説明

粘着剤組成物、粘着剤及び光学フィルム

【課題】(メタ)アクリル酸エステル重合体と、帯電防止剤としてのカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドとを、所定割合にて含有させることで、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、耐久環境下における耐久性に優れた粘着剤組成物、粘着剤及び光学フィルムを提供する。
【解決手段】粘着剤組成物、粘着剤及びそれを用いた光学フィルムにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、帯電防止剤としてカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを0.05〜15重量部の範囲内の値で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤及び光学フィルムに関する。特に、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、粘着力及び耐久環境下における耐久性にも優れた粘着剤組成物、粘着剤及び光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置の製造は、2枚のガラス板の間に液晶成分を挟持させた液晶セルの表面に対し、偏光板を積層させることにより行われている。
かかる偏光板の積層は、偏光板の片面に設けられた粘着剤層を、液晶セルの表面に対して当接させた後、押し付けることで行われている。
【0003】
しかしながら、偏光板を液晶セルに対して貼合する際には、一般に、偏光板の粘着剤層に積層されている剥離フィルムを剥離することになるが、このとき、静電気が発生しやすく、偏光板側にも帯電してしまうため、かかる静電気による液晶表示装置への悪影響が問題となっていた。
より具体的には、静電気の発生により、偏光板表面にゴミが付着しやすくなったり、液晶配向に乱れが生じやすくなったり、周辺回路素子の静電破壊が生じやすくなったりするという問題が見られた。
また、同様に、一度、液晶セルに対して貼合した偏光板を、貼合ミス等の理由により再貼合する場合にも、静電気が発生しやすいという問題が見られた。
【0004】
そこで、かかる静電気の問題を解決すべく、特定の塩を特定の溶媒に溶解させてなる導電性付与剤、及びそれを含んだ粘着剤等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
すなわち、特許文献1には、下記一般式(1)で示されるビス(フルオロスルホニル)イミド及びアルカリ金属イオンからなる塩が、ポリエーテルポリオールに溶解されてなる導電性付与剤、及びそれを含んだ粘着剤等が開示されている。
【0005】
【化1】

【0006】
(一般式(1)中、Mはカチオン成分を示す。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−163271号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された導電性付与剤は、その実施例からも明らかなように、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩におけるカチオンを、アルカリ金属イオンについては、実質的にリチウムイオンに限定しているため、導電性の付与が不十分になりやすく、静電気の発生を安定的に抑制することが困難であるという問題が見られた。
また、高温環境下に長時間曝された場合には、導電性付与剤がブリードしたり、析出したりしやすく、粘着力や耐久性が低下しやすいという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明者等は、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、(メタ)アクリル酸エステル重合体と、帯電防止剤としてのカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドとを、所定割合にて含有させることで、フィルムを被着体からを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、耐久環境下における耐久性にも優れた粘着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、粘着力及び耐久環境下における耐久性にも優れた粘着剤組成物、粘着剤及び光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、帯電防止剤としてカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを0.05〜15重量部の範囲内の値で含むことを特徴とする粘着剤組成物が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の粘着剤組成物であれば、(メタ)アクリル酸エステル重合体と、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドとを、所定割合にて含有させていることから、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが有する優れた帯電防止性を、有効に発揮させることができる。
したがって、本発明の粘着剤組成物であれば、硬化させてフィルム貼合用の粘着剤として使用した際に、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、粘着力に優れるとともに、耐久環境下においても優れた耐久性を発揮させることができる。
また、本発明の粘着剤組成物であれば、近年、リチウム電池等の普及により需要が増加しているリチウムを用いることなく、カリウムによって所定の帯電防止性を得られることから、経済的な面においても有利である。
【0011】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが、分散媒に分散された状態で(メタ)アクリル酸エステル重合体に対して添加されるとともに、当該分散媒が、アルキレングリコールジアルキルエーテルであることが好ましい。
このように構成することにより、粘着剤組成物中におけるカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの帯電防止性を、効果的に向上させることができるとともに、かかる分散媒自体が、粘着剤からブリードすることについても、効果的に抑制することができる。
【0012】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、アルキレングリコールジアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン鎖の繰り返し単位数が、2〜10の範囲内の値であることが好ましい。
このように構成することにより、粘着剤組成物中におけるカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの帯電防止性を、より効果的に向上させることができるとともに、かかる分散媒自体が、粘着剤からブリードすることについても、より効果的に抑制することができる。
【0013】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の混合割合(モル比)が、30:70〜70:30の範囲内の割合であることが好ましい。
このように構成することにより、粘着剤組成物中におけるカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの帯電防止性を、さらに効果的に向上させることができるとともに、かかる分散媒自体が、粘着剤からブリードすることについても、さらに効果的に抑制することができる。
【0014】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、イソシアナート系架橋剤をさらに含むとともに、当該イソシアナート系架橋剤の含有量が、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内の値であることが好ましい。
このように構成することにより、粘着剤とした際の粘着力や貯蔵弾性率を、より好適な範囲に調節することができる。
【0015】
本発明の別の態様は、粘着剤であって、下記工程(1)〜(3)を含む工程を経て形成されることを特徴とする粘着剤である。
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、帯電防止剤としてカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを0.05〜15重量部の範囲内の値で含む粘着剤組成物を準備する工程
