説明

粘着性と濡れ性を有するはんだ付け用回路基板とその処理方法

【課題】粘着性の防錆性皮膜を用いて、鉛フリーはんだにも適用可能で、リフロー前のフラックス塗布を不要にする新たなはんだ付け技術を提供する。
【解決手段】金属と錯体形成能を持つ防錆性有機化合物(例、イミダゾール又はベンゾイミダゾール誘導体)を利用して電子部品の基板の金属回路露出部(例、電極)上だけに粘着性を有する防錆性皮膜を形成する。この防錆性皮膜を次いで該防錆性有機化合物と反応性を持たないフラックス作用のある化合物(例、隣接炭素原子がハロゲンで置換されている有機ハロゲン化物)で処理して、皮膜中にこの化合物を取り込むことにより、防錆性皮膜は粘着性を保持しながらフラックス機能を示すようになる。この皮膜上にはんだ粉末を付着させるか、あるいははんだボールを搭載し、フラックスを塗布せずにリフロー加熱すると、はんだプリコート又ははんだバンプが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け部分に粘着性と濡れ性とを備えたはんだ付け用回路基板とその製造方法に関する。この回路基板は、片面に多数の電極が狭いピッチで配列されている、例えば、BGAやCSPといった電子部品における半導体チップ搭載用基板として適しており、フラックスを塗布せずにはんだボールを基板の電極上に搭載してはんだバンプを形成することができる。
【背景技術】
【0002】
BGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package又はChip Scale Package)のような小型の表面実装用の電子部品は、インターポーザと呼ばれるチップ搭載用の回路基板に半導体チップを搭載したものであり、基板の片面には、この電子部品が実装される実装用の回路基板(以下ではプリント配線板という)との電気的接続のために、反対側の面には半導体チップとの電気的接続のために、それぞれ多数の電極が配置されている。
【0003】
典型的にはこの種の電子部品は、はんだを用いて実装用回路基板(すなわち、プリント配線板)に実装される。ここで実装とは電極的接続と装着(機械的固定)を含む意味である。一例として、電子部品を構成しているチップ搭載用回路基板(以下、インターポーザ基板という)の電極上に予めはんだバンプを形成しておき、プリント配線板の対応する個所にはソルダペーストを印刷等により塗布しておく。電子部品を、そのインターポーザ基板上のはんだバンプがプリント配線板のソルダペースト塗布部と対向するように位置合わせしてプリント配線板上に配置する。電子部品はソルダペーストの粘着性により所定位置に仮固定される。その後、リフロー炉での加熱によりはんだバンプとソルダペースト中のはんだを溶融させると、電子部品がプリント配線板にはんだ付けされ、電子部品のプリント配線板への電気的接続と装着とが達成される。
【0004】
一方、電子部品の内部でも、半導体チップとインターポーザ基板とが電気的に接続されている。この接続方法としてはワイヤーボンディング法とフェースダウンボンディング法とがある。
【0005】
ワイヤーボンディング法では、金線を用いて半導体チップの電極とインターポーザ基板の電極とを順次接続する。ワイヤーボンディング法は、高価な金線を使用するため材料費が非常に高価である。また、この方法は、半導体チップの周辺部だけでなく中心部にも電極が形成されている電極密度の高い半導体チップの接続には、金線同士の接触が起こりうることから適用できない。
【0006】
フェースダウンボンディング法は典型的にはフリップチップ方式により行われる。フリップチップボンディングでは、前述した電子部品のプリント配線板への実装と同様に、はんだバンプを利用して半導体チップをインターポーザ基板にはんだ付けする。例えば、半導体チップの電極上に予めはんだバンプを形成し、このはんだバンプとインターポーザ基板の電極とが対向するように位置合わせして半導体チップをインターポーザ基板上に配置し、加熱および加圧下ではんだバンプを溶融させることにより、半導体チップとインターポーザ基板との電気的な接続と固定とを達成する。この場合、インターポーザ基板の半導体チップ側にもはんだバンプを形成しておくことがある。
【0007】
フェースダウンボンディング法は、チップ表面の中心部にも電極が存在している半導体チップにも適用できる。また、バンプ形成に使用するはんだは金線よりも安価であり、一度の操作で全ての半導体チップの電極とインターポーザ基板の電極とを接続できるため、コストと生産性にも優れている。さらに、半導体チップの基板とは反対側の面(上面)が露出しているため、放熱フィンを装着することができ、パッケージの放熱性が向上する。
【0008】
BGAでは、典型的には、インターポーザ基板の各電極上にはんだボールと呼ばれる小径のボール状を配置した後、加熱して、はんだボールを溶融させることにより、はんだバンプが形成される。CSPでも端子がBGA型(すなわち、はんだボールの溶融により形成されたはんだバンプ)である場合には、同様の方法が採用されうる。
【0009】
半導体チップの高集積化、多機能化が進んだ現在では、BGAやCSPのインターポーザ基板においては、モジュール化とあいまって電極の狭ピッチ化が進んでいる。特にフェースダウンボンディングされるインターポーザ基板の半導体チップ側の面では電極ピッチが非常に小さくなる。
