説明

細胞計数及び分析のための方法、システム及び組成

本発明は、生体試料、特に血液検体のラベル付き特徴を検出し、測定し及び/又は数えるための、低コストの、画像化に基づくシステムを提供する。一態様では、本発明は、各々が明確な波長帯域を有する照明ビームを連続的に生成することができる1つ又は複数の光源と、それぞれの異なる特徴が異なる分別励起可能なラベルを付けられるような多重特徴を含む検体にラベルを付けることができる複数の分別励起可能なラベルとを含む、検体の多重特徴を撮像するためのシステムを含む。本発明のシステムはさらに、異なる分別励起可能なラベルの各々が同じ波長帯域内の光信号を連続的に放射させられるように照明ビームを検体上に連続的に導くための、1つ又は複数の光源と操作上関連するコントローラと、そのような放射された光信号を収集し、検体のラベル付き特徴に対応する連続的な画像を、それらの画像データの連続的な組を形成するための光応答性表面に形成することができる光学システムと、非赤血球の収集及び光学的分析のための使い捨てキュベットとを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞係数及び分析のための方法、システム及び組成に関する。
【背景技術】
【0002】
効果的なバイオマーカーの臨床検査(point−of−care testing)及び探索は、生物医学研究における重要なテーマである(例えば、非特許文献1〜4参照)。両方の努力は、そのコストを低減しながら、健康管理のアクセス及び有効性を改善することが意図されている。臨床検査は、患者の近傍に容易に運ぶことができ、高度な専門要員なしで現場条件のもとで操作できるデバイスを使用して、中央検査室の外部で実施される分析検査である。多くの救急医療及び生体防御監視応用では、迅速な試料処理及び検査読み出し情報もまた必要とされる(例えば、非特許文献5参照)。
【0003】
バイオマーカーは、正常な生物過程、発病過程、又は治療的介入に対する薬理反応の指標として、客観的に測定され、評価される特性である(例えば、非特許文献6参照)。バイオマーカーは、性質、測定の容易さ、及び関心のある生理状態との相関において大きく異なる(例えば、(前掲の)非特許文献3参照)。大部分の臨床デバイスは、試料もしくは検体から抽出された又は血液などの生体液内で直接見いだされる分子バイオマーカーを測定するように設計される(例えば、(前掲の)非特許文献1参照)。臨床デバイス内の細胞マーカーを測定することには大きな関心があるが、しかし細胞マーカーは典型的には、細胞特異的測定を行うためには、ある形態の画像化又は流体工学システムを必要とし、それによって分子マーカーの測定によってもたらされるものを越える大きな技術的挑戦を追加する(例えば、非特許文献7〜11及び同様のものを参照)。
【0004】
臨床検査は、医学的、獣医的、又は植物試料などの個々の生物からの試料だけでなく、土壌、水系、空調システムなどの様々な環境、輸送システムなどの公共の場での表面、及び同様のものからの試料もまた含む広範囲の種類の試料について実行される可能性がある。医学的試料のうちで、血液、唾液、涙管液、尿、及び同様のものなどの生体液は、普通は固形組織よりもはるかにアクセスしやすいので、臨床分析とともに使用するために特に受け入れやすい。細胞又は分子マーカーをそれから得ることができる、そのような生体液のうちで、血液は、全身性であり、容易にアクセスでき、その組成が健康及び病気の状態を反映する細胞及び分子の豊富で動的な懸濁液を含むので、生物学的に関連するときはいつも、選り抜きの試料である。特に、罹病性、病気の進行、薬物反応性、及び同様のものと関連がある非赤血球のあるサブセットを数えることができることに大きな関心がある(例えば、非特許文献12〜14、(前掲の)非特許文献9、10参照)。あいにく、そのようなマーカーに対して現在利用できる分析器は、分離及び/又は細胞溶解を含む複雑な準備ステップ、専門要員の関与、携帯性の欠如、高コスト、感度の欠如、及び同様のものを含む、それらの広範囲の使用を制限する1つ又は複数の欠点に悩まされる。
【0005】
上述のことを考慮すると、いくつかの医学及び生命工学の分野は、血液などの特に生体液内の細胞マーカーの容易で柔軟な測定を可能にする、臨床操作の可能な技術が利用できるようになることで、著しく進歩するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,180,415号明細書
【特許文献2】米国特許第7,122,384号明細書
【特許文献3】米国特許第6,723,290号明細書
【特許文献4】米国特許第6,869,570号明細書
【特許文献5】米国特許第5,674,457号明細書
【特許文献6】米国特許第5,200,152号明細書
【特許文献7】米国特許第6,638,769号明細書
【特許文献8】米国特許第4,088,448号明細書
【特許文献9】米国特許第5,098,893号明細書
【特許文献10】米国特許第5,102,788号明細書
【特許文献11】米国特許第5,556,771号明細書
【特許文献12】米国特許第5,763,157号明細書
【特許文献13】米国特許第6,294,365号明細書
【特許文献14】米国特許第5,413,732号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2006/0068398号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2006/0068399号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Holland et al, Curr. Opin. Microbiol., 8: 504-509 (2005)
【非特許文献2】Yager et al, Nature, 442: 412-418 (2006)
【非特許文献3】Frank et al, Nature Reviews Drug Discovery, 2: 566-580 (2003)
【非特許文献4】Sidransky, Nature Reviews Drug Discovery, 2: 210-218 (2002)
【非特許文献5】Raja et al, Clinical Chemistry, 48: 1329-1337 (2002)
【非特許文献6】Atkinson et al, Clin. Pharmacol. Ther., 69: 89-95 (2001)
【非特許文献7】Shapiro, Cytometry A, 60A: 115-124 (2004)
