細胞シートの供給方法
【課題】経口的あるいは経肛門的に細長い体腔内を経由して細胞シートをその接着面を他の部位に接着させることなく患部に到達させるよう細胞シートを簡易に供給する。
【解決手段】温度により親水性と疎水性とが切り替わる温度応答性を有する温度応答性部材2を細胞懸濁液Aに浸漬して培養し、温度応答性部材の表面に細胞シートを形成するステップと、細胞シートが形成された温度応答性部材を細胞懸濁液から取り出して体腔内を搬送するステップと、体腔内の患部近傍において、温度応答性部材を冷却して細胞シートを剥離させるステップとを備える細胞シートの供給方法を提供する。
【解決手段】温度により親水性と疎水性とが切り替わる温度応答性を有する温度応答性部材2を細胞懸濁液Aに浸漬して培養し、温度応答性部材の表面に細胞シートを形成するステップと、細胞シートが形成された温度応答性部材を細胞懸濁液から取り出して体腔内を搬送するステップと、体腔内の患部近傍において、温度応答性部材を冷却して細胞シートを剥離させるステップとを備える細胞シートの供給方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞シートの供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、瘢痕性角結膜症等の中度または重度の角膜疾患等の治療のために培養上皮細胞シートが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。また、火傷等の皮膚損傷を治療するために、火傷により死滅した表皮を除去し、除去された部分をマスキングするために細胞シートが用いられている(例えば、特許文献2参照。)。これらの細胞シートは、患者本人の正常な細胞を採取して培養することにより製造されるものであるため、免疫拒絶反応等の問題がないという利点がある。
【0003】
また、特許文献2においては、細胞シートの製造方法として、温度応答性ポリマーにより表面を被覆した培養容器を用いる方法が開示されている。温度応答性ポリマーは、温度により疎水性から親水性に急激に変化する性質を有し、例えば、37℃での培養時には、疎水性を呈して、接着性の細胞を接着状態に維持して成長を促進し、剥離させるときには、例えば、20℃程度に冷却することにより、親水性に変化させ、培養容器から細胞を容易に剥離させることができる。
【0004】
温度応答性ポリマーを使用することにより、従来トリプシン等のタンパク質分解酵素を用いて剥離させていた場合と比較すると、細胞に与える損傷が少なく、健全な状態の細胞シートを製造することができるという利点がある。
そして、このようにして剥離された細胞シートは、培養容器の底面に設けられた温度応答性ポリマーの作用により剥離されたものであるため、細胞自体の接着性に変化はなく、剥離された後は、培養容器に接着していた面を接着面として患部に貼り付けマスキング等に利用することができる。
【特許文献1】特開2002−331025号公報
【特許文献2】国際公開第02/10349パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した角膜疾患の治療や、火傷時の皮膚の治療等のように、人体の外部に露出する部位の治療に際しては、上記細胞シートの接着面が他の部位に接着しないように広げたままで、容易に患部に配置することができるが、例えば、食道、胃あるいは腸の内壁に形成された潰瘍や、内視鏡的に粘膜が切除された部位に細胞シートを配置するには、経口的あるいは経肛門的に細長い体腔内を経由して細胞シートを挿入していく必要があり、細胞シートの接着面自体を他の部位に接着させることなく患部に到達させることが困難である。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、経口的あるいは経肛門的に細長い体腔内を経由して細胞シートをその接着面を他の部位に接着させることなく患部に到達させるよう細胞シートを簡易に供給することを可能とする細胞シートの供給方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する
本発明は、温度により親水性と疎水性とが切り替わる温度応答性を有する温度応答性部材を細胞懸濁液に浸漬して培養し、温度応答性部材の表面に細胞シートを形成するステップと、細胞シートが形成された温度応答性部材を細胞懸濁液から取り出して体腔内を搬送するステップと、体腔内の患部近傍において、温度応答性部材を冷却して細胞シートを剥離させるステップとを備える細胞シートの供給方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、温度応答性部材を細胞懸濁液に浸漬して培養することにより温度応答性部材の表面に細胞シートが形成される。細胞シートが形成された温度応答性シートを体腔内に挿入して搬送し、患部近傍において冷却することにより、細胞シートを剥離させて患部に適用することが可能となる。
この場合において、本発明によれば、温度応答性部材の表面に培養により形成した細胞シートを剥離させることなくそのまま体腔内に挿入するので、患部近傍においてリリースするまで、細胞シートを単独で取り扱わずに済み、作業が簡易かつ容易である。搬送中は、細胞シートの接着面を温度応答性部材に接着させたままの状態に維持でき、体腔内の各部への接着や、細胞シート自体の接着面どうしの接着等の不都合の発生を未然に防止することができる。また、リリース時は、温度応答性部材を冷却するだけで、容易に細胞シートを剥離させて患部に対してリリースすることができる。
【0009】
上記発明においては、前記温度応答性部材が、シート状であることとしてもよい。
