説明

粘着シートの製造方法及び粘着シート

【課題】 両面で異なる粘着特性を単層で実現することができる粘着シートを提供する。
【解決手段】 粘着シートを製造するにあたっては、少なくとも扁平形状の無機フィラーと溶媒に溶解した有機物とを混合して作製された溶液を所定の基材上に塗布し、基材上に塗布された溶液を常温で2分間以上乾燥させ、さらに、溶媒が十分に乾燥するような常温よりも高温で溶液を乾燥させ、厚み方向に対して傾斜構造を有する粘着シートを形成する。溶液は、無機フィラーを溶液全体の体積比で55%以上使用するとともに、有機物が溶解する溶媒を用いて2000cps以下の粘度に調整されたものであり、乾燥後の塗布厚みが50μm〜180μmとなるように基材上に塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に粘着性を有する粘着シート及び粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、厚み方向に対して構成成分等を連続的又は段階的に変化させた傾斜構造を有する傾斜機能材料が様々な分野で着目されている。厚みが少ないシート化製品においても、一部ではあるが、傾斜構造を有するものが知られている。
【0003】
有機物のみの材料から構成されるポリマーブレンドの相溶性を利用した傾斜機能材料としては、相分離傾斜構造ブレンドや相溶傾斜構造ブレンド、相反転傾斜構造ブレンドがある。相分離傾斜構造ブレンドは、溶液キャスト法によるものであり、ポリマーブレンド溶液をキャストし、そのときの相分離形成過程(自己組織化)を利用して傾斜構造を調整するものである。また、相溶傾斜構造ブレンドは、溶液拡散法によるものであり、第1のポリマーからなるフィルム上に、第1のポリマーが溶解する溶媒として第2のポリマーからなる溶液を注ぎ、第1のポリマーからなるフィルムが第2のポリマーからなる溶液中に拡散・溶解する速度と溶媒蒸発速度とを制御することによって傾斜構造を形成するものである。さらに、相反転傾斜構造ブレンドは、射出成型法によるものであり、成型プロセス条件と構成成分の粘度比とにより、厚み方向に対して海島構造が反転する傾斜構造を有するものである。
【0004】
また、有機バインダー中に1種類又は2種類以上の無機フィラーを添加し、その無機フィラーの量や存在比率を厚み方向に対して変化させることにより、電気的又は熱的な特性変化を得るような傾斜機能材料も提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。さらに、ポリマーブレンド系においても、傾斜構造を採用することにより、粘着性等の機械的物性を変化させることができることが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−73621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、いわゆるRFID(Radio Frequency IDentification)システムにおいて用いられるトランスポンダ等の分野において、磁気特性を付与した磁性シートを用いることが提案されている。しかしながら、かかる磁性シートにおいて、厚み方向で粘着性を変化させるために傾斜構造を有するものは存在していないのが現状である。
【0007】
現在、磁性シートの表面側と裏面側とで粘着特性を異なるものとする手法としては、簡易的には粘着シートをいずれかの面に貼付することが行われている。しかしながら、このような手法を採り得ない場合には、磁性シートを構成するバインダー自体に粘着性を付与するしかない。したがって、バインダーに粘着性を付与する手法においては、磁性シートの両面に粘着性が存在してしまい、接着させない面に対して粘着性のないフィルム等を貼付する必要が生じるという問題がある。
【0008】
また、近年では、磁性粉末の磁気特性を利用した磁性シートをフラットケーブル等に貼付して使用する態様もみられる。かかるフラットケーブルに貼付する手法としては、粘着剤を使用するのが一般的であるが、全体的な厚みの低減や加工コストの削減を図るためには、磁性シート自体に粘着性があることが望ましい。このとき、フラットケーブルに接着させない面については、粘着性がないことが条件となる。しかしながら、このような両面で異なる粘着特性を単層で実現するものは未だ存在していないのが現状である。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、両面で異なる粘着特性を単層で実現することができる粘着シート及び粘着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、粘着シートの製造に関して鋭意研究を重ねた結果、無機フィラーの周囲に存在する有機物の疎密を制御して厚み方向に対して傾斜構造を有するように製造することにより、両面で異なる粘着特性を単層で実現することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、上述した目的を達成する本発明にかかる粘着シートの製造方法は、表面に粘着性を有する粘着シートの製造方法であって、少なくとも扁平形状の無機フィラーと溶媒に溶解した有機物とを混合して所定の材料組成条件及び所定の粘度条件で作製された溶液を、所定の塗布条件で所定の基材上に塗布する塗布工程と、上記塗布工程にて上記基材上に塗布された上記溶液を常温で所定時間以上乾燥させる常温乾燥工程と、上記常温乾燥工程を経た上記溶液を、上記溶媒が十分に乾燥するような上記常温よりも高温で乾燥させ、厚み方向に対して傾斜構造を有する粘着シートを形成する高温乾燥工程とを備えることを特徴としている。
