説明

紫外線酸化装置及び有機物除去装置

【課題】構造的に安定である難分解性の有機物を含む水を高効率にて分解することができる紫外線酸化装置と、この紫外線酸化装置を備えた有機物除去装置を提供する。
【解決手段】紫外線酸化装置20は、有機物含有水を通水する筒形容器21と、該筒形容器21内に同軸状に配置された保護菅22と、該保護菅22内に配置された紫外線ランプ23とを有している。保護菅22の外周面と該筒形容器21の内周面との間隔Yは、8mm以下である。これにより、難分解性の有機物が効率良く酸化分解され、TOC除去率が向上する。この紫外線酸化装置20の前段に、ペルオキソ二硫酸塩注入装置31が設けられている。また、この紫外線酸化装置20の後段に、酸化剤除去装置23、微粒子除去膜装置33、第1のイオン交換装置34、熱交換器35、脱気装置36及び第2のイオン交換装置(交換型の非再生式イオン交換装置)37がこの順に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中の有機物を高効率に分解除去する紫外線酸化装置及び該紫外線酸化装置を備えた有機物除去装置に係り、詳しくは超純水中に含まれる難分解性の有機物を高効率に分解する紫外線酸化装置及び該紫外線酸化装置を備えた有機物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中濃度50μg/L as C以下の有機物を分解する装置として、紫外線酸化装置がある。
【0003】
第5図は従来の紫外線酸化装置10の部分切欠側面図であり、第6図は第5図のVI−VI線に沿う断面図である。
【0004】
この紫外線酸化装置10は、有機物含有水を通水する筒形容器1と、該筒形容器1の内周から突設された、中央孔4aを有する複数枚の環形部材4と、該中央孔4aを通って該筒形容器1内に配置された保護菅2と、該保護菅2内に配置された紫外線ランプ3とを有している。環形部材4は、筒形容器1の軸心線方向に間隔をおいて複数枚設置されている。符号1a、1bは、それぞれ有機物含有水の流入口及び流出口である。
【0005】
この紫外線酸化装置10によると、水中の有機物が化学的に安定ではない場合にあっては、薬品を使用することなく水中のTOC濃度を1μg/L as C以下にすることができる。しかし、水中の有機物が化学的に安定なものである場合、水中のTOC濃度を1μg/L as C以下にすることができない。例えば、尿素は安定構造を有する有機物の一つであるが、この尿素の濃度が5μg/L as Cである有機物含有水をこの紫外線酸化装置10によって処理する場合、尿素の分解率はほぼ0に等しい。
【0006】
ところで、国際半導体技術ロードマップ(ITRS)によると、45nmプロセスを導入した半導体製品を製造するためには、ウェーハ平坦度を2Åにコントロールする必要があるとされている。一方、ウェーハ平坦度の数Åの悪化が、超純水中の微量の有機物によって起こることが明らかになってきている。このため、有機物濃度を極微量に低減するために、尿素を分解除去することが可能な技術が望まれている。
【0007】
特開平11−099395号には、難分解性の有機物を紫外線酸化法によって分解する方法として、ペルオキソ二硫酸塩を被処理水中に添加した後、紫外線酸化処理を行う方法が提案されている。しかし、この方法を用いても、依然として尿素の分解率の改善を実現することはできなかった。
【特許文献1】特開平11−099395号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、構造的に安定である難分解性の有機物を含む水であっても、高効率にて有機物を分解することができる紫外線酸化装置と、この紫外線酸化装置を備えた有機物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の紫外線酸化装置は、有機物含有水に紫外線を照射して、有機物含有水中の有機物を酸化分解する紫外線酸化装置において、有機物含有水を通水する筒形容器と、該筒形容器内に同軸状に配置された保護菅と、該保護菅内に配置された紫外線ランプとを有しており、該保護菅の外周面と該筒形容器の内周面との間隔が8mm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の紫外線酸化装置は、有機物含有水に紫外線を照射して、有機物含有水中の有機物を酸化分解する紫外線酸化装置において、有機物含有水を通水する筒形容器と、該筒形容器の内周から突設された、中央孔を有する環形部材と、該中央孔を通って該筒形容器内に配置された保護菅と、該保護菅内に配置された紫外線ランプとを有しており、該保護菅の外周面と該中央孔の内周面との間隔が8mm以下であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の紫外線酸化装置は、請求項1又は2において、前記間隔が3〜8mmであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の有機物除去装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紫外線酸化装置を有する有機物除去装置であって、前記紫外線酸化装置の前段に、ペルオキソ二硫酸塩を注入する装置を有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の有機物除去装置は、請求項4において、前記紫外線酸化装置の後段に酸化剤除去装置を有し、該酸化剤除去装置の後段にイオン交換装置(第1のイオン交換装置)を有することを特徴とするものである。