【非特許文献8】Shapiro et al, Cytometry A, 69A: 620-630 (2006)
【非特許文献9】Rodriquez et al, PLOS Medicine, 2(7): e182 (2005)
【非特許文献10】Janossy et al, Clinical Cytometry, 50: 78-85 (2002)
【非特許文献11】Toner et al, Annu. Rev. Biomed. Eng., 7: 77-103 (2005)
【非特許文献12】Guisset et al, Intensive Care Med., Epub (November 8, 2006)
【非特許文献13】Shaked et al, Curr. Cancer Drug Targets, 5: 551-559 (2005)
【非特許文献14】Madjid et al, J. Am. Coll. Cardiol., 44: 1945-1956 (2004)
【非特許文献15】Genome Analysis (Cold Spring Harbor Laboratory Press)
【非特許文献16】A Laboratory Manual Series (Vols. I-IV), Using Antibodies (Cold Spring Harbor Laboratory Press)
【非特許文献17】A Laboratory Manual, Cells (Cold Spring Harbor Laboratory Press)
【非特許文献18】A Laboratory Manual, PCR Primer (Cold Spring Harbor Laboratory Press)
【非特許文献19】A Laboratory Manual, and Molecular Cloning (Cold Spring Harbor Laboratory Press)
【非特許文献20】A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press)
【非特許文献21】Murphy, Fundamentals of Light Microscopy and Electronic Imaging (Wiley-Liss, 2001)
【非特許文献22】Shapiro, Practical Flow Cytometry, Fourth Edition (Wiley-Liss, 2003)
【非特許文献23】Herman et al, Fluorescence Microscopy, 2nd Edition (Springer, 1998)
【非特許文献24】Luxeon Star Technical Data Sheet DS23 (Philips Lumileds Lighting Company, San Jose, 2006)
【非特許文献25】Luxeon Star V Technical Data Sheet DS30 (Lumileds Lighting , U.S., LLC, San Jose, CA, September 20, 2004)
【非特許文献26】Hemanson, Bioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996)
【非特許文献27】Schultz et al, Proc. Natl. Acad. Sci., 97: 996-1001 (2000)
【非特許文献28】Morgan et al, Clinical Immunol., 110: 252-266 (2004)
【非特許文献29】Alberts et al, Molecular Biology of the Cell, Fourth Edition (Garland, 2002)
【非特許文献30】Nelson and Cox, Lehninger Principles of Biochemistry, Fourth Edition (W. H. Freeman, 2004)
【非特許文献31】Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1988)
【非特許文献32】Howard and Bethell, Basic Methods in Antibody Production and Characterization (CRC Press, 2001)
【非特許文献33】Wild, editor, The Immunoassay Handbook (Stockton Press, New York, 1994)
【非特許文献34】Sharon and Lis, Lectins, 2nd Edition (Springer, 2006)
【非特許文献35】Klussmann, The Aptamer Handbook: Functional Oligonucleotides and Their Applications (John Wiley & Sons, New York, 2006)
【非特許文献36】Schwegman et al, Pharm. Dev. Technol., 10: 151-173 (2005)
【非特許文献37】Nail et al, Pharm. Biotechnol., 14: 281-360 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、生体試料、特に血液検体のラベル付き特徴を検出し、測定し及び/又は数えるための、低コストの画像化に基づくシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は、次の要素、即ち(a)各々が明確な波長帯域を有する照明ビームを連続的に生成することができる1つ又は複数の光源と、(b)それぞれの異なる特徴が、異なる分別励起可能なラベルを付けられるような多重特徴を含む検体にラベルを付けることができる複数の分別励起可能なラベルと、(c)異なる分別励起可能なラベルの各々が、同じ波長帯域内の光信号を連続的に放射させられるように照明ビームを検体上に連続的に導くための、1つ又は複数の光源と操作上関連するコントローラと、(d)そのような放射された光信号を収集し、検体のラベル付き特徴に対応する連続的な画像を、それらの画像データの連続的な組を形成するための光応答性表面に形成することができる光学システムとを含む、検体の多重特徴を撮像するためのシステムを含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、複数の分別励起可能なラベルを付けられた血液検体内の非赤血球を分析するための装置を含み、そのような装置は、(a)血液検体を含み、赤血球の光妨害層の形成を妨げる、光収集軸に沿った寸法を有することができる試料チャンバーと、(b)各々が明確な波長帯域を有する照明ビームで血液検体を照らすことができる多重光源と、(c)複数の分別励起可能なラベルの各々が同じ波長帯域内の光信号を連続的に放射させられるようにそれぞれの光源の照明ビームを検体上に連続的に導くための、多重光源に結合されるコントローラと、(d)そのような放射された光信号を収集し、対応する連続的な画像を、画像データの連続的な組を形成するための光応答性表面に形成することができる光学システムとを含み、血液検体内の非赤血球は、そのような画像データの連続的な組を分析することによって数えられる。