【0010】
プリント配線板に一般に配線材料として使用される銅は、空気中で酸化され易く、酸化されると酸化膜の除去効果があるフラックスをはんだ付け前に使用しても、はんだ付け性が阻害されることがある。そのため製造後のプリント配線板の表面に露出している銅配線部分を、防錆性に優れた、好ましくは水性処理液から形成された皮膜で被覆して保護することが行われている。いわゆるプリフラックス処理である。プリフラックス処理は保護を目的とし、はんだ付け時に塗布されるポストフラックスとの置換が容易に行われるように選択される。ポストフラックスとは異なり、プリフラックスには、はんだ付け時の活性作用(フラックス作用と一般に呼ばれる、はんだ面を清浄化して、溶融はんだによるぬれ性を向上させる効果)はない。多様な水溶性のプリフラックス処理液が市販されており、その主剤はイミダゾール誘導体やベンゾイミダゾール誘導体などの含窒素有機複素環化合物である。
【0011】
特開平7−7244号公報には、ナフトトリアゾール系誘導体、ベンゾトリアゾール系誘導体、イミダゾール系誘導体、ベンゾイミダゾール系誘導体、メルカプトベンゾチアゾール系誘導体及びベンゾチアゾールチオ脂肪酸系誘導体から選ばれた化合物の溶液にプリント配線板の金属露出部を接触させると(浸漬または塗布により)、有機複素環化合物が露出した金属と選択的に反応し(この反応はキレート形成反応であると推測されている)、金属露出部の上だけに粘着性のある皮膜が形成されることが開示されている。この粘着性皮膜上にはんだ粉末を散布して付着させ、余分な粉末を除去した後、加熱してはんだ粉末を溶融させると、金属露出部上にはんだの薄層が形成される。
【0012】
この手法の改良として、特開平7−30243号には、はんだ粉末を粘着性皮膜上に散布した後、余分な粉末を除去する前か後に、一旦加熱を行って、はんだ粉末を粘着性皮膜上に定着させることが記載されている。この定着の目的は、はんだ付け前のフラックスの塗布時に粘着性皮膜に付着したはんだ粉末が移動するのを抑制することである。定着のための加熱温度ははんだ粉末の溶融温度より低い温度であるが、実施例では共晶はんだ(63Sn−Pb)粉末を用いて170℃、30秒の加熱を行っている。すなわち、この加熱温度は共晶はんだの融点(183℃)にかなり近い温度である。
【0013】
【特許文献1】特開平7−7244号公報
【特許文献2】特開平7−30243号公報
【発明の開示】
【0014】
プリント配線板の金属回路露出部のみに選択的に反応することができる成分(例、イミダゾール系化合物)を利用して金属回路露出部上に防錆性皮膜を形成して、回路露出部を保護することは、水溶性プリフラックス処理として広く行われている。市販の水溶性プリフラックスを用いて、指示どおりの条件でプリント配線板を処理して形成された皮膜は粘着性を有していない。形成された防錆性皮膜は厚みが0.2〜0.3μmとごく薄い。
【0015】
一方、特許文献1、2では、水溶性プリフラックスに使用されるのと同種の有機複素環化合物を利用して金属回路露出部上に粘着性皮膜を形成する。皮膜が粘着性となるのは、処理温度および/または処理時間を増大させて皮膜厚みを大きくしたためである。この粘着性皮膜にはんだ粉末を付着させて、加熱溶融させることにより、金属回路露出部上にはんだの薄層(はんだプリコート)を形成する。ただし、この粘着性皮膜は、はんだ付けに必要なフラックス作用を持たないため、はんだ粉末を付着させた後にフラックスを塗布することが好ましい。その際のはんだ粉末の移動を防止するために、特許文献2では加熱によるはんだ粉末の定着を行う。この定着を行わずにフラックスを塗布した場合、防錆性皮膜の粘着性が低下するため、はんだ粉末が移動しやすくなる。特許文献1、2には記載されていないが、プリフラックスと同様の成分から形成された粘着性皮膜は、プリフラックス処理により形成された皮膜と同様に防錆性を有している。
【0016】
最近のはんだ組成は、環境問題から、鉛を含んでいない、いわゆる鉛フリーはんだの比率が高まっている。代表的な鉛フリーはんだは、Sn−Ag−Cu系およびSn−Cu系合金である。これら鉛フリーはんだは、従来のSn−Pb系共晶はんだと比べると、はんだつけ性、特に広がり性が悪く、ぬれ不良が起こり易い。従って、濡れ性の改善のためにフラックスの使用が不可欠である。
【0017】
鉛フリーはんだの別の問題として、現在最も多く使用されているSn−Ag−Cu系やSn−Cu系の鉛フリーはんだはSn−Pb系共晶はんだに比べて融点が高い。従って、上記特許文献2に記載されているように、付着させたはんだ粉末を移動しないように加熱して定着させる場合には、その加熱温度がかなり高くなる。この加熱は例えば30秒というかなり長い時間行われるので、プリント配線板や電子部品に与える熱履歴の影響が大きく、防錆性のある粘着性の皮膜で保護されているとはいえ、金属回路露出部の酸化を生じてはんだ付け性をさらに悪化させる可能性がある。
【0018】
本発明は、粘着性の防錆性皮膜を用いて、鉛フリーはんだにも適用可能で、リフロー前のフラックス塗布を不要にする新たなはんだ付け技術を提供するものである。
