説明

細胞周期阻害活性をもつピリミジン誘導体

式(I)の化合物ならびにその医薬的に許容できる塩類およびインビボ加水分解性エステルを記載する。それらの製造方法、および医薬としての、特にヒトなどの温血動物において細胞周期阻害(抗-細胞増殖)効果を生じるための医薬としてのそれらの使用をも記載する。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、細胞周期阻害活性をもち、したがってそれらの抗-細胞増殖(たとえば抗癌)活性のため有用であり、したがってヒトまたは動物の身体を処置する方法に有用である、ピリミジン誘導体またはその医薬的に許容できる塩類もしくはインビボ加水分解性エステルに関する。本発明はまた、前記ピリミジン誘導体の製造方法、それらを含有する医薬組成物、およびヒトなどの温血動物において抗-細胞増殖効果を生じる際に用いる医薬の製造におけるそれらの使用に関する。
【0002】
細胞周期は、細胞の生存、調節および増殖にとって基礎的なものであり、各段階が確実に適正な時間および順序で進行するように高度に調節されている。細胞の細胞周期進行は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)ファミリーの幾つかのメンバーの経時的な活性化および非活性化により生じる。CDKの活性化は、それらとサイクリンと呼ばれる細胞内タンパク質ファミリーとの相互作用に依存する。サイクリンはCDKに結合し、この結合が細胞内でのCDK(CDK1、CDK2、CDK4および/またはCDK6)活性にとって必須である。細胞周期の進行に適正な順序で確実にCDKの活性化および非活性化が起きるように、細胞周期の異なる時点で異なるサイクリンが発現および分解する。
【0003】
さらに、CDKは多数の癌遺伝子信号伝達経路の下流にあると思われる。サイクリンのアップレギュレーションおよび/または内因性インヒビター欠失によるCDK活性の調節異常が、有糸分裂誘発の信号伝達経路と腫瘍細胞の増殖との間の重要な軸であると思われる。
【0004】
したがって、細胞周期キナーゼの阻害薬、特にCDK1、CDK2および/またはCDK4(それぞれG2/M、G1-S-G2/MおよびG1-S期で作動する)の阻害薬は、細胞増殖、たとえば哺乳動物癌細胞増殖の選択的阻害薬として有用なはずであると認識されている。
【0005】
WO 02/20512、WO 03/076435、WO 03/076436、WO 03/076434およびWO 03/076433には、細胞周期キナーゼの作用を阻害する特定の2-アニリノ-4-イミダゾリルピリミジン誘導体が記載されている。本発明は、新規な一群の2-アニリノ-4-ビシクロピリミジンが意外にも細胞周期キナーゼの作用を阻害し、CDK1、CDK2およびCDK3に対する選択性を示し、したがって抗-細胞増殖性をもつという知見に基づく。本発明化合物は前記のいずれの特許出願にも具体的に開示されていない。そのような特性は、異常な細胞周期および細胞増殖に関連する疾病状態、たとえば癌(充実性腫瘍および白血病)、線維増殖性障害および分化障害、乾癬、リウマチ様関節炎、カポジ肉腫、血管腫、急性および慢性腎障害、アテローム、アテローム性硬化症、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性および慢性炎症、骨疾患、ならびに網膜血管増殖を伴う眼疾患の処置に有用であると期待される。
【0006】
したがって本発明は、式(I)の化合物:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中:
環Aは、イミダゾール環に縮合したカルボサイクリルまたはヘテロサイクリルであり;
R1は、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルであり;
pは、0〜4であり;その際、R1の意味は同一でも異なってもよく;
R2は、スルファモイルまたは基Ra-Rb-であり;
qは、0〜2であり;その際、R2の意味は同一でも異なってもよく;p + q = 0〜5であり;
R3は、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、C2-3アルキニル、C1-3アルコキシ、C1-3アルカノイル、N-(C1-3アルキル)アミノ、N,N-(C1-3アルキル)2アミノ、C1-3アルカノイルアミノ、N-(C1-3アルキル)カルバモイル、N,N-(C1-3アルキル)2カルバモイル、C1-3アルキルS(O)a(aは0〜2である)、N-(C1-3アルキル)スルファモイルまたはN,N-(C1-3アルキル)2スルファモイルであり;R3は炭素において1個以上のRcにより置換されていてもよく;
nは、0〜2であり;その際、R3の意味は同一でも異なってもよく;
R4およびR5は、独立して水素、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルカノイル、C1-6アルカノイルオキシ、N-(C1-6アルキル)アミノ、N,N-(C1-6アルキル)2アミノ、C1-6アルカノイルアミノ、N-(C1-6アルキル)カルバモイル、N,N-(C1-6アルキル)2カルバモイル、C1-6アルキルS(O)a(aは0〜2である)、C1-6アルコキシカルボニル、N-(C1-6アルキル)スルファモイル、N,N-(C1-6アルキル)2スルファモイル、C1-6アルキルスルホニルアミノ、C3-8シクロアルキルまたは4〜7員飽和複素環式基から選択され;R4およびR5は炭素において1個以上のReにより置換されていてもよく;4〜7員飽和複素環式基が-NH-部分を含む場合、その窒素はRfから選択される基により置換されていてもよく;
mは、0〜4であり;その際、R4の意味は同一でも異なってもよく;
Raは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルキルC1-6アルキル、フェニル、複素環式基、フェニルC1-6アルキルまたは(複素環式基)C1-6アルキルから選択され;Raは炭素において1個以上のRgにより置換されていてもよく;複素環式基が-NH-部分を含む場合、その窒素はRhから選択される基により置換されていてもよく;
Rbは、-C(O)-、-N(Rm)C(O)-、-C(O)N(Rm)-、-S(O)r-、-OC(O)N(Rm)SO2-、-SO2N(Rm)-または-N(Rm)SO2-であり;ここでRmは水素、または1個以上のRiにより置換されていてもよいC1-6アルキルであり、rは1〜2であり;
RgおよびRiは、独立してハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシC1-6アルコキシ、C1-6アルカノイル、C1-6アルカノイルオキシ、N-(C1-6アルキル)アミノ、N,N-(C1-6アルキル)2アミノ、C1-6アルカノイルアミノ、N-(C1-6アルキル)カルバモイル、N,N-(C1-6アルキル)2カルバモイル、C1-6アルキルS(O)a(aは0〜2である)、C1-6アルコキシカルボニル、N-(C1-6アルキル)スルファモイル、N,N-(C1-6アルキル)2スルファモイル、C1-6アルキルスルホニルアミノ、C3-8シクロアルキル、フェニル、複素環式基、フェニルC1-6アルキル-Ro-、(複素環式基)C1-6アルキル-Ro-、フェニル-Ro-または(複素環式基)-Ro-から選択され;RgおよびRiは、互いに独立して、炭素において1個以上のRjにより置換されていてもよく;複素環式基が-NH-部分を含む場合、その窒素はRkから選択される基により置換されていてもよく;
Roは、-O-、-N(Rp)-、-C(O)-、-N(Rp)C(O)-、-C(O)N(Rp)-、-S(O)s-、-SO2N(Rp)-または-N(Rp)SO2-であり;ここでRpは水素またはC1-6アルキルであり、sは0〜2であり;
Rf、RhおよびRkは、独立してC1-4アルキル、C1-4アルカノイル、C1-4アルキルスルホニル、C1-4アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-(C1-4アルキル)カルバモイル、N,N-(C1-4アルキル)カルバモイル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、ベンゾイルおよびフェニルスルホニルから選択され;Rf、RhおよびRkは、互いに独立して、炭素において1個以上のRlにより置換されていてもよく;
Rc、Re、RlおよびRjは、独立してハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アセチル、アセトキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メチル-N-エチルアミノ、アセチルアミノ、N-メチルカルバモイル、N-エチルカルバモイル、N,N-ジメチルカルバモイル、N,N-ジエチルカルバモイル、N-メチル-N-エチルカルバモイル、メチルチオ、エチルチオ、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、メシル、エチルスルホニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、N-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N,N-ジエチルスルファモイルまたはN-メチル-N-エチルスルファモイルから選択される]
またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを提供する。
【0009】
本明細書において、用語”アルキル”には、直鎖および分枝鎖両方のアルキル基が含まれるが、個々のアルキル基、たとえば”プロピル”という表現は直鎖形のみに特定される。たとえば”C1-6アルキル”には、C1-4アルキル、C1-3アルキル、プロピル、イソプロピルおよびt-ブチルが含まれる。しかし、個々のアルキル基、たとえば’プロピル’という表現は直鎖形のみに特定され、個々の分枝鎖アルキル基、たとえば’イソプロピル’という表現は分枝鎖形のみに特定される。同様な取決めを他の基にも適用する。たとえば”フェニルC1-6アルキル”には、フェニルC1-4アルキル、ベンジル、1-フェニルエチルおよび2-フェニルエチルが含まれる。用語”ハロ”は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを表わす。
【0010】
”1以上の”基から任意置換基を選択する場合、この定義には、特定した基のいずれかより選択されるすべての置換基または特定した2以上の基より選択される置換基が含まれることを理解すべきである。
【0011】
”カルボサイクリル”は、前記式(I)のイミダゾール環に縮合した飽和5〜7員炭素環である;その際、-CH2-基は所望により-C(O)-により交換されていてもよい。”カルボサイクリル”の適切な意味はシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルであり、式(I)のイミダゾール環に縮合した場合、それぞれ6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-a]イミダゾール、5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン、および6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]アゼピン環系を形成する。
【0012】
”ヘテロサイクリル”は、前記式(I)のイミダゾール環に縮合した飽和5〜7員環であり、そのうち少なくとも1個の原子が窒素、硫黄または酸素から選択される;その際、-CH2-基は所望により-C(O)-により交換されていてもよい。”ヘテロサイクリル”の適切な意味はピロリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニルおよびホモピペリジニルであり、式(I)のイミダゾール環に縮合した場合、それぞれたとえば2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール、5,6-ジヒドロ-8H-イミダゾ[2,1-c][1,4]オキサジン、5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン、および6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-d][1,4]ジアゼピン環系を形成する。
【0013】
