説明

紡糸口金検査装置及び紡糸口金検査方法

【課題】紡糸口金の検査に要する人手や時間を軽減し、簡便に紡糸口金を検査することが可能な紡糸口金の検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】光源部2と、光源からの光を投影レンズ7に導く集光レンズ3と、集光レンズ3を経た光を投影する投影レンズ7を具備するプロジェクタにおいて、光源からの光を通す開口部を有し、かつ集光レンズ3に隣接して光源からの光を遮光する紙または板4を備え、集光レンズ3から投影レンズ7の間に存在し、外部からの光を遮光する筒体6を備えた検査装置にて紡糸口金を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸口金の検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこフィルタ素材、衣料素材等として好適なセルロースジアセテート繊維は、一般的にはアセトンを溶剤とする乾式紡糸法にて製造されるが、この乾式紡糸においては、紡糸口金の紡糸孔が汚れていたり、異物が孔内に付着して孔が詰まっていたりすると、紡糸時の糸切れの原因となり紡糸ができなくなるという問題が発生するため、使用に先立ち紡糸口金の紡糸孔を清浄にするとともに清浄処理した紡糸口金を予め検査することは極めて重要なことである。
【0003】
セルロースジアセテート繊維の乾式紡糸における紡糸口金は、一般に孔径0.05mm程度の孔が数百から数千ケ有し、個々の孔を一つ一つ光学顕微鏡で検査するには、莫大な人手と時間を要するという問題がある。さらに、この紡糸口金は、加工性、製作精度、或いはコスト面から、SUS316といったステンレス鋼が広く用いられ、直径3〜3.7インチ、板厚み1.5mm程度であることか、紡糸時に紡糸原液の背圧によって吐出面側に膨れ、湾曲しているのが常態である。
【0004】
一方で、特許文献1で提案されているように、紡糸口金の検査方法は、CCDカメラ及び画像解析技術の進歩により著しく高精度化しているが、この高精度化された方法でも紡糸口金の湾曲化に伴う焦点合わせのタイムロス及び検査システム費用の高額化等で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−243831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の紡糸口金の検査における問題点を改善し、検査に要する人手や時間を軽減し、簡便に紡糸口金を検査することが可能な紡糸口金検査装置及び紡糸口金検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の要旨は、光源と、光源からの光を投影レンズに導く集光レンズと、集光レンズを経た光を投影する投影レンズを具備するプロジェクタにおいて、光源からの光を通す開口部を有し、かつ集光レンズに隣接して光源からの光を遮光する紙または板を備え、集光レンズから投影レンズの間に存在し、外部からの光を遮光する筒体をを備えた紡糸口金検査装置、にある。
また、本発明の第二の要旨は、前記の紡糸口金検査装置を用い、光源からの光を遮光する紙または板の開口部に被検査体の紡糸口金を載置し、光源からの光を被検査体に照射し、光の通過により形成された像を投影レンズで拡大して被検査体の紡糸孔を検査することからなる紡糸口金の検査方法、にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、紡糸口金を簡便に極めて短時間の作業で検査することが可能でありながら、従来の個々の孔を光学顕微鏡で検査する方法と同等の検査精度を有し、オーバーヘッドプロジェクタ等の汎用のプロジェクタを利用して検査装置を構成することができるため検査機器の投資費用が小さく、検査作業のランニングコストを極めて低減させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の紡糸口金検査装置の概要構成図である。
【図2】被検査体載置部分の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の検査装置について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の紡糸口金検査装置の一例の概要構成図である。図1において、1はオーバーヘッドプロジェクタ本体であって、プロジェクタ本体1は、光源(図示なし)、光源からの光を投影レンズに導く集光レンズ3と、集光レンズを経た像を拡大して投影する投影レンズ7、反射鏡8を備えて構成され、光源からの光を被検査体に照射し、被検査体の紡糸孔を大画面で表示し得る装置である。また、図1において、2は光量の調整可能な光源部、4は光源からの光を遮光する型紙、5は被検査体の紡糸口金、6は紙製円筒体である。
