説明

粘着シート

【課題】金属および/または金属酸化物層と粘着剤層の高い接着性を実現し、被着体に糊残りを引き起こすことなく、剥離することが可能な粘着シートを提供すること。
【解決手段】金属および/または金属酸化物層、水性ポリウレタン系易接着樹脂層、粘着剤層の順に積層されてなる粘着シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属および/または金属酸化物層と粘着剤層の接着性に優れた粘着シートに関するものである。さらに詳しくは、難接着性基材の一つであるアルミニウム等の金属および/または金属酸化物層を有する基材シートに対し、ポリウレタン系樹脂を易接着層として積層し、さらに粘着剤層を積層した粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープ、粘着ラベル等の粘着シートはさまざまな分野で使用されているが、その基材の一つとして、難接着性基材の一つであるアルミニウム等の金属および/または金属酸化物層を有する粘着シートが使用される場合がある。これらは高い意匠性を要求されるラベル、パッケージフィルム、ウィンドウフィルム、電磁波シールド材料等としてラベル、包装、建装、電気電子分野などにおいて広く使用されている。
このような基材においては、金属および/または金属酸化物表面が高平滑であるため、金属および/または金属酸化物層と粘着剤層の接着性が得られにくく、ロール裁断や打ち抜き加工等の二次加工を行った際の裁断刃への粘着剤の付着や粘着ロール端面の粘着剤のはみ出しが問題となりやすい。また、粘着シートを被着体に貼付して一定期間経過した後にシートを剥離した場合、粘着剤の一部が基材シートから剥がれて被着体側に剥ぎ取られてしまうことがしばしば起こる。このようなことを改善するため、基材シートと粘着剤層との接着性を向上させる手法が盛んに研究されている。
【0003】
基材シートと粘着剤層との接着性を向上させる易接着化の手法としては、基材シートに対するコロナ・プラズマ放電処理、紫外線・電子線照射処理、火炎処理、ラビング処理、エッチング処理やプライマー処理等があるが、金属および/または金属酸化物表面の易接着化の場合、アンカー・プライマーと呼ばれる易接着樹脂をコーティングする処理方法が通常よく用いられている。
【0004】
従来の易接着樹脂は、生産性、加工性の面から、有機溶剤に溶解した樹脂を塗布、乾燥させる溶剤系のものが主流であった。しかし近年、環境問題などの観点から、一般的に材料分野において、溶剤型樹脂から水系樹脂への移行が進んでいる。中でも、水を媒体として用いる水溶液型あるいはエマルション型においては、安全性も高く、コスト面でのメリットも出しやすいことなどから、多くの検討が行われている。しかし、水系の易接着樹脂の場合、乳化剤や粘性調整剤等の低分子量成分が表面に局在化するために易接着性が低下したり、本質的に耐水性が低いという欠点を有するため、性能面で溶剤系の易接着樹脂に劣る。
以上の理由から、接着性が得られにくい金属および/または金属酸化物表面への水系の易接着樹脂の適用は、これまで困難であった。
【0005】
このような水系の易接着樹脂として、熱可塑性エラストマー(A)とウレタン結合を有する樹脂(C)を同一粒子内に含むことを特徴とする水分散体、また、熱可塑性エラストマー(A)とウレタン結合を有する樹脂(C)とを反応させてなることを特徴とする水分散体、また、官能基で変性された熱可塑性エラストマー(B)とウレタン結合を有する樹脂(C)とを反応させてなることを特徴とする水分散体。さらに、前記熱可塑性エラストマー(A)が、プロピレン−1−ブテン共重合体であることを特徴とする水分散体(例えば、特許文献1参照)が公知である。
しかし、特許文献1の水分散体は、熱可塑性エラストマーを易接着性能発現のための必須成分としているため、特に粘着シートにおける基材シートを粘着剤層の接着性の向上を目的として使用する場合、その性能を発現させるには比較的高温、長時間を要する。また、高温条件下あるいは温水浸漬後に鋼板への接着強度が低下するという問題があった。
【0006】
一方、溶剤を用いない易接着樹脂としては、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーからなる主剤(A)とポリジエンポリオールの末端ヒドロキシル基含有誘導体からなる硬化剤(B)を含む無溶剤型ポリウレタン接着剤組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
特許文献2の無溶剤型ポリウレタン接着剤組成物は、水系ではないため樹脂層表面への乳化剤の局在化による易接着性の低下や耐水性の不足といった性能面での問題は解決し得るが、二液タイプの接着剤であるために工程が煩雑であり、塗布量や塗工面を制御するための粘度管理が必須で、かつ、樹脂の硬化反応に比較的高温、長時間を必要とするといった問題点がある。また、性能を発現させるためには、通常5g/m2以上の塗布量が必要であり、製造コストが上昇するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−144146公報
