説明

粉体塗料およびプリント基板の製造において薄い層を形成するための方法

粉末塗料、前記粉末塗料をベースとした水性分散液、その製法、および支持体の上に塗料層を形成するための、とりわけ、多層構造物を作製するための方法が提供される。
前記方法は、いかなる有機溶媒の使用をも必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗料、その製法、および基板、特に、プリント基板の上に塗料層を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体層の形成はそれ自体が周知であり、原則として乾燥フィルム、すなわち複数の層で構成されるシートを用いることによって実施される。
これらの層の1つとして、まだ完全に硬化していない、まだ反応性のある樹脂(B−ステージ)が挙げられる。これは支持層(例えば、銅、PET)によって安定化されており、そのもう一方の表面は保護層(例えば、PE)によって被覆されている。その貼付は、前記保護層を剥離し、残りのシートを構造化プリント基板の上に重ねることによって行われる。PET支持層が用いられる場合、前記PET支持層は熱硬化後に剥離される。この方法のバリエーションでは、すでに完全に硬化している別の樹脂層(C−ステージ)が、前記反応性樹脂層(B−ステージ)と前記支持層との間に存在する。この方法の利点とは、誘電体の最小層厚をより良く制御できること、および、全工程の最後における層の平面性がより良くなることである。
【0003】
これらの乾燥フィルムは、Charles A. Harper, High Performance Printed Circuit Boards, 1999, McGraw−Hill, Chapter 2に記載されている。樹脂層の反応性が高いことにより、フィルムは低い温度(0℃未満)で貯蔵および配送されなければならず、このため余計な費用がかかり、相当なロジスティックス能力も必要になる。前記層は、通常、液体製剤を支持層に添加することによって調製される。すなわち、前記製剤は、液体として調製されることができなければならない。さらに、乾燥時に溶媒の放散が生じる。
【0004】
前記方法には、特定の充填剤は辛うじて混入させることができるかまたは全く混入させることができないという不都合がある。一般に、充填剤は有機溶媒内に安定して分散することができなければならない。
さらなる不都合は、前記乾燥フィルムの貯蔵安定性が低いこと、および、これらの乾燥フィルムを低い温度で貯蔵および配送しなければならないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、これらの不都合が無い下記項目、すなわち、粉体塗料、それをベースにした分散液、前記塗料または前記分散液を調製するための方法、および基板、特に、プリント基板を作成するための銅板の上に薄い塗料層を形成するための方法を提供することである。
考えられるあらゆる充填剤が、本発明の粉体塗料および方法において使用可能であるとする。
さらに、有機溶媒の使用は避けるものとする。
さらに、本発明の粉体塗料または方法を使用することによって、構造化または非構造化基板の上に、特性が改善された薄い誘電体塗料層を形成することができるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(i)(a)高分子バインダー、オキサジン樹脂、シアン酸エステルまたはマレイミド、
(b)硬化剤または開始剤、
(c)塗料添加剤、
(d)任意に、充填剤
(e)任意に、相溶化性ポリマー、
および任意に、他の成分を混ぜ合わせ、
(ii)工程(i)で得られた混合物を溶融押出成形し、
(iii)押出成形された混合物を粉砕し、篩にかける、
ことによって得られる硬化性粉体塗料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記粉体塗料の未硬化状態におけるガラス転移温度は少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、さらに好ましくは少なくとも30℃であり、そして硬化状態におけるガラス転移温度は少なくとも150℃、好ましくは少なくとも160℃、さらに好ましくは少なくとも170℃である。
【0008】
さらに、前記高分子バインダーは、原則として、室温で固体であるエポキシ樹脂であることが好ましい。前記樹脂のガラス転移温度は、好ましくは、少なくとも25℃であるべきである。
【0009】
本発明の粉体塗料は、好ましくは、エポキシ樹脂類の混合物を含んでなっていてもよい。この混合物の未硬化状態におけるガラス転移温度は25℃よりも高い。その分子量(数平均分子量)は、通常、600よりも高い。
【0010】
本発明の粉体塗料を調製するのに好適なエポキシ樹脂は、例えば、Clayton A. May(Ed.) Epoxy Resins: Chemistry and Technology, 2nd ed., Marcel Dekker Inc., New York, 1988に記載されている。
好ましいエポキシ樹脂混合物は、ビスフェノールAおよびビスフェノールAジグリシジルエーテルをベースとする。これらの樹脂のエポキシ当量は、300グラム当量よりも多い。そのような樹脂としては、例えば、(ダウケミカル社から入手可能な)D.E.R.6508が挙げられる。
ビスフェノールFおよびビスフェノールSをベースとしたエポキシ樹脂を任意に添加することもできる。
【0011】
さらに、前記混合物は、多官能エポキシ樹脂を含んでなっていてもよい。これらの樹脂の官能価は3よりも大きい。そのような多官能エポキシ樹脂の例としては、クレゾール−ノボラックエポキシ、フェノール−ノボラックエポキシ、およびナフトール含有多官能エポキシ樹脂が挙げられる。
前記エポキシ樹脂の例としては、(ダウケミカル社ら入手可能な)D.E.R.667−20、D.E.R.663UE、D.E.R.692H、D.E.R.692、D.E.R.662E、D.E.R.6508およびD.E.R.642U−20のごときビスフェノールAエポキシ樹脂、Araldite ECN 1299、Araldite ECN 1280(Vantico)、EOCN−103 S、EOCN−104、NC−3000、EPPN 201、EPPN−502 H(日本化薬)のごときクレゾール−ノボラックエポキシ樹脂、NC 7000−L(日本化薬)のごときナフトールエポキシ樹脂、およびAraldite 8010(Vantico)、BREN−S(日本化薬)、ESB−400 T(Sumitomo)およびEpikote 5051(Reolution)のごとき臭素化エポキシ樹脂が挙げられる。さらに、改質エポキシ樹脂を用いることもできる。そのような改質としては、例えば、連鎖反応停止剤、いわゆる「ハイフロー(high−flow)」樹脂、を使用して分子量を調整すること、および、多官能モノマーを使用して分岐樹脂を調製することが挙げられる。
