説明

精密基板収納容器

非接触型情報媒体の向きを複数の方向に変更可能として通信不良や情報の伝送機能の低下を抑制防止し、異なる場所や装置等で使用されても情報の伝達性にバラツキを招かない精密基板収納容器を提供する。 複数枚の半導体ウェーハを整列収納する容器本体1の底部に着脱自在に装着されるボトムプレート20と、ボトムプレート20に着脱自在に支持されるホルダ50と、ホルダ50に収容されるRFIDシステムの応答器60とを備え、ボトムプレート20を、容器本体1の底面後方に対向するベース板21と、ベース板21に立設される壁板30とから構成する。そして、ベース板21に、水平方向を向くホルダ50を支持する第一の保持機構40を設けるとともに、壁板30には、垂直方向を向くホルダ50を支持する第二の保持機構43を設け、ホルダ50の向きを縦横二方向の間で選択的に変更可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、半導体ウェーハやマスクガラス等からなる精密基板を収納、保管、移送、搬送、輸送したり、あるいは精密基板の加工用に標準化された機械的インターフェイス装置(SMIF)やFIMS(Front−opening interface Mechanical Standard)システムに接続可能な精密基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
従来の精密基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを整列収納する容器本体と、この容器本体を開閉する蓋体と、容器本体の底面に装着されるボトムプレートとから構成されている。
容器本体は、正面の開口したフロントオープンボックスに形成され、左右両側壁の内面には、半導体ウェーハを水平に支持する一対の支持リブが上下方向に複数対並設されており、正面の内周縁部には、複数の係合穴がそれぞれ形成されている。蓋体には、外部からの操作に基づき、出没可能な係合爪を係合穴に嵌入させるラッチ機構が内蔵されている。
上記において、複数枚の半導体ウェーハを処理する場合には、先ず、ハンドリング装置のキャリアステージに、精密基板収納容器を空の工程内容器やオープンカセットと共に位置決めセットする。
すると、蓋体のラッチ機構が解錠操作され、容器本体の正面から気密性を確保する蓋体が取り外されて容器本体が開口する。こうして容器本体が開口すると、複数枚の半導体ウェーハは、その収納状態が確認され、ハンドリング装置の移載機構に下方から順次取り出されるとともに、空の工程内容器あるいはオープンカセットに下方から順に収納され、その後、所定の処理が施されることとなる。
ところで、半導体ウェーハの処理・加工に際しては、半導体ウェーハの品種や精密基板収納容器等に関する情報を正確に識別・認識する必要がある。係る識別を実現するため、従来においては、非接触型の通信機器を用いる生産システムが構築されており、非接触型の通信機器である応答器用のポケットを精密基板収納容器に設置する技術が提案されている(特開2000−21966号公報参照)。また、半導体ウェーハの搬送用キャリアの一端部に収納溝を形成し、この収納溝に応答器等を収納してその開口を閉鎖する技術も開示されている(特許第2651357号公報参照)。
従来においては、以上のようにして半導体ウェーハの品種や精密基板収納容器等に関する情報を識別・認識しているが、これには、以下に示すような問題がある。
先ず、上記特許文献のいずれの場合にも、応答器が一方向しか向いていないので、装置側の通信エリアの設定仕様によっては、例え同一の応答器を使用したとしても、通信不良が発生し易くなるという大きな問題がある。また、応答器は、一般的に円筒形に形成され、指向方向を間違え易いという特徴がある。指向方向を誤ると、情報の伝送機能が低下し、同じ応答器や精密基板収納容器を使用していながら使用時の情報伝達性にバラツキが生じることとなる。
このような問題の詳細を、代表的なRFIDを使用した生産システムを例に説明する。RFIDシステムは、一般にホストコンピュータ、質問器(リーダー/ライター)、及び応答器(IDタグ)を備えている。質問器は、コントローラ、送受信器、及びアンテナから構成され、ホストコンピュータとその制御下で情報を交換する。この質問器は、応答器の情報を読み込んで確認したり、書き込みする機能を有し、精密基板収納容器の使用される装置や工程内の所定装置に設置される。また、応答器は、アンテナ、送受信器、及びメモリーから構成され、精密基板収納容器に設置されて半導体ウェーハのロット、工程内の加工、あるいは処理経過を記憶する。