【特許文献2】特許3234157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような状況下でなされたものであり、耐熱性、耐水性に優れ、均一で極薄膜の易接着樹脂層を、金属および/または金属酸化物層に一般的なコーティング方法によって簡便に積層させ、かつ、粘着剤層との高い接着性を短時間、低エネルギーで実現させることを目的とする。さらには、ロール裁断や打ち抜き加工等の二次加工を行った際にも裁断刃への粘着剤の付着や粘着ロール端面の粘着剤のはみ出しが少なく、また、貼付から長期間高い粘着力を保持できるにもかかわらず、長期間貼付後あるいは温水浸漬後に剥離する場合は、被着体に糊残りを引き起こすことなく、剥離することが可能な粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、難接着性基材の一つである金属および/または金属酸化物層と粘着剤層との間に水性ポリウレタン系易接着樹脂層を介在させることで、接着性を向上させた粘着シートが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記
(1)金属および/または金属酸化物層、水性ポリウレタン系易接着樹脂層、粘着剤層の順に積層されてなる粘着シート、
(2)前記水性ポリウレタン系易接着樹脂層がシラノール基を有する樹脂から形成されたものである上記(1)に記載の粘着シート、
(3)水性ポリウレタン系易接着樹脂層が一液型水性ポリウレタン系易接着樹脂を用いて形成された層である上記(1)または(2)に記載の粘着シート、
(4)前記易接着樹脂層のガラス転移点が40℃以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着シート、
(5)前記金属層がアルミニウム層である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着シート、
(6)前記金属および/または金属酸化物層の水性ポリウレタン系易接着樹脂層が積層されていない面に樹脂フィルムが積層されてなる上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着シート、
(7)前記樹脂フィルムがポリエステルフィルムである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着シート、
(8)前記金属および/または金属酸化物層が樹脂フィルムに蒸着させることにより積層されてなる上記(6)または(7)に記載の粘着シートおよび
(9)前記易接着樹脂層の膜厚が5.0μm以下である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、難接着性基材の一つである金属および/または金属酸化物層に対して、易接着層として水性ポリウレタン系樹脂を積層させることで粘着剤層との接着性を向上させた粘着シートが得られる。この水性ポリウレタン系樹脂層は一般的なコーティング方法によって高平滑で極薄膜の易接着樹脂層として金属および/または金属酸化物層表面に形成させることが出来、耐熱性、耐水性に優れ、かつ、粘着剤層との高い接着性を短時間、低エネルギーで実現させることができる。また、低粘度、高固形分、水性であるため環境負荷が少なく、高速塗工適性にも優れる。さらに、得られた易接着樹脂層はタックがないため、オフライン加工も可能であり、長期間保存後または、低温環境下で粘着剤層と貼り合わせても易接着性能が発現する。
得られた粘着シートはロール裁断や打ち抜き加工等の二次加工を行った際にも裁断刃への粘着剤の付着や粘着ロール端面の粘着剤のはみ出しが少なく、また、貼付から長期間高い粘着力を保持するにもかかわらず、長期間貼付後に剥離しても被着体に糊残りを引き起こすことなく、容易に剥離することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について、詳細に説明する。
本発明において、粘着シートの支持体となる金属および/または金属酸化物層は特に限定されるものではなく、アルミニウム、亜鉛、錫、銅、ニッケル、クロム、銀、金、鉄、ビスマス、チタン、インジウム、パラジウム、バナジウム、タングステン、マンガン、タンタル、コバルト、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化珪素、酸化アンチモン、酸化ビスマス、および酸化亜鉛等が使用可能である。中でも、用途、コストおよび環境への影響の観点からアルミニウムが好ましい。
これらは単体またはこれらの複合材料として単層、または複数層積層させて粘着シートの支持体(基材シート)として使用でき、また、後述する樹脂フィルムを積層させて基材シートとしても良い。
これらの金属および/または金属酸化物層表面に易接着樹脂層を積層するに当たり、さらに接着力を向上させる目的で他の易接着処理(コロナ、プラズマ、火炎処理等)があっても良い。
金属酸化物層としては、金属酸化物自体を用いる他に、金属層の表面に酸化皮膜が形成されたものも用いることができる。酸化皮膜は金属層の表面に自然に形成されたものでもよいし、電気化学的処理等により人工的に形成されたものでもよい。
【0013】