【0012】
本発明の特に好ましい粉体塗料は、成分(a)として約50〜90重量%のエポキシドおよび約5〜20重量%のシアン酸エステルと、成分(b)として約0.5〜5重量%のジシアンジアミドおよび約0.1〜2重量%の2−フェニルイミダゾールとを含んでなる。例えば、約85重量%のエポキシドと、10重量%のシアン酸エステルと、硬化剤として約2重量%のジシアンジアミドと、開始剤として約1重量%の2−フェニルイミダゾールとを含んでなる。
【0013】
前述のように、エポキシ樹脂とは別に、シアン酸エステルも高分子バインダーとして用いることができる。本発明の粉体塗料の調製において、これらはモノマーの形態およびオリゴマーすなわちプレポリマーの形態の両方で用いることができる。
好適なシアン酸エステルとしては、BADCy、Primaset FluorocyおよびPrimaset MethylCyのごとき二官能シアン酸エステル、または、Primaset BA−200、Primaset PT 60、Primaset CT 90およびPrimaset PT 30のごとき多官能シアン酸エステルが挙げられる。前記二官能および多官能シアン酸エステルはいずれも、スイスのLonza, Baselから入手可能である。
特に好ましいシアン酸エステルは、BADCyおよびそのプレポリマー(例えばPrimaset BA−200)である。
【0014】
シアン酸エステルとは別に、前記成分(a)は、1−オキサ−3−アザ−テトラリン含有化合物(オキサジン樹脂)を含んでなっていてもよい。本発明の粉体塗料の調製において、これらも初めはモノマーの形態で用いられる。
好ましいオキサジン樹脂としては、ビスフェノールAと、アニリンおよびホルムアルデヒドとを反応させることまたは4,4’−ジアミノジフェニルメタンと、フェノールおよびホルムアルデヒドとを反応させることによって得られるものが挙げられる。さらなる例がWO02/072655およびEP0493310A1並びにWO02/055603および特許出願JP2001−48536、JP2000−358678、JP2000−255897、JP2000−231515、JP2000−123496、JP1999−373382、JP1999−310113およびJP1999−307512に記載されている。さらなる例が、Macromolecular Chemistry, Macromolecular Symposia (1993), 74(4th Meeting on Fire Retardant Polymers, 1992), 165−71, EP 0 493 310 A1, EP 0 458 740 A1, EP 0 458 739 A2, EP 0 356 379 A1およびEP 0 178 414 A1に記載されている。
【0015】
本発明の粉体塗料の調製に用いられるマレイミドもそれ自体当業者に周知であり、例えば、Shiow−Ching Lin, Eli M. Pearce, High−Performance Thermosets, Carl Hanser Verlag, Munich 1994, Chapter 2に記載されている。
【0016】
本発明の樹脂組成物の成分(b)は、硬化剤または開始剤を含んでなる。そのような硬化剤および開始剤はそれ自体当業者に周知であり、室温で活性の低い潜在硬化剤を含んでなる。その例としては、(米国のダウケミカル社から入手可能な)D.E.H.90、D.E.H.87、D.E.H.85、D.E.H.84およびD.E.H.82のごときフェノール系硬化剤、(ドイツのデグッサ社から入社可能な)Dyhard OTB、Dyhard UR 200、Dyhard UR 300、Dyhard UR 500、Dygard 100、Dyhard 100 S、Dyhard 100 SFおよびDyhard 100 SHのごときジシアンジアミドまたはその誘導体、ビスフェノールA、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水HET酸、無水ドデセニルコハク酸、無水ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸のごとき酸無水物、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタンのごとき芳香族および脂肪族アミン、およびLonzacure(登録商標)M−DEA、Lonzacure(登録商標)M−DIPA、Lonzacure(登録商標)M−MIPAおよびLonzacure(登録商標)DETDA 80(前記化合物はいずれも、スイスのバーゼルに在るLonza社から入手可能である)の如き環置換ジアニリンが挙げられる。
ジシアンジアミドまたは改質ジシアンジアミドが用いられることが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物において、硬化剤または開始剤は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満(下限値:約0.1重量%)の量で用いられる。
好ましい開始剤としては、イミダゾールおよびその誘導体、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、ビス(2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチル−イミダゾール(1’))エチル−s−トリアジンおよび1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールが挙げられる。さらに、イミダゾールおよびカルボン酸から形成された塩を用いることができる。さらなる開始剤としては、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン(DBU)およびBF3−アミンのごときハロゲン化ホウ素−アミン錯体がある。さらなる例が、Clayton A. May(Ed.) Epoxy Resins: Chemistry and Technology, 2nd ed., Marcel Dekker Inc., New York, 1988に記載されている。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、成分(c)として塗料添加剤をさらに含んでなる。これらには、流量調節剤、脱気剤および滑剤が包含される。これらはそれ自体当業者に周知である。典型的な例としては、流量調節剤としてブチルアクリレートポリマー、脱気剤としてベンゾイン、および滑剤としてワックスが挙げられる。さらに、例えば、安定剤を塗料添加剤として用いることができる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、前記塗料添加剤を、一般に0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%の量で含有する。
