説明

粘度指数向上剤および潤滑油組成物

【課題】 従来のポリメタクリレート系粘度指数向上剤よりも、粘度指数向上効果においても、また剪断安定性においても優れた粘度指数向上剤を提供する。
【解決手段】 ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによって測定されるZ平均分子量が10,000〜1,000,000であり、炭素数1〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須構成単量体とする重合体(A)からなる粘度指数向上剤、および該粘度指数向上剤と基油を含有してなる潤滑油組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度指数向上剤およびそれを含む潤滑油組成物に関する。詳しくは、特定のZ平均分子量を有するポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤およびそれを含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の気運が高まり、自動車の省燃費性がより一層要求されてきている。省燃費化の1つの手段として潤滑油の低粘度化による摩擦損失の低減が挙げられる。しかしながら、単に低粘度化すると液漏れや焼き付きといった問題が生じてくる。この問題を解決するには、一般に粘度指数を上げることが必要とされ、従来から各種の粘度指数向上剤が提案されている(例えば特許文献−1参照)。
【特許文献−1】特開平7−48421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のポリメタクリレート系粘度指数向上剤は、粘度指数向上効果においても、また剪断安定性においても不十分であるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のZ平均分子量を有し、特定の単量体から構成される重合体が、せん断安定性と粘度指数向上能に優れていることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによって測定されるZ平均分子量が10,000〜1,000,000であり、炭素数1〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須構成単量体とする重合体(A)からなる粘度指数向上剤;該粘度指数向上剤並びに希釈剤および/または他の添加剤からなる潤滑油用添加剤組成物;該粘度指数向上剤と基油を含有してなる潤滑油組成物;および、該潤滑油添加剤組成物と基油を配合してなる潤滑油組成物;である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物は、従来のPMA系粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物と比べ粘度指数が改良でき、かつ、剪断安定性、低温粘度にも優れることから今後の自動車の省燃費性の要求に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明におけるZ平均分子量は(以下Mzと略す)下限が通常10,000、好ましくは15,000、さらに好ましくは20,000であり、上限は通常1,000,000、 好ましくは400,000、さらに好ましくは250,000、特に好ましくは150,000である。Mzが10,000未満では、粘度指数向上能に乏しい。1,000,000を越えると剪断安定性に乏しくなる。なお、Mzは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによって測定されるものであり、ポリスチレンに換算して求めたものである。
【0007】
重合体(A)の必須構成単量体である炭素数1〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)としては以下の(a1)〜(a4)が挙げられる。
(a1)炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル:例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−またはiso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−、iso−またはsec−ブチルなどが挙げられ、好ましいのはメタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチルである。
(a2)炭素数8〜15の直鎖及び/または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル:
例えば、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルウンデシル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルドデシル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルトリデシル、(メタ)アクリル酸n−ペンタデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルテトラデシル、オキソ合成により製造されたアルコール[例えば、商品名「ドバノール23」(三菱化学製)、「トリデカノール」(協和発酵製)、「オキソコール1213」(日産化学製)、「ドバノール45」(三菱化学製)、「オキソコール1415」(日産化学製)との(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる(以下、「ドバノール23」とのメタクリル酸エステルをD23、「ドバノール45」とのメタクリル酸エステルをD45と略す)。これらのなかで好ましいのは、炭素数12〜15の直鎖及び/または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
(a3)炭素数16〜24の直鎖及び/または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル:
例えばアクリル酸n−ヘキサデシル、メタクリル酸n−ヘキサデシル(以下HMAと略す)、アクリル酸n−オクタデシル、メタクリル酸n−オクタデシル(以下OMAと略す)、(メタ)アクリル酸n−エイコシル、(メタ)アクリル酸n−ドコシル、(メタ)アクリル酸2メチルペンタデシル、(メタ)アクリル酸2−ヘキシルデシル基、(メタ)アクリル酸2−メチルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2−オクチルデシル、(メタ)アクリル酸2−ヘキシルドデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルオクタデシル基、(メタ)アクリル酸2−オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルなど、これらのなかで好ましいのは、炭素数16〜18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルである。