金属および/または金属酸化物層はそれを単独で用いても良いし、樹脂フィルムと積層されたものであってもよい。金属および/または金属酸化物層に樹脂フィルムを積層する方法としては、公知の樹脂溶液または溶融樹脂のコーティング法、射出成型法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法等が利用できる。
一方、金属および/または金属酸化物を樹脂フィルムに積層させることも可能である。その方法としては、公知の真空蒸着法、電子ビーム真空蒸着法、PVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、電気メッキ法および無電解メッキ法などが利用できる。
金属および/または金属酸化物層の厚さは、特に制限されないが、樹脂フィルムが積層されない場合は5〜1000μm程度である。樹脂フィルムが積層される場合は1〜300nm程度である。
【0014】
上記樹脂フィルムとしては、特に限定はされず、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アセテート樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂フィルム、セロファン等の天然樹脂フィルム等が挙げられる。
これらの中で、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂からなるフィルムが好ましい。
これら合成樹脂フィルムは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向又は二軸方向に延伸されていてもよい。また、表面のサンドマット加工や樹脂中にフィラーが混合された練りこみマット加工がされていてもよく、さらに印字、印刷適性を付与するための印字、印刷コートやコロナ、プラズマ放電等の易接着処理、あるいはハードコートなどの表面処理がされていても良い。
樹脂フィルムの厚みは、特に制限はないが、通常、5〜200μmの範囲であり、取り扱い易さの面から、好ましくは25〜150μmである。
樹脂フィルムは、着色されていてもよいし、無色透明のものでもよい。また、樹脂フィルムの金属および/または金属酸化物層が積層される面またはその反対面には、印刷、印字等を施してもよい。
【0015】
本発明の粘着シートにおける易接着樹脂層は、前記金属および/または金属酸化物層に水性のポリウレタン系樹脂を塗布、乾燥させることで形成させることができる。
ここでいう水性とは、水にポリウレタン系樹脂を溶解させた水溶液の状態であってもよく、水にポリウレタン系樹脂を分散させた水分散の状態であっても良い。水分散型とするために、少量の乳化剤等の界面活性剤、分散剤を使用してもよく、それらを使用しない自己乳化、いわゆるソープフリーの水分散型としても良い。
【0016】
ポリウレタン系樹脂は1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物A(以下、活性水素基含有化合物Aとも記す)と、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物B(以下、イソシアネート基含有化合物Bとも記す)との反応生成物から成る。前記活性水素基含有化合物Aとしては、例えば活性水素を有する基として、アミノ基、水酸基、メルカプト基を有する化合物等が挙げられるが、イソシアネート基との反応速度、及び形成される易接着樹脂層の機械的物性を考えると、水酸基を有する化合物、特にポリオールが好ましい。また、前記水酸基を有する化合物の官能基数は易接着樹脂層の機械的物性を良好に保つという点から2〜6が好ましく、2〜4が特に好ましい。また、前記水酸基を有する化合物の分子量は最終的な易接着樹脂層の性能に与えるウレタン結合の濃度、及び製造上の作業性の点から200〜10,000が好ましく、300〜5,000が特に好ましい。
【0017】
水酸基を有する化合物としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール又はそれらの混合物さらに上記水酸基を有する化合物以外に、平均分子量を調節する目的で、分子量が62〜200の低分子量ポリオールを混合してもよい。これら低分子量ポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のポリエステルポリオールの製造に使用されるグリコール類や、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール類、ブタノール類、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等のモノオールも併用することができる。
【0018】
次に、イソシアネート基含有化合物Bについて説明する。イソシアネート基含有化合物Bとしては、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、
例えば1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス( イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、