【0011】
別の態様では、本発明は、各々が異なる被分析物と特異的に結合することができる、被分析物−特異的プローブの混合物を含む、試料中の複数の異なる細胞被分析物の1つ又は複数のラベル付けで使用するためのプローブ組成を含み、それぞれのプローブは、(a)結合条件のもとで細胞被分析物に特異的な結合化合物によって、及び(b)結合化合物に光ラベルを付けられることによって特徴づけられ、それぞれの異なるプローブの光ラベルは異なる励起帯域を有し、すべてのプローブの光ラベルは同じ波長範囲内の光信号を放射する。好ましくは、そのような同じ波長範囲は、プローブ組成の光ラベルの励起帯域から分離する。
【0012】
別の態様では、本発明は、非赤血球の光学的分析のための使い捨て血液収集キュベットを含み、そのキュベットは、(a)全血の試料を受け入れるための入口を有する混合チャンバーであって、その混合チャンバーは、全血試料に接触することで溶解し、各々が非赤血球の異なる細胞被分析物と特異的に結合することができる、複数の被分析物−特異的プローブを含むプローブ組成を含むことができる乾燥試薬をさらに含み、それぞれのプローブは、(i)結合条件のもとで細胞被分析物に特異的な結合化合物によって、及び(ii)結合化合物に光ラベルを付けられることで特徴づけられ、それぞれの異なるプローブの光ラベルは、異なる励起帯域を有し、すべてのプローブの光ラベルは、同じ波長範囲内の光信号を放射する、混合チャンバーと、(b)混合チャンバー内の試料が毛管作用によって試料チャンバーに移されるように、混合チャンバーに流体的に接続される試料チャンバーであって、その試料チャンバーは、細胞被分析物に付けられたプローブによって生成される光信号が、試料の赤血球によって妨害されないように、光学的に透過する壁及び非赤血球の直径と実質的に同等な垂直な寸法を有する、試料チャンバーとを含む。好ましくは、前記寸法は、それが関心のある細胞と前記光学的に透過する壁との間での除核赤血球の光妨害層の形成を実質的に妨げるように選択される。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、非赤血球の光学的分析のための使い捨て血液収集キュベットを含み、キュベットは、(a)全血の試料を受け取ることができる試料チャンバーであって、その試料チャンバーは、本体内に配置され、細胞被分析物に付けられたプローブによって生成される光信号が、試料の赤血球によって妨害されないように、少なくとも1つの光学的に透過する壁及び非赤血球の直径と実質的に同等な垂直な寸法を有する、試料チャンバーと、(b)各々が非赤血球の異なる細胞被分析物と特異的に結合することができる、複数の被分析物−特異的プローブを含むプローブ組成を形成するために、試料と組み合わされて溶解する、試料チャンバー内の乾燥試薬とを含み、それぞれのプローブは、(i)結合条件のもとで細胞被分析物に特異的な結合化合物によって、及び(ii)結合化合物に光ラベルを付けられることで特徴づけられ、それぞれの異なるプローブの光ラベルは、異なる励起帯域を有し、すべてのプローブの光ラベルは、同じ波長範囲内の光信号を放射する。
【0014】
別の態様では、本発明は、複数の蛍光ラベルを付けられた検体を撮像するための装置を含み、その装置は、次の要素、即ち(a)それぞれの発光ダイオードが明確な波長帯域を有する照明ビームを生成し、検体を照らすことができる1つ又は複数の発光ダイオードと、(b)複数の蛍光ラベルの各々が光信号を連続的に放射させるように照明ビームを検体上に導くための、発光ダイオードに結合されたコントローラと、(c)放射された光信号を収集し、対応する画像を、画像データを生成するための光応答性表面に形成することができる光学システムとを含み、光学システムは、異なる波長を有する多重光信号を獲得することができるカラーカメラを含む。好ましくは、前記1つ又は複数の発光ダイオードは、複数の発光ダイオードであり、前記光学システムは、複数組の画像データを生成し、それぞれのそのような組は、前記発光ダイオードの異なる1つによる照明に応答して生成される光信号に対応する。
【0015】
本発明は、血液、唾液、尿、及び同様のものを含む、医学的及び環境的試料の迅速な分析のための臨床システムへの従来技術の接近方法の多くのコスト及び効率の欠点を克服する。本発明の特定の実施形態は、非赤血球、CD3+細胞、CD4+細胞、CD8+細胞などのリンパ球、マラリアなどの血液寄生虫、及び同様のものを含むが、それらには限定されない、全血内に存在する可能性がある各種の細胞成分及び/又は病原体の低コストで効率的な検出及び計数によく適している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明とともに使用するための光学システムを図式的に例示する図である。
【図2】励起ビームを調整するためにLEDとともに使用するための光学部品のシステムを図式的に例示する図である。
【図3】本発明のプローブ組成のための光ラベルを選択するための原理を例示する図である。
【図4A】明確な励起帯域を有するが、同じ波長範囲内で多くの蛍光を放射することができる実施例で使用される2つの蛍光ラベルに対する吸収曲線を示す図である。
【図4B】3つの異なる励起ビームによって連続的に励起することができる650nmより上の波長範囲内で蛍光信号を放射する3つの蛍光ラベルの吸収及び放射曲線を示す図である。
【図5A】全血内の非赤血球及び/又は他の細胞もしくは微生物を検出し、分析するための、本発明とともに使用するための試料キュレットの実施形態を図式的に例示する図である。
【図5B】全血内の非赤血球及び/又は他の細胞もしくは微生物を検出し、分析するための、本発明とともに使用するための試料キュレットの実施形態を図式的に例示する図である。