【0012】
このような本発明にかかる粘着シートの製造方法においては、溶液を常温で乾燥させる際に、扁平形状の無機フィラーの周囲に存在する溶液中に含まれる有機物の量が減少する。このとき、所定時間以上かけて常温乾燥を行うことにより、有機物は、その自重によって粘着シートの表面側から基材側に向かって沈降する。これにともない、粘着シートの表面側に存在する無機フィラーの周囲には、殆ど有機物成分がなくなり、また、粘着シートの表面は、無機フィラーのみが不均一に配列した形状となり、粗面となる。したがって、本発明にかかる粘着シートの製造方法によって製造された粘着シートは、乾燥後の粘着シートの表面側の粘着性が殆どなくなる一方で、裏面側については、常温乾燥の際に基材側に沈降した有機物が基材の平滑な表面形状を写した面形状となり、粘着性を有したものとなる。
【0013】
また、上述した目的を達成する本発明にかかる粘着シートは、表面に粘着性を有する粘着シートであって、少なくとも扁平形状の無機フィラーと溶媒に溶解した有機物とを混合して所定の材料組成条件及び所定の粘度条件で作製された溶液を主材料とし、一方の表面には粘着性を持たせる一方で、他方の表面側に存在する上記無機フィラーの周囲の上記有機物を少なくして当該他方の表面側の粘着性が低下するように、厚み方向に対して傾斜構造を有していることを特徴としている。
【0014】
このような本発明にかかる粘着シートにおいては、他方の表面側に存在する無機フィラーの周囲の有機物成分が殆どなくなり、また、その表面は、無機フィラーのみが不均一に配列した形状となり、粗面となる。したがって、本発明にかかる粘着シートは、他方の表面側の粘着性が殆どなくなる一方で、一方の表面側については、有機物が基材の平滑な表面形状を写した面形状となり、粘着性を有したものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表面側の粘着性が殆どなく、裏面側のみ粘着性を有するという、両面で粘着特性が異なる単層の粘着シートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
この実施の形態は、本発明にかかる粘着シートの製造方法を、フラットケーブル等に貼付して好適な磁性シートの製造に適用したものである。特に、この磁性シートは、無機フィラーの周囲に存在する有機物の疎密を制御して厚み方向に対して傾斜構造を有するように製造することにより、両面で異なる粘着特性を単層で実現することができるものである。
【0018】
まず、磁性シートの製造方法について説明するのに先立って、磁性シートの構成について説明する。
【0019】
磁性シートは、少なくとも、無機フィラーである磁性粉末と溶媒に溶解した高分子結合剤等の有機バインダーとを混合した溶液からなる磁性塗料を主材料として構成される。
【0020】
磁性粉末としては、扁平形状の軟磁性粉末が用いられる。扁平形状の軟磁性粉末を構成する磁性材料としては、任意の軟磁性材料を用いることができるが、例えば、磁性ステンレス(Fe−Cr−Al−Si系合金)、センダスト(Fe−Si−Al系合金)、パーマロイ(Fe−Ni系合金)、ケイ素銅(Fe−Cu−Si系合金)、Fe−Si系合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)系合金、Fe−Ni−Cr−Si系合金、Fe−Si−Cr系合金、Fe−Si−Al−Ni−Cr系合金等が好適である。これらの軟磁性材料からなる軟磁性粉末を用いて製造した磁性シートは、軟磁性粉末が軟磁気特性に優れることから、電波吸収体として好適に用いることができる。
【0021】
また、軟磁性粉末としては、扁平形状の軟磁性粉末を用いるが、長径が1〜200μmであり、扁平度が10〜50のものを用いるのが望ましい。扁平形状の軟磁性粉末の大きさを揃えるためには、必要に応じて、ふるい等を使用して分級すればよい。
【0022】
さらに、軟磁性粉末としては、例えばシランカップリング剤等のカップリング剤を用いてカップリング処理した軟磁性粉末を用いるようにしてもよい。カップリング処理した軟磁性粉末を用いることにより、扁平形状の軟磁性粉末と高分子結合剤界面との補強効果を高め、比重や耐食性を向上させることができる。カップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等を用いることができる。なお、カップリング処理は、予め軟磁性粉末に対して施しておいてもよいし、軟磁性粉末とバインダーとを混合する際に同時に混合し、その結果、カップリング処理が行われるようにしてもよい。