例えばm−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω、ω’−ジイソシアネート−1、4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼンもしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えばトリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートヘキサン等のトリイソシアネート、
例えば4,4’−ジフェニルジメチルメタン−2,2’−5,5’−テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子量ポリオールの上記ポリイソシアネート単量体への付加体、例えば前述した分子量が200〜200,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等の上記ポリイソシアネート単量体への付加体等が挙げられる。
【0019】
前述したように、ポリウレタン系樹脂は活性水素基含有化合物Aと、イソシアネート基含有化合物Bとの反応生成物からなるが、さらに、イソシアネート基と反応可能な活性水素基と加水分解性ケイ素基を1分子内に少なくとも1個含有する化合物C(以下、加水分解性ケイ素基含有化合物Cとも記す)を活性水素基含有化合物Aおよびイソシアネート基含有化合物Bとの反応生成物に反応させ、シラノール基含有ポリウレタン樹脂としてもよい。シラノール基含有ポリウレタン樹脂からなる易接着樹脂層の耐熱性、耐水性、耐ブロッキング性、耐溶剤性が特に優れており、易接着樹脂層を設けた粘着シートにおいても耐熱性、耐水性、耐溶剤性が向上する。
シラノール基含有水性ポリウレタン樹脂中のシラノール基は、加水分解性ケイ素基含有化合物C中の加水分解性ケイ素基が水相中で加水分解されて生成したものである。このシラノール基含有水性ポリウレタン樹脂は、塗工剤は周囲に十分な水が存在するのでシラノール基同士が反応することなく安定に存在し、長期のポットライフが実現できる。そして、塗工剤の乾燥工程における水分の蒸発に伴なうシラノール基の脱水縮合反応によりシロキサン結合が生成し、耐熱性、耐水性、耐ブロッキング性、耐溶剤性に優れた易接着樹脂層が形成される。このため、シラノール基含有水性ポリウレタン樹脂からなる易接着樹脂層を設けることにより、粘着シートの耐熱性、耐水性も向上させることができる。
【0020】
加水分解性ケイ素基含有化合物Cの配合量は、活性水素基含有化合物Aとイソシアネート基含有化合物Bとを反応させ、イソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマー(以下、ポリウレタンプレポリマーDと記す)を合成し、その後加水分解性ケイ素基含有化合物Cを反応させる場合を例とする。この場合、ポリウレタンプレポリマーD中のイソシアネート基と加水分解性ケイ素基含有化合物C中の活性水素基の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が1.0以下になる量が好ましく、0.8以下になる量がより好ましい。この当量比が1.0以上であると分子中に導入される加水分解性ケイ素基の量も多くなるため必要以上に易接着樹脂層が硬くなり、可撓性等の性能が低下し、易接着性にも影響を与える場合がある。
【0021】
通常、前記シラノール基含有ポリウレタン樹脂中に含まれる前記シラノール基は、必ずしも前記シラノール基含有ポリウレタン樹脂の末端に結合している必要はなく、前記シラノール基含有ポリウレタン樹脂を構成する分子の主鎖の中間部分に結合していてもよい。実施の形態に係るポリウレタン水性組成物においては、架橋構造が易接着樹脂層の性能に与える効果の点から、前記シラノール基含有ポリウレタン樹脂を構成する分子の主鎖の中間部分に前記シラノール基を有するものが好ましい。
前記シラノール基含有ポリウレタン樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、3000以上が好ましい。また、ポリウレタン水性組成物中の前記シラノール基含有ポリウレタン樹脂の含有量は、粘度を余り増加させず、貯蔵安定性を保持するために60質量%以下が好ましく、10〜50質量%程度がより好ましい。
【0022】
分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂(以下、シラノール基含有ポリウレタン樹脂とも記す)中のシラノール基が脱水縮合反応する際には、硬化触媒として強塩基性第3級アミンを添加する。強塩基性第3級アミンは、前記ポリウレタン水性組成物を易接着樹脂層化する際に、特異的にシロキサン結合の形成触媒として働く。強塩基性第3級アミンは特に限定されるものではないが、室温域での架橋促進の観点から、pKaが11以上であるものが好ましい。これら強塩基性第3級アミンとしては、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,8−ジアザビシクロ[3.4.0]ノネン−5 等が挙げられる。
【0023】
前記強塩基性第3級アミンの含有量は、ポリウレタン水性組成物の固形分100質量部に対して0.001〜10質量部が好ましく、0.001〜7質量部がより好ましく、0.001〜5質量部がさらに好ましい。前記強塩基性第3 級アミンの含有量が0.001質量部未満では硬化速度が不十分であり、他方前記強塩基性第3級アミンの含有量が10質量部を越えると形成された易接着樹脂層の耐溶剤性、耐水性が低下する傾向が現れる。