本発明者らは、上記特許文献1、2に記載されているような粘着性の防錆性皮膜に、特定のフラックス性成分(フラックス作用を示す化合物)を含有する溶液を接触させると、皮膜の粘着性を保持したまま、フラックス性成分が防錆性皮膜に移行し、皮膜それ自体がフラックス作用を示すことができるようになることを見いだした。その結果、防錆性皮膜は、粘着性に加えて、良好なはんだぬれ性も示すようになり、はんだ粉末を付着させた後、フラックスを塗布せずに、はんだ粉末を溶融させて加熱すると、鉛フリーはんだ粉末の場合でも良好なはんだ付け性が得られる。従って、特許文献2に提案されているはんだ粉末の定着のための加熱処理が不要になる。
【0019】
さらに、はんだ粉末を付着させるのではなく、この防錆性皮膜の粘着性を利用して、防錆性皮膜にはんだボールを付着させて保持することができ、その後フラックス塗布を行わずにリフロー加熱してはんだボールを溶融させた場合、鉛フリーのはんだボールでも溶融はんだが十分に広がり、良好なはんだバンプを形成することができることが判明した。
【0020】
1側面において、本発明は、金属回路の一部がはんだ付けのために基板表面に露出しているはんだ付け用回路基板であって、該金属回路の露出部が粘着性を有する防錆性皮膜で被覆され、この防錆性皮膜がその粘着性を保持したまま、少なくともその表層にフラックス作用を示す化合物を含有していることを特徴とする、はんだ付け用回路基板である。
【0021】
別の側面からは、本発明は、金属回路の一部がはんだ付けのために基板表面に露出しているはんだ付け用回路基板を、該金属回路中の金属と反応して粘着性皮膜を形成することができる防錆剤化合物を含有する処理液で処理して、金属回路の露出部の表面に粘着性の防錆性皮膜を形成し、次いでこの粘着性の防錆性皮膜を、該防錆剤化合物と反応性を持たない、フラックス作用を示す化合物を含有する処理液と接触させることにより粘着性の防錆性皮膜中に該フラックス作用を示す化合物を取り込むことを特徴とする、はんだ付け用回路基板の処理方法である。
【0022】
本発明において「回路基板」とは、金属回路が形成されている基板を意味し、半導体チップ搭載用の基板(例えば、BGA又はCSPを構成する、インターポーザ基板)、電子部品実装用のプリント配線板(例、マザーボード)、およびウェハー回路素子(半導体チップそれ自体)を包含する。本発明によれば、微細な回路を有し、電極ピッチが小さい回路基板の電極上にはんだバンプを形成することができる。ウェハー回路素子の場合、はんだ接合される電極(例、少なくとも最外層が銅または銅合金である電極)を備えているものに対して本発明を適用することが可能である。
【0023】
本発明においてはんだ付けのために基板表面に露出している「金属回路」とは、はんだ付けに適した金属から作製された回路を意味する。
また、本発明において「粘着性」とは、皮膜を指で触れてべたつきがあることを意味する。本発明では、皮膜にはんだ粉末を散布した時に皮膜が粉末を保持できれば(逆さまにしても粉末が落下しなければ)、皮膜は粘着性である。
【0024】
本発明は下記の好適態様を含む:
・前記金属回路がCu、Cu合金、Sn又はSn合金から形成されている;
・前記防錆性皮膜が、ナフトトリアゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、メルカプトベンゾチアゾール系化合物及びベンゾチアゾールチオ脂肪酸系化合物から選ばれた少なくとも1種の防錆剤化合物と露出した金属回路中の金属との反応により形成されたものである;
・前記フラックス作用を示す化合物が有機ハロゲン化物である。
【0025】
・前記有機ハロゲン化物が2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4ジオール、2,3ジブロモ−1−プロパノール、2,2'−ビス(ブロモメチル)−1,3プロパンジオール、およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種である。
【0026】
本発明はまた、前記回路基板の金属回路の露出部上に形成された粘着性を有する防錆性皮膜にはんだ粉末またははんだボールを付着させ、次いでフラックスを塗布することなく、はんだの液相線温度以上の温度に加熱して、該露出部上にはんだ層またははんだバンプを形成することを特徴とする、はんだ層またははんだバンプの形成方法にも関する。
【0027】
はんだは好ましくは鉛フリーはんだである。
はんだ付け用フラックスは、フラックス中の活性剤がCuやSnなどの金属の酸化物と反応して、金属を清浄な状態にし、金属同士の融合を容易にする作用を果たす。特に鉛フリーはんだによるはんだ付けでは、フラックスを使用しないと、リフロー時にはんだが単に再溶融するだけで、金属回路露出部との必要な結合(すなわち、はんだ付け)を達成することができない。
【0028】
本発明では、防錆性皮膜がフラックス成分を内部に取り込んで含有しているため、リフロー前にフラックスを塗布しなくても、鉛フリーはんだ合金のはんだ付けが可能となる。フラックス塗布が不要となるため、特許文献2においてフラックス塗布前に必要とされてきた加熱によるはんだ粉末の定着も不要となる。逆に、フラックスを塗布してしまうと、防錆性皮膜の粘着性が低下し、防錆性皮膜に付着させたはんだ粉末又ははんだボールが脱落し易くなる。
【0029】
