィードタンクから粉体を排出するときは、前記粉体輸送配管に設けられ前記粉体排出速度により粉体流量を校正した粉体流量測定装置による粉体流量の測定値をフィードタンクからの粉体の排出速度とすることを特徴とする粉体吹込み方法である。
【0027】
(2)粉体を収容するためのフィードタンク内の粉体をフィードタンクから排出し、該フィードタンクに接続された粉体輸送配管を通してキャリヤガスにより炉内に吹き込む粉体吹込み方法において、前記フィードタンク内の圧力測定値から前記粉体輸送配管内の圧力測定値を差し引いた差圧を求め、前記差圧の変動割合が基準となる期間における差圧の15%未満のときは、前記フィードタンクの加圧調節弁および排圧調節弁の一方または両方の開度を調整することにより前記差圧を調整して粉体の排出量を制御し、前記差圧の変動割合が基準となる期間における差圧の15%以上のときは、粉体流量調節弁の開度を調整することにより粉体の排出速度を制御することを特徴とする粉体吹込み方法である。
【0028】
(3)前記(1)に記載の粉体吹込み方法において、前記フィードタンクに設置した粉体重量測定装置または粉体流量測定装置のいずれかが使用できなくなったときは、前記(2)に記載の粉体吹込み方法に切り替えることを特徴とする粉体吹込み方法である。
【0029】
本発明において、「炉」とは、高炉、転炉などの精錬炉、または発電用設備で使用される燃焼加熱炉などを意味する。
【0030】
また、「粉体」とは、高炉、転炉などの精錬炉に熱源または還元剤として吹き込まれる微粉炭、造滓剤として吹き込まれる例えば石灰−珪石−マグネシア系などのフラックス粉、火力発電用の石炭焚きボイラーにて燃料として吹き込まれる微粉炭などを意味する。
【0031】
「差圧の変動割合」とは、基準となる期間の差圧値をΔP1とし、制御対象期間の差圧値をΔP2としたとき、{(ΔP2−ΔP1)/ΔP1}×100(%)により表される値を意味する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の粉体吹込み方法によれば、フィードタンク内に粉体受け入れを行っていないときに、フィードタンクに設置されたロードセルにより測定される粉体質量減少速度を用いて粉体流量計の校正を随時実施することにより、フィードタンクへの粉体受け入れ時に高精度で粉体排出速度を検出することが可能となる。加えて、フィードタンク内の圧力測定値と粉体輸送配管内の圧力測定値との差圧が所定値未満の場合に行う差圧制御と、差圧が所定値以上の場合に行う粉体流量調節弁の開度制御とを組み合わせることにより、高精度で粉体排出量を制御することが可能となる。さらに、ロードセルまたは粉体流量計のいずれか一方が使用不能となった場合においても、上記差圧制御と使用可能なロードセルまたは粉体流量計を用いた粉体流量調節弁の開度制御とを組み合わせることにより、粉体吹き込みを継続することができる。
【0033】
したがって、本発明の粉体吹き込み方法は、高炉などの精錬炉や発電所の燃焼加熱炉などにおける粉体の高精度で連続かつ安定吹き込み操業に大きく寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、前記したとおり、フィードタンク内に粉体受け入れを行っていないときに、フィードタンクに設置されたロードセルによる測定値を用いて粉体流量計の校正を随時行うことにより、フィードタンクへの粉体受け入れ時に高精度で粉体排出速度を検出することができる粉体吹き込み方法である。また、フィードタンク内の圧力と粉体輸送配管内の圧力との差圧が所定値未満の場合に行う差圧制御と、差圧が所定値以上の場合に行う粉体流量調節弁の開度制御とを組み合わせることにより、粉体排出量を高精度で制御できる粉体吹き込み方法であり、そして、ロードセルまたは粉体流量計のいずれか一方が使用不能となった場合においても、上記差圧制御および使用可能なロードセルまたは粉体流量計を用いた粉体流量調節弁の開度制御を組み合わせることにより、粉体吹き込みを継続できる方法である。
【0035】
以下に、本発明の粉体吹き込み方法の好ましい態様およびその理由についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明では、粉体として微粉炭を、また、炉として高炉を対象とした場合を例にとり説明する。
【0036】
(1)粉体吹き込み方法の基本構成