【0024】
本発明におけるポリウレタン系易接着樹脂層のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)による測定で40℃以上であることが好ましい。Tgを40℃以上とすることで易接着樹脂層の表面がタックフリーとなり耐ブロッキング性が得られ、易接着樹脂の塗布、乾燥工程における滑り性を付与することができる。つまり、易接着剤層が形成された基材シートを一旦巻取ることが可能となり、後の粘着剤層との貼り合わせ工程をインラインだけでなく、オフラインでも行うことが出来る。
【0025】
本発明の粘着シートにおける水性ポリウレタン系易接着樹脂が水分散型である場合、その平均粒子径は、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。平均粒子径を300nm以下とすることにより、乾燥後に得られる易接着樹脂層の耐水性、金属および/または金属酸化物層への接着性が低下するのを防止する。
【0026】
本発明に係る水性ポリウレタン系易接着樹脂層には、適宜、顔料、着色剤、金属粉末、導電材、制震材、ブロッキング防止剤、可塑剤、溶剤、界面活性剤、分散剤、凍結溶融安定剤、中和剤、増粘剤、濡れ剤、消泡剤、滑り剤、防錆剤、帯電防止剤、架橋剤、粘着付与樹脂、無機フィラー、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。
【0027】
また、水性ポリウレタン系樹脂の塗工液としての固形分は60質量%以下が好ましく、10〜50質量%程度がより好ましい。粘度は1〜1,000mPa・s程度(BM型粘度計、60回転、25℃)、好ましくは1〜100mPa・sである。更に、pHは、通常6〜9の範囲にある。固形分、粘度及びpHが上記範囲内であると、塗工液の保存安定性、分散安定性、乾燥性、塗工性、及び取り扱いの面から好ましい。
【0028】
易接着樹脂層の厚みは特に制限はないが、5.0μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.03〜3.0μmである。0.03μm程度の極薄膜であっても易接着効果が発現するため、本質的に易接着樹脂層が形成されていれば易接着効果が得られるため、5.0μm以下とすることによりコストアップするのを防止する。
【0029】
水性ポリウレタン系易接着樹脂層を形成させるための方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法が使用可能であり、水性ポリウレタン系易接着樹脂の分散液を、例えば、ナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、グラビアコーター、バリオグラビアコーター、エアナイフコーター、バーコーター、スプレーコーター、インクジェットコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の塗布装置により金属および/または金属酸化物層上に塗布し、次いで乾燥させる方法が挙げられる。
【0030】
粘着剤層を易接着樹脂層上へ形成させる方法としては、粘着剤液を後で述べる剥離シートへ塗布、乾燥して粘着剤層を形成させた後、金属および/または金属酸化物層上に形成された易接着樹脂層と貼り合わせる転写塗工法、易接着樹脂層へ直接粘着剤液を塗布、乾燥して粘着剤層を形成させた後、剥離シートと貼り合わせる直接塗工法を選択することができる。また、両面を剥離シートに挟まれた基材レス粘着剤層の一方の剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を金属および/または金属酸化物層上に形成された易接着樹脂層と貼り合わせることも出来る。
【0031】
粘着剤としては公知のものが使用できる。例えば、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ゴム系、EVA系、シリコーン系が使用できるが、取り扱いやすさの点から特にアクリル系、ウレタン系、ゴム系が好ましい。粘着剤層の厚みは特に制限はないが、通常、10〜50μm、好ましくは15〜35μmである。粘着剤層の形成方法としては、特に制限はなく、従来公知の塗布方法が使用可能であり粘着剤液を、例えば、ナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、グラビアコーター、バリオグラビアコーター、エアナイフコーター、バーコーター、スプレーコーター、インクジェットコーター、ダイコーター、カーテンコーター装置等により塗布し、次いで乾燥させることにより粘着剤層を形成させる方法が挙げられる。
【0032】
剥離シートとしては、剥離シート用の基材の片面または両面に剥離処理を施したものが用いられる。剥離シート用の基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、紙、合成紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。
