説明

糖尿病及び脂質障害の治療のための置換カルボン酸誘導体、それらの製造及び使用

【課題】糖尿病及び脂質障害の治療のための置換カルボン酸誘導体、それらの製造及び使用を提供する。
【解決手段】本発明は、式1で示されるラセミの又は光学異性体的に濃縮された置換カルボン酸及びその誘導体;又は医薬的に許容されるその塩に関する。本発明はまた、医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤と混合された式1で表される化合物の有効量を含む医薬組成物を含む。該組成物は、併用療法のための更なる治療剤を含み得る。本発明は糖尿病及びそれに関連する代謝性疾患の治療及びコントロールにおいて有用である医薬的に活性な化合物の新しい種類を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インシュリン非依存性糖尿病(II型糖尿病)及びそれに関連する血管疾患、同様に、肥満症及び脂質障害の治療及びコントロールのために有用な置換カルボン酸、それらの誘導体、それらの類縁体、それらの互変異性体、それらの立体異性体、それらの医薬的に許容される塩、それらの医薬的に許容される溶媒和物及びそれらを含む医薬的に許容される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、種々の理由による体のホメオスタシスの機能不良に由来して、血漿中のグルコース濃度が正常範囲を超えて(空腹状態において>126mg/dL)維持される疾患又は高血糖症を指す。米国内だけで、人口の6.2%(1700万人)が、冠状動脈性心臓病、脳卒中、高血圧、神経障害、腎症、網膜症のようなマクロ血管疾患及び微小血管疾患に関連する多くの合併症を有する糖尿病にかかっている。米国糖尿病学会により、糖尿病を持つ成人の心臓疾患による死亡率及び脳卒中の危険性が2ないし4倍であることが示された。毎年、糖尿病のために12000ないし24000人が失明しており、30000人が一方又は両方の下肢を失っている。血中グルコース濃度のコントロールは、糖尿病に関連する病的状態及び合併症を顕著に減少する。
【0003】
糖尿病には二つの型(タイプ)が存在する。I型は体がβ細胞の破壊のためインシュリ
ンを産生することができない疾患であり、II型は、体が体内のインシュリン抵抗性の増大によりインシュリンを十分に利用できない疾患である。糖尿病患者の90%以上がII型である。
【0004】
糖尿病の一般的な治療法は、グリブリド及びグリメピリドのようなスルホニルウレア剤を投与し、膵臓のβ細胞を刺激して、インシュリン抵抗性を埋め合わせる更なるインシュリンを産生することである。これらのインシュリン分泌促進薬の長期使用は、結果として最終的にβ細胞の終局的枯渇と更なる抵抗性の誘導を引き起こす。インシュリンの一時的な過剰による急性低血糖症は、これらの薬剤のもう一つの副作用である。
メトホルミンやフェノホルミンのようなビグアニドはある程度までインシュリン感受性を増強させるが、副作用として乳酸アシドーシス、嘔吐及び下痢が報告されている。
【0005】
TDZ(チアゾリジンジオン)タイプの薬剤が最近、市場に追加された。これらは、脂肪細胞の分化と、エネルギーの蓄積及び消費に関与する遺伝子の調節のために重要であるPPARγ、ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体γを刺激することによりインシュリン感受性を増強させることが知られている。TDZ薬剤は顕著にインシュリン感受性を増強し、低血糖症の発生を防ぐと報告されているが、その一部は重篤な肝毒性問題を有している。これにより、レズリン(Rezulin)は、2000年に米国市場から撤収された。
【0006】
現在、研究者は、チアゾリジンジオン官能基に関連する肝毒性活性を回避するために、非TDZ系薬剤を活発に模索している。PPARαは、脂肪酸のβ酸化に関与すると報告されている。クロフィブレートやフェノフィブレートのようなPPARαのリガンドは、顕著にトリグリセリド及びLDLを低下させることが知られている。多くの糖尿病患者は、肥満症、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症及び合併症を悪化する高LDL濃度を伴っているため、血糖異常及び異常脂質血症を同時に直しえるPPARα及びPPARγのデュアルアゴニストを発見するための試みがなされている。そのようなデュアルアゴニ
ストの例として、JTT−501(H.シンカイ等、Drugs Future、1999年、24頁
)、2−メチル−2{4−[2−(5−メチル−2−アリールオキサゾール−4−イル)エトキシ]フェノキシ}プロピオン酸(ダウン(Dawn)A.ブルークス(Brooks)等、J.Med.Chem.、2001年、44巻、2061−4頁)及び3−[4−(2−カルバゾール−
9−イル−エトキシ)−フェニル]−2−エトキシ−プロピオン酸(P.ソルバーグ(Sauerberg)等、J.Med.Chem.、2001年、44巻、2061−4頁)が挙げられる。
【0007】
PPARδの活性化はHDL濃度を上昇させることが提示されてきた(レイボウィッツ(Leibowitz),国際公開第97/28149号パンフレット、1997年8月)。つい最近、PPARδの選択的アゴニストが、インシュリン抵抗性の中高年アカゲザルにおいて、薬量依存的な血清HDL−Cの上昇及び付随するLDL−C及びVLDL−TGの低下を示したことが報告された(W.R.オリバー(Oliver)等、PNAS、v.98、pp.5306−5311、2001年)。PPARδ単独の活性化又はPPARα及び/又はPPARγの同時活性化との組み合わせは、HDLを上昇し且つLDLを低下する脂質異常症のための治療の策定において望ましいものであり得る。
【特許文献1】国際公開第97/28149号パンフレット
【非特許文献1】H.シンカイ等、Drugs Future、1999年、24頁
【非特許文献2】ダウン(Dawn)A.ブルークス(Brooks)等、J.Med.Chem.、2001年、44巻、2061−4頁
【非特許文献3】P.ソルバーグ(Sauerberg)等、J.Med.Chem.、2001年、44巻、2061−4頁
【非特許文献4】W.R.オリバー(Oliver)等、PNAS、v.98、pp.5306−5311、2001年
【発明の開示】
【0008】
本発明は、血糖、インシュリン、トリグリセリド脂肪酸及びコレステロールを低下し且つHDLを上昇するのに効果的であるにも拘らず、典型的なPPARα、PPARβ/δ及びPPARγ類の構造に属さない新しい分類の化合物である、式1の一般式で表される化合物に関する。以下に示す式1で表される化合物は、現行の薬剤及び候補物質を超える有利な効果を有する新しい分類の薬剤としての可能性を有する。
発明の開示
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明:
本発明は更に、以下の図により説明される:
【図1】図1はインシュリン100nMの存在下の2−デオキシ−D−グルコース取り込みにおける本発明の化合物(1μM)の効果を示したものである。
【図2】図2はインシュリン刺激性のグルコース取り込みにおける各光学異性体及びラセミ化合物の効果を示したものである。
【図3】図3はdb/dbマウスの経口グルコース負荷試験における本発明化合物の効果を示したものである。
【0010】
発明の要約
本発明は式1
【化1】

により示される置換カルボン酸及びその誘導体又はその医薬的に許容される塩に関するが、ここで、R1ないしR8、n、X、Ar、Wは、以下で定義され、*は、不斉炭素原子を示す。本発明はまた、式1で表される化合物の有効量を医薬的に許容されるキャリア又は賦形剤と混合して含有する医薬組成物を含む。本発明は糖尿病及びその関連する代謝性疾患の治療及びコントロールにおいて有用である医薬的に活性な化合物の新しいクラスを提供するため、技術の進歩をもたらすものである。本発明の化合物は、ラセミ混合物の形態、又は他の光学異性体が実質的に存在しない光学異性体であり得る。(S)光学異性体が好ましい。
【0011】
生物学的検定法において、式1で表される化合物はdb/dbマウスにおいてグルコース、インシュリン、遊離脂肪酸の顕著な減少を示し、そのため、ヒトにおいて同様の効果を発揮することが期待されるが、それは、糖尿病、肥満症、アテローム性動脈硬化症、血管炎症及びそれらの関連疾患の治療及びコントロールのために適用し得るものである。同様にコレステロール食餌ラットにおいて、式1で示される化合物は、総コレステロール及びトリグリセリドの減少、並びに、HDL濃度の上昇を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の詳細な説明
本発明に従って、式1
【化2】