【図5C】全血内の非赤血球及び/又は他の細胞もしくは微生物を検出し、分析するための、本発明とともに使用するための試料キュレットの実施形態を図式的に例示する図である。
【図6A】スライド上に配置された、市販のフィコエリトリンのラベル付きビーズの画像である。
【図6B】ラベル付きビーズ濃度とビーズ計数との間の線形関係を実証するデータを示す図である。
【図7A】APCのラベル付き抗CD3抗体及びPECy5のラベル付き抗CD4抗体で二重にラベルを付けられた全血からの細胞の画像である。
【図7B】3種の細胞、単球、CD4+T細胞、CD4-T細胞の明確な集団を示す、図5AからのデータをAPC信号強度対PE信号強度の二次元プロットで示す図である。
【図8A】異なる試料キュレット深さに対して、実施例1の装置からの全血細胞計数を、フローサイトメータを使用して得られる計数と比較するデータを示す図である。
【図8B】50μm(深さ)試料キュレットでの異なるラベルに対して、実施例1の装置からの全血細胞計数を、フローサイトメータを使用して得られる計数と比較するデータを示す図である。
【図9】インターロイキン2濃度に対してビーズに基づく分析からのデータを示す図である。
【図10】本発明とともに使用するための光学システムを図式的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施は、別に示されない限り、当該分野の技術範囲内である分子生物学(組み換え技術を含む)、細胞生物学、免疫分析技術、顕微鏡法、画像分析、及び分析化学からの従来技術を用いることができる。そのような従来技術は、蛍光信号の検出、画像分析、照明光源及び光信号検出部品の選択、生体細胞のラベル付け、ならびに同様のものを含むが、それらだけには限られない。そのような従来の技術及び記述は、非特許文献15〜23などの標準検査室手引書内で見ることができ、それらのすべては、すべての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0018】
本発明は、試料内の被分析物、細胞、又は粒子に直接的に又は間接的に結合される又は付けられるラベルの励起帯域に対応する、異なる波長範囲を有する照明ビームで試料を連続的に照らすことによって、試料内の細胞、ミセル、粒子、及び/又は被分析物を測定し、数えるためのシステム、方法、及び組成を提供する。そのような連続でのそれぞれの照明の後、光信号は画像を形成するために収集されて、各々が細胞、粒子、及び/又は被分析物の個体群の計数及び/又は測定を提供するために分析される画像データを含む、一組の画像が形成されるようになる。一態様では、実質的に重複しない波長範囲を有する複数の照明ビームが用いられる。そのような複数の照明ビームは、2から6の範囲内、又は2から4の範囲内、又は2から3の範囲内とすることができる。複数の照明ビームは、レーザー、白熱電球及びアークランプ、ならびに同様のものによるものを含む、当業者に利用可能な各種の方法及び装置によって生成することができる。一実施形態では、照明ビームは、発光ダイオード(LED)又は同様の固体デバイスを使用して生成される。例となるLED光源は、Lumileds Lighting LLC(San Jose、CA)から市販されている、緑(530nm)、シアン(505nm)、青(470nm)、及び紺青(455nm)に波長ピークを有する、Luxeon(登録商標)LEDを含む。本発明とともに使用するための特定のLEDを選択する際の指針は、非特許文献24、25及び同様のものなどの技術文献で広く利用できる。普通、光源は、所望の波長範囲及び強度分布の照明ビームを生成するために、従来のフィルタ及び他の光学部品とともに使用される。
【0019】
I.光学システム
多種多様の光学システムを、本発明で用いることができる。一般に、そのようなシステムは、明確な波長範囲で試料を連続的に照らすための1つ又は複数の照明ビームと、照明された試料からの画像データを記録するための画像収集デバイスと、画像データの組が連続的に収集されるように照明ビーム及び画像収集デバイスの操作を制御するコントローラとを提供する。
【0020】
一態様では、本発明は、試料内の関心のある細胞、粒子、又は被分析物に特異的なプローブに付けられた分別励起可能な染料の組と協力して使用される画像収集デバイスを含むシステムを含む。言い換えれば、そのようなシステムは、複数の分別励起可能なラベルを付けられた試料又は検体を撮像するための次の部品、即ち(a)各々が、明確な波長帯域を有する照明ビームで検体を照らすことができる多重光源と、(b)複数の分別励起可能なラベルの各々が、同じ波長帯域内の光信号を連続的に放射させられるように、それぞれの光源の照明ビームを検体上に連続的に導くための、多重光源に結合されたコントローラと、(c)そのような放射された光信号を収集し、対応する連続的な画像を、画像データの連続的な組を形成するための光応答性表面に形成することができる光学システムとの装置を含む。上述の装置の一実施形態は図1で例示される。システム(100)は、試料台(116)の上又は中に配置された試料(114)の観察領域(107)を連続的に照らすための、LED1(102)及びLED2(104)として示される複数の光源と、照明ビーム(103)及び(105)に応答して試料内及び/又は試料上のプローブから生成される光信号(109)を収集し、収集された信号を検出器(108)に導く(111)ための撮像光学系(106)であって、撮像光学系(106)は、CCD又はCMOS素子などの光応答性表面を含み、光信号(109)が画像を形成し、画像データの連続的な組を記録する、撮像光学系(106)とを含む、いくつかの部品を含む。好ましくは、システム(100)の操作は、(a)照明ビーム(103)及び(105)のタイミング及び継続時間を制御し、(b)画像データを収集し、1つ又は複数のデータベースに移すための検出器(108)を制御し、(c)読み出し部(112)のための読み出し情報を生成するために画像データを分析する及び同様の操作をする、コンピュータ(110)の制御下にある。試料台(116)は、設計及び機能が大きく異なってもよいが、一般的に、試料が複数の光信号を並列で収集し、検出器に画像を形成することと矛盾しない、実質的に平面的な幾何学形状で配置されることを必要とする。好ましくは、試料台(116)に配置された試料は、静止しており、流れているもしくは動いていることはない、又は動く場合、画像分析中に位置合わせができる連続的な画像を収集することができるほどに十分に遅い。試料台(116)は、従来の顕微鏡スライド、顕微鏡法で使用される試料チャンバーもしくはキュベット、培養皿、微小流体デバイス、又は同様のものを含むことができる。