剥離処理剤としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂などのゴム系エラストマー、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル含有樹脂など公知の剥離処理剤を使用することが可能である。
剥離処理剤の層の厚みは0.05〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1.5μmである。
剥離シート用の基材の厚みは、特に制限はなく、通常、30〜200μmである。
【0033】
本発明の粘着シートはその製造過程において、基材シート(金属および/または金属酸化物層のみからなるもの、あるいは樹脂フィルムに金属および/または金属酸化物層が形成されているもの)に易接着樹脂を積層した易接着樹脂層担持基材シートの状態で巻き取ってもブロッキングすることがない。また、易接着樹脂層担持基材シート上に粘着剤層を形成させて粘着シートとしたのち、JIS Z0237に準拠した粘着力測定を行った際にも、被着体のステンレス板には粘着剤残りが発生しない。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例および比較例によりさら詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0035】
<実施例1>
シラノール基含有水性一液型ポリウレタン系易接着樹脂「タケラックWS−4000」〔三井化学ポリウレタン(株)製〕100質量部をイオン交換水800質量部で希釈し(固形分3質量%)、基材シートであるアルミ蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルム「メタルミーS#50」〔東レフィルム加工(株)製〕のアルミ蒸着面に、ワイヤーバー〔熊谷理機工業(株)製〕を用いて乾燥後に形成される層の厚みが0.05μmとなるように塗工し、100℃のオーブンにて30秒間乾燥させ、易接着樹脂層担持基材シートを作製した。その後得られた易接着樹脂層担持基材シートを室温になるまで放置した後、易接着樹脂層の耐ブロッキング性試験を行った。
次いで、アクリル系エマルション型粘着剤「オリバインBPW5012」〔東洋インキ製造(株)製〕をアプリケーター〔テスター産業(株)製〕を用いて乾燥後の塗布量が20g/m2となるように先に形成した易接着樹脂層担持基材シートの易接着樹脂層表面へ塗工し、100℃のオーブンにて60秒間乾燥させ、粘着剤層を形成させた。さらに、粘着剤層に剥離シート「SP−8Kアオ」〔リンテック(株)製〕の剥離処理面を貼り合わせて粘着シートを作製した。
上記のようにして得られた粘着シートを用いて、耐粘着剤はみ出し性、耐熱性および耐水性の評価を行った。
【0036】
<実施例2>
シラノール基含有水性一液型ポリウレタン系易接着樹脂を「タケラックWS−5100」〔三井化学ポリウレタン(株)製〕とした以外は実施例1と同様に行い、易接着樹脂層担持基材シートを作製しブロッキング性試験を行った。
また、粘着剤層は予め剥離シート「SP−8Kアオ」〔リンテック(株)製〕の剥離処理面にアクリル系エマルション型粘着剤「オリバインBPW5012」〔東洋インキ製造(株)製〕をアプリケーター〔テスター産業(株)製〕を用いて乾燥後の塗布量が20g/m2となるように形成し、100℃のオーブンにて60秒間乾燥させ、23℃50%RH環境下で一週間静置したものを得られた易接着樹脂層担持基材シートの易接着樹脂層表面へ貼り合わせた以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製し、耐粘着剤はみ出し性、耐熱性および耐水性の評価を行った。
【0037】
<実施例3>
シラノール基含有水性一液型ポリウレタン系易接着樹脂「タケラックWS−5100」〔三井化学ポリウレタン(株)製〕100質量部をイオン交換水50質量部で希釈し(固形分20質量%)、基材シート、アルミ蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルム「メタルミーS#50」〔東レフィルム加工(株)製〕のアルミ蒸着面に、ワイヤーバー〔熊谷理機工業(株)製〕を用いて乾燥後に形成される易接着樹脂層の厚みが1.0μmとなるように塗工し、100℃のオーブンにて30秒間乾燥させ、易接着樹脂層担持基材シートを作製した。その後得られた易接着樹脂層担持基材シートを室温になるまで放置した後、ブロッキング性試験を行った。
次いで、アクリル系溶剤型粘着剤「オリバインBPS5375」〔東洋インキ製造(株)製〕100質量部にイソシアネート系架橋剤「BHS8515」〔東洋インキ製造(株)製〕1部を加えて攪拌し、アプリケーター〔テスター産業(株)製〕を用いて乾燥後の塗布量が20g/m2となるように先に形成した易接着樹脂層担持基材シートの易接着樹脂層表面へ塗工し、100℃のオーブンにて60秒間乾燥させ、粘着剤層を形成させた以外は実施例1と同様に粘着シートを作製し、耐粘着剤はみ出し性、耐熱性および耐水性の評価を行った。
【0038】
<実施例4〜7>