図2は、本発明を実施するために用いる微粉炭吹き込み装置の構成例を示す図である。微粉炭120は、加圧下で微粉炭120をフィードタンク102に供給するための均圧タンク101に装入されて一時的に貯蔵され、均圧タンク101内の昇圧後、加圧下でフィードタンク102に供給される。フィードタンク102内に供給された微粉炭120は、フィードタンク102の下部排出口に設置された粉体流量調節弁103の開度調整により、所定の微粉炭排出速度に制御され、キャリヤガスにより搬送されながら粉体流量計104により流量を計測された後、粉体輸送配管108を通して炉内に吹き込まれる。ここで、粉体流量調節弁103の開度は、粉体流量計104の信号を受けて作動する粉体流量指示調節計106により、所定の微粉炭排出速度を得るための適正開度に制御される。
【0037】
上記の吹き込みにおいて、フィードタンク102への微粉炭の受け入れを行わない状態でフィードタンク102から微粉炭120を排出するときは、フィードタンク102に設置された粉体重量測定装置(ロードセル)105により計測されたフィードタンク内の微粉炭質量の時間変化から微粉炭質量の減少速度、すなわち微粉炭の排出速度を算出する。そして、この微粉炭の排出速度と、粉体流量計104により計測された微粉炭の流量測定値とを比較して、粉体流量計104による微粉炭の流量測定値を、ロードセル105による計測値に基づいて算出された微粉炭の排出速度により校正(補正)する。
【0038】
また、フィードタンク102への粉体の受け入れを行いながらフィードタンク102から粉体を排出するときは、粉体輸送配管108に設けられ校正済みの粉体流量測定装置104による粉体流量の測定値をフィードタンク102からの粉体の排出速度とする。
【0039】
さらに、フィードタンク圧力計110によるフィードタンク102内の圧力測定値から
粉体輸送配管圧力計107による粉体輸送配管108内の圧力測定値を差し引いた差圧を連続的に求める。この差圧の変動割合が基準となる期間における差圧の15%未満のときは、フィードタンク102の加圧調節弁113および排圧調節弁112の一方または両方の開度を調整することにより差圧を制御して粉体の排出量を制御し、差圧の変動割合が基準となる期間における差圧の15%以上のときは、粉体流量調節弁103の開度を調整することにより粉体の排出速度を制御する。
【0040】
粉体流量調節弁103は、弁の開度を変化させることにより粉体流路の断面積を連続的に変化させることが可能で、かつ開度と流量との間に可能な限り直線的な比例関係を有するものが好適である。粉体流量計104は、差圧式の流量計や静電容量式の流量計などを使用することができる。
【0041】
粉体輸送配管内の圧力を測定するための粉体輸送配管圧力計107の設置位置は、キャリヤガスとフィードタンク102から搬送された微粉炭が合流する位置よりも上流側に設置されたキャリヤガス配管圧力計114の位置とすることも可能であるが、キャリヤガスとフィードタンク102から搬送された微粉炭が合流する位置よりも下流側の位置とした方が、フィードタンク102内の圧力と粉体輸送配管内圧力との差圧が大きくなるので、差圧の検出精度が向上して好ましい。さらに、粉体輸送配管圧力計107の設置位置は、粉体流量計104の下流であることが好ましく、高炉への粉体吹き込みの場合で、高炉への搬送配管中に分配器(図示せず)が設置されている場合には、分配器の上流側とすることが好ましい。
【0042】
(2)タンク内粉体重量変化速度による粉体流量計測定値の校正
図3は、フィードタンクの重量測定装置により測定される重量変化および微粉炭吹き込み速度の時間変化を示す図であり、同図(a)は、重量測定装置(ロードセル)による重量測定値を、同図(b)は、ロードセルにより測定された重量測定値の時間微分から算出した微粉炭吹き込み速度を、同図(c)は、検量線を用いて校正した粉体流量測定装置による微粉炭吹き込み速度の測定値を、それぞれ表す。
【0043】
フィードタンク102では、微粉炭120の連続排出を行いながら、間欠的に均圧タンク101からの微粉炭120の受け入れを行うため、ロードセル105による重量測定値は定期的に変動する。具体的には、同図(a)に示されるとおり、均圧タンク101からの微粉炭102の受け入れがない状態、つまり通常時においては、微粉炭排出量の増加にともなって重量測定値は減少するが、均圧タンク101から微粉炭120を受け入れている状態では、微粉炭120の排出を行っているにもかかわらず、ロードセル105による重量測定値は増加する。したがって、同図(b)にみられるように、フィードタンク101への微粉炭120の受け入れ時には、ロードセル105による測定値のみを使用する微粉炭排出速度の算出方法では、正確な微粉炭排出速度の算出は困難であり、微粉炭吹込速度の変動幅は大きくなる。
【0044】