[式中、R1、R2、R3及びR4は独立して、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数1ないし7のアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−SO2−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−SO2NRab、−SO2−フェニ
ル基、−OSO2−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−C(O)−炭素原子数1ない
し7のアルキル基、−CO−フェニル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択されるか、又は、R1ないしR4の隣接するペアーは、それらが結合する環部分と一緒になって、N、O及びSから独立して選択される0ないし4個のヘテロ原子を含む
、部分的に飽和しているか又は不飽和の5ないし8員環(該環は未置換であるか又は1ないし3個のハロゲン原子及び1ないし4個の炭素原子数1ないし7のアルキル基で置換される。)を表す。]で表される化合物が提供される。
【0013】
1、R2、R3及びR4で表される好ましい基は、独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、−CF3、CF2CF3、炭素原子数1ないし4のアルキル基、炭素原子数1ない
し4のハロアルキル基、−SO2Me及びフェニル基(該フェニル基は、未置換であるか
又は、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、−CF3及び−OCF3から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択される。より好ましくは、R1、R2、R3及びR4は、独立して、水素原子、フッ素原子、−CF3及び−SO2Meからなる群より選択される。
【0014】
5は、水素原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7
のアルキル基、−O−フェニル基、−SO2−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−S
2−フェニル基、−C(O)−炭素原子数1ないし3のアルキル基、−C(O)−フェ
ニル基、−C(O)O−炭素原子数1ないし3のアルキル基及び−C(O)NRab(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択される。好ましくは、R5は、水素原子、メチル
基、エチル基、CF3、CF2CF3、メトキシ基、フェノキシ基、−SO2Me、−SO2
Ph、−COMe及び−C(O)Ph(該フェニル基は、未置換であるか又は、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、−CF3及び−OCF3から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)の群から選択される。より好ましくは、R5は、−C
3又は−CF2CF3である。
【0015】
6及びR6´は独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、ヒドロキシ基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択される。R6及びR6´は、好ましくは、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、メトキシ基及びエトキシ基から選択され、最も好ましくは、水素原子である。
【0016】
7は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1
ないし7のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択される。R7は、好ましくは、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基及びフェニル基
であり、最も好ましくは、水素原子であり;
【0017】
8は、H、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキ
ル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立
して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択される。R8は、好まし
くは、炭素原子数1ないし7のアルキル基又は炭素原子数1ないし7のハロアルキル基又はフェニル基であり、最も好ましくは、エチル基、−CH2CF3又はフェニル基であり;
【0018】
Arは、式1における2価結合基として存在し、未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から独立して選択される1ないし5個の置換基で置換される、6ないし10員の単環系又は二環系を表す。Arで示される2価の環系は、好ましくは、未置換であるか又はハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及び−OCF3からなる群より独立して選択され
る1ないし5個の置換基で置換され;
【0019】
Xは、=O、=CRab、=NRa、=CO、=S及び−SO2から選択される2価結合基を表し、ここで、Ra及びRbは、以下で定義される通りであり;
nは、1ないし6の整数を表し;
*は、不斉炭素原子を表し;及び
【0020】
Wは、ヒドロキシ基、−ORc、−NRcd及び−NRcSO2eからなる群より選択され、ここで、Rc及びRdの各々は独立して、水素原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基及び炭素原子数1ないし7のハロアルキル基を表し、Reは、水素原子、炭素原子数1
ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)からなる群より選択される。Wは、好ましくは、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、−NHMe、−NMe、−NHSO2Me、−N
HSO2Ph及び−NHCOMeの群から選択される。
【0021】
以下に、式1において、R1ないしR8、X、Ar及びWのような種々の記号により表される基の定義を示す。
用語“アルキル基”は1ないし7個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素を意味する。好適なアルキル基の限定されない例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を含む。
【0022】
用語“ハロアルキル基”は1ないし7個の炭素原子を有し且つ1ないし7個のハロゲン原子で置換された直鎖又は分岐鎖の炭化水素を意味する。ハロアルキル基の限定されない例は、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,2,2−トリフルオロエチル基等を含む。
【0023】
用語“アリール基”は炭素原子のみを含む単環又は2環性の芳香環を意味する。
ここで、置換基であるアリール基は、6ないし10員の単環性の又は2環性の環系であり、好ましくは、フェニル基又はナフチル基である。フェニル基が最も好ましい。該用語はまた、別の環に縮合したアリール基も記載し得る。
【0024】
用語“ハロゲン原子”は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を含む。好
ましいハロゲン原子は、塩素原子及びフッ素原子である。
【0025】
本発明に従う化合物の好ましい群は、Wがヒドロキシ基を表し、R6及びR6´が水素原子を表し、Arがフェニル基を表し、Xが酸素原子を表し、R1ないしR4の少なくとも三つが水素原子を表し且つ他が水素原子、ハロゲン原子、−CF3又はフェニル基を表し、
5が−CF3又は−CF2−CF3を表し、R8が低級アルキル基又は−CH2−CF3を表
し、nが2を表す化合物である。
【0026】
本発明の化合物はラセミ形態であり得るが、好ましくは、光学異性体的に濃縮された形態である。光学異性体的に濃縮されるとは、式1で表される化合物の一つの光学異性体が、他の光学異性体の実質的な非存在下において存在することを意味する。実質的な非存在とは、該濃縮された異性体が光学異性体混合物の少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約97%及び最も好ましくは約99%であることを意味する。式1の化合物の(S)光学異性体が好ましい。
一般に、式1の最終生成物の立体化学は、以下に記載される新規中間体であるアミノ化合物の立体化学に依存し、(2S)立体異性体に濃縮されたアミノ中間体は、対応する濃縮されたカルボン酸を生成し、(2R)立体異性体で濃縮されたアミン中間体は対応する濃縮されたカルボン酸を生成する。
【0027】
用語“組成物”は活性成分及びキャリアを構成する不活性成分を含む生成物、並びに、如何なる2種若しくはそれ以上の前記成分の組合せ、複合若しくは凝集からの又は1種若しくはそれ以上の前記成分の解離からの又は1種若しくはそれ以上の前記成分の他のタイプの反応若しくは相互作用からの、直接的若しくは間接的な結果として得られる如何なる生成物を包含することを意図する。
従って、本発明の組成物は本発明の化合物及び医薬的に許容されるキャリアを混合することにより製造される如何なる組成物をも包含する。
【0028】
用語“医薬的に許容される塩”は無機若しくは有機塩基又は有機塩基及び無機若しくは有機酸を含む医薬的に許容される非毒性の塩基又は酸から生成される塩を意味する。無機塩基から誘導される塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等を含む。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムの塩である。医薬的に許容される有機非毒性塩基から誘導された塩は、1級、2級、3級アミンの塩、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン等のような天然由来の置換アミンを含む置換アミンの塩を含む。本発明の化合物が塩基性の場合、塩は、無機及び有機酸を含む医薬的に許容される非毒性の酸から生成されうる。
【0029】
そのような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、塩酸、臭化水素酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等を含む。特に好ましくは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸が挙げられる。ここで用いられる、式1で表される化合物の言及は、その医薬的に許容される塩をも含むことを意図すると理解できる。
【0030】
ここに示す分類の化合物は、種々の公知の抗糖尿病性化合物に観られる、1,3−チアゾリジンジオン部分を含まない。従って、対象となる化合物がdb/dbマウスにおいて強力な血中グルコース低下効果を示したことは、予想外だと考えられる。対象となる化合物はまた、同様に優れた脂肪酸低下効果を示した。
従って、本発明の化合物は糖尿病又は高血糖症、神経障害、腎症、網膜症、肥満症のよ
うなその関連疾患及び同様に、高脂血症又はアテローム性動脈硬化症、炎症性疾病のようなその関連疾患の治療及びコントロールのための優れた可能性を有すると考えられる。本発明は、式1で表される構造を有する化合物及びその医薬的に許容される塩、医薬的に許容されるキャリアにおける式1で表される化合物の混合物並びにこれらの化合物のプロドラッグを含む。
【0031】
式1で表される本発明の化合物はグルコース、遊離脂肪酸、LDL、VLDL及びトリグリセリドの低下及びHDLの上昇において有効である。対象となる化合物はまた、ITT(インシュリン負荷試験)及びOGTT(経口グルコース負荷試験)においてインシュリン及びグルコース量の顕著な減少(AUC)を示すが、これらはインシュリン感受性化合物で観察される典型的な現象である。
従って、対象となる化合物はヒトにおけるインシュリン非依存性糖尿病(NIDDM)及び腎症、神経障害及び網膜症のようなその関連する合併症の治療及びコントロールにおいて、同様に、肥満症及び高脂血症、異常脂質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症及びアテローム性動脈硬化症のようなその関連疾患の治療及びコントロールにおいて有効であることが期待される。
【0032】
本発明に従う好ましい化合物の群は式2で表される:
【化3】