用いた粘着剤の種類をウレタン系溶剤型粘着剤「サイアバインSP−210」〔東洋インキ製造(株)製〕100質量部にイソシアネート系架橋剤「T−501B」〔東洋インキ製造(株)製〕3質量部を加えて攪拌したもの(実施例4)に、ゴム系溶剤型粘着剤「オリバインBPS2411」〔東洋インキ製造(株)製〕(実施例5)に、溶剤型ポリエステル系粘着剤「ニチゴーポリエスターX1-0002〔日本合成化学工業(株)製〕(実施例6)に、シリコーン系溶剤型粘着剤「SD4580」〔東レ・ダウコーニング(株)製〕100質量部に白金触媒「SRX212」〔東レ・ダウコーニング(株)製〕0.9質量部を加えて撹拌したもの(実施例7)に変更した以外は、実施例3と同様に粘着シートを作製し、耐粘着剤はみ出し性、耐熱性および耐水性の評価を行った。
【0039】
<実施例8〜11(シラノール基を含有していない易接着樹脂を用いた場合)>
用いた易接着樹脂の種類を水性ポリウレタン系易接着樹脂「タケラックW−605」〔三井化学ポリウレタン(株)製〕100質量部にイソシアネート系架橋剤「タケネートWD−725〔三井化学ポリウレタン(株)製〕5質量部を加えて攪拌した二液型のポリウレタン系易接着樹脂(実施例8)に、水性一液型エーテル変性ポリウレタン系易接着樹脂「スーパーフレックス110」〔第一工業製薬(株)製〕(実施例9)に、水性一液型エステル・エーテル変性ポリウレタン系易接着樹脂「スーパーフレックス150」〔第一工業製薬(株)製〕(実施例10)に、水性一液型エステル・エーテル変性ポリウレタン系易接着樹脂「スーパーフレックス170」〔第一工業製薬(株)製〕(実施例11)に変更した以外は実施例1と同様にして易接着樹脂層担持基材シートのブロッキング性試験、粘着シートの耐粘着剤はみ出し性、耐熱性および耐水性の評価を行った。
【0040】
<比較例1〜6(基材シートに易接着樹脂層を形成していない例)>
易接着樹脂層を形成せずに基材シート、アルミ蒸着PET「メタルミーS#50」〔東レフィルム加工(株)製〕のアルミ蒸着面に粘着剤層を直接積層した以外は、実施例1、実施例3〜7と同様に粘着シートを作製し、耐粘着剤はみ出し性、耐熱性および耐水性の評価を行った。
の評価を行った。
【0041】
<比較例7〜10(ポリウレタン系以外の易接着樹脂を使用した例)>
用いた易接着樹脂の種類を水性ポリエステル・アクリル複合系易接着樹脂「ペスレジンA−515GE」〔高松油脂(株)製〕(比較例7)に、水性ポリエステル・アクリル複合系易接着樹脂「ペスレジンA−515GE」〔高松油脂(株)製〕100質量部に水性オキサゾリン系架橋剤「エポクロスWS−700」〔(株)日本触媒製〕3質量部を加えて攪拌したもの(比較例8)に、水性一液型ポリエステル系易接着樹脂「バイロナールMD−1245」〔東洋紡績(株)製)」(比較例9)に、水性一液型ポリオレフィン系易接着樹脂「アローベースSD−Y01」〔ユニチカ(株)製〕(比較例10)に変更した以外は実施例1と同様に易接着樹脂層担持基材シートのブロッキング性、粘着シートの耐粘着剤はみ出し性、耐熱性および耐水性の評価を行った。
【0042】
<比較例11〜13(易接着樹脂を積層した層が金属および/または金属酸化物層以外である例)>
用いた基材シートの種類をポリプロピレンフィルム「アルファンSY−202#60」〔王子特殊紙(株)製〕(比較例11)に、ポリエチレンフィルム「PEワダニュウハク70LF3」〔ジェイフィルム(株)製〕(比較例12)に、ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーPET50T−60トウレ」〔東レ(株)製〕(比較例13)に変更した以外は実施例1と同様に易接着樹脂層担持基材シートのブロッキング性試験、粘着シートの耐熱粘着力、耐水粘着力および耐はみ出し性の評価を行った。
実施例1〜11における各成分のシート構成等およびその評価結果をまとめて表1に、比較例1〜6におけるそれらを表2に、比較例7〜13におけるそれらを表3に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
表1〜3に記載の物性測定および性能評価は、下記の測定方法に従って行なった。
(1)ガラス転移温度(Tg)
JISK7121に準拠して、示差走査熱量計「DSC Q2000」〔TAインスツルメント・ジャパン(株)製〕を使用して昇温速度20℃/分で測定した。
(2)易接着性樹脂層の厚み
「高速分光エリプソメーターM2000」〔J.A.Woollamジャパン(株)製〕を使用して測定した。
(3)易接着性樹脂層の耐ブロッキング性試験
易接着樹脂層担持基材シート作製後、23℃、50%RH環境下で、50mm×100mmにカットした易接着樹脂層担持基材シートを5枚重ねたものを台紙で挟み、試験試料とした。この試験試料に1kgの錘を乗せ、70℃ドライ環境下、60℃、95%RH環境下にそれぞれ7日間放置した。7日後に各環境下から試験試料を取り出し、23℃、50%RH環境下で1日静置した後、ブロッキング性評価を行った。評価は、積層した易接着樹脂層担持基材シートを順に1枚ずつ剥離し、剥離した際の剥離音、剥離表面の目視観察、易接着樹脂層表面の指触タックにて総合的に判断した。
○:ブロッキングなし
×:ブロッキングあり
(4)耐粘着剤はみ出し性
粘着シート作製後、23℃、50%RH環境下で25mm×100mmにカットした粘着シート試験片を100枚重ね、ギロチン断裁機にて断裁した際のギロチン刃、粘着シートの断裁面を目視観察した。