以下でより完全に述べられる一態様では、試料台(116)は、全血内の非赤血球成分の検出のために設計される使い捨てキュベットを含む。別の態様では、試料台(116)は、そのようなキュベットがシステム(100)で使用されるときはいつも調査されるべき既知の容積を可能にする幾何学形状を有する試料チャンバーを有するキュベットを含む。一実施形態では、そのような試料チャンバーは、(a)床(又は底部壁)及び天井(又は上部壁)がお互いに平行であり、撮像光学系(106)への最小光路に対して(好ましくは)垂直であり、ならびに(b)上部壁と底部壁との間の垂直距離が、検出されている細胞又は粒子の直径と実質的に同等である、実質的に平面的な幾何学形状を有する。そのような試料チャンバーが、既知の又は決定できる観測領域(107)内に配置されるときはいつも、細胞又は粒子は既知の(又は決定できる)容積内にあることになり、それによって粒子又は細胞の濃度を測定することを可能にする。試料チャンバーの上部壁と底部壁との間の垂直距離、又は寸法に関連して「実質的に同等である」とは、全血試料内で、観測領域(107)内の非赤血球又は粒子からの光信号が検出可能であることを意味する。言い換えれば、ラベル付き細胞又は粒子とチャンバーの上部壁との間にあることができる赤血球(又は他の破片)の層は、光信号の透過を完全には妨害しない。一態様では、CD4+細胞などの白血球がラベルを付けられ、上部壁と底部壁との間の垂直距離は、40から120μmの範囲内、又は50から100μmの範囲内である。読み出し部(112)の性質は、簡単な数値表示から情報の豊富なグラフィカルユーザーインターフェースまで大きく異なってもよい。一実施形態では、簡単な数値読み出し情報は、1つ又は複数の所定の細胞もしくは粒子の種類の計数を与える読み出し部(112)によって提供される。別の実施形態では、読み出し情報は、1つ又は複数の所定の細胞もしくは粒子の種類の濃度を含む。さらに別の実施形態では、読み出し情報は、細胞、粒子、又は他の被分析物の閾値レベル(例えば、計数又は濃度)を超えたかどうかに関して簡単な「肯定又は否定」指標を含む。
【0021】
照明ビームを生成するためにLEDを用いる実施形態では、選択されたLEDからの放射は、2−LEDシステムに対する図2で例示されるように、光学部品を使用して調整することができる。第1のLED(202)及び第2のLED(206)は、各々がディフューザ(208)、レンズ(210)、帯域通過フィルタ(212)、及びレンズ(216)を含む調整光学系(200)及び(204)をそれぞれ有する。調整光学系(200)及び(204)の目的は、試料(220)の空間的に一様な照明を提供することである。
【0022】
図10は、本発明とともに使用するための落射照明光学システムを例示する。LED(1000)は、レンズ(1004)によって平行にされ、二色性ミラー(1006)に、次いで対物レンズ(1008)に導かれる照明ビーム(1002)を生成する。照明ビーム(1002)からの光は、試料(1010)上に焦点を合わされ、そこで蛍光ラベルが励起されて蛍光信号を放射する。対物レンズ(1008)によって収集された蛍光信号は、二色性ミラー(1006)を通り、オプションとして放射フィルタ(1012)を通って、次いで光応答性表面(1014)に、この例示では市販の携帯情報端末Zire 72 Palm Pilotのカメラに導かれ、試料を観察するための表示部も含む。対物レンズ(1008)と放射フィルタ(1012)との間の光路に沿って付加的な二色性ミラーを追加することによって、付加的な照明ビームを追加することができる。
【0023】
II.分別励起可能なプローブ
別の態様では、本発明は、試料内の複数の異なる被分析物の1つ又は複数のラベル付けで使用するための分別励起可能なプローブの組成を提供する。一般に、本発明のプローブ組成は、各々が異なる被分析物と特異的に結合することができる、被分析物−特異的プローブの混合物を含み、それぞれのプローブは、(a)結合条件のもとで細胞被分析物などの被分析物に特異的な結合化合物によって、及び(b)結合化合物に光ラベルを付けられることで特徴づけられ、それぞれの異なるプローブの光ラベルは、異なる励起帯域を有し、すべてのプローブの光ラベルは、同じ波長範囲内の光信号を放射する。普通、後者の波長範囲は、励起帯域のいずれとも重複しない。好ましくは、光ラベルは、蛍光信号を生成することができる蛍光染料などの蛍光ラベルである。しかしながら、暗視野照明条件のもとで使用されるときには、プラズモン共鳴粒子などの他の光ラベルが、本発明とともに使用されてもよい。一態様では、本発明のプローブ組成は、複数の異なる被分析物の各々に対して特異的な少なくとも1つのプローブを含む。別の態様では、そのような複数は、2から8の範囲内であり、又は別の態様では、2から4の範囲内であり、又は別の態様では、2から3の範囲内であり、別の態様では、そのような複数は、少なくとも3であり、又は3から4の範囲内である。本発明のプローブ組成の重要な特徴は、その組成の異なるプローブでラベルを付けられた試料内の被分析物が、そのような光ラベルに特異的な照明ビームを使用するそれぞれのプローブの光ラベルの連続的な励起によって、連続的に検出することができることである。通常、そのような連続的な励起は、それぞれの照明ビームが別々の時間間隔で試料に導かれるときという点において、時間的に重複しない。言い換えれば、照明ビームは、一度に1つずつ試料に連続的に導かれる。好ましくは、操作時には、それぞれの励起からの光信号は検出器の光応答性表面に撮像され、画像データが生成され、分析のために保存される。プローブの光信号が狭い波長範囲に制限されるときは、光路内のレンズの色収差に起因する画像劣化が減される又は除去される。
【0024】
本発明のプローブ組成の一実施形態の操作の原理は図3で例示され、2つのプローブから成る本発明の組成の光ラベルの励起及び放射スペクトルを示す。第1のプローブは蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いる光ラベルを有し、ドナー分子は吸収又は励起スペクトル(300)(破線曲線)及び放射スペクトル(302)(実線曲線)を有し、アクセプタ分子は重複する(302)吸収スペクトル(304)(破線曲線)及び放射スペクトル(306)(実線曲線)を有する。第2のプローブは、光ラベルとして吸収スペクトル(310)(破線曲線)及び放射スペクトル(312)(実線曲線)を有する蛍光分子を有する。破線(320)は、光信号が収集される範囲の最高波長境界を示す。従って、第1及び第2のプローブでラベルを付けられた試料が、示されるような波長範囲を有する第1の照明ビーム(330)で照らされるときはいつでも、アクセプタ分子放射(306)から成る第1の光信号が収集され、そのような試料が、示されるような波長範囲を有する第2の照明ビーム(340)で照らされるときはいつでも、同じ波長範囲内だが、放射(312)から成る第2の光信号が収集される。第1のプローブに対する例となるドナー−アクセプタ対は、シアニン3−アロフィコシアニン(Cy3−APC)であり、第2のプローブの例となる光ラベルは、シアニン5(Cy5)である。3プローブ組成に対する例となる光ラベルは、シアニン7(Cy7)(第1のプローブに対するドナー及びアクセプタとして)、APC−Cy7(第2のプローブに対するドナーとしてのAPC及びアクセプタとしてのCy7)、及びPE−Cy7(第3のプローブに対するドナーとしてのPE及びアクセプタとしてのCy7)を含む。