このようにすることで、細胞シートを皺寄せることなく広げた状態で搬送することが可能となり、患部への接着作業を容易にすることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記温度応答性部材が、変形可能な部材により構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、口や肛門から患部近傍までの狭隘な体腔内においては細胞シートを接着させた温度応答性部材を細く変形させることにより、体腔内を容易に搬送することができる。また、患部近傍において温度応答性部材を広げるように変形させることにより、細胞シートを広げることが可能となり、患部への接着作業を容易にすることができる。
【0011】
さらに、上記発明においては、前記温度応答性部材が、形状記憶アクチュエータを備えることとしてもよい。
このようにすることで、形状記憶アクチュエータに温度変化を与え、簡易に所望の形態に変形させることができる。形状記憶アクチュエータとしては、形状記憶合金あるいは形状記憶ポリマーが挙げられる。
【0012】
また、上記発明においては、前記温度応答性部材が、メタルステントであることとしてもよい。
このようにすることで、口や肛門から患部近傍までの狭隘な体腔内においては細胞シートを接着させたメタルステントを細く変形させることにより、体腔内を容易に搬送することができる。また、患部近傍においてメタルステントを広げるように変形させることにより、細胞シートを広げることが可能となり、患部への接着作業を容易にすることができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記温度応答性部材が、バルーンであることとしてもよい。
このようにすることで、口や肛門から患部近傍までの狭隘な体腔内においては細胞シートを接着させたバルーンを収縮させることにより、体腔内を容易に搬送することができる。また、患部近傍においてバルーンを膨張させることにより、患部に適した形状に細胞シートを広げ流ことができ、患部への接着作業を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、経口的あるいは経肛門的に細長い体腔内を経由して細胞シートをその接着面を他の部位に接着させることなく患部に到達させる細胞シートを簡易に供給することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態に係る細胞シート1の供給方法について、図1〜図5を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る細胞シート1の供給方法は、培養ステップと搬送ステップとリリースステップとを備えている。
【0016】
培養ステップは、図1に示されるように、シート状の温度応答性部材(以下、温度応答性シートという。)2を使用する。温度応答性シート2は、その表面に温度応答性処理が施された接着部2aを備えている。温度応答性処理は、例えば、N−イソプロピルアクリルアミドからなる高分子を塗布したものであり、32℃以上で疎水性、32℃より低い温度で親水性を呈するようになっている。
【0017】
これにより、32℃以上に維持することにより、接着部2aに細胞シート1(図2参照。)を接着状態に保持することができ、それよりも低い温度に切り替えることにより、接着部2aの細胞シート1を剥離させることができるようになっている。また、接着部2a以外の表面は、親水性を有するように処理されている。これにより、接着部2a以外の表面には、いかなる温度でも細胞が接着しないようになっている。
【0018】
培養ステップにおいては、口腔粘膜を採取して所定の培地内に投入してなる細胞懸濁液Aを貯留した培養容器3内に温度応答性シート2を浸漬して、温度37℃、CO2濃度0.5%の培養条件に維持する。これにより、37℃では疎水性を呈している温度応答性シート2の接着部2a表面に細胞懸濁液A中に浮遊する細胞が接着して成長し、所定時間経過後に細胞シート1が形成される。これにより、図2に示されるように、温度応答性シート2と細胞シート1とが重ね合わせられた複合シート4が形成されるようになっている。
【0019】
搬送ステップは、図3に示されるように、複合シート4を巻き取るように丸めて、図4に示されるように、内視鏡の挿入部5に長手方向に沿って設けられたチャネル6(図5参照。)に挿入可能な外径寸法を有する柔軟なチューブ7の先端部に複合シート4を収容する。これにより、経口的あるいは経肛門的に、先端部を体腔内の患部近傍に配置された内視鏡の挿入部5のチャネル6に沿って、複合シート4を収容したチューブ7を挿入することにより、複合シート4を患部近傍まで搬送することができる。
【0020】
そして、リリースステップは、図5に示されるように、チャネル6の後方から導入したワイヤ等の押圧手段8により複合シート4をチャネル6外に押し出す。その後、チャネル6を介して導入した冷却水9を複合シート4にかけることにより32℃より低い温度に冷却する。これにより、複合シート4を構成している温度応答性シート2の接着部2aを親水性に変化させ、該接着部2aに接着されている細胞シート1を容易に剥離させ、患部近傍にリリースすることができる。
【0021】
このように本実施形態に係る細胞シート1の供給方法によれば、体腔内の患部近傍まで搬送する温度応答性シート2に、培養により直接、細胞シート1を接着状態に形成するので、形成された細胞シート1を患部近傍にリリースするまで剥離させる必要がなく、取扱性を向上することができるという利点がある。また、搬送中に細胞シート1が温度応答性シート2に接着状態に維持されることにより、細胞シート1の接着面1aが露出しないので、細胞シート1が他の部位に接着してしまったり、細胞シート1の接着面1aどうしが接着してしまったりする不都合の発生を未然に防止することができる。
【0022】
また、本実施形態によれば、細胞シート1を温度応答性シート2に接着状態としているので、巻き取るように多重に丸めても細胞シート1が他の部位に接着することがなく、簡単に広げることができる。そして、多重に丸めることで、広い面積の細胞シート1をチューブ7内に収容することができ、比較的大きな患部を修復するための広い細胞シート1を供給することができる。
