説明

精製水製造装置

【課題】精製水の回収率が高く、RO膜の寿命が短くなることを抑制することができ、優れた水質の精製水を低コストで製造できる精製水製造装置の提供を目的とする。
【解決手段】原水をイオン交換樹脂によって軟水化する第1軟水化手段12と、原水を活性炭で濾過して残留塩素を除去する塩素除去手段13と、残留塩素が除去された原水を各種イオンの除去率が高いナノ濾過膜で濾過して軟水化する第2軟水化手段15と、原水を逆浸透膜で濾過して精製水を得る精製手段16と、前記逆浸透膜による濾過で前記精製水と共に得られる濃縮水を返送し、原水タンク11の原水と混合する濃縮水返送ライン59と、を有していることを特徴とする精製水製造装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析で使用される透析液などには、カルシウム、マグネシウムなどの2価の陽イオン、残留塩素、細菌類、不純物などが除かれた高純度の精製水が用いられている。このような高純度の精製水は、例えば、水道水などの原水をイオン交換樹脂や活性炭により前処理して前記陽イオンや残留塩素を除き、逆浸透膜(以下、「RO膜」という。)で濾過して細菌類、不純物など除去することにより製造される。精製水の製造には、特にRO膜を用いる精製水製造装置が広く用いられている。
【0003】
精製水製造装置としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
(i)活性炭塔とRO膜を有する精製水製造装置(特許文献1)。
(ii)2つのRO膜を直列配置して原水を2度濾過する精製水製造装置(特許文献2)。
しかし、精製水製造装置(i)のような、RO膜を利用した従来の精製水製造装置では、精製水の回収率、すなわち原水量に対して得られる精製水量の割合が、約60〜70%と低く、原水の30〜40%が濃縮水として排水されている。また、精製水製造装置(ii)のような2つのRO膜で濾過する装置についても、得られる精製水の水質は向上するものの、それぞれのRO膜から濃縮水が排水されるため、精製水の回収率が50〜70%と低く、原水の約30〜50%が濃縮水として排水される。また、特に原水の水質が悪い場合には、精製水の回収率が40〜50%に低下することもある。このように、精製水の回収率が低いと、水道費用が増大するため、ランニングコストが高くなる。
【0004】
一方、精製水の回収率を向上させる精製水製造装置としては、例えば、以下に示す精製水製造装置(iii)が示されている。
(iii)原水を濾過する第1のRO膜と、第1のRO膜を透過しなかった濃縮水を濾過する第2のRO膜とを有する精製水製造装置(特許文献3)。
精製水製造装置(iii)では、第1のRO膜を透過しなかった濃縮水をさらに濾過して精製水を得るため、精製水の回収率が向上する。しかし、第2のRO膜は不純物が濃縮された濃縮水を濾過するため、負担が大きい。そのため、第2のRO膜の寿命(RO膜の寿命は通常3〜4年)が短くなるうえ、得られる精製水の水質も低下する。
また、RO膜を有する装置であって、該RO膜を透過しなかった濃縮水を返送し、原水と混合させて再利用する精製水製造装置も知られている。しかし、該精製水製造装置においても、濃縮水を混合することで原水中の不純物の濃度が約1.5〜2倍になり、RO膜にかかる負担が増大する。そのため、得られる精製水の水質の低下、RO膜の寿命の短縮の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−260463号公報
【特許文献2】特開2008−237971号公報
【特許文献3】特開平11−47566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、精製水の回収率が高く、RO膜の寿命が短くなることを抑制することができ、優れた水質の精製水を低コストで製造できる精製水製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]原水をイオン交換樹脂によって軟水化する第1軟水化手段と、前記第1軟水化手段により軟水化された原水を活性炭で濾過して残留塩素を除去する塩素除去手段と、残留塩素が除去された原水を下記ナノ濾過膜で濾過して軟水化する第2軟水化手段と、前記第2軟水化手段により軟水化された原水をRO膜で濾過して精製水を得る精製手段と、前記RO膜を透過しなかった濃縮水を、前記第2軟水化手段の一次側の原水と混合する濃縮水返送ラインと、を有していることを特徴とする精製水製造装置。
(ナノ濾過膜)
濃度2000mg/LのNaCl水溶液を、運転圧力0.5MPa、温度25℃、pH6.5〜7.0、膜透過水の回収率15%の条件で30分間濾過したときのNaClの除去率が75〜95%であるナノ濾過膜。
[2]前記ナノ濾過膜が、濃度2000mg/LのMgSO水溶液を、運転圧力0.5MPa、温度25℃、pH6.5〜7.0、膜透過水の回収率15%の条件で30分間濾過したときのMgSOの除去率が99.5%以上のナノ濾過膜である、前記[1]に記載の精製水製造装置。