塗料添加剤には、接着促進剤も包含される。これらは、銅基板に接着力を与えるのに有用である。
本発明の粉体塗料は、有機および無機充填剤(d)をさらに含んでなっていてもよい。
これらの充填剤は、本発明の粉体塗料において、好適には5〜300重量%、好ましくは10〜200重量%、さらに好ましくは10〜100重量%の量で用いられる。前記量は、粉体塗料の成分(a)、(b)および(c)の合計に関連する。
【0020】
有機充填剤の例としては、フッ素含有ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(E/TFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン三重合体(THV)、ポリ(トリフルオロクロロエチレン)(PCTFE)、トリフルオロクロロエチレン/エチレン共重合体(E/CTFE)、ポリ(フッ化ビニル)(PVF)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、パーフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリフェニルエーテル(PPO)、ポリスルホン(PSU)、ポリアリールエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルエーテルスルホン(PPSU)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)およびポリエーテルイミド(PEI)が挙げられる。
【0021】
特に好ましい有機充填剤は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)およびポリフェニルエーテル(PPO)である。
【0022】
本発明の粉体塗料において、加工時に溶融しない有機充填剤が用いられることが好ましい場合がある。あるいは、溶融して、冷却時に相分離を示す充填剤を用いることもできる。
有機充填剤とは別に、無機充填剤を本発明の粉体塗料に用いることもできる。
【0023】
そのような充填剤の例としては、(ドイツのQuarzwerke Frechen社から入手可能な)Silbond 800 EST、Silbond 800 AST、Silbond 800 TST、Silbond 800 VST、Silbond 600 EST、Silbond 600 AST、Silbond 600 TST、Silbond 600 VSTのごとき溶融シリカ、Aerosil 300およびAerosil R 972のごときヒュームドシリカ、(ドイツのDegussa社から入手可能な)Ultrasil 360、Sipernat D 10、Sipernat 320のごとき沈降シリカ、PoleStar(Imerys、St Austell、UK)、Santintone(Engelhard Corporation、Iselin、NJ、US)のごとき焼成カオリン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウム、シリカガラスが挙げられるが、カオリンが好ましい充填剤である。さらに、セラミック、特に、膨張係数が低いかまたは負であるセラミックを挙げることができる。
【0024】
本発明の粉体塗料の利点とは、前記製品の特性を最適化するために、様々な充填剤の中から、関連する必要条件を最も満たすものを選択することができることである。従って、例えば、所定のエポキシ樹脂混合物を必要に応じて改質することができる。加工するのが困難な充填剤でさえ問題無く混入させることができる。従って、誘電率(D)、誘電損率(tanδ)、破壊抵抗、表面抵抗、体積抵抗のごとき電気的性質および曲げ強度、衝撃強さ、引張強さのごとき機械的性質並びに熱膨張係数(CTE)、燃焼性などのごとき材料特性を所望により適応させることができる。充填剤は、有機溶媒に溶解可能または安定して分散可能である必要はない。従って、前記有機充填剤のごとき、これまでシーケンシャルビルドアップ(SBU)に用いられることができなかったまたは用いられることがほとんどなかった材料を充填剤用いることが可能になる。
粉体塗料およびそれから形成された塗料層の電気的および機械的性質は、充填剤の影響を受けることがあり、また、充填剤によって調整することが可能である。
【0025】
従って、例えば、PTFE、FEPおよびカオリンのごとき誘電率の低い充填剤を用いることによって、それに相応して誘電率の低い塗料層を形成することができる。
さらなる電気的性質は同様にして調整することができる。
充填剤の影響を受け得る機械的性質には、特に、熱膨張係数、衝撃強さおよび引張強さのごとき性質が包含される。
【0026】
下記充填剤、すなわち、石英ガラス、カオリン、炭酸カルシウムおよび負の膨張係数を有するセラミックは、熱膨張係数を調整するのに特に好適である。
曲げ強度は、例えば、PPOの影響を受けたり、PPOによって調整することが可能である。
本発明の好ましい実施態様によれば、硬化した粉体塗料の熱膨張係数(CTE)は、x、yおよびz方向において、70ppm/℃よりも小さく、好ましくは60ppm/℃よりも小さい。
さらなる好ましい実施態様によれば、硬化状態にある塗料の誘電率は、3.8よりも小さく、好ましくは3.6よりも小さい。さらに、硬化した配合物のガラス転移温度は、150℃よりも高く、好ましくは160℃よりも高い。
【0027】