【0023】
なお、本実施形態においては、単に、温度応答性処理を施した接着部2aを有する温度応答性シート2に細胞シート1を重ねた複合シート4を例示したが、これに代えて、柔軟なシート内部に形状記憶合金(図示略)を埋め込んだもの、あるいは、形状記憶ポリマーにより構成された温度応答性シート2を採用してもよい。このようにすることで、温度変化を与えることにより、図1の平坦に広がった状態と、図2のように巻き取られた状態とを容易に切り替えることができる。
【0024】
これにより、チャネル6内への複合シート4の挿入作業を容易にすることができるとともに、リリース時の展開もスムーズに行うことができる。また、細胞シート1のリリース時に、図2のように広げ、リリース後に図3のように巻き取って、再度チャネル6内に回収することも可能となる。
【0025】
また、本実施形態においては、複合シート4をチャネル6内に収容して搬送し、患部近傍においてリリースすることとしたが、複合シート4をチャネル6内に収容することなく、内視鏡の挿入部5の先端に、図示しない鉗子等により把持した状態で、体腔内を搬送することにしてもよい。このようにすることで、チャネル6内から押し出す工程が不要となり、単に冷却するだけで、細胞シート1を患部近傍にリリースすることができる。
【0026】
また、平坦な温度応答性シート2に代えて、筒状に形成した温度応答性シート2の外面に細胞シート1を付着させた複合シート4の内部に、伸縮可能なメタルステント(図示略)等の拡張手段を配置することとしてもよい。このようにすることで、メタルステントを広げた状態で構成した複合シート4は、メタルステントを半径方向内方に縮小させることにより、皺寄せられてその外径寸法を縮小させることができる。この状態で、挿入部5のチャネル6内に収容することができる。
【0027】
したがって、内視鏡の挿入部5のチャネル6を介して体腔内に接着させることなく、またそれ自体の接着面2aどうしを接着させてしまうことなく、患部近傍まで搬送することができる。また、挿入部5のチャネル6からリリースした後には、メタルステントを拡張させることで、皺寄せられていた複合シート4を張るように拡張させ、細胞シート1を広げることができる。この状態で、温度応答性シート2を冷却することにより、広がった細胞シート1を容易に剥離させ、患部近傍にリリースすることができる。
【0028】
また、同様にして、表面に温度応答性処理を施したバルーンの表面に細胞シート1を付着させたもの(図示略)を採用してもよい。バルーンを拡張させた状態で細胞シート1を接着させ、バルーンを収縮させることで、挿入部5のチャネル6内に容易に収容可能とすることができる。
【0029】
したがって、内視鏡の挿入部5のチャネル6を介して体腔内に接着させることなく、またそれ自体の接着面2aどうしを接着させてしまうことなく、患部近傍まで搬送することができる。そして、チャネル6内からリリースされた後には、バルーンを膨張させることにより、皺寄せられていた細胞シート1を張るように拡張させることができる。この状態で、バルーンを冷却することにより、広がった状態の細胞シート1を容易に剥離させ、患部近傍にリリースすることができる。
【0030】
また、同様にして、ワイヤからなる環状のスネア(図示略)の内側に、膜状に温度応答性シート2を張り、該温度応答性シート2に細胞シート1を付着させることにしてもよい。スネアを収納形態とすることで、複合シート4をチャネル6内に収容可能な太さに容易に構成することができ、また、スネアをチャネル6外に突出させることにより、スネアの弾性によって複合シート4を広げることができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態に係る細胞シート1の供給方法について、図6〜図9を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る細胞シート1の供給方法は、図6に示されるキャップ10を使用する。
【0032】
このキャップ10は、図6に示されるように、略円筒状に形成され、長手軸方向の一端側に、内視鏡の挿入部5の先端に嵌合可能な嵌合部11を備えている。また、キャップ10の他端側には、その内表面に温度応答性処理が施された接着部10aが備えられている。
【0033】
これにより、32℃以上に維持することにより、接着部10aに細胞シート1を接着状態に保持することができ、それよりも低い温度に切り替えることにより、接着部10aの細胞シート1を剥離させることができるようになっている。また、接着部10a以外の表面は、親水性を有するように処理されている。これにより、接着部10a以外の表面には、いかなる温度でも細胞が接着しないようになっている。
【0034】
このようなキャップ10に細胞シート1を接着させるには、例えば、図7に示されるように、接着させる細胞を浮遊させた細胞懸濁液Aに、長手軸を略水平にしたキャップ10の一部を浸漬させ、その状態でキャップ10を長手軸回りに回転させながら、所定の培養条件、例えば、温度37℃、湿度100%、CO2濃度0.5%に維持することにより回転培養する。これにより、温度応答性処理が施されている接着部10aには細胞が接着して成長し、それ以外の表面には細胞が接着しないので、接着部10aのみに細胞シート1が形成されることになる。
【0035】
このようにして、細胞シート1を接着させたキャップ10を細胞懸濁液Aから取り出し、図8および図9に示されるように、内視鏡の挿入部5の先端に嵌合部11を嵌合させて取り付け、例えば、長手軸に沿って切断線1bを形成する。そして、内視鏡の挿入部5を経口的あるいは経肛門的に体腔内に挿入することで、細胞シート1が体腔内を搬送されることになる。
【0036】