【0025】
2ラベル及び3ラベルプローブに対するさらなる例となる組成は、それぞれ図4A(以下で述べられる)及び4Bで例示される。図4Bは、3蛍光染料に対する励起及び放射波長プロフィール及び本発明のプローブ組成の関連する照明ビームの波長帯域を例示する。染料は、励起プロフィール(422)及び放射プロフィール(428)を有するペリディニンクロロフィルタンパク質(PerCP)、励起プロフィール(424)及び放射プロフィール(430)を有するフィコエリトリン−Cy5(PECy5)複合体、及び励起プロフィール(426)及び放射プロフィール(432)を有するアロフィコシアニン(APC)である。そのような染料は、PerCPに対しては約420〜470nm(434)、PECy5に対しては約515〜550nm(436)、及びAPCに対しては約590〜640nm(438)の範囲内の波長を有する照明ビームを印加することによって連続的に励起することができる。そのような照明ビームは、LED、例えばLuxeon Star Royal Blue、Green、及びRed−Orange LEDのそれぞれによって生成することができる。プローブによって生成される蛍光信号は、約650nmより上だけの光を透過する帯域通過フィルタ(440)を使用して散乱光から都合よく分離される。上述の染料は、従来技術(例えば、非特許文献26を参照)を使用して、抗体などの結合化合物に容易に接合される。
【0026】
別の態様では、プローブ組成は、プラズモン共鳴粒子(PRP)でラベルを付けられた結合化合物を含む。そのようなプローブ組成は、PRPからの散乱光だけが収集されるように、暗視野照明システムとともに使用されるとき特に有用である。本発明のプローブ組成とともに使用するのに適するPRPは、参照により組み込まれる次の参考文献、即ち非特許文献27、Schltzらの特許文献1、Proberらの特許文献2及び同様のもので開示される。この実施形態では、PRPは、各々が明確な照明ビームからの光を最大限に散乱させるように選択される。
【0027】
III.全血測定のためのキュベット
本発明の態様では、使い捨てキュベットは、全血について測定を行うための本発明のシステムとともに使用するために提供される。一実施形態では、そのようなキュベットは、決定できる容積内の所定の血球の種類、例えば非赤血球を数えるために使用され、従って、そのような所定の細胞種類の細胞計数又は濃度のどちらかを読み出し情報として与えることができる。一般に、本発明の使い捨てキュベットは、(a)全血の試料を受け取ることができる試料チャンバーであって、その試料チャンバーは、本体内に配置され、細胞被分析物に付けられたプローブによって生成される光信号が試料の赤血球によって妨害されないように、少なくとも1つの光学的に透過する壁及び分析されるべき非赤血球の直径と実質的に同等な垂直な寸法を有する、試料チャンバーと、(b)各々が非赤血球の異なる細胞被分析物と特異的に結合することができる複数の被分析物−特異的プローブを含むプローブ組成を形成するために試料と組み合わせることで溶解する、試料チャンバー内の乾燥試薬とを含み、それぞれのプローブは、(i)結合条件のもとで細胞被分析物に特異的な結合化合物によって、及び(ii)結合化合物に光ラベルを付けられることで特徴づけられ、それぞれの異なるプローブの光ラベルは異なる励起帯域を有し、すべてのプローブの光ラベルは同じ波長範囲内の光信号を放射する。好ましくは、そのような使い捨てキュベットは、上述のような光学システムとともに使用され、照明ビーム及び撮像光学系に関して固定位置を有するようにキュベットを受け取るための台を含む。そのような固定位置は、キュベットの試料チャンバーから光信号を収集することができるように、撮像光学系を整列させることになる。血液パラメータなどの生体液の特性を観察する又は測定するための使い捨て試料容器の設計及び加工は、参照により組み込まれる次の参考文献、即ち特許文献3〜8、及び同様のもので開示される。
【0028】
本発明のキュベットの一実施形態は、図5A〜5Cで図式的に例示される。一形態では、キュベット(500)は、ガラス、プラスチック、もしくは同様の材料、又はそれらの組合せとすることもできる本体(501)、及び通路(506)によって入口(504)に接続される少なくとも1つの試料チャンバー(502)を含む。全血測定で使用するための一態様では、試料チャンバー(502)は、5から100μL、又は5から50μLの範囲内の試料流体の容積を保持することができる。キュベット(500)は、試料が背圧の形成なしにチャンバー内に入ることを可能にするために、試料チャンバー(502)に接続される排出口(図示されず)を含むこともできる。毛管作用、吸引、遠心力、及び同様のものなどの、試料を試料チャンバー(502)内に入れるための代替接近方法も用いることができる。キュベット(500)の重要な特徴は、例えば、選択された細胞種類の画像データから濃度決定を行うことができるように、既定の又は決定できる容積(512)からの光信号の収集である。容積(512)は、キュベット(500)の上部壁(514)と底部壁(516)との間の距離(例えば、図5Cでの528)ならびに光信号が収集される円錐(508)及び方向(510)によって示される、撮像光学系の面積、即ち視野(507)によって定義される。この実施形態での本発明の光学システムの重要な特徴は、容積(512)内のすべての物体からの光信号が収集されるように、対物レンズの被写界深度が、上部壁(514)と底部壁(516)との間の距離(528又は518)以上であることである。好ましくは、上部壁(514)は、収集のために光信号を通すのに適しており、底部壁(516)と実質的に平行である。他の実施形態では、本発明のキュベットは、例えば、試薬を保持するための及び/又は見る前に試料をそのような試薬と混合するための付加的なチャンバーを含むことができる。一態様では、本発明のキュベットは、試料チャンバー(502)内に直接配置されるか、又は他の実施形態では、試料チャンバー(502)へ移す前に活性化し、試料と混合するための別個の混合チャンバー内に含まれる、例えば、プローブ組成、塩類、緩衝剤、必要ならば溶解剤、及び同様のものを含む乾燥試薬をさらに含む。