さらに、難燃性材料を充填剤として用いてもよい。これらの例としては、加熱時に水を放出する無機材料、例えば、Martinal OL−104、Martinal OL−111(Martinswerk GmbH、Bergheim、Germany)またはApyral 60 D(Nabaltec、Schwandorf、Germany)として入手可能な水酸化アルミニウム、例えば水酸化マグネシウム8814(Martinswerk GmbH、Bergheim、Germany)または水酸化マグネシウム SIM 2.2(Scheruhn、Industrie−Mineralien、Hof、Germany)として入手可能な水酸化マグネシウム、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレシルホスフェート(TCP)、クレシルジフェニルホスフェート(CDP)のごときリン含有有機化合物、Cyagard(登録商標)およびReoflam(登録商標)410のごとき第3ホスフィン酸化物、Exolit RP 650のごときエポキシ樹脂中に分散した状態の赤燐またはExolit OP 930のごとき粉末状の赤燐(両製品ともドイツ、フランクフルトのクラリアント社から入手可能である)および三酸化アンチモンが挙げられる。
【0028】
さらに、本発明の粉体塗料の燃焼性は、成分(c)、すなわち、塗料添加剤の影響を受けたり、塗料添加剤によって調整することが可能である。これに関して、例えば、リン含有および窒素含有難燃剤を挙げることができる。
【0029】
本発明の粉体塗料は、任意に、相溶化性ポリマーをさらに含有していてもよい。そのような相溶化性ポリマーとしては、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレンまたはスチレン/ブタジエン/メチルメタクリレートブロック共重合体(Atofina、France)のごとき2または3ブロック共重合体が挙げられる。
【0030】
さらに、本発明の粉体塗料は、エポキシ樹脂の加工に慣用的に用いられる慣用の添加剤を含有してもよい。
【0031】
本発明の粉体塗料の調製において、前記成分(a)、(b)、(c)および、任意に、(d)および(e)はまず乾式製粉されて、粉末状にされる。
そうする際に、マスターバッチを調製するために前もって各成分を混ぜ合わせて押出成形することが有用である場合がある。
【0032】
このような措置は、特に、特定の成分が混入させずらい場合に用いられなければならない。その後、これらは前もって互いに混入させられる。そのようなマスターバッチは市販もされている。例えば、樹脂の場合、2種の樹脂を前もって混ぜ合わせておくことが可能である。このような措置は、特に、樹脂のうちの1種が低いガラス転移温度を有する場合に用いられる。さらに、このような措置は、特定の成分が少量のみで用いられる場合に用いられてもよい。
前記成分またはマスターバッチは乾燥状態で予混合および製粉される。製粉する前に、混合物を任意に冷却してもよい。
【0033】
完全に混合(および任意に冷却)した後、材料を乾燥状態で製粉する一方で粉末を保持した後、前記粉末を押出成形する。この押出成形は、前記成分を完全に均質化させる、全工程において重要な工程である。
押出成形後、材料を乾燥状態で製粉し、大き過ぎる材料は分離されるが、この際に10〜500μmよりも小さい、好ましくは100μmよりも小さい大きさの篩が好適に用いられ、これによって対応する粒径が保証されることになる。Hosekawa MicroPulのごとき分級製粉機が製粉するのに特に好適である。
【0034】
前記溶融押出成形は、反応性成分の転化率が20%未満、好ましくは10%未満となるように実施されることが好ましい。この反応は、押出成形時に溶解物が形成されるという事実に因る。転化度は、熱分析によって当業者が求めることができる。(そのような転化度を得るための)対応する押出成形パラメータは、単純な実験によって当業者が求めることができる。それらは、押出成形機の種類および用いられる成分の種類および量に依存する。例えば、Buss共混練機を、前記成分を押出成形する押出成形機として用いることができる。前述のように、得られた塊はその後冷却され、細かく破砕される。最終的に得られる粉体塗料混合物は、好ましくは1〜500μm、特に好ましくは10〜100μmの範囲の平均粒径を有する。
このように調製された粉体塗料は、プリント基板の製造に用いられる支持体の上に塗料層を形成するために、本発明に従って用いられる。
【0035】
さらに本発明は、下記工程、
(i)本発明の粉体塗料を支持体に塗布する工程、
(ii)前記粉体塗料を溶融させる工程、ならびに
(iii)前記粉体塗料を硬化させる工程、
を含んでなる、塗料層を支持体の上に形成するための方法を提供する。
【0036】
本発明の方法では、薄い誘電体塗料層、すなわち、厚みが約5〜500μmである層が形成される。従って、本発明の方法は、プリント基板の製造、特に、いわゆるシーケンシャルビルドアップ法(SBU)において用いることができる。さらに、ソルダーストップマスクの分野、および、薄い層の形成が必要であり、かつ、通常の作業条件下において一般的な溶媒に全く溶けないまたはわずかに溶ける充填剤が用いられることで特徴付けられるすべての他の方法において用いることもできる。
【0037】
前記粉体塗料は、様々な方法で支持体に塗布することができる。従って、粉体塗料の塗布は、例えば、スプレー塗装、電磁ブラシ塗装、パウダークラウド塗装またはローラー塗装によって実施することができる。
【0038】
スプレー塗装は、例えば、コロナ荷電または摩擦電気荷電によって行うことができる。これらの方法は当業者に周知である。本発明の方法において摩擦電気荷電が用いられることが好ましい。
さらに、本発明の方法では、粉体塗料をローラーを用いて塗布することができる。この場合、粉末を篩を用いて支持体に塗布した後、ローラーで処理する。ローラーは加熱してもよい。
電磁ブラシ技術による塗布はWO96/15199に記載されている。
【0039】
パウダークラウド技術は、例えば、Proceedings−International Conference in Organic Coatings: Waterborne, High Solids, Powder Coatings, 23rd, Athens, July 7−11, 1997(1997), 139−150 Publisher: Institute of Materials Science, New Paltz, N.Y.; Journal fur Oberflachentechnik (1996), 36(8), 34−36, 39; Deutsche Forschungsgesellschaft fur Oberflachenbehandlung (2000), 44 (Pulverlack−Praxis), 95−100; Journal fur Oberflachentechnik (1998), 38(2), 14−18およびWO97/47400に記載されている。