フラックス塗布により防錆性皮膜の粘着性が低下する原因は必ずしも解明できていないが、次のように考えられる。防錆性皮膜を形成するイミダゾール系などの化合物は塩基性を示すため、フラックスに活性剤として含まれる酸性成分と反応し易い。その結果、この化合物と金属との反応で形成されていた防錆性皮膜において金属との反応が解けてしまう。特許文献2では、この粘着性の低下を防止するために、加熱により強制的にはんだ粉末と防錆性皮膜の化合物との結合力を高める定着が必要となる。
【0030】
本発明は、金属回路露出部と防錆剤化合物との反応によって生成した粘着性の防錆性皮膜に、この防錆剤化合物と反応性を持たないフラックス成分を後から取り込むことにより、粘着性を保持したまま、防錆性皮膜がフラックス作用、すなわち、良好なはんだ濡れ性を示すようになるという新規かつ予期し得ない知見に基づく。そのようなフラックス成分の1例は有機ハロゲン化物である。有機ハロゲン化物は、防錆性皮膜を構成するイミダゾール誘導体などの塩基性化合物との反応性を持たない。防錆性皮膜を有機ハロゲン化物の水溶液で処理することにより有機ハロゲン化物が防錆性皮膜中に取り込まれることは、この処理後に防錆性皮膜を水で洗浄しても、皮膜のフラックス効果が失われないことからからも証明される。
【0031】
本発明に係る回路基板では、金属回路露出部が、その腐食を防止することができる防錆性を有し、かつ粘着性を保持しながらフラックス作用も発揮できる防錆性皮膜で被覆されている。その結果、鉛フリーはんだを使用した場合であっても、リフロー前にフラックスを塗布せずにリフローはんだ付けを行うことができる。それにより、はんだ付け工程が著しく簡略化される。また、フラックス塗布が不要となることにより、フラックス塗布による防錆性皮膜の粘着性低下を防止するための加熱による定着が不要となる。溶融温度の高い鉛フリーはんだでは、この定着のための加熱温度も高くなるので、加熱による回路基板への熱影響が懸念されるので、この加熱が必要ないことは非常に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下では、回路基板が電子部品(例、BGAまたはCSP)を構成する基板、すなわち、半導体チップ搭載用のインターポーザ基板である場合を例にとって本発明を説明する。ただし、前述したように、本発明はこの態様に制限されるものではなく、他の種類の回路基板にも適用可能である。
【0033】
本発明によれば、インターポーザ基板の表面に露出した金属回路(典型的には電極)にのみ選択的に反応する防錆剤化合物を用いて基板を処理することにより、該露出部上に粘着性を有する防錆性皮膜を形成する。この処理は特許文献1、2にも記載されている。その後、この粘着性の防錆性皮膜を、使用した防錆剤化合物との反応性を有していない、フラックス作用のある化合物、例えば、有機ハロゲン化物を含有する水溶液と接触させて、有機ハロゲン化物を防錆性皮膜の少なくとも表層中に取り込む。それにより、防錆性皮膜の少なくとも表層は、粘着性を保持しつつ、フラックス性能を発揮できるようになる。
【0034】
金属回路露出部は、防錆剤化合物と反応して錯体を形成できる金属から構成される。防錆剤化合物として、従来よりプリフラックスとして使用されてきたイミダゾール系化合物などの含窒素有機複素環化合物誘導体を使用する場合、この種の化合物との錯体形成力から、金属回路露出部はCu、Sn、Cu合金、又はSn合金から作製されていることが望ましい。さらに好ましくはCu又はCu合金である。周知の通り、Cuは基板の回路材料として最も一般的に使用されている。
【0035】
本発明に用いられる防錆剤化合物は、基板の洗浄を水で行うことができるようにするために、水溶性化合物であることが好ましい。防錆剤化合物は、回路基板の露出部の金属と反応して(例、錯体形成反応により)粘着性と防錆性を有する皮膜を形成できればよい。そのような金属と錯体形成能を有する防錆性皮膜形成性の化合物としては、特許文献1、2に記載されている(1)ナフトトリアゾール系化合物、(2)ベンゾトリアゾール系化合物、(3)イミダゾール系化合物、(4)ベンゾイミダゾール系化合物、(5)メルカプトベンゾチアゾール系化合物及び(6)ベンゾチアゾールチオ脂肪酸系化合物が挙げられる。これらの化合物の一般式を次に示す。
【0036】
【化1】

【0037】
式中、R1、R2、R3、R5、R8、R9及びR10はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基を意味し、R4はアルキル基を意味し、R6はアルキル基又はアルキルチオ基を意味し、R7は水素原子又は4位も5位に結合したアルキル基を意味する。
【0038】
中でもイミダゾール型化合物、すなわち、(3)イミダゾール系化合物及び(4)ベンゾイミダゾール系化合物誘導体が特に好ましい防錆剤化合物である。
防錆剤化合物を用いた回路基板の金属回路露出部上への粘着性の防錆性皮膜の形成についても、特許文献1、2に記載の方法を参照することができる。すなわち、使用する1種または2種以上の防錆剤化合物を水に溶かして処理液を調製し、この処理液を回路基板の金属回路露出部に塗布すればよい。塗布は浸漬又はスプレーにより実施することができる。処理前に、通常のプリフラックス処理で行われている前処理(酸性水溶液による処理と水洗)を実施することが好ましい。