ここで、R1、R2、R3及びR4は独立して、水素原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、ハロゲン原子、−O−炭素原子数1ないし5のアルキル基、炭素原子数1ないし5のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし5のアルキル基、炭素原子数1ないし5のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし3のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし3のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の基で置換される。)からなる群より選択されるか、又は、R1ないしR4の隣接するペアーは、それらが結合する環部分と一緒になって、N、O及びSから独立して選択される0ないし4個のヘテロ原子を含む、部分的に飽和しているか又は不飽和の5ないし8員環(該環は未置換であるか又は1ないし7個のハロゲン原子又は1ないし4個の炭素原子数1ないし7のアルキル基で置換される。)を表し;
5は、−CF3、−CF2CF3、−SO2Me、−COMe及び−CO2Meからなる群より選択され;
8は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基及び−CH2CF3からな
る群より選択され;
*は、不斉炭素原子を表す。
【0033】
本発明に従う別の好ましい化合物の群は式3で表される:
【化4】

ここで、R1ないしR4は独立して、水素原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし5のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし5のアルキル基、炭素原子数1ないし5のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし3のアルキル基及び炭素原子数1ないし5のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の基で置換される。)からなる群より選択されるが、但し、R1ないしR4の少なくとも2つは水素原子を表し;
5は、−CF3、−CF2CF3、−SO2Me、−COMe及び−CO2Meを表し;
8は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基及び−CH2CF3からな
る群より選択され;
*は、不斉炭素原子を表す。式2又は3で示される化合物は、それらの濃縮された(S)光学異性体の形態にあることが好ましい。
【0034】
合成方法
本発明はまた、上述の化合物の製造方法に関する。式1及び2で表される化合物は以下に記載するように製造することができる。式1及び2で表される化合物の製造方法並びにそれらを含む配合物は、これに続く実施例において更に説明されるが、これらは限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0035】
1.Yが塩素原子、臭素原子、メタンスルホネート又はp−トルエンスルホネートのような脱離基である構造2と、R1ないしR8、X、Ar及びWが前記で定義された通りである構造3との間のアルキル化反応をDMF中、DMSO中又はアセトニトリル中、K2CO3又はCs2CO3を用いて行う。DEADはジエチルアゾジカルボキシレートを表す。
【化5】

2.Yが塩素原子、臭素原子、メタンスルホネート又はp−トルエンスルホネートのような脱離基である構造1と、R1ないしR8、X、Ar及びWが前記で定義された通りである構造4との間のアルキル化反応をアセトニトリル及びトルエンのような溶媒中、K2CO3又はCs2CO3のような塩基を用いて行う。
【化6】

【0036】
2種の異なった方法が、実施例1ないし8に記載されるような式1タイプの化合物を作成するために開発された。それらは、スキーム3及び4に記載されるように、ベンズイミダゾール誘導体に4−ヒドロキシ−2−エトキシフェニルプロピオン酸部分を結合することにより合成される。
【化7】

【化8】

式1の範囲内にある化合物の好ましい群は、カルボン酸、即ち、Wがヒドロキシ基である化合物である。式1はまた、望ましい群のカルボン酸のプロドラッグである特定の化合物を含む。ここで利用されるプロドラッグは、患者に投与されたとき、又は患者に投与された後に、請求項に記載の化合物へ変換される化合物であり、請求項に記載の活性化合物の範囲内に含まれる。式1で表される好ましいカルボン酸のプロドラッグの非限定の例は、カルボン酸群のエステル、例えばアルキル部分が直鎖又は分岐鎖であり得る炭素原子数1ないし6のアルキルエステル又は患者に投与された後、より容易に加水分解され易くす
る官能基を有するエステルであり得る。
【0037】
投与及び投与量範囲
全ての好適な投与経路が、本発明の化合物の有効投与量を、哺乳動物、特にヒトへ提供するために使用される。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼内、経肺、経鼻、経皮等が使用される。投与形態は錠剤、トローチ剤、分散剤、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾル、経皮パッチ等を含む。好ましくは、式1で表される化合物は経口で投与される。
【0038】
使用される活性成分の有効投与量は使用される特定の化合物、投与形態、治療される病気及び治療される病気の重症度に依存して変化する。そのような投与量は、以下の議論に従って、当業者により容易に確定され得る。
【0039】
糖尿病及び/又は高血糖症又は高トリグリセリド血症又は他の疾患を治療又は予防する際、式1で表される化合物が使用される場合、本発明の化合物が患者の体重1kgあたり約0.1mgないし100mgの1日投与量で投与され、好ましくは1日1回又は分割された用量で2−6回/日として与えられ、又は持続放出形態において投与されると、通常、好結果が得られる。ヒトを含むより大きな哺乳類のためには、総1日投与量は約0.1mgないし1g、好ましくは約0.1ないし500mgである。70kgの成人の場合、総1日投与量は通常、約0.7mgないし350mgとなる。この投与量は最良の治療反応をもたらすために調整され得る。
【0040】
医薬組成物
本発明のもう一つの観点として式1で表される化合物及び医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物を提供する。
前述のような、経口、経鼻、非経口等のような投与の種々の形態のために、式1で表される化合物、その塩は慣用の医薬品配合技術に従う医薬キャリアの混合物中に活性成分として組み合わせることができる。該キャリアは、投与形態に依存して変化し、水、グリコール、油、アルコール、香料、保存剤、着色剤、甘味料等のような多様なキャリアから選択され得る。キャリアはまた、ハード及びソフトカプセル錠又は錠剤のために、澱粉、糖、セルロース、結合剤等及び溶液、分散液又は懸濁液のために水、アルコール、グリセロール、セルロース、油等を含む。
【0041】
併用療法
式1で表される化合物は、それらの最適な医薬特性を更に高め得る他の薬剤と併用して使用し得る。併用療法は、前述の目的疾患の治療の有効性を更に高めるために、又は、症状のより広範囲をカバーするために、又は、投与しなければならない各治療剤の投与量を少なくするために、又は、療法の薬物動態学的特性を高めるために使用され得る。好ましい効果は、糖尿病疾患に伴う疾患及び合併症の治療及びコントロールのための有効性の増強である。
【0042】
別々の投与を介して又は単回の薬剤投与形態において、式1で表される化合物と併用して投与され得る他の活性成分の例は、限定されないが、以下を含む:
(a)(i)メトホルミン及びフェンホルミンのようなビグアニド、(ii)ピオグリタゾン、ロシグリタゾン及びエングリタゾンのようなPPARγアゴニスト(iii)プロテインチロシンフォスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、及び(iv)ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤を含むインシュリン感受性改善剤;
(b)インシュリン又はインシュリン様物質;
(c)トルブタミド及びグリブリドのようなスルホニルウレア;
(d)α−グリコシダーゼ阻害剤;
(e)ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトロバスタチン、イタバスタチン、ロスバスタチン及びリバスタチンを含むHMG−CoA還元酵素阻害剤のようなコレステロール低下剤;
(f)MBX−102のようなシクロオキシナーゼ−2(COX−2)阻害剤;
(g)オルリスタットのようなリパーゼ阻害剤;及び
(h)利尿剤。
【0043】
本発明は更に、上述の何れかの化合物及び医薬的に許容されるキャリアを含む医薬的に許容される組成物を含む。
【0044】
本発明の化合物は、総コレステロール(TC)を減少させ;高密度リポタンパク質(HDL)を上昇させ、低密度リポタンパク質(LDL)を低下させるが、これは冠状動脈性心臓病及びアテローム性動脈硬化症において有益な効果を有する。式1で表される化合物は、体重の減少において及び高血圧症、冠状動脈性心臓病、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、抹消血管疾患及び関連する障害のような疾患の治療及び/又は予防のために有用であり得る。対象となる化合物は、家族性高コレステロール血症、高トリグリセリド血症の治療、アテローム生成性のリポタンパク質、VLDL(超低密度リポタンパク質)及びLDLの低下のために有用であり得る。本発明の化合物は、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症及びネフロパシーを含む特定の腎疾患の治療のために使用することができる。
【0045】
式1で表される化合物はまた、インシュリン抵抗(II型糖尿病)、レプチン抵抗、耐糖能異常、脂質異常症、シンドロームXに関連する障害、例えば、高血圧症、肥満症、インシュリン抵抗、冠状動脈性心臓病及び他の心臓血管障害の治療及び/又は予防のために有用である。
これらの化合物はまた、認知症における認知機能の改善のための、糖尿病性合併症、内皮細胞の活性化に関連する障害、乾癬、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、炎症性腸疾患、骨粗しょう症、筋強直性ジストロフィー、膵炎、動脈硬化症、網膜症、黄色腫、炎症を治療するための及び癌の治療のためのアルドース還元酵素阻害剤として有用であり得る。本発明の化合物は、HMG CoA還元酵素阻害剤、フィブリン酸誘導体、ニコチン酸、コレスチラミン、コレスチポール及びプロブコールのような脂質低下剤/リポタンパク質低下剤の1種以上との組み合わせ/併用で上記疾患の治療及び/又は予防において有用である。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明の化合物の製造方法を含む本発明を提示するために提供され、いかなる方法によっても本発明を限定するものと解釈されるべきでない。本発明の範囲は添付のクレームにおいて定義される。
実施例
本発明の化合物の具体例は、以下に名前で列挙された、実施例1ないし7として提供された。それらの構造は表1に示されている。
表1
【表1】

