説明

粒子状含炭素物質除去装置およびそれを用いるガス処理方法

【課題】比較的低温でも粒子状含炭素化合物を酸化除去できる粒子状含炭素化合物除去装置および該粒子状含炭素化合物除去装置を用いて効率よく燃焼排ガスを処理できる方法を提供する。
【解決手段】エンジンの燃焼排ガス中の粒子状含炭素化合物を酸化して除去するための粒子状含炭素化合物除去装置であって、ガスの導入口と排出口とを有し、該導入口と排出口の間のガス流路に、酸化マンガンが担持されている面を有する基材を、該担持面が前記ガスと接触するように設置されてなることを特徴とする粒子状含炭素化合物除去装置、ならびに該装置を用いて粒子状含炭素化合物を含有するガスを処理する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子状含炭素化合物除去装置およびそれを用いるガス処理方法に関し、さらに詳しくは、ディーゼルやガソリンエンジンの排気ガス等の化石燃料の燃焼排ガス中に含まれる炭素系粒子状物質を除去するための粒子状含炭素化合物除去装置および炭素系粒子状物質除去装置を用いる排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、化石燃料である重油や軽油やガソリンを燃料とするディーゼル機関やガソリン機関は、車両、船舶、農業用、工業用又は発電用等の分野において広く利用されている。しかし、ディーゼル機関やガソリン機関の排ガス中には、不完全燃焼により通常黒煙と呼ばれる粒子状含炭素化合物(以下、「炭素系粒子状物質」または「PM」ということもある。)が混入しており、この粒子状含炭素化合物の排出は、単に大気を汚染するのみならず、種々の健康被害をもたらす要因となることが指摘され、環境衛生上非常に問題視されている。このため近年は粒子状含炭素化合物排出量が厳しく規制される傾向にある。
【0003】
そこで、粒子状含炭素化合物を低減させる方法が種々提案されており、ディーゼル機関やガソリン機関の燃焼効率を向上させて粒子状含炭素化合物の発生そのものを減少させる試みがなされる一方、排ガスから粒子状含炭素化合物を除去するための粒子状含炭素化合物を酸化除去する粒子状含炭素化合物除去装置が盛んに開発されている。
【0004】
このうち、排ガス管路にトラップを設け、このトラップによって粒子状含炭素化合物を捕集すると共に、後処理でトラップ内の粒子状含炭素化合物を除去する方式によるものが実用的に有望であるため、種々提案されている。ここで用いられるトラップは、通常、金属等のケース内に、繊維やハニカム多孔体等のフィルターエレメント(以下、「フィルター」ということもある。)が装着された構造をしている。
【0005】
上記構造のフィルターを有するトラップにおいては、捕集された粒子状含炭素化合物がフィルターに蓄積し、目詰まりを起こして排ガスの流れが著しく阻害される。このため、該フィルターによる粒子状含炭素化合物除去性能が低下したり、粒子状含炭素化合物を酸化除去する粒子状含炭素化合物除去装置を装着したエンジン等の排気効率が悪化するので、再生処理が必要となる。
【0006】
この再生処理は、現状では電気ヒーターによる燃焼再生が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−97929公報(明細書段落[0029]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の電気ヒーターによる燃焼再生では、少なくとも粒子状含炭素化合物を500℃以上の高温に加熱する必要があることから、フィルターの材質に耐熱性金属やセラミック等を使用しなければならず高コストなものとなるという問題があった。また、粒子状含炭素化合物堆積量の多い部分では、粒子状含炭素化合物燃焼により、その部分の温度が著しく上昇してフィルター等を破損することがあり、耐久性にも問題があった。さらに、500℃以上の高温を維持するためには、高出力(1kW以上)の電気ヒーターを使用する必要があり、エネルギー消費の大きいものとなるという問題もあった。さらにまた、フィルターを装着した粒子状含炭素化合物除去装置では、粒子状含炭素化合物蓄積による除去装置の圧損上昇による燃料消費も発生し、燃費悪化を招くという問題もあった。
【0008】
一方、粒子状含炭素化合物除去方法として、最近注目されているプラズマ反応器を用いた方法が報告されている。この方法によれば、誘電体を介して高電圧を印加することにより、誘電体からなる空間にプラズマ放電を発生させ、この空間を通過する排ガスに放電照射されると、排ガスに含まれる粒子状含炭素化合物が酸化して除去される。しかし、前記方法では、誘電体表面に粒子状含炭素化合物が蓄積しやすいため、放電が阻害され、ひいては、粒子状含炭素化合物除去能力が低下するという問題があった。この問題を解決するため、低温でも粒子状含炭素化合物を酸化できる方法を開発する必要があった。