【0029】
上述のように、試料チャンバー(502)の上部壁(514)と底部壁(516)との間の距離は、全血試料の分析にとって重要である。その距離、例えば図5Bの(518)が大きすぎる場合、除核赤血球(520)は関心のある細胞種類(522)から生成される通過光信号を妨害する(526)可能性があり、その場合には、そのような細胞は数えられない可能性があり、細胞数又は濃度の過小評価をもたらす。本発明によると、及び図5Cで例示されるように、試料チャンバー(502)の上部壁(514)と底部壁(516)との間の距離(518)は、除核赤血球の妨害層が、関心のある細胞(522)と上部壁(514)との間で形を成すことができず、光信号(524)がすべて試料チャンバー(502)から撮像光学系へとなるように、関心のある細胞種類(522)の直径又は有効直径と実質的に同等である。一態様では、試料チャンバー(502)は、撮像光学系の被写界深度と実質的に同等な距離(518)を有する。別の態様では、試料チャンバー(502)は、10から100μm、又は10から50μm、又は20から50μmの範囲内の距離(518)を有する。
【実施例】
【0030】
この実施例では、本発明とともに使用するための撮像システムは、様々な試料内の細胞又は粒子を数えることによって、構成され、検査された。システムは、図1で示されるものに従った設計を有した。2つの異なるグレースケールカメラが、検出器として用いられた。第1のものは、正方形の6.45μm画素で1392×1024画素を有する、Sensovation Samba EZ140 TC冷却(周囲よりも20℃低い)カメラであった。第2のカメラは、1024×768の正方形(4.65μm)画素を有する、Point Grey Research Dragonfly2産業用ビジョンカメラであった。2つの撮像レンズ設計のどちらかが使用された。1つの設計は、それらの間に励起フィルタが置かれた一対の二重球面レンズであった。このシステムは、比較的高いN.A.(約0.33)を保有し、約2mmまでの視野に対してよく働いた。この距離を越えると、非点収差のひずみが顕著であり、画像フィールドが増加するとともに急速に増加する。この条件に対処するために、第2のレンズ設定が用いられた。これは、1つの混成非球面素子及び1つの超低分散素子を有する、市販のカメラレンズ(ニコン 18〜55mm f/3.5〜5.6G ED AF−S DX Zoom(登録商標))であった。このレンズは、約0.1のより低いN.A.を有するが、優れた低分散及びより良好な被写界深度を有し、検出可能な非点収差なしで4mmの視野を越える撮像を可能にした。この光収集効率の減少は、細胞計数に対する精度のどんな検出可能な低下も引き起こすには十分ではなかった。Dragonfly2カメラ及びニコンDXズームレンズを用いた設計は、コスト及び画像品質に対して好ましい構成である。
【0031】
LED光源又は照明器は、ランプ筐体内に自身の励起フィルタをそれぞれ取り付けられた。プロピジウムヨウ化物(PI)又はフィコエリトリン/フィコエリトリン(PE/PE)縦列照明の場合には、ランプは、ランバーシアン(Lambertian)放射パターン、505nmの公称ピーク波長(±30nmのスペクトル半値幅)、及び700mA電流で570mWの公称光束を有する、Luxeon V Star Cyan LEDである。励起フィルタは、ChromaからのHQ510/50フィルタである。SYTO 17又はAPC励起に対しては、ランプは、617nmの公称ピーク波長(±18nmのスペクトル半値幅)及び1400mA電流で600mWの公称光束を持つ、Luxeon III Star Red−Orange LED(ランバーシアン放射パターン)である。Chroma HQ610/30放射フィルタは、Red−Orange光に対して使用された。LEDは、最大定格電流よりも低いところで使用された。特に、別に明記しない限り、Cyanは500mAで(最大光束の約75%で)及びRed−Orangeは700mAで(最大光束の約55%で)使用された。図2で例示されるように、励起光からのLED素子パターンを滑らかにするために、ホログラフィックディフューザ(角度15°、Edmunds Scientificから)が、LEDの前に置かれた。光は、焦点距離25mmのレンズの対によって、試料撮像領域上に焦点を合わされた。
【0032】
この研究全体にわたって、ビーズ、細胞又は他の粒子を識別するため、及び蛍光強度及び粒径に関してそれらをパラメータ化するため、画像を処理し、分析するためにソフトウェアアルゴリズムを使用することが必要であった。画像処理は、最初の未加工データの完全性を維持するために極小に保たれ、画像上の照明強度の変化を補償するために画像を縮尺比に従って拡大することから成るだけであった。特に、これは平均の全画像背景と比較される局所的背景を使用して、それぞれの画素を縮尺比に従って拡大するアルゴリズムから成った。局所的背景の寸法は、関心のある粒子の期待される寸法範囲及び画素当たりで表わされる距離(画像の拡大後)を考慮に入れるのに適するように変更された。例えば、それぞれの画素が試料の4μmを表し、3から8μmの直径のビーズの及び7から15μmの直径の細胞に対するこの研究での最も一般的な場合には、60μm(15画素にわたる)の窓がこの例となるシステムで非常によく働くことが見いだされたが、一方処理のために過度のCPU時間を消費することはなかった。画像が、照明の変化を補償された後、別のアルゴリズムは、不規則雑音、外来粒子(ほこり、その他)及び試料チャンバーの構造的パターン(例えば、ヘマサイトメータの罫書き線)からの偽陽性を回避するように設計された統計的規則を満足する局所的強度最大を識別することによって、関心のある粒子を探索した。最初に、そのアルゴリズムは、背景雑音よりもすべて少なくとも1.5標準偏差が高い画素の輪によって囲まれる、背景雑音よりも少なくとも3標準偏差が高く、それに続く減少する強度(統計的雑音変化を許容する)の輪を有する局所的最大(明るい画素)を探す。複製粒子識別を抜粋し、妥当な標準偏差値を調べるための追加の検査が含まれる。粒子が識別されるとき、別のアルゴリズムは、この適合アルゴリズムに対して最適化されたガウス表現の形に最急降下適合アルゴリズムを使用して、粒子の強度プロフィールに対する最良適合の簡単な(円形、非楕円の)ガウス曲線を見いだす。それぞれの識別された粒子に対して、高さ、半径、オフセット及びX−Y位置の標準パラメータが、報告され、適合統計量(二乗残差及びカイ二乗の合計)と一緒に記録される。粒子は次いで、それらを異なるサイトメトリ個体群に分けるために、それらの半径、高さ及び積分強度(ガウス曲線の下の容積)に基づいて分類される(又は「ゲートでコントロールされる」)。
