説明

粒子微細化処理方法及び装置

【課題】粒子を含んだ液状の被処理対象物と衝撃部を衝突させ、前記粒子を前記衝撃部の衝突面との衝撃によって微細化する粒子微細化処理方法および装置において、粒子に与える衝撃力を大きくし、微細化効率を向上することを目的とする。
【解決手段】回転ブレード12が、衝突した粒子を衝突面21で保持する形状、例えば凹形状を有することにより、被処理対象物中に含まれた粒子に対する衝撃力を増加させることができ、微細化効率を向上させることができる粒子微細化処理方法および装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の被処理対象物に含まれる粒子を微細化する粒子微細化処理方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排水処理場から排出される有機性汚泥に含まれるフロックを微細化処理して減容化するのに用いられる微細化処理方法には、生物・化学的処理方法と、物理的処理方法がある。
【0003】
生物・化学的処理方法として、苛性ソーダ、過酸化水素、酵素などを添加して汚泥の細胞を破壊する方法があり、微細化効率が高く処理装置の構成が簡単で、大量処理ができるという利点を有するが、装置の設置スペースが大きく、薬品等の取り扱いが危険で、補給が面倒であるなどの欠点を有している。
【0004】
一方で、物理的処理方法として、ビーズミル法、超音波法、高速噴流法などがあり、生物・化学的処理方法と比較して、微細化効率は低いが、安全かつ装置の小型化が可能というメリットを有している。特に、物理的処理方法として汚泥をノズルから衝撃板に高速で衝突させることによって微細化する方法があり、他の物理的処理方法と比較して微細化効率が高く単純な構造であり、装置の設置スペースが小さくできる。
【0005】
この汚泥を衝突させる方法において、微細化効率をさらに高める方法として、微細化処理後の汚泥に薬剤を添加して効率を上げる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、この方法では、オゾンなどの酸化剤を微細化後の汚泥に噴霧する必要があるため、薬剤を使用する欠点を含んでおり、安全という物理的処理方法のメリットを活かしていない。
【0007】
これに対し、衝撃のみで微細化効率を高める方法として、家庭用で野菜ジュースの作製などに用いられるブレンダーを用いて汚泥を処理する方法がある。ブレンダーは円筒状の容器の底面に高速回転する長板状の金属製のブレードが配置されている構成であり、被処理対象物である汚泥中のフロックはブレードと衝突して破砕され、物理的処理の中では比較的高い微細化効率を得ることができる。
【特許文献1】特開2006−55737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記ブレードとの衝撃力による物理的処理方法でも生物・化学的処理方法と比較すると微細化効率は十分ではなく、物理的処理方法のメリットを十分に活かす為には更に微細化効率を向上させなければないという課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、衝突により被処理対象物中に含まれる粒子に与える衝撃力を大きくし、薬剤等を使用せずに高い微細化効率を有する粒子微細化処理方法および装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、粒子を含んだ液状の被処理対象物と衝撃部を衝突させ、粒子を衝撃部の衝突面との衝撃によって微細化する粒子微細化処理方法において、衝撃部は、衝突した粒子を衝突面で保持する形状を有するものである。
【0011】