【0040】
下記方法、すなわち、
a)対流式または非対流式オーブンでの溶融、
b)赤外線
c)近赤外線(NIR)および
d)誘導および任意に、
e)マイクロ波による励起、
は、原則として、粉体塗料層を溶融させるのに好適である。
【0041】
本発明の方法では、溶融はNIRで行われることが好ましい。この方法は、WO99/47276、DE10109847、Kunststoffe(1999)、89(6)、62−64およびJournal fur Oberflachentechnik(1998)、38(2)、26−29に記載されている。
【0042】
溶融工程は特に重要である。溶融時、粘度に変化が生じる。すなわち、まず粉末が溶融する。溶融物の粘度が低下する。その後、硬化、すなわち、粘度の上昇が生じる。この工程は、溶融物の粘度が初めはできるだけ低く、その後、無孔フィルムが得られるように気泡が形成されることが無い良好な流動が得られるように、本発明の方法において実施されなければならない。
本発明の方法の根本的な利点とは、塗料層がまず溶融し、流動可能なままであり続けて、多層構造物の形成に用いることができるという事実に見られる。
【0043】
さらに、本発明は、下記工程、
(i)本発明の粉体塗料を支持体に塗布する工程、
(ii)前記粉体塗料を溶融させた後、冷却する工程、
(iii)前記コーティングされた支持体を、すでに複数の層を含んでなっている可能性があるプリント基板に積層する工程、
(iv)硬化させる工程、
(v)各層および支持体にドリルで穴を開け、互いにつなげることによって、多層構造物を作製する工程、
(vi)任意に、工程(i)〜(v)を繰り返す工程、
を含んでなる、多層構造物を作製する方法を提供する。
【0044】
この方法において、粉体塗料は、前記電磁ブラシ技術(EMB)によって塗布されることが好ましい。このようにして、粉末をより均一に塗布することができ、引いては、より均一な層厚が得られることになる。溶融は、NIR法によって実施されることが好ましい。このようにして、無孔塗料層が得られる。
【0045】
硬化が工程(iv)でのみ、すなわち、多層構造物の形成後に起こることは、この方法の重要な特徴である。これに関して、前記構造物の作製中もフィルムが流動可能なままであることが重要である。
【0046】
溶融した粉末でコーティングされた層の硬化は、プレスすなわち積層中に起こる。プレスすなわち積層は真空下および加圧下において行われるが、対応するパラメータは当業者に周知である。例えば、Laufferプレス機またはAdaraプレス機を用いることができる。プレスサイクルは、用いられる各材料に適応させる。
この方法の最後の工程では、各層およひ支持体をプレス接触させて、多層構造物を作製する。
代表的な支持体は、特に、銅板または高分子支持板である。これらを、ガラス繊維またはアラミド繊維の織布または不織布とさらに組み合わせてもよい。
【0047】
構造化支持体が用いられる場合、本発明の方法は、下記工程、
(i)本発明の粉体塗料を構造化支持体に塗布する工程、
(ii)粉体塗料層を溶融および硬化させた後、冷却する工程、
(iii)ドリルで穴を開ける工程、
(iv)金属化させる工程、
(v)任意に、工程(i)〜(iv)を繰り返す工程、
を含んでなる。
この方法において、粉体塗料は、前記電磁ブラシ技術(EMB)によって塗布されることが好ましい。このようにして、粉末をより均一に塗布することができ、引いては、層厚がより均一となり、かつ、縁部の被覆がより良好になる。
【0048】
さらに本発明は、下記工程、すなわち、
(i)本発明の粉体塗料を、任意に添加剤と共に、湿式粉砕して分散液を調製する工程と、
(ii)前記分散液を支持体に塗布する工程と、
(iii)コーティングされた支持体を熱処理する工程と、
を含んでなる、塗料層を形成するための方法を提供する。
本発明の方法の第1工程では、水を添加することによって粉体塗料から分散液を調製する。前記分散液の固形分は、通常は20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。
前記分散液を調製するには、粉末を水と一緒に、任意に添加剤を添加して、粉砕する。0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜2.5重量%の量で用いられ得る前記添加剤に加えて、湿潤剤、分散剤、消泡剤および脱気剤ならびに流量調節剤を添加してもよい。
【0049】
そのような湿潤剤および分散剤の例としては、Disperbyk 160、170または182のごとき顔料親和性を有する基を含有する高分子量ブロック共重合体の溶液、Disperbyk 116のごとき顔料親和性を有する基を含有するアクリレート共重合体、Disperbyk 140のごときアルキルアンモニウム塩の溶液、Anti Terra UまたはDisperbyk 101のごとき不飽和ポリアミノアミドの塩の溶液および酸性または極性エステルの溶液(これらの製品はいずれも、Byk Chemie社、Wesel、Germanyから入手可能である)、Byk P 104またはByk 220 Sのごときポリシロキサン共重合体を含有するまたは含有しないポリカルボン酸重合体、Zonyl FSNまたはZonyl FSH(共にDuPont社から入手可能である)のごときフッ素含有湿潤剤、およびAir Product社、Utrecht、NLから入手可能なSurfynolシリーズの製品のごとき非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0050】
消泡剤および脱気剤の例としては、Byk 051のごときシリコーン非含有消泡性ポリマー、Byk 020またはByk 067のごとき消泡性ポリシロキサンの溶液またはエマルジョン、Byk 011のごときシリコーン非含有消泡性ポリマーおよび疎水性固形物、Byk 033またはByk 036のごときパラフィンをベースとした鉱油および疎水性成分のエマルジョンおよび混合物が挙げられる(これらの製品はいずれも、Byk Chemie社、Wesel、Germanyから入手可能である)。
【0051】