”複素環式基”は、4〜12個の原子を含み、そのうち少なくとも1個の原子が窒素、硫黄または酸素から選択される、飽和、部分飽和または不飽和の、単環式環または二環式環であって、別途明記しない限り、それらは炭素または窒素結合することができ、-CH2-基は所望により-C(O)-により交換されていてもよく、環窒素原子は所望によりC1-6アルキル基を保有して第四級化合物を形成してもよく、環の窒素および/または硫黄原子は所望により酸化されてN-オキシドまたはS-オキシドを形成してもよい。用語”複素環式基”の例および適切な意味は、モルホリノ、ピペリジル、ピリジル、ピラニル、ピロリル、イソチアゾリル、インドリル、キノリル、チエニル、1,3-ベンゾジオキソリル、チアジアゾリル、ピペラジニル、チアゾリジニル、ピロリジニル、チオモルホリノ、ピロリニル、ホモピペラジニル、3,5-ジオキサピペリジニル、テトラヒドロピラニル、イミダゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、イソオキサゾリル、N-メチルピロリル、4-ピリドン、1-イソキノロン、2-ピロリドン、2-チアゾリドン、ピリジン-N-オキシドおよびキノリン-N-オキシドである。好ましくは、”複素環式基”は、5または6個の原子を含み、そのうち少なくとも1個の原子が窒素、硫黄または酸素から選択される、飽和、部分飽和または不飽和の、単環式環または二環式環であって、別途明記しない限り、それは炭素または窒素結合することができ、-CH2-基は所望により-C(O)-により交換されていてもよく、環硫黄原子は所望により酸化されてS-オキシドを形成してもよい。より好ましくは、”複素環式基”はテトラヒドロフリル、ピリジル、ピロリジノニル、モルホリノ、イミダゾリル、ピペリジニルまたはピロリジニルである。特に、”複素環式基”はテトラヒドロフリルまたはモルホリノである。本発明の他の態様において、特に”複素環式基”はテトラヒドロフラン-2-イル、2-オキソピロリジン-1-イル、フラン-2-イル、オキサゾリル、モルホリノ、ピペリジニル、チアゾリル、ピラジニル、イソオキサゾリル、テトラヒドロピラン、ピリジル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、フタルイミドである。
【0014】
”4〜7員飽和複素環式基”は、4〜7個の原子を含み、そのうち少なくとも1個の原子が窒素、硫黄または酸素から選択される、飽和単環式環であって、別途明記しない限り、それらは炭素または窒素結合することができ、-CH2-基は所望により-C(O)-により交換されていてもよく、硫黄原子は所望により酸化されてS-オキシドを形成してもよい。用語”複素環式基”の例および適切な意味は、モルホリノ、ピペリジル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキサニル、1,2-オキサチオラニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、ピロリジニル、チオモルホリノ、ホモピペラジニルおよびテトラヒドロピラニルである。
【0015】
”C1-6アルカノイルオキシ”の例は、アセトキシである。”C1-6アルコキシカルボニル”の例には、C1-4アルコキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n-およびt-ブトキシカルボニルが含まれる。”C1-6アルコキシ”の例には、C1-4アルコキシ、C1-3アルコキシ、メトキシ、エトキシおよびプロポキシが含まれる。”C1-6アルカノイルアミノ”の例には、ホルムアミド、アセトアミドおよびプロピオニルアミノが含まれる。”C1-6アルキルS(O)a(aは0〜2である)”の例には、C1-4アルキルスルホニル、メチルチオ、エチルチオ、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、メシルおよびエチルスルホニルが含まれる。”C1-6アルキルS(O)r(rは1〜2である)”の例には、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、メシルおよびエチルスルホニルが含まれる。”C1-6アルカノイル”の例には、C1-4アルカノイル、プロピオニルおよびアセチルが含まれる。”N-C1-6アルキルアミノ”の例には、メチルアミノおよびエチルアミノが含まれる。”N,N-(C1-6アルキル)2アミノ”の例には、ジ-N-メチルアミノ、ジ-(N-エチル)アミノおよびN-エチル-N-メチルアミノが含まれる。”C2-6アルケニル”の例は、ビニル、アリルおよび1-プロペニルである。”C2-6アルキニル”の例は、エチニル、1-プロピニルおよび2-プロピニルである。”N-(C1-6アルキル)スルファモイル”の例は、N-(メチル)スルファモイルおよびN-(エチル)スルファモイルである。N-(C1-6アルキル)2スルファモイル”の例は、N,N-(ジメチル)スルファモイルおよびN-(メチル)-N-(エチル)スルファモイルである。”N-(C1-6アルキル)カルバモイル”の例は、N-(C1-4アルキル)カルバモイル、メチルアミノカルボニルおよびエチルアミノカルボニルである。”N,N-(C1-6アルキル)2カルバモイル”の例は、N,N-(C1-4アルキル)2カルバモイル、ジメチルアミノカルボニルおよびメチルエチルアミノカルボニルである。”C3-8シクロアルキル”の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロプロピルおよびシクロヘキシルである。”(複素環式基)C1-6アルキル”の例には、ピリジルメチル、3-モルホリノプロピルおよび2-ピリミド-2-イルエチルが含まれる。”C3-8シクロアルキルC1-6アルキル”の例は、シクロプロピルエチル、シクロブチルメチル、2-シクロプロピルプロピルおよびシクロヘキシルエチルである。
【0016】
本発明化合物の医薬的に許容できる適切な塩は、たとえば十分に塩基性である本発明化合物の酸付加塩、たとえば無機酸または有機酸、たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸またはマレイン酸との酸付加塩である。さらに、十分に酸性である本発明化合物の医薬的に許容できる適切な塩は、アルカリ金属塩、たとえばナトリウム塩もしくはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、たとえばカルシウム塩もしくはマグネシウム塩、アンモニウム塩、または生理的に許容できるカチオンを与える有機塩基との塩、たとえばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリンまたはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミンとの塩である。
【0017】
カルボキシ基またはヒドロキシ基を含む式(I)の化合物のインビボ加水分解性エステルは、たとえば医薬的に許容できるエステルであって、ヒトまたは動物の体内で加水分解されて親酸または親アルコールを生成するものである。カルボキシの医薬的に許容できる適切なエステルには、C1-6アルコキシメチルエステル、たとえばメトキシメチルエステル、C1-6アルカノイルオキシメチルエステル、たとえばピバロイルオキシメチルエステル、フタリジルエステル、C3-8シクロアルコキシカルボニルオキシC1-6アルキルエステル、たとえば1-シクロヘキシルカルボニルオキシエチルエステル;1,3-ジオキソレン-2-オニルメチルエステル、たとえば5-メチル-1,3-ジオキソレン-2-オニルメチルエステル;およびC1-6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、たとえば1-メトキシカルボニルオキシエチルエステルが含まれ、本発明化合物のいずれのカルボキシ基においても形成できる。
【0018】
ヒドロキシ基を含む式(I)の化合物のインビボ加水分解性エステルには、無機エステル、たとえばリン酸エステル、ならびにa-アシルオキシアルキルエーテルおよび関連化合物であって、エステルのインビボ加水分解の結果、分解して親ヒドロキシ基を与えるものが含まれる。a-アシルオキシアルキルエーテルの例には、アセトキシメトキシおよび2,2-ジメチルプロピオニルオキシ-メトキシが含まれる。ヒドロキシについて選択されるインビボ加水分解性エステル形成基には、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチル、ならびに置換されたベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキルカーボネートエステルを生成)、ジアルキルカルバモイル、ならびにN-(ジアルキルアミノエチル)-N-アルキルカルバモイル(カルバメートを生成)、ジアルキルアミノアセチル、およびカルボキシアセチルが含まれる。ベンゾイルの置換基の例には、環窒素原子からメチレン基を介してベンゾイル環の3-または4-位に結合したモルホリノおよびピペラジノが含まれる。
【0019】
式(I)のある化合物は、キラル中心および/または幾何異性中心(E-およびZ-異性体)をもつ場合があり、本発明はCDK阻害活性をもつそのような光学異性体、ジアステレオ異性体および幾何異性体のすべてを包含すると理解すべきである。
本発明は、CDK阻害活性をもつ互変異性体形の式(I)の化合物のいずれかおよびすべてに関する。
【0020】
ある式(I)の化合物は、溶媒和した形および溶媒和していない形、たとえば水和した形で存在する可能性があることも理解すべきである。本発明はCDK阻害活性をもつそのような溶媒和形のすべてを包含すると理解すべきである。
可変基の具体的な意味は下記のとおりである。そのような意味は、適切な場合、前記または後記に定めるすべての定義、特許請求の範囲または態様について採用できる。
【0021】
環Aは、イミダゾール環に縮合したカルボサイクリルである。
環Aは、イミダゾール環に縮合したヘテロサイクリルである。
環Aは、イミダゾール環に縮合したシクロペンチル、シクロヘキシルまたはモルホリノである。
R1は、ハロである。
R1は、フルオロまたはクロロである。
pは、0〜2であり;その際、R1の意味は同一でも異なってもよい。
pは、0または1である。
pは、2であり;その際、R1の意味は同一でも異なってもよい。
pは、1である。
pは、0である。
【0022】
R2は、基Ra-Rb-であり;ここでRaは、炭素において1個以上のRgにより置換されていてもよいC1-6アルキルから選択され;Rbは-N(Rm)SO2-であり;ここでRmは水素であり;RgはC1-6アルコキシである。
R2は、基Ra-Rb-であり;ここでRaは、炭素において1個以上のRgにより置換されていてもよいエチルから選択され;Rbは-N(Rm)SO2-であり;ここでRmは水素であり;Rgはメトキシまたはエトキシである。
R2は、N-(2-メトキシエチル)スルファモイルまたはN-(2-エトキシエチル)スルファモイルである。
【0023】
qは、0または1である。
qは、1である。
qは、0である。
R3は、ハロである。
R3は、フルオロ、クロロまたはブロモである。
R3は、クロロまたはブロモである。
nは、0または1である。
nは、0である。
R4は、水素またはC1-6アルキルである。
R4は、水素またはメチルである。
R5は、水素である。
mは、1〜4であり;その際、R4の意味は同一でも異なってもよい。
mは、0または1である。
mは、0である。
mは、1である。
【0024】
したがって本発明の他の態様においては、
環Aが、イミダゾール環に縮合したシクロペンチル、シクロヘキシルまたはモルホリノであり;
pが0であり;
R2が基Ra-Rb-であり;ここでRaは、炭素において1個以上のRgにより置換されていてもよいC1-6アルキルから選択され;Rbは-N(Rm)SO2-であり;ここでRmは水素であり;RgはC1-6アルコキシであり;
qが0または1であり;
nが0であり;
R4が水素またはC1-6アルキルであり;
R5が水素であり;
mが0または1である、
式(I)(前記)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルが提供される。
【0025】
したがって本発明の他の態様においては、
環Aが、イミダゾール環に縮合したシクロペンチル、シクロヘキシルまたはモルホリノであり;
pが0であり;
R2がN-(2-メトキシエチル)スルファモイルまたはN-(2-エトキシエチル)スルファモイルであり;
qが0または1であり;
nが0であり;
R4が水素またはメチルであり;
R5が水素であり;
mが0または1である、
式(I)(前記)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルが提供される。
【0026】
本発明の他の態様において、好ましい本発明化合物は実施例のいずれかの化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルである。
本発明の好ましい態様は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩である。
【0027】
本発明の他の態様は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを製造するための下記を含む方法を提供する(可変基は、別途明記しない限り、式(I)に定めたものである):
方法a) 式(II)のピリミジン:
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、Lは置換可能な基である)を式(III)のアニリン:
【0030】
【化3】