(2)粘着剤組成物を、剥離フィルムに対して塗布して、粘着剤組成物層を形成する工程
(3)粘着剤組成物層を硬化させて、粘着剤層とする工程
すなわち、このように構成することにより、フィルム貼合用の粘着剤として使用した際に、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、粘着力に優れるとともに、耐久環境下においても耐久性に優れた粘着剤を、剥離フィルム上において安定的に得ることができる。
したがって、偏光板等の光学フィルム等に対して、効率的に粘着剤を積層させることができる。
【0016】
また、本発明のさらに別の態様は、フィルム基材上に、上述した粘着剤を含む粘着剤層を備えてなる光学フィルムである。
すなわち、このように構成することにより、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、粘着力に優れるとともに、耐久環境下においても耐久性に優れた光学フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)〜(e)は、粘着剤組成物等の使用態様、及び光学フィルムの製造方法を説明するために供する概略図である。
【図2】図2は、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量と、粘着剤の表面抵抗率及び粘着力と、の関係を説明するために供する図である。
【図3】図3(a)〜(e)は、粘着剤組成物等の使用態様、及び光学フィルムの製造方法を説明するために供する別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、帯電防止剤としてカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを0.05〜15重量部の範囲内の値で含むことを特徴とする粘着剤組成物である。
すなわち、例えば、図1(a)〜(e)に例示するような態様で用いられる粘着剤組成物1である。
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0019】
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体
(1)種類
まず、本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。
本発明における(メタ)アクリル酸エステル重合体の構成単位としての(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルを使用することが好ましい。
この理由は、(メタ)アクリル酸エステルにおけるアルキル基の炭素数が20よりも大きな値となると、貯蔵弾性率が過度に低くなり、耐久性が不十分になりやすくなる場合があるためである。一方、かかるアルキル基の炭素数が過度に小さいと、貯蔵弾性率が過度に大きくなって、逆に耐久性が不十分になりやすくなる場合があるためである。
このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル及び(メタ)アクリル酸ステアリル等の少なくとも一種に由来したものが挙げられる。
【0020】
また、貯蔵弾性率をより好適な範囲に調節する観点からは、(メタ)アクリル酸エステルにおけるアルキル基の炭素数を、2〜18の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜12の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0021】
また、分子内に官能基を有する単量体を使用することも好ましい。
例えば、官能基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基の少なくとも1種を含むことが好ましく、具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。
【0022】
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、炭素数が20より大きなアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等の単量体を使用することも可能である。
【0023】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体が、構成単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基からなる群より選択される少なくとも一種を有する単量体と、を含むとともに、これらの共重合比(重量基準)を99.9:0.1〜80:20の範囲内の割合とすることが好ましい。
この理由は、(メタ)アクリル酸エステル重合体をこのように構成することにより、所望の粘着力及び貯蔵弾性率等の粘着剤特性を、より効果的に得ることができるばかりか、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの相溶性を向上させることができるためである。
【0024】
すなわち、(メタ)アクリル酸エステルの共重合比が99.9:0.1を超えた割合となると、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが有する帯電防止性を十分に引き出すことが困難となる場合があるためである。また、その他の成分との相溶性が低下して、シランカップリング剤等の助剤との間の相互作用が弱くなり、耐久性が低下しやすくなる場合があるためである。一方、(メタ)アクリル酸エステルの共重合比が80:20未満の割合となると、逆に他成分との相溶性が低下して、光学物性や耐久性が低下しやすくなる場合があるためである。
したがって、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基からなる群より選択される少なくとも一種を有する単量体と、の共重合比(重量基準)を、99.5:0.5〜85:15の範囲内の割合とすることがより好ましく、99:1〜90:10の範囲内の割合とすることがさらに好ましい。
【0025】
また、本発明における(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成するにあたり、特に、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に水酸基を有する単量体と、分子内にカルボキシル基を有する単量体と、の共重合体とすることが好ましい。
また、この場合、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に水酸基若しくはカルボキシル基を有する単量体との共重合比(重量基準)を、95:5〜99:1とすることが好ましい。さらに、分子内に水酸基を有する単量体と、分子内にカルボキシル基を有する単量体の共重合比(重量基準)は、50:100〜10:100の範囲内の割合とすることが好ましい。さらに、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に水酸基を有する単量体と、分子内にカルボキシル基を有する単量体との共重合比(重量基準)を、95:0.5:4.5〜99:0.5:0.5の範囲内の割合とすることが特に好ましい。
なお、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルとは、例えば、(メタ)アクリル酸メチルのように、分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基を有さない(メタ)アクリル酸エステルを意味する。
また、上述した共重合比は、各構成単位である単量体の仕込み量から算出される理論値を示す。
また、共重合形態については特に制限されるものではなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0026】
(2)重量平均分子量
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量を10万〜220万の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量が10万未満の値となると、耐久環境下における耐久性が不十分となる場合があるためである。一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量が220万を超えた値となると、粘度増大等による加工適正の低下を抑制することが困難になり、ひいては、帯電防止性が低下する場合があるためである。