また、側面と底面で構成された粒子微細化処理槽の側面の内側に撹拌リブと、底面の上方に衝撃部を備え、粒子微細化処理槽に被処理対象物を導入し、粒子を含んだ液状の被処理対象物と衝撃部を衝突させ、粒子が衝撃部の衝突面との衝撃によって微細化する粒子微細化処理装置において、衝撃部は、衝突した粒子を衝突面で保持する形状を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粒子を含んだ液状の被処理対象物と衝撃部を衝突させ、前記粒子を前記衝撃部の衝突面との衝撃力によって微細化する粒子微細化処理方法および装置において、被処理対象物中に含まれた粒子に対して粒子と衝突面との接触時間を長くし、衝撃力を増加させることにより、微細化効率を向上させることができ、薬剤を使用しない安全な粒子微細化処理方法および装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の実施の形態による粒子微細化処理方法は、粒子を含んだ液状の被処理対象物と衝撃部を衝突させ、前記粒子を前記衝撃部の衝突面との衝撃によって微細化する粒子微細化処理方法において、前記衝撃部は、衝突した前記粒子を前記衝突面で保持する形状を有するものである。
【0014】
本実施の形態によれば、被処理対象物に含まれる粒子が衝突面から剥離することを低減し、粒子と衝撃部が接触する時間を長くすることによって、衝撃部が粒子に力を与える時間を長くし、力積を大きくすることができ、結果として衝撃力が増大して微細化効率を向上することができる。
【0015】
ここで、被処理対象物中に含まれる粒子が、衝撃部の衝突面に衝突した点から面方向に動いても、衝突面から剥離しない限り、粒子が衝撃部から力を受け続けていると判断できるため、衝撃部は粒子を保持していると考える。
【0016】
本発明の第2の実施の形態は、前記衝撃部の衝突面は被処理対象物が衝突方向に対して凹形状になっているものである。
【0017】
本実施の形態によれば、凹部と接触した被処理対象物中に含まれる粒子は、凹部の内側から外側へ移動しようとしても凹部のへこんだ内面が障壁となり、凹部に接触した粒子が衝突面から剥離することを低減することができ、粒子と衝撃部が接触する時間を長くすることができる。
【0018】
本発明の第3の実施の形態は、前記衝撃部の衝突面の表面粗さを粗くするものである。
【0019】
本実施の形態によれば、被処理対象物に含まれる粒子が衝撃部の衝突面に接触後、面方向に移動しようとする際に発生する摩擦力を大きくし、粒子を移動しにくくすることによって、衝突面から剥離することを低減することができ、粒子と衝撃部が接触する時間を長くすることができる。
【0020】
本発明の第4の実施の形態は、被処理対象物は排水処理から生じる有機性の汚泥としたものである。
【0021】
本実施の形態によれば、排水処理から生じる水と懸濁粒子であるフロックの混合物である有機性の汚泥を微細化処理できる。
【0022】
本発明の第5の実施の形態は、側面と底面で構成された粒子微細化処理槽の側面の内側に撹拌リブと、底面の上方に前記衝撃部を備え、前記粒子微細化処理槽に被処理対象物を導入し、粒子を含んだ液状の被処理対象物と衝撃部の衝突面を衝突させ、前記粒子が前記衝撃部の衝突面との衝撃によって微細化する粒子微細化処理装置において、前記衝撃部は、衝突した前記粒子を前記衝突面で保持する形状を有するものである。
【0023】
本実施の形態によれば、被処理対象物に含まれる粒子が衝突面から剥離することを低減し、粒子と衝撃部が接触する時間を長くすることによって、衝撃部が粒子に力を与える時間を長くし、力積を大きくすることができ、結果として衝撃力が増大して微細化効率を向上することができる。
【0024】
本発明の第6の実施の形態は、前記衝撃部は長板状であり、前記衝撃部の衝突面が衝突方向に対して前記衝撃部の長手方向が凹形状になっているものである。
【0025】
本実施の形態によれば、凹部と接触した被処理対象物中に含まれる粒子は、凹部の内側から外側へ移動しようとしても凹部のへこんだ内面が障壁となり、衝撃部の衝突面から長手方向へ移動して剥離することが低減されることにより、粒子と衝撃部が接触する時間を長くすることができる。
【0026】
本発明の第7の実施の形態は、前記衝撃部は長板状であり、前記衝撃部の衝突面が衝突方向に対して前記衝撃部の厚み方向が凹形状になっているものである。
【0027】