【0031】
と反応させる;
あるいは
方法b) 式(IV)の化合物:
【0032】
【化4】

【0033】
を式(V)の化合物:
【0034】
【化5】

【0035】
(TはOまたはSであり;Rxは同一でも異なってもよく、C1-6アルキルから選択される)と反応させる;
方法c) R2がスルファモイルまたは基Ra-Rb-であり、Rbが-NHSO2-である式(I)の化合物については、式(VI)のピリミジン:
【0036】
【化6】

【0037】
(式中、Xは置換可能な基である)をアンモニアまたは式(VII)のアミン:
Ra-NH2
(VII)
と反応させる;
方法d) 式(I)の化合物について、式(VIII)のピリミジン:
【0038】
【化7】

【0039】
を式(IX)の化合物:
【0040】
【化8】

【0041】
(式中、Yは置換可能な基である)と反応させる;
方法e) 式(X)の化合物:
【0042】
【化9】

【0043】
を環化する;
その後、必要ならば:
i)式(I)の化合物を他の式(I)の化合物に変換する;
ii)保護基を除去する;
iii)医薬的に許容できる塩またはインビボ加水分解性エステルを形成する。
【0044】
Lは置換可能な基であり、Lの適切な意味は、たとえばハロゲノまたはスルホニルオキシ基、たとえばクロロ、ブロモ、メタンスルホニルオキシまたはトルエン-4-スルホニルオキシ基である。
Xは置換可能な基であり、Xの適切な意味は、たとえばフルオロまたはクロロ基である。好ましくは、Xはフルオロである。
Yは置換可能な基であり、Yの適切な意味は、たとえばハロゲノまたはスルホニルオキシ基、たとえばブロモ、ヨードまたはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基である。好ましくは、Yはヨードである。
【0045】
前記反応の具体的な反応条件は下記のとおりである:
方法a) 式(II)のピリミジンと式(III)のアニリンを互いに下記の条件下で反応させることができる:
i)適切な溶媒、たとえばケトン類、たとえばアセトン、またはアルコール類、たとえばEtOHもしくはブタノール、または芳香族炭化水素、たとえばトルエンもしくはN-メチルピロリジンの存在下で、所望により適切な酸、たとえば無機酸、たとえば塩酸もしくは硫酸、または有機酸、たとえば酢酸もしくはギ酸(または適切なルイス酸)の存在下に、0℃から還流までの温度、好ましくは還流温度で;あるいは
ii)標準的なBuchwald条件下で(たとえばJ. Am. Chem. Soc., 118, 7215;J. Am. Chem. Soc., 119, 8451;J. Org. Chem., 62, 1568および6066を参照)、たとえば酢酸パラジウムの存在下に、適切な溶媒、たとえば芳香族溶媒、たとえばトルエン、ベンゼンまでのキシレン中で、適切な塩基、たとえば無機塩基、たとえば炭酸セシウム、または有機塩基、たとえばカリウム-t-ブトキシドを用いて、適切な配位子、たとえば2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチルの存在下に、25〜80℃の温度で。
【0046】
Lがクロロである式(II)のピリミジンは、反応経路1に従って製造できる:
【0047】
【化10】

【0048】
式(III)のアニリンは市販化合物であり、あるいはそれらは文献既知であり、あるいはそれらは当技術分野で既知の標準法により製造される。
方法b) 式(IV)の化合物と式(V)の化合物を、適切な溶媒、たとえばN-メチルピロリジノンまたはブタノール中、100〜200℃、好ましくは150〜170℃の温度で互いに反応させる。この反応は、好ましくは適切な塩基、たとえば水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドまたは炭酸カリウムの存在下で実施される。
【0049】
式(V)の化合物は、反応経路2に従って製造できる:
【0050】
【化11】

【0051】
式(IV)および(Va)の化合物は市販化合物であり、あるいはそれらは文献既知であり、あるいはそれらは当技術分野で既知の標準法により製造される。
方法c) 式(VI)の化合物と式(VII)のアミンを、不活性溶媒、たとえばN-メチルピロリジノンまたはピリジンの存在下で、塩基、たとえば無機塩基、たとえば炭酸セシウムの存在下、または有機塩基、たとえば過剰の(VII)の存在下に、25〜80℃の温度で互いに反応させることができる。
【0052】
式(VI)の化合物(Xはクロロである)は、反応経路3に従って製造できる:
【0053】
【化12】

【0054】
式(VIa)の化合物は、方法a、方法bまたは方法d(qは0である)に従って製造できる。
方法d) 式(VIII)の化合物と式(IX)のアミンを、方法aに記載した標準Buchwald条件下で互いに反応させることができる。
【0055】
式(VIII)の化合物の合成は反応経路1に記載されている。
式(IX)の化合物は市販化合物であり、あるいはそれらは文献既知であり、あるいはそれらは当技術分野で既知の標準法により製造される。
式(VI)のアミンは市販化合物であり、あるいはそれらは文献既知であり、あるいはそれらは当技術分野で既知の標準法により製造される。
【0056】
方法e) 式(X)の化合物は、アンモニウム塩、たとえばトリフルオロ酢酸アンモニウムまたは酢酸アンモニウムを用いて、120〜160℃の温度で、そのまま、または不活性溶媒、たとえばNMPもしくはDMA中において、処理することにより環化できる。
【0057】
式(X)の化合物は、反応経路4に従って製造できる:
【0058】
【化13】

【0059】
式中、bは1〜3であり、Yは水素またはR3である。
式(Xa)の化合物は市販されている。
本発明化合物中の多様な環置換基のうちあるものは、標準的な芳香族置換反応により導入するか、あるいは前記方法の前または直後に一般的な官能基修飾により形成することができ、したがって本発明の方法観点に含まれることは認められるであろう。そのような反応および修飾には、たとえば芳香族置換反応による置換基導入、置換基の還元、置換基のアルキル化、および置換基の酸化が含まれる。そのような方法のための試薬および反応条件は当技術分野で周知である。芳香族置換反応の具体例には、濃硝酸を用いるニトロ基導入;たとえばハロゲン化アシルおよびルイス酸(たとえば三塩化アルミニウム)をフリーデル・クラフツ条件下で用いるアシル基導入;ハロゲン化アルキルおよびルイス酸(たとえば三塩化アルミニウム)をフリーデル・クラフツ条件下で用いるアルキル基導入;ならびにハロゲノ基の導入が含まれる。修飾の具体例には、たとえばニッケル触媒を用いる接触水素化による、または塩酸の存在下に加熱しながら鉄で処理することによる、ニトロ基からアミノ基への還元;アルキルチオからアルキルスルフィニルまたはアルキルスルホニルへの酸化が含まれる。
【0060】
本明細書に述べるある反応において化合物中の感受性基を保護することが必要/望ましいことも理解されるであろう。保護が必要または望ましい例および適切な保護方法は当業者に周知である。標準法に従った一般的な保護方法を使用できる(説明については、T.W. Green, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 1991を参照)。たとえば反応体がアミノ、カルボキシまたはヒドロキシなどの基を含む場合、本明細書に述べる反応においてその基を保護するのが望ましい可能性がある。
【0061】
アミノ基またはアルキルアミノ基に適切な保護基は、たとえばアシル基、たとえばアルカノイル基、たとえばアセチル、アルコキシカルボニル基、たとえばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルもしくはt-ブトキシカルボニル基、アリールメトキシカルボニル基、たとえばベンジルオキシカルボニル、またはアロイル基、たとえばベンゾイルである。前記保護基の脱保護条件は、選択する保護基に応じて必然的に異なる。たとえばアシル基、たとえばアルカノイル、またはアルコキシカルボニル基、またはアロイル基は、たとえば適切な塩基、たとえばアルカリ金属水酸化物、たとえば水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムで加水分解することにより除去できる。あるいは、アシル基、たとえばt-ブトキシカルボニル基は、たとえば適切な酸、たとえば塩酸、硫酸もしくはリン酸またはトリフルオロ酢酸で処理することにより除去できる。アリールメトキシカルボニル基、たとえばベンジルオキシカルボニル基は、たとえばカーボン上パラジウムなどの触媒による水素化、またはルイス酸、たとえばトリス(トリフルオロ酢酸)ホウ素による処理により除去できる。第一級アミノ基に適切な他の保護基は、たとえばフタロイル基であり、これはアルキルアミン、たとえばジメチルアミノプロピルアミンで、またはヒドラジンで処理することにより除去できる。
【0062】
ヒドロキシ基に適切な保護基は、たとえばアシル基、たとえばアルカノイル基、たとえばアセチル、またはアロイル基、たとえばベンゾイル、またはアリールメチル基、たとえばベンジルである。前記保護基の脱保護条件は、選択する保護基に応じて必然的に異なるであろう。たとえばアシル基、たとえばアルカノイルまたはアロイル基は、たとえば適切な塩基、たとえばアルカリ金属水酸化物、たとえば水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムで加水分解することにより除去できる。あるいは、アリールメチル基、たとえばベンジル基は、たとえばカーボン上パラジウムなどの触媒による水素化により除去できる。
【0063】
カルボキシ基に適切な保護基は、たとえばエステル化基、たとえばメチルまたはエチル基であり、これらは塩基、たとえば水酸化ナトリウムによる加水分解により除去でき、あるいはたとえばt-ブチル基であり、これはたとえば酸、たとえば有機酸、たとえばトリフルオロ酢酸による処理により除去でき、あるいはベンジル基であり、これはたとえばカーボン上パラジウムなどの触媒による水素化により除去できる。
【0064】
保護基は、合成のいずれか好都合な段階で、当技術分野で周知の一般的な方法により除去できる。
前記のように、本発明において定める化合物は抗-細胞増殖活性、たとえば抗癌活性をもち、これは本発明化合物のCDK阻害活性に由来すると考えられる。これらの特性は、たとえば下記の方法により評価できる。
【0065】
アッセイ法
以下の略号を用いた:
HEPESはN-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[2-エタンスルホン酸]である;
DTTはジチオトレイトールである;
PMSFは、フェニルメチルスルホニルフルオリドである。
【0066】
本発明化合物を、インビトロキナーゼアッセイ法で96ウェルフォーマットにおいて、試験基質(GST-網膜芽細胞腫タンパク質;GST-Rb)中への[g-33-P]-アデノシン三リン酸の取込みを測定するためにシンチレーション近接アッセイ法(SPA−Amershamから入手)を用いて試験した。各ウェルに被験化合物(DMSOおよび水中に希釈して濃度を補正したもの)を入れ、対照ウェルには阻害薬対照としてのロスコビチン(roscovitine)または陽性対照としてのDMSOを入れた。
【0067】
約0.2mlのCDK2/サイクリンE部分精製酵素(酵素活性に応じた量)を25mlのインキュベーション緩衝液に希釈したものを各ウェルに添加し、次いで20mlのGST-Rb/ATP/ATP33混合物(インキュベーション緩衝液中に、0.5mgのGST-Rbおよび0.2mMのATPおよび0.14mCiの[g-33-P]-アデノシン三リン酸を含有)を添加し、得られた混合物を穏やかに振とうし、次いで室温で60分間インキュベートした。
【0068】
次いで各ウェルに、150mLの停止液(0.8mg/ウェルのプロテインA-PVT SPAビーズ(Amersham)を含有)、20pM/ウェルの抗-グルタチオントランスフェラーゼ、ウサギIgG(Molecular Probesから入手)、61mMのEDTA、および50mMのHEPES pH 7.5(0.05%のナトリウムアジドを含有)を添加した。
【0069】
プレートをTopseal-Sプレートシーラーでシールし、2時間放置し、次いで2500rpm、1124xgで5分間遠心した。プレートをTopcountでウェル当たり30秒間、読み取った。
酵素および基質ミックスを希釈するのに用いたインキュベーション緩衝液は、50mMのHEPES pH7.5、10mMのMnCl2、1mMのDTT、100mMのバナジン酸ナトリウム、100mMのNaF、10mMのグリセロリン酸ナトリウム、BSA(最終1mg/ml)を含有していた。
【0070】
試験基質
このアッセイには、網膜芽細胞腫タンパク質(Science 1987年3月13日; 235(4794): 1394-1399;Lee W.H., Bookstein R., Hong F., Young L.J., Shew J.Y., Lee E.Y.)の一部のみを用い、GSTタグに融合させた。アミノ酸379〜928をコードする網膜芽細胞腫遺伝子(網膜芽細胞腫プラスミドATCC pLRbRNLから得たもの)のPCRを実施し、この配列をpGEx 2T融合ベクター(Smith D.B. and Johnson, K.S. Gene 67, 31 (1988);誘導発現のためのtacプロモーター、任意の大腸菌(E.Coli)宿主に使用するための内部lac Iq遺伝子、およびトロンビン開裂のためのコード領域を含んでいた−Pharmacia Biotechから入手)中へクローニングし、これを用いてアミノ酸792〜928を増幅した。この配列を再びpGEx 2T中へクローニングした。
【0071】
こうして得た網膜芽細胞腫792〜928配列を標準的な誘導発現法により大腸菌(BL21 (DE3) pLysS細胞)において発現させ、下記に従って精製した:
大腸菌ペーストを10ml/gのNETN緩衝液(50mMのTris pH 7.5, 120mMのNaCl, 1mMのEDTA, 0.5%v/vのNP-40, 1mMのPMSF, 1ug/mlのロイペプチン, 1ug/mlのアプロチニンおよび1ug/mlのペプスタチン)に再懸濁し、ホモジェネート100mlにつき45秒間で2回、超音波処理した。遠心分離の後、上清を10mlのグルタチオンセファロース(glutathione Sepharose)カラム(Pharmacia Biotech,英国ハーツ)に装入し、NETN緩衝液で洗浄した。キナーゼ緩衝液(50mMのHEPES pH 7.5, 10mMのMgCl2, 1mMのDTT, 1mMのPMSF, 1ug/mlのロイペプチン, 1ug/mlのアプロチニンおよび1ug/mlのペプスタチン)で洗浄した後、タンパク質をキナーゼ緩衝液中50mMの還元グルタチオンで溶離した。GST-Rb(792〜927)を含有する画分をプールし、キナーゼ緩衝液に対して一夜透析した。最終生成物をドデカ硫酸ナトリウム(SDS)PAGE(ポリアクリルアミドゲル)により、8〜16% Tris-グリシンゲル(Novex,米国サンディエゴ)を用いて分析した。
【0072】
CDK2およびサイクリンE
CDK2およびサイクリンEのオープンリーディングフレームを、HeLa細胞および活性T細胞mRNAを鋳型として用いる逆転写酵素-PCRにより単離し、昆虫発現ベクターpVL1393(Invitrogenから入手、1995年カタログ番号V1392-20)中へクローニングした。次いで昆虫SF21細胞系(ヨトウガ(Spodoptera Frugiperda)の卵巣組織に由来する細胞−市販されている)において、CDK2とサイクリンEを二重発現させた[標準的なウイルスBacurogold同時感染法を採用]。
【0073】
サイクリンE/CDK2の製造例
以下の例は、各ウイルスにつきサイクリンEとCDK2の二重感染MOIが3であるSF21細胞におけるサイクリンE/CDK2産生(TC100 + 10% FBS(TCS) + 0.2% Pluronic中)の詳細を示す。
【0074】
ローラーボトル培養において2.33 x 106個/mlまで増殖させたSF21細胞を用いて、500 mlのローラーボトル10本に0.2 x 10E6個/mlで接種した。ローラーボトルを28℃のローラーリグ上でインキュベートした。
【0075】
3日(72時間)後、細胞を計数し、2本のボトルからの平均が1.86 x 10E6個/mlであることが認められた(99%生存)。次いでこの培養物を各ウイルスにつきMOI 3で二重ウイルス感染させた。
【0076】
培養物に添加する前にウイルスを混和し、培養物を28℃のローラーリグに戻した。
感染の2日(48時間)後、5リットルの培養物を収穫した。収穫時の総細胞数は1.58 x 10E6個/mlであった(99%生存)。細胞を250 mlのロットでHeraeus Omnifuge 2.0 RSにおいて2500rpm、30分間、4°Cで遠心した。上清を廃棄した。
【0077】
Cdk2およびサイクリンEの部分同時精製
Sf21細胞を細胞溶解緩衝液(50mMのTris pH 8.2, 10mMのMgCl2, 1mMのDTT, 10mMのグリセロホスフェート, 0.1mMのオルトバナジン酸ナトリウム, 0.1mMのNaF, 1mMのPMSF, 1ug/mlのロイペプチンおよび1ug/mlのアプロチニン)に再懸濁し、10mlのDounceホモジナイザーで2分間ホモジナイズした。遠心分離の後、上清をPoros HQ/M 1.4/100アニオン交換カラム(PE Biosystems,英国ハートフォード)に装入した。Cdk2とサイクリンEが0〜1M NaCl勾配(プロテアーゼ阻害剤を除いた細胞溶解緩衝液中において実施)の最初に20カラム体積にわたって同時溶出した。抗Cdk2抗体および抗サイクリンE抗体の両方(Santa Cruz Biotechnology,米国カリフォルニア州)を用いるウェスタンブロット法により、同時溶出を検査した。
【0078】
同様に、CDK1およびCDK4の阻害を評価するために設計したアッセイ法を構築できる。CDK2(EMBL Accession No. X62071)はサイクリンAまたはサイクリンE(EMBL Accession No. M73812を参照)と共に使用できる。そのようなアッセイ法についての詳細はPCT国際特許出願公開WO99/21845中に含まれ、関連するその生化学的および生物学的評価のセクションを本明細書に援用する。
【0079】
式(I)の化合物の薬理学的特性は構造変化に伴って異なる可能性はあるが、一般に式(I)の化合物がもつ活性は250mMないし1nMのIC50濃度または用量で証明できる。
以下のIC50は前記のアッセイ法において測定された。
【0080】
【表1】