【0039】
上記化合物はいずれも塩基性化合物であるので、処理液は、適当な有機酸又は無機酸を添加してpH3〜5程度の弱酸性にすることが、化合物の溶解性を高めるために好ましい。処理液中の化合物の濃度は通常は0.05〜20質量%程度である。処理液の温度は室温よりやや高い温度とすると、成膜速度が高まる。好ましい温度は約30〜60℃である。また、回路基板がCu又はCu合金である場合には、処理液が微量(例、100〜1000 ppm)のCuイオンを含有していると、粘着性の防錆性皮膜の成膜速度が高まる。処理液を塗布した後、水洗と乾燥を行う。形成された乾燥皮膜が粘着性を有する。処理時間は他の条件により大幅に異なるが、長くても10分以下とすることが生産性の観点からは有利である。
【0040】
弱酸性で、場合により微量の銅イオウが添加されているイミダゾール又はベンゾイミダゾール系化合物を主剤とする水溶性プリフラックスが市販されているので、それをそのまま処理液として使用することもできる。
【0041】
市販の水溶性プリフラックスを使用する場合、指示条件に従って処理を行った場合には、0.2〜0.3μmといった粘着性を示さない薄い防錆性皮膜しか形成できない。そのような皮膜でも、厚膜になると粘着性を示すようになるものがある。粘着性を示す防錆性皮膜を形成するための防錆性皮膜の膜厚は、特に制限されないが、一般には最低でも0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。膜厚の上限は特に制限されないが、通常は10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0042】
防錆性皮膜の膜厚は、処理条件(処理液組成、処理温度、処理時間)を変更することにより調整可能である。例えば、処理液組成が決まっている市販の水溶性プリフラックスを使用する場合には、指示温度に比べて処理温度を高め、特に処理時間を大幅に長くすることにより、粘着性を有する防錆性皮膜を形成することができる。
【0043】
塗布前に、回路基板は、金属回路露出部以外の表面を、処理液と接触しないようにレジストなどで保護してもよい。しかし、皮膜は金属との反応により形成されるため、金属露出部以外には皮膜が形成されないので、この保護は必ずしも必要ない。基板が基板以外の部分はシールされているパッケージ型の電子部品である場合には、そのまま塗布を行うことができる。
【0044】
こうして形成された粘着性の防錆性皮膜を、使用した防錆剤化合物と反応性を有していない、フラックス作用を持つ化合物と接触させて、防錆性皮膜中、特に少なくともその表層に、フラックス作用を持つ化合物を取り込む。それにより、防錆性皮膜の粘着性を保持したまま、防錆性皮膜がフラックス機能も果たすことができるようになる。この時の接触も、水溶液又は水分散液を用いた処理により行うことが好ましい。
【0045】
使用する化合物として好ましいのは、有機ハロゲン化物、中でも特開2002−263885号公報にフラックスとして機能することが記載されている、共にハロゲンで置換されている隣接炭素原子を有する有機ハロゲン化物である。この公報には、ビス(2,3−ジブロモプロピル)スクシネート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−o−フタレート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)p−フタレート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−o−フタルアミド、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−p−フタルアミド、トリス(2,3−ジブロモプロピル)トリメリテート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)トリメリトアミド、テトラ(2,3−ジブロモプロピル)ピロメリテート、テトラ(2,3−ジブロモプロピル)ピロメリトアミド、ビス(2,3−ジブロモプロピル)グリセロール、トリメチロールプロパンビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、ビス(2,3−ジブロモプロピル)タータミド、N,N'−ビス(2,3−ジブロモプロピル)スクシアミド、N,N,N',N'−テトラ(2,3−ジブロモプロピル)スクシアミド、N,N'−ビス(2,3−ジブロモプロピル)ウレア、N,N,N',N'−テトラ(2,3−ジブロモプロピル)ウレア、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロピル)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン、α,α,α−トリブロモメチルスルフォン、α,β−ジブロモエチルベンゼンが例示されている。
【0046】
有機ハロゲン化物は、電子吸引性のハロゲンが電子を有していて、わずかながら極性を示すので、一部の化合物は水に部分的に溶解あるいは分散可能である。本発明では、そのような化合物を使用することが好ましい。本発明での処理の目的に十分な量で水に溶解可能であり、従って本発明で使用するのに特に好ましい有機ハロゲン化物としては、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,2'−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを挙げることができる。