したがって、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量を、50万〜200万の範囲内の値とすることがより好ましく、100万〜180万の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
以上、(メタ)アクリル酸エステル重合体について説明してきたが、本発明における(メタ)アクリル酸エステル重合体は、1種単独で用いてもよいし、モノマー成分や分子量の異なる2種以上を併用してもよい。
【0027】
2.帯電防止剤
(1)アルカリ金属塩
(1)−1 種類
本発明の粘着剤組成物は、アルカリ金属塩として、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含むことを特徴とする。
この理由は、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドであれば、優れた帯電防止性を有するためである。
したがって、かかるカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを(メタ)アクリル酸エステル重合体に対して含有させることにより、硬化させてフィルム貼合用の粘着剤として使用した際に、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる粘着剤組成物を得ることができるためである。
なお、その他のアルカリ金属塩として、リチウムビストリフルオロメタンスルホニウムイミドや、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等を併用してもよい。
その場合には、その他のアルカリ金属塩の含有量を、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド100重量部に対して、0〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましく、10〜50重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0028】
(1)−2 含有量
また、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.05〜15重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量をかかる範囲とすることにより、上述した静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、粘着力及び耐久環境下における耐久性についても、安定的に維持することができるためである。
すなわち、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量が0.05重量部未満の値となると、粘着剤組成物に対する帯電防止性の付与が不十分になって、静電気の発生を安定的に抑制することが困難になる場合があるためである。一方、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量が15重量部を超えた値となると、粘着力や耐久条件下における耐久性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜6重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0029】
次いで、図2を用いて、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量と、粘着剤の表面抵抗率及び粘着力と、の関係を説明する。
すなわち、図2には、横軸に、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対するカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量(重量部)を採り、左縦軸に、得られた粘着剤組成物を硬化してなる粘着剤における表面抵抗率(Ω/□)を採った特性曲線Aと、右縦軸に、得られた粘着剤組成物を硬化してなる粘着剤のガラス面への貼合1日後における粘着力(N/25mm)を採った特性曲線Bと、が示してある。
なお、粘着剤組成物の詳細や表面抵抗率及び粘着力の測定条件等は、実施例において記載する。
【0030】
かかる特性曲線A及びBからは、粘着剤における表面抵抗率及び粘着力は、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量が増加するのにともなって、減少する傾向が見て取れる。
かかる傾向を考慮すると、静電気の発生を抑制する観点からは、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量を増加させて、表面抵抗率の値を減少させることが好ましい一方で、所定の粘着力を維持するという観点からは、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量を所定以下に制限する必要があることが分かる。
より具体的には、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量が0.05重量部未満の値となると、粘着剤の表面抵抗率が1×1012Ω/□を超えた過度に大きな値となってしまう一方、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量が15重量部を超えた値になると、粘着剤の粘着力が0.8N/25mm未満の過度に低い値になってしまうことがわかる。
したがって、特性曲線A及びBからは、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.05〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましいことが理解される。
【0031】
(2)分散媒
(2)−1 種類
また、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが、分散媒に分散された状態で(メタ)アクリル酸エステル重合体に対して添加されるとともに、当該分散媒が、アルキレングリコールジアルキルエーテルであることが好ましい。
この理由は、かかる所定の分散媒を用いることにより、粘着剤組成物中におけるカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの帯電防止性を、効果的に向上させることができるとともに、かかる分散媒自体が、粘着剤からブリードすることについても、効果的に抑制することができるためである。
すなわち、アルキレングリコールジアルキルエーテルであれば、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにおけるカリウムイオンと錯体を形成することにより、帯電防止性を発揮するのに好適な電離状態を有効に作り出し、かつ維持することができるためである。
また、アルキレングリコールジアルキルエーテルであれば、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、(メタ)アクリル酸エステル重合体等と、の間の相溶性を向上させることができるためである。
【0032】
また、アルキレングリコールジアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン鎖の繰り返し単位数を、2〜10の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる繰り返し単位数が2〜10の範囲外の値となると、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドにおけるカリウムイオンを、安定的にキレートすることが困難となる場合があるためである。
したがって、アルキレングリコールジアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン鎖の繰り返し単位数を、3〜8の範囲内の値とすることがより好ましく、4〜6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、アルキレングリコールジアルキルエーテルの両末端において、酸素原子と結合するアルキル基は、通常、炭素数1〜6であり、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。
【0033】