こうした生産システムは、電磁結合方式、静電結合方式、マイクロ波方式、光通信方式等の伝送方式があり、どの方式を採用するかにより、通信距離、記憶容量、耐環境性等の仕様が定められる。
一方、どのシステム方式を採用するかは、精密基板収納容器の用いられる工場でも統一されておらず、装置間でも伝送信号を送受信する位置や方向がまちまちである。したがって、ある特定の工場で正常に機能していたRFID付き精密基板収納容器を別の工場や工程で使用しようとすると、情報交換が困難になったり、不可能になるおそれが少なくない。
また、読み取り/書き込みエリアにおいて、使用可能な周波数領域は国により異なるので、精密基板収納容器が外国で使用される場合には、国の内外で使用可能なように精密基板収納容器を構成するか、あるいは国内用と外国用に厳格に区分して管理せざるを得ない。
さらに、システムの応答器は、質問器の正面から多少ずれても、通信可能ではあるが、質問器との相対位置が90°変化すると、読み取りエリアが20〜30%減少するので、質問器との位置関係により通信エラーを招くおそれがある。そこで、どのような方式にも対応し、どの工場間や装置間でも互換性のある応答器付きの万能精密基板収納容器が望まれているが、上記問題を解決しようとして読み取りエリアを広く設定すると、周囲に存在する他の応答器の内容を誤って読み取ってしまうという別の問題が新たに生じることとなる。
【発明の開示】
本発明は上記に鑑みなされたもので、非接触型情報媒体の向きを複数の方向に変更可能として通信不良や情報の伝送機能の低下を抑制防止し、異なる場所や装置等で使用されても情報の伝達性にバラツキを招くことのない精密基板収納容器を提供することを目的としている。
本発明においては、上記課題を達成するため、精密基板を収納する容器本体と、この容器本体に支持される容器本体及び又は精密基板識別用の非接触型情報媒体とを含み、この非接触型情報媒体の向きを少なくとも異なる二方向の間で変更可能としたことを特徴としている。
なお、精密基板を半導体ウェーハとし、容器本体を、蓋体により正面が開閉されるフロントオープンボックスとすることができる。
また、非接触型情報媒体を、RFIDシステムの質問器に応答する応答器とすることができる。
また、応答器を、少なくともアンテナ、送受信器、及びメモリーを備えた略円筒形に形成することができる。
また、応答器が嵌め入れられるホルダを含み、このホルダを断面略U字形に形成してその開口周縁部から複数のフランジをそれぞれ外方向に突出させることが可能である。
また、ホルダに、少なくとも水切り機能を有する貫通孔を設けることが可能である。
また、本発明においては、上記課題を達成するため、精密基板を開口した一方から収納する容器本体と、この容器本体の開口を閉鎖する蓋体とを含み、容器本体の少なくとも一面に対向するようプレートを取り付け、このプレートに、容器本体及び又は精密基板識別用の非接触型情報媒体を少なくとも異なる二方向の間で変更可能に支持させるようにしたことを特徴としている。
なお、非接触型情報媒体を、RFIDシステムの質問器に応答する応答器とすることができる。
また、応答器を、少なくともアンテナ、送受信器、及びメモリーを備えた略円筒形に形成することができる。
また、プレートを、少なくとも容器本体の底部に対向するベース板と、このベース板に立て設けられる壁板と、ベース板に設けられて非接触型情報媒体を略水平方向に向けて支持する第一の保持機構と、壁板に設けられて非接触型情報媒体を略垂直方向に向けて支持する第二の保持機構とから構成することができる。
また、容器本体を、蓋体により正面が開閉されるフロントオープンボックスタイプとし、この容器本体にプレートを取り付け、このプレートに非接触型情報媒体をホルダを介して支持させることも可能である。
また、容器本体を、蓋体により正面が開閉されるフロントオープンボックスタイプとし、容器本体にプレートを取り付け、このプレートに非接触型情報媒体をホルダを介して支持させることも可能である。
また、プレートを、少なくとも容器本体の底部に対向するベース板と、このベース板に立て設けられる壁板と、ベース板に設けられてホルダを略水平方向に向けて支持する第一の保持機構と、壁板に設けられてホルダを略垂直方向に向けて支持する第二の保持機構とから構成することも可能である。
また、容器本体の底面後部両側に一対の保持リブを設け、ベース板の両側部には、保持リブに着脱自在に取り付けられる被保持体をそれぞれ設けても良い。
また、ベース板に複数のキャップ孔を設け、この複数のキャップ孔に、精密基板の仕様を識別するためのキャップを選択的に挿入すると良い。
また、壁板の内面を容器本体の背面に対向させ、壁板の外面にバーコードを取り付けると良い。
さらに、第一の保持機構を、ホルダの両端部に引っかかる複数の係止爪と、ホルダの側部にフランジを介して引っかかる係止リブとから構成することができる。