【0009】
かかる現況に鑑み、本発明の課題は、比較的低温でも粒子状含炭素化合物を酸化除去できる粒子状含炭素化合物除去装置および該粒子状含炭素化合物除去装置を用いて効率よく燃焼排ガスを処理できる方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
[1] エンジンの燃焼排ガス中の粒子状含炭素化合物を酸化して除去するための粒子状含炭素化合物除去装置であって、ガスの導入口と排出口とを有し、該導入口と排出口の間のガス流路に、酸化マンガンが担持されている面を有する基材を、該担持面が前記ガスと接触するように設置されてなることを特徴とする粒子状含炭素化合物除去装置;
[2] 酸化マンガンが、MnO、MnO、MnおよびMnからなる群から選ばれる一つ以上からなる前記[1]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[3] 酸化マンガンが、分散、吸着あるいは化学結合により基材の面に担持されている前記[1]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[4] 酸化マンガンが、焼結法、蒸着法およびスパッタ法から選ばれる物理的な方法によって担持されているか、あるいはCVD法、電析法、スピンコート法(ゾル−ゲル)、浸漬法(ゾル−ゲル)および液相析出法から選ばれる化学的な方法で担持されている前記[1]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[5] 酸化マンガンが担持されている面を有する基材の材質がセラミック、金属、金属酸化物またはガラスであり、該基材の形状がハニカム状、網状、板状、管状または球状である前記[1]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[6] 酸化マンガンが担持されている面積が、ガスが接触する面の全面積に対して0.1〜100%であり、酸化マンガンの担持層の厚さは1分子の厚さから10mmの範囲である前記[1]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[7] ガス流路中のガスにOHラジカル、酸素原子、酸素イオン(O、O)、NOガスおよびOガスから選ばれる活性酸素種を共存させる手段が設けられている前記[1]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[8] 活性酸素種を共存させる手段が、プラズマ放電装置である前記[7]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[9] 酸化マンガンが担持されている面がガスの流れに対して抵抗する角度になるように基材が設置されている前記[1]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[10] 共存させる活性酸素種がOガスであり、該Oガスをプラズマ放電によって発生させる前記[7]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[11] 酸化マンガンが担持されている面に、さらにAg、Pt、NiO、Co、CuO、MgO、ZnO、MoO、V、FeおよびFeOからなる群から選ばれる少なくとも一つの触媒が担持されている前記[1]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;
[12] 共存させる活性酸素種がNOガスであり、該NOガスを酸化マンガンが担持されている面にさらに担持させた貴金属触媒により発生させる前記[7]に記載の粒子状含炭素化合物除去装置;および
[13] 前記[1]〜[12]のいずれかに記載の粒子状含炭素化合物除去装置を用い、粒子状含炭素化合物を含有するエンジンの燃焼排ガスをガス導入口から導入し、導入ガスを酸化マンガンが担持されている基材面と接触させて導入ガスを無害化し、無害化されたガスをガス排出口から排出することを特徴とするガス処理方法;