これに対して、同図(c)に示したとおり、検量線を用いて校正した粉体流量計104による微粉炭吹込速度測定値は、フィードタンク102への微粉炭120の受け入れ時においても微粉炭吹込速度の変動幅が小さい。このように、フィードタンク102へ微粉炭120を受け入れる場合のように、いわゆる外乱が比較的短期間の場合には、粉体流量計104の検出値は十分な精度を有しているが、微粉炭120の炭種が変更された場合や、長期間にわたる測定の間には、微粉炭120が配管や粉体流量計の検出部に付着することなどによって測定精度が低下することは避けがたい。
【0045】
そこで、フィードタンク102への微粉炭120の受け入れを行わない時は、ロードセル105による重量測定値の時間変化を微粉炭排出速度の測定値とし、フィードタンク102への微粉炭120の受け入れ時は、粉体流量計104による測定値を、ロードセル105による微粉炭の重量測定値の時間変化から求めた排出速度により定期的に校正した粉体流量計104による微粉炭流量測定値を、微粉炭の排出速度とするのが最適である。特許文献2に開示された方法においては、輸送配管の分岐後における各粉体流量計の誤差が問題となるが、本発明の方法においては、配管の分岐後に粉体流量計を複数基設置する方法ではないことから、高精度で粉体流量の校正を行うことが可能である。
【0046】
図4は、フィードタンクの重量測定装置による測定値と粉体流量測定装置による測定値から得られた検量線を示す図であり、同図(a)は、図3に示す期間1における検量線を、同図(b)は、図3に示す期間2における検量線を表す。
【0047】
均圧タンク101からフィードタンク102への微粉炭120の受け入れ完了後から、再度均圧タンク101からフィードタンク102への微粉炭120の受け入れを行うまでの間、すなわち、フィードタンク102への微粉炭の受け入れを行っていない期間に、フィードタンク102に設置されたロードセル105により測定された重量測定値の時間変化から算出された微粉炭排出速度と、粉体流量計により測定された微粉炭排出速度とを用いて、両者の関係を表す検量線を作成する。上記の検量線は、同図の期間1および期間2における検量線のように、微粉炭の受け入れから次回の微粉炭の受け入れまでの各周期毎に作成し、その都度、直近の検量線に更新していくことが好ましい。
【0048】
ロードセル105の使用時に操業条件を変更する場合や、何らかの原因によって排出速度の変動が大きくなる場合には、排出速度制御に遅れを生じるおそれがある。そのような場合に備えて、実際にフィードタンク102の重量変化を検出してから微粉炭排出速度を制御するだけではなく、微粉炭排出速度の計測および把握方法として、ロードセル105による重量計測値と粉体流量計104による流量計測値とを併用し、より迅速な制御方法を採用することが好ましい。
【0049】
(3)加圧・排圧調節弁による差圧制御および粉体流量調節弁の開度制御の効果的使用
微粉炭排出速度の制御方法として、フィードタンク102の加圧調節弁113および排圧調節弁112の制御によるフィードタンク内圧力と輸送配管内圧力との差圧制御、および粉体流量調節弁を用いた排出量制御を比較した結果、前記差圧の変動割合の値によって制御特性は相違し、したがって、差圧変動割合の大きさに応じて、制御精度の高い制御方法を使い分けるのが好ましいことが判明した。
【0050】
フィードタンク102内の圧力と粉体輸送配管108内の圧力との差圧(以下、単に「差圧」とも称する)の変動と、ロードセルまたは粉体流量計による検出値から算出した微粉炭排出速度の変動との比較を行い、予め両者の値の比較ができるように検量線を作成しておくのが効果的である。さらに、差圧変動が生起した場合に、加圧調節弁113および排圧調節弁112の調整による差圧調整に基づく排出速度の制御を行った場合と、粉体流量調節弁103の開度調整による排出速度の制御を行った場合とについて制御精度を比較した。
【0051】
なお、上記の差圧変動としては、下記(1)式により表される差圧の変動割合を採用し、これにより定量化した。
【0052】
差圧の変動割合={(ΔP2−ΔP1)/ΔP1}×100(%) ・・・(1)
ここで、ΔP1は基準となる期間の差圧値(Pa)を、ΔP2は制御対象期間の差圧値(Pa)を、それぞれ表す。
【0053】
図5は、フィードタンク内圧力と粉体輸送配管内圧力との差圧変動割合と、粉体排出速度の変動との関係を示す図である。同図において、粉体排出速度の変動は、下記(2)式により算出される値を用いた。
【0054】
粉体排出速度の変動=|W2−W1| ・・・(2)
ここで、W1は基準となる期間の粉体排出速度(t/h)を、W2は制御対象期間の粉体排出速度(t/h)を、それぞれ表す。