【0014】
請求項6の有機物除去装置は、請求項5において、前記イオン交換装置(第1のイオン交換装置)の後段に脱気装置を有し、該脱気装置の後段に第2のイオン交換装置を有することを特徴とするものである。
【0015】
請求項7の有機物除去装置は、請求項5又は6において、脱気装置よりも前段の前記イオン交換装置(第1のイオン交換装置)と、脱気装置よりも後段の前記第2のイオン交換装置との少なくとも一方が連続再生式電気脱イオン装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明者らは、紫外線酸化装置においては、紫外線ランプを内蔵する保護菅の外周面から8mm以下の範囲において、有機物含有水中の有機物が高効率にて分解されることを見出した。これは、水が保護菅外周面の近傍を流れることにより、水中の有機物に対し十分に紫外線が照射されるためであると推察される。
【0017】
本発明の紫外線酸化装置によれば、保護菅の外周面と筒形容器の内周面との間隔が8mm以下と小さいため(請求項1)、あるいは保護菅の外周面と中央孔の内周面との間隔が8mm以下と小さいため(請求項2)、水中の有機物に紫外線が十分に照射され、難分解性の有機物であっても十分に分解することが可能となる。
【0018】
また、本発明の有機物除去装置は、本発明の紫外線酸化装置を有するため、上記と同様の効果が奏される。また、ペルオキソ二硫酸塩は、紫外線が照射されることによって非常に強い酸化力を有する遊離ラジカルを生成するため、このペルオキソ二硫酸塩を添加してから紫外線酸化装置に通水することにより、さらに効率よく有機物を酸化分解することが可能となる。
【0019】
この場合、残留するペルオキソ二硫酸塩や遊離ラジカル等の酸化剤を除去するため、紫外線酸化装置の後段に酸化剤除去装置を設置することができる。また、この酸化剤除去装置の後段にイオン交換装置を設置することにより、硫酸イオン、硝酸イオンなどのイオンを除去することができる。
【0020】
このイオン交換装置(第1のイオン交換装置)の後段に脱気装置を設けることにより、酸化反応により生じた酸素や炭酸などを除去することができる。脱気装置の後段に第2のイオン交換装置を設置することにより、残留する微量のイオンを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
【0022】
第1図は実施の形態に係る紫外線酸化装置20の側面図、第2図は第1図のII−II線に沿う断面図である。
【0023】
この紫外線酸化装置20は、有機物含有水を通水する筒形容器21と、該筒形容器21内に同軸状に配置された保護菅22と、該保護菅22内に配置された紫外線ランプ23とを有している。該筒形容器21の側面の上部左端側及び上部右端側に、それぞれ有機物含有水の流入口21a及び流出口21bが設けられている。
【0024】
この筒形容器21の材質はSUS316L又はチタンであることが好ましい。SUS316Lを使用する場合、電解研磨処理(EP)品又はフッ素樹脂コート品であることが好ましく、また、紫外線ランプ23として波長300nm以下のものを使用することが好ましい。
【0025】
この紫外線酸化装置20内に有機物含有水を通水すると、水中の有機物に紫外線が照射され、該有機物が酸化分解する。
【0026】
該保護菅22の外周面と該筒形容器21の内周面との間隔Yは、8mm以下、好ましくは3〜8mmである。この間隔Yが8mm以下であると、尿素などの難分解性の有機物であっても十分に酸化分解され、TOC除去率が向上する。また、この間隔Yが3mm以上であると、通水抵抗が比較的小さく、処理水量を多くすることができる。
【0027】
この紫外線酸化装置20の照射電力は、通常0.1〜10kWh/mであり、好ましくは1.0〜5.0kWh/mである。照射電力を0.1kWh/m以上とすることにより、有機物を十分に酸化分解することができる。
【0028】
第3図は、第1,2図の紫外線酸化装置20を備えた有機物除去装置の系統図である。この有機物除去装置では、紫外線酸化装置20の前段に、ペルオキソ二硫酸塩注入装置31が設けられている。また、この紫外線酸化装置20の後段に、酸化剤除去装置32、微粒子除去膜装置33、第1のイオン交換装置34、熱交換器35、脱気装置36及び第2のイオン交換装置37がこの順に設けられている。有機物含有水は、これら装置31,20,32〜37をこの順に通水される。
【0029】
有機物含有水は、先ずペルオキソ二硫酸塩注入装置31に通水され、ペルオキソ二硫酸塩が添加される。
【0030】