【0081】
本発明化合物のインビボ活性は、標準法により、たとえば細胞増殖阻害の測定、および細胞毒性の評価により評価できる。
細胞増殖の阻害は、細胞をスルホローダミンB (SRB)、すなわちタンパク質を染色するのでウェル内のタンパク質(すなわち細胞)の量を推定できる蛍光色素で染色することにより測定できる(Boyd, M.R.(1989),NCI前臨床-抗腫瘍薬探査スクリーニングの現状,Prin. Prac Oncol 10:1-12を参照)。たとえば細胞増殖阻害の測定について以下に詳細を示す:
細胞を96ウェルプレート内で100ml体積の適宜な培地に接種する;培地は、MCF-7、SK-UT-1BおよびSK-UT-1のためのダルベッコ改変イーグル培地であった。細胞を一夜付着させ、次いで阻害化合物を最大濃度1%のDMSO (v/v)中において多様な濃度で添加した。投与前の細胞についての数値を得るために、対照プレートをアッセイした。細胞を37℃(5% CO2)で3日間インキュベートした。
【0082】
3日間の終了時に、プレートにTCAを最終濃度16% (v/v)で添加した。次いでプレートを4℃で1時間インキュベートし、上清を除去し、プレートを水道水中で洗浄した。乾燥後、100mlのSRB色素(1%酢酸中の0.4% SRB)を37℃で30分間添加した。過剰のSRBを除去し、プレートを1%酢酸中で洗浄した。タンパク質に結合したSRBを10mM Tris pH7.5に溶解し、室温で30分間振とうした。540nmでODを読み取り、阻害薬濃度-対-吸光度の半対数プロットから、増殖を50%阻害する阻害薬濃度を判定した。実験開始時に細胞を接種した際に得たものより光学濃度を低下させた化合物濃度から毒性値を得た。
【0083】
SRBアッセイ法で試験した際の本発明化合物の代表的なIC50値は、1mMないし1nMである。
本発明の他の態様によれば、前記に定めた式(I)のピリミジン誘導体またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを、医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤーと共に含む、医薬組成物が提供される。
【0084】
本発明の組成物は、経口投与に適切な剤形、たとえば錠剤もしくはカプセル剤、非経口注射(静脈内、皮下、筋肉内、脈管内、または注入を含む)に適切な剤形、たとえば無菌の液剤、懸濁液剤もしくは乳剤、局所投与に適切な剤形、たとえば軟膏剤もしくはクリーム剤、または直腸投与に適切な剤形、たとえば坐剤であってよい。
【0085】
一般に前記の組成物は、一般的な賦形剤を用いて常法により製造できる。
式(I)の化合物は、温血動物に普通は動物の体表面積m2当たり5〜5000 mg、すなわち約0.1〜100 mg/kgの単位量で投与され、これが普通は療法有効量となる。錠剤またはカプセル剤などの単位剤形は、通常はたとえば1〜250 mgの有効成分を含有するであろう。好ましくは、1〜50 mg/kgの1日量を使用する。しかし、1日量は処置されるホスト、個々の投与経路、および処置される疾病の重症度に応じて必然的に異なるであろう。したがって、最適量は個々の患者を処置する専門家が決定することができる。
【0086】
本発明の他の観点によれば、ヒトまたは動物の身体を療法により処置する方法に使用するための、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルが提供される。
【0087】
本発明者らは、本発明において定める化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルが有効な細胞周期阻害薬(抗-細胞増殖薬)であることを見いだした。これはそれらのCDK阻害性に由来すると考えられる。したがって本発明化合物は、CDK単独によりまたは一部がCDK酵素により仲介される疾患または病的状態の処置に有用であると期待される;すなわち本発明化合物は、その処置を必要とする温血動物においてCDK阻害効果を生じるために使用できる。したがって本発明化合物は、CDK酵素を阻害することを特徴とする、悪性細胞増殖の処置方法を提供する;すなわち本発明化合物は、CDK単独によりまたは一部がCDK酵素により仲介される増殖の阻害効果を生じるために使用できる。CDKは多くの一般的なヒト癌、たとえば白血病、ならびに胸部癌、肺癌、結腸癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌および卵巣癌に関与することが示唆されているので、そのような本発明化合物は、広範な抗癌特性をもつと期待される。したがって、本発明化合物は、これらの癌に対する抗癌特性をもつと期待される。さらに本発明化合物は、広範な白血病、リンパ様悪性疾患および充実性腫瘍、たとえば肝臓、腎臓、前立腺および膵臓などの組織における癌および肉腫に対する有効性をもつと期待される。そのような本発明化合物は特に、たとえば結腸、胸部、前立腺、肺および皮膚の原発性および再発性の充実性腫瘍の増殖を有利に遅延させると期待される。より具体的には、本発明化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルは、CDKに関連する原発性および再発性の充実性腫瘍、特にそれらの増殖および拡散をCDKに有意に依存している腫瘍、たとえば結腸、胸部、前立腺、肺、外陰および皮膚の特定の腫瘍の増殖を阻害すると期待される。
【0088】
さらに本発明化合物は、広範な他の疾病状態における他の細胞増殖性疾患、たとえば白血病、線維増殖性障害および分化障害、乾癬、リウマチ様関節炎、カポジ肉腫、血管腫、急性および慢性腎障害、アテローム、アテローム性硬化症、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性および慢性炎症、骨疾患、ならびに網膜血管増殖を伴う眼疾患に対する有効性をもつと期待される。
【0089】
したがって本発明のこの観点によれば、医薬として使用するための、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル;およびヒトなどの温血動物において細胞周期阻害(抗-細胞増殖)効果を生じる際に用いる医薬の製造における、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルの使用が提供される。特に、CDK2およびCDK4、殊にCDK2の阻害によりS期への進入もしくは進行を阻害し、CDK1の阻害によりM期への進入もしくは進行を阻害することによって、阻害効果を生じる。
【0090】
本発明の他の観点によれば、癌(充実性腫瘍および白血病)、線維増殖性障害および分化障害、乾癬、リウマチ様関節炎、カポジ肉腫、血管腫、急性および慢性腎障害、アテローム、アテローム性硬化症、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性および慢性炎症、骨疾患、ならびに網膜血管増殖を伴う眼疾患の処置、特に癌の処置に用いる医薬の製造における、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルが提供される。
【0091】
本発明の他の観点によれば、その必要があるヒトなどの温血動物において細胞周期阻害(抗-細胞増殖)効果を生じる方法であって、有効量の上記に定めた化合物をその動物に投与することを含む方法が提供される。特に、CDK2およびCDK4、殊にCDK2の阻害によりS期への進入もしくは進行を阻害し、CDK1の阻害によりM期への進入もしくは進行を阻害することによって、阻害効果を生じる。
【0092】
本発明の他の観点によれば、その必要があるヒトなどの温血動物において細胞周期阻害(抗-細胞増殖)効果を生じる方法であって、有効量の前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルをその動物に投与することを含む方法が提供される。特に、CDK2およびCDK4、殊にCDK2の阻害によりS期への進入もしくは進行を阻害し、CDK1の阻害によりM期への進入もしくは進行を阻害することによって、阻害効果を生じる。
【0093】
本発明の他の観点によれば、その必要があるヒトなどの温血動物において癌(充実性腫瘍および白血病)、線維増殖性障害および分化障害、乾癬、リウマチ様関節炎、カポジ肉腫、血管腫、急性および慢性腎障害、アテローム、アテローム性硬化症、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性および慢性炎症、骨疾患、ならびに網膜血管増殖を伴う眼疾患を処置する方法であって、有効量の前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルをその動物に投与することを含む方法が提供される。
【0094】
特に、その必要があるヒトなどの温血動物において癌を処置する方法であって、有効量の前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルをその動物に投与することを含む方法が提供される。
【0095】
本発明の他の観点においては、ヒトなどの温血動物において細胞周期阻害(抗-細胞増殖)効果を生じる際に使用するための、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを、医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤーと共に含む、医薬組成物が提供される。
【0096】
本発明の他の観点においては、ヒトなどの温血動物において癌(充実性腫瘍および白血病)、線維増殖性障害および分化障害、乾癬、リウマチ様関節炎、カポジ肉腫、血管腫、急性および慢性腎障害、アテローム、アテローム性硬化症、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性および慢性炎症、骨疾患、ならびに網膜血管増殖を伴う眼疾患を処置する際に使用するための、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを、医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤーと共に含む、医薬組成物が提供される。
【0097】
本発明の他の観点においては、ヒトなどの温血動物において癌を処置する際に使用するための、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを、医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤーと共に含む、医薬組成物が提供される。
【0098】
必須のS期開始活性、たとえばCDK2開始の阻害により細胞がDNA合成に進入するのを阻止することは、周期特異的医薬の毒性から身体の正常細胞を保護するのにも有用であろう。CDK2または4の阻害により正常細胞における細胞周期への進入も阻止され、これはS期、G2または有糸分裂に作用する周期特異的医薬の毒性を制限することができる。そのような保護により、これらの薬剤に普通は伴う脱毛を阻止することができる。
【0099】
したがって本発明の他の観点においては、細胞保護薬として使用するための、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルが提供される。
【0100】
したがって本発明の他の観点においては、悪性状態を医薬で処置することにより生じる脱毛を阻止するのに使用するための、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルが提供される。
【0101】
悪性状態を処置する医薬であって、脱毛を引き起こすことが知られているものの例には、下記のものが含まれる:アルキル化剤、たとえばイホスファミド(ifosfamide)およびシクロホスファミド(cyclophosphamide);代謝拮抗薬、たとえばメトトレキセート(methotrexate)、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン(gemcitabine)およびシタラビン(cytarabine);ツルニチニチソウアルカロイドおよび類似体、たとえばビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinbalstine)、ビンデシン(vindesine)、ビノレルビン(vinorelbine);タキサン類、たとえばパクリタキセル(paclitaxel)およびドセタキセル(docetaxel);トポイソメラーゼI阻害薬、たとえばイリノテカン(irintotecan)およびトポテカン(topotecan);細胞毒性抗生物質、たとえばドキソルビシン(doxorubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アクチノマイシン-D(actinomycin-D)およびマイトマイシン(mitomycin);その他、たとえばエトポシド(etoposide)およびトレチノイン(tretinoin)。
【0102】
本発明の他の観点においては、式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを1種類以上の前記医薬と一緒に投与できる。この場合、式(I)の化合物を全身手段または非全身手段で投与することができる。特に、式(I)の化合物を非全身手段で、たとえば局所投与により投与することができる。
【0103】
したがって本発明の他の観点においては、ヒトなどの温血動物において1以上の悪性状態を医薬で処置する際の脱毛を阻止する方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルをその動物に投与することを含む方法が提供される。
【0104】
本発明の他の観点においては、ヒトなどの温血動物において1以上の悪性状態を医薬で処置する際の脱毛を阻止する方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを、有効量の該医薬と同時、逐次または別個の投与によりその動物に投与することを含む方法が提供される。
【0105】
本発明の他の観点においては、ヒトなどの温血動物において悪性状態を医薬で処置する際の脱毛を阻止するのに使用する医薬組成物であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル、および該医薬を、医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤーと共に含む医薬組成物が提供される。
【0106】
本発明の他の観点によれば、式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル、および悪性状態を処置するための、脱毛を引き起こすことが知られている医薬を含む、キットが提供される。
【0107】
本発明の他の観点によれば、下記のものを含むキットが提供される:
a)第1単位剤形の、式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル;
b)第2単位剤形の、悪性状態を処置するための、脱毛を引き起こすことが知られている医薬;ならびに
c)第1単位剤形および第2単位剤形を収容するための容器部材。
【0108】
本発明の他の観点によれば、悪性状態を医薬で処置する際の脱毛を阻止するための医薬の製造における、式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルの使用が提供される。
【0109】
本発明の他の観点によれば、脱毛を阻止するための併用療法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを、所望により医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤーと共に、悪性状態を処置するための有効量の医薬の同時、逐次または別個の投与によりヒトなどの温血動物に投与することを含む方法が提供される。
【0110】
前記のように、個々の細胞増殖性疾患を治療または予防処置するのに必要な投与量は、処置されるホスト、投与経路、および処置される疾病の重症度に応じて必然的に異なるであろう。たとえば1〜100 mg/kg、好ましくは1〜50 mg/kgの単位量が予想される。
【0111】
前記に定めたCDK阻害活性を唯一の療法として適用してもよく、あるいは本発明化合物のほかに1種類以上の他の物質および/または処置を伴ってもよい。そのような併用療法は、処置の個々の構成要素を同時、逐次または別個に施すことにより達成できる。癌医療の分野では、それぞれの癌患者を処置するために異なる形態の療法を併用することは普通に行われる。癌医療において、前記に定めた細胞周期阻害処置に追加されるそのような併用処置の他の構成要素(1以上)は、外科処置、放射線療法または化学療法であってよい。そのような化学療法には、3つの主カテゴリーの療法薬を含めることができる:
(i)前記に定めたものと同一または異なる機序により作用する他の細胞周期阻害薬;
(ii)細胞分裂抑制薬、たとえば抗エストロゲン薬(たとえばタモキシフェン(tamoxifen)、トレミフェン(toremifene)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)、ヨードキシフェン(iodoxyfene))、プロスタグランジン(たとえば酢酸メゲストロール(megestrol acetate))、アロマターゼ阻害薬(たとえばアナストロゾール(anastrozole)、レトラゾール(letrazole)、ボラゾール(vorazole)、エキセメスタン(exemestane))、抗プロゲストゲン薬、抗アンドロゲン薬(たとえばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、酢酸シプロテロン(cyproterone acetate))、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト(たとえば酢酸ゴセレリン(goserelin acetate)、ルプロリド(luprolide))、テストステロン5a-ジヒドロレダクターゼ阻害薬(たとえばフィナステリド(finasteride))、抗浸潤薬(たとえばメタロプロテイナーゼ阻害薬、たとえばマリマスタット(marimastat)、およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害薬)、ならびに成長因子機能の阻害薬(そのような成長因子には、たとえば血小板由来成長因子および肝細胞成長因子が含まれ、そのような阻害薬には成長因子抗体、成長因子受容体抗体、チロシンキナーゼ阻害薬、およびセリン/チロシンキナーゼ阻害薬が含まれる);ならびに
(iii)癌医療に用いられる抗増殖/抗新生物薬およびその組合わせ、たとえば代謝拮抗薬(たとえば葉酸代謝拮抗薬、たとえばメトトレキセート、フルオロピリミジン、たとえば5-フルオロウラシル、プリンおよびアデノシン類似体、シトシンアラビノシド);抗腫瘍性抗生物質(たとえばアントラサイクリン、たとえばドキソルビシン、ダウノマイシン(daunomycin)、エピルビシン(epirubicin)およびイダルビシン(idarubicin)、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ミトラマイシン(mithramycin));白金誘導体(たとえばシスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin));アルキル化剤(たとえばナイトロジェンマスタード、メルファラン(melphalan)、クロラムブシル(chlorambucil)、ブスルファン(busulphan)、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、チオテパ(thiotepa));有糸分裂抑制薬(たとえばツルニチニチソウアルカロイド、たとえばビンクリスチン、およびタキソイド、たとえばタキソール(taxol)、タキソテレ(taxotere));トポイソメラーゼ阻害薬(たとえばエピポドフィロトキシン、たとえばエトポシドおよびテニポシド(teniposide)、アムサクリン(amsacrine)、トポテカン(topotecan))。本発明のこの観点によれば、癌の併用処置のための、前記に定めた式(I)の化合物および前記に定めた追加の抗腫瘍性物質を含む医薬製剤が提供される。
【0112】
式(I)の化合物およびそれらの医薬的に許容できる塩は、医療におけるそれらの使用のほかに、新規療法薬探査の一部としてネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラットおよびマウスなどの実験動物において細胞周期活性阻害薬の効果を評価するためのインビトロおよびインビボ試験系を開発および標準化する際に薬理学的ツールとしても有用である。
【0113】
前記の他の医薬組成物、プロセス、方法、使用および医薬製造の観点において、本発明化合物の別態様および好ましい態様も適用される。
【0114】
実施例
本発明を、限定ではない以下の実施例により説明する。実施例において、別途記載しない限り、下記のとおりである:
(i)温度を摂氏(℃)で示す;操作を室温または周囲温度、すなわち18〜25℃の温度で実施した;
(ii)有機溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた;溶媒の蒸発をロータリーエバポレーターにより減圧下に(600〜4000パスカル; 4.5〜30mmHg)、最高60℃の浴温で行った;
(iii)クロマトグラフィーは、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーを意味する;薄層クロマトグラフィー(TLC)をシリカゲルプレート上で実施した;
(iv)一般に反応経過をTLCにより追跡し、反応時間は説明のために示したにすぎない;
(v)最終製品は満足すべきプロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルおよび/または質量分析データを示した;
(vi)収率は説明のために示したにすぎず、必ずしも綿密なプロセス開発により得ることができるものではない;より多量の物質が必要な場合は製造を繰り返した;
(vii)NMRデータを示した場合、それらは別途指示しない限り、300 MHzでペルジュウテリオジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を溶媒として用いて測定した主診断プロトンについてのδ値の形であり、内標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対する百万分率(ppm)で示される;
(viii)化学記号はそれらの通常の意味をもつ;SI単位および記号を使用する;
(ix)溶媒比を体積:体積(v/v)により示す;
(x)質量分析を70電子ボルトの電子エネルギーにより化学イオン化(CI)モードで直接暴露プローブを用いて実施した;指示した場合、イオン化を電子衝撃(EI)、高速原子衝突(FAB)またはエレクトロスプレー(ESP)により行った;m/z値を示す;一般に親質量を示すイオンのみを報告する;別途記載しない限り、引用した質量イオンは(MH)+である;
(xi)別途記載しない限り、不斉置換された炭素および/または硫黄原子を含有する化合物を分割しなかった;
(xii)合成が先の実施例に記載したものと同様であると記載した場合、使用量は先の実施例に用いたものと同等なミリモル比である;
(xvi)以下の略号を用いた;
THF テトラヒドロフラン;
DMF N,N-ジメチルホルムアミド;
EtOAc 酢酸エチル;
MeOH メタノール;
EtOH エタノール;
DCM ジクロロメタン;および
DMSO ジメチルスルホキシド。
【0115】
実施例1
2-アニリノ-4-(6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-a]イミダゾル-3-イル)ピリミジン
2-アニリノ-4-[1-(ピロリド-2-オン-1-イル)-2-(ジメチルアミノ)ビニル]ピリミジン(方法6; 1.85g, 5.72mmol)およびトリフルオロ酢酸アンモニウム(7.5g, 57.2mmol)の、乾燥N-メチルピロリジノン中における混合物を、140℃に窒素下で18時間、次いで150℃に10時間、撹拌加熱した。混合物を放冷し、溶媒を蒸発により除去した。残留物を水とDCMの間で分配し、不溶性物質を濾過により除去した。この二層混合物を分離し、有機層を乾燥させ((Na2SO4)、溶媒を蒸発により除去した。残留物をDCM / MeOH (98:2、次いで96.5:3.5)で溶離するクロマトグラフィーにより精製した。精製した生成物をジエチルエーテルで摩砕処理し、濾過し、乾燥させて、表題化合物(120mg, 8%)を黄色固体として得た。NMR: 2.55 (m, 2H), 2.78 (t, 2H), 4.33 (t, 2H), 6.95 (t, 1H), 7.08 (d, 1H), 7.27 (t, 2H), 7.7(d, 2H), 7.75 (s, 1H), 8.35 (d, 1H), 9.38 (s, 1H): m/z 278。
【0116】
実施例2〜5
下記の化合物を実施例1の方法により、適宜な出発物質を用いて製造した(""はピリミジン環への結合点を表わす)。
【0117】
【表2】