【0055】
差圧変動割合が±15%未満の場合には、加圧調節弁および排圧調節弁の調整による差圧調整に基づき排出速度を制御する方が、粉体流量調節弁の開度調整により排出速度を制御するよりも排出速度の変動は小さく、この場合に、粉体流量調節弁の開度調整により排出速度を制御すると、かえって排出速度の変動を増長させることとなる。したがって、 差圧変動割合が±15%未満の場合には、差圧調整により排出速度を制御する方が高精度で微粉炭排出速度の制御を行うことが可能である。
【0056】
一方、差圧変動割合が+15%以上または−15%以下の場合には、粉体流量調節弁の開度調整により排出速度を制御する方が、排出速度の変動は小さく、この場合に、加圧調節弁および排圧調節弁による差圧調整に基づき排出速度を制御すると、かえって排出速度の変動を助長させることとなる。したがって、差圧変動割合が+15%以上または−15%以下の場合には、粉体流量調節弁の開度調整により排出速度を制御する方が、高精度で微粉炭排出速度を制御することができる。
【0057】
上記のような結果が得られた理由は、差圧変動割合が小さい場合に粉体流量調節弁を調整して排出速度制御を行うと、制御感度が高過ぎることに起因して、逆に、排出速度変動を増長させることになるからである。すなわち、差圧変動割合が小さい時には、加圧調節弁および排圧調節弁の調整による排出速度制御を行った方が、低い制御感度特性を利用でき、高精度で排出速度制御を実施することが可能となる。また、逆に、差圧変動割合が大きい場合に加圧調節弁および排圧調節弁の調整による排出量制御を実施すると、制御感度が低過ぎて、制御不能となる。つまり、差圧変動割合が大きい場合には、粉体流量調節弁を用いて排出速度を制御する方が、急激な排出速度の変動を抑制し得る。
【0058】
近年、製鉄および発電プラントにおける微粉炭吹込量は増加しつつあり、微粉炭吹込み速度の制御技術は、その重要性を増している。上記に述べた微粉炭排出速度の制御方法は、制御装置などの故障により、吹込みが実施不能となった場合の影響が大きく、例えば、高炉操業においては炉熱の低下を招き、炉内反応、および溶銑またはスラグの流動性に悪影響を及ぼす。
【0059】
例えば、粉体流量計が使用不能となったときは、粉体流量計による測定値を微粉炭排出速度として用いる微粉炭排出速度制御の場合と同様に、前記ロードセルによる計測値を用いて微粉炭排出速度の変動を求め、図5に示されるとおり前記差圧変動割合とロードセルによる計測値から算出した微粉炭排出速度の変動との比較を行い、差圧変動割合の値に応じた微粉炭排出速度の制御方法を選択することが好ましい。すなわち、ロードセルによる計測値も併用して、加圧・排圧調節弁による差圧制御と粉体流量調節弁の開度制御とを使い分けることにより、高精度で連続かつ安定した微粉炭吹込み操業を実施することが可能となる。
【実施例】
【0060】
本発明の粉体吹き込み方法の効果を確認するため、高炉への微粉炭吹き込み設備を使用して下記の試験を行い、その結果を評価した。
【0061】
微粉炭排出速度を40t/hおよび70t/hに設定して吹き込み試験を行った結果、
流量の実測値は、それぞれ、(40±0.3)t/hおよび(70±0.5)t/hであり、設定流量に対する偏差が小さく、いずれもその偏差は相対値で±1%以下の良好な制御精度が得られた。
【0062】
また、微粉炭排出速度の設定値を40t/hから70t/hに変更した場合の排出速度の制御追従も迅速であり、良好な制御性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の粉体吹込み方法によれば、フィードタンク内に粉体受け入れを行っていないときに、フィードタンクに設置されたロードセルにより測定される粉体質量減少速度を用いて粉体流量計の校正を随時実施することにより、フィードタンクへの粉体受け入れ時に高精度で粉体排出速度を検出することが可能となる。加えて、フィードタンク内の圧力測定値と粉体輸送配管内の圧力測定値との差圧が所定値未満の場合における差圧制御と、差圧が所定値以上の場合における粉体流量調節弁の開度制御とを組み合わせることにより、高精度で粉体排出量を制御することが可能となる。さらに、ロードセルまたは粉体流量計のいずれか一方が使用不能となった場合においても、上記差圧制御と使用可能なロードセルまたは粉体流量計を用いた粉体流量調節弁の開度制御とを組み合わせることにより、粉体吹き込みを継続することができる。
【0064】