さらにまた、第二の保持機構を、ホルダの上端部に引っかかる係止リブと、ホルダの両側部にフランジを介して引っかかる複数の係止爪とから構成することができる。
また、本発明においては、上記課題を達成するため、精密基板を収納する容器本体と、この容器本体に支持される容器本体及び又は精密基板識別用の非接触型情報媒体と、容器本体の少なくとも一面に対向するよう取り付けられるプレートとを含み、プレートを、少なくとも容器本体の底部に対向するベース板と、このベース板に立て設けられる壁板と、ベース板に設けられて非接触型情報媒体を略水平方向に向けて支持する第一の保持機構と、壁板に設けられて非接触型情報媒体を略垂直方向に向けて支持する第二の保持機構とから構成するとともに、第一、第二の保持機構の少なくともいずれか一方を、非接触型情報媒体よりも大きい多角形を描き、非接触型情報媒体の隅部に引っかかる複数の係止爪と、この複数の係止爪が描く多角形の長辺中央部付近に位置し、非接触型情報媒体が傾いて配置されるときに、係止爪との間に非接触型情報媒体を挟み、かつ非接触型情報媒体の側部に接触する一対の係止リブとから構成し、これら係止爪と係止リブとを用いて非接触型情報媒体の向きを三方向の間で変更可能としたことを特徴としている。
さらに、本発明においては、上記課題を達成するため、精密基板とこれを収納する容器本体の少なくともいずれか一方の識別用の非接触型情報媒体と、この非接触型情報媒体が嵌め入れられるホルダとを含んでなることを特徴としている。
ここで特許請求の範囲における精密基板には、少なくとも150mm(6インチ)、200mm(8インチ)、300mm(12インチ)の半導体ウェーハ(シリコンウェーハ)、マスクガラス、液晶セル、石英ガラス、マスク基板等が含まれる。この精密基板は単数複数何れでも良い。容器本体には、少なくとも正面の開口したフロントオープンボックス、前後等の二方向が開口したオープンボックスやキャリア等が含まれる。この容器本体には、必要に応じて帯電処理等が施される。
非接触型情報媒体には、最低限、情報伝達用で非接触型の応答器からなる通信機器が含まれる。異なる二方向とは、少なくとも精密基板収納容器が加工装置に位置決め搭載された場合における高さ方向の基準平面と略平行な水平方向と、基準平面に略垂直な方向とをいい、横方向、縦方向、斜め方向を含む三方向、四方向以上でも良い。また、ホルダの断面略U字形には、少なくとも断面C字形、U字形、V字形等が含まれる。貫通孔は、単数複数に増減することができ、貫通した溝や切り欠きが含まれる。
プレートのベース板は、容器本体の全底部に対向するものでも良いし、底部の一部と向き合うものでも良く、壁板と一体形成することも可能である。壁板は、直線的な板形、断面略半円弧形やL字形等に形成され、ベース板に固定して設けられても良いし、着脱自在に設けられても良い。また、横方向にスライド可能に取り付けられたり、起伏可能に支持されても良い。また、ベース板に垂直に立て設けられても良いし、傾斜して設けることも可能である。
さらに、本発明に係る精密基板収納容器は、少なくとも半導体の製造に使用されるキャリア、工程間搬送キャリア(FOUP)、出荷用のFOSBとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態を示す全体分解斜視図である。
第2図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態における容器本体を示す底面図である。
第3図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態を示す背面図である。
第4図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態における容器本体にボトムプレートを装着した状態を示す底面図である。
第5図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態におけるボトムプレートの第一の保持機構にホルダを支持させた状態を示す斜視図である。
第6図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態におけるボトムプレートの第二の保持機構にホルダを支持させた状態を示す斜視図である。
第7図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態におけるホルダを背面側から示す斜視図である。
第8図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態におけるホルダを示す正面図である。