【0047】
実施例1
下式を有する2−エトキシ−3−(4−{2−[2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)プロピオン酸の製造:
【化9】

工程A:下式を有するエチル3−[4−(2−ブロモエトキシ)フェニル]−2−エトキシプロパノエートの製造
【化10】

エチル2−エトキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエート(2.38g、10mmol)をTHF(20mL)中に溶解し、トリフェニルホスフィン(3.93g、15mmol)を添加し、その後、ブロモエタノール(1.06mL、15mmol)を添加した。反応混合物をN2雰囲気下で0℃に冷却した。反応混合物に、DEAD(ジ
エチルアゾジカルボキシレート)(2.36mL、15mmol)を10分かけてゆっくり添加した。反応が完結した後、反応混合物を60℃で終夜攪拌した。溶媒を除去した後、残渣を、酢酸エチル及びヘキサンの溶媒系を用いるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した(1.96g、57%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.21(t、2H)、6.85(t、
2H)、4.30(t、2H)、4.20(q、2H)、4.00(t、1H)、3.6
7−3.58(m、3H)、3.40−3.33(m、1H)、2.97(t、1H)、1.13−1.28(m、6H)
Mass m/z:362.7(M+2O)
【0048】
工程B:下式を有するエチル2−エトキシ−3−(4−{2−[2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)プロパノエートの製造:
【化11】

エチル3−[4−(2−ブロモエトキシ)フェニル]−2−エトキシプロパノエート(371mg、1mmol)をDMF(5mL)中に溶解し、K2CO3(552mg、4mmol)を添加し、その後、2−トリフルオロメチルベンズイミダゾール(204mg、1.1mmol)を添加した。反応混合物を60℃で17時間加熱した。反応が完結した後、水を添加し、生成物をEt2Oで抽出した。生成物を、溶媒として酢酸エチル及びヘ
キサンを用いるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した(333mg、70%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.92(d、1H)、7.68(d、
1H)、7.53−7.40(m、2H)、7.14(d、2H)、6.73(d、1H)
、4.46(t、2H)、4.34(t、2H)、4.18(q、2H)、3.95(t、1H)、3.63−3.60(m、1H)、3.58−3.31(m、1H)、2.95(t、2H)、1.26−1.14(m、6H)
Mass m/z:451.7(M+H)
【0049】
工程C:2−エトキシ−3−(4−{2−[2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)プロピオン酸の製造
EtOH(5mL)中のエチル2−エトキシ−3−(4−{2−[2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)プロパノエート(238.5mg、0.5mmol)の攪拌溶液へ、水(2mL)中のNaOH(2mL、2M水溶液、2mmol)を0℃で一気に添加した。反応混合物を全てのエステルが消失するまで(TLC)室温で攪拌した。EtOHを真空下除去し、残渣を水に溶解した。溶液を3N HClを用いてpH4まで酸性化し、析出した酸をEtOAcで抽出して白色固体として生成物を得た(167mg、77.3%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.90(d、1H)、7.67(d、
1H)、7.51−7.37(m、2H)、7.13(d、2H)、6.73(d、2H)
、4.75(t、2H)、4.33(t、2H)、4.03(q、1H)、3.63−3.57(m、1H)、3.45−3.40(m、1H)、3.09−2.90(m、2H)、1.17(t、3H)
Mass m/z:423.5(M+H)
【0050】
実施例2
下式を有する2−エトキシ−3−(4−{2−[2−(ペンタフルオロエチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)プロピオン酸の製造:
【化12】

工程A:2−(ペンタフルオロエチル)−1H−ベンズイミダゾール
1.CH2Cl2(25mL)中のo−ニトロアニリン(2.76g、20mmol)及びトリエチルアミン(8.3mL、60mmol)の攪拌溶液に無水ペンタフルオロプロピオン酸(9.7mL、50mmol)を窒素雰囲気下、0℃で添加した。添加が完結した後、反応混合物を室温まで暖め、18時間攪拌した。反応混合物をCH2Cl2で希釈し、1H.HCl及び飽和NaHCO3で連続して洗浄し、乾燥した。溶媒をエバポレートした
後、生成物を精製した(5.4g、95%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ11.54(s、1H)、8.78(d、1H)、8.35(d、1H)、7.79(q、1H)、7.40(q、1H)
【0051】
2.2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−N−(2−ニトロフェニル)プロパンアミド(5.37g、18.9mmol)をTHF(15mL)中に溶解し、10% Pd/C(560mg)を添加した。溶液を70psiで終夜水素化した。触媒をセライト(登録商標:Celite)でろ過し、溶液をエバポレートした。残渣をMeOH(50mL)中に溶解し、濃HCl(10mL)を添加し、12時間攪拌した。溶媒を除去した後、生成物を飽和NaHCO3及び酢酸エチルで抽出した。溶媒をエバポレートし、2−(ペンタ
フルオロエチル)−1H−ベンズイミダゾールを、酢酸エチル及びヘキサンの溶媒系を用いるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーを用いて精製された淡黄色固体として単離した(4.1g、92%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.78−7.75(m、2H)、7.48−7.42(m、2H)
Mass/z:237.0(M+H)
【0052】
工程B:エチル2−エトキシ−3−(4−{2−[2−(ペンタフルオロエチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)プロパノエートの製造:
この化合物を実施例1の工程Bに記載された手順を用い、エチル3−[4−(2−ブロモエトキシ)フェニル]−2−エトキシプロパノエート(371mg、1mmol)、2−(ペンタフルオロエチル)−1H−ベンズイミダゾール(259mg、1.1mmol)、K2CO3(552mg、4mmol)及びDMF(5mL)から製造した。収量420mg(84%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.92(d、1H)、7.69(d、
1H)、7.50(t、1H)、7.41(t、1H)、7.13(d、2H)、6.7
2(d、2H)、4.77(t、2H)、4.35(t、2H)、4.15(q、2H)、3.96−3.91(m、1H)、3.61−3.56(m、1H)、3.31(d、2H)、1.25−1.20(m、6H)
Mass m/z:501.3(M+H)
【0053】
工程C:2−エトキシ−3−(4−{2−[2−(ペンタフルオロエチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)プロピオン酸の製造
工程Bからのエチルエステル(200mg、0.4mmol)を実施例1の工程Cに記載された手順によりEtOH(10mL)及び水(5mL)中でNaOH(64mg、1.6mmol)を用いて加水分解した(141mg、75%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.93(d、1H)、7.69(d、
2H)、7.50(t、1H)、7.41(t、1H)、7.13(d、2H)、6.7
3(d、1H)、4.81−4.77(brs、1H)、4.35(t、2H)、4.03(t、2H)、4.03(t、1H)、3.62−3.57(m、1H)、3.46−3.40(m、1H)、3.08−2.91(m、2H)、1.16(t、3H)
Mass m/z:473.1(M+H)
【0054】
実施例3
下式を有する3−(4−{2−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロピオン酸の製造:
【化13】