【0118】
1 DCM / MeOH (95:5)で溶離するクロマトグラフィーにより精製。
SM:出発物質
【0119】
実施例6
2-[N-(2-メトキシエチル)スルファモイル)アニリノ]-4-(6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-a]イミダゾル-3-イル)ピリミジン
クロロスルホン酸(143ml, 2.16mmol)を、2-アニリノ-4-(6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[1,2-a]イミダゾル-3-イル)ピリミジン(実施例1; 150mg, 0.54mmol)の、塩化チオニル(3.0ml)中における撹拌懸濁液(0℃)に添加した。混合物を0℃で10分間撹拌し、次いで80分間、加熱還流した。混合物を放冷し、過剰の塩化チオニルを蒸発により除去した。2-メトキシエチルアミン(0.756ml, 8.1mmol)の、MeOH (1.5ml)中における溶液を、残留物に添加し、混合物を周囲温度で24時間撹拌した。揮発性成分を蒸発により除去し、残留物を蒸留水に懸濁し、1時間撹拌した。生成した固体を濾過により採集し、水で洗浄し、乾燥させて、表題化合物(182mg, 81%)を淡褐色固体として得た。NMR: 2.58 (m, 2H), 2.83 (m, 4H), 3.18 (s, 3H), 3.3 (t, 2H), 4.4 (t, 2H), 7.2 (d, 1H), 7.47 (s, 1H), 7.7 (d, 2H), 7.8 (s. 1H), 7.92 (d, 2H), 8.43 (d, 1H), 9.83 (s, 1H): m/z 415。
【0120】
実施例7〜9
下記の化合物を実施例6の方法により、適宜な出発物質を用いて製造した。
【0121】
【表3】