【0023】
一方、バインダー(高分子結合剤)としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、これらの共重合体を用いることができる。特に、バインダーとしては、加工性が良好で、扁平形状の軟磁性粉末を高密度に配向させることが可能な樹脂であるポリエステル系樹脂を用いることができる。バインダーとして用いるポリエステル系樹脂として、リン酸残基を有するリン内添ポリエステル系樹脂を用いてもよい。磁性シートは、このリン内添ポリエステル系樹脂を用いることにより、難燃性が付与されたものとすることができる。
【0024】
リン内添ポリエステル系樹脂は、上述したように、分子中にリン酸残基を有するものであり、その具体例としては、例えばリン変性飽和ポリエステル共重合体を挙げることができる。リン変性飽和ポリエステル共重合体は、飽和共重合ポリエステルの主骨格にリン成分が導入されているものであり、ポリエステル成分とリン成分とを共重合させることによって得られる。ここでポリエステル成分としては、エチレングリコールとテレフタル酸、ナフタレンカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸又はイソフタル酸とから形成される高分子化合物や、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸、アジピン酸又はセバシン酸とから形成される高分子化合物や、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸、セバシン酸又はイソフタル酸とから形成される高分子化合物等を使用することができる。また、リン成分としては、ホスフォネート型ポリオール、ホスフェート型ポリオール、ビニルホスフォネート、アリルホスフォネート等を使用することができる。このように主骨格にリン成分を導入したポリエステル共重合体は、単にポリエステルにリン成分を混合分散させたものよりも高い難燃性を呈する。
【0025】
リン内添ポリエステル系樹脂のリン含有率は、ポリエステル系樹脂の主骨格の種類、リン成分(リン酸残基)の種類、磁性シートを構成するその他の成分の種類に応じて、所定の難燃性を満足するように定めることができるが、リン含有率は0.5重量%〜4.0重量%である。リン含有率を0.5重量%未満であると難燃性が低く、難燃剤を多量に添加しなければ、十分な難燃性を得ることができない。また、4.0重量%を超えるとポリエステル系樹脂の分子量を大きくすることができなくなるため、機械的強度が低下してしまうことになる。
【0026】
また、リン内添ポリエステル系樹脂の数平均分子量は、8000〜50000であることが望ましい。数平均分子量が8000未満では、得られる磁性シートの機械的強度が不十分となる場合がある。一方、数平均分子量が50000より大きい場合には、得られる磁性シートが硬くなるため、所望の可撓性を得ることができない。そして、リン内添ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、−20℃〜40℃であることが望ましい。ガラス転移温度が−20℃以下になると高温下で弾性率が低下し、高温環境下又は高温高湿環境下において、軟磁性粉末同士の接着力が低下する。また、ガラス転移温度が40℃を超えると、室温での磁性シートの硬さが硬くなる。
【0027】
さらに、磁性塗料には、バインダーであるポリエステル系樹脂に相溶せずに、ポリエステル系樹脂に分散される分散粒子を添加するようにしてもよい。磁性シートは、この分散粒子により、表面が平滑となり、後の工程で圧縮する際にポリエステル系樹脂中の空気の噴出跡が残らないような良好な外観とすることができる。ここで、分散粒子は、絶縁性のものが望ましい。さらに、分散粒子が難燃剤であれば磁性シートに難燃性を付与することができる。
【0028】
難燃剤としては、任意のものを使用できるが、例えば亜鉛系難燃剤、窒素系難燃剤又は水酸化物系難燃剤が挙げられる。さらに、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等も挙げることができる。亜鉛系難燃剤としては、炭酸亜鉛、酸化亜鉛又はホウ酸亜鉛等が挙げられ、中でも炭酸亜鉛が望ましい。窒素系難燃剤としては、例えばメラミン(シアヌル酸トリアミド)、アムメリン(シアヌル酸ジアミド)、アムメリド(シアヌル酸モノアミド)、メラム、メラミンシアヌレート、ベンゾグアナミン等のメラミン誘導体を用いることができる。なお、ポリエステル系樹脂への分散性、混合性の観点から、メラミンシアヌレートを用いることが望ましい。また、難燃剤の代わりに、カーボンブラック、酸化チタン、窒化ホウ素窒化アルミニウム、アルミナ等を添加してもよい。