(a4)炭素数5〜7の直鎖及び/または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル:
(メタ)アクリル酸n−、iso−、sec−およびネオペンチル(メタ)アクリル酸、ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチルなど、
(a)のなかで好ましいのは、(a1)〜(a3)であ
【0008】
重合体(A)において、(a)との共重合の相手の単量体として以下の(d)〜(n)の単量体が挙げられる。
【0009】
(d)窒素原子含有単量体;
(d1)ニトロ基含有単量体:
例えば、4−ニトロスチレンなど、
(d2)1〜3級アミノ基含有ビニル単量体:
1級アミノ基含有ビニル単量体、例えば、炭素数3〜6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン、クロチルアミンなど]、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレートなど]、2級アミノ基含有ビニル単量体、例えば、アルキル(炭素数1〜6)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[t−ブチルアミノエチルメタクリレート、メチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど]、ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド[4−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、2−ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミドなど]、炭素数6〜12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミンなど]、3級アミノ基含有ビニル単量体、例えば、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなど]、3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体[N,N−ジメチルアミノスチレン、など]、含窒素複素環含有ビニル系単量体[モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルチオピロリドンなど]、
(d3)第4級アンモニウム塩基含有ビニル単量体:
例えば、前述の3級アミノ基含有ビニル単量体を、4級化剤(炭素数1から12のアルキルクロライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート、およびベンジルクロライド等)を用いて4級化したものなどが挙げられる。具体的には、アルキル(メタ)アクリレート系第4級アンモニウム塩としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルモルホリノアンモニウムクロライドなど;アルキル(メタ)アクリルアミド系第4級アンモニウム塩としては、例えば、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなど;その他の第4級アンモニウム塩基含有ビニル系単量体としては、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート、トリメチルビニルフェニルアンモニウムクロライドなど、
(d4)両性ビニル単量体:
N−(メタ)アクリロイルオキシ(もしくはアミノ)アルキル(炭素数1〜10)N,N−ジアルキル(炭素数1〜5)アンモニウム−N−アルキル(炭素数1〜5)カルボキシレート(もしくはサルフェート)、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウムN−メチルカルボキシレート、N−(メタ)アクリロイルアミノプロピルN,N−ジメチルアンモニウムN−メチルカルボキシレート、およびN−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウムプロピルサルフェートなど、
(d5)ニトリル基含有単量体:
(メタ)アクリロニトリルなど、
【0010】
(e)脂肪族炭化水素系ビニル単量体:
例えば、炭素数2〜20のアルケン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセンなど]、および炭素数4〜12のアルカジエン[ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6ヘプタジエン、1,7−オクタジエンなど]、
【0011】
(f)脂環式炭化水素系ビニル単量体:
例えば、シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン、およびエチリデンビシクロヘプテンなど、
【0012】
(g)芳香族炭化水素系ビニル単量体:
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン、4−クロチルベンゼン、および2−ビニルナフタレンなど、
【0013】
(h)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類:
例えば、炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、オクタン酸ビニルなど]、炭素数1〜12のアルキル、アリールもしくはアルコキシアルキルのビニルエーテル[メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、ビニル2−ブトキシエチルエーテルなど]、および炭素数1〜8のアルキルもしくはアリールのビニルケトン[メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなど]、
【0014】
(i)エポキシ基含有ビニル単量体;
例えば、グリシジル(メタ)アクリレートグリシジル(メタ)アリルエーテルなど、
【0015】
(j)ハロゲン元素含有ビニル単量体;
例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル、ハロゲン化スチレン(ジクロルスチレンなど)等が挙げられる。
【0016】
(k)不飽和ポリカルボン酸のエステル;
例えば、不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキルもしくはアラルキルエステルが挙げられ、このうち不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など]の炭素数1〜8のアルキルジエステル[ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート、ジオクチルマレエート]など、