【0122】
実施例10
2-アニリノ-4-(8-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン
n-ブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液1.2ml, 1.92mmol)を、2-アニリノ-4-(5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン(実施例2; 200mg, 0.69mmol)の、乾燥THF (10ml)中における撹拌溶液(-78℃に冷却)に、窒素下で、反応温度を確実に-65℃より低く維持しながら添加した。混合物を-70℃で15分間撹拌し、次いでヨードメタン(45ml, 0.72mmol)を添加し、反応物を-70℃で10分間撹拌し、次いで周囲温度にまで高めて20時間撹拌した。反応混合物をEtOAcと水の間で分配し、層を分離した。有機層を飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、揮発性成分を蒸発により除去した。残留物をDCM / MeOH (98:2)で溶離するクロマトグラフィーにより精製した。精製した生成物をジエチルエーテルで2回摩砕処理し、濾過により採集し、乾燥させて、表題化合物(33mg, 16%)を淡黄色固体として得た。NMR: 1.37 (d, 3H), 1.57 (m, 1H), 1.92 (m, 1H), 2.07 (m, 2H), 2.97 (m, 1H), 4.25 (m, 1H), 4.65 (m, 1H), 7.02 (t, 2H), 7.15 (d, 1H), 7.33 (t, 2H), 7.72 (m, 3H), 8.38 (d, 1H), 9.42 (s. 1H); m/z 306。
【0123】
実施例11
2-アニリノ-4-(8-メチル-5,6-ジヒドロ-8H-イミダゾ[2,1-c][1,4]オキサジン-3-イル)ピリミジン
実施例10と同様な方法により、2-アニリノ-4-(5,6-ジヒドロ-8H-イミダゾ[2,1-c][1,4]オキサジン-3-イル)ピリミジン(実施例5; 163mg, 0.556mmol)を、n-ブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液0.73ml, 1.168mmol)およびヨードメタン(36ml, 0.583mmol)で処理して、表題化合物(67mg, 39%)を淡黄色固体として得た。NMR: 1.5 (d, 3H), 3.9 (m, 1H), 4.18 (m, 1H), 4.32 (m,1H), 4.63 (m, 1H), 4.87 (q , 1H), 6.95 (t, 1H), 7.13 (d, 1H), 7.3 (t, 2H), 7.67 (d, 2H), 7.75 (s, 1H), 8.37 (d, 1H), 9.4 (s, 1H); m/z 308。
【0124】
出発物質の製造
前記実施例の出発物質は市販されているか、あるいは標準法により既知物質から容易に製造される。たとえば前記反応に使用した若干の出発物質を製造する下記の反応を示すが、これらは限定ではない。
【0125】
方法1
1,1-ジメトキシ-4-ジメチルアミノブツ-3-エン-2-オン
1,1-ジメトキシプロパン-2-オン(57.9g, 0.459mol)をジメチルホルムアミドジメチルアセタール(54.6g, 0.459mol)に添加し、混合物を100℃に18時間、撹拌加熱した。反応混合物を放冷し、揮発性成分を蒸発により除去して、表題化合物(79g)を赤色の油として得た。NMR: (CDCl3): 2.90 (d, 3H), 3.10 (d, 3H), 3.40 (s, 6H), 4.56 (s, 1H), 5.34 (1H, d), 7.74 (d, 1H)。
【0126】
方法2
2-アニリノ-4-(ジメトキシメチル)ピリミジン
1,1-ジメトキシ-4-ジメチルアミノブツ-3-エン-2-オン(方法1; 20.0g, 0.116 mol)および炭酸水素フェニルグアニジン(25g, 0.126mol)の、無水ジメチルアセトアミド(350ml)中における混合物を、130℃に窒素下で18時間、撹拌加熱した。反応混合物を放冷し、溶媒を蒸発により除去した。残留物をEtOAcに溶解し、この溶液を水(5回)、飽和塩化ナトリウム(2回)で洗浄し、乾燥および蒸発させて、表題化合物(24.7g, 88%)を暗褐色の油として得た。NMR: (CDCl3): 3.42 (s, 6H), 5.20 (s, 1H), 6.94 (d, 1H), 7.04 (t, 1H), 7.31 (m, 3H), 7.64 (d, 2H), 8.47 (d, 1H), m/z: 246。
【0127】
方法3
2-アニリノピリミジン-4-カルボアルデヒド
2-アニリノ-4-(ジメトキシメチル)ピリミジン(方法2; 26.5g, 0.108mol)および3M塩酸(108ml, 0.324mol)の混合物を、50℃に18時間、撹拌加熱した。反応混合物を放冷し、固体炭酸ナトリウムの慎重な添加により溶液のpHを9に調整した。混合物をEtOAc (5回,100 ml)で抽出した。抽出液を合わせて水(2回,100 ml)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)および蒸発させて、表題化合物(16.2g, 78%)を褐色固体として得た。NMR: (CDCl3): 7.10 (t, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.40 (t, 3H), 7.68 (d, 2H), 8.64 (d, 1H), 9.90 (s, 1H), m/z 232 [MH+MeOH]+
【0128】
方法4
2-アニリノ-4-(ピロリド-2-オン-1-イルメチル)ピリミジン
トリエチルアミン(1.52ml, 11mmol)を、2-アニリノピリミジン-4-カルボアルデヒド(方法3; 1.99g, 10mmol)および4-アミノ酪酸エチル塩酸塩(1.84g, 11mmol)の、MeOH (100ml)中における混合物に添加し、混合物を周囲温度で窒素下に18時間撹拌した。不溶性物質を濾過により除去し、濾液から揮発性成分を蒸発により除去した。残留物をEtOAcに懸濁し、さらに不溶性物質を濾過により除去し、濾液を蒸発させた。残留物をEtOH (200ml)に懸濁し、窒素下で撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(0.456g, 12 mmol)を数回に分けて添加し、次いで反応混合物を周囲温度で96時間撹拌した。溶媒を蒸発により除去し、残留物をEtOAc (150ml)に溶解し、溶液を飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ、揮発性成分を蒸発させて、表題化合物(2.2g, 88%)を黄色のガムとして得た。NMR: (CDCl3) 2.12 (m, 2H), 2,47 (t, 2H), 3.45 (t, 2H), 4.44 (s, 2H), 6.62 (d, 1H), 7.04 (t, 1H), 7.32 (m, 3H), 7.61 (d, 2H), 8.35 (d, 1H), m/z 269。
【0129】
方法5
2-アニリノ-4-(ピペリジン-2-オン-1-イルメチル)ピリミジン
方法4と同様な方法により、2-アニリノピリミジン-4-カルボアルデヒド(方法3; 3.24, 16.2mmol)を5-アミノペンタン酸メチル塩酸塩(3.0g, 17.9mmol)で処理して、表題化合物(2.23g, 51%)を淡黄色固体として得た。NMR: 1.85 (m, 4H), 2.5 (s, 2H), 3.4 (s, 2H), 4.58 (s, 2H), 6.63 (d, 1H), 7.05 (t, 1H), 7.3 (m, 3H), 7.62 (d, 2H), 8.34 (d, 1H); m/z 305。
【0130】
方法6
2-アニリノ-4-[1-(ピロリド-2-オン-1-イル)-2-(ジメチルアミノ)ビニル]ピリミジン
2-アニリノ-4-(ピロリド-2-オン-1-イルメチル)ピリミジン(方法4; 960mg, 3.6mmol)およびトリス-ジメチルアミノメタン(1.04g, 7.2mmol)の、乾燥DMF (15ml)中における混合物を、130℃に窒素下で6時間、撹拌加熱した。反応混合物を放冷し、溶媒を蒸発により除去した。残留物をエーチルと蒸留水の混合物で摩砕処理し、固体生成物を濾過により採集し、水およびエーチルで洗浄し、乾燥させて、表題化合物(745mg, 81%)を淡褐色固体として得た。NMR: (CDCl3): 2.11 (m, 2H), 2,45 (m, 2H), 3.00 (s, 6H), 3.38 (m, 1H), 3.72 (m, 1H), 6.20 (d, 1H), 7.00 (t, 1H), 7.08 (s, 1H), 7.27 (m, 2H), 7.58 (m, 2H), 7.7 (s, 1H), 8.11(d, 1H); m/z 324。
【0131】
方法7〜10
下記の化合物を方法6の方法により、適宜な出発物質を用いて製造した(""はピリミジン環への結合点を表わす)。
【0132】
【表4】