【0029】
分散粒子は、ポリエステル系樹脂の重量に対してその重量が7/13以下であることが望ましい。ポリエステル系樹脂に相溶せずに分散する分散粒子を添加する重量がポリエステル系樹脂の重量に対して7/13以下であれば、良好な磁気特性を有したまま、高温環境下又は高温高湿環境下での磁性シートの厚みが変化するという寸法変化を抑制することができ、良好な加工性を得ることができる。一方、ポリエステル系樹脂に対して分散粒子の重量を7/13より多くの量を添加すると、高温環境下又は高温高湿環境下での磁性シートの厚みの寸法変化は抑制できるが、加工性が低下してしまうことになる。
【0030】
また、ポリエステル系樹脂に相溶せずに分散する分散粒子の粒径は、0.01μm〜15μmであることが望ましい。分散粒子の粒径が0.01μm未満であれば、磁性シートの厚みの変化を抑制する効果が得られない。また、分散粒子の粒径が15μm以上であれば、磁気特性が低下することになる。
【0031】
磁性シートは、圧縮して製造する際に樹脂内の空気を排出してその比重を大きくするが、通常、圧縮によって空気の抜け道が制限されてしまう。また、多量に配合される軟磁性粉末が重なり、極めて薄い隙間までバインダーが行き渡らず、必然的に空隙が残ってしまう。これに対して、分散粒子を添加した磁性シートは、平滑に形成されるため、当該磁性シート内に含まれる空気量を少なくすることができ、比重を大きくすることができる。すなわち、磁性シートは、良好な磁性特性を得ることができるものとなる。また、磁性シートにおいては、圧縮によって比重を大きくすると、内部に含まれる空気量が少なくなるため、難燃性をさらに向上させることができる。
【0032】
また、磁性シートは、軟磁性粉末とバインダーとしてのポリエステル系樹脂との他に、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、例えばブロックイソシアネートが挙げられる。ブロックイソシアネートは、イソシアネート基(−NCO)が室温で反応しないように加熱によって解離(脱保護)できる保護基で保護されたイソシアネート化合物である。このブロックイソシアネートは、室温ではポリエステル系樹脂を架橋しないが、保護基の解離温度以上に加熱されることにより、保護基が解離し、イソシアネート基が活性化し、ポリエステル系樹脂が架橋される。
【0033】
なお、ブロックイソシアネートとしては、保護基の解離温度が120℃〜160℃の範囲のものを使用することが望ましい。この解離温度を120℃よりも高くすることで、基材上に塗布される磁性塗料の粘度を調整するために使用するメチルエチルケトンやトルエンを蒸発させ、形成される磁性シートを乾燥させることができる。一方、解離温度が120℃よりも低い温度である場合には、磁性塗料を基材上に塗布して、メチルエチルケトンやトルエンの沸点以上の温度で乾燥させるときに、ブロックイソシアネートの保護基が解離されてポリエステル系樹脂の架橋が進行してしまうおそれがある。また、基材に使用するフィルムの耐熱温度が160℃以下であるため、解離温度は160℃以下であることが望ましい。ポリエステル系樹脂を架橋する反応は、室温でもゆっくり進行するため、加熱終了後に全体を室温まで冷却し、長時間放置することにより、ポリエステル系樹脂が完全に架橋し、バインダーが完全に硬化することになる。
【0034】
また、ブロックイソシアネートは、バインダーであるポリエステル系樹脂に対して0.5重量%以上配合することが望ましい。これによって十分な効果を得ることができる。ブロックイソシアネートの配合量が0.5重量%未満であると、架橋が不十分となり、高温環境下又は高湿環境下において、厚みの変化が大きくなってしまうおそれがある。
【0035】
さらに、保護されていないイソシアネートを用いた場合には、磁性塗料を基材上に塗布して溶媒を乾燥してシート化する際に、ポリエステル系樹脂の架橋が進行してしまうため、圧縮しても良好な磁気特性を得ることができない。また、硬化が進んだものを圧縮するため、厚みが厚くなるような変化が大きくなる。
【0036】
ここで、扁平形状の軟磁性粉末をバインダーとしてのポリエステル系樹脂と混合し、高密度に充填することは容易なことではない。扁平形状の軟磁性粉末をバインダーと混合する場合には、混合中の負荷によって扁平形状の軟磁性粉末が粉砕されて小さくなったり、大きな歪みを受けて透磁率μ'を低下させたりする原因となるからである。そのため、扁平形状の軟磁性粉末とバインダーの混合には、溶媒に溶解させた高分子結合剤を使用し、極力扁平形状の軟磁性粉末に負荷を与えないように混合して磁性塗料とし、これを基材に塗布して磁性シートを製造することが望ましい。
【0037】
なお、磁性塗料の塗布時には、磁場を加えることにより、扁平形状の軟磁性粉末を面内方向に配向、配列させる効果が得られ、軟磁性粉末を高密度に充填することが可能となる。また、比重を向上させるために、乾燥した磁性シートを圧縮してもよい。磁性シートは、比重を大きくすることにより、内部に含まれる空気量が少なくなるため、さらに難燃性を向上させることができる。