この場合において、本実施形態に係る細胞シート1の供給方法によれば、細胞シート1はその接着面1aをキャップ10の内面に形成された接着部10aに接着状態に保持されたまま搬送されるので、搬送中に、細胞シート1が体腔内の他の部位に接着してしまったり、接着面1aどうしが接着してしまったりする不都合の発生を防止できる。また、細胞シート1がキャップ10の内面に配されているので、搬送中に体腔内の部位に接触することが回避され、細胞シート1を保護しながら搬送することができる。そして、このようにして搬送することにより、細胞シート1を健全な状態で患部近傍に配置することができるようになる。
【0037】
細胞シート1を接着させたキャップ10が患部近傍に配置された場合には、挿入部5に備えられたチャネル6を介して32℃より低い温度の冷却水を供給することにより、チャネル6の出口周囲に配置されているキャップ10を冷却し、接着部10aの性質を親水性に変化させる。これにより、接着部10aに接着していた細胞シート1が容易に剥離し、患部に向けて供給されることになる。
【0038】
この場合において、本実施形態によれば、キャップ10の内面に設けられた接着部10aに保持していた細胞シート1をリリースするので、細胞シート1は接着面1aを外側に向けた円筒状の形態でリリースされる。したがって、リリース位置付近に配置されている患部に容易に接着させることができる。
【0039】
すなわち、円筒状のキャップ10内面に接着されていた細胞シート1は、接着部10aから剥離されると、その径寸法を拡大するように広がるので、より平坦な部位に配されている患部にフィットするようになる。
【0040】
また、この場合に、細胞シート1に形成された切断線1bが、細胞シート1を貼り付ける患部に対して反対側に配されるように搬送する。これにより、細胞シート1がキャップ10の接着部10aから剥離されると、そのまま、患部に向けて移動するだけで、患部を覆うように適用することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、内視鏡の挿入部5に備えられたチャネル6を介して冷却水を供給することにより、キャップ10を冷却することとしたが、これに代えて、図10に示されるように、キャップ10の壁面内部を通る流路12を設け、該流路12に、挿入部5の外側を通して導いた外付けの給水チューブ13を接続することにより、該給水チューブ13を介して冷却水をキャップ10の流路12内に流通させ、キャップ10を冷却することにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、キャップ10の内面に接着部10aを設けることとしたが、これに代えて、体腔内の他の部位との接触が問題にならない場合には、図11に示されるように、キャップ10の外面に設けた接着部10aに細胞シート1を接着させることにしてもよい。このようにすることで、細胞シート1に切断線1bを形成する作業を容易にすることができる。
【0043】
この場合には、細胞シート1に形成された切断線1bが、細胞シート1を貼り付ける患部側に配されるように搬送する。これにより、細胞シート1がキャップ10の接着部10aから剥離されると、そのまま、患部に向けて移動するだけで、患部を覆うように適用することができる。
【0044】
また、キャップ10の外面に細胞シート1を接着させることに代えて、内視鏡の挿入部5自体の外周面に温度応答性処理を施して接着部とし、挿入部5を細胞懸濁液A内に浸漬して培養し、該接着部に細胞シート1を接着させることにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る細胞シートの供給方法における培養ステップを説明する斜視図である。
【図2】図1の細胞シートの供給方法において用いられる複合シートを示す斜視図である。
【図3】図2の複合シートを丸めた状態を示す斜視図である。
【図4】図3により丸められた複合シートを搬送用のチューブに収容する状態を説明する斜視図である。
【図5】図1の細胞シートの供給方法におけるリリースステップを説明する斜視図であり、(a)チューブ内に収容してチャネル内を搬送される複合シート、(b)部分的にチューブから押し出された複合シート、(c)チューブからリリースされた複合シートをそれぞれ示している。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る細胞シートの供給方法に使用されるキャップを示す斜視図である。
【図7】図6の供給方法の培養ステップにおけるキャップの接着部への細胞シートの接着方法を示す説明図である。
【図8】図7の接着方法により細胞シートを接着させたキャップを内視鏡の先端部に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図9】図8の状態を示す縦断面図である。
【図10】図9の変形例を示す縦断面図である。
【図11】図9の他の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
A 細胞懸濁液
1 細胞シート
2 温度応答性シート(温度応答性部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞シートの供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、瘢痕性角結膜症等の中度または重度の角膜疾患等の治療のために培養上皮細胞シートが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。また、火傷等の皮膚損傷を治療するために、火傷により死滅した表皮を除去し、除去された部分をマスキングするために細胞シートが用いられている(例えば、特許文献2参照。)。これらの細胞シートは、患者本人の正常な細胞を採取して培養することにより製造されるものであるため、免疫拒絶反応等の問題がないという利点がある。