【0133】
1 100℃で測定したNMR;
2 生成物を摩砕処理前にDCM / MeOH (98:2から極性を94:6に増大)で溶離するクロマトグラフィーにより精製。
【0134】
方法11
2-アニリノピリミジン-4-カルボアルデヒドオキシム
2-アニリノピリミジン-4-カルボアルデヒド(方法3; 10g, 50mmol)および塩酸ヒドロキシルアミン(17.4g, 250mmol)の、EtOH (360ml)およびピリジン(17.4g, 215mmol)中における懸濁液を、1時間、撹拌および加熱還流した。反応混合物を放冷し、蒸発により約150mlの全体積に濃縮した。蒸留水(600ml)を添加し、沈殿した固体を濾過により採集し、蒸留水で十分に洗浄し、乾燥させて、表題化合物(9.86g, 92%)を白色固体として得た。NMR: 6.92 (t, 1H), 7.08 (d, 1H), 7.23 (t, 2H), 7.75 (d, 2H), 7.93 (s, 1H), 8.45 (d, 1H), 9.67 (s, 1H), 12.1 (s, 1H); m/z 215。
【0135】
方法12
2-アニリノ-4-アミノメチルピリミジン
ラネーニッケル(水中の50%懸濁液1.6g)を、2-アニリノピリミジン-4-カルボアルデヒドオキシム(方法11; 8.8g, 41mmol)の、EtOH (100ml)および液体アンモニア(10ml)中における懸濁液に添加した。混合物を水素雰囲気下に25℃および圧力5バールで16時間撹拌した。ケイソウ土で濾過することにより触媒を除去し、フィルターパッドをEtOHで十分に洗浄し、濾液を蒸発させた。残留物をジエチルエーテルとイソヘキサンの混合物で摩砕処理し、固体生成物を濾過により採集し、イソヘキサンで洗浄し、乾燥させて、表題化合物(7.11g, 87%)を桃色固体として得た。NMR: 3.3 (s, 2H), 3.7 (s, 2H), 6.9 (d, 2H), 7.23 (t, 2H), 7.78 (m, 2H), 8.4 (d, 1H), 9.45 (s, 1H); m/z 201。
【0136】
方法13
4-{[(2-アニリノピリミジン-4-イル)メチル]アミノ}-4-オキソブタン酸
2-アニリノ-4-アミノメチルピリミジン(方法12; 6.6g, 32.5mmol)および無水コハク酸(3.25g, 32.5mmol)の、乾燥THF (130ml)中における混合物を、窒素下で20時間撹拌した。溶媒を蒸発により除去し、残留物をEtOAcと共に30分間、撹拌および摩砕処理した。固体生成物を濾過により採集し、EtOAcで洗浄し、乾燥させて、表題化合物(8.75g, 89.7%)を灰白色固体として得た。NMR: 2.5 (m, 4H), 4.23 (d, 2H), 6.73 (d, 1H), 6.95 (t, 1H), 7.26 (t, 2H), 7.77 (d, 2H), 8.38 (d, 1H), 8.45 (t, 1H), 9.52 (s, 1H); m/z 301。
【0137】
方法14
5-{[(2-アニリノピリミジン-4-イル)メチル]アミノ}-5-オキソペンタン酸
方法13と同様な方法により、2-アニリノ-4-アミノメチルピリミジン(方法12)(4.8g, 24mmol)を無水グルタル酸(2.74g, 24mmol)で処理して、表題化合物(3.88g, 51.7%)を淡褐色固体として得た。NMR: 1.75 (m, 2H), 2.25 (t, 4H), 4.23 (d, 2H), 6.68 (d, 1H), 6.93 (t, 1H), 7.27 (t, 2H), 7.76 (d, 2H), 8.4 (d, 2H), 9.53 (s, 1H): m/z 315。
【0138】
方法15
2-アニリノ-4-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イルメチル)ピリミジン
1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(4.44g, 22mmol)を一度に、4-{[(2-アニリノピリミジン-4-イル)メチル]アミノ}-4-オキソブタン酸(方法13; 6.0g, 20mmol)およびペンタフルオロフェノール(4.05g, 22mmol)の、DMF (180ml)中における撹拌混合物に、窒素下で添加した。反応物を周囲温度で窒素下に20時間撹拌し、次いで反応混合物を蒸発により濃縮した。残留物をEtOAcと水の間で分配した。層を分離し、有機層を水(2回)および飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、揮発性成分を蒸発により除去した。粗製ペンタフルオロエステルを乾燥THF (218ml)中で窒素下に0℃で撹拌し、水素化ナトリウム(油中の60%分散液528mg, 22mmol)を一度に添加した。反応混合物を0℃で15分間、次いで周囲温度で72時間、撹拌した。酢酸(1.32ml)を添加し、反応混合物を蒸発により濃縮した。残留物をEtOAcと水の間で分配し、層を分離した。有機層を希炭酸水素ナトリウム水溶液(2回)、水および飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、揮発性成分を蒸発により除去した。粗生成物をEtOAc/イソヘキサン(60:40、次いで100:0)で溶離するクロマトグラフィーにより精製した。精製した生成物をイソヘキサンで摩砕処理し、濾過により採集し、乾燥させて、表題化合物(2.65g, 47%)を白色固体として得た。NMR: 2.75 (s, 4H), 4.55 (s, 2H), 6.75 (d, 1H), 6.93 (t, 1H), 7.25 (t, 2H), 7.64 (d, 2H), 8.37 (d, 1H), 9.53 (s, 1H); m/z 283。
【0139】
方法16
2-アニリノ-4-(2,6-ジオキソピペリジン-1-イルメチル)ピリミジン
方法15と同様な方法により、5-{[(2-アニリノピリミジン-4-イル)メチル]アミノ}-5-オキソペンタン酸(方法14; 3.7g, 11.78)を変換して、表題化合物(2.13g, 61%)を淡褐色固体として得た。NMR: 1.9 (m, 2H), 2.7 (m, 4H), 4.83 (s, 2H), 6.7 (d, 1H), 6.93 (t, 1H), 7.25 (t, 2 H), 7.67 (d, 2 H), 8.33 (d, 1H), 9.5 (s, 1H); m/z 297。
【0140】
方法17
2-アニリノ-4-(5-メチルピロリド-2-オン-1-イルメチル)ピリミジン
ヨウ化メチルマグネシウム(エーチル中の3M溶液6.31ml, 19.14mmol)を5分間かけて、2-アニリノ-4-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イルメチル)ピリミジン(方法15; 1.8g, 6.38mmol)の、乾燥THF (96ml)中における撹拌溶液に、窒素下で-70oCにおいて、反応温度が-65℃より低く維持されるように添加した。反応物を-70℃で1時間、次いで周囲温度で90分間撹拌した。飽和塩化アンモニウム溶液(50ml)を添加し、混合物を5分間、激しく撹拌した。次いで混合物をEtOAcと水の間で分配し、層を分離した。有機層を飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、揮発性成分を蒸発により除去した。残留物をDCM / MeOH (98:2、次いで96.5:3.5)で溶離するフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、不順なアミン系中間体(0.75g, 2.58mmol)が得られた。これを、0℃に冷却したDCM (5.0ml)中のトリエチルシラン(4.95ml, 31mmol)で処理した。トリフルオロ酢酸(1.03ml, 13.3 mmol)を2分間かけて溶液に添加し、混合物を0℃で15分間、次いで周囲温度で18時間、撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、激しく撹拌し、起泡が見られなくなるまで炭酸水素ナトリウム水溶液を慎重に添加した。層を分離し、有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、揮発性成分を蒸発により除去した。DCM / MeOH (20:80)で予め平衡化したSPE SCXイオン交換カラムへの吸収により、粗生成物を精製した。カラムをDCM / MeOH (20:80)で溶離して中性物質を除去し、次いでDCM / 2Mメタノール性アンモニア(80:20)で溶離して、表題化合物(754 mg, 50%)を得た。NMR: 1.13 (d, 3H), 2.6 (m, 1H), 2.3 (m, 3H), 3.7 (q, 1H), 4.13 (d, 1H), 4.55 (d, 1H), 6,68 (d, 1H), 6.93 (t, 1H): 7.25 (t, 2H), 7.73 (d, 2H), 8.4 (d, 1H), 9.55 (s, 1H); m/z 283。
【0141】
方法18
2-アニリノ-4-(6-メチルピペリジン-2-オン-1-イルメチル)ピリミジン
方法17と同様な方法により、2-アニリノ-4-(2,6-ジオキソピペリジン-1-イルメチル)ピリミジン(方法16; 2.21g, 7.47mmol)をヨウ化メチルマグネシウムで処理して中間体アミンを製造し、これをクロマトグラフィー精製せずに採取して最終生成物を得た。これを水で仕上げ処理した後、DCM / MeOH (98:2)で溶離するクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物(375mg, 17%)をガラス質固体として得た。NMR: 1.2 (d, 3H), 1.65 (m, 2H), 1.93 (m, 2H), 2.33 (t, 2H), 3.6 (q, 1H), 4.25 (d, 1H), 4.7 (d, 1H), 6.65 (d, 1H), 6.93 (t, 1H), 7.25 (t, 2H), 7.76 (d, 2H), 8.4 (d, 1H), 9.53 (s, 1H); m/z 297。
【0142】
方法19
2-アニリノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)ピリミジン
2-アニリノピリミジン-4-カルボアルデヒド(方法3; 5.0g, 25.1mmol)およびエタノールアミン(1.69g, 27.6mmol)の、MeOH (63ml)中における懸濁液を、窒素下に周囲温度で72時間撹拌した。揮発性成分を蒸発により除去し、残留物をEtOH (75ml)に溶解し、溶液を窒素下で撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(1.04g, 27.6mmol)を一度に速やかに添加し、混合物を周囲温度で20時間撹拌した。揮発性成分を蒸発により除去し、残留物をジエチルエーテルおよび水に溶解し、濃塩酸の慎重な添加により水層をpH5.5に調整した。層を分離し、40%水酸化ナトリウム水溶液の慎重な添加により水層をpH11.5に調整した。次いで水層をDCM (3回)で抽出し、有機抽出液を合わせて乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を蒸発により除去した。残留物をDCM /イソヘキサンで摩砕処理し、固体生成物を濾過により採集し、イソヘキサンで洗浄し、乾燥させて、表題化合物(4.12g, 75%)をクリーム色固体として得た。NMR: 2.62 (t, 2H), 3.28 (s, 2H), 3.47 (t, 2H), 4.47 (s, 1H), 6.9 (m, 2H), 7.25 (t, 2H), 7.78 (d, 2H), 8.4 (d, 1H), 9.5 (s, 1H); m/z 245。
【0143】
方法20
2-アニリノ-4-(3-オキソモルホリノメチル)ピリミジン
クロロアセチルクロリド(268mg, 2.38mmol)の、乾燥DCM (5ml)中における溶液を、2-アニリノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)ピリミジン(方法19; 582mg, 2.38mmol)およびトリエチルアミン(332ml, 2.38mmol)の、乾燥DCM (20ml)中における撹拌溶液に、窒素下で10分間かけて滴加した。次いで反応混合物を周囲温度で20時間撹拌した。混合物をDCMで希釈し、水(2回)、飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、揮発性成分を蒸発により除去した。残留物を乾燥THF (20ml)に溶解し、臭化ナトリウム(227mg, 2.2mmol)を添加し、混合物を0℃で窒素下に撹拌した。水素化ナトリウム(油中の60%分散液88mg)を一度に添加し、反応物を0℃で10分間、次いで周囲温度で72時間、撹拌した。揮発性成分を蒸発により除去し、残留物をEtOAcと水の間で分配した。層を分離し、有機層を水、飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を蒸発により除去した。残留物をEtOAcで溶離するクロマトグラフィーにより精製した。精製した生成物をジエチルエーテルで摩砕処理し、濾過により採集し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させて、表題化合物(438mg, 70%)を白色固体として得た。NMR: 3.43 (t, 2H), 3.87 (t, 2H), 4.13 (s, 2H), 4.52 (s, 2H), 6.72 (d, 1H), 6.93 (t, 1H), 7.25 (t, 2H), 7.75 (d, 2H), 8.42 (d, 1H), 9.55 (s, 1H); m/z 285。
【0144】
実施例12
ヒトに治療用または予防用として使用するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル(以下、化合物X)を含有する代表的な医薬剤形を以下に示す。
【0145】
【表5】