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粒子状含炭素化合物除去装置は、担持された酸化マンガンの作用により、エンジンの燃焼排ガス中の粒子状含炭素化合物を比較的低温で酸化することができ、有害な粒子状含炭素化合物を容易に除去できる。この場合において、比較的低温度とは、反応器内触媒層温度又は上記導入ガスの触媒との反応温度が、ディーゼルエンジンからの排ガス温度程度、より具体的には約100〜300°C程度の温度である。このため、従来の電気ヒーターや燃焼のポスト噴射による燃焼再生を行う必要がない。また、ガス流路中のガスにOHラジカル、酸素原子、酸素イオン(O、O)、NOガスおよびOガスから選ばれる活性酸素種を共存させる手段(例えば、プラズマ放電装置)を備えた粒子状含炭素化合物除去装置は、粒子状含炭素化合物を強制的に、除去装置内の酸化マンガン表面に捕集し、粒子状含炭素化合物の酸化除去速度を高めることができる。さらに、酸化マンガンと共にNO生成を促進する触媒を担持させた粒子状含炭素化合物除去装置は、粒子状含炭素化合物の酸化除去速度を更に高めることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態例を図面に沿って説明する。
図1は、本発明の粒子状含炭素化合物を酸化除去する粒子状含炭素化合物除去装置(以下、「本装置」と略記することがある。)の一例を示すシステム図である。本装置101はガス流路中のガスにOHラジカル、酸素原子、酸素イオン(O、O)、NOガスおよびOガスから選ばれる活性酸素種を共存させる手段(例えば、プラズマ放電装置)を備えたものであり、主に、ガス入口(1’)とガス出口(1)、本装置の枠(2)、複数の金属電極(3)、複数の誘電体板(6)、金属電極(3)を外部の電源(10)と接続するための金属電極端子(4)とリード線(23)、電極(3)と枠(2)の間を絶縁する絶縁管(5)から構成される。もう一方の電極(3’)は図1には示されていないが、電極(3)と同様、電極(3’)と外部の電源(10)と接続するための金属電極端子(4’)とリード線(23’)、電極(3’)と枠(2)の間を絶縁する絶縁管(5’)が存在する。
【0013】
誘電体板と金属電極の基本構成は図2に示す。アルミナ板(6、6’)をスペーサー(22)で一定の間隔を保つようにしている。アルミナ板上(6)の表面に金属電極(3)を取り付けている。金属電極(3)と枠(2)との間に絶縁シーリング剤(21)で絶縁シーリングをしている。アルミナ板下(6’)の表面(図では下方)に金属電極(3’)を取り付けている。金属電極(3’)と枠(2)との間にも絶縁シーリング剤(21’)で絶縁シーリングをしている。
【0014】
上記誘電体板と金属電極の基本構成を密に組み合わせた図を図3に示す。このような密に組み合わせた基本構造を複数個積層した構造例を図4に示す。この構造例には、金属電極端子(4)が2枚、金属電極端子(4’)が3枚、アルミナ板(6)と(6’)が各4枚、スペーサー(22)が4組、及び電極端子間を連結するためのリード線(23、23’)からなる。リード線(23、23’)は反応器の枠(2)の外側に繋ぐ電源(10)に接続する。このように、ガスの流量や粒子状含炭素化合物の濃度にあわせ、図3に示した基本構造の数を増やして、図4に示したようにアルミナ板、金属電極、スペーサー間を密に組み合わせたりすることによって、目的のガス処理を行うことができる。
【0015】
基材(例えば、アルミナ板)の表面のうちガスが接触する面に酸化マンガンが担持されている例を図6および図7に示す。図6は、アルミナ板のような基材の表面(ガスが接触する面)に、酸化マンガンが粒子として担持された例であり、図7は、基材の表面(ガスが接触する面)に、酸化マンガンが薄膜として担持された例である。本発明においては、基材のガスと接する表面に担持させる酸化マンガンは、前記のような粒子であっても薄膜であってもよい。酸化マンガンが担持されている面積は、ガスが接触する面の面積に対して0.1〜100%の範囲であり、酸化マンガンの担持層(膜)の厚さは1分子の厚さから10mmまでの範囲であれば、粒子状含炭素化合物の酸化除去を促進することが可能である。
【0016】
酸化マンガンが担持されている基材の材質としては、セラミック(例えば、SiC)、金属(ステンレス、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅およびこれらの合金など)、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム(=アルミナ)、MgO、TiOなど)、ガラスなどが挙げられ、これらのうち、アルミナのような金属酸化物がより好適である。また前記基材の形状は特に特定されず、ハニカム状、網状、板状、管状、球状等が挙げられる。さらに、ガスと接する表面は凹凸状にしておくことにより、酸化マンガンが担持されている表面に、粒子状含炭素化合物が付着するのを促進させることが可能である。