【0003】
また、特許文献2においては、細胞シートの製造方法として、温度応答性ポリマーにより表面を被覆した培養容器を用いる方法が開示されている。温度応答性ポリマーは、温度により疎水性から親水性に急激に変化する性質を有し、例えば、37℃での培養時には、疎水性を呈して、接着性の細胞を接着状態に維持して成長を促進し、剥離させるときには、例えば、20℃程度に冷却することにより、親水性に変化させ、培養容器から細胞を容易に剥離させることができる。
【0004】
温度応答性ポリマーを使用することにより、従来トリプシン等のタンパク質分解酵素を用いて剥離させていた場合と比較すると、細胞に与える損傷が少なく、健全な状態の細胞シートを製造することができるという利点がある。
そして、このようにして剥離された細胞シートは、培養容器の底面に設けられた温度応答性ポリマーの作用により剥離されたものであるため、細胞自体の接着性に変化はなく、剥離された後は、培養容器に接着していた面を接着面として患部に貼り付けマスキング等に利用することができる。
【特許文献1】特開2002−331025号公報
【特許文献2】国際公開第02/10349パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した角膜疾患の治療や、火傷時の皮膚の治療等のように、人体の外部に露出する部位の治療に際しては、上記細胞シートの接着面が他の部位に接着しないように広げたままで、容易に患部に配置することができるが、例えば、食道、胃あるいは腸の内壁に形成された潰瘍や、内視鏡的に粘膜が切除された部位に細胞シートを配置するには、経口的あるいは経肛門的に細長い体腔内を経由して細胞シートを挿入していく必要があり、細胞シートの接着面自体を他の部位に接着させることなく患部に到達させることが困難である。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、経口的あるいは経肛門的に細長い体腔内を経由して細胞シートをその接着面を他の部位に接着させることなく患部に到達させるよう細胞シートを簡易に供給することを可能とする細胞シートの供給方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する
本発明は、温度により親水性と疎水性とが切り替わる温度応答性を有する温度応答性部材を細胞懸濁液に浸漬して培養し、温度応答性部材の表面に細胞シートを形成するステップと、細胞シートが形成された温度応答性部材を細胞懸濁液から取り出して体腔内を搬送するステップと、体腔内の患部近傍において、温度応答性部材を冷却して細胞シートを剥離させるステップとを備える細胞シートの供給方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、温度応答性部材を細胞懸濁液に浸漬して培養することにより温度応答性部材の表面に細胞シートが形成される。細胞シートが形成された温度応答性シートを体腔内に挿入して搬送し、患部近傍において冷却することにより、細胞シートを剥離させて患部に適用することが可能となる。
この場合において、本発明によれば、温度応答性部材の表面に培養により形成した細胞シートを剥離させることなくそのまま体腔内に挿入するので、患部近傍においてリリースするまで、細胞シートを単独で取り扱わずに済み、作業が簡易かつ容易である。搬送中は、細胞シートの接着面を温度応答性部材に接着させたままの状態に維持でき、体腔内の各部への接着や、細胞シート自体の接着面どうしの接着等の不都合の発生を未然に防止することができる。また、リリース時は、温度応答性部材を冷却するだけで、容易に細胞シートを剥離させて患部に対してリリースすることができる。
【0009】
上記発明においては、前記温度応答性部材が、シート状であることとしてもよい。
このようにすることで、細胞シートを皺寄せることなく広げた状態で搬送することが可能となり、患部への接着作業を容易にすることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記温度応答性部材が、変形可能な部材により構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、口や肛門から患部近傍までの狭隘な体腔内においては細胞シートを接着させた温度応答性部材を細く変形させることにより、体腔内を容易に搬送することができる。また、患部近傍において温度応答性部材を広げるように変形させることにより、細胞シートを広げることが可能となり、患部への接着作業を容易にすることができる。
【0011】
さらに、上記発明においては、前記温度応答性部材が、形状記憶アクチュエータを備えることとしてもよい。
このようにすることで、形状記憶アクチュエータに温度変化を与え、簡易に所望の形態に変形させることができる。形状記憶アクチュエータとしては、形状記憶合金あるいは形状記憶ポリマーが挙げられる。
【0012】
また、上記発明においては、前記温度応答性部材が、メタルステントであることとしてもよい。
このようにすることで、口や肛門から患部近傍までの狭隘な体腔内においては細胞シートを接着させたメタルステントを細く変形させることにより、体腔内を容易に搬送することができる。また、患部近傍においてメタルステントを広げるように変形させることにより、細胞シートを広げることが可能となり、患部への接着作業を容易にすることができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記温度応答性部材が、バルーンであることとしてもよい。