第9図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態における容器本体とボトムプレートとの装着状態を示す説明図である。
第10図は本発明に係る精密基板収納容器の実施形態における容器本体の保持リブとボトムプレートの取付部との関係を示す説明図である。
第11図は本発明に係る精密基板収納容器の第2の実施形態を示す説明図である。
第12図は本発明に係る精密基板収納容器の第2の実施形態を示す説明図である。
第13図は本発明に係る精密基板収納容器の第3の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における精密基板収納容器は、第1図ないし第10図に示すように、複数枚の半導体ウェーハを収納する容器本体1と、この容器本体1の底部後方に着脱自在に装着されるプレートであるボトムプレート20と、このボトムプレート20に着脱自在に支持されるホルダ50と、このホルダ50に嵌合収容されるRFIDシステムの応答器60とを備え、ホルダ50の向きを水平方向と垂直方向の二方向の間で選択的に変更するようにしている。
半導体ウェーハは、図示しないが、例えば300mm(12インチ)の円板形を呈するシリコンウェーハからなり、通常25枚あるいは26枚が整列収納される。
容器本体1は、第1図に示すように、軽量性や成形性等に優れるポリカーボネート、COP(シクロオレフィンポリマー)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等の合成樹脂を使用して正面の開口した透明のフロントオープンボックス構造に成形され、十分な強度、剛性、寸法安定性を維持してAGV等からなる自動搬送装置の正常な動作を保証しており、開口した正面が着脱自在の蓋体10により開閉される。この容器本体1は、その天井中央部に図示しないロボティックフランジが螺着され、このロボティックフランジが図示しない天井搬送機に把持されることにより搬送される。
容器本体1の底面の前部両側と後部中央とには、第2図や第4図に示すように、底面視で三角形を描く断面略逆V字形の位置決め具2がそれぞれ別体として、あるいは一体形成され、各位置決め具2が図示しない加工装置の位置決めピンと嵌合して精密基板収納容器を加工装置に位置決めする。各位置決め具2は、耐磨耗性等に優れるポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリブチルテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等により平面視で略小判形に成形される。このような位置決め具2により精密基板収納容器が加工装置に位置決めされると、精密基板収納容器から加工装置に半導体ウェーハがローディングされたり、アンローディングされる。
ここで加工装置とは、精密基板収納容器から半導体ウェーハをローディングして別の工程内容器に移し替える装置、あるいは蓋体10を自動的に開閉したり、オープン状態の容器本体1を搭載して半導体ウェーハをローディングし、半導体ウェーハに酸化、フォトレジスト塗布、露光、エッチング、洗浄、薄膜形成等の各種処理や加工を施す別の装置に半導体ウェーハを供給する装置をいう。
容器本体1の底面の後部両側には、第2図、第4図、第9図、第10図に示すように、後部の位置決め具2の左右両側に隙間をおいて位置する一対の保持リブ3が配設され、この一対の保持リブ3の間にボトムプレート20が着脱自在に装着される。一対の保持リブ3は、それぞれ底面視で略L字形に形成されて内側に溝部4を有し、この溝部4が相対向する。各保持リブ3は、そのガイド機能を営む長片3aが容器本体1の前方から後方にかけて指向し、短片3bが左右方向内側に指向する。
容器本体1の左右両側壁の内面には、第1図に示すように、半導体ウェーハを水平に支持する一対の支持リブ5が上下方向に所定のピッチで複数対並設される。この複数対の支持リブ5は、容器本体1の左右両側壁の内面に、一体形成されたり、あるいは別体として装着される。各支持リブ5は、半導体ウェーハの側部周縁を水平に搭載可能な上面と、自由端部が先細りとなるよう傾斜した下面とから形成され、これらの交わるエッジ部がR状に形成される。容器本体1の開口した正面は、外方向に膨出屈曲形成されてリム部6を形成し、このリム部6の内部段差面がシール面を形成する。また、容器本体1の両側壁外面には、蓋体固定用の係止突部7がそれぞれ突設される。
蓋体10は、第1図に示すように、軽量性や成形性等に優れるポリカーボネート、COP、ポリエーテルイミド等の合成樹脂を使用して略矩形に成形され、容器本体1のリム部6内にエンドレスのシール部材を介して密嵌する。この蓋体10の左右両側部には、容器本体1の係止突部7にコ字形の切り欠きを嵌合する係止板11がそれぞれ回転可能に軸支される。蓋体10の内面には、半導体ウェーハの前部周縁を水平に支持する複数のフロントリテーナ(図示せず)が上下方向に並設される。