[3]前記濃縮水返送ラインにより前記濃縮水の90%以上が原水と混合される、前記[1]または[2]に記載の精製水製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の精製水製造装置は、精製水の回収率が高く、RO膜の寿命が短くなることを抑制することができ、低コストで、優れた水質の精製水を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の精製水製造装置の実施形態の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の精製水製造装置の実施形態の一例を図1に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の精製水製造装置1は、図1に示すように、原水を貯留する原水タンク11と、原水タンク11から送られてくる原水をイオン交換樹脂によって軟水化する第1軟水化手段12と、第1軟水化手段12により軟水化された原水を活性炭で濾過して残留塩素を除去する塩素除去手段13と、原水の水質をチェックするチェックフィルタ14と、残留塩素が除去された原水を後述するナノ濾過膜(以下、「NF膜」という。)で濾過して軟水化する第2軟水化手段15と、第2軟水化手段15により軟水化された原水(以下、「NF水」という。)をRO膜で濾過して精製水を得る精製手段16と、精製水を貯留する精製水タンク17とを有している。
【0011】
また、精製水製造装置1は、一端が原水タンク11に接続され、途中に原水を送水する送水ポン41が設けられ、他端が第1軟水化手段12に接続された送水ライン51と;一端が第1軟水化手段12に接続され、他端が塩素除去手段13に接続された送水ライン52と;一端が塩素除去手段13に接続され、他端がチェックフィルタ14に接続された送水ライン53と;一端がチェックフィルタ14に接続され、途中に残留塩素が除去された原水を送水する送水ポンプ42が設けられ、他端が第2軟水化手段15に接続された送水ライン54と;一端が第2軟水化手段15に接続され、途中に上流側から逆止弁20、電動弁21、及びNF水を送水する送水ポンプ43が設けられ、他端が精製手段16に接続された送水ライン55と;一端が精製手段16に接続され、途中に上流側から逆止弁22及び電動弁23が設けられ、他端が精製水タンク17に接続された送水ライン56と;一端が精製水タンク17に接続され、途中に上流側から精製水を送水する送水ポンプ44、及び流量調整弁24が設けられ、他端が精製水タンク17に接続された精製水循環ライン57とを有している。
【0012】
また、精製水製造装置1は、一端が第2軟水化手段15に接続され、途中に逆止弁25が設けられ、他端が送水ライン54における送水ポンプ42の上流側に合流接続された濃縮水返送ライン58と;一端が精製手段16に接続され、途中に上流側から電動弁26、流量調整弁27及び逆止弁28が設けられ、他端が原水タンク11に接続された濃縮水返送ライン59と;一端が濃縮水返送ライン59における電動弁26の上流側から分岐し、途中に逆止弁29が設けられ、他端が送水ライン55における電動弁21と送水ポンプ43の間に合流接続された濃縮水返送ライン60と;一端が送水ライン55から分岐し、途中に逆止弁30が設けられ、他端が濃縮水返送ライン59の逆止弁28の下流側に合流接続されたNF水返送ライン61と;一端が精製水タンク17に接続され、途中に上流側から精製水を送水する送水ポンプ45、逆止弁31、及び電動弁32が設けられ、他端が濃縮水返送ライン60における逆止弁29の下流側に合流接続された精製水返送ライン62と;一端が精製水返送ライン62における電動弁32から分岐し、途中に上流側から電動弁33及び逆止弁34が設けられ、他端が濃縮水返送ライン58における逆止弁25の下流側に合流接続された精製水返送ライン63と;一端が精製水返送ライン63における電動弁33から分岐し、途中に逆止弁35が設けられ、他端が送水ライン58における送水ポンプ41の下流側に合流接続された精製水返送ライン64と;一端が送水ライン56における電動弁23から分岐し、他端が濃縮水返送ライン59における逆止弁28の下流側に合流接続された精製水返送ライン65と;一端が精製水循環ライン57から分岐し、精製水を末端機器に送水する精製水送水ライン66とを有する。
【0013】
また、精製水製造装置1は、一端が濃縮水返送ライン58における逆止弁25の上流側から分岐し、途中に上流側から電動弁36及び流量調整弁37が設けられた、第2軟水化手段15から排出される濃縮水を排水する排水ライン67と;一端が送水ライン55における逆止弁20と電動弁21の間から分岐し、途中に電動弁38が設けられた、NF水を排水する排水ライン68と;一端が濃縮水返送ライン60における逆止弁29の上流側から分岐し、途中に弁39が設けられた、精製手段16から排出される濃縮水を排水する排水ライン69と;一端が精製水返送ライン62における送水ポンプ45と逆止弁31の間から分岐し、途中に弁40が設けられた、精製水を排水する排水ライン70と;を有している。
【0014】
原水タンク11の材質としては、精製水製造装置の原水タンクに通常用いられる材質であればよく、例えば、塩化ビニル、ステンレスなどが挙げられる。
原水タンク11は、原水タンク11内の液面レベルを感知する図示しない液面感知手段が設けられており、原水量を調節できるようになっている。液面感知手段としては、例えば、レベルスイッチ、フロートセンサー、ボールタップなどが挙げられる。
また、原水タンク11には、原水の温度を所定の温度に調節する、図示しない加温ユニットが設けられている。加温ユニットとしては、例えば、電気ヒータや、給湯、蒸気などによる加温手段などが挙げられる。