このペルオキソ二硫酸塩注入装置31は、薬注タンクを有している。また、該薬注タンク内の温度を10〜20℃の範囲でコントロールするために、薬注タンクを二重壁構造とし、該二重壁の間に水を流すようにすることが好ましい。これにより、ペルオキソ二硫酸塩溶液の自己分解速度が抑制され、また、溶液の希釈に伴う吸熱反応による溶液の凍結を防止することができる。
【0031】
このペルオキソ二硫酸塩としては、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等を使用することができる。このペルオキソ二硫酸塩の添加量は、有機物との理論酸化反応にとって必要な量の1〜20倍であることが好ましく、3〜10倍であることが特に好ましい。
【0032】
尿素含有水をペルオキソ二硫酸ナトリウムによって酸化分解する場合の化学反応式は以下の通りである。
(NHCO+8Na+8HO→8NaSO+8HSO+2HNO+CO+H
このペルオキソ二硫酸塩の注入によって、有機物含有水中の有機物が該ペルオキソ二硫酸塩と反応し、酸化分解される。
【0033】
次いで、ペルオキソ二硫酸塩が添加された有機物含有水は、紫外線酸化装置20に通水される。該紫外線酸化装置20内において水中の有機物に紫外線が照射され、該有機物が酸化分解する。また、水中のペルオキソ二硫酸塩は、紫外線の照射によって遊離ラジカルを生成する。この有機ラジカルは非常に強い酸化力を有するため、難分解性の有機物をさらに効率よく酸化分解する。
【0034】
その後、該紫外線酸化装置20から流出する被処理水は、酸化剤除去装置32に通水される。
【0035】
この酸化剤除去装置32としては、活性炭をカラムに充填した活性炭充填塔、触媒をカラムに充填した触媒充填塔、活性炭及び触媒の両方をカラムに充填した装置等を用いることができる。触媒充填塔に充填する触媒としては、ペルオキソ二硫酸塩を分解するものであればよく、例えば、白金系、ゼオライト系、アルミナ系、鉄系の触媒等を用いることができる。これらのうち、活性炭を用いることがコストの点から好ましい。
【0036】
この酸化剤除去装置32によって、有機物の酸化分解に使用しきれなかったペルオキソ二硫酸塩やその遊離ラジカル等の酸化剤が分解される。
【0037】
その後、被処理水は微粒子除去膜装置33に通水される。この微粒子除去膜装置33としては、膜方式、特に外圧式の膜方式であることが好ましく、例えば精密濾過膜(MF膜)又は限外濾過膜(UF膜)を用いることが好ましい。
【0038】
この微粒子除去膜装置33によって、酸化剤除去装置32に充填された活性炭から発生した微粒子等が除去される。
【0039】
その後、被処理水は、第1のイオン交換装置34に通水される。
【0040】
この第1のイオン交換装置34としては、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を混合した混床式イオン交換樹脂を充填した装置、連続再生式電気脱イオン装置等を使用することができる。これらのうち、再生操作が不要である点において、連続再生式電気脱イオン装置を使用することが好ましい。
【0041】
この第1のイオン交換装置34によって、酸化剤除去装置32からの流出水中に含まれる硫酸イオン、硝酸イオン、ナトリウムイオンなどのイオン成分が除去される。
【0042】
次いで、被処理水は、熱交換器35で温度調節された後、脱気装置36に通水される。
【0043】
この脱気装置36には特に限定はないが、膜方式であることが好ましい。
【0044】
被処理水中に溶存している炭酸等のガス成分や、添加したペルオキソ二硫酸塩と水との反応によって発生した酸素などが、この脱気装置36によって除去される。
【0045】
次いで、被処理水は第2のイオン交換装置37に通水される。この第2のイオン交換装置37としては、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を混合した混床式イオン交換樹脂装置、連続再生式電気脱イオン装置等を使用することができる。再生操作が不要である点で、連続再生式電気脱イオン装置を用いることが望ましいが、厳しいTOC管理を求められる場合には、カートリッジ式の非再生式イオン交換装置を用いるのが望ましい。
【0046】
この第2のイオン交換装置37によって、前段の第1のイオン交換装置34では除去しきれなかった微量のイオン成分が除去されると共に、前段の各装置31、20,32〜35から溶出したTOCが除去される。
【0047】
上記の有機物除去装置では、装置31、20,32〜35の総てを設けたが、紫外線酸化装置20が必須の装置であり、それ以外の装置は省略されてもよい。例えば、紫外線酸化装置20だけが設けられていてもよい。また、これにペルオキソ二硫酸塩注入装置31が設けられていてもよく、この場合、さらに酸化剤除去装置32及び第1のイオン交換装置34が設けられていることが好ましい。また、これらに加えて、脱気装置36及び第2のイオン交換装置が設けられていることが好ましい。
【0048】