容器本体1のリム部6内と蓋体10との間に介在するシール部材は、ポリオレフィン系やポリエステル系の各種熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム、シリコーンゴム等を用いて枠形に成形され、蓋体10の嵌合被覆時にリム部6の内部段差面に圧接されてシールする。このシール部材は、半導体ウェーハを汚染する有機成分の発生が少なく、JISに定められているK6301Aの測定方法による硬度が80°以下の成形材料で成形されることが好ましい。
ボトムプレート20は、第1図、第3図ないし第6図、第9図、第10図に示すように、容器本体1の識別領域である底面後方に近接対向するベース板21と、このベース板21の後端部に立設されて容器本体1の背面の一部(識別領域)に対向する壁板30とから構成され、ベース板21に、水平横方向に指向するホルダ50を保持する第一の保持機構40が設けられるとともに、壁板30には、垂直縦方向に指向するホルダ50を保持する第二の保持機構43が設けられる。このボトムプレート20は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂を使用して成形される。
ボトムプレート20のベース板21は、多角形の平板からなり、前端部中央から後方にかけて回避溝22が切り欠かれており、この回避溝22が容器本体1の後部の位置決め具2に後方から嵌合してボトムプレート20が位置決め具2に不当に干渉するのを規制する。このベース板21には、複数のキャップ孔23が所定の間隔で丸く穿孔され、この複数のキャップ孔23には、加工装置が精密基板の仕様(精密基板収納容器の種類や半導体ウェーハの収納枚数等)を識別するための図示しないキャップ(インフォパッドともいう)が必要に応じ選択的に挿入される。ベース板21の左右両側部には被保持体24がそれぞれ配設され、この一対の被保持体24が容器本体1の一対の保持リブ3に着脱自在に係合する。
各被保持体24は、第5図や第6図、第10図に示すように、ベース板21の側部に張り出し形成される本体25と、この本体25の前部外側から前方に伸びるストッパ突起26と、本体25の前部内側から前方にストッパ突起26よりも細長く伸びる可撓性の首片27と、この首片27の先端部外側に略三角形状に形成される脱落防止突起28と、ストッパ突起26と首片27との間に区画形成される切り欠き空間29とから形成される。ストッパ突起26と脱落防止突起28とは、保持リブ3の長片3aの内側に位置して短片3bを挟持し、この挟持により容器本体1にボトムプレート20が強固に装着される(第10図参照)。
ボトムプレート20の壁板30は、第1図、第5図や第6図に示すように、横長の矩形に形成され、その容器本体1に対向しない背面に、バーコード領域31が形成される。このバーコード領域31には、バーコード32が直接貼着されたり、あるいはバーコード32がポケットを介し着脱自在に挿入される(第3図参照)。
第一の保持機構40は、第5図や第9図に示すように、ベース板21の後端部両側に間隔をおいて対設され、ホルダ50の前後両端部に係止する一対の係止爪41と、ベース板21の後端部に設けられてホルダ50の長い一側部に係止する溝付きの係止リブ42とから構成され、壁板30の下部に隣接する。
第二の保持機構43は、同図に示すように、壁板30の対向面中央部付近に設けられてホルダ50の上端部に係止する溝付きの係止リブ42Aと、壁板30の対向面中央部付近に間隔をおいて対設され、ホルダ50の左右両側部に係止する一対の係止爪41Aとから構成される。
第一、第二の保持機構40・43の係止爪41・41Aは、接触するホルダ50の厚さの1/4〜1/2の範囲の高さを有する略L字形に形成され、略鉤形の先端部に傾斜面が形成されてホルダ50の着脱を容易にする。係止爪41・41Aの高さが係る範囲であるのは、高さが1/4未満の場合には、使用時にホルダ50の外れるおそれがあり、逆に高さが1/2を超える場合には、着脱が困難化し、作業性が悪化するからである。また、第一、第二の保持機構40・43の係止リブ42・42Aは、それぞれL字形に形成される。
ホルダ50は、第7図や第8図に示すように、所定の熱可塑性樹脂を使用して中空の略半円柱形、又は断面略U字形等に成形され、背面や側部等に複数の水切り孔51が所定の間隔で穿孔されており、この複数の水切り孔51が洗浄時の水切り性を向上させたり、応答器60の有無やその破損の有無を視覚的に把握させる。このホルダ50の内部には、応答器60の脱落を規制する抜け落ち防止爪(図示せず)が突設される。ホルダ50の開口周縁の左右両側部には、単数複数のフランジ52がそれぞれ外方向に突設され、このフランジ52が第一の保持機構40の係止リブ42、又は第二の保持機構43の係止爪41Aに着脱自在に係止される。