このようにすることで、口や肛門から患部近傍までの狭隘な体腔内においては細胞シートを接着させたバルーンを収縮させることにより、体腔内を容易に搬送することができる。また、患部近傍においてバルーンを膨張させることにより、患部に適した形状に細胞シートを広げ流ことができ、患部への接着作業を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、経口的あるいは経肛門的に細長い体腔内を経由して細胞シートをその接着面を他の部位に接着させることなく患部に到達させる細胞シートを簡易に供給することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態に係る細胞シート1の供給方法について、図1〜図5を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る細胞シート1の供給方法は、培養ステップと搬送ステップとリリースステップとを備えている。
【0016】
培養ステップは、図1に示されるように、シート状の温度応答性部材(以下、温度応答性シートという。)2を使用する。温度応答性シート2は、その表面に温度応答性処理が施された接着部2aを備えている。温度応答性処理は、例えば、N−イソプロピルアクリルアミドからなる高分子を塗布したものであり、32℃以上で疎水性、32℃より低い温度で親水性を呈するようになっている。
【0017】
これにより、32℃以上に維持することにより、接着部2aに細胞シート1(図2参照。)を接着状態に保持することができ、それよりも低い温度に切り替えることにより、接着部2aの細胞シート1を剥離させることができるようになっている。また、接着部2a以外の表面は、親水性を有するように処理されている。これにより、接着部2a以外の表面には、いかなる温度でも細胞が接着しないようになっている。
【0018】
培養ステップにおいては、口腔粘膜を採取して所定の培地内に投入してなる細胞懸濁液Aを貯留した培養容器3内に温度応答性シート2を浸漬して、温度37℃、CO2濃度0.5%の培養条件に維持する。これにより、37℃では疎水性を呈している温度応答性シート2の接着部2a表面に細胞懸濁液A中に浮遊する細胞が接着して成長し、所定時間経過後に細胞シート1が形成される。これにより、図2に示されるように、温度応答性シート2と細胞シート1とが重ね合わせられた複合シート4が形成されるようになっている。
【0019】
搬送ステップは、図3に示されるように、複合シート4を巻き取るように丸めて、図4に示されるように、内視鏡の挿入部5に長手方向に沿って設けられたチャネル6(図5参照。)に挿入可能な外径寸法を有する柔軟なチューブ7の先端部に複合シート4を収容する。これにより、経口的あるいは経肛門的に、先端部を体腔内の患部近傍に配置された内視鏡の挿入部5のチャネル6に沿って、複合シート4を収容したチューブ7を挿入することにより、複合シート4を患部近傍まで搬送することができる。
【0020】
そして、リリースステップは、図5に示されるように、チャネル6の後方から導入したワイヤ等の押圧手段8により複合シート4をチャネル6外に押し出す。その後、チャネル6を介して導入した冷却水9を複合シート4にかけることにより32℃より低い温度に冷却する。これにより、複合シート4を構成している温度応答性シート2の接着部2aを親水性に変化させ、該接着部2aに接着されている細胞シート1を容易に剥離させ、患部近傍にリリースすることができる。
【0021】
このように本実施形態に係る細胞シート1の供給方法によれば、体腔内の患部近傍まで搬送する温度応答性シート2に、培養により直接、細胞シート1を接着状態に形成するので、形成された細胞シート1を患部近傍にリリースするまで剥離させる必要がなく、取扱性を向上することができるという利点がある。また、搬送中に細胞シート1が温度応答性シート2に接着状態に維持されることにより、細胞シート1の接着面1aが露出しないので、細胞シート1が他の部位に接着してしまったり、細胞シート1の接着面1aどうしが接着してしまったりする不都合の発生を未然に防止することができる。
【0022】
また、本実施形態によれば、細胞シート1を温度応答性シート2に接着状態としているので、巻き取るように多重に丸めても細胞シート1が他の部位に接着することがなく、簡単に広げることができる。そして、多重に丸めることで、広い面積の細胞シート1をチューブ7内に収容することができ、比較的大きな患部を修復するための広い細胞シート1を供給することができる。
【0023】
なお、本実施形態においては、単に、温度応答性処理を施した接着部2aを有する温度応答性シート2に細胞シート1を重ねた複合シート4を例示したが、これに代えて、柔軟なシート内部に形状記憶合金(図示略)を埋め込んだもの、あるいは、形状記憶ポリマーにより構成された温度応答性シート2を採用してもよい。このようにすることで、温度変化を与えることにより、図1の平坦に広がった状態と、図2のように巻き取られた状態とを容易に切り替えることができる。
【0024】
これにより、チャネル6内への複合シート4の挿入作業を容易にすることができるとともに、リリース時の展開もスムーズに行うことができる。また、細胞シート1のリリース時に、図2のように広げ、リリース後に図3のように巻き取って、再度チャネル6内に回収することも可能となる。
【0025】
また、本実施形態においては、複合シート4をチャネル6内に収容して搬送し、患部近傍においてリリースすることとしたが、複合シート4をチャネル6内に収容することなく、内視鏡の挿入部5の先端に、図示しない鉗子等により把持した状態で、体腔内を搬送することにしてもよい。このようにすることで、チャネル6内から押し出す工程が不要となり、単に冷却するだけで、細胞シート1を患部近傍にリリースすることができる。
【0026】
また、平坦な温度応答性シート2に代えて、筒状に形成した温度応答性シート2の外面に細胞シート1を付着させた複合シート4の内部に、伸縮可能なメタルステント(図示略)等の拡張手段を配置することとしてもよい。このようにすることで、メタルステントを広げた状態で構成した複合シート4は、メタルステントを半径方向内方に縮小させることにより、皺寄せられてその外径寸法を縮小させることができる。この状態で、挿入部5のチャネル6内に収容することができる。