【0047】
有機ハロゲン化物には、エチルアミン塩酸塩などのアミンハロゲン化水素酸塩は含まれない。このようなハロゲン化水素酸塩は水中で強酸のハロゲン化水素酸を遊離し、防錆性皮膜を構成する塩基性の防錆剤化合物と反応してその粘着性を低下させるからである。
【0048】
すなわち、使用する処理液は、防錆性皮膜と反応性のある成分、例えば、酸成分、を実質的な量では含有しない。そのような成分は防錆性皮膜の粘着性を低下させてしまうからである。従って、例えば、有機酸もしくは無機酸系の水溶性フラックス、あるいは活性剤としてアミンハロゲン化水素酸塩を含むフラックスは、上記処理には使用できない。
【0049】
有機ハロゲン化物による処理も、上の防錆剤化合物による処理と同様に実施できる。すなわち、好ましくは有機ハロゲン化物の水溶液を調製し、この水溶液を用いて浸漬又はスプレーにより処理すればよい。処理温度は室温でよいが、若干加温(例、約60℃まで)してもよい。処理液中の有機ハロゲン化物の濃度は0.5質量%以上であればよく、より好ましくは1質量%以上である。濃度の上限はその化合物の溶解度により制限される。処理時間は通常は30〜180秒程度とすることが好ましい。処理後に、水洗することが好ましい。
【0050】
防錆性皮膜の少なくとも表層に有機ハロゲン化物を取り込むことによって形成された、粘着性を有する防錆性皮膜は、その粘着性を利用して、はんだ粉末又ははんだボールを保持することができ、かつ保持したはんだ粉末又ははんだボールのリフロー時にはフラックスを塗布せずにリフローを行うことができる。防錆性皮膜のフラックス作用は長期的に保持される。
【0051】
すなわち、本発明により金属回路露出部がフラックス機能を有する粘着性の防錆性皮膜で被覆されている回路基板は、特許文献1、2に記載されているように、はんだ粉末を付着させてはんだ薄層(はんだプリコート)を形成するのに使用できるだけでなく、BGAやCSPなどに使用するインターポーザ基板のはんだバンプの形成に用いることもできる。使用するはんだは、従来のSn−Pb共晶はんだでもよいが、好ましくはSn−Ag−Cu系やSn−Cu系といった鉛フリーはんだである。
【0052】
はんだ粉末を付着させる場合には、はんだ粉末を付着させた後、フラックスの塗布が必要ないため、フラックス塗布の前処理として行われる加熱によるはんだ粉末の定着工程が不要となる。すなわち、はんだ粉末を散布して防錆性皮膜に付着させ、余分な粉末を除去した後、直ちにリフロー炉で加熱してはんだ粉末を溶融させると、はんだプリコートが金属回路露出部上に形成される。平均粒径が約1〜100μmの鉛フリーはんだの粉末を使用することが好ましい。
【0053】
はんだバンプの形成に使用する場合には、防錆性皮膜が十分な粘着性を保持しているため、その粘着性によってはんだボールを保持することができる。はんだボールの所定位置への搭載は、公知の各種手段を利用して行うことができる。防錆性皮膜がフラックス機能を有するため、はんだボールの搭載後、フラックスを塗布せずに、直ちにリフロー加熱を行う。その融点(液相線温度)より高温に加熱されて溶融したはんだボールは、防錆性皮膜上で十分に広がることができ、所定のはんだバンプが金属回路露出部上に形成される。直径が約5μm〜1 mmのほぼ真球状の鉛フリーはんだのボールを使用することができる。より具体的には、フリップチップボンディング用のはんだバンプ(例、インターポーザ基板の半導体チップ側を向く面の電極上に形成されるはんだバンプ)を形成する場合には、直径が約5〜100μmのはんだボールが使用されることが多い。一方、実装用のはんだバンプ(例、インターポーザ基板のプリント配線板側の面の電極上に形成されるはんだバンプ)の形成では、直径約0.3〜0.76 mmのはんだボールが通常使用される。
【0054】
インターポーザ基板にはんだボール搭載した後、フラックスを塗布してリフローする従来の方法と比較して、上述した本発明の方法では、フラックスを用いないため、フラックスから発生するガスの影響がなく、ボイドの発生がほとんどないという利点がある。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は本発明の例示を目的とし、本発明を制限する意図はない。実施例中、%は特に指定しない限り質量%である。
(実施例1)
縦、横に60個ずつ格子状に並んだ、合計3600個の電極を有するBGA用回路基板(すなわち、インターポーザ基板)の電極上に本発明に従ってはんだバンプを形成した。この回路基板の電極ピッチは150μmであり、各電極は、25μm厚さのレジストの開口部底部にあった。従って電極部はレジスト表面から25μm引っ込んだ位置にあった。レジスト開口部の底部直径は80μmであった。
【0056】