また、アルキレングリコールジアルキルエーテルの具体例としては、オクタエチレングリコールジブチルエーテル、オクタエチレングリコールジエチルエーテル、オクタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジブチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジエチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のいずれか1つ、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。
また、これらの中でも、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが特に好ましい。
【0034】
(2)−2 混合割合
また、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の混合割合(モル比)を、30:70〜70:30の範囲内の割合とすることが好ましい。
この理由は、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの混合割合が30:70未満の値となると、粘着剤組成物中におけるカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの絶対量が不足して、その帯電防止性を十分に発揮させることが困難になったり、アルキレングリコールジアルキルエーテルが、粘着剤からブリードしやすくなったりする場合があるためである。一方、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの混合割合が70:30を超えた値となると、粘着剤組成物中において、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの電離状態が不十分になったり、分散性が過度に低下したりする場合があるためである。
したがって、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の混合割合(モル比)を、40:60〜60:40の範囲内の割合とすることがより好ましく、45:55〜55:45の範囲内の割合とすることがさらに好ましい。
【0035】
(3)合計含有量
また、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の合計含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対し、1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる合計含有量、すなわち、帯電防止剤の含有量が1重量部未満の値となると、帯電防止性を十分に発揮させることが困難になる場合があるためである。一方、かかる合計含有量が30重量部を超えた値となると、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが析出しやすくなったり、耐久性が過度に低下したり、アルキレングリコールジアルキルエーテルがブリードしやすくなったりする場合があるためである。
したがって、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の合計含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対し、2〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜14重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0036】
3.架橋剤
(1)種類
また、本発明の粘着剤組成物は、イソシアナート系架橋剤をさらに含むことが好ましい。
この理由は、イソシアナート系架橋剤を含むことにより、粘着剤組成物を硬化させて粘着剤とした際の粘着力や貯蔵弾性率を、より好適な範囲に調節することができるためである。
すなわち、イソシアナート系架橋剤であれば、(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する水酸基やカルボキシル基と反応して、(メタ)アクリル酸エステル重合体同士を化学的に架橋させることができるためである。
そればかりか、イソシアナート系架橋剤であれば、粘着剤と、被着体と、の間の密着性についても、向上させることができるためである。
【0037】
また、かかるイソシアナート系架橋剤の具体例としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス( イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω、ω’−ジイソシアネート−1、4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼンもしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートヘキサン等のトリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルジメチルメタン−2,2’−5,5’−テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体、上述したポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上述したポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子量ポリオールの上述したポリイソシアネート単量体への付加体、例えば、上述した分子量が200〜200,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等の上述したポリイソシアネート単量体への付加体等が挙げられる。
【0038】
(2)含有量
また、イソシアナート系架橋剤の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるイソシアナート系架橋剤の含有量が0.01重量部未満の値となると、(メタ)アクリル酸エステル重合体同士の架橋が不十分になって、粘着剤とした際に、十分な粘着力や耐久性を得ることが困難となる場合があるためである。一方、かかるイソシアナート系架橋剤の含有量が10重量部を超えた値となると、(メタ)アクリル酸エステル重合体同士の架橋が過剰になって、粘着剤とした際の粘着力や耐久性が、逆に低下しやすくなる場合があるためである。
したがって、イソシアナート系架橋剤の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.2〜2重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
4.光硬化性成分
また、本発明の粘着剤組成物は、光硬化性成分をさらに含んでもよい。
この理由は、光硬化性成分を含むことにより、粘着剤組成物を硬化させて粘着剤とした際の粘着力や貯蔵弾性率を、さらに好適な範囲に調節することができ、しかも、シーズニング期間を省略、もしくは短縮させることができるためである。
【0040】
(1)種類
かかる光硬化成分としては、例えば、分子量1000未満の多官能(メタ)アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマー、及び(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマー等が好適に用いられる。
【0041】
また、分子量1000未満の多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、2官能から6官能まで種々の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを用いることができ、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの2官能型、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型、例えば、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型、例えば、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能型などが挙げられる。
本発明において、これらの多官能(メタ)アクリレート系モノマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、骨格構造に環状構造を有するものを含有することが好ましい。