【0017】
(l)ヒドロキシル基含有ビニル単量体;
例えば、ヒドロキシル基含有芳香族ビニル単量体[p−ヒドロキシスチレンなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、モノ−またはジ−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドなど]、ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール、1−ウンデセノールなど]、炭素数4〜12のアルケンジオール[1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオールなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル[2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテルなど]、多価(3〜8価)アルコール(アルカンポリオール、その分子内もしくは分子間脱水物、糖類、例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、蔗糖)のアルケニル(炭素数3〜10)エーテルもしくは(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル]など、
【0018】
(m)ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体;
例えば、ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)、もしくはポリオキシアルキレンポリオール[上記3〜8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキル基の炭素数2〜4、重合度2〜100)]、またはそれらのアルキル(炭素数1〜4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(分子量100〜300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量130〜500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量110〜310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキシド付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレート、モノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(分子量150〜230)ソルビタン]など、
【0019】
(n)カルボキシル基含有ビニル単量体;
モノカルボキシル基含有ビニル単量体、例えば、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸など]、不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなど];2個以上のカルボキシル基を含有するビニル単量体、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸など、
【0020】
これらの(d)〜(n)の単量体のうち、好ましいものは(d)、(l)およびこれらの併用である。
【0021】
(d)のうち好ましいものは(d2)、さらに好ましいものはジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下DAEと略す)、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびモルホリノエチル(メタ)アクリレートである。
【0022】
(A)を構成する単量体中の(a1)の割合は、粘度指数と溶解性の観点から、下限は通常0%(以下、特に断りのない限り、%は質量%を表す)、好ましくは5%、さらに好ましくは10%であり、上限は好ましくは45%、さらに好ましくは40%、特に好ましくは35%、とりわけ好ましくは25%、最も好ましくは22%である。
【0023】
(A)を構成する単量体中の(a2)の割合は、粘度指数と溶解性の観点から、下限は好ましくは0.1%、さらに好ましくは20%、特に好ましくは30%、とりわけ好ましくは40%、最も好ましくは50%であり、上限は通常100%、好ましくは95%である。
【0024】
(A)を構成する単量体中の(a3)の割合は粘度指数と低温粘度の観点から、下限は通常0%、好ましくは5%であり、上限は好ましくは75%、さらに好ましくは65%、特に好ましくは50%、とりわけ好ましくは20%である。
【0025】
(A)を構成する単量体中の(d)の割合はスラッジ分散性の観点から、下限は好ましくは0.1%、さらに好ましくは1%、特に好ましくは2%であり、上限は好ましくは10%、さらに好ましくは7%、特に好ましくは5%である。
【0026】
(A)のうちの(a1)、(a2)および(a3)の質量%の好ましい組み合わせは、(a1)が0〜45%、(a2)が0.1〜100%および(a3)が0〜75%であり、さらに好ましい組み合わせは、(a1)が5〜40%、(a2)が20〜95%および(a3)が0〜65%である。
【0027】
本発明における(A)のMzを調整する手段としては、例えば、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量、連鎖移動剤量などにより調整できる。
【0028】
本発明における(A)は、公知の製造方法によって得ることができる。例えば前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合することにより得られる。
【0029】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、炭素数9〜10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、鉱物油など、重合触媒としては、アゾ系触媒(例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(以下AMBNと略す)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下ADVNと略す)、ジメチル2,2−アゾビスイソブチレートなど)や過酸化物系(例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなど)を用いることができる。さらに、必要により連鎖移動剤を併用してもよく、このようなものとしては、例えばチオカルボン酸類(n−ラウリルメルカプタン(以下DMと略す)、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール等)、チオール酸類(チオグリコール酸、チオリンゴ酸等)、アミン類(ジブチルアミン等)等を挙げることができ、連鎖移動剤の量は単量体の質量に対して、好ましくは0.001〜5%、さらに好ましくは0.05〜3%である。反応温度としては、50〜140℃、好ましくは70〜120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により得ることもできる。さらに、(A)が共重合体の場合の重合様式としては、ランダム付加重合または交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合またはブロック共重合のいずれでもよい。