【0038】
また、基材としては、フィルム状のものを用いることができ、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリプロピレノキサイドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム等を挙げることができる。また、その厚みは適宜選択することができ、例えば数μm〜数百μmとすることができる。さらに、磁性シート形成面には、離型剤が塗布されていることが望ましい。
【0039】
さらに、配向を容易に行うためにも、バインダーとしての樹脂は流動性の高いものにすることが望ましく、バインダーを溶媒に溶解させ、所定の粘度の磁性塗料とすることが望ましい。磁性塗料の粘度の調整には、各種溶媒を用いることができ、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等を用いることができる。また、磁性塗料の塗布形状を調整するために、ジアセトンアルコール等の高沸点溶媒を5%以下の少量だけ添加してもよい。
【0040】
磁性塗料の粘度は、コーターやドクターブレード法等を用いて塗布できるように調節すればよいが、あまり粘度を小さくしすぎるとバインダー成分が多くなるために、シート化した際に比重が小さくなってしまうという問題がある。固形分は、50%〜70%の範囲とすることが望ましい。固形分が70%以上で粘度が大きい場合には、塗布できなかったり、塗布する際にシートに筋が入ったりするという不都合が生ずる可能性がある。固形分を50%以下にすると、磁性塗料を基材上に塗布する際に基材上の離型剤ではじき等の問題が生じる。
【0041】
本発明の実施の形態として示す磁性シートは、このような構成からなる磁性塗料を主材料として製造される。以下では、かかる磁性シートの表面に粘着性を付与する製造方法について説明する。
【0042】
磁性シートにおいては、上述した有機バインダー等の有機物と無機フィラーである磁性粉末とが均一に存在している場合には、室温で粘着性を有する有機物を用いていると、当該磁性シートの両面に粘着性を呈することになる。本発明の実施の形態として示す磁性シートの製造方法においては、磁性塗料の材料組成、粘度、塗布条件及び乾燥条件を制御して、無機フィラーの周囲に存在する有機物の疎密による傾斜構造を厚み方向に対して持たせることにより、基材側を裏面とした場合に、当該裏面側には粘着性を持たせる一方で、表面側の粘着性を低下させることを実現する。
【0043】
まず、磁性シートを製造するにあたっては、扁平形状の磁性粉末を磁性塗料全体の体積比で55%以上使用することを材料組成条件とする。また、磁性シートを製造するにあたっては、有機バインダーが溶解する溶媒を用いて磁性塗料の粘度を2000cps以下に調整することを粘度条件とする。
【0044】
磁性シートを製造するにあたっては、このような材料組成及び粘度にしたがって作製した磁性塗料を、パイプコーター等の塗布機を用いて、乾燥後の塗布厚みが50μm〜180μmとなるようにギャップを調整し、所定の基材上に塗布する。これが磁性塗料の塗布条件である。
【0045】
そして、磁性シートを製造するにあたっては、このような塗布条件にしたがって所定の基材上に塗布された磁性塗料を、20℃〜40℃程度の常温空気を用いて2分間以上乾燥させた後、溶媒が十分に乾燥するような80℃〜115℃程度の高温で乾燥させて磁性シートを形成する。これが磁性塗料の乾燥条件である。なお、常温乾燥工程を最初に設けるのは、溶媒を不要に蒸発させないためである。また、高温乾燥工程における温度の上限として115℃としているが、この温度は、架橋剤が含有されている場合を考慮したものであり、その架橋剤の架橋開始温度よりも低いものとすればよい。さらに、高温乾燥は、溶媒の含有量が1%以下となる程度に行うのが望ましい。溶媒の含有量が1%以上ある場合には、乾燥した磁性シートを基材から剥離する際に、伸びたり、ちぎれたりする可能性があり、また、蒸発した溶媒が磁性シート表面に膨れとなって現れるためである。
【0046】
磁性シートは、このような製造方法にしたがって製造される。ここで、一連の製造過程のうち、磁性塗料を基材上に塗布した段階では、扁平形状の磁性粉末や溶媒が溶液内で自由に移動できるようないわばスラリー状とされるが、常温乾燥工程の際に、扁平形状の磁性粉末の周囲に存在する溶液中に含まれるバインダーの量が減少する。このとき、乾燥速度が遅い、すなわち、2分間以上もの長い時間をかけて常温乾燥を行うことから、バインダーは、その自重により、磁性シートの表面側から基材側に向かって沈降する。これにともない、磁性シートの表面側に存在する磁性粉末の周囲には、殆どバインダー成分がなくなり、また、磁性シートの表面は、磁性粉末のみが不均一に配列した形状となり、粗面となる。この粗面により、乾燥後の磁性シートは、表面側の粘着性が殆どなくなり、剥離用の基材等を用いなくとも巻き取ることができるものとなる。一方、磁性シートの裏面側は、常温乾燥工程の際に基材側に沈降したバインダーが、基材の平滑な表面形状を写した面形状となり、当該基材表面の平滑さ等の状態に応じて決定される粘着性を有したものとなる。なお、一連の常温乾燥工程及び高温乾燥工程をラインで行う場合には、基材上に塗布された磁性塗料を搬送するライン速度を調整することにより、乾燥時間を調整することになる。この場合、乾燥工程の過程において、バインダーのみならず磁性粉末も沈降するが、磁性シートを製造するにあたっては、磁性塗料の粘度と磁性粉末が磁性塗料内で沈降する時間とに応じて、ライン速度を決めればよい。