【0017】
アルミナ板などの基材の表面への酸化マンガンの担持は、分散、吸着、化学結合のいずれであってもよい。また酸化マンガンを基材の表面に担持させる方法としては、物理的な方法であってもよく、化学的な方法であってもよい。物理的方法としては、例えば焼結法、蒸着法、スパッタ法など挙げられ、化学的方法としては、例えばCVD法、電析法、スピンコート法(ゾル−ゲル)、浸漬法(ゾル−ゲル)、液相析出法などが挙げられる。
【0018】
上記スペーサー(22)が挟まれているアルミナ板(6、6’)の間の空間(24)に粒子状含炭素化合物を含むガスが本装置のガス入口(1’)から導入される。アルミナ板表面に存在する酸化マンガンが触媒として作用し、ガス中に含まれている酸素によって粒子状含炭素化合物が酸化除去される。ガス中の酸素の濃度は、特に限定されないが、好ましくは約1〜21(v/v)%である。粒子状含炭素化合物が酸化除去されたガスはガス出口(1)より本装置から排出される。
【0019】
上記金属電極のリード線(23)と(23’)より金属電極端子(4、4’)を介して、電極(3、3’)に電圧を印加することによって、アルミナ板(6、6’)の間の空間(24)のガスに放電を起こさせる。この際発生した電子によって粒子状含炭素化合物が帯電し、印加した電場と相まって、アルミナ板(6、6’)の表面への付着が促進される。更に、印加した電圧で発生した放電により、ガス中の窒素、酸素、水、酸化窒素からオゾン(O)、OHラジカル、O原子、酸素イオン(O、O)、NOなどの活性酸素種が生成する。この活性酸素種が直接に粒子状含炭素化合物を酸化して除去できるので、酸化マンガンの触媒作用と相まって、粒子状含炭素化合物の酸化除去が大幅に促進できる。
【0020】
上記アルミナ板(6、6’)に担持されている酸化マンガンの周辺にはさらにAg、Pt、NiO、Co、CuO、MgO、ZnO、MoO、Vから選ばれる少なくとも一つを担持させておくことにより、酸化マンガンの粒子状含炭素化合物除去能力をさらに高めることができる。
【0021】
なお、ガスが接触する表面に酸化マンガンが担持されている基材は、該接触面がガスの流れと平行になるように設置されていてもよく、また該接触面がガスの流れに抵抗するように、すなわちガスの流れに対して障害物となうような角度で設置されていてもよい。また、酸化マンガンが担持されている基材に電場を印加することにより、ガスに含まれる粒子含炭化水素が酸化マンガンと接触し易いようにすることにより、酸化マンガンの粒子状含炭素化合物除去能力をさらに高めることができる。
【0022】
本発明の他の態様は、上記のごとき粒子状含炭素化合物除去装置を用いるガス処理方法である。すなわち、本発明のガス処理方法は、本発明の粒子状含炭素化合物除去装置を用い、粒子状含炭素化合物を含有するガスをガス導入口から導入し、導入ガスを酸化マンガンが担持されている基材面と接触させて導入ガスを無害化し、無害化されたガスをガス排出口から排出することを特徴とする。
本発明方法に用いる“粒子状含炭素化合物を含有するガス”としては、例えばエンジン(ディーゼルエンジンやガソリンエンジン)の燃焼排ガスなどが挙げられる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
ディーゼルエンジンの排ガスから採集した黒煙のような粒子状含炭素化合物(以下、単に黒煙と称する)を酸化マンガン(MnO)の触媒作用により酸化し、PMの重量減少量を示差熱天秤(37)により、また生成したガスの成分を質量分析計(30)により測定することにより、酸化マンガンのPM酸化能力を評価した。本評価に用いた試験装置を図8に示す。なお、他の金属酸化物触媒Al2O3 、CuO、TiO2 、ZnO、Co3O4、V2O5と比較するため、MnO2の代わりにそれらの金属酸化物触媒によるPM酸化能力も評価した。
すなわち、触媒粉末(M1mg)と4サイクルディーゼルエンジンの排ガスから採集した黒煙(M2mg)との混合物(36)の所定量(M3mg)をアルミナパン(35)に充填した。アルミナパン(35)の上部に、表1に示す組成および流量となるように、酸素等を含むガス(39)とバランスガス(38)を1:1の容量比で導入した。設置した電気炉で混合物(36)を5℃/分の速度で加熱した。加熱によって、混合物(36)の温度が上昇すると、混合物(36)からガス状物質が生成し、混合物(36)の重量が減少した。生成したガス状物質の一部をサンプリング管(31)から質量分析計(30)に導入し、質量数5〜100までのガスを分析した。一方、混合物(36)の重量減少量M4を示差熱天秤(37)で測定し、重量減少率(%)を下記式1にしたがって計算した。