したがって、本発明の粉体吹き込み方法は、高炉をはじめとする精錬炉への粉体吹き込みプロセスや、発電プラントにおける粉体吹き込みなどにおいて、粉体の高精度で連続かつ安定した吹き込み技術として広範に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】従来の微粉炭吹込装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明を実施するために用いる微粉炭吹き込み装置の構成例を示す図である。
【図3】フィードタンクの重量測定装置により測定される重量変化および微粉炭吹き込み速度の時間変化を示す図であり、同図(a)は、重量測定装置(ロードセル)による重量測定値を、同図(b)は、ロードセルにより測定された重量測定値の時間微分から算出した微粉炭吹き込み速度を、同図(c)は、検量線を用いて校正した粉体流量測定装置による微粉炭吹き込み速度の測定値を、それぞれ表す。
【図4】フィードタンクの重量測定装置による測定値と粉体流量測定装置による測定値から得られた検量線を示す図であり、同図(a)は、図3に示す期間1における検量線を、同図(b)は、図3に示す期間2における検量線を表す。
【図5】フィードタンク内圧力と粉体輸送配管内圧力との差圧変動割合と、粉体排出速度の変動との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1:均圧タンク、 2:フィードタンク、 3:粉体流量調節弁、 4:粉体流量計、
5:ロードセル、 6:粉体流量指示調節計、 8:粉体輸送配管、 9:差圧指示調節計、 10:フィードタンク内圧力指示計、 12:内圧調節弁、 13:排気用調節弁、 14:圧力指示計、 15:粉体重量指示計、 16:キャリヤガス本管、 20:微粉炭、 101:均圧タンク、 102:フィードタンク、 103粉体流量調節弁、
104:粉体流量測定装置、 105:粉体重量測定装置、 106:粉体流量指示調節計、 107:粉体輸送配管圧力計、 108:粉体輸送配管、 109:差圧指示調節計、 110:フィードタンク圧力計、 111:差圧指示計、 112:排圧調節弁、 113:加圧調節弁、 114:キャリヤガス配管圧力計、 120:微粉炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を収容するためのフィードタンクに受け入れた粉体をフィードタンクから排出し、該フィードタンクに接続された粉体輸送配管を通してキャリヤガスにより炉内に吹き込む粉体吹込み方法において、前記フィードタンクへの粉体の受け入れを行っていない状態でフィードタンクから粉体を排出するときは、フィードタンクに設置した粉体重量測定装置による測定値に基づいてフィードタンク内の粉体の質量減少速度を求め、該質量減少速度をフィードタンクからの粉体の排出速度とするとともに、前記粉体輸送配管に設けられた粉体流量測定装置による粉体流量の測定値を前記粉体の排出速度により校正し、前記フィードタンクへの粉体の受け入れを行いながらフィードタンクから粉体を排出するときは、前記粉体輸送配管に設けられ前記粉体排出速度により粉体流量を校正した粉体流量測定装置による粉体流量の測定値をフィードタンクからの粉体の排出速度とすることを特徴とする粉体吹込み方法。
【請求項2】
粉体を収容するためのフィードタンク内の粉体をフィードタンクから排出し、該フィードタンクに接続された粉体輸送配管を通してキャリヤガスにより炉内に吹き込む粉体吹込み方法において、前記フィードタンク内の圧力測定値から前記粉体輸送配管内の圧力測定値を差し引いた差圧を求め、前記差圧の変動割合が基準となる期間における差圧の15%未満のときは、前記フィードタンクの加圧調節弁および排圧調節弁の一方または両方の開度を調整することにより前記差圧を調整して粉体の排出量を制御し、前記差圧の変動割合が基準となる期間における差圧の15%以上のときは、粉体流量調節弁の開度を調整することにより粉体の排出速度を制御することを特徴とする粉体吹込み方法。
【請求項3】
請求項1に記載の粉体吹込み方法において、前記フィードタンクに設置した粉体重量測定装置または粉体流量測定装置のいずれかが使用できなくなったときは、請求項2に記載の粉体吹込み方法に切り替えることを特徴とする粉体吹込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−38175(P2008−38175A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211663(P2006−211663)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】