【0047】
なお、磁性シートにおいては、扁平形状の磁性粉末ではなく、球状の磁性粉末を用いて製造することも考えられるが、球状の磁性粉末を用いた場合には、上述した表面側の粘着性が低下する現象は生じにくい。具体的には、球状の磁性粉末の表面は、均一な形状であって凹凸がないことから、バインダーがその表面を覆いやすい。そのため、例えば図1に示すように、かかる球状の磁性粉末MSHを用いて作製した磁性塗料を所定の基材B上に塗布して乾燥させた場合には、磁性粉末MSHの粒径が35μm以下程度であれば、略均一に分散した磁性粉末MSHが乾燥後も略均一に分散した状態を維持し、これに起因して、磁性シートの表面は、略平坦な形状となり、磁性粉末MSHの表面に付着したバインダーによって粘着性を呈することになる。これに対して、扁平形状の磁性粉末は、その表面に微細なクラックや凹凸があるのが通常であり、「扁平形状」としても、平面形状のみならず、いずれかの方向に反っている場合が多い。したがって、例えば図2に示すように、かかる扁平形状の磁性粉末MNSHを用いて作製した磁性塗料を所定の基材B上に塗布して乾燥させた場合には、磁性粉末MNSHの端が磁性シートの表面から突き出た状態になりやすい。換言すれば、扁平形状の磁性粉末MNSHを用いた磁性シートの表面は、バインダーを均一に存在させることが困難であり、これに起因して、磁性粉末MNSHの表面にバインダーが接触しにくくなり、粘着性が低下することになる。
【0048】
以上説明したように、本発明の実施の形態として示した磁性シートの製造方法は、磁性塗料の材料組成、粘度、塗布条件及び乾燥条件を制御して、無機フィラーの周囲に存在する有機物の疎密による傾斜構造を厚み方向に対して持たせることにより、裏面側には粘着性を持たせる一方で、表面側の粘着性を低下させた単層の磁性シートを製造することができる。また、この製造方法によって製造された磁性シートを保管するにあたっては、表面側に粘着性がないことから、この表面側に剥離用フィルムを貼付しなくても問題がなく、かかるフィルムを使用する必要がないため、次工程でフィルムを剥離する工程をなくすことができる。さらに、磁気特性を制御するために磁性シートを重ね合わせて使用する場合があるが、表面側に粘着性がないことから、重ね合わせの際の位置合わせ作業が簡便となり、歩留まりを向上させることもできる。
【0049】
[実施例]
本願発明者は、実際に磁性シートを製造し、表面及び裏面の粘着性の有無、及び磁気特性(透磁率μ')を測定した。
【0050】
具体的には、次表1に示すように、材料組成及び粘度を変えた4種類の磁性塗料A〜Dを用意した。磁性塗料Aは、球状の磁性粉末として、粒度分布Dが50、平均粒径が35μmのFe−Si−Al系合金粉末(株式会社メイト製)を500重量部、バインダーとして、ガラス転移温度Tgが−20℃であるポリエステル系樹脂(UE3230;ユニチカ株式会社製)を100重量部、溶媒として、トルエンとメチルエチルケトン(MEK)との混合溶媒を用い、磁性粉末及びバインダーを固形分としたとき63%になるように調整して作製した。また、磁性塗料Bは、バインダー及び溶媒を磁性塗料Aと同一材料・同一配合として、磁性粉末を、粒度分布Dが50、平均粒径が45μmの扁平形状のFe−Si−Al系合金粉末(株式会社メイト製)に代え、これを500重量部用いて作製した。さらに、磁性塗料Cは、磁性塗料Bと同一材料を用いて、磁性粉末を300重量部に減らして作製した。さらにまた、磁性塗料Dは、磁性塗料Bと同一配合で、バインダーを、ガラス転移温度Tgが67℃であるポリエステル系樹脂(バイロン#200;東洋紡績株式会社製)に代えて作製した。これら磁性塗料A〜Dは、いずれも材料を所定の容器に封入し、撹拌機を用いて容器を回転させることによって作製した。なお、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒の組成は、トルエン/メチルエチルケトン=5/5〜9/1が望ましい。この範囲よりもメチルエチルケトンの組成割合が多い場合には、磁性塗料の塗布時に空気中の水分の影響を受け、磁性シートの表面形状の悪化を招来するためである。
【0051】