【0011】
図2は、被検査体載置部分の分解図である。図2において、前記のとおり、4は光源からの光を遮光する型紙、5は被検査体の紡糸口金、6は筒体であるが、型紙4は、被検査体である紡糸口金5のサイズ径に応じてサイズ径より大であって紡糸口金5と相似形に切り欠いた開口部を型紙のほぼ中央部の設けることが好ましい。この開口部が大きすぎると、遮光効果が低下する。
【0012】
また、筒体6は、集光レンズから投影レンズの間に存在し、外部からの光を遮光する筒体である。筒体6は、被検査体を囲んで覆うことが可能な径の円筒体であることが好ましく、その上部及び下部が開口した筒体である。筒体6の長さは、外部からの光を遮光するうえで、受け台のある集光レンズ3と投影レンズ7との距離より少し短いことが好ましく、筒体6の長さが短すぎると、外部からの光によって観察が難しくなり、長すぎると被検査体の交換の際の作業性を悪くする。したがい、筒体6は、二重筒構造や蛇腹構造等の伸縮可能な構造とすることは好ましいことである。型紙4或いは筒体6には紙又は板が用いられるが、紙又は板の素材は耐熱性があり、軽量な素材であれば特に限定されるものではない。
【0013】
次に、本発明の検査方法について、図面に基づいて説明する。
図1に示した、オーバーヘッドプロジェクタ本体1を用い、集光レンズ3に切り欠いた開口部を有する型紙4を敷いて、型紙4の開口部に被検査体の紡糸口金5を載置し、開口部に位置する被検査体5を上部及び下部が開口した円筒体6で覆い、光源からの光を下方から被検査体の紡糸口金5に照射し、反射鏡8を観ながら、光源部2の光量を調整するとともに投影レンズ7で焦点合わせ及び拡大化し、光の通過により形成され拡大された紡糸口金の紡糸孔の像を反射鏡8で投影し、投影された被検査体の紡糸孔の汚れ、異物の付着・詰まりの有無を目視によって検査する
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0015】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
セルロースジアセテート繊維を乾式紡糸法により製造する際に使用した表1に示す紡糸口金を、アセトン洗浄及び超音波洗浄後、本発明の図1に例示した検査装置及び検査方法で検査を行い、その結果を表1に示した。なお、比較例は従来の個々の孔毎に光学顕微鏡で検査する方法で検査を行ったもので、その結果も併せ表1に示した。表1からも判るように、本発明によれば、比較例の従来の検査方法に比べ検査に要する作業時間が大幅に短縮されていた。
【0016】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、汎用のプロジェクタを利用し、部品を付設して検査装置とし、この装置にて紡糸口金を検査することが可能なるもので、従来の個々の孔毎に光学顕微鏡で検査する方法に比べ検査に要する作業時間が大幅に短縮され、紡糸口金を極めて短時間の作業で検査することが可能でありながら、従来の孔毎に光学顕微鏡で検査する方法と同等の検査精度を有することから、検査に要するランニングコストを低減し、強いては生産コストを低減するものである。
【符号の説明】
【0018】
1 オーバーヘッドプロジェクタ本体
2 光源部
3 集光レンズ
4 光源からの光を遮光する型紙
5 紡糸口金
6 紙製円筒体
7 投影レンズ
8 反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光源からの光を投影レンズに導く集光レンズと、集光レンズを経た光を投影する投影レンズを具備するプロジェクタにおいて、光源からの光を通す開口部を有し、かつ集光レンズに隣接して光源からの光を遮光する紙または板を備え、集光レンズから投影レンズの間に存在し、外部からの光を遮光する筒体を備えた紡糸口金検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紡糸口金検査装置を用い、光源からの光を遮光する紙または板の開口部に被検査体の紡糸口金を載置し、光源からの光を被検査体に照射し、光の通過により形成された像を投影レンズで拡大して被検査体の紡糸孔を検査することからなる紡糸口金の検査方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−122955(P2011−122955A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281302(P2009−281302)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】