【数1】

放電による酸化マンガンおよび他の金属酸化物触媒の粒子状含炭素化合物除去能力を測定するため、放電によって生成するオゾン、NOを含むガス(39)を試験装置内に示差熱天秤(37)に供給した。
使用したMnO粉末と他の金属酸化物触媒粉末、黒煙の量及びガス組成・流量を表1に示す。
【表1】

表1に示した実験番号1〜7で得た実験結果(重量減少率と温度との関係)を図9および図11に示す。Alを混合した混合物の場合の重量減少率は280℃以下では0%であった。すなわち、重量減少は見られなかった。他の金属酸化物の中では、Co3O4の方が280℃で最大で3.2%であった。これに対し、MnOを混合した混合物の場合の重量減少率は280℃では13%であり、MnOによる黒煙の酸化促進効果がディーゼルエンジンの排ガス温度範囲(100〜300℃)で優れていることが確認された。
放電で生成するオゾン(O)とNOを含むガスを供給した場合の実験番号8〜14で得た実験結果(重量減少率と温度の関係)を図10および図12に示す。Co3O4を混合した混合物の重量減少率は280℃で他の金属酸化物中で最大で8.2%であった。一方、MnOを混合した混合物の重量減少率は280℃では16%であった。この結果より、MnOによる黒煙の酸化促進効果が優れていることが確認された。また、MnOを混合した混合物の場合、オゾン(O)とNOがあるときの重量減少率が16%で、オゾンとNOがないときの重量減少率13%より高いことから、放電により生成したオゾンとNOがMnOの黒煙酸化能力を促進したことが認められた。
さらに、質量分析計(30)での分析により、ガス中に主に二酸化炭素が検出された。このことから、MnOの作用により黒煙が酸化されたことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の粒子状含炭素化合物除去装置を用いることにより、ガス中の粒子状含炭素化合物を効率よく酸化して除去することができるので、該装置はディーゼル機関やガソリン機関における排ガス処理に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の粒子状含炭素化合物除去装置の一実施形態の要部(基本ユニット)の概略構成図である。
【図2】本発明の粒子状含炭素化合物除去装置の基本構成を示す説明図である。
【図3】本発明の粒子状含炭素化合物除去装置の基本構成を密に組み合わせた時の説明図である。
【図4】本発明の粒子状含炭素化合物除去装置の基本構成を複数でかつ密に組み合わせた時の説明図である。
【図5】本発明の粒子状含炭素化合物除去装置の一実施態様(放電のない場合)の要部(基本ユニット)の概略構成図である。
【図6】本発明の粒子状含炭素化合物除去装置の一実施態様(基板の表面に酸化マンガン粒子が存在する場合)の要部の説明図である。
【図7】本発明の粒子状含炭素化合物除去装置の一実施態様(基板の表面に酸化マンガン膜が存在する場合)の要部の説明図である。
【図8】酸化マンガンの黒煙酸化促進効果を試験するために実施例1で使用した試験装置の図である。
【図9】実施例1の実験番号1および2におけるMnOとAlの黒煙酸化促進効果(重量減少率と温度の関係)を示す図である。
【図10】実施例1の実験番号3および4におけるMnOとAlの黒煙酸化促進効果(重量減少率と温度の関係)を示す図である。
【図11】上記の[図9]が示す黒煙酸化促進効果において、触媒として、MnOまたはAlの代わりにCo、CuO、V、ZnO又はTiOが用いられたときの効果を追加してます。
【図12】上記の[図10]が示す黒煙酸化促進効果において、触媒として、MnOまたはAlの代わりにCo、CuO、V、ZnO又はTiOが用いられたときの効果を追加してます。
【符号の説明】
【0026】
1’: ガス入口
1 : ガス出口
2 : 枠
3 : 金属電極
4、4’: 金属電極端子
5、5’: 絶縁管
6、6’: アルミナ板
10: 電源
11: 図4に示す複数の基本構成を密に積層したもの
21、21’: 絶縁シーリング剤
22: スペーサー
23、23’: リード線
24 : 空間
30 : 質量分析計
31 : サンプリング管
35 : アルミナパン
36 : 酸化マンガン粉末もしくは酸化アルミニウム粉末と黒煙との混合物
37 : 示差熱天秤
38 : バランスガス