【0027】
したがって、内視鏡の挿入部5のチャネル6を介して体腔内に接着させることなく、またそれ自体の接着面2aどうしを接着させてしまうことなく、患部近傍まで搬送することができる。また、挿入部5のチャネル6からリリースした後には、メタルステントを拡張させることで、皺寄せられていた複合シート4を張るように拡張させ、細胞シート1を広げることができる。この状態で、温度応答性シート2を冷却することにより、広がった細胞シート1を容易に剥離させ、患部近傍にリリースすることができる。
【0028】
また、同様にして、表面に温度応答性処理を施したバルーンの表面に細胞シート1を付着させたもの(図示略)を採用してもよい。バルーンを拡張させた状態で細胞シート1を接着させ、バルーンを収縮させることで、挿入部5のチャネル6内に容易に収容可能とすることができる。
【0029】
したがって、内視鏡の挿入部5のチャネル6を介して体腔内に接着させることなく、またそれ自体の接着面2aどうしを接着させてしまうことなく、患部近傍まで搬送することができる。そして、チャネル6内からリリースされた後には、バルーンを膨張させることにより、皺寄せられていた細胞シート1を張るように拡張させることができる。この状態で、バルーンを冷却することにより、広がった状態の細胞シート1を容易に剥離させ、患部近傍にリリースすることができる。
【0030】
また、同様にして、ワイヤからなる環状のスネア(図示略)の内側に、膜状に温度応答性シート2を張り、該温度応答性シート2に細胞シート1を付着させることにしてもよい。スネアを収納形態とすることで、複合シート4をチャネル6内に収容可能な太さに容易に構成することができ、また、スネアをチャネル6外に突出させることにより、スネアの弾性によって複合シート4を広げることができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態に係る細胞シート1の供給方法について、図6〜図9を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る細胞シート1の供給方法は、図6に示されるキャップ10を使用する。
【0032】
このキャップ10は、図6に示されるように、略円筒状に形成され、長手軸方向の一端側に、内視鏡の挿入部5の先端に嵌合可能な嵌合部11を備えている。また、キャップ10の他端側には、その内表面に温度応答性処理が施された接着部10aが備えられている。
【0033】
これにより、32℃以上に維持することにより、接着部10aに細胞シート1を接着状態に保持することができ、それよりも低い温度に切り替えることにより、接着部10aの細胞シート1を剥離させることができるようになっている。また、接着部10a以外の表面は、親水性を有するように処理されている。これにより、接着部10a以外の表面には、いかなる温度でも細胞が接着しないようになっている。
【0034】
このようなキャップ10に細胞シート1を接着させるには、例えば、図7に示されるように、接着させる細胞を浮遊させた細胞懸濁液Aに、長手軸を略水平にしたキャップ10の一部を浸漬させ、その状態でキャップ10を長手軸回りに回転させながら、所定の培養条件、例えば、温度37℃、湿度100%、CO2濃度0.5%に維持することにより回転培養する。これにより、温度応答性処理が施されている接着部10aには細胞が接着して成長し、それ以外の表面には細胞が接着しないので、接着部10aのみに細胞シート1が形成されることになる。
【0035】
このようにして、細胞シート1を接着させたキャップ10を細胞懸濁液Aから取り出し、図8および図9に示されるように、内視鏡の挿入部5の先端に嵌合部11を嵌合させて取り付け、例えば、長手軸に沿って切断線1bを形成する。そして、内視鏡の挿入部5を経口的あるいは経肛門的に体腔内に挿入することで、細胞シート1が体腔内を搬送されることになる。
【0036】
この場合において、本実施形態に係る細胞シート1の供給方法によれば、細胞シート1はその接着面1aをキャップ10の内面に形成された接着部10aに接着状態に保持されたまま搬送されるので、搬送中に、細胞シート1が体腔内の他の部位に接着してしまったり、接着面1aどうしが接着してしまったりする不都合の発生を防止できる。また、細胞シート1がキャップ10の内面に配されているので、搬送中に体腔内の部位に接触することが回避され、細胞シート1を保護しながら搬送することができる。そして、このようにして搬送することにより、細胞シート1を健全な状態で患部近傍に配置することができるようになる。
【0037】
細胞シート1を接着させたキャップ10が患部近傍に配置された場合には、挿入部5に備えられたチャネル6を介して32℃より低い温度の冷却水を供給することにより、チャネル6の出口周囲に配置されているキャップ10を冷却し、接着部10aの性質を親水性に変化させる。これにより、接着部10aに接着していた細胞シート1が容易に剥離し、患部に向けて供給されることになる。
【0038】
この場合において、本実施形態によれば、キャップ10の内面に設けられた接着部10aに保持していた細胞シート1をリリースするので、細胞シート1は接着面1aを外側に向けた円筒状の形態でリリースされる。したがって、リリース位置付近に配置されている患部に容易に接着させることができる。
【0039】
すなわち、円筒状のキャップ10内面に接着されていた細胞シート1は、接着部10aから剥離されると、その径寸法を拡大するように広がるので、より平坦な部位に配されている患部にフィットするようになる。
【0040】