【0015】
第1軟水化手段12は、イオン交換樹脂によって、原水に含まれているCa2+、Mg2+などを樹脂に吸着し、代わりにNaを放出することで軟水化するものであり、イオン交換樹脂を備えた公知の軟水器を用いることができる。軟水器は、樹脂の吸着能力が低下した際、該樹脂に塩水を接触させることで再生できる。
第1軟水化手段12は、Mg2+、Ca2+などの硬度成分を除去することで、第2軟水化手段15にかかる負担(目詰まりなど)を軽減させ、その寿命をより長くする働きもある。
【0016】
塩素除去手段13は、第1軟水化手段12によって軟水化された原水を活性炭で濾過して残留塩素を除去する手段である。具体的には、活性炭フィルタ、活性炭が充填された活性炭濾過器などが挙げられる。
チェックフィルタ14は、原水の水質をチェックするフィルタであり、活性炭の微粉及び原水中の細かい浮遊物などを除去する役割を果たす。チェックフィルタ14は、精製水製造装置に通常用いられる公知のチェックフィルタを用いることができ、例えば、孔径が1〜5μmのチェックフィルタが挙げられる。
【0017】
第2軟水化手段15は、残留塩素が除去された原水を下記NF膜(A)で濾過して軟水化する手段である。
NF膜(A):濃度2000mg/LのNaCl水溶液を、運転圧力0.5MPa、温度25℃、pH6.5〜7.0、透過水の回収率15%の条件で30分間濾過したときのNaClの除去率(以下、「NaCl除去率」という。)が75〜95%のNF膜。ただし、前記運転圧力は、NF膜(A)にかかる圧力を意味する。また、前記回収率は、NF膜(A)に供給する前記NaCl水溶液の量に対する透過水の量の割合を意味する。
NF膜(A)を用いることにより、水質の良好な精製水を高い回収率で製造でき、RO膜の寿命の短縮も抑制できる。NF膜(A)は、前記NaCl除去率が85〜95%であることが好ましい。NaCl除去率が前記範囲内であれば、水質の良好な精製水を高い回収率で製造することが容易になり、RO膜の寿命の短縮を抑制する効果も向上する。
【0018】
また、NF膜(A)は、濃度2000mg/LのMgSO水溶液を、運転圧力0.5MPa、温度25℃、pH6.5〜7.0、透過水の回収率15%の条件で30分間濾過したときのMgSOの除去率(以下、「MgSO除去率」という。)が95%以上であることがより好ましい。前記MgSO除去率が前記範囲内であれば、水質の良好な精製水を高い回収率で製造することがさらに容易になり、RO膜の寿命の短縮を抑制する効果も向上する。
ただし、前記運転圧力は、NF膜(A)にかかる圧力を意味する。また、前記回収率は、NF膜(A)に供給する前記MgSO水溶液の量に対する透過水の量の割合を意味する。
【0019】
NF膜(A)としては、ポリアミドを材質として用いた濾過膜(以下、「ポリアミド系NF膜」という。)が好ましい。ポリアミド系NF膜は、膜素材表面にマイナスの固定荷電を有するので、一般的なNF膜である酢酸セルロース系、ポリスルホン系、ポリアクリロニトリル系に比べ、2価以上の陽イオン、特にカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの硬度成分の除去能力が高く、原水の軟水化に最適である。また、ポリアミド系NF膜は、イオン交換樹脂に比べ、原水の滞留が少ないので、細菌が繁殖しにくい。また、ポリアミド系NF膜は、2nmより小さい粒子や高分子を除去できるので、エンドトキシンの除去も可能である。さらに、ポリアミド系NF膜は、一般的なNF膜である酢酸セルロース系NF膜に比べて透過水の流量が多く、使用できるpH範囲及び温度範囲が広く、耐薬品性が優れている。
【0020】
第2軟水化手段15としては、例えば、特開2009−39696号公報に記載のスパイラル型RO膜モジュールとほぼ同じ構造を有するモジュールであって、集水管の周りに、RO膜の代わりにNF膜(A)を巻き回した円柱状のNF膜エレメントを、円筒状のケーシングに収納したスパイラル型NF膜モジュールが挙げられる。該NF膜モジュールは、原水入口から導入された原水を、NF膜(A)を透過するNF水(軟水)と、NF膜(A)を透過しない濃縮水とに分離することができる。
第2軟水化手段15は、塩素除去手段14から送られてくる残留塩素が除去された原水を、NF膜(A)を透過するNF水と、NF膜を透過しない濃縮水とに分離できるものであれば前記スパイラル型NF膜モジュールに限定はされない。
【0021】
精製手段16は、第2軟水化手段15により軟水化されたNF水をRO膜で濾過して精製水を得る手段である。精製手段16としては、例えば、特開2009−39696号公報に記載のスパイラル型RO膜モジュールが使用できる。ただし、精製手段16は、第2軟水化手段15から送られてくるNF水を、RO膜を透過する精製水と、RO膜を透過しない濃縮水とに分離できるものであれば前記スパイラル型RO膜モジュールには限定されない。
また、RO膜モジュールにおけるRO膜は、精製水製造装置に通常使用されるRO膜を用いることができる。RO膜の材質としては、例えば、ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0022】
精製水タンク17の材質としては、精製水製造装置の精製水タンクに通常用いられる材質であればよく、例えば、塩化ビニル、ステンレスなどが挙げられる。