本実施の形態によれば、凹部と接触した被処理対象物中に含まれる粒子は、凹部の内側から外側へ移動しようとしても凹部のへこんだ内面が障壁となり、衝撃部の衝突面から厚み方向へ移動して剥離することが低減されることにより、粒子と衝撃部が接触する時間を長くすることができる。
【0028】
本発明の第8の実施の形態は、前記衝撃部の衝突面が波形状であるものである。
【0029】
本実施の形態によれば、衝撃部の衝突面に設けた無数の波形の谷によって捕捉された被処理対象物中に含まれる粒子は山方向へ移動して剥離することを低減されることにより、粒子と衝撃部が接触する時間を長くすることができる。
【0030】
本発明の第9の実施の形態は、前記衝撃部の衝突面にショットブラスト加工を施すものである。
【0031】
本実施の形態によれば、衝突面の表面粗さを粗くして被処理対象物中に含まれる粒子が面方向に移動しようとする際に発生する摩擦力を大きくすることにより、衝突面からの剥離を低減し、粒子と衝撃部が接触する時間を長くすることができる。
【0032】
本発明の第10の実施の携帯は、前記衝撃部が被処理対象物に衝突するものである。
【0033】
本実施の形態によれば、衝撃部が被処理対象物中を運動することにより、被処理対象物に対して、衝撃を加えることができる。
【0034】
本発明の第11の実施の形態は、前記衝撃部が回転を行うものである。
【0035】
本実施の形態によれば、前記衝撃部の移動スペースを最小限にすることができ、小型化することができる。
【0036】
本発明の第12の実施の形態は、固定された前記衝撃部に被処理対象物を噴流で衝突させるものである。
【0037】
本実施の形態によれば、固定された衝撃部に対して被処理対象物を噴流で衝突させることにより、粒子微細化処理装置を簡単な構成で小型化することができる。
【0038】
本発明の実施の形態13は、被処理対象物は排水処理から生じる有機性の汚泥としたものである。
【0039】
本実施の形態によれば、排水処理から生じる有機性の汚泥を微細化処理できる。
【0040】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0041】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施例における粒子微細化処理装置について、図面を参照して説明する。
【0042】
図1は粒子微細化処理装置1の全体構成図である。
【0043】
粒子微細化処理槽2は側面3と底面4と天面5からなる円筒形状で、粒子微細化処理槽の底面4はモーターハウジング6に固定されている。側面3の内側には撹拌リブ7が縦方向に設置してあり、底面4の外側にはメカニカルシール8が固定してある。モーターハウジング6の下方にはモーター9が配置されており、モーター9のモーターシャフト10がメカニカルシール8へ接続され、メカニカルシール8からメカシールシャフト11が底面4の中心部を貫通して粒子微細化処理槽2の内部の底面近傍の高さまで配置され、メカシールシャフト11の先端には衝撃部である回転ブレード12が重心の位置に配置されている。
【0044】
天面5は、被処理対象物を処理する際に、粒子微細化処理槽2から被処理対象物が越流することを防ぐために設けられ、越流の恐れがない場合は、設けなくてもよい。
【0045】
ここで、モーター9は10000rpm以上の高速回転が可能なものが望ましい。
【0046】
また、メカニカルシール8はモーター9の動力を底面4を通って、回転ブレード12の回転に伝達させる際、底面4とメカシールシャフト11との空隙から粒子微細化処理槽2内における被処理対象物が漏洩することを防ぐために設置している。
【0047】
また、撹拌リブ7は粒子微細化処理槽2の内面に中心に向かって突起状に形成されており、回転ブレード12が回転することによって被処理対象物に発生する旋回流を上昇流に変換するために設置してあり、上昇流を形成することにより、粒子微細化処理槽内における被処理対象物の撹拌効率が向上し、微細化効率が向上する。
【0048】
なお、回転ブレード12は長板状であり、比強度、硬度、耐摩耗性、耐腐食性に優れた素材を用いるのがよく、ここではステンレスを使用している。