なお、ホルダ50の水切り孔51については、水切り孔51の形状、大きさ、数を適宜増減変更して応答器60の指向性と合致させることにより、精密基板収納容器に取り付けた場合に加工装置との情報交換の性能を一定に保つことができる。
応答器60は、アンテナ、送受信器、及びメモリーを備えて一般的には円筒形に形成され、表面がガラスや合成樹脂等により被覆保護されており、ホルダ50に嵌合されて半導体ウェーハのロット、工程内の加工、あるいは処理経過を記憶する。
上記構成において、ボトムプレート20の第一の保持機構40に、応答器60を収容したホルダ50を寝かせて取り付ける場合には、第一の保持機構40における一対の係止爪41と係止リブ42との間に、開口が視認できないようホルダ50を横にしてセットし、ホルダ50を左右方向に適宜スライドさせ、係止リブ42の溝にホルダ50のフランジ52を嵌入係止するとともに、一対の係止爪41によりホルダ50を位置決め保持すれば、ホルダ50を安定して保持することができる。
また、第二の保持機構43に、ホルダ50を立てて取り付ける場合、第二の保持機構43における係止リブ42Aと一対の係止爪41Aとの間に、開口が視認できないようホルダ50を起立させてセットし、このホルダ50を適宜スライドさせ、係止リブ42Aの溝にホルダ50のフランジ52を嵌入係止し、かつ一対の係止爪41Aによりホルダ50を位置決め保持すれば、ホルダ50を安定して保持できる。
上記構成によれば、ボトムプレート20の第一、第二の保持機構40・43に応答器60をホルダ50を介して選択的に取り付け、応答器60の向きを縦横二方向の間で適宜変更するようにしているので、装置側における通信エリアの設定仕様に応じ、応答器60の向きを簡単に変更することができる。具体的には、質問器が容器本体1の底面方向に設置されている場合には、第一の保持機構40に応答器60付きのホルダ50を支持させ、質問器が容器本体1の背面方向に設置されている場合には、第二の保持機構43に応答器60付きのホルダ50を支持させれば良い。したがって、同一の応答器60を使用したとしても、通信不良が発生しやすくなるという問題をきわめて有効に解消することができる。
また、応答器60の向きを状況に応じて変更することができるので、質問器との位置関係により、通信エラーを招くおそれもない。また、読み取りエリアを広く設定する必要もないから、周囲に存在する他の応答器60の内容を誤って読み取ることがない。さらに、応答器60は、ホルダ50に収容被覆された状態で使用されるので、損傷防止を図ることができる他、設置向きの誤りを簡易な構成で抑制防止することが可能になる。したがって、情報の伝送機能が低下し、同じ応答器60や精密基板収納容器を使用していながら、使用時の情報伝達性にバラツキが生じるのをきわめて有効に抑制防止することが可能になる。さらにまた、第一、第二の保持機構40・43を比較的簡易に構成してホルダ50を適正、かつ確実に保持することができる。
次に、第11図、第12図は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、ボトムプレート20を、容器本体1の底面に対向するベース板21と、このベース板21に立て設けられる壁板30とから構成し、ベース板21上に、略水平方向に指向する応答器60を直接間接に保持する第一の保持機構40を設けるとともに、壁板30の内面には、略垂直方向に指向する応答器60を直接間接に保持する第二の保持機構43を設けるようにしている。
第一、第二の保持機構40・43は、応答器60を直接保持する構成でも良いし、ホルダ50を介して間接的に保持する構成でも良い。また、係止爪41・41Aや係止リブ42・42Aで応答器60を直接間接に保持しても良いし、これらを省略し、ホルダ50のフランジ52やホルダ50の水切り孔51に干渉する凸部等を利用して保持するようにしても良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、応答器60の取り付けパターンの多様化を図ることができるのは明らかである。
次に、第13図は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、第一、第二の保持機構40・43の少なくともいずれか一方を、ホルダ50よりも横長の大きい長方形を描く複数の係止爪41Aと、この複数の係止爪41Aが描く長方形の長辺中央部に位置する一対の係止リブ42Aとから構成し、複数の係止爪41Aと係止リブ42Aとを用いて応答器60を収容するホルダ50の向きを三方向の間で選択的に変更するようにしている。