この回路基板を、前処理として、10%硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水洗し、水切り乾燥した。次いで、基板を市販の水溶性プリフラックスからなる処理液(四国化成工業株式会社製商品名「グリコートT」、主成分はアルキルイミダゾール系化合物)に40℃で3分間浸漬した。処理液から取り出した基板を次いで水洗し、水切り乾燥した。電極部表面には防錆性皮膜が約3μm厚で形成されていた。その皮膜は指触で粘着性を示した。
【0057】
なお、使用したプリフラックス(グリコートT)の製造業者が指示する処理条件は30℃で15秒である。これに比べて、本実施例で使用した処理条件は、温度が10℃高く、処理時間は12倍も長かった。それにより防錆性皮膜は粘着性を呈するようになった。
【0058】
こうして粘着性の防錆性皮膜が電極上に形成された回路基板を、その後、フラックス機能のあるtrans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの3%水溶液に室温で1分間浸漬し、液から取り出した後、水中で簡単にすすぎ洗いし、水切り乾燥させた。電極部の皮膜は引続き指触で粘着性を呈していた。
【0059】
次いで、錫96.5−銀3.0−銅0.5(質量%)の組成を有する鉛フリーはんだからなる直径75μmのはんだボールを上記回路基板の電極上に搭載した。このはんだボールの搭載は、回路基板の電極パターンに対応する開口部パターンを有するメタルマスクを利用する公知技術により行った。使用したメタルマスクは、材質が磁性のあるニッケルーコバルト系であり、マスク厚みは50μm、開口部の直径は90μmであった。このマスクを基板上に位置合せして配置し、基板下に配置したマグネットによって仮固定した。次いで、前述のはんだボールを該マスク上に過剰に置き、帯電防止剤が練り込まれたポリエステルフィルムでボールを移動させてマスク開口部に落とし込んだところ、全ての開口部にはんだボールを配置することができた。過剰のボールはマスク外に集めた。その後、マスクを基板と仮固定しているマグネットの吸引力を上回る力で垂直方向に引き上げたところ、マスクのみ引き上げられ、基板上のはんだボールは100%残留し、こうして全電極上にはんだボールが搭載できた。
【0060】
このはんだボールが搭載された回路基板を窒素雰囲気のリフロー炉を、ピーク温度250℃で通過させたところ、該基板の電極部は溶融はんだで濡れて、全電極上に平均バンプ高さ50μm、標準偏差1.5の良好なはんだバンプが形成された。
(比較例1)
実施例1と同様にして、回路基板の電極上に防錆性皮膜の形成とはんだボールの搭載及びリフローを行った。防錆性皮膜を形成した後の、フラックス機能のある水溶液での処理は行わなかった。
【0061】
形成された防錆性皮膜は粘着性があったので、メタルマスクを利用したはんだボールの搭載により全ての電極上にはんだボールが搭載できた。次いでマスクを垂直方向に引き上げて基板から外したが、実施例1と同様に100%のはんだボールが基板上に残った。その後、実施例1と同様の条件でリフロー炉を通過させたところ、はんだボールは元のボール形状のままであった。フラックスが存在しないため、リフロー時に溶融したはんだボールが広がらなかったことが原因である。
【0062】
(比較例2)
比較例1を繰り返したが、比較例1ではんだバンプが形成されなかった原因がフラックスの不存在であると考えられたため、はんだボールの搭載後に、フラックスを塗布してからリフローを行った。
【0063】
すなわち、比較例1と同様の方法で全電極上にはんだボールが搭載された回路基板に、市販の水溶性ポストフラックス(千住金属工業株式会社製商品名「WF−2050」)をスプレーコーティングしてから、実施例1と同様の条件でリフロー炉を通過させてはんだバンプを形成した。
【0064】
その結果、はんだが形成できていない電極が少なくとも約50あり、ブリッジも多発していた。フラックス塗布によって電極上のはんだボールが移動したことが原因である。このボールの移動は、フラックス塗布により防錆性皮膜の粘着性が低下したためと考えられる。
【0065】
(実施例2)
本例では、本発明に係る処理法により形成された粘着性の防錆性皮膜のフラックス効果を例証する。
【0066】
大きさ30×30 mm、厚さ0.3 mmの銅板を、市販のソフトエッチ剤(メック株式会社製、商品名CB−801)を4倍に希釈した液中に30秒間浸漬し、水洗後、水切り乾燥することにより前処理を行った。この銅板を、実施例1で使用したのと同じ市販の水溶性プリフラックス処理液に40℃で3分間浸漬し、水洗した後、水切り乾燥すると、指触で粘着性の防錆性皮膜が約3μm厚さで形成された。その後、この銅板を、フラックス機能を有する薬剤であるtrans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの3%水溶液に1分間浸漬し、水で軽くすすいだ後、水切り乾燥させた。皮膜はなお指触粘着性を保持していた。
【0067】
こうしてフラックス付与された粘着性の防錆性皮膜を形成した銅板の表面に錫96.5−銀3.0−銅0.5(質量%)の組成を有する直径1.6 mmのはんだ線を、直径3.4 mmのリング状にして載せた。このはんだ線を載せた銅板を、温度250℃のホットプレート上に置いたところ、約16秒ではんだが溶け出し、銅板上に濡れ広がった。その時のはんだ広がり率(JIS Z 3197.81.3.1.1に準じて計算)は90%以上であった。
【0068】