【0146】
【表6】

【0147】
Ph.Eur:欧州薬局方; BP:英国薬局方;
注釈
前記の配合物は医薬技術分野で周知の常法により得ることができる。錠剤(a)〜(c)は、常法によりたとえば酢酸フタル酸セルロースのコーティングを施して、腸溶コーティングすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

[式中:
環Aは、イミダゾール環に縮合したカルボサイクリルまたはヘテロサイクリルであり;
R1は、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルであり;
pは、0〜4であり;その際、R1の意味は同一でも異なってもよく;
R2は、スルファモイルまたは基Ra-Rb-であり;
qは、0〜2であり;その際、R2の意味は同一でも異なってもよく;p + q = 0〜5であり;
R3は、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、C2-3アルキニル、C1-3アルコキシ、C1-3アルカノイル、N-(C1-3アルキル)アミノ、N,N-(C1-3アルキル)2アミノ、C1-3アルカノイルアミノ、N-(C1-3アルキル)カルバモイル、N,N-(C1-3アルキル)2カルバモイル、C1-3アルキルS(O)a(aは0〜2である)、N-(C1-3アルキル)スルファモイルまたはN,N-(C1-3アルキル)2スルファモイルであり;R3は炭素において1個以上のRcにより置換されていてもよく;
nは、0〜2であり;その際、R3の意味は同一でも異なってもよく;
R4およびR5は、独立して水素、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルカノイル、C1-6アルカノイルオキシ、N-(C1-6アルキル)アミノ、N,N-(C1-6アルキル)2アミノ、C1-6アルカノイルアミノ、N-(C1-6アルキル)カルバモイル、N,N-(C1-6アルキル)2カルバモイル、C1-6アルキルS(O)a(aは0〜2である)、C1-6アルコキシカルボニル、N-(C1-6アルキル)スルファモイル、N,N-(C1-6アルキル)2スルファモイル、C1-6アルキルスルホニルアミノ、C3-8シクロアルキルまたは4〜7員飽和複素環式基から選択され;R4およびR5は炭素において1個以上のReにより置換されていてもよく;4〜7員飽和複素環式基が-NH-部分を含む場合、その窒素はRfから選択される基により置換されていてもよく;
mは、0〜4であり;その際、R4の意味は同一でも異なってもよく;
Raは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルキルC1-6アルキル、フェニル、複素環式基、フェニルC1-6アルキルまたは(複素環式基)C1-6アルキルから選択され;Raは炭素において1個以上のRgにより置換されていてもよく;複素環式基が-NH-部分を含む場合、その窒素はRhから選択される基により置換されていてもよく;
Rbは、-C(O)-、-N(Rm)C(O)-、-C(O)N(Rm)-、-S(O)r-、-OC(O)N(Rm)SO2-、-SO2N(Rm)-または-N(Rm)SO2-であり;ここでRmは水素、または1個以上のRiにより置換されていてもよいC1-6アルキルであり、rは1〜2であり;
RgおよびRiは、独立してハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシ、C1-6アルコキシC1-6アルコキシC1-6アルコキシ、C1-6アルカノイル、C1-6アルカノイルオキシ、N-(C1-6アルキル)アミノ、N,N-(C1-6アルキル)2アミノ、C1-6アルカノイルアミノ、N-(C1-6アルキル)カルバモイル、N,N-(C1-6アルキル)2カルバモイル、C1-6アルキルS(O)a(aは0〜2である)、C1-6アルコキシカルボニル、N-(C1-6アルキル)スルファモイル、N,N-(C1-6アルキル)2スルファモイル、C1-6アルキルスルホニルアミノ、C3-8シクロアルキル、フェニル、複素環式基、フェニルC1-6アルキル-Ro-、(複素環式基)C1-6アルキル-Ro-、フェニル-Ro-または(複素環式基)-Ro-から選択され;RgおよびRiは、互いに独立して、炭素において1個以上のRjにより置換されていてもよく;複素環式基が-NH-部分を含む場合、その窒素はRkから選択される基により置換されていてもよく;
Roは、-O-、-N(Rp)-、-C(O)-、-N(Rp)C(O)-、-C(O)N(Rp)-、-S(O)s-、-SO2N(Rp)-または-N(Rp)SO2-であり;ここでRpは水素またはC1-6アルキルであり、sは0〜2であり;
Rf、RhおよびRkは、独立してC1-4アルキル、C1-4アルカノイル、C1-4アルキルスルホニル、C1-4アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-(C1-4アルキル)カルバモイル、N,N-(C1-4アルキル)カルバモイル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、ベンゾイルおよびフェニルスルホニルから選択され;Rf、RhおよびRkは、互いに独立して、炭素において1個以上のRlにより置換されていてもよく;
Rc、Re、RlおよびRjは、独立してハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アセチル、アセトキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メチル-N-エチルアミノ、アセチルアミノ、N-メチルカルバモイル、N-エチルカルバモイル、N,N-ジメチルカルバモイル、N,N-ジエチルカルバモイル、N-メチル-N-エチルカルバモイル、メチルチオ、エチルチオ、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、メシル、エチルスルホニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、N-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N,N-ジエチルスルファモイルまたはN-メチル-N-エチルスルファモイルから選択される]
またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項2】
環Aが、イミダゾール環に縮合したシクロペンチル、シクロヘキシルまたはモルホリノである、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項3】
R1が、ハロである、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項4】
pが0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項5】
R2が基Ra-Rb-であり;
Raが、炭素において1個以上のRgにより置換されていてもよいC1-6アルキルから選択され;
Rbが-N(Rm)SO2-であり;ここでRmは水素であり;
RgがC1-6アルコキシである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項6】
qが0または1である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項7】
R3が、ハロである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項8】
nが0である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項9】
R4が、水素またはC1-6アルキルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項10】
mが0または1である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項11】
環Aが、イミダゾール環に縮合したシクロペンチル、シクロヘキシルまたはモルホリノであり;
pが0であり;
R2がN-(2-メトキシエチル)スルファモイルまたはN-(2-エトキシエチル)スルファモイルであり;
qが0または1であり;
nが0であり;
R4が水素またはメチルであり;
R5が水素であり;
mが0または1である、
式(I)(請求項1に記載)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項12】
請求項1に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルの製造方法であって(可変基は、別途明記しない限り、請求項1に定めたものである)、
方法a) 式(II)のピリミジン:
【化2】

(式中、Lは置換可能な基である)を式(III)のアニリン:
【化3】

と反応させること;
あるいは
方法b) 式(IV)の化合物:
【化4】

を式(V)の化合物:
【化5】

(TはOまたはSであり;Rxは同一でも異なってもよく、C1-6アルキルから選択される)と反応させること;
方法c) R2がスルファモイルまたは基Ra-Rb-であり、Rbが-NHSO2-である式(I)の化合物については、式(VI)のピリミジン:
【化6】

(式中、Xは置換可能な基である)をアンモニアまたは式(VII)のアミン:
Ra-NH2
(VII)
と反応させること;
方法d) 式(I)の化合物について、式(VIII)のピリミジン:
【化7】

を式(IX)の化合物:
【化8】

(式中、Yは置換可能な基である)と反応させること;
方法e) 式(X)の化合物:
【化9】

を環化すること;
からなる方法であって、
その後、必要ならば:
i)式(I)の化合物を他の式(I)の化合物に変換する;
ii)保護基を除去する;
iii)医薬的に許容できる塩またはインビボ加水分解性エステルを形成する
上記方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルを、医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤーと共に含む、医薬組成物。
【請求項14】
ヒトまたは動物の身体を療法により処置する方法に使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項16】
ヒトなどの温血動物において細胞周期阻害(抗-細胞増殖)効果を生じる際に用いる医薬の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルの使用。
【請求項17】
癌(充実性腫瘍および白血病)、線維増殖性障害および分化障害、乾癬、リウマチ様関節炎、カポジ肉腫、血管腫、急性および慢性腎障害、アテローム、アテローム性硬化症、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性および慢性炎症、骨疾患、ならびに網膜血管増殖を伴う眼疾患の処置に用いる医薬の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルの使用。
【請求項18】
癌の処置に用いる医薬の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステルの使用。
【請求項19】
癌が、白血病、胸部癌、肺癌、結腸直腸癌、胃癌、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、肝癌、腎癌、皮膚癌および外陰癌である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
ヒトなどの温血動物において細胞周期阻害(抗-細胞増殖)効果を生じる際に使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項21】
癌(充実性腫瘍および白血病)、線維増殖性障害および分化障害、乾癬、リウマチ様関節炎、カポジ肉腫、血管腫、急性および慢性腎障害、アテローム、アテローム性硬化症、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性および慢性炎症、骨疾患、ならびに網膜血管増殖を伴う眼疾患の処置に使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項22】
癌の処置に使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。
【請求項23】
白血病、胸部癌、肺癌、結腸直腸癌、胃癌、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、肝癌、腎癌、皮膚癌および外陰癌の処置に使用するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくはインビボ加水分解性エステル。

【公表番号】特表2007−500738(P2007−500738A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530484(P2006−530484)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002019
【国際公開番号】WO2004/101564
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】