本実施形態を第二の保持機構43を例に説明すると、複数の係止爪41Aは、長方形の四隅部に位置するよう壁板30の対向面にそれぞれ配設され、各係止爪41Aが横長のL字形に屈曲形成されており、各係止爪41Aがホルダ50の隅部に係合するよう機能する。一対の係止リブ42Aは、壁板30の対向面に間隔をおいてそれぞれ配設され、各係止リブ42Aが略V字形に屈曲形成される。各係止リブ42Aは、ホルダ50が起立配置される場合には、ホルダ50の側部に間隔をおいて対向し、ホルダ50が左右45°の角度で傾斜配置される場合には、係止爪41Aとの間にホルダ50を挟むとともに、ホルダ50の側部に係止する。このように構成された第二の保持機構43は、複数の係止爪41Aと係止リブ42Aとにより、応答器60を収容するホルダ50の向きを上方向、斜め左上方向、斜め右上方向の間で選択的に変更する。
これに対し、第一の保持機構40の場合、複数の係止爪41Aは、長方形の四隅部に位置するようベース板21にそれぞれ配設され、各係止爪41AがL字形に屈曲形成されており、各係止爪41Aがホルダ50の隅部に係合するよう機能する。一対の係止リブ42Aは、ベース板21に間隔をおいてそれぞれ配設され、各係止リブ42Aが略V字形に屈曲形成されており、各係止リブ42Aが水平配置されたホルダ50の側部に間隔をおいて対向するとともに、左右45°の角度で傾斜配置されたホルダ50の側部に係止する。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。この第一の保持機構40は、複数の係止爪41Aと係止リブ42Aとにより、応答器60を収容するホルダ50の向きを横方向、斜め左横方向、斜め右横方向の間で選択的に変更する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、応答器60の取り付けパターンの多様化を図ることができるのは明らかである。また、ホルダ50のフランジ52を第13図のように形成しても良いが、フランジ52を省略して構造の簡素化を図ることも可能となる。
なお、上記実施形態では容器本体1の開口した正面に蓋体10を単に嵌合したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、容器本体1の正面の内周縁部に複数の係合穴を凹み形成し、蓋体10に、外部からの操作に基づき出没可能な係合爪を係合穴に嵌入させるラッチ機構を内蔵しても良い。また、第一、第二の保持機構40・43の係止爪41・41Aと係止リブ42・42Aの数は、適宜増減することができる。
また、第一、第二の保持機構40・43とホルダ50の一方に凹部を、他方には凸部をそれぞれ形成し、これらを嵌め合わせることによりホルダ50を支持させても良い。これは、容器本体1とボトムプレート20の関係についても同様である。さらに、容器本体1の底部や側壁等に第一、第二の保持機構40・43を設置し、これらに応答器60やホルダ50を保持させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
以上のように本発明によれば、非接触型情報媒体の向きを複数の方向に変更して向けることができるので、通信不良や情報の伝送機能の低下を抑制あるいは防止することができるという効果がある。また、例え精密基板収納容器が異なる場所や装置等で使用されたとしても、情報の伝達性にバラツキが生じるのを防ぐことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密基板を収納する容器本体と、この容器本体に支持される容器本体及び又は精密基板識別用の非接触型情報媒体とを含み、この非接触型情報媒体の向きを少なくとも異なる二方向の間で変更可能としたことを特徴とする精密基板収納容器。
【請求項2】
精密基板を半導体ウェーハとし、容器本体を、蓋体により正面が開閉されるフロントオープンボックスとした請求の範囲第1項記載の精密基板収納容器。
【請求項3】
非接触型情報媒体を、RFIDシステムの質問器に応答する応答器とした請求の範囲第1項記載の精密基板収納容器。
【請求項4】
応答器を、少なくともアンテナ、送受信器、及びメモリーを備えた略円筒形に形成した請求の範囲第3項記載の精密基板収納容器。
【請求項5】
応答器が嵌め入れられるホルダを含み、このホルダを断面略U字形に形成してその開口周縁部から複数のフランジをそれぞれ外方向に突出させた請求の範囲第4項記載の精密基板収納容器。
【請求項6】