かかる環状構造は、炭素環式構造でも、複素環式構造でもよく、また、単環式構造でも多環式構造でもよい。このような多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有するもの、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどが好適であり、特にイソシアヌレート構造を有するものが好ましい。
【0042】
また、アクリレート系オリゴマーとしては、重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。
ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させ、エステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
上述したアクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値で、上述のように50,000以下が好ましく、より好ましくは500〜50,000、さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。これらのアクリレート系オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーとしては、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステル重合体において説明した(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に官能基を有するモノマーとの共重合体を用い、該共重合体の官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基及び該官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。該アダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、通常50万〜200万である。
【0044】
(2)含有量
また、光硬化性成分の含有量としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、5〜50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、光硬化性成分の含有量が5重量部未満の値となると、粘着剤とした際の粘着力や貯蔵弾性率を、向上させることが困難になるためである。一方、光硬化性成分の含有量が50重量部を超えた値となると、その他の成分と相分離して、粘着剤とした際の光学的特性を維持することが困難となり、光学フィルムへの適用が困難になる場合があるためである。
したがって、光硬化性成分の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、10〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜20重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0045】
(3)光重合開始剤
また、光硬化性成分を紫外線等で硬化させるには、反応開始のために光重合開始剤を添加することが好ましい。かかる光重合開始剤としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等を用いることが好ましい。
【0046】
また、光重合開始剤の含有量としては、光硬化性成分100重量部に対して、1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、光重合開始剤の含有量が1重量部未満の値となると、粘着剤とした際に、適度な架橋密度が得られなくなる場合があるためである。一方、光重合開始剤の含有量が30重量部を超えた値となると、粘着剤とした際に、光重合開始剤がブリードしやすくなったり、物性が低下しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、光重合開始剤の含有量を、光硬化性成分100重量部に対して5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、7.5〜15重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
5.シランカップリング剤
また、本発明の粘着剤組成物に、いわゆるシランカップリング剤を含有させることも好ましい。
かかるシランカップリング剤は、液晶セル等のガラスからなる対象物と、偏光フィルム等の光学フィルムと、の密着性を効果的に向上させることに寄与する。
また、かかるシランカップリング剤としては、アルコキシシリル基を分子内に少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤組成物との相溶性がよく、かつ、光透過性を有するものであることが好ましい。
【0048】
より具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等を用いることが好ましい。
【0049】
(2)含有量
また、シランカップリング剤の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるシランカップリング剤の含有量が、0.001重量部未満の値になると、偏光板等と、液晶セル等と、の密着性を向上させる効果を十分に発揮させることが困難となる場合があるためである。一方、かかるシランカップリング剤の含有量が、10重量部を超えた値になると、粘着性及び耐久性が低下する場合があるためである。
したがって、シランカップリング剤の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜3重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
6.添加剤
添加剤として、粘着剤組成物に、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤等を含有させることも好ましい。
また、その場合、添加剤の種類にもよるが、その含有を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0051】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、粘着剤であって、下記工程(1)〜(3)を含む工程を経て形成されることを特徴とする粘着剤である。
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、帯電防止剤としてカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを0.05〜15重量部の範囲内の値で含む粘着剤組成物を準備する工程
(2)粘着剤組成物を、剥離フィルムに対して塗布して、粘着剤組成物層を形成する工程
(3)粘着剤組成物層を硬化させて、粘着剤層とする工程
以下、本発明の第2の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0052】
1.工程(1)(粘着剤組成物の準備工程)
工程(1)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、帯電防止剤としてカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを0.05〜15重量部の範囲内の値で含む粘着剤組成物を準備する工程である。
すなわち、かかる組成の粘着剤組成物であれば、硬化させてフィルム貼合用の粘着剤として使用した際に、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、粘着力に優れるとともに、耐久環境下においても優れた耐久性を発揮させることができるためである。
なお、かかる粘着剤組成物の具体的な内容については、第1の実施形態において説明したため、省略する。
【0053】
2.工程(2)(粘着剤組成物の塗布工程)
工程(2)は、図1(a)に示すように、粘着剤組成物1を、剥離フィルム2に対して塗布して粘着剤組成物層を形成する工程である。
かかる剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムに対し、シリコーン樹脂等の剥離剤を塗布して、剥離層を設けたものが挙げられる。
なお、かかる剥離フィルムの厚さは、通常20〜150μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0054】