流量調節剤の例としては、Byk 300またはByk 085のごときポリエーテル改質ポリジメチルシロキサン、Byk 370のごとき改質ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン、Byk 345のごときポリエーテル改質ポリジメチルシロキサン、およびByk 380のごときイオノジェニックおよびノンイオノジェニックポリアクリレート共重合体が挙げられる。
【0052】
添加剤のさらなる例は、WO96/32452、WO96/37561、WO97/01609、WO97/17390、WO99/15593、EP 0 714 958 A2およびEP 0 044 810 A1に記載されている。
【0053】
本発明の方法は、水に不溶性である充填剤が塗料粒子中に組み込まれているため、脱混合が生じないという利点を有する。これは、本発明の方法の特有の利点である。従来技術に公知の配合物を含有する溶媒の処理では、充填剤が沈殿するか特定の手段、すなわち異なる充填剤濃度を当該配合物に発生させ安定化されなければならない。
本発明の方法では、充填剤が内部に均一に分散された不溶性塗料粒子が用いられるため、濃度の差が生じることは無い。
安定した分散液を得るためには、前記粒子の平均粒径は、10μm未満、好ましくは7μm未満でなければならない。粒径は、コールターカウンターを用いて測定することができる。
【0054】
前記分散液を支持体に塗布した後、熱処理を行うことによって、分散媒を取り除き、かつ、粉体塗料層を溶融させる。前記熱処理は、分散液を支持体に塗布した後、フィルムをまず乾燥および溶融させた後に硬化させるように実施することができる。あるいは、分散液を支持体に塗布した後、粉体塗料の乾燥、溶融および硬化を一つの工程として行うこともできる。
前記方法は、熱処理、特に、塗料層を溶融させるのに好適である。
【0055】
さらに、本発明は、下記工程、
(i)本発明の粉体塗料を、任意に添加剤と共に、湿式粉砕して分散液を調製する工程、
(ii)前記分散液を構造化支持体に塗布する工程、
(iii)コーティングされた支持体を熱処理する工程、
(iv)ドリルで穴を開け、金属化させ、そして構造化させる工程、
(v)任意に、工程(ii)〜(iv)を繰り返す工程、
を含んでなる、多層構造物を作製するための方法を提供する。
【0056】
要約すれば、本発明の粉体塗料および本発明の方法は、いかなる有機溶媒をも必要とせずに、支持体、特に、プリント基板の上に塗料層を形成する可能性を与えるものであると言うことができる。
【0057】
有機溶媒が全く存在しないことは、工業的安全および絶えず厳しくなっている換気システム、廃棄物処理および環境保護要件およびこれらの要素に関連する費用の点から見て重要な見地である。
前記方法の工業的利用における重要な利点とは、塗布される材料が一成分系である、すなわち、バインダー(エポキシ樹脂)および硬化剤は実際の組成物中にはすでに存在しており、塗布の直前に混ぜ合わせる必要がないという事実である。
【0058】
乾燥フィルムと比較したときのさらなる利点とは、配送および貯蔵中の常温における貯蔵安定性である。「貯蔵安定である」という用語は、構成成分が反応しない樹脂組成物、特に、(25℃で貯蔵されたときに)約3ヶ月間にわたって発熱の減少率が10%を超えない組成物を意味する。
【実施例】
【0059】
本発明を下記実施例によってさらに詳しく説明する。
実施例1
4,444gのD.E.R.6508(ダウケミカル社)を110℃のオーブンで溶融させた。1,460gの溶融したPrimaset BA−200(ロンザ社)、74gのビスフェノールA(アルドリッヒ社)、60gのModarezおよび12gのベンゾイン(アルドリッヒ社)を添加した後、混合物を十分に攪拌した。液体窒素で冷却した後、前記材料を乾燥状態で粉砕および押出成形した(OMC社製の二軸押出成形機EBVP: 110〜120℃、500rpm)。
得られた粉末のガラス転移温度は、45℃(DSC)であった。
乾燥粉砕および篩い分け(100μm)を繰り返した後、得られた粉末を、EMB装置(Epping)を用いて、32μmの厚みで銅板に塗布した。160℃で5分間にわたって溶融させた後、粉末は優れた流動を示した。フィルムに気泡は無かった。
190℃で20分間熱硬化させた後、誘電体の層厚は45μmであることが分かった。T(DSC)は172℃であった。
【0060】
実施例2
290gのDER 6508、58gの7000−L、58gのBADCy、11.7gのDICY、180gのSilbond EST800および0.6gのフェニルイミダゾールをプレミキサーで混ぜ合わせた後、押出成形した(OMC社製の二軸押出成形機EBVP: 110〜120℃、500rpm)。乾燥粉砕および篩い分けした後、得られた粉末の一部を硬化させ、膨張係数をTMA(CTE=55ppm、(1GHzにおける)Dk=3.6)で測定した。
【0061】
実施例3
350gのDER 6508、70gのNC 7000−L、202gのSilbond EST 800および50gのETFE ET 6235をプレミキサーで十分に混ぜ合わせ、260℃で押出成形した。得られた材料を粉砕および篩い分けし、70gのPrimaset BA−200、14gのDICY、0.7gのフェニルイミダゾール、1.5gのベンゾインおよび11.4gのModarezと混ぜ合わせた後、130℃で押出成形した(OMC社製の二軸押出成形機EBVP: 110〜120℃、500rpm)。粉砕および篩い分けした後、得られた粉末をEMB装置(Epping)を用いて銅板に塗布し、190℃で硬化させた。(1GHzにおける)Dkは3.3であった。
【0062】
実施例4
実施例1の粉末を、乾燥粉砕した後、100μmの篩で篩い分けした。この粉末の250gを、374gの脱塩水、0.37gのSurfynol 440、2.77gのDisperbyk 185および4.16gの消泡剤Byk 028と攪拌混合した。この分散液をDynoMill(Bachofen、Basel、CH)(研削材: ZrO、直径: 0.8mm、ギャップ幅: 0.3mm、モーター速度: 10m/s)で2度粉砕した。その後、124gの粉末、0.185gのSurfynol 440、0.277gのDisperbyk 185、0.369gのByk 028および0.28gのAerosil R 972を再び添加し、得られた混合物を前述のように2度粉砕した。得られた高粘度材料を朝までゆっくりと攪拌し続けることによって、形成された気泡を消失させた。(粘度が些か低くなった)このようにして得られた懸濁液を0.28gのAerosilと再び混ぜ合わせた後、ドクターナイフを用いて銅張りFR−4積層板に塗布し、190℃のオーブンで硬化させた。層厚測定装置(Isoscope、Fischer)を用いて層厚を測定したところ、45μmであった。塗料層は滑らかかつ無孔であり、そのガラス転移温度は(Tg)は165℃であった。