【0049】
ここで、本実施の形態における被処理対象物は、排水処理により発生する有機性の汚泥とする。
【0050】
汚泥は水と懸濁粒子であるフロックの混合物である。フロックは微生物およびその代謝物の塊であり、直径数百μm以下の粒子として、水中に懸濁している。
【0051】
まず、被処理対象物である汚泥を粒子微細化処理槽2に所定の量まで入れる。次にモーター9を回転させる。回転ブレード12がモーター9の動力により、10000rpmまで回転する。粒子微細化処理槽2に投入した汚泥は回転ブレード12の回転により激しく撹拌されるとともに汚泥中のフロックが微細化される。この時、回転ブレード12の回転により汚泥は粒子微細化処理槽内を円周方向に回転して旋回流となるが、この時、側面に設けられた攪拌リブ7により底面4より生じた旋回流が上方流へと変化し、縦方向への流れが生じることにより粒子微細化処理槽2内の汚泥の撹拌が促進され、微細化効率が向上する。
【0052】
ここで、高速回転する回転ブレード12により汚泥中のフロックが破砕され、微細化されるメカニズムをさらに詳しく考察する。
【0053】
汚泥中のフロックと回転ブレード12がある相対速度で衝突するとき、長板状である回転ブレードの回転方向の衝突面で大きな衝撃力が瞬間的に働く。
【0054】
一般的に、粒子が衝突面に衝突する場合、衝撃力は力が働いている時間は極めて短いが、粒子は衝突面と接触した瞬間から力を受け始め、衝突面から離れた瞬間受ける力は0になる。
【0055】
粒子は衝突面と衝突する前と衝突した後の運動量変化が大きいほど大きな衝撃力を受ける。
【0056】
運動量変化は力積と等しく、力積は衝突時に受ける力と接触した瞬間から離れるまでの時間との積であり、以下の式(1)にて表される。
【0057】
N = F ・ Δt ・・・(1)
ここで、N:力積、F:被処理対象物中に含まれる粒子に働く力、 Δt:被処理対象物に力が働いている時間である。
【0058】
式(1)より、粒子に同じ力が働いている場合は、粒子が衝突面と接触する時間が長いほど力積は大きくなり、粒子は大きな衝撃力を受けることになり、微細化効率を高めることができる。この微細化原理の考察が本発明を完成させるに至った基礎となったものである。
【0059】
以下に、上記考察を踏まえ、汚泥中のフロックが衝突面と接触時間が長くなるように回転ブレードの形状について検討した結果について説明する。
【0060】
図2(a)はメカシールシャフト11へ接続する回転ブレード12の概略図である。なお、図中の矢印は回転ブレード12の回転方向を示す。
【0061】
回転ブレード12は長板状となっており、その重心に脱着部22を設け、脱着部22からメカシールシャフト11を挿入し、圧着部23にはボルトを挿入しナットを締め圧着することにより、回転ブレード12とメカシールシャフト11が接続され、回転ブレード12は重心を中心に回転する。回転ブレード12の回転方向の面は衝突面であり、ここでは、図2(a)のように衝突面21の長手方向が回転方向の後方へ反るような凹形状になっている。
【0062】
この形状により、凹部と接触した汚泥中のフロックが、回転ブレード12の衝突面21から長手方向へ移動して剥離することを低減する。すなわち、フロックと衝突面が接触する時間が長くなることによって、衝突面がフロックに力を与える時間が長くなり、力積を大きくすることができる。力積を大きくすることによって衝撃力が増大し、結果的に微細化効率が向上する。
【0063】
上記のように、汚泥中のフロックの微細化効率を向上させる為、衝撃力が大きくなるように回転ブレードの形状を検討し、粒子微細化処理装置による汚泥の微細化効率の検証実験について以下に説明する。
【0064】
ここで、回転ブレードは上記考察により検討した図2(a)の形状のものを用い、比較の為、回転方向を正、逆の2方向で実験を行った。
【0065】
図2(b)は回転ブレード12を逆回転させたときの回転方向を示したものである。
【0066】