また、この場合に、細胞シート1に形成された切断線1bが、細胞シート1を貼り付ける患部に対して反対側に配されるように搬送する。これにより、細胞シート1がキャップ10の接着部10aから剥離されると、そのまま、患部に向けて移動するだけで、患部を覆うように適用することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、内視鏡の挿入部5に備えられたチャネル6を介して冷却水を供給することにより、キャップ10を冷却することとしたが、これに代えて、図10に示されるように、キャップ10の壁面内部を通る流路12を設け、該流路12に、挿入部5の外側を通して導いた外付けの給水チューブ13を接続することにより、該給水チューブ13を介して冷却水をキャップ10の流路12内に流通させ、キャップ10を冷却することにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、キャップ10の内面に接着部10aを設けることとしたが、これに代えて、体腔内の他の部位との接触が問題にならない場合には、図11に示されるように、キャップ10の外面に設けた接着部10aに細胞シート1を接着させることにしてもよい。このようにすることで、細胞シート1に切断線1bを形成する作業を容易にすることができる。
【0043】
この場合には、細胞シート1に形成された切断線1bが、細胞シート1を貼り付ける患部側に配されるように搬送する。これにより、細胞シート1がキャップ10の接着部10aから剥離されると、そのまま、患部に向けて移動するだけで、患部を覆うように適用することができる。
【0044】
また、キャップ10の外面に細胞シート1を接着させることに代えて、内視鏡の挿入部5自体の外周面に温度応答性処理を施して接着部とし、挿入部5を細胞懸濁液A内に浸漬して培養し、該接着部に細胞シート1を接着させることにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る細胞シートの供給方法における培養ステップを説明する斜視図である。
【図2】図1の細胞シートの供給方法において用いられる複合シートを示す斜視図である。
【図3】図2の複合シートを丸めた状態を示す斜視図である。
【図4】図3により丸められた複合シートを搬送用のチューブに収容する状態を説明する斜視図である。
【図5】図1の細胞シートの供給方法におけるリリースステップを説明する斜視図であり、(a)チューブ内に収容してチャネル内を搬送される複合シート、(b)部分的にチューブから押し出された複合シート、(c)チューブからリリースされた複合シートをそれぞれ示している。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る細胞シートの供給方法に使用されるキャップを示す斜視図である。
【図7】図6の供給方法の培養ステップにおけるキャップの接着部への細胞シートの接着方法を示す説明図である。
【図8】図7の接着方法により細胞シートを接着させたキャップを内視鏡の先端部に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図9】図8の状態を示す縦断面図である。
【図10】図9の変形例を示す縦断面図である。
【図11】図9の他の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
A 細胞懸濁液
1 細胞シート
2 温度応答性シート(温度応答性部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度により親水性と疎水性とが切り替わる温度応答性を有する温度応答性部材を細胞懸濁液に浸漬して培養し、温度応答性部材の表面に細胞シートを形成するステップと、
細胞シートが形成された温度応答性部材を細胞懸濁液から取り出して体腔内を搬送するステップと、
体腔内の患部近傍において、温度応答性部材を冷却して細胞シートを剥離させるステップとを備える細胞シートの供給方法。
【請求項2】
前記温度応答性部材が、シート状である請求項1に記載の細胞シートの供給方法。
【請求項3】
前記温度応答性部材が、変形可能な部材により構成されている請求項1または請求項2に記載の細胞シートの供給方法。
【請求項4】
前記温度応答性部材が、形状記憶アクチュエータを備える請求項3に記載の細胞シートの供給方法。
【請求項5】
前記温度応答性部材が、メタルステントである請求項3に記載の細胞シートの供給方法。
【請求項6】
前記温度応答性部材が、バルーンである請求項3に記載の細胞シートの供給方法。
【請求項1】
温度により親水性と疎水性とが切り替わる温度応答性を有する温度応答性部材を細胞懸濁液に浸漬して培養し、温度応答性部材の表面に細胞シートを形成するステップと、
細胞シートが形成された温度応答性部材を細胞懸濁液から取り出して体腔内を搬送するステップと、
体腔内の患部近傍において、温度応答性部材を冷却して細胞シートを剥離させるステップとを備える細胞シートの供給方法。
【請求項2】
前記温度応答性部材が、シート状である請求項1に記載の細胞シートの供給方法。
【請求項3】
前記温度応答性部材が、変形可能な部材により構成されている請求項1または請求項2に記載の細胞シートの供給方法。
【請求項4】
前記温度応答性部材が、形状記憶アクチュエータを備える請求項3に記載の細胞シートの供給方法。
【請求項5】
前記温度応答性部材が、メタルステントである請求項3に記載の細胞シートの供給方法。
【請求項6】
前記温度応答性部材が、バルーンである請求項3に記載の細胞シートの供給方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−229249(P2007−229249A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55069(P2006−55069)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
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