【0063】
比較例1
43.7gのD.E.R.6508(ダウケミカル社)を、14.4gのPrimaset BA−200(ロンザ社)、0.73gのビスフェノールA(アルドリッヒ社)、0.59gのModarezおよび0.12gのベンゾインと共に、150mlのMPAに溶かした。5.5gのポリ(テトラフルオロエチレン)(Ausimont)を添加した後、表面に白色の固体が浮遊して、この混合物を塗布することができなかった。
【0064】
比較例2
実施例3の粉末をMPA中に浮遊させた。前記材料は粘り気のある塊を形成し、前記塊は容器の底に沈殿した。従って、銅板に塗布することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(a)高分子バインダー、オキサジン樹脂、シアン酸エステルまたはマレイミド、
(b)硬化剤または開始剤、
(c)塗料添加剤、
(d)任意に充填剤
(e)任意に相溶化性ポリマーおよび任意に他の成分
を混合し、
(ii)工程(i)で得られた混合物を溶融押出成形し、
(iii)押出成形された混合物を粉砕し、篩にかける、
ことによって得られる硬化性粉体塗料。
【請求項2】
未硬化状態におけるガラス転移温度が少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、さらに好ましくは少なくとも30℃であり、そして硬化状態におけるガラス転移温度が少なくとも150℃、好ましくは少なくとも160℃、さらに好ましくは少なくとも170℃である、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項3】
前記高分子バインダーは、固体のエポキシ樹脂である、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項4】
前記成分(a)は、少なくとも20℃のガラス転移温度を有するエポキシ樹脂の混合物である、請求項1または3に記載の粉体塗料。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAおよびビスフェノールAジグリシジルエーテルに基づいた標準的な固体のエポキシ樹脂からなる群から選択される、請求項1、3または4に記載の粉体塗料。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、300g/当量よりも大きい、請求項5に記載の粉体塗料。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂は、多官能エポキシ樹脂または2種以上の多官能エポキシ樹脂の混合物を含有する、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項8】
前記多官能エポキシ樹脂は、クレゾール−ノボラックエポキシ樹脂、フェノール−ノボラックエポキシ樹脂およびナフトール含有多官能エポキシ樹脂からなる群から選択される、請求項7に記載の粉体塗料。
【請求項9】
前記シアン酸エステルは、二官能シアン酸エステルおよび多官能シアン酸エステルからなる群から選択される、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項10】
前記マレイミドは二官能マレイミドおよび多官能マレイミドからなる群から選択され、好ましくは芳香族ジアミンに基づき、そして前記オキサジン樹脂は二官能オキサジン樹脂および多官能オキサジン樹脂からなる群から選択される、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項11】
前記硬化剤は、フェノール系硬化剤、ビスフェノールA、ジシアンジアミドまたは改質ジシアンジアミド、酸無水物、芳香族および脂肪族アミンまたは環置換ジアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項12】
前記硬化剤は、ジシアンジアミドまたは改質ジシアンアミドである、請求項11に記載の粉体塗料。
【請求項13】
前記硬化剤また開始剤を、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の量で含有する、請求項1、11または12に記載の粉体塗料。
【請求項14】
前記塗料添加剤を、0.1〜10重量%の量で含有する、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項15】
前記充填剤を、成分(a)、(b)および(c)に基づいて、5〜300重量%、好ましくは10〜200重量%、さらに好ましくは10〜100重量%の量で含有する、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項16】
前記充填剤が無機充填剤である、請求項1または15に記載の粉体塗料。
【請求項17】
前記充填剤が溶融シリカまたはカオリンである、請求項16に記載の粉体塗料。
【請求項18】
前記充填剤の平均粒径は、30μmよりも小さく、好ましくは20μmよりも小さく、さらに好ましくは10μmよりも小さい、請求項16または17に記載の粉体塗料。
【請求項19】
前記充填剤は、前記粉体塗料の加工時に溶融しない有機充填剤である、請求項1または15に記載の粉体塗料。
【請求項20】
前記充填剤は、前記粉体塗料の加工時に溶融し、かつ、冷却時に相分離を示す有機充填剤である、請求項1または15に記載の粉体塗料。
【請求項21】
前記充填剤は、ポリフェニルエーテルまたはフッ素化熱可塑性樹脂、特に、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)またはテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体である、請求項1または15に記載の粉体塗料。
【請求項22】
硬化状態における熱膨張係数が、x、yおよびz方向において、70ppm/℃よりも小さく、好ましくは60ppm/℃よりも小さい、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項23】