上記実施の形態の紫外線酸化装置20は、筒形容器21と保護菅22との間の間隔を8mm以下としたものであるが、本発明は前記第5,6図に示した紫外線酸化装置10において、環形部材4の中央孔4aと保護菅2との間隔を8mm以下としたものであってもよい。この場合、環形部材は第5,6図に示した薄い板状の円環状のものに限らず、厚みが大きい板状の円環形のものであってもよく、円筒状の環形部材であってもよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0050】
なお、以下に詳述するが、実施例及び比較例においては、有機物除去装置としては、第3図の有機物除去装置そのものか、あるいは第3図の有機物除去装置のうち一部の装置を省略又は別の装置に置換したものを用いた。
【0051】
また、これらの有機物除去装置の最前段に、純水に尿素を添加するための尿素注入装置40(第4図)を設置した。各装置は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブで接続した。
【0052】
なお、上記の有機物除去装置において、ペルオキソ二硫酸塩としてペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液を採用した。
【0053】
紫外線酸化装置10,20の紫外線ランプとしては、低圧タイプ(波長185nm)を使用し、照射電力は3.3kW・h/mとした。紫外線酸化装置10において、保護菅2の外周面と中央孔4aの内周面との間隔Xは15mm、保護菅2の外周面と筒形容器1の内周面との間隔は70mmとした。また、紫外線酸化装置20において、保護菅22の外周面と筒形容器21の内周面との間隔Yは8mmとした。
【0054】
酸化剤除去装置32として、活性炭(メッシュ10/32、充填量500mL)を充填したものを使用した。
【0055】
微粒子除去膜装置33として、MF膜(孔径:0.05μm、ハウジング:SUS316(EP)、エレメント:PP(ポリプロピレン)製)を使用した。
【0056】
第1、第2のイオン交換装置34,37として、連続再生式電気脱イオン装置を使用し、回収率80%、電流値10Aで運転した。
【0057】
[実施例1]
有機物除去装置として、第3図において、ペルオキソ二硫酸塩注入装置31を省略したものを用いた。この有機物除去装置の最前段に、尿素注入装置40を設けた。
【0058】
また、超純水として以下のものを使用した。
比抵抗:18.2MΩ・cm以上
粒径が0.05μmよりも大きい微粒子:1個/mL以下
溶存酸素濃度:1μg/L以下
TOC(全有機炭素)濃度:1μg/L as C以下
【0059】
この超純水を尿素注入装置40に通水し、超純水中のTOC濃度を5μg/L as Cとしたものを試験水とした。
【0060】
この試験水を上記の有機物除去装置に、流量100L/h、圧力0.15MPaにて通水した。該有機物除去装置の所定の位置において、TOC濃度、比抵抗値、溶存酸素濃度及び水温を測定した。なお、TOC濃度の測定には、SIEVERS社製の超純水用オンラインTOC分析計「PPT」を用いた。その結果を第4図に示す。
【0061】
[実施例2]
有機物除去装置として、第3図の有機物除去装置を用いた。この有機物除去装置の最前段に、尿素注入装置40を設けた。
【0062】
実施例1と同様の試験水を、上記の有機物除去装置に、流量100L/h、圧力0.15MPaにて通水した。
【0063】
なお、紫外線酸化装置20において、試験水中におけるペルオキソ二硫酸ナトリウムの濃度が0.8mg/Lになるように、ペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液を注入した。
【0064】
該有機物除去装置の所定の位置において、TOC濃度、比抵抗値、溶存酸素濃度及び水温を測定した。その結果を第4図に示す。
【0065】
[実施例3]
実施例2と同様の有機物除去装置を用い、紫外線酸化装置20において、試験水中におけるペルオキソ二硫酸ナトリウムの濃度が6.5mg/Lになるように、ペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液を注入した。その他は実施例2と同様の運転を行った。その結果を第4図に示す。
【0066】
[比較例1]
有機物除去装置として、第3図において、ペルオキソ二硫酸塩注入装置31を省略し、かつ、紫外線酸化装置20を第5,6図の紫外線酸化装置10に置換したものを用いた。この有機物除去装置の最前段に、尿素注入装置40を設けた。
【0067】
実施例1と同様の試験水を、上記の有機物除去装置に、流量100L/h、圧力0.15MPaにて通水した。
【0068】
該有機物除去装置の所定の位置において、TOC濃度、比抵抗値、溶存酸素濃度及び水温を測定した。その結果を第4図に示す。
【0069】
[比較例2]
有機物除去装置として、第3図の有機物除去装置において、紫外線酸化装置20を第5,6図の紫外線酸化装置10に置換したものを用いた。この有機物除去装置の最前段に、尿素注入装置40を設けた。
【0070】
実施例1と同様の試験水を、上記の有機物除去装置に、流量100L/h、圧力0.15MPaにて通水した。
【0071】