そして、比較例1では、磁性塗料Aを用い、比較例2、実施例1,2では、磁性塗料Bを用い、比較例3では、磁性塗料Cを用い、比較例4では、磁性塗料Dを用いた。実施例1,2、及び比較例1〜4のいずれにおいても、ロールコーターのギャップを500μmに設定し、基材としての剥離用PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に各磁性塗料を塗布し、常温乾燥工程として20℃、高温乾燥工程として80℃、115℃の温度勾配をかけた。このとき、ライン速度を異なるものとすることによって乾燥速度を変化させ、乾燥後の磁性シートの表面及び裏面のそれぞれの粘着性の有無と、磁気特性(透磁率μ')とを測定した。粘着性の有無は、タックテスターを用いて計測した結果、5g/cm以上の荷重が測定されたものについては"粘着性あり"とした。また、磁気特性は、磁性シートをφ7mmのトロイダルリング状に加工したサンプルの透磁率μ'をインピーダンスアナライザを用いて測定した。この結果を次表2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
(実施例1)
剥離用PET上に塗布した磁性塗料Bを、ライン速度を1.5m/minに設定して乾燥させ、磁性シートを得た。この結果、常温乾燥工程が2分間以上あることから、扁平形状の磁性粉末の間を通過してバインダーが基材側に沈降することによって傾斜構造を呈し、表面側は粗面となることによって粘着性がなくなり、裏面側は沈降したバインダーによる粘着性がみられた。また、磁気特性は、透磁率μ'が"25"と高く、良好な値となった。
【0055】
(実施例2)
剥離用PET上に塗布した磁性塗料Bを、ライン速度を1m/minに設定して乾燥させ、磁性シートを得た。すなわち、この実施例2は、実施例1よりも乾燥時間を長くしたものである。この結果、実施例1と同様に、表面側は粗面となることによって粘着性がなくなる一方で、裏面側は沈降したバインダーによる粘着性がみられ、また、磁気特性も良好な値となった。
【0056】
(比較例1)
剥離用PET上に塗布した磁性塗料Aを、ライン速度を1.5m/minに設定して乾燥させ、磁性シートを得た。すなわち、この比較例1は、球状の磁性粉末を用いて作製した磁性塗料を、実施例1と同じ乾燥時間だけ乾燥させたものである。この結果、バインダーは表面側よりも基材側に若干多く分布するものの、実施例1,2のように、十分な傾斜構造を呈するものとはならず、粘着性も表面及び裏面で差異がなかった。また、磁気特性は、透磁率μ'が"10"と低い値となった。
【0057】
(比較例2)
剥離用PET上に塗布した磁性塗料Bを、ライン速度を3m/minに設定して乾燥させ、磁性シートを得た。すなわち、この比較例2は、扁平形状の磁性粉末を用いて作製した磁性塗料を、1分間程度の短い常温乾燥工程にて乾燥させたものである。この結果、常温乾燥工程の時間が短いため、バインダーが基材側に移動する十分な時間がとれず、これに起因して傾斜構造を呈さず、表面側の粘着性に変化が確認できなかった。
【0058】
(比較例3)
剥離用PET上に塗布した磁性塗料Cを、ライン速度を1.5m/minに設定して乾燥させ、磁性シートを得た。すなわち、この比較例3は、扁平形状の磁性粉末の重量部を減らして作製した磁性塗料を、実施例1と同じ乾燥時間だけ乾燥させたものである。この結果、磁性粉末よりもバインダーの体積が上回るのに起因して、基材側へのバインダーの沈降があるものの、表面を粗面にする現象が物理的に発生せず、傾斜構造を呈するものとはならないため、表面側の粘着性に変化が確認できなかった。
【0059】
(比較例4)
剥離用PET上に塗布した磁性塗料Dを、ライン速度を1.5m/minに設定して乾燥させ、磁性シートを得た。すなわち、この比較例4は、ガラス転移温度が高いバインダーを用いて作製した磁性塗料を、実施例1と同じ乾燥時間だけ乾燥させたものである。この結果、バインダーのガラス転移温度が常温乾燥工程における温度よりも高く、この温度ではバインダーが凍結状態であるため、バインダーに粘着性がない。そのため、傾斜構造を呈したとしても、表面及び裏面ともに粘着性がみられなかった。
【0060】
これらの結果から、本発明にて提案した製造方法は、極めて有効であることがわかる。これら実施例1,2、及び比較例1〜4においては、磁性粉末としてFe−Si−Al系合金粉末を用いるとともに、バインダーとしてポリエステル系樹脂を用いたが、これら以外の磁性粉末と樹脂との組み合わせでも、同様の結果が得られることは容易に推察される。
【0061】
なお、上述した実施の形態では、粘着シートの具体例として磁性シートを用いて説明したが、本発明は、例えば金属塗料等、少なくとも扁平形状の無機フィラーと溶媒に溶解した有機物とを混合して作製された溶液を主材料とするものであって粘着性を有するものであれば適用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】球状の磁性粉末を用いて作製した磁性塗料を所定の基材上に塗布して乾燥させた場合の様子を説明するための図である。