硬化状態における誘電率が、3.8よりも小さく、好ましくは3.6よりも小さい、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項24】
25℃で3ヶ月間貯蔵されたときに発熱の減少率が10%を超えないというように、貯蔵時に安定している、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項25】
成分(a)として約50〜90重量%のエポキシドおよび約5〜20重量%のシアン酸エステルと、成分(b)として約0.5〜5重量%のジシアンジアミドおよび約0.1〜2重量%の2−フェニルイミダゾールとを含んでなる、請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項26】
下記工程、
(i)成分(a)、(b)、(c)および任意に(d)および(e)を混ぜ合わせる工程、
(ii)工程(i)で得られた混合物を溶融押出成形する工程、ならびに
(iii)押出成形された混合物を粉砕し、篩にかける工程、
を特徴とする、請求項1に記載の硬化性粉体塗料を調製するための方法。
【請求項27】
前記成分(a)、(b)、(c)、(d)および(e)のうちの2種以上が工程(i)におけるマスターバッチとして用いられる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(ii)は、反応性成分の転化率が20%未満、好ましくは10%未満となるように実施される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
下記工程、
(i)請求項1〜25のうちの1つに記載の粉体塗料を、任意に添加剤と共に、湿式粉砕して分散液を調製する工程、
(ii)前記分散液を支持体に塗布する工程、ならびに
(iii)コーティングされた支持体を熱処理する工程、
を含んでなる、支持体の上に塗料層を形成するための方法。
【請求項30】
工程(iii)における前記熱処理は、分散液を支持体に塗布した後、フィルムをまず乾燥および融解させた後に硬化させるように行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
工程(iii)におけるコーティングされた支持体の熱処理は、分散液を支持体に塗布した後、粉体塗料の乾燥、溶融および硬化が一つの工程として行われるように行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
下記工程、
(i)請求項1〜25のうちの1つに記載の粉体塗料を、任意に添加剤と共に、湿式粉砕して分散液を調製する工程、
(ii)前記分散液を構造化支持体に塗布する工程、
(iii)コーティングされた支持体を熱処理する工程、
(iv)ドリルで穴を開け、そして金属化させる工程、ならびに
(v)任意に、工程(ii)および(iv)を繰り返す工程、
を含んでなる、多層構造物を作製するための方法。
【請求項33】
前記支持体は、銅板、高分子支持板、構造化プリント基板またはそのコア層である、請求項29〜32のうちの1つに記載の方法。
【請求項34】
前記支持板は、ガラス繊維またはアラミド繊維の織布または不織布と組み合わされる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
消泡剤、湿潤剤、殺生剤、レオロジー添加剤または流量調節剤が添加剤として用いられる、請求項29または32に記載の方法。
【請求項36】
前記熱処理または硬化が、
(a)対流式または非対流式オーブンでの溶融、
(b)赤外線、
(c)近赤外線(NIR)、
(d)誘導、または
(e)マイクロ波による励起、
によって行われる、請求項29または32に記載の方法。
【請求項37】
下記工程、
(i)請求項1〜25のうちの1つに記載の粉体塗料を支持体に塗布する工程、
(ii)前記粉体塗料を溶融させる工程、ならびに
(iii)前記粉体塗料を硬化させる工程と、
を含んでなる、支持体の上に塗料層を形成するための方法。
【請求項38】
下記工程、すなわち、
(i)請求項1〜25のうちの1つに記載の粉体塗料を支持体に塗布する工程、
(ii)前記粉体塗料を融解させた後、冷却する工程、
(iii)前記コーティングされた支持体を、すでに複数の層を含んでなっている可能性があるプリント基板に積層する工程、
(iv)硬化させる工程、
(v)各層および支持体にドリルで穴を開け、互いにつなげることによって、多層構造物を作製する工程、ならびに
(vi)任意に、工程(i)〜(v)を繰り返す工程、
を含んでなる、多層構造物を作製するための方法。
【請求項39】
前記支持体は、銅板または高分子支持板である、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記支持板は、ガラス繊維またはアラミド繊維の織布または不織布と組み合わされる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
下記工程、すなわち、
(i)請求項1〜25のうちの1つに記載の粉体塗料を構造化支持体に塗布する工程、
(ii)粉体塗料層を溶融および硬化させた後、冷却する工程、
(iii)ドリルで穴を開ける工程、
(iv)金属化させる工程、ならびに
(v)任意に、工程(i)〜(iv)を繰り返す工程、
を含んでなる、多層構造物を作製するための方法。
【請求項42】
前記粉体塗料の塗布は、スプレー塗装、電磁ブラシ塗装、パウダークラウド塗装またはローラー塗装によって行われる、請求項37〜41のうちの1つに記載の方法。
【請求項43】
前記スプレー塗装は、コロナ荷電または摩擦電気荷電によって行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記溶融は、
(a)対流式または非対流式オーブンでの溶融、
(b)赤外線、
(c)近赤外線(NIR)、
(d)誘導、または
(e)マイクロ波による励起、
によって行われる、請求項37〜41のうちの1つに記載の方法。

【公表番号】特表2006−521434(P2006−521434A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504797(P2006−504797)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003001
【国際公開番号】WO2004/085550
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】