精製水タンク17には、精製水タンク17内の精製水を紫外線により殺菌処理する紫外線ランプ17aと、精製水タンク17内の精製水を加熱する加温手段17bと、精製水タンク17内の精製水温度を計測する温度センサ(図示せず)とが設けられている。加温手段17bとしては、電気ヒータなどが挙げられる。
また、精製水タンク17は、精製水タンク17内の液面レベルを感知する図示しない液面感知手段が設けられており、精製水量を調節できるようになっている。液面感知手段としては、例えば、レベルスイッチ、フロートセンサー、ボールタップなどが挙げられる。
【0023】
送水ポンプ41〜45は、精製水製造装置で通常使用されるポンプを使用することができ、例えば、多段渦巻ポンプ、プランジャーポンプなどの高圧ポンプが挙げられる。また、送水ポンプ41〜45は、インバータ制御により圧力変動が可能なものであることが好ましい。
送水ポンプ42がインバータ制御できるものであれば、精製水製造装置1の稼動を開始する際に、スロースタート方式(徐々に圧力を上昇させる方式)を採用することで、NF膜(A)に加わる負担を軽減することができる。同様に、送水ポンプ43がインバータ制御できるものであれば、精製水製造装置1の稼動を開始する際に、スロースタート方式を採用することで、RO膜に加わる負担を軽減できる。送水ポンプ44がインバータ制御できるものであれば、精製水を末端機器に送水する必要のない夜間、休日などににおいて、精製水が滞留して汚染されることを防ぐために精製水循環ライン57内で精製水を循環させる際、その圧力を末端機器に送水する際の圧力よりも低く設定することができる。
【0024】
以下、精製水製造装置1による精製水の製造について説明する。
精製水の製造に用いる原水としては、例えば、水道水、地下水などの市水を用いることができる。
精製水の製造を停止している状態から精製水の製造を開始する際には、まず原水タンク11から第2軟水化手段15までに存在している水を抜水する(初期抜水工程)。排水ライン68の電動弁38を開き、その他の弁を閉じた状態として、送水ポンプ41、42を稼動させる。原水は、原水タンク11から送水され、第1軟水化手段12、塩素除去手段13、チェックフィルタ14及び第2軟水化手段15を順次通過した後、送水ライン55から排水ライン68を通じて排水される。それと同時に、精製水の製造停止時に原水タンク11から第2軟水化手段15までに存在していた水が、排水ライン68から排水される。この初期抜水工程は、3分程度行えばよい。
【0025】
次に、第2軟水化手段15から精製手段16までに存在している水を抜水する(一次抜水工程)。電動弁38を閉じ、電動弁21を開いて、電動弁23を送水ライン56と精製水返送ライン65が連通した状態にして、送水ポンプ41、42、43を稼動させる。原水は、原水タンク11から原水が送水され、第1軟水化手段12、塩素除去手段13、チェックフィルタ14、第2軟水化手段15及び精製手段16を順次通過した後、精製水が送水ライン56、精製水返送ライン65、濃縮水返送ライン59を通過して原水タンク11に回収される。それと同時に、精製水の製造停止時に第2軟水化手段15から精製手段16までに存在していた水が原水タンク11に回収される。この一次抜水工程は、1分程度行えばよい。
このような、初期抜水工程と一次抜水工程を行うことにより、仮に精製水の製造を停止していたときに、原水タンク11から精製手段16までの間で、滞留水に細菌が繁殖したとしても、その細菌が精製水タンク17に混入することを防止できる。
【0026】
一次抜水工程の後、精製水の製造を開始する(精製水製造工程)。
原水の温度は、得られる精製水の水質が向上する点から、20〜25℃が好ましい。原水の温度は、原水タンク11に設置された加温手段により調整できる。
【0027】
電動弁38、弁39及び弁40を閉じ、電動弁23を送水ライン56と精製水返送ライン65が連通しない状態に切り換え、他の各電動弁を開く。
原水タンク11から送水ライン51を通って供給される原水は、送水ポンプ41によって加圧された後、第1軟水化手段12、塩素除去手段13及びチェックフィルタ14に順次送られる。第1軟水化手段12では、イオン交換樹脂によりCa2+、Mg2+などが吸着され、代わりにNaが放出されて軟水化される。塩素除去手段13では、第1軟水化手段12で軟水化された原水が活性炭で濾過され、残留塩素が除去される。チェックフィルタ14では、原水中に含まれている細かい浮遊物などが除去される。
【0028】
送水ポンプ41による加圧は、原水が第1軟水化手段12、塩素除去手段13及びチェックフィルタ14を通過する際の圧力損失を考慮に入れ、送水ポンプ42のポンプ入口で原水の圧力が0.1〜0.4MPaとなるように加圧することが好ましい。
【0029】
チェックフィルタ14を通過した原水は、送水ポンプ42によって加圧された後に第2軟水化手段15に送られ、その一部がNF膜(A)を透過して軟水化される。NF膜(A)を透過しなかった残りの原水は濃縮水となる。該濃縮水は、その一部が濃縮水返送ライン58を通って送水ライン54における送水ポンプ42の上流側に戻され、原水として再利用される。また、残りの濃縮水は、排水ライン67から精製水製造装置1外に排出される。第2軟水化手段15の運転圧力(NF膜(A)にかかる圧力)は、送水ポンプ42と、排水ライン67に設けられた流量調整弁37によって調整できる。
【0030】