ここで、回転ブレードは板厚1.5mmのステンレス製であり、高さ9mmのスペーサを間に挟んで2枚の回転ブレードをメカシールシャフト11に接続する。
【0067】
実験条件として、MLSSが15,000mg/Lの濃度の有機性の汚泥を粒子微細化処理槽へ5L投入し、ブレード回転数を10,000rpm、運転時間を30秒に固定して微細化処理を実施した。
【0068】
微細化効率を定量的に検討するために各回転方向に対する再基質化率を比較する。再基質化率とは、汚泥中に38μm未満のSS(Suspended Solid:懸濁物質)が含まれる割合であり、汚泥減容化技術における汚泥微細化処理の指標として用いられており、式(2)より算出され、この値が大きいほど汚泥が微細化されていることになる。
【0069】
ε= (A2/A1)×100 ・・・(2)
ここで、ε:汚泥の再基質化率(%)、A1:汚泥の全TOC(mg/L)、 A2:汚泥中の38μm未満のSSに含まれるTOC(mg/L)である。
【0070】
38μm未満のSSの抽出はステンレス製の篩を用いた分級によっておこなった。また、TOCの測定は(株)島津製作所製の全有機炭素計TOC−Vcsn及び固体試料燃焼装置SSM−5000Aによって行った。
【0071】
図3は実験の結果である。
【0072】
図3の正回転は、回転方向に対し、長手方法の後方へ反るような凹形状の時の再基質化率であり約80%の再基質化率であることがわかる。
【0073】
これに対し、逆回転は、回転方向に対し、長手方法の前方へ突き出すような凸形状の時の再基質化率で、約55%の再基質化率であり、正回転の方が、逆回転に比べ大幅に微細化効率が高いことがわかる。
【0074】
ここで、逆回転では衝撃部に沿って処理対象物を衝撃部の長手方向に移動させると衝撃部の先端方向へ汚泥が分散してしまい、汚泥中に含まれるフロックを保持する事ができないため、フロックに与える衝撃力が小さく、微細化効率が悪くなっていると考えられる。
【0075】
一方、正回転では衝撃部を長手方向に回転方向の前方へ反るような凹形状にすることによって、衝撃力を増加させることができ、微細化効率を向上させることができたと考えられる。
【0076】
ここで、本発明の粒子微細化処理装置は家庭用で用いられるブレンダーと極めてよく似ている構成をしており、家庭用のブレンダーを用いても汚泥は一定の微細化性能を有することが知られている。しかし、家庭用のブレンダーは主に野菜や果物などの食品を切断して粉砕するのに特化した設計がなされている。
【0077】
つまり、本発明のように水中に懸濁するフロックのような粒子を微細化するには最適であるとは言えない。事実、家庭用のブレンダーは粒子に比べればはるかに粗大な野菜や果物を底面に固定して、回転ブレードで切断することにその設計の主眼が置かれており、切断効率を高めるため、回転ブレードの形状は回転方向に対し、直線か凸形状となっている。この形状で汚泥を処理した場合、先の実験結果で示したように明らかに微細化効率が低下する。
【0078】
したがって、汚泥に含まれるフロックを微細化するには、粗大物を切断する機能に特化した回転ブレードより、粒子に大きな衝撃力を与える機能に特化した本発明の微細化処理装置のほうが、微細化効率が高いことがわかる。
【0079】
なお、回転ブレードの形状は、衝突面が衝突方向に対して凹形状になっている形状であればよく図4(a)に示すように、回転ブレードの衝突面の厚み方向が凹形状になっている形状としてもよい。なお、図中の矢印は回転ブレード12が回転する方向と、回転ブレードが回転するときに断面が進行する方向を示している。
【0080】
回転ブレードの厚み方向が凹形状になっていることにより、凹部と接触したフロックが、回転ブレードの衝突面21から厚み方向へ移動して剥離することを低減し、フロックと回転ブレードが接触する時間を長くすることによって、微細化効率を高めることができる。
【0081】
また、同様に図4(b)に示すように、長手方向や厚み方向に、回転ブレードの衝突面21が波形状である構成としてもよい。
【0082】