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いて、溶剤を加えた粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成させた後、乾燥させることが好ましい。
このとき、粘着剤組成物層の塗膜の厚さは、乾燥時において1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、乾燥条件としては、通常50〜150℃で、10秒〜10分の範囲内とすることが好ましい。
また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が好ましく、溶剤を加えた際の粘着剤組成物の濃度は、5〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
なお、図1(e)に示すように、剥離フィルム2に対して粘着剤組成物1を塗布して乾燥させた後、さらに別の剥離フィルム2を、粘着剤組成物層1上に積層させてもよい。
かかる態様は、粘着剤の製造と、かかる粘着剤の使用とが、別の場所で行われる等の理由により、粘着剤のみを輸送しなければならない場合等に必要とされる。
【0055】
3.工程(3)(粘着剤組成物層の硬化工程)
工程(3)は、粘着剤組成物層を硬化させて、粘着剤層とする工程である。
以下、熱硬化と、光硬化と、に分けて説明する。
【0056】
(1)熱硬化(養生期間)
熱硬化は、粘着剤組成物が、例えば、イソシアナート系架橋剤等の熱架橋剤を含んでいる場合に行われる。
かかる熱硬化は、例えば、図1(b)に示すように、剥離フィルム2上で乾燥させた状態の粘着剤組成物層1の表面に対し、フィルム基材101を積層させた状態で粘着剤層10とすることが好ましい。
また、熱硬化させる温度としては、粘着剤や基材にダメージを与えることなく、かつ、粘着剤組成物を均一に硬化する観点から、20〜50℃とすることが好ましく、23〜30℃とすることがより好ましい。
また、湿度としては、30〜75%R.H.とすることが好ましく、45〜65%R.H.とすることがより好ましい。
さらに、熱硬化させる期間としては、3〜20日とすることが好ましく、5〜14日とすることがより好ましい。
【0057】
(2)光硬化
光硬化は、粘着剤組成物が、例えば、多官能アクリレート系モノマー等の光硬化性成分を含んでいる場合に行われる。
かかる光硬化は、例えば、図3(c)に示すように、活性エネルギー線を照射し、剥離フィルム2に対して塗布された光学用粘着剤組成物1を光硬化し、粘着剤10とすることが好ましい。なお、活性エネルギー線の照射は、粘着剤組成物を剥離フィルム上に塗布し、乾燥させ、基材フィルムを積層させた後、遅滞なく行うことが好ましい。経時により剥離フィルム上に形成された粘着剤組成物の層中において、光硬化性成分が他の成分と相分離する場合があるためである。
かかる活性エネルギー線としては、例えば、紫外線や電子線等が挙げられる。
また、紫外線であれば、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ等により得ることができ、電子線であれば、電子線加速器等によって得ることができる。
【0058】
また、活性エネルギー線を50〜1000mJ/cm2の範囲内で照射することが好ましい。
この理由は、活性エネルギー線の照射量が50mJ/cm2未満の値となると、光硬化性成分同士の反応を十分に行わせることが困難となって、所望の粘着剤特性を得ることが困難となる場合があるためである。一方、活性エネルギー線の照射量が1000mJ/cm2を超えた値となると、粘着剤や基材を破壊する恐れがあるためである。
したがって、粘着剤組成物に対し、100〜700mJ/cm2の活性エネルギー線を照射することがより好ましく、120〜500mJ/cm2の活性エネルギー線を照射することがさらに好ましい。
また、活性エネルギー線の照射は、図3(c)に示すように、剥離フィルム2側から行うことが好ましい。
この理由は、偏光板等の光学フィルムを傷めることなく、効率よく照射を行うことができるためである。
【0059】
4.粘着剤特性
(1)貯蔵弾性率
また、粘着剤の、23℃における貯蔵弾性率G´を0.01〜0.8MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、貯蔵弾性率G´をかかる範囲とすることにより、耐久環境下における耐久性を、より効果的に向上させることができるためである。
すなわち、かかる貯蔵弾性率G´が0.01MPa未満の値となると、耐久環境下における耐久性を、十分に向上させることが困難になる場合があるためである。一方、かかる貯蔵弾性率G´が0.8MPaを超えた値となると、所望の粘着力等を得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、23℃における貯蔵弾性率G´を0.05〜0.75MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.7MPaの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、貯蔵弾性率G´の測定方法としては、例えば、JIS K7244−6に準拠して、ねじり剪断法を用いて、下記条件にて、試験片の貯蔵弾性率G´を測定することができる。
測定装置:レオメトリック(株)製、自動的粘弾性測定装置 DYNAMIC ANALYZER RDAII
周波数:1Hz
温度:23℃
【0060】
(2)粘着力
また、粘着剤の粘着力を0.1〜50N/25mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる粘着力が0.1N/25mm未満の値となると、耐久条件下における耐久性が不十分になる場合があるためである。一方、かかる粘着力が50N/25mmを超えた値となると、リワーク性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、粘着剤の粘着力を0.5〜40N/25mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜30N/25mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、粘着力の測定方法については、実施例において記載する。
【0061】
(3)表面抵抗率
また、粘着剤の表面抵抗率を1×107〜1×1012Ω/□の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる表面抵抗率が1×107Ω/□未満の値となると、耐久性や光学物性が悪化する場合があるためである。
一方、かかる表面抵抗率が1×1012Ω/□を超えた値となると、被着体からフィルムを剥離した際に、静電気の発生を安定的に抑制することが困難となる場合があるためである。
したがって、粘着剤の表面抵抗率を、5×107〜5×1011Ω/□の範囲内の値とすることがより好ましく、1×108〜1×1011Ω/□の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、表面抵抗率の測定方法については、実施例において記載する。
【0062】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、フィルム基材上に、第2の実施形態である粘着剤を含む粘着剤層を備えてなる光学フィルムである。
以下、本発明の第3の実施形態を、図1を参照して、具体的に説明する。
【0063】
1.フィルム基材
本発明の光学フィルム100におけるフィルム基材101としては、光学フィルムに用いられるものであれば、特に限定されるものではない。
例えば、偏光板、偏光層保護フィルム、視野角拡大フィルム、防眩フィルム、位相差板等、液晶ディスプレイに用いられる光学フィルム等が挙げられる。
特に、本発明の光学フィルムであれば、フィルム基材を偏光板とした場合であっても、光漏れの発生を効果的に抑制できる。
なお、フィルム基材を偏光板とした場合の光学フィルムを、粘着剤層付き偏光板と呼ぶことがある。
また、フィルム基材の材質としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、液晶ポリマー、シクロオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、脂環式構造含有重合体、芳香族系重合体等が挙げられる。
さらに、本発明における粘着剤は、偏光子等へも耐久性よく密着できることから、偏光板の原料であるヨウ素含有のポリビニルアルコール樹脂を延伸して作製された偏光子自体も、本発明の光学フィルム100におけるフィルム基材101となり得る。
また、偏光子の片面がトリアセチルセルロースやポリエチレンテレフタレート等の保護フィルムで覆われた偏光子等も同様である。