ホルダに、少なくとも水切り機能を有する貫通孔を設けた請求の範囲第5項記載の精密基板収納容器。
【請求項7】
精密基板を開口した一方から収納する容器本体と、この容器本体の開口を閉鎖する蓋体とを含み、容器本体の少なくとも一面に対向するようプレートを取り付け、このプレートに、容器本体及び又は精密基板識別用の非接触型情報媒体を少なくとも異なる二方向の間で変更可能に支持させるようにしたことを特徴とする精密基板収納容器。
【請求項8】
非接触型情報媒体を、RFIDシステムの質問器に応答する応答器とした請求の範囲第7項記載の精密基板収納容器。
【請求項9】
応答器を、少なくともアンテナ、送受信器、及びメモリーを備えた略円筒形に形成した請求の範囲第8項記載の精密基板収納容器。
【請求項10】
プレートを、少なくとも容器本体の底部に対向するベース板と、このベース板に立て設けられる壁板と、ベース板に設けられて非接触型情報媒体を略水平方向に向けて支持する第一の保持機構と、壁板に設けられて非接触型情報媒体を略垂直方向に向けて支持する第二の保持機構とから構成した請求の範囲第7項記載の精密基板収納容器。
【請求項11】
容器本体を、蓋体により正面が開閉されるフロントオープンボックスタイプとし、この容器本体にプレートを取り付け、このプレートに非接触型情報媒体をホルダを介して支持させるようにした請求の範囲第5項記載の精密基板収納容器。
【請求項12】
容器本体を、蓋体により正面が開閉されるフロントオープンボックスタイプとし、容器本体にプレートを取り付け、このプレートに非接触型情報媒体をホルダを介して支持させるようにした請求の範囲第6項記載の精密基板収納容器。
【請求項13】
プレートを、少なくとも容器本体の底部に対向するベース板と、このベース板に立て設けられる壁板と、ベース板に設けられてホルダを略水平方向に向けて支持する第一の保持機構と、壁板に設けられてホルダを略垂直方向に向けて支持する第二の保持機構とから構成した請求の範囲第11項記載の精密基板収納容器。
【請求項14】
容器本体の底面後部両側に一対の保持リブを設け、ベース板の両側部には、保持リブに着脱自在に取り付けられる被保持体をそれぞれ設けた請求の範囲第13項記載の精密基板収納容器。
【請求項15】
ベース板に複数のキャップ孔を設け、この複数のキャップ孔に、精密基板の仕様を識別するためのキャップを選択的に挿入するようにした請求の範囲第13項記載の精密基板収納容器。
【請求項16】
壁板の内面を容器本体の背面に対向させ、壁板の外面にバーコードを取り付けた請求の範囲第13項記載の精密基板収納容器。
【請求項17】
第一の保持機構を、ホルダの両端部に引っかかる複数の係止爪と、ホルダの側部にフランジを介して引っかかる係止リブとから構成した請求の範囲第13項記載の精密基板収納容器。
【請求項18】
第二の保持機構を、ホルダの上端部に引っかかる係止リブと、ホルダの両側部にフランジを介して引っかかる複数の係止爪とから構成した請求の範囲第17項記載の精密基板収納容器。
【請求項19】
精密基板を収納する容器本体と、この容器本体に支持される容器本体及び又は精密基板識別用の非接触型情報媒体と、容器本体の少なくとも一面に対向するよう取り付けられるプレートとを含み、プレートを、少なくとも容器本体の底部に対向するベース板と、このベース板に立て設けられる壁板と、ベース板に設けられて非接触型情報媒体を略水平方向に向けて支持する第一の保持機構と、壁板に設けられて非接触型情報媒体を略垂直方向に向けて支持する第二の保持機構とから構成するとともに、第一、第二の保持機構の少なくともいずれか一方を、非接触型情報媒体よりも大きい多角形を描き、非接触型情報媒体の隅部に引っかかる複数の係止爪と、この複数の係止爪が描く多角形の長辺中央部付近に位置し、非接触型情報媒体が傾いて配置されるときに、係止爪との間に非接触型情報媒体を挟み、かつ非接触型情報媒体の側部に接触する一対の係止リブとから構成し、これら係止爪と係止リブとを用いて非接触型情報媒体の向きを三方向の間で変更可能としたことを特徴とする精密基板収納容器。
【請求項20】
精密基板とこれを収納する容器本体の少なくともいずれか一方の識別用の非接触型情報媒体と、この非接触型情報媒体が嵌め入れられるホルダとを含んでなることを特徴とする精密基板収納容器。

【国際公開番号】WO2004/079818
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502994(P2005−502994)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001369
【国際出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】