上と同様にしてフラックス機能が付与された粘着性の防錆性皮膜を形成した銅板を、室温で3ヶ月経過した後に、上記のはんだ線によるはんだ濡れ性試験を実施したところ、はんだ広がり率は低下しなかった。
【0069】
(比較例3)
実施例2を繰り返したが、プリフラックス処理により粘着性の防錆性皮膜を形成した後、フラックス機能を有する化合物での処理は行わなかった。
【0070】
実施例2と同様のはんだ濡れ性試験では、250℃ホットプレート上で1分経過後も溶融したはんだ線はほとんど広がらず、当初のはんだ線の形状をほぼ保持していた。はんだ広がり率は50%以下であった。
【0071】
このように、本発明によれば、本来はフラックス機能を有していない粘着性の防錆性皮膜を、その粘着性を保持したままフラックス機能のある皮膜に改質できる。従って、本発明は、リフロー前のフラックス塗布を不要にするという、技術上極めて有利な効果を達成する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属回路の一部がはんだ付けのために基板表面に露出し、この金属回路の露出部が粘着性を有する防錆性皮膜で被覆されているはんだ付け用回路基板であって、該防錆性皮膜が、下記化合物群(I)から選ばれた少なくとも一種の化合物と、前記の露出した金属回路中の金属との反応により形成されたものであり、その粘着性を保持したまま、その表層から取り込まれた、フラックス作用を示す有機ハロゲン化物を含有していることを特徴とする、はんだ付け用回路基板。
化合物群(I):ナフトトリアゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、メルカプトベンゾチアゾール系化合物及びベンゾチアゾールチオ脂肪酸系化合物
【請求項2】
前記金属回路がCu、Cu合金、Sn又はSn合金から形成されている、請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記防錆性皮膜が厚さ0.5μm以上、10μm以下である、請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記有機ハロゲン化物の水溶液を前記防錆性皮膜の表面に塗布した、請求項1ないし3のいずれかに記載の回路基板。
【請求項5】
前記有機ハロゲン化物が、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,2'−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1ないし4のいずれかに記載の回路基板。
【請求項6】
金属回路の一部がはんだ付けのために基板表面に露出しているはんだ付け用回路基板を、該金属回路中の金属と反応して粘着性の防錆性皮膜を形成することができる、下記化合物群(I)から選ばれた少なくとも一種の防錆剤化合物を含有する処理液で処理して、金属回路の露出部の表面に粘着性の防錆性皮膜を形成し、次いでこの粘着性の防錆性皮膜を、該防錆剤化合物と反応性を持たない、フラックス作用を示す化合物を含有する処理液と接触させることにより粘着性の防錆性皮膜中に該フラックス作用を示す、有機ハロゲン化物を取り込むことを特徴とする、はんだ付け用回路基板の処理方法。
化合物群(I):ナフトトリアゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、メルカプトベンゾチアゾール系化合物及びベンゾチアゾールチオ脂肪酸系化合物
【請求項7】
前記金属回路がCu、Cu合金、Sn又はSn合金から形成されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記防錆性皮膜が厚さ0.5μm以上、10μm以下である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機ハロゲン化物が2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,2'−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、およびトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の回路基板における金属回路の露出部上に形成された粘着性を有する防錆性皮膜にはんだ粉末またははんだボールを付着させ、次いで、フラックスを塗布することなく、はんだの液相線温度以上の温度に加熱して、該露出部上にはんだ層またははんだバンプを形成することを特徴とする、はんだ層またははんだバンプの形成方法。
【請求項11】
はんだが鉛フリーはんだである、請求項10に記載の方法。

【公開番号】特開2012−114429(P2012−114429A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242582(P2011−242582)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【分割の表示】特願2009−501240(P2009−501240)の分割
【原出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】