【0064】
また、フィルム基材の厚さとしては特に制約はないが、通常1〜1000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる基材の厚さが1μm未満となると、機械的強度や取り扱い性が過度に低下したり、均一な厚さに形成することが困難となったりする場合があるためである。一方、かかる基材の厚さが1000μmを超えると、取り扱い性が過度に低下したり、経済的に不利益となったりする場合があるためである。
したがって、フィルム基材の厚さを5〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜200μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0065】
また、フィルム基材101に表面処理を施してあることも好ましい。
このような表面処理としては、例えば、プライマー処理、コロナ処理、火炎処理などが挙げられるが、特に、プライマー処理であることが好ましい。
この理由は、このようなプライマー層を形成した基材を用いることにより、基材フィルムに対する粘着剤層の密着性をさらに向上させることができるためである。
なお、このようなプライマー層を構成する材料としては、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースニトレート、及びそれらの組み合わせ)、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
また、プライマー層の厚さについても、特に限定されないが、通常0.05μm〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0066】
2.粘着剤層
また、本発明の光学フィルム100における粘着剤層10は、第2の実施形態として記載した特定の粘着剤からなる粘着剤層とすることを特徴とする。
かかる粘着剤の具体的な内容については、既に第1及び第2の実施形態において説明したため、省略する。
【0067】
また、粘着剤層10の厚さを1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、粘着剤層の厚さをかかる範囲とすることにより、所望の粘着力及び貯蔵弾性率等の粘着剤特性を、より安定的に発揮させることができるためである。
すなわち、かかる厚さが1μm未満の値となると、所望の粘着力を発現しにくくなり、浮き剥れ等の不具合が生じやすくなる場合があるためである。一方、かかる厚さが100μmを超えた値となると、被着体汚染や糊残りなどの不具合が生じやすくなる場合があるためである。
したがって、粘着剤層の厚さを5〜70μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜50μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0068】
また、光学フィルム基材に対する粘着剤層の積層方法としては、図1(a)〜(c)に示すように、剥離フィルム2上において形成された粘着剤組成物層10における剥離フィルム2の無い側の表面を、直接、光学フィルム基材101に対して密着させることにより積層させ、その後、硬化させることが好ましい。
また、図1(e)に示すように、粘着剤層10の両面に対して剥離フィルム2が積層してある場合には、一方の剥離フィルム2を剥離して、現れた粘着剤層10の表面を、光学フィルム基材101に対して密着させることにより積層してもよい。
あるいは、図3(a)〜(c)に示すように、剥離フィルム2上に塗布した粘着剤組成物1を、先に硬化させ、粘着剤層10とした後、光学フィルム基材101に対して積層させてもよい。
なお、得られた光学フィルムを被着体に貼合する方法としては、図1(c)〜(d)に示すように、まず、粘着剤層10に積層してある剥離フィルム2を剥離し、次いで、現れた粘着剤層10の表面を、被着体に対して密着させることにより貼合することが好ましい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0070】
[実施例1〜14及び比較例1]
1.粘着剤組成物の準備工程
表1に示すように、各成分を所定割合にて混合し、粘着剤組成物を調製した。
なお、アルカリ金属塩は、分散媒に分散させた状態で、他の成分と混合した。
以下、表1における各成分の内容を示す。なお、表中の数値は固形分換算された値を示す。
【0071】
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体
・BA/HEA/AA(98.5/0.5/1) Mw=170万
アクリル酸ブチル98.5重量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.5重量部と、アクリル酸1重量部とを、常法に従って重合し、重量平均分子量170万の(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。
得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、粘着剤組成物を調製する際には、20重量%の酢酸エチル溶液として使用した。
【0072】
・BA/HEA/AA(97.5/0.5/2) Mw=170万
・BA/HEA/AA(96.5/0.5/3) Mw=170万
・BA/HEA/AA(95.5/0.5/4) Mw=170万
・BA/HEA/AA(94.5/0.5/5) Mw=170万
・BA/HEA(99/1) Mw=170万
・BA/HEA(98.5/0.5) Mw=170万
・BA/HEA(95/5) Mw=170万
・BA/AA(99/1) Mw=170万
・BA/AA(95/5) Mw=170万
・BA/AA(90/10) Mw=170万
それぞれ、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル及びアクリル酸の重合割合を、カッコ内の割合に変えたほかは、BA/HEA/AA(98.5/0.5/1)と同様に得た。
また、粘着剤組成物を調整する際の希釈についても、同様である。
【0073】
(2)アルカリ金属塩
・KFSI :カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド
・LiTFSI:リチウムビストリフルオロメタンスルホニウムイミド
【0074】
(3)分散媒
・TG :テトラエチレングリコールジメチルエーテル
・酢酸エチル
・ポリエーテルポリオール:ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体
・アジピン酸エステル
【0075】
(4)多官能アクリレート系モノマー
・トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート
(東亞合成(株)製、アロニックス M−315)
【0076】
(5)光重合開始剤
・ベンゾフェノン/1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン=1/1(重量比)
(チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製、イルガキュア500)
【0077】
(6)イソシアナート系架橋剤
・トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアナート
(日本ポリウレタン(株)製、コロネートL、Mw:657、固形分75%)
【0078】
(7)シランカップリング剤
・KBE9007:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン
(信越化学(株)製、KBE9007)
・KBM403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学(株)製、KBM403)
【0079】
なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、GPC法と略記する。)にて測定した。
すなわち、まず、ポリスチレンを用いて検量線を作成した。以降、重量平均分子量は、ポリスチレン換算値で表す。
次いで、(メタ)アクリル酸エステル重合体等の測定対象の濃度が1重量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液を準備し、東ソー(株)製、GEL PER MEATION CHROMATOGRAPH HLC−8020(TSKGEL GMHXL、TSKGEL GMHXL、TSKGEL G2000HXLからなる3連カラム)にて40℃、THF溶媒、1ml/分の条件にて重量平均分子量を測定した。