第2軟水化手段15の運転圧力(NF膜(A)にかかる圧力)は、0.5〜0.8MPaが好ましい。第2軟水化手段15の運転圧力が前記範囲内であれば、水質を低下させすぎずにNF水の流量を増加させることが容易になる。
NF膜(A)を透過する透過水の回収率(以下、「NF回収率」という。)、すなわち処理する原水量に対するNF水量の割合は、70〜85%が好ましい。精製水製造装置1では、第1軟水化手段15の前段に第1軟水化手段12が備えられているため、NF回収率を70%以上としてもNF膜(A)にかかる負担が大きくなりすぎることが抑制される。NF回収率が70%以上であれば、精製水の回収率、すなわち処理する原水量に対して得られる精製水量の割合が向上する。
【0031】
第2軟水化手段15によって軟水化されたNF水は、送水ライン55の送水ポンプ43によって加圧され、精製手段16に送られる。精製手段16に供給されたNF水は、その一部がRO膜を透過して精製水となり、送水ライン56を通って精製水タンク17に送られて貯留される。RO膜を透過しなかった残りのNF水は濃縮水となる。精製水製造装置1においては、RO膜を透過しなかった濃縮水が、濃縮水返送ライン59を通して原水タンク11に返送されて原水と混合される。これにより、使用する原水のうち、濃縮水として排水される量を減少するので、精製水の回収率が向上する。
精製手段16の運転圧力は、送水ポンプ43と、濃縮水返送ライン59に設けられた流量調整弁27によって調節できる。
【0032】
精製手段16の運転圧力は、0.5〜1.0MPaが好ましい。精製手段16の運転圧力が前記範囲内であれば、水質を低下させずに精製水の流量を増加させることが容易になる。
【0033】
精製水製造装置1においては、RO膜を透過しなかった濃縮水のうち濃縮水返送ライン59を通じて返送される濃縮水の割合は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、100%が特に好ましい。精製水製造装置1は、精製手段16の前段に、第1軟水化手段12、塩素除去手段13に加えて、各種イオンの除去効率が優れているNF膜(A)を有する第2軟水化手段15を備えられているため、精製手段16に供給されるNF水の水質が優れている。そのため、精製手段16において、RO膜を透過しなかった濃縮水は、その不純物が濃縮されているにもかかわらず、原水タンク11に貯留される処理前の原水よりも水質が優れたものとなる。したがって、RO膜を透過しなかった濃縮水の90%以上を原水タンク11に戻して原水と混合させても、原水タンク11に貯留される原水の水質が低下することはなく、むしろ希釈によって原水の水質が向上する。
また、前記のように、RO膜を透過しなかった濃縮水を原水タンク11に戻して混合することで原水タンク11内の原水の水質が向上するので、最終的に精製手段16のRO膜を透過して得られる精製水の水質も向上する。加えて、処理する原水の水質が向上することで、RO膜にかかる負担も軽減されるため、RO膜の寿命短縮も抑制できる。
【0034】
また、RO膜を透過しなかった濃縮水の全てを原水タンク11に戻さない場合には、残りの濃縮水は、濃縮水返送ライン60を通じて、送水ライン55における電動弁21と送水ポンプ43の間に戻して再利用する。また、なんらかの問題が生じて、RO膜を透過しなかった濃縮水を、濃縮水返送ライン59を通じて原水タンク11に戻せなくなったときは、その濃縮水を排水ライン69から排水するようにする。
【0035】
精製水タンク17が精製水で満水になった後は、送水ポンプ41、42が停止し、電動弁21が閉じられ、送水ポンプ45が稼動する。これにより、精製水タンク17の精製水が、精製水返送ライン62を通じて送水ライン55における電動弁21と送水ポンプ43の間に戻され、精製手段16を通じて精製水タンク17に戻されて循環する(循環工程)。このように、精製水を循環させることにより、精製水の滞留によって細菌が繁殖することが防止される。また、精製水タンク17内では、紫外線ランプ17aにより紫外線を照射することにより、貯留された精製水が殺菌処理される。
【0036】
従来のRO膜を単独で用いる精製水製造装置では、RO膜の一次側に存在する水の水質が悪いため、その水を一旦排水した後に精製水の循環が行われていた。つまり、精製水製造装置1で言えば、精製水を循環させる前に、排水ライン69から精製手段16のRO膜の一次側の水を排水してから、前記精製水の循環を行っていた。しかし、精製水製造装置1では、第1軟水化手段12及び塩素除去手段13に加えて、各種イオンの除去効率が優れたNF膜(A)を有する第2軟水化手段15を有しているため、精製手段16のRO膜の一次側のNF水の水質が良好である。そのため、RO膜の一次側の水を排水せずに精製水を循環させることができ、コストが削減できる。
【0037】
夜間など精製水の製造を停止しているときには、送水ポンプ44を稼動させ、精製水タンク17から精製水循環ライン57に精製水を取り出し、再び精製水タンク17に戻して、精製水を循環させて絶えず流動状態とすることが好ましい。これにより、精製水が滞留して細菌が繁殖することを抑制できる。
【0038】
また、精製水製造装置1においては、休日や夜間などの精製水の使用がない時間帯に、NF膜(A)を洗浄するフラッシング工程を行うことが好ましい。該フラッシング工程を実施することにより、NF膜(A)の劣化を抑制することが容易になり、その寿命をより長くすることができる。