工程A:下式を有する2−{[2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}エタノールの製造
THF(20mL)中の2−アミノエタノール(5mL、150mmol)に1−フルオロ−2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)ベンゼン(6.9mL、50mmol)を0℃でゆっくり添加した。添加が完了した後、反応混合物を室温で24時間攪拌した。THFをロータリーエバポレーターを用いてエバポレートし、残渣を水と酢酸エチルを用いて抽出した。酢酸エチルを更なる水で洗浄し、乾燥及びエバポレートして結晶性の2−アミノエタノール誘導体を得た(10.0g、80%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ8.53−8.49(brs、2H)、7.64(d、1H)、7.02(d、1H)、4.01(t、2H)、3.57(t、2
H)
【0055】
工程B:2−{[2−アミノ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}エタノール
2−{[2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}エタノール(3.05g、12mmol)をTHF(10mL)中に溶解し、70psiで水素化した。触媒を除去した後、溶媒をエバポレートすることにより生成物を得、次の工程のために使用した(2.70g、100%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.10(d、1H)、6.99(s、1H)、6.68(d、1H)、3.94(t、2H)、3.36(t、2H)
Mass m/z:221.1(M+H)
【0056】
工程C:2−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エタノールの製造
CH2Cl2(10mL)中の2−{[2−アミノ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}エタノール(880mg、4mmol)、ジメチルアミノピリジン(488mg、4mmol)及びEt3N(2.7mL、20mmol)の溶液をN2雰囲気下、0℃に冷却した。無水トルフルオロ酢酸(2.2mL、16mmol)を反応混合物中へゆっくり添加した。添加が完了した後、反応混合物を室温で終夜攪拌した。添加が完了した後、反応混合物を室温で終夜攪拌した。反応混合物をメチレンクロリドで希釈し、1N HClに続いて飽和NaHCO3で洗浄し、乾燥した。溶媒をエバポレートし、残渣をメ
タノール10mL中に溶解した。濃HCl(2mL)を添加し、2時間攪拌し、溶媒をエバポレートした。生成物を酢酸エチルで抽出し、乾燥した。酢酸エチルをエバポレートしてイミダゾール誘導体を固体として得た(800mg、67%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ8.13(s、1H)、7.76−7.66(m、2H)、4.55(t、2H)、4.11(t、2H)
Mass m/z:299.1(M+H)
【0057】
工程D:2−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エチルメタンスルホネートの製造
CH2Cl2(15mL)中の2−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エタノール(5.36g、17mmol)の攪拌溶液に、Et3N(5.0mL、36mmol)を添加し、0℃に冷却した。冷却溶液にメタンスル
ホニルクロリド(1.53mL、19.8mmol)をゆっくり添加した。添加が完了した後、反応混合物を室温で終夜攪拌した。反応混合物をCH2Cl2で希釈し、1N.HClに続いて飽和NaHCO3で洗浄し、乾燥した。溶媒をエバポレートして生成物を淡黄
色固体として得た(5.44g、88%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ8.22(s、1H)、7.75(t、2
H)、4.74(t、2H)、4.61(t、2H)、2.93(s、3H)
Mass m/z:377.0(M+H)
【0058】
工程E:メチル3−(4−{2−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロパノエートの製造
トルエン(20mL)中に2−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エチルメタンスルホネート(1.88g、5mmol)及びエチル2−エトキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエート(1.19g、5mmol)を入れ、K2CO3(1.38g、10mmol)を添加した。反応混合物を還流下で30時間加熱した。反応混合物に水を添加し生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を乾燥及びエバポレートして、溶媒系として酢酸エチル及びヘキサンを用いるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより生成物を精製した(2.01g、77%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ8.21(s、1H)、7.84(d、1H)、7.74(d、1H)、7.13(d、2H)、6.71(d、2H)、4.71(t、2H)、4.35(t、2H)、4.17(q、2H)、3.95(t、1H)、3.60−3.48(m、1H)、3.35−3.20(m、1H)、2.84(t、2H)、1.23(t、3H)、1.15(t、3H)
Mass m/z:519.2(M+H)
【0059】
工程F:3−(4−{2−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロピオン酸の製造
実施例1の工程Cに記載された手順に従って、工程Eからの前記エチルエステルを加水分解した(3.78g、91%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ8.19(s、1H)、7.84(d、
1H)、7.74(d、1H)、7.14(d、2H)、6.72(d、2H)、4.79
(t、2H)、4.35(t、2H)、4.04(t、1H)、3.62−3.57(m、1H)、3.47−3.42(m、1H)、3.03−2.96(m、2H)、1.16(t、3H)
Mass m/z:491.1(M+H)
【0060】
実施例4
下式を有する3−(4−{2−[5−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロピオン酸の製造
【化14】

工程A:2−[(4−フルオロ−2−ニトロフェニル)アミノ]エタノールの製造
この化合物は実施例3の工程Aに記載の類似の手順を用いて、1,4−ジフルオロ−2−ニトロベンゼン(21.8mL、100mmol)及び2−アミノエタノール(10mL、300mmol)から製造した。収率(19.2g、96%)
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ8.14(brs、1H)、7.94−7.88(m、1H)、7.31−7.25(m、1H)、6.91(dd、1H)、3.97(t、2H)、3.52(t、2H)
【0061】
工程B:2−[(2−アミノ−4−フルオロフェニル)アミノ]エタノールの製造
工程Aからのニトロ化合物(4.98g、24.9mmol)をTHF10mL中に溶解し、Pd(C)10%(480mg)を添加し、70PSIで終夜水素化した。触媒をろ過し、THFで洗浄した。THFをエバポレートしてアミノ化合物を得た(4.74g、99%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ6.63−6.58(m、1H)、6.50−6.44(m、2H)、3.85(mt、2H)、3.30(brs、2H)、3.21(t、2H)
Mass m/z:171.1(M+H)
【0062】
工程C:2−[5−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール
−1−イル]エタノールの製造
この化合物は実施例3の工程Cの記載と類似の手順を用いて、2−[(2−アミノ−4−フルオロフェニル)アミノ]エタノール及び無水トリフルオロ酢酸から製造された。収率(5.60g、84%)
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.56(q、1H)、7.45(q、1H)、7.25−7.18(m、1H)、4.49(t、2H)、4.08(t、2H)
Mass m/z:249.1(M+H)
【0063】
工程D:2−[5−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エチルメタンスルホネートの製造
この化合物は実施例3の工程Dの記載と類似の手順を用いて製造された。
収率(2.40g、92%)
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.59−7.52(m、2H)、7.31−7.24(m、1H)、4.71(t、2H)、4.58(t、2H)、2.90(s、3H)
Mass m/z:327.1(M+H)
【0064】
工程E:エチル3−(4−{2−[5−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロパノエートの製造
この化合物は実施例3の工程Eの記載と類似の手順を用いて製造された。
収率(1.50g、80%)
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.64(q、1H)、7.54(q、
1H)、7.26−7.25(m、1H)、7.11(d、2H)、6.71(d、2H)
、4.73(t、2H)、4.32(t、2H)、4.17(q、2H)、3.94(t、1H)、3.62−3.57(m、1H)、3.35−3.30(m、1H)、2.94(t、2H)、1.23(t、3H)、1.16(t、3H)
Mass m/z:469.3(M+H)
【0065】
工程F:3−(4−{2−[5−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロピオン酸の製造
工程Eからのエチルエステルは実施例1の工程Cに記載の手順に従って加水分解された(1.10g、83%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.64(q、1H)、7.55(q、
1H)、7.26−7.22(m、1H)、7.13(d、2H)、6.73(d、2H)
、4.74(t、2H)、4.33(t、2H)、4.05(t、1H)、4.02−3.43(m、2H)、3.06−2.96(d、2H)
Mass m/z:441.1(M+H)
【0066】
実施例5
化式を有する3−(4−{2−[5−フェニル−2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロピオン酸の製造
【化15】

工程A:エチル3−(4−{2−[5−フェニル−2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロパノエートの製造
エチル3−(4−{2−[5−ブロモ−2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロパノエート(529mg、1mmol)、PPh3(3.93mg、0.015mmol)、Pd(OAc)2(1.3mg、0.006mmol)及びPhB(OH)2(142mg、1.2mmol
)をn−プロパノール(5mL)中で混合した。Na2CO3(212mg、2mmol)を水(2.5mL)に溶解し、混合物に添加した。反応混合物をN2雰囲気下で4時間還
流し、冷却した。溶媒をエバポレートし、残渣を酢酸エチルに溶解し、少量のシリカを通過させた。該シリカを更なる酢酸エチルで洗浄した。溶媒をエバポレートして生成物を得、HPLCで精製した(243mg、46%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ8.15(s、1H)、7.75(s、2H)、7.68(d、2H)、7.42(t、2H)、7.40−7.38(m、1H)、7.12(d、2H)、6.73(d、2H)、4.78(t、2H)、4.38(t、2
H)、4.03(t、1H)、3.63−3.57(m、1H)、3.45−3.40(
m、1H)、3.05−2.96(m、2H)、1.15(t、3H)
Mass m/z:527.2(M+H)
【0067】
工程B:3−(4−{2−[5−フェニル−2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)−2−エトキシプロピオン酸の製造
工程Aからのエチルエステルは実施例1の工程Cに記載の手順に従って加水分解された(39.2mgg、79%)。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ8.13(s、1H)、7.75(s、2H)、7.67(d、2H)、7.42(t、2H)、7.40−7.38(m、1H)、7.14(d、2H)、6.75(d、2H)、4.78(t、2H)、4.35(t、2
H)、4.03(t、1H)、3.63−3.57(m、1H)、3.45−3.40(
m、1H)、3.05−2.96(m、2H)、1.15(t、3H)
Mass m/z:499.1(M+H)
【0068】
実施例6
下式を有する(2S)−3−{4−[2−(2−トリフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−2−エトキシプロピオン酸の製造
【化16】

工程A:下式を有する2−エトキシ−N−(2―ヒドロキシ−1−フェニル−エチル)−3−{4−[2−(2−トリフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−2−プロピオンアミドの製造
【化17】