長手方向や厚み方向に、回転ブレードの衝突面21に設けた無数の波形の谷によって保持された被処理対象物中に含まれる粒子が山方向へ移動して剥離することを低減し、粒子と衝撃部が接触する時間を長くすることによって、微細化効率を高めることができる。
【0083】
また、同様に回転ブレードの衝突面21にショットブラスト加工を施してもよい。
【0084】
衝突面21の表面粗さを粗くし、フロックが面方向に移動しようとする際に発生する摩擦力を大きくすることができ、衝突面21からの剥離を低減し、フロックと回転ブレードが接触する時間を長くすることによって、衝撃部が粒子に力を与える時間を長くし、微細化効率を高めることができる。
【0085】
なお、上記粒子微細化処理装置1は回転ブレード12が回転してフロックに衝突する構成で説明した。衝撃部である回転ブレード12が回転する場合衝撃部の移動スペースを最小限にすることができ、小型化することができるメリットがある。
【0086】
しかし、衝撃部が並進する構成の粒子微細化処理装置であっても衝撃部に衝突したフロックを衝突面で保持する形状とすることで同様の効果が期待できる。
【0087】
ここで、粒子微細化処理槽内で衝撃部を並進させる方法については、詳しい説明は省略するが、例えば粒子微細化処理槽内で衝撃部が往復運動するような機構を配置する方法がある。
【0088】
このように本発明の実施の形態1の粒子微細化処理装置によれば、被処理対象物中に含まれた粒子に与える衝撃力を大きくし、薬品等を使用せず安全で、高い微細化効率を有する粒子微細化処理方法および装置を実現することができる。
【0089】
なお、本実施の形態では被処理対象物を汚泥で説明したが、これは汚泥に特化したものではない。液体中に懸濁する固形粒子を微細化処理することや、油と水のように二つの相から構成される液体や液状粒子の乳化・分散処理など、液体中の粒子を微細化する用途に広く適用できる。
【0090】
(実施の形態2)
図5は、本発明の粒子微細化処理装置の他の実施の形態を示す構成図である。なお、実施の形態1と同様の構成や作用を有するものについては同一符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
粒子微細化処理槽2内部の既定の水位より上方に衝撃部である衝撃板31が固定してあり、衝撃板31の前面近傍にはノズル34が配置されている。ノズル34は粒子微細化処理槽2の底部に配置されたポンプ32とホース33を介して接続されている。衝撃板31の衝突面21はノズル34によって、噴射される被処理対象物の進行方向に対して、凹形状になっている。
【0092】
まず、被処理対象物である汚泥を既定の水位まで粒子微細化処理槽に入れ、汚泥はポンプから汲み上げられホース33を通ってノズル34に到達し、ノズル34では口径が徐々に小さくなっていることにより、流速に加速度がついて高速で噴射される。高速で噴射された汚泥は噴流となって衝撃板31と激しく衝突して汚泥中のフロックが微細化され、微細化された汚泥は重力により粒子微細化処理槽の水面に落ちることで循環し、再度微細化が進められる。
【0093】
ここで、衝撃板31が噴射された汚泥の進行方向に対して凹形状になっていることにより、凹部と接触したフロックは衝突面21から移動して剥離することが低減され、粒子と衝撃板31が接触する時間を長くすることによって、微細化効率を高めることができる。
【0094】
ここで、衝撃板31に衝突する際の衝撃力を大きくするには、衝撃時のフロックの速度が大きいほうがよいため、ノズル34と衝撃板31の衝突面の距離は近いほど好ましい。
【0095】
なお、本実施の形態では実施の形態1で説明した回転ブレード12を用いた方式と比べ、モーター9やメカニカルシールが不要となり、装置の構成が簡単になって小型化することができる。
【0096】