○:粘着剤のはみ出しがなく、ギロチン刃、断裁面にベトツキがなく良好。
△:若干粘着剤のはみ出しがあり、ギロチン刃、断裁面にベトツキがあるが、実用上問題
ないレベル。
×:粘着剤のはみ出しが酷く、実用上問題となるレベル。
(5)耐熱性
粘着シート作製後、23℃、50%RH環境下で、25mm×300mmにカットした粘着シート試験片を被着体(SUS420)に貼付した。40℃、dry環境下で7日静置したのちに23℃、50%RH環境下へと戻し、1日静置したものを試験サンプルとした。JIS Z0237に基づき、粘着力を180°引き剥がし法による引張り速度300mm/分にて測定するとともに、測定後の被着体上の汚染を目視で評価した。
○:被着体汚染なし
×(A):易接着樹脂層と粘着剤層が被着体上に残留した(基材シートと 易接着樹脂層との界面破壊)。
×(B):粘着剤層が被着体上に残留した(基材シートと粘着剤との界面破壊)。
×(C):粘着剤層が被着体上に残留した(易接着樹脂層と粘着剤との界面破壊)。
(6)耐水性
粘着シート作製後、23℃、50%RH環境下で、25mm×300mmにカットした粘着シート試験片を被着体(SUS420)に貼付した。23℃、50%RH環境下で1日静置後、40℃の温水に1日間浸漬したのちに23℃、50%RH環境下へと戻し、取り出し直後の状態を試験サンプルとした。JIS Z0237に基づき、180°引き剥がし法による引張り速度300mm/分での粘着力を測定するとともに、測定後の被着体上の汚染を目視で評価した。
○:被着体汚染なし
×(A):易接着樹脂層と粘着剤層が被着体上に残留した(基材シートと 易接着樹脂層との界面破壊)。
×(B):粘着剤層が被着体上に残留した(基材シートと粘着剤との界面破壊)。
×(C):粘着剤層が被着体上に残留した(易接着樹脂層と粘着剤との界面破壊)。
【0047】
表1〜3から、実施例1〜11で得られた易接着樹脂層担持基材シートは、タックがなく、ブロッキングが発生せず、耐熱性にも優れていることがわかる。
また、実施例1〜11で得られた粘着シートは各層間(金属および/または金属酸化物−易接着樹脂層、易接着樹脂層−粘着剤)の接着力が高いため、耐粘着剤はみ出し性試験においても、粘着剤層のズレが生じないため、粘着剤のはみ出しがなく、耐熱性、耐水性にも優れていることがわかる。
一方、比較例1〜13で得られた粘着シートでは、「耐粘着剤はみだし性」が劣っているものが多く、また、全ての比較例において「耐熱性」および「耐水性」が劣っていることが示されている。
さらに、比較例11〜13から、本発明の粘着シートにおける水性ポリウレタン系易接着樹脂層が金属および/または金属酸化物層と粘着剤層の接着性向上に、特に有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
難接着性基材の一つであるアルミニウム等の金属および/または金属酸化物層を有する粘着シートとして、高い意匠性を要求されるラベル、パッケージフィルム、ウィンドウフィルム、電磁波シールド材料等としてラベル、包装、建装、電気電子分野などにおいて広く使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属および/または金属酸化物層、水性ポリウレタン系易接着樹脂層、粘着剤層の順に積層されてなる粘着シート。
【請求項2】
前記水性ポリウレタン系易接着樹脂層がシラノール基を有する樹脂から形成されたものである請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
水性ポリウレタン系易接着樹脂層が一液型水性ポリウレタン系易接着樹脂を用いて形成された層である請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記易接着樹脂層のガラス転移点が40℃以上である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
前記金属層がアルミニウム層である請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項6】
前記金属および/または金属酸化物層の水性ポリウレタン系易接着樹脂層が積層されていない面に樹脂フィルムが積層されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
前記樹脂フィルムがポリエステルフィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項8】
前記金属および/または金属酸化物層が樹脂フィルムに蒸着させることにより積層されてなる請求項6または7に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記易接着樹脂層の膜厚が5.0μm以下である請求項1〜8のいずれかに記載の粘着シート。

【公開番号】特開2010−195862(P2010−195862A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39479(P2009−39479)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】