【0030】
本発明の粘度指数向上剤は、単量体を溶剤の存在下に重合させて、溶剤で希釈された状態で得られたものを潤滑油用添加剤組成物として使用することもでき、または、重合後に溶剤などの希釈剤で希釈して潤滑油用添加剤組成物として使用することもできる。あらかじめ希釈剤で希釈しておくことで、潤滑油に添加する際に容易に溶解するようにできる点で好ましい。
希釈剤としては、脂肪族溶剤[炭素数6〜18の脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン、灯油など)];芳香族溶剤{炭素数7〜15の芳香族溶剤[トルエン、キシレン、エチルベンゼン、炭素数9の芳香族混合溶剤(トリメチルベンゼン、エチルトルエンなどの混合物)、炭素数10〜11の芳香族混合溶剤など]、鉱物油[例えば、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有するおよびまたは水素化分解による高粘度指数油、ナフテン油]、合成潤滑油[炭化水素契合性潤滑油(ポリαオレフィン系合成潤滑油)、エステル系合成潤滑油]などであり、これらのうち好ましいものは鉱物油である。
本発明の潤滑油添加剤組成物が、希釈剤を含む場合、希釈剤の割合の下限は、本発明の粘度指数向上剤の質量に基づいて、好ましくは10%、さらに好ましくは30%、特に好ましくは40%であり、上限は、本発明の粘度指数向上剤の質量に基づいて好ましくは900%、さらに好ましくは800%、特に好ましくは600%である。
希釈剤の比率が高いほうが基油に容易に溶解する点で好ましいが、あまり多いのは経済的ではない。
【0031】
さらに本発明の潤滑油用添加剤組成物は、異なる2種以上の(A)を含有してもよい。好ましい組み合わせは、(a1)〜(a3)からなる(A1)と、(a2)、(a3)からなる(A2)であり、低温粘度の観点から、好ましい質量比は(A1)/(A2)=(99〜85)/(1〜15)である。
【0032】
(A1)を構成する単量体の質量比は好ましくは(a1)/[(a2)+(a3)=(5〜30)/(95〜70)、さらに好ましくは(10〜22)/(90〜78)である。
(A2)における単量体の好ましい構成比率は、単量体のうち少なくとも1種が炭素数12〜18のものを含み、平均炭素数が12〜16である。
2種以上の(A)を含有する場合の(A)の具体例としては、
(A1);例えばメタクリル酸メチル/炭素数12〜15のアルキル基を有するメタクリル酸エステル/炭素数16〜20のアルキル基を有するメタクリル酸エステル(0〜22%/20〜90%/0〜20%)共重合体など、
(A2);例えばメタクリル酸ドデシル/メタクリル酸ヘキサデシル(10〜50%/50〜90%)共重合体[平均炭素数:12.3〜15.6]、メタクリル酸ドデシル/メタクリル酸テトラデシル(90〜70%/10〜30%)共重合体[平均炭素数:12.2〜12.6]、およびD23/HMA/OMA(30〜70%/5〜50%/3〜20%)共重合体[平均炭素数:13.7〜15.4]などが挙げられる。
【0033】
上記の(A1)又は(A2)は、潤滑油用添加剤組成物の形態ではなくて、それぞれ単独で基油に添加されてもよく、また、それぞれ単独で希釈剤に希釈されて添加されてもよい。例えば、(A1)と希釈剤からなる潤滑油用添加剤組成物と、(A2)と希釈剤からなる潤滑油用添加剤組成物とを、別々に基油に添加することもできる。
【0034】
本発明の粘度指数向上剤が添加される基油としては特に限定されないが、100℃における動粘度が1〜15mm2/s、好ましくは2〜5mm2/sであり、その粘度指数は通常80以上、好ましくは100以上、さらに好ましくは105〜180である。このような基油に本発明の粘度指数向上剤を配合した潤滑油組成物は、粘度指数がさらに高くなり省燃費性が良好となる。
【0035】
また、本発明の粘度指数向上剤が添加される基油の曇点(JIS K2269−1993年)は−5℃以下が好ましい。さらに好ましくは−15℃〜−60℃である。基油の曇点がこの範囲であるとワックスの析出量が少なく低温粘度が良好である。基油としては、溶剤精製油、イソパラフィンを含有するおよびまたは水素化分解による高粘度指数油、炭化水素系合成潤滑油(ポリαオレフィン系合成潤滑油)、エステル系合成潤滑油、ナフテン油などが挙げられる。これらのうち好ましくは、イソパラフィンを含有するおよびまたは水素化分解による高粘度指数油である。
【0036】
本発明の潤滑油組成物は、基油に対して粘度指数向上剤を(A)に換算して好ましくは0.5〜30%添加して製造される。
【0037】
潤滑油組成物がエンジン油の場合には、100℃の動粘度が3〜10mm2/sの基油に、(A)として0.5〜15%が添加されることが好ましい。
ギヤ油の場合には100℃の動粘度が3〜10mm2/sの基油に3〜30%が添加されることが好ましい。
自動変速機油(ATF、ベルトCVT油)の場合には100℃の動粘度が2〜6mm2/sの基油に2〜25%が添加されことが好ましい。
トラクション油の場合には100℃の動粘度が1〜5mm2/sの基油に0.5〜15%が添加されることが好ましい。
作動油の場合には100℃の動粘度が1〜10mm2/sの基油に0.5〜25%が添加されることが好ましい。
【0038】
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、他の添加剤、例えば清浄剤(スルフォネート系、サリシレート系、フェネート系、ナフテネート系等のCaやMg塩、炭酸カルシウム)を(A)の質量に基づいて0〜20%好ましくは0.1〜10%、分散剤(コハク酸イミド系;ヒ゛スタイフ゜、モノタイフ゜、ホ゛レートタイフ゜、マンニッヒ縮合物系等)を0〜20%、好ましくは0.2〜10%、抗酸化剤(ジンクジチオフォスフェート、アミン系;ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール系、チオリン酸亜鉛、トリアルキルフェノール等)を0〜5%好ましくは0.1〜3%、油性向上剤(長鎖脂肪酸系;オレイン酸、長鎖脂肪酸エステル;オレイン酸エステル、長鎖アミン系:オレイルアミン等、長鎖アミド;オレアミド)を0〜5%、好ましくは0.1〜1%、摩擦摩耗調整剤(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンカーバメイト、ジンクジアルキルジチオフォスフェート等)を0〜5%好ましくは0.1〜3%、極圧剤(硫黄リン系、硫黄系、リン系、クロル系等)を0〜20%好ましくは0.1〜10%、消泡剤(シリコーン油、金属石けん、脂肪酸エステル、リン酸エステル等)を2〜1000ppm、好ましくは10〜700ppm、抗乳化剤(4級アンモニウム塩、硫酸化油、リン酸エステル)を0〜3%、好ましくは0〜1%、腐食防止剤(ベンゾトリアゾールなどの窒素化合物、1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカルバメートなどの硫黄および窒素含有化合物)を0〜3%、好ましくは0〜2%含有してもよい。