なお、紫外線酸化装置10において、試験水中におけるペルオキソ二硫酸ナトリウムの濃度が0.8mg/Lになるように、ペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液を注入した。
【0072】
該有機物除去装置の所定の位置において、TOC濃度、比抵抗値、溶存酸素濃度及び水温を測定した。その結果を第4図に示す。
【0073】
[結果]
比較例と実施例の比較から明らかな通り、第1,2図の紫外線酸化装置20を用いる場合、第5,6図の紫外線酸化装置10を用いる場合と比べて、TOC除去率が大幅に増加した。また、試験水にペルオキソ二硫酸ナトリウムを加えることで、TOC除去率がさらに増加した。さらに、ペルオキソ二硫酸ナトリウムを6.5mg/L添加した実施例3にあっては、処理水のTOC濃度が、1μg/L as C以下という極めて小さな値となった。
【0074】
[比較例3,4及び実施例4〜6]
保護菅22の外周面と筒形容器21の内周面との間隔Yを、それぞれ25mm(比較例3)、15mm(比較例4)、8mm(実施例4)、5mm(実施例5)、3mm(実施例6)としたこと以外は実施例2と同様の装置を用い、実施例2と同様の運転を行った。処理水中のTOC濃度を測定した。その結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から明らかな通り、保護菅22の外周面と筒形容器21の内周面との間隔Yが8mm以下の場合(実施例4〜6)、TOC除去効果が著しく高いものとなった。また、該間隔Yが8mm以下の場合、TOC除去率に差異は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施の形態に係る紫外線酸化装置20の側面図である。
【図2】第1図のII−II線に沿う断面図である。
【図3】第1,2図の紫外線酸化装置20を備えた有機物除去装置の系統図である。
【図4】実施例1〜3及び比較例1,2において、有機物除去装置の所定の位置におけるTOC濃度、比抵抗値、溶存酸素濃度及び水温の測定結果を示す図である。
【図5】従来の紫外線酸化装置10の部分切欠側面図である。
【図6】第5図のVI−VI線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1,21 筒形容器
2,22 保護菅
3,23 紫外線ランプ
4 環形部材
10,20 紫外線酸化装置
31 ペルオキソ二硫酸塩注入装置
32 酸化剤除去装置
33 微粒子除去膜装置
34 第1のイオン交換装置
35 熱交換器
36 脱気装置
37 第2のイオン交換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有水に紫外線を照射して、有機物含有水中の有機物を酸化分解する紫外線酸化装置において、
有機物含有水を通水する筒形容器と、該筒形容器内に同軸状に配置された保護菅と、該保護菅内に配置された紫外線ランプとを有しており、
該保護菅の外周面と該筒形容器の内周面との間隔が8mm以下であることを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項2】
有機物含有水に紫外線を照射して、有機物含有水中の有機物を酸化分解する紫外線酸化装置において、
有機物含有水を通水する筒形容器と、該筒形容器の内周から突設された、中央孔を有する環形部材と、該中央孔を通って該筒形容器内に配置された保護菅と、該保護菅内に配置された紫外線ランプとを有しており、
該保護菅の外周面と該中央孔の内周面との間隔が8mm以下であることを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記間隔が3〜8mmであることを特徴とする紫外線酸化装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紫外線酸化装置を有する有機物除去装置であって、
前記紫外線酸化装置の前段に、ペルオキソ二硫酸塩を注入する装置を有することを特徴とする有機物除去装置。
【請求項5】
請求項4において、前記紫外線酸化装置の後段に酸化剤除去装置を有し、該酸化剤除去装置の後段にイオン交換装置を有することを特徴とする有機物除去装置。
【請求項6】
請求項5において、前記イオン交換装置の後段に脱気装置を有し、該脱気装置の後段に第2のイオン交換装置を有することを特徴とする有機物除去装置。
【請求項7】
請求項5又は6において、脱気装置よりも前段の前記イオン交換装置と、脱気装置よりも後段の前記第2のイオン交換装置との少なくとも一方が連続再生式電気脱イオン装置であることを特徴とする有機物除去装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−119658(P2008−119658A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309341(P2006−309341)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】