なお、ガードカラムとして、東ソー(株)製、TSK GUARD COLUMNを使用した。
【0080】
2.粘着剤組成物の塗布工程
次いで、剥離フィルムとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET3811)の剥離層上に、トルエンを加えて固形分が15重量%になるように希釈した粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmになるように、ナイフ式塗工機で塗布した。
次いで、90℃で1分間乾燥処理を施した後、厚さ180μmの偏光板にラミネートし、粘着剤組成物層付き偏光板を作成した。
【0081】
3.粘着剤組成物層の硬化工程
(1)熱硬化(養生期間)
次いで、得られた粘着剤組成物層付き偏光板を、23℃、65%R.H.の条件下にて14日間シーズニングさせて、粘着剤組成物層を粘着剤層とし、光学フィルムとしての粘着剤層付き偏光板を得た。
【0082】
(2)光硬化
また、実施例12及び13では、光硬化性成分としての多官能アクリレート系モノマー、及び光重合開始剤を含有させていることから、上述した熱硬化の前に、光硬化を行った。
すなわち、粘着剤組成物層付き偏光板の剥離フィルム側から、紫外線(UV)を下記条件で照射して、光硬化させた。
ランプ:高圧水銀ランプ(アイグラフィックス(株)製)
光量:300mJ/cm2
照度:300mW/cm2
UV光量及び照度計:UVF−PFA1(アイグラフィックス(株)製)
【0083】
4.評価
(1)粘着力の評価
被着体への貼合から1日後及び14日後における粘着剤付き偏光板の粘着力を測定した。
すなわち、裁断装置(荻野製作所(株)製、スーパーカッター)を用いて、得られた粘着剤層付き偏光板を幅25mm×長さ100mmの大きさに切断してサンプルを調製した。
次いで、得られたサンプルから剥離フィルムを剥離した後、サンプルの粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング(株)製、イーグルXG)に貼合した。
次いで、サンプルが貼合された無アルカリガラスを、オートクレーブ(栗原製作所(株)製)に投入し、0.5MPa、50℃、20分の条件で加圧した後、23℃、50%R.H.環境下に24時間(1日)放置した。
次いで、引っ張り試験機(オリエンテック(株)製、テンシロン)を用いて、下記条件にてサンプルを無アルカリガラスから剥離し、粘着力を測定した。得られた結果を表2に示す。
剥離速度:300mm/分
剥離角度:180°
【0084】
同様に、サンプルを無アルカリガラスへの貼合した後、23℃、50%R.H.環境下に336時間(14日)放置した場合の粘着力の測定を行った。得られた結果を表2に示す。
【0085】
(2)耐久性の評価
耐久条件下における粘着剤付き偏光板の耐久性を評価した。
すなわち、裁断装置(荻野製作所(株)製、スーパーカッター)を用いて、得られた粘着剤層付き偏光板を233mm×309mmの大きさに切断してサンプルを調製した。
次いで、得られたサンプルから剥離フィルムを剥離した後、サンプルの粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング(株)製、イーグルXG)に貼合した。
次いで、サンプルが貼合された無アルカリガラスを、オートクレーブ(栗原製作所(株)製)に投入し、5kg/cm2、50℃、20分の条件で加圧した後、80℃/dry及び60℃/90%R.H.の各耐久条件下に投入後、200時間放置した。
次いで、サンプルの状態について、10倍ルーペを用いて観察を行い、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:欠点が発生していない。
○:4辺において、外周端部から0.6mm以上に欠点が発生していない。
△:4辺のいずれかに、外周端部から0.6mm以上の発泡、スジ、剥がれが発生している。
×:4辺のいずれかに、外周端部から1.0mm以上の発泡、スジ、剥がれが発生している。
【0086】
(3)表面抵抗率の評価
JIS K 6911に準拠して、粘着剤の表面抵抗率を測定した。
すなわち、下記条件にて、粘着剤の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。得られた結果を表2に示す。
サンプルの形態:50mm×50mmのシート状に形成した粘着剤
粘着剤の厚さ:25μm
測定環境:23±2℃、50±2%R.H.
測定機器:三菱化学(株)製、HIRESTA−UP MCP−HT450
印加電圧:100V
なお、測定開始から30秒後の値を読み取り、表面抵抗率(Ω/□)とした。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0089】
以上詳述したように、本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステル重合体と、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドとを、所定割合にて含有させることで、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、耐久環境下における耐久性にも優れた粘着剤組成物等が得られるようになった。
したがって、本発明の粘着剤組成物等は、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、無機エレクトロルミネッセンス装置等の光学フィルムを始めとした各種フィルムの高品質化に、著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0090】
1:光学用粘着剤組成物(層)、2:剥離フィルム、10:光学用粘着剤(層)、100:光学フィルム、101:光学フィルム基材、200:被着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、帯電防止剤としてカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを0.05〜15重量部の範囲内の値で含むことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが、分散媒に分散された状態で(メタ)アクリル酸エステル重合体に対して添加されるとともに、当該分散媒が、アルキレングリコールジアルキルエーテルであることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記アルキレングリコールジアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン鎖の繰り返し単位数が、2〜10の範囲内の値であることを特徴とする請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドと、前記アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の混合割合(モル比)が、30:70〜70:30の範囲内の割合であることを特徴とする請求項2または3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
イソシアナート系架橋剤をさらに含むとともに、当該イソシアナート系架橋剤の含有量が、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内の値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
粘着剤であって、下記工程(1)〜(3)を含む工程を経て形成されることを特徴とする粘着剤。
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、帯電防止剤としてカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドを0.05〜15重量部の範囲内の値で含む粘着剤組成物を準備する工程
(2)前記粘着剤組成物を、剥離フィルムに対して塗布して、粘着剤組成物層を形成する工程
(3)前記粘着剤組成物層を硬化させ、粘着剤層とする工程
【請求項7】
フィルム基材上に、請求項6に記載の粘着剤を含む粘着剤層を備えてなる光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−105830(P2011−105830A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261219(P2009−261219)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】