【0039】
本発明の潤滑油組成物は、輸送用機器、各種工作機器などのエンジン油、ギヤ油、自動変速機油(ATF、CVT油)、トラクション油、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油などに使用される。
【0040】
<実施例>
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の%および部は質量%および質量部を表す。
(GPCによるZ平均分子量の測定法)
装置 : 東洋曹達製 HLC−802A
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
【0041】
(低温粘度の試験方法)
JPI−5S−26−85の方法で−40℃の粘度を測定した。
【0042】
(粘度指数の試験方法)
JIS−K−2283の方法で行った。
【0043】
(剪断安定性の試験方法)
JASO M347−95の方法で100℃の動粘度低下率を求めた。
【0044】
実施例1〜6、および比較例1;
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、および窒素吹き込み管を備えた反応容器に、鉱物油25部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、表1に記載の単量体を合計100部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン(DMと略記)を表1に記載の量、およびラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル:ADVNと略記)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル:AMBNと略記)を表1記載の量を仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに仕込む。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に密閉下85℃で4時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、得られたポリマーを130℃、3時間、減圧下で低沸成分を除去し共重合体(A−1)〜(A−6)、および(X−1)を得て、これらを粘度指数向上剤とした。得られた共重合体のZ平均分子量を表2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
実施例7〜12、比較例2
共重合体(A−1)〜(A−6)、および(X−1)のそれぞれ75部を鉱物油(溶剤精製油:100℃動粘度2.4mm2/s)25部にそれぞれ混合溶解させて、潤滑油添加剤組成物を作製し、それぞれを実施例7〜12および比較例2の潤滑油添加剤組成物とした。
【0048】
実施例13〜18、比較例3
撹拌混合装置の付いたステンレス製容器を用い、(A−1)〜(A−6)、(X−1)をそれぞれ含む潤滑油添加剤組成物を表3記載の添加量で基油(100℃の動粘度:3.0mm2/s、粘度指数:117)に溶解し、本発明の潤滑油組成物および比較例の潤滑油組成物を作製した。得られた潤滑油組成物の粘度指数、、剪断安定性および−40℃粘度の測定結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物は、従来のPMA系粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物と比べ粘度指数が改良でき、かつ、剪断安定性、低温粘度にも優れることから今後の自動車の省燃費性の要求に対応できる。従って、駆動系潤滑油(マニュアルトランスミッション油、デファレンシャルギヤ油、オートマチックトランスミッション油、ベルトCVT油など)、作動油(機械の作動油、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油など)、エンジン油(ガソリン用、ディーゼル用等)、トラクション油に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによって測定されるZ平均分子量が10,000〜1,000,000であり、炭素数1〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須構成単量体とする重合体(A)からなる粘度指数向上剤。
【請求項2】
重合体(A)が炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、炭素数8〜15のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)および炭素数16〜24のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)を構成単量体とし、単量体の合計質量に基づいて(a1)が0〜45質量%、(a2)が0.1〜100質量%および(a3)が0〜75質量%である請求項1記載の粘度指数向上剤。
【請求項3】
(A)が、さらに窒素原子含有ビニル単量体(d)を構成単量体とし、全単量体の質量に基づいて(d)が0.1〜10質量%である請求項1または2記載の粘度指数向上剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の粘度指数向上剤並びに希釈剤および/または他の添加剤からなる潤滑油用添加剤組成物。
【請求項5】
希釈剤が、粘度指数向上剤の質量に基づいて10〜900質量%である請求項4記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項6】
2種以上の異なる(A)を含有してなる請求項4または5記載の潤滑油用添加剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜3いずれか記載の粘度指数向上剤と基油を含有してなる潤滑油組成物。
【請求項8】
請求項4〜6いずれか記載の潤滑油添加剤組成物と基油を配合してなる潤滑油組成物。
【請求項9】
基油の100℃動粘度が1〜15mm2/sであり、かつ基油の粘度指数が100以上である請求項7または8記載の潤滑油組成物

【公開番号】特開2006−45277(P2006−45277A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225249(P2004−225249)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】