2−エトキシ−3−(4−{2−[2−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]エトキシ}フェニル)プロピオン酸(6.33g、15mmol)をジクロロメタン20mL中に溶解し、5℃に冷却した。Et3N4.16mL(30mm
ol)を添加し、10分間攪拌した。(S)−フェニルグリシノール(2.26g、16.5mmol)及びEt3N(4.16mL、30mmol)をジクロロメタン20mL
中に溶解し、この溶液を反応混合物に添加し、室温で終夜攪拌した。該混合物をCH2
2で希釈し、水、続いて希HCl及び飽和NaHCO3で洗浄した。
ジクロロメタン層を乾燥し、エバポレートしてアミドの混合物(8.6g)を得、これを酢酸エチル及びヘキサンを用いるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより分離して、2種の異なったジアステレオマーを得た。一番目の溶出ジアステレオマーは、Braj B.Lohray等[J.Of Med.Chem.,2001,44,2675−2678]による類似の実例に従って、[2R,N(1S)]−3−{4−[2−(2−トリフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−2−エトキシ−N−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)プロピオンアミドとして暫定的に名付けられ、二番目の溶出ジアステレオマーは、[2S,N(1S)]−3−{4−[2−(2−トリフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−2−エトキシ−N−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)プロピオンアミドとして名付けられた。
一番目の溶出ジアステレオマー([2R,N(1S)]−3−{4−[2−(2−トリフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−2−エトキシ−N−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)プロピオンアミド):収量:3.06g(37.7%)
R=0.38(ヘキサン:EtOAc=1:1)
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.90(d、1H)、7.69(d、
1H)、7.46−7.40(m、2H)、7.37−7.30(m、4H)、7.15
(d、2H)、7.03(d、1H)、6.75(d、2H)、4.98−4.96(m、1H)、4.75(t、2H)、4.34(t、2H)、3.95(q、1H)、3.68(d、2H)、3.47(q、2H)、3.07(d、1H)、2.94(d、1H)、1
.25(t、3H)
Mass m/z:542.2(M+H)
二番目の溶出ジアステレオマー(一番目の溶出ジアステレオマー([2S,N(1S)]−3−{4−[2−(2−トリフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−2−エトキシ−N−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル)プロピオンアミド)):収量:2.6g(32.0%)
R=0.15(ヘキサン:EtOAc=1:1)
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.95(d、1H)、7.73(d、
1H)、7.38−7.55(m、2H)、7.18−7.6.95(m、8H)、7.
66(d、2H)、4.98−4.97(m、1H)、4.77(t、2H)、4.30(t、2H)、3.98(q、1H)、3.85(d、2H)、3.58−3.51(m、2H)、3.07(d、1H)、2.90(d、1H)、2.40(brs、1H)、1.25(t、3H)
Mass m/z:542.2(M+H)
【0069】
工程B:(2S)−3−{4−[2−(2−トリフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−2−エトキシプロピオン酸の製造
前工程からの二番目の溶出アミド(2.6g、4.8mmol)をジオキサン(100mL)中に溶解し、1N H2SO4(97mL)を添加し、反応混合物をN2雰囲気下で
4日間還流した。ジオキサンを除去し、溶液の残りに飽和NaHCO320mLを添加し
た。
エーテル(30mL)を添加し、有機不純物をエーテル層に取り込んだ。水相を酸性化し、沈殿した酸を酢酸エチルで抽出した。有機層を乾燥及びエバポレートし、生成物を淡黄色ガムとして得た。該酸をエーテル/ヘキサン混合物で再結晶することにより精製した。
収量:1.16g(57.3g)
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.90(d、1H)、7.67(d、
1H)、7.51−7.37(m、2H)、7.13(d、2H)、6.73(d、2H)
、4.75(t、2H)、4.33(t、2H)、4.03(q、1H)、3.63−3.57(m、1H)、3.45−3.40(m、1H)、3.09−2.90(m、2H)、1.17(t、3H)
Mass m/z:423.3(M+H)
【0070】
実施例7
下式を有する(2R)−3−{4−[2−(2−トリフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−2−エトキシプロピオン酸の製造
【化18】

実施例6からの一番目の溶出ジアステレオマーの3.0gから、(2R)−3−{4−[2−(2−トリフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−2−エトキシプロピオン酸の1.6g(49.7%)を同様に製造した。
1H NMR:(300MHz、CDCl3):δ7.90(d、1H)、7.67(d、
1H)、7.51−7.37(m、2H)、7.13(d、2H)、6.73(d、2H)
、4.75(t、2H)、4.33(t、2H)、4.03(q、1H)、3.63−3.57(m、1H)、3.45−3.40(m、1H)、3.09−2.90(m、2H)、1.17(t、3H)
Mass m/z:423.3(M+H)
【0071】
実施例8:生物学的アッセイ
転写因子PPARs(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)は核内受容体遺伝子ファミリーのメンバーであり、3種のサブタイプが存在する:PPAR−α、PPAR−δ(β)及びPPAR−γ。これらの受容体は、グルコース恒常性、インシュリン抵抗、脂質異常症及び高血圧症(これらはまとめてメタボリックシンドロームXとして知られている)を含むメタボリックシンドロームを伴う心臓血管性疾患の代謝性危険因子を調節する。チアゾリジンジオン(TZDs)と呼ばれるインシュリン感受性改善剤の新しい分類の最近の開発は、II型糖尿病の治療においてPPAR−γ受容体を用いる良い例である。この相関関係はより良いPPARアゴニスト薬の研究を促進した。
【0072】
このPPAR−γ作用に加えて、フィブレート類は血清トリグリセリドの低下及びHDLコレステロールの上昇に効果的である薬剤の分類として知られている。これらの知見はPPAR−αにより提供される更なる脂質制御に起因するデュアル活性化剤への興味を増大させた。3番目のPPARサブタイプに付いてはあまり知られていものの、肥満サルにおいて、VLDL及びLDLコレステロールの低下を伴う低下したトリグリセリド及び上昇したHDLコレステロールを示す選択的PPAR−δアゴニスト(GW501516)の最近の公開データは、複雑化したメタボリックシンドロームの治療のための有望な候補薬剤としてのデュアル又はトリプル活性化剤でさえ開発する、またとない機会を提供する。実施例1の化合物は、異なった試験動物モデルにおいて、ビトロでのグルコース取り込み、トランス活性化が、また、ビボでの血中グルコース、インシュリン、脂質の低下活性が試験された。
【0073】
a)インシュリン−刺激グルコース取り込み
3T3-L1繊維芽細胞(American Type Culture Colletion)をプレートに接着し、10%FBS、10μg/mLペニシリン及びストレプトマイシンが添加されたダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's modified Eagle's medium)(DMEM;4,500mg/Lグルコース、HyClone)で5%CO2の雰囲気下で37℃でコンフレント後2日間培養した。その次に標準プロトコルを利用して脂肪細胞(adipocyte)分化を誘導した。48時間後、分化培地を10%FBSが添加されたDMEMを含有する維持培地に交替した。上記維持培地は細胞が実験に使用されるまで3日間毎に取り替えた。グルコース輸送活性はインシュリンの存在または非在下で測定され、そのプロトコルはKletzien、RF等(19
92)Molecular Pharmacology 41:393-398から修正さ
れたものであった。
つまり、分化された3T3-L1脂肪細胞は、対照(DMSO)、インシュリン(100nM)単独、実施例1の化合物(1μM)単独及びインシュリン(100nM) + 実施例1の
化合物(1μM))で48時間培養した。どの場合も培地は化合物の存在下で一日に2回取
り替えた。グルコース取り込みは2-デオキシ-D-[1-3H]グルコースを標識として使
用し、各化合物で90分培養後測定された。1μMの実施例1の化合物及び100nMのインシュリンの個別処理はグルコース輸送において増加をみせた。しかし、グルコース輸送活性は図1に示した通り、100nMのインシュリンの存在下で1μMの実施例1の化合物の添加により著しく増加しており、これはこの化合物の相乗効果を示すものである。
【0074】
b)トランス活性化
トランス活性化アッセイのために、GAL4融合体を、pM1ベクターの酵母GAL4
DNA結合ドメインのC−末端終端にヒトPPARα、δ及びγリガンド結合ドメインを融合することにより作成した。安定−PPAR−受容体−アッセイ3T3(SPRAT)細胞系は、抗生物質ゲンタシンのための選択可能な遺伝子マーカーを含むプラスミドベクターを用いて生産された。PPARsのための該SPRAT細胞は、10%ウシ胎仔血清(Gibco BRL)、0.2mg/mLストレプトマイシン、200U/mLペニシ
リン及び0.4mg/mLゲンタシンが添加されたダルベッコ変法イーグル培地中で培養された。フラスコ中でコンフレントまで増殖させ、続いて細胞を96ウェルプレートに分割した。
【0075】
最終的に、最高濃度が100mMとなるよう、液体操作ロボット(BioMek 2000)を用いて実施例1の化合物の添加を行った。細胞は37℃で6時間、培養器中に置かれた。続いて、ブライト−グロルシフェラーゼアッセイシステム(Bright−Gloluciferase assay system)(Promega、Madison WI)を使用した。そして直ちにモレキュラーデバイスアナリストADシステム(Molecular Devices Analyst AD system)でプレートを読み取った。各化合物のEC50値は、グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)を用いて決定した。
表2
【表2】