該フラッシング工程では、電動弁21を閉じた状態でポンプ41、42を稼動させ、原水を原水タンク11から第1軟水化手段12、塩素除去手段13、チェックフィルタ14及び第2軟水化手段15へと送り、第2軟水化手段15を透過したNF水をNF水返送ライン61、濃縮水返送ライン59を通じて原水タンク11に戻す。第2軟水化手段をフラッシングして洗浄した洗浄水は、排水ライン67から排水する。フラッシング工程の実施時間は特に限定されず、10分程度行えばよい。
【0039】
また、休日や夜間などの精製水の使用がない時間帯には、精製水製造装置1内を熱水処理によって消毒すること(熱水処理工程)が好ましい。
熱水処理工程は、精製水製造装置1内における下記経路(a)〜(d)のいずれかに精製水を循環させながら、精製水タンク17内の精製水を加温手段17bによって加熱することにより行われる。
(a)電動弁32によって精製水返送ライン62と精製水返送ライン63が連通され、電動弁33によって精製水返送ライン63と精製水返送ライン64が連通され、加熱した精製水が、精製タンク17から、精製水返送ライン62、精製水返送ライン63、精製水返送ライン64を通じて送水ライン51に送られ、第1軟水化手段12、塩素除去手段13、チェックフィルタ14、第2軟水化手段15及び精製手段16を通じて精製水タンク17に戻される経路。
(b)電動弁32によって精製水返送ライン62と精製水返送ライン63が連通され、電動弁33によって精製水返送ライン63と精製水返送ライン64が連通しないようにされ、加熱した精製水が、精製タンク17から、精製水返送ライン62、精製水返送ライン63を通じて送水ライン54に送られ、第2軟水化手段15及び精製手段16を通じて精製水タンク17に戻される経路。
(c)電動弁32によって精製水返送ライン62と精製水返送ライン63が連通しないようにされ、加熱した精製水が、精製タンク17から精製水返送ライン62を通じて送水ライン55に送られ、精製手段16を通じて精製水タンク17に戻される経路。
(d)加熱した精製水が、精製タンク17から精製水循環ライン57に取り出されて、再び精製水タンク17に戻される経路。
【0040】
精製水を加熱する際は、紫外線ランプ17aによる精製水タンク17内の精製水への紫外線の照射は停止することが好ましい。加熱しながらの紫外線ランプの照射はランプ寿命を短命にする傾向がある。
【0041】
熱水処理工程における精製水の温度は、60〜95℃が好ましく、80〜95℃がより好ましい。熱水処理時の精製水の温度が高いほど、精製水製造装置1内における各部材の連結部部分の熱水処理が容易になる。また、熱水処理時の精製水の温度が低いほど、精製水製造装置1の熱劣化を抑制しやすい。
精製水の加熱は、各電動弁及び送水ポンプ、加温手段17bなどの駆動を制御することにより、5℃/分以下の速度で昇温させることが好ましい。精製水の加熱速度が5℃/分以下であれば、NF膜(A)、RO膜などが熱劣化することを抑制しやすい。
また、熱水処理工程では、精製水製造装置1内で加熱した精製水を透析装置などの末端機器に送水し、末端機器を熱水処理するようにしてもよい。これにより、透析装置内などで繁殖した菌や、エンドトキシン(発熱性物質)を低減することが容易になる。
【0042】
なお、熱水処理の代わりに、薬液(消毒剤)による消毒処理が行えるようになっていてもよく、薬液を混合した精製水を加熱した熱水消毒液を循環させて消毒処理を行うものであってもよい。
【0043】
以上説明した各工程は、精製水製造装置1に制御部を設けて、該制御部によって各部分の動作を制御することにより行うことが好ましい。
前記制御部は、処理部と、インターフェイス部と、カレンダータイマとから概略構成される。制御部は、初期抜水工程、一次抜水工程、精製水製造工程、循環工程、フラッシング工程及び熱水処理工程の各工程を制御し、かつ、これらの工程をカレンダータイマに設定された任意の日時に実施できるものである。
【0044】
前記カレンダータイマは、年月日および時刻を管理する時計部と、精製水製造装置の運転スケジュールを記憶する記憶部とを具備してなり、記憶部に記憶された設定日時に電気信号を発信できるようにされている。
前記インターフェイス部は、各ラインに設けられたすべての弁、送水ポンプと処理部との間を電気的に接続するものである。
前記処理部は、カレンダータイマからの電気信号や処理部に入力された操作信号に基づいて、各ラインに設けられた弁の開閉および送水ポンプの運転の開始、停止を制御するものである。
【0045】
なお、この処理部は、専用のハードウエアにより実現されるものであってもよく、メモリおよび中央演算装置(CPU)によって構成され、処理部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することにより、その機能を実現させるものであってもよい。
また、制御部には、周辺機器として、入力装置、表示装置などが接続される。ここで、入力装置とは、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボードなどの入力デバイスのことをいい、表示装置とは、CRTや液晶表示装置をいう。
【0046】