39 : オゾン(O)とNOを含むガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼排ガス中の粒子状含炭素化合物を酸化して除去するための粒子状含炭素化合物除去装置であって、ガスの導入口と排出口とを有し、該導入口と排出口の間のガス流路に、酸化マンガンが担持されている面を有する基材を、該担持面が前記ガスと接触するように設置されてなることを特徴とする粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項2】
酸化マンガンが、MnO、MnO、MnおよびMnからなる群から選ばれる一つ以上からなる請求項1に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項3】
酸化マンガンが、分散、吸着あるいは化学結合により基材の面に担持されている請求項1に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項4】
酸化マンガンが、焼結法、蒸着法およびスパッタ法から選ばれる物理的な方法によって担持されているか、あるいはCVD法、電析法、スピンコート法(ゾル−ゲル)、浸漬法(ゾル−ゲル)および液相析出法から選ばれる化学的な方法で担持されている請求項1に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項5】
酸化マンガンが担持されている面を有する基材の材質がセラミック、金属、金属酸化物またはガラスであり、該基材の形状がハニカム状、網状、板状、管状または球状である請求項1に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項6】
酸化マンガンが担持されている面積が、ガスが接触する面の全面積に対して0.1〜100%であり、酸化マンガンの担持層の厚さは1分子の厚さから10mmの範囲である請求項1に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項7】
ガス流路中のガスにOHラジカル、酸素原子、酸素イオン(O、O)、NOガスおよびOガスから選ばれる活性酸素種を共存させる手段が設けられている請求項1に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項8】
活性酸素種を共存させる手段が、プラズマ放電装置である請求項7に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項9】
酸化マンガンが担持されている面がガスの流れに対して抵抗する角度になるように基材が設置されている請求項1に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項10】
共存させる活性酸素種がOガスであり、該Oガスをプラズマ放電によって発生させる請求項7に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項11】
酸化マンガンが担持されている面に、さらにAg、Pt、NiO、Co、CuO、MgO、ZnO、MoO、V、FeおよびFeOからなる群から選ばれる少なくとも一つの触媒が担持されている請求項1に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項12】
共存させる活性酸素種がNOガスであり、該NOガスを酸化マンガンが担持されている面にさらに担持させた貴金属触媒により発生させる請求項7に記載の粒子状含炭素化合物除去装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の粒子状含炭素化合物除去装置を用い、粒子状含炭素化合物を含有するエンジンの燃焼排ガスをガス導入口から導入し、導入ガスを酸化マンガンが担持されている基材面と接触させて導入ガスを無害化し、無害化されたガスをガス排出口から排出することを特徴とするガス処理方法。

【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−50840(P2009−50840A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35909(P2008−35909)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 革新的次世代低公害車総合技術開発、革新的後処理システムの研究開発委託研究、産業技術強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【Fターム(参考)】