c)化合物1の立体選択性
実施例1の化合物の光学−依存性が存在するか否かを決定するために、上述のインシュリン刺激グルコース取り込みにおける各光学異性体及びラセミ混合物の効果を評価した。光学−依存性が記録され、(S)−化合物(実施例6)は、図2に示されるように、ラセミ混合物(実施例1)及びR−光学異性体(実施例7)を超える統計的に有意な差異(P<0.01)を示した。
【0076】
d)血糖及び血漿脂質低下の効力試験(db/dbマウス)
本試験に使用されたマウスはジャクソンラボラトリー(Jackson Laboratories)(Bar Harbor、ME)により開発されたII型糖尿病の標準モデルであった。マウス(雄、8週齢db/db)を標準実験室条件でワイヤ底ハンギングケ
ージにおいてケージ当たり6匹で飼育した。マウスは通常食(Purina Roden
t Chow)及び水を自由に摂取するようにした。8ないし10週齢に、マウスは群間
でのグルコース適合のために尾から採血された(群当たりn=6)。実施例1、2、3、4及び6の化合物のPPAR−γ効果を試験するために、マウスはその後、ビヒクル(CM
C)または各化合物の異なった濃度(3又は10mg/kg/d)を7ないし14日間経口投
与された。実施例1、2、3、4及び6の各化合物は、0.5%CMC + 無菌水中の0.2%Tween80における懸濁液として投与した。新たなサスペンションを8日間投与のため製造し冷蔵庫に保管した。該サスペンションを毎朝強制経口投与で投与した。対
照群にはビヒクル(投与量10mL/kg)を投与した。
【0077】
血糖濃度(食餌状態において)は、グルコメータによる分析のためにグルコース試験紙上に尾からの血液滴を置くことにより、又は、YSI(Yellow Spring I
nstruments、OH)分析器において10mL血漿サンプルを使用することの何
れかにより、14日目に基礎及び投与後3時間をモニターした。更なる血液をEDTAチューブ中に採取し、4℃で10分間、4,000xgで遠心分離し、血漿サンプルのインシュリン、TG及び遊離脂肪酸を解析した。結果はビヒクル処理された対象群に比較して達成された最大減少%として表3中に示された。300mg/dL以上の血糖を有する動
物が試験に使用された。統計学的有意性(*p<0.05;**p<0.01)はビヒクル処
理された動物における適切なサンプルに対して与えられた。
表3
【表3】

試験された全ての化合物は、14日間の処理の結果としての高血糖の正常化(データ未提示)及び用量依存的な様式での7日目又は14日目の何れかのインシュリン濃度の同時低下を伴って血中グルコースを大きく低下したが、これはインシュリン感受性を顕著に増大していることを示す。血中グルコースを正常化するのに加え、試験化合物はまた、非絶食下での血漿TG及びFFA濃度の用量依存的な減少を示した。
【0078】
e)経口グルコース負荷試験(OGTT)
OGTTが、9日間にわたり、実施例1の化合物の3又は10mg/kgのいずれかの
投与後のdb/dbマウスにおいて行われた。該動物に10mL/kgの体積で水中の1
0%グルコースを投与した。血液サンプルを投与後0、30、60及び120分に採取した。結果を図3に示した。ビヒクル対照と比較した場合、測定されたAUC又は血中グルコースは実施例1の3及び10mg/kg群でそれぞれ49%及び48%、顕著に低下した。
実施例1の化合物は、ビトロのトランス活性化アッセイにおいて、PPAR−γ活性と共にPPAR−α及びδを活性化したため、これらの効果を確認するために以下に示すヒ
トアポA1(ApoA1)トランスジェニックマウス及び高コレステロール食餌ラットモデルを用いるビボ試験を行った。
【0079】
f)血漿アポA1、HDLコレステロール及びTG濃度の変化における実施例1の化合物の効果(ヒトアポA1トランスジェニックマウス)
ホモ接合性のヒトアポA1トランスジェニックマウス種(C57BL/6−TgN1Rub)をジャクソンラボラトリー(Jackson Laboratories)(Ba
r Harbor、ME)から購入した。マウスを6つに群分けし、標準実験室条件でワ
イヤ底ハンギングケージにおいて飼育した。マウスは通常食(Purina Roden
t Chow)及び水を自由に摂取するようにした。群分けされたマウスはその後、ビヒ
クル(CMC)または実施例1の化合物の異なった濃度(3、10又は30mg/kg/d)を8日間経口投与された。化合物は、0.5%CMC + 無菌水中の0.2%Tween80における懸濁液として投与した。新たなサスペンションを8日間投与のため製造し冷蔵庫に保管した。該サスペンションを毎朝強制経口投与で投与した。対照群にはビヒクル(
投与量10mL/kg)を投与した。血液サンプルを心穿刺により採取し、遠心分離してアポA1、HDLコレステロール及びトリグリセリドを分析した。結果を表4に示した。
表4
【表4】

ヒトアポA1トランスジェニックマウス、即ち、PPAR−α/δ活性化に基づくアポA1依存のHDL−コレステロール調節を提示する機構モデルからのデータは、実施例1の化合物がヒトアポA1濃度の上昇を介してHDLコレステロールを顕著に上昇させることを明確に示した。
【0080】
g)血漿脂質パラメーターの変化における実施例1の化合物の効果(高コレステロール食餌ラット)
雄Sprague‐Dawleyラット(6週齢、Charles River)が10日間にわたり高コレステロール食(1.25%コレステロール、0.5%コール酸、R
esearch Diets Inc.C13002)を不断給餌された。ビボでのPP
AR−α効果を評価するために、ラット(N=6)は、ビヒクル(0.5%CMC + 無菌水中の0.2%Tween80)の懸濁液として調製された実施例1の化合物(10mg/kg/d)の体積10mL/kgを4日間にわたり強制経口投与により投与された。血液が採取され、非絶食下の総コレステロール及び遊離脂肪酸濃度が分析された。結果はビヒクル対照に対する低下%として計算された。結果を表5に示した。
表5
【表5】

説明したように、総コレステロール及び遊離脂肪酸濃度は、実施例1の化合物の投与により顕著に低下したものの、ロシグリタゾンの同薬量では低下せず、これはPPAR−γ活性化が血漿脂質の制御に関与しないことを示唆するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式1
【化1】

[式中、R1、R2、R3及びR4は独立して、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数1ないし7のアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−SO2−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−SO2NRab、−SO2−フェニ
ル基、−OSO2−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−C(O)−炭素原子数1ない
し7のアルキル基、−CO−フェニル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択されるか、又は、R1ないしR4の隣接するペアーは、それらが結合する環部分と一緒になって、N、O及びSから独立して選択される0ないし4個のヘテロ原子を含む、部分的に飽和しているか又は不飽和の5ないし8員環(該環は未置換であるか又は1ないし3個のハロゲン原子及び1ないし4個の炭素原子数1ないし7のアルキル基で置換される。)を表し;
5は、水素原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7の
アルキル基、−O−フェニル基、−SO2−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−SO2−フェニル基、−C(O)−炭素原子数1ないし3のアルキル基、−C(O)−フェニル基、−C(O)O−炭素原子数1ないし3のアルキル基及び−C(O)NRab(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択され;
6及びR6´は独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、ヒドロキシ基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択され;
7は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1な
いし7のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択され;
8は、H、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル
基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原
子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から選択され;
Arは、6ないし10員の単環系又は二環系の2価結合基{該2価結合基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)から独立して選択される1ないし5個の置換基で置換される。}を表し;
Xは、=O、=CRab、=NRa、=CO及び−SO2から選択される2価結合基を表し;
nは、1ないし6の整数を表し;
Wは、ヒドロキシ基、−ORc、−NRcd及び−NRcSO2eからなる群より選択され;
a及びRbの各々は独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし7のアルキル基を表し;Rc及びRdの各々は独立して、水素原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基及び炭素原子数1ないし7のハロアルキル基を表し;
eは、水素原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロア
ルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、炭素原子数1ないし7のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし7のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし7のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)からなる群より選択され;
*は、不斉炭素原子を表し;
各々のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖の何れかである。]で表される化合物、その濃縮された光学異性体及びその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物が式2
【化2】