以上説明した精製水製造装置1は、RO膜を透過しなかった濃縮水を返送して処理前の原水と混合して再利用することで、精製水の回収率が向上する。また、精製手段16のRO膜の前段に、第1軟水化手段12、塩素除去手段13に加えて、各種イオンの除去効率が高いNF膜(A)を有する第2軟水化手段15を採用することにより、RO膜を透過しなかった濃縮水を返送して再利用しても、原水の水質が低下せずRO膜にかかる負担が増加しない。加えて、RO膜を透過しなかった濃縮水を混合することで処理前の原水の水質が向上するため、最終的に得られる精製水の水質も向上する。このように、精製水製造装置1では、RO膜の寿命が短くなることを抑制しつつ、優れた水質の精製水を高い回収率で安価に製造できる。特に、RO膜を透過しなかった濃縮水の90%以上を返送して再利用することで、従来約60〜70%であった精製水の回収率を、約75〜90%程度にまで向上させることができると考えられる。
【0047】
なお、本発明の精製水製造装置は、前述したイオン交換樹脂を有する第1軟水化手段、活性炭を有する塩素除去手段、NF膜(A)を有する第2軟水化手段、RO膜を有する精製手段、及びRO膜を透過しなかった濃縮水を第1軟水化手段の一次側に返送して原水と混合する濃縮水返送ラインを備えているものであれば、前述した精製水製造装置1には限定されない。
例えば、チェックフィルタ14を有していない精製水製造装置であってもよい。また、透析機器などの末端機器と連動するようになっていてもよい。
【0048】
また、前述した精製水製造装置1では、RO膜を透過しなかった濃縮水は濃縮水返送ライン59によって原水タンク11に返送される形態であったが、該濃縮水を返送する位置は原水タンク11には限定されない。例えば、RO膜を透過しなかった濃縮水を、原水タンク11と第1軟水化手段12の間に返送するものであってもよく、第1軟水化手段12と塩素除去手段13とチェックフィルタ14の間に返送するものであってもよく、チェックフィルタ14と第2軟水化手段の間に返送するものであってもよい。ただし、得られる優れた水質の精製水が得られやすく、RO膜の寿命の短縮を抑制しやすい点から、RO膜を透過しなかった濃縮水を、第1軟水化手段12の一次側の原水に混合することが好ましく、原水の温度調節、処理量の調節等が容易になる点から、RO膜を透過しなかった濃縮水を原水タンク11に返送する前記精製水製造装置1がより好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
本実施例における水質の測定は、以下に示す方法で行った。
[水質の測定]
水質の測定は、電気伝導度計により導電率(単位:mS/m)を測定することにより行った。
導電率とは電気の流れ易さを表す指標で、水中に各種イオンが多く含まれているほど導電率は高くなる。導電率が低ければ低いほど、不純物を含まない良質な水である。
【0050】
[例1]
図1に例示した精製水製造装置1を用いて、精製水を製造した。第1軟水化手段12として、軟水器(Na型樹脂40L)を用い、塩素除去手段13として活性炭フィルタ(濾過精度5μm以下、繊維状活性炭)を用い、チェックフィルタ14としてポアサイズ(濾過精度1μm、ポリプロピレン製)を用いた。また、第2軟水化手段15として、NF膜(A)(NaCl除去率85〜95%、MgSO除去率99.5%、材質ポリアミド系)を有するスパイラル型NF膜モジュール(特開2009−39696号公報に記載のスパイラル型RO膜モジュールとほぼ同じ構造)を用い、精製手段16として、RO膜(NaCl除去率99.5%、材質ポリアミド系)を有するスパイラル型RO膜モジュール(特開2009−39696号公報に記載の構造)を用いた。
【0051】
処理する原水の水質は、6.20mS/mであった。原水タンク11内の原水温度を24.2℃に調整し、送水ポンプ41による加圧で原水の圧力を0.22MPaまで加圧した。チェックフィルタ14の入口における原水の圧力は0.18MPaであった。また、送水ポンプ42により、第2軟水化手段15の一次側の圧力を0.18MPa、運転圧力を0.68MPa、その濃縮水側の圧力を0.68MPa、二次側の圧力(送水ライン55のNF水の圧力)を0.20MPaとし、NF回収率Aを90.2%とした。ここで、NF回収率A(単位:%)は、下式(I)で求められる。
A=(B−C)/B (I)
前記式(I)中、Bは処理する原水量(L/時間)、Cは第2軟水化手段15から排水される排水量(L/時間)である。
なお、第2軟水化手段15において、NF膜(A)を透過しなかった濃縮水は、その一部を排水し、残りを濃縮水返送ライン58を通じて第2軟水化手段15の一次側に返送した。
【0052】
また、送水ポンプ43により、精製手段16の一次側の圧力を0.16MPa、運転圧力を0.43MPa、その濃縮水側の圧力を0.43MPaとし、RO回収率Dを80.3%とした。ここで、RO回収率D(単位:%)は、下式(II)で求められる。
D=(B−C−F)/(B−C) (II)
前記式(II)中、Bは処理する原水量(L/時間)、Cは第2軟水化手段15から排水される排水量(L/時間)、Fは精製手段16から排水される排水量(L/時間)である。
なお、精製手段16のRO膜を透過しなかった濃縮水は、一部を排水し、それ以外を濃縮水返送ライン59を通じて原水タンク11に返送した。
【0053】
[例2]
第2軟水化手段15を、NF膜(NaCl除去率50〜70%、MgSO除去率98%、材質ポリアミド系)を有するスパイラル型NF膜モジュールに変更し、精製水製造装置1の運転条件を表1に示すように変更した以外は、例1と同様にして精製水を製造した。