【図2】扁平形状の磁性粉末を用いて作製した磁性塗料を所定の基材上に塗布して乾燥させた場合の様子を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
B 基材
SH,MNSH 磁性粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に粘着性を有する粘着シートの製造方法であって、
少なくとも扁平形状の無機フィラーと溶媒に溶解した有機物とを混合して所定の材料組成条件及び所定の粘度条件で作製された溶液を、所定の塗布条件で所定の基材上に塗布する塗布工程と、
上記塗布工程にて上記基材上に塗布された上記溶液を常温で所定時間以上乾燥させる常温乾燥工程と、
上記常温乾燥工程を経た上記溶液を、上記溶媒が十分に乾燥するような上記常温よりも高温で乾燥させ、厚み方向に対して傾斜構造を有する粘着シートを形成する高温乾燥工程とを備えること
を特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項2】
上記材料組成条件は、上記無機フィラーを上記溶液全体の体積比で55%以上使用することであり、
上記粘度条件は、上記有機物が溶解する上記溶媒を用いて上記溶液の粘度を2000cps以下に調整することであり、
上記塗布条件は、乾燥後の塗布厚みが50μm〜180μmとなるように上記基材上に上記溶液を塗布することであること
を特徴とする請求項1記載の粘着シートの製造方法。
【請求項3】
上記常温乾燥工程では、上記溶液を2分間以上乾燥させること
を特徴とする請求項1記載の粘着シートの製造方法。
【請求項4】
上記常温乾燥工程では、20℃〜40℃の常温空気を用いて上記溶液を乾燥させること
を特徴とする請求項3記載の粘着シートの製造方法。
【請求項5】
上記高温乾燥工程では、80℃〜115℃の温度で上記溶液を乾燥させること
を特徴とする請求項1又は請求項4記載の粘着シートの製造方法。
【請求項6】
上記常温乾燥工程及び上記高温乾燥工程では、上記溶液の粘度と上記無機フィラーが上記溶液内で沈降する時間とに応じて決定されるライン速度で、上記基材上に塗布された上記溶液を搬送すること
を特徴とする請求項1記載の粘着シートの製造方法。
【請求項7】
上記溶液には架橋剤が含有されており、
上記高温乾燥工程における乾燥温度は、上記架橋剤の架橋開始温度よりも低い温度であること
を特徴とする請求項1記載の粘着シートの製造方法。
【請求項8】
上記高温乾燥工程は、上記溶媒の含有量が1%以下となるように行われること
を特徴とする請求項1記載の粘着シートの製造方法。
【請求項9】
上記溶液は、上記無機フィラーとしての扁平形状の磁性粉末と上記溶媒に溶解した上記有機物としてのバインダーとを混合して作製された磁性塗料であり、
上記粘着シートは、上記磁性塗料を主材料として製造される磁性シートであること
を特徴とする請求項1記載の粘着シートの製造方法。
【請求項10】
表面に粘着性を有する粘着シートであって、
少なくとも扁平形状の無機フィラーと溶媒に溶解した有機物とを混合して所定の材料組成条件及び所定の粘度条件で作製された溶液を主材料とし、
一方の表面には粘着性を持たせる一方で、他方の表面側に存在する上記無機フィラーの周囲の上記有機物を少なくして当該他方の表面側の粘着性が低下するように、厚み方向に対して傾斜構造を有していること
を特徴とする粘着シート。
【請求項11】
上記溶液の塗布条件を制御しながら所定の基材上に塗布した当該溶液を常温で所定時間以上乾燥させ、さらに、上記溶媒が十分に乾燥するような上記常温よりも高温で乾燥させ、厚み方向に対して上記傾斜構造を有するように形成されていること
を特徴とする請求項10記載の粘着シート。
【請求項12】
上記材料組成条件は、上記無機フィラーを上記溶液全体の体積比で55%以上使用することであり、
上記粘度条件は、上記有機物が溶解する上記溶媒を用いて上記溶液の粘度を2000cps以下に調整することであり、
上記塗布条件は、乾燥後の塗布厚みが50μm〜180μmとなるように上記基材上に上記溶液を塗布することであること
を特徴とする請求項11記載の粘着シート。
【請求項13】
上記常温乾燥工程では、上記溶液を2分間以上乾燥させること
を特徴とする請求項11記載の粘着シート。
【請求項14】
上記溶液は、上記無機フィラーとしての扁平形状の磁性粉末と上記溶媒に溶解した上記有機物としてのバインダーとを混合して作製された磁性塗料であり、
当該粘着シートは、上記磁性塗料を主材料として製造される磁性シートであること
を特徴とする請求項10記載の粘着シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−111038(P2008−111038A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294651(P2006−294651)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】