[式中、R1、R2、R3及びR4は独立して、水素原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、ハロゲン原子、−O−炭素原子数1ないし5のアルキル基、炭素原子数1ないし5のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし5のアルキル基、炭素原子数1ないし5のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし3のアルキル基及び−O−炭素原子数1ないし3のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の基で置換される。)からなる群より選択されるか、又は、R1ないしR4の隣接するペアーは、それらが結合する環部分と一緒になって、部分的に飽和しているか又は不飽和の5ないし8員環(該環は未置換であるか又は1ないし7個のハロゲン原子又は1ないし4個の炭素原子数1ないし7のアルキル基で置換され
る。)を表し;
5は、−CF3、−CF2CF3、−SO2Me、−COMe及び−CO2Meからなる群より選択され;
8は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基及び−CF2CF3からな
る群より選択され;
*は、不斉炭素原子を表す。]で表される請求項1記載の化合物及びその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
式3
【化3】

[式中、R1ないしR4は独立して、水素原子、炭素原子数1ないし7のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし5のハロアルキル基及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし5のアルキル基、炭素原子数1ないし5のハロアルキル基、−O−炭素原子数1ないし3のアルキル基及び炭素原子数1ないし5のハロアルキル基から独立して選択される1ないし3個の基で置換される。)からなる群より選択されるが、但し、R1ないしR4の少なくとも2つは水素原子を表し;
5は、−CF3、−CF2CF3、−SO2Me、−COMe及び−CO2Meを表し;
8は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基及び−CH2CH3からな
る群より選択され;
*は、不斉炭素原子を表す。]で表される請求項1記載の化合物及びその医薬的に許容される塩。
【請求項4】
1、R2、R3及びR4は独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、−CF3、−CF2CF3、炭素原子数1ないし4のアルキル基、炭素原子数1ないし4のハロアルキル基、
−SO2Me及びフェニル基(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原
子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、−CF3及び−OCF3から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)からなる群より選択される請求項1記載の化合物。
【請求項5】
1、R2、R3及びR4は独立して、水素原子、フッ素原子、−CF3及び−SO2Meからなる群より選択される請求項4記載の化合物。
【請求項6】
1、R2、R3及びR4が水素原子である請求項5記載の化合物。
【請求項7】
5は、水素原子、メチル基、エチル基、−CF3、−CF2CF3、メトキシ基、フェノキシ基、−SO2Me、−SO2Ph、−COMe及び−C(O)Ph(ここで前記フェニル基は未置換であるか又は、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、−CF3及び−
OCF3から独立して選択される1ないし3個の置換基で置換される。)からなる群より
選択される請求項1記載の化合物。
【請求項8】
5は、−CF3、−CF2CF3、−SO2Me、−COMe及び−CO2Meからなる群より選択される請求項7記載の化合物。
【請求項9】
5は、−CF3及び−CF2CF3からなる群より選択され、nは2を表す請求項8記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物は、(R)光学異性形態が実質的に存在しない(S)光学異性形態にある請求項1記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物は、(R)光学異性形態が実質的に存在しない(S)光学異性形態にある請求項2記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物は、(R)光学異性形態が実質的に存在しない(S)光学異性形態にある請求項3記載の化合物。
【請求項13】
Xは、=O、=S及び−SO2からなる群より選択される請求項1記載の化合物。
【請求項14】
Arは、未置換であるか又は、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及び−OCF3からなる群より独立して選択される1な
いし5個の置換基で置換される請求項1記載の化合物。
【請求項15】
6及びR´6は、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、メトキシ基及びエトキシ基からなる群より選択される請求項1記載の化合物。
【請求項16】
7は、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基及びフェニル基からなる群より選択
される請求項1記載の化合物。
【請求項17】
8は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル
基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、フェニル基、−CF3、−CF2CF3
及び−CH2CF3からなる群より選択される請求項1記載の化合物。
【請求項18】
8は、エチル基、イソプロピル基、、−CH2CF3及びフェニル基からなる群より選択
される請求項17記載の化合物。
【請求項19】
Wは、、−OH、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、−NHMe、−NMe2、−NH
SO2Me、−NHSO2Ph及び−NHCOMeからなる群より選択される請求項1記載の化合物。
【請求項20】
6、R´6及びR7は水素原子を表す請求項1記載の化合物。
【請求項21】
式1で表される化合物が以下の構造で示される化合物から選択される請求項1記載の化合物。
【化4】

【化5】

【請求項22】
1、R2、R3、R4、R6、R´6及びR7はそれぞれ水素原子を表し、R8はエチル基を表し、Wはヒドロキシ基を表し、R5は−CF3を表し、nは2を表し、XはOを表し、*は不斉炭素原子を示す、以下の構造式を有する請求項1記載の化合物。
【化6】

【請求項23】
前記化合物は、(R)光学異性形態が実質的に存在しない(S)光学異性形態にある請求項22記載の化合物。
【請求項24】
インシュリン非依存性(II型)糖尿病の治療又は予防を必要とする哺乳類患者における該治療又は予防方法であって、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を前記患者へ投与することからなる方法。
【請求項25】
前記請求項1記載の化合物は、(R)光学異性形態が実質的に存在しない(S)光学異性形態にある請求項24記載の方法。
【請求項26】
高血糖症の治療又は予防を必要とする哺乳類患者における該治療又は予防方法であって、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を前記患者へ投与することからなる方法。
【請求項27】
脂質障害、脂質異常症又は低HDLの治療又は予防を必要とする哺乳類患者における該治療又は予防方法であって、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を前記患者へ投与することからなる方法。
【請求項28】
肥満症の治療又はコントロールを必要とする哺乳類患者における該治療方法又はコントロール方法であって、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を前記患者へ投与することからなる方法。
【請求項29】
高コレステロール血症の治療、コントロール又は予防を必要とする哺乳類患者における該治療、コントロール又は予防方法であって、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を前記患者へ投与することからなる方法。
【請求項30】
高トリグリセリド血症の治療、コントロール又は予防を必要とする哺乳類患者における該治療、コントロール又は予防方法であって、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を前記患者へ投与することからなる方法。
【請求項31】
異常脂質血症の治療、コントロール又は予防を必要とする哺乳類患者における該治療、コントロール又は予防方法であって、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を前記患者へ投与することからなる方法。
【請求項32】
アテローム性動脈硬化症の治療、コントロール又は予防を必要とする哺乳類患者における該治療、コントロール又は予防方法であって、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を前記患者へ投与することからなる方法。
【請求項33】
インシュリン抵抗性が一要素である(1)インシュリン非依存性糖尿病(NIDDM)、(2)高血糖症、(3)耐糖能異常、(4)インシュリン抵抗性、(5)肥満症、(6)脂質障害、(7)異常脂質血症、(8)高リポタンパク血症、(9)高トリグリセリド血症、(10)高コレステロール血症、(11)低HDL濃度、(12)高LDL濃度、(
13)アテローム性動脈硬化症、(14)網膜症、(15)神経障害、(16)腎症、(17)シンドロームX、及び他の障害からなる群より選択される一つ又はそれ以上の疾患、障害又は病気を治療、コントロール又は予防する方法であって、該方法は、請求項1に記載の化合物の有効量を投与することからなる方法。
【請求項34】
インシュリン抵抗性が一要素である、請求項33に記載の群より選択される一つ又はそれ以上の疾患、障害又は病気を治療、コントロール又は予防する方法であって、該方法は、請求項1に記載の化合物の有効量、及び
(a)(i)メトホルミン及びフェンホルミンを含むビグアニド、(ii)ピオグリタゾン、ロシグリタゾン及びエングリタゾンを含むPPARγアゴニスト(iii)プロテインチロシンフォスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、及び(iv)ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、を含むインシュリン感受性改善剤;
(b)インシュリン又はインシュリン様物質;
(c)トルブタミド及びグリブリドを含むスルホニルウレア;
(d)α−グリコシダーゼ阻害剤;
(e)HMG−CoA還元酵素阻害剤を含むコレステロール低下剤;
(f)MBX−102を含むシクロオキシナーゼ−2(COX−2)阻害剤;
(g)オルリスタットを含むリパーゼ阻害剤;及び
(h)利尿剤
からなる群より選択される一つ又はそれ以上の化合物の有効量を投与することからなる方法。
【請求項35】
前記請求項1記載の化合物は、(R)光学異性形態が実質的に存在しない(S)光学異性形態にある請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記疾患、障害又は病気がアテローム性動脈硬化症であり、請求項1に記載の化合物と共に投与される前記化合物がHMG−CoA還元酵素阻害剤である請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記HMG−CoA還元酵素阻害剤が、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトロバスタチン、イタバスタチン、ロスバスタチン及びリバスタチンからなる群より選択される請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−535827(P2008−535827A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503950(P2008−503950)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001152
【国際公開番号】WO2006/104349
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(303024622)エスケー ホルディングス カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】