【0054】
[例3]
第2軟水化手段15を、NF膜(NaCl除去率60〜70%、MgSO除去率99%、材質ポリアミド系)を有するスパイラル型NF膜モジュールに変更し、精製水製造装置1の運転条件を表1に示すように変更した以外は、例1と同様にして精製水を製造した。
【0055】
各例において、第2軟水化手段15に供給される原水の水質、第2軟水化手段15におけるNF膜(A)を透過したNF水の水質、及び精製手段16のRO膜を透過した精製水の水質を測定した結果を表1に示す。
なお、表1中、全体回収率G(精製水の回収率)は、下式(III)で求められる。
G=(B−C−F)/B (III)
前記式(III)中、Bは処理する原水量(L/時間)、Cは第2軟水化手段15から排水される排水量(L/時間)、Fは精製手段16から排水される排水量(L/時間)である。
また、第2軟水化手段15の供給水は、チェックフィルタ14から送られてくる原水と、濃縮水返送ライン58を通じて返送するNF膜を透過しなかった濃縮水とを合わせたものである。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示すように、NF膜(A)を有する第2軟水化手段15を用いた例1では、得られた精製水の水質が0.14mS/mと非常に良好であった。また、第2軟水化手段15のNF膜(A)を透過したNF水の水質も1.06mS/mと、処理前の原水の水質に比べて良好であるので、精製手段16のRO膜を透過しなかった濃縮水の水質(5.38mS/m)は処理前の原水の水質(6.20mS/m)よりも良好である。そのため、RO膜を透過しなかった濃縮水を原水タンク11に返送して処理前の原水と混合すれば、原水タンク11中の原水が希釈されてその水質が向上し、RO膜にかかる負担を増大させずに、精製水の回収率を向上させることができ、さらに精製水の水質も向上する。
なお、第2軟水化手段15に供給される供給水の水質が31.25mS/mと悪くなっているのは、NF膜(A)を透過しなかった濃縮水を返送しているためである。
【0058】
一方、NF膜(A)の代わりに、各種イオンの除去率がNF膜(A)よりも低いNF膜を用いた例2及び3では、得られる精製水の水質が0.26mS/m、0.28mS/mと低くなった。また、NF膜を透過したNF水の水質が5.22mS/m、5.28mS/mと例1に比べて低くなっていることから、精製手段16においてRO膜を透過しなかった濃縮水の水質は、26.10mS/m、26.80mS/mと、処理前の原水の水質よりも著しく低くなっている。そのため、原水タンク11に返送して処理前の原水に混合する濃縮水が増加するほど、原水タンク11内の原水の水質が悪くなり、RO膜にかかる負担が高まってその寿命が短くなるうえ、得られる精製水の水質が低下する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の精製水製造装置はエンドトキシン、生菌などの除去に優れている。製造される精製水は、特に人工透析に好適に利用でき、また他部門でも活用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 精製水製造装置 11 原水タンク 12 第1軟水化手段 13 塩素除去手段 14 チェックフィルタ 15 第2軟水化手段 16 精製手段 17 精製水タンク 59 濃縮水返送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水をイオン交換樹脂によって軟水化する第1軟水化手段と、
前記第1軟水化手段により軟水化された原水を活性炭で濾過して残留塩素を除去する塩素除去手段と、
残留塩素が除去された原水を下記ナノ濾過膜で濾過して軟水化する第2軟水化手段と、
前記第2軟水化手段により軟水化された原水を逆浸透膜で濾過して精製水を得る精製手段と、
前記逆浸透膜を透過しなかった濃縮水を、前記第2軟水化手段の一次側の原水と混合する濃縮水返送ラインと、
を有していることを特徴とする精製水製造装置。
(ナノ濾過膜)
濃度2000mg/LのNaCl水溶液を、運転圧力0.5MPa、温度25℃、pH6.5〜7.0、膜透過水の回収率15%の条件で30分間濾過したときのNaClの除去率が75〜95%であるナノ濾過膜。
【請求項2】
前記ナノ濾過膜が、濃度2000mg/LのMgSO水溶液を、運転圧力0.5MPa、温度25℃、pH6.5〜7.0、膜透過水の回収率15%の条件で30分間濾過したときのMgSOの除去率が99.5%以上のナノ濾過膜である、請求項1に記載の精製水製造装置。
【請求項3】
前記濃縮水返送ラインにより前記濃縮水の90%以上が原水と混合される、請求項1または2に記載の精製水製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−212628(P2011−212628A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85331(P2010−85331)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(504346204)三菱レイヨン・クリンスイ株式会社 (57)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】