このように本発明の実施の形態2の粒子微細化処理装置によれば、固定された衝撃板31に対して被処理対象物を噴射して噴流で衝突させることにより、簡単な構成で小型化でき、高い微細化効率を有する粒子微細化処理方法および装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明による粒子微細化処理方法および装置は、排水処理から生じる有機性の汚泥の減容化技術における汚泥微細化処理に適用することができる。また、液体中における固形粒子の微細化処理や液状粒子の乳化・分散処理に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態1における粒子微細化処理装置の構成を示す図
【図2】(a)は本発明の実施の形態1の回転ブレードの構成と正回転方向を示す図、(b)は同構成と逆回転方向を示す図
【図3】汚泥の粒子微細化処理実験の結果を表すグラフ
【図4】(a)は同粒子微細化処理装置の衝撃部の構成を示す図、(b)は同粒子微細化処理装置の衝突面の凹形状の断面を示す図、(c)は同粒子微細化処理装置の衝突面の他の断面を示す図
【図5】本発明の実施の形態2における粒子微細化処理装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0099】
1 粒子微細化処理装置
2 粒子微細化処理槽
3 側面
4 底面
5 天面
6 モーターハウジング
7 撹拌リブ
8 メカニカルシール
9 モーター
10 モーターシャフト
11 メカシールシャフト
12 回転ブレード
21 衝突面
31 衝撃板
32 ポンプ
33 ホース
34 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含んだ液状の被処理対象物と衝撃部を衝突させ、前記粒子を前記衝撃部の衝突面との衝撃力によって微細化する粒子微細化処理方法において、前記衝撃部は、衝突した前記粒子を前記衝突面で保持する形状を有することを特徴とする粒子微細化処理方法。
【請求項2】
前記衝撃部の衝突面は被処理対象物が衝突方向に対して凹形状になっていることを特徴とする請求項1記載の粒子微細化処理方法。
【請求項3】
前記衝撃部の衝突面の表面粗さを粗くすることを特徴とする請求項1記載の粒子微細化処理方法。
【請求項4】
被処理対象物は排水処理から生じる有機性の汚泥であることを特徴とする請求項1記載の粒子微細化処理方法。
【請求項5】
側面と底面で構成された粒子微細化処理槽の内側面に撹拌リブと、内側に衝撃部を備え、前記粒子微細化処理槽に粒子を含んだ液状の被処理対象物を導入し、被処理対象物と衝撃部を衝突させ、前記粒子を前記衝撃部の衝突面との衝撃力によって微細化する粒子微細化処理装置において、前記衝撃部は、衝突した前記粒子を前記衝突面で保持する形状を有することを特徴とする粒子微細化処理装置。
【請求項6】
前記衝撃部は長板状であり、前記衝撃部の衝突面の長手方向が凹形状になっていることを特徴とする請求項5記載の粒子微細化処理装置。
【請求項7】
前記衝撃部は長板状であり、前記衝撃部の衝突面の厚み方向が凹形状になっていることを特徴とする請求項5記載の粒子微細化処理装置。
【請求項8】
前記衝撃部の衝突面が波形状であることを特徴とする請求項5記載の粒子微細化処理装置。
【請求項9】
前記衝撃部の衝突面にショットブラスト加工を施すことを特徴とする請求項5記載の粒子微細化処理装置。
【請求項10】
前記衝撃部が被処理対象物に衝突することを特徴とする請求項5から9いずれか1項に記載の粒子微細化処理装置。
【請求項11】
前記衝撃部が回転を行うことを特徴とする請求項10記載の粒子微細化処理装置。
【請求項12】
固定された前記衝撃部に被処理対象物を噴流で衝突させることを特徴とする請求項5から9いずれか1項に記載の粒子微細化処理装置。
【請求項13】
被処理対象物は排水処理から生じる有機性の汚泥であることを特徴とする請求項5記載の粒子微細化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−90230(P2009−90230A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264305(P2007−264305)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】