【0033】
感度は、ビーズ当たり低量の結合フィコエリトリン(PE)分子を有する各種の特別に準備されたビーズを使用して実証された。これらの粒子は、ビーズ当たり非常に低レベルのPE分子が結合された安定なビーズを生成する比での、PEでラベルを付けられたCD3抗原(CD3−PE)に特異的な抗体とビオチンでラベルを付けられたCD3抗原(CD3−ビオチン)に特異的な抗体との混合物で培養された、BD α−Mouse−Igκ Compensation Beads(Becton Dickinson p/n 552843)を培養することによって準備された。ビーズは、Dragonfly2 CCDカメラ(Point Grey Research、Vancouver、BC)を用いて、様々な露光期間及び内部利得設定で撮像された。結果として得られるビーズに対する粒子当たりのPE分子の数は、PE Quantibriteビーズ(Becton Dickinson p/n 30495)に対して縮尺比に従って拡大することによって決定された。この研究では、最も薄暗いビーズの準備(図6Aで示される)は、粒子当たり825PE分子をもたらし、高利得(24dB)及び中間露光期間(1s)で背景雑音から検出可能であった。825PE分子ビーズは、検査された最も薄暗い粒子であって、任意のDNAに基づく細胞計数分析(細胞当たり数十万の蛍光プローブ)、T細胞上のCD3及びCD4抗原などの最も関連する細胞表面マーカー(それぞれ、細胞当たり約150、000及び約50、000PE分子で染色)、ならびに寄生虫検出及びビーズに基づく臨床分析、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、非特許文献28で開示されるサイトメトリビーズ配列を含む多くの他の応用を満足するための適正なレベルを超える感度を表す。
【0034】
電子検出器(この1つを含む)に対するダイナミックレンジは、最初にA−D変換器のダイナミックレンジによって設定され、次いで信号雑音によって低減される。Dragonfly2カメラの12ビットA−D変換器は、理論的最大ダイナミックレンジを単一画像内で1〜4096に設定する。Dragonfly2カメラに対して雑音特性が調べられ、2つの主な寄与は、読み出し雑音及び暗電流であった。これらは、0から24dBの利得及び0から10秒に及ぶ露光時間で取得された画像を分析することによって測定された。画像内の雑音の計算強度を適合させることで、それぞれの利得設定に対する読み出し雑音及び暗電流の値をもたらした。雑音は、利得とともに線形に増加し、測定条件の実際の範囲に対しては、0dB利得での0.1s露光に対する1.62ビットから24dB利得での10s露光で6.24ビットまで費やした。これは、単一画像のダイナミックレンジを最良の場合に対しては1〜1334まで又は最悪の場合に対しては1〜54まで低減する。試料がカメラの前で静止したままである、このシステムに対しては、機器の有効ダイナミックレンジは、CCD利得設定及び露光期間をオンザフライで変えながら多重画像を取得することによって、かなり高めることができることに留意されたい。強度は、露光期間及びCCD倍率に直接比例するから、実際の条件のもとでは、利用可能なダイナミックレンジを2から3桁の大きさだけ増加させる。
【0035】
約100倍の強度変化に及ぶ、PE Quantibriteビーズは、これを検査するために使用された。PE Quantibriteビーズは、各々がビーズ当たり特定の平均PE分子数を有する4個体群のビーズの混合物から成る。このようにして、検出器はPE分子に関して絶対強度値に較正することができる。従って、最も明るい個体群は(平均で)ビーズ当たり66408PE分子を含み、次の個体群はビーズ当たり31779PE分子を含み、その後にビーズ当たり8612及び863PE分子が続く。PE Quantibriteビーズは、0.1から20秒の一連の増加する露光期間及び利得設定の範囲(1〜15×倍率)で撮像された。期間及び利得が増加するにつれて、ダイナミックレンジの窓は、すべてのビーズが測定されるまで、増加する強度レベルで、それぞれのビーズを順に検出するように動いた(図9)。この方法では、最良適合線の傾きは、ビーズ当たりのPE分子数に比例し、単一画像のみを使用するよりもより正確な値を与える。
【0036】
デバイスについて調べられた最初の応用は、容積測定室内の培養細胞の絶対計数であった。生存/死亡分析は、非透過性のプロピジウムヨウ化物(PI)染料が死亡細胞を染色し、透過性SYTO−17染料がすべての細胞を染色する、機器の2色励起及び共通放射範囲の態様に従って設計された。PIは、510/50帯域通過フィルタの後ろの505nm(Cyan)LEDで励起され、SYTO−17は、610/30帯域通過フィルタの後ろの617nm(Red−Orange)LEDで励起された。使用された放射フィルタは、PI放射スペクトルの約3分の1及びSYTO−17放射スペクトルの2分の1を包含する、720/150帯域通過フィルタであった(次のもの、即ちPI吸着スペクトル(400)、PI放射スペクトル(402)、SYTO−17吸収スペクトル(404)、SYTO−17放射スペクトル(406)、第1の励起波長範囲(408)、第2の励起波長範囲(410)、及び光信号が収集される波長範囲(412)が例示される図4Aを参照)。
【0037】
3細胞線(A549、HeLa及びU20S)ならびにDNA QC粒子(ひよこ赤血球核及び子牛胸線核を含む、Becton Dickinson p/n 349523)が、研究で使用された。DNA染色は、細胞表面マーカー又はPE Quantibriteビーズと比べて著しく明るいから、機器感度は、露光時間、利得又は励起LED電流のいずれかを減少させることによって低減された(それらのすべては、満足のいく結果をもたらした)。画像品質及び忠実度は、PI及びSYTO−17染色の両方に対して優れていた(図6A)。SYTO−17は、生存細胞膜を通り抜けることができ、一方PIは、いくらかの構造的完全性を失った膜を通り抜けることができるだけである。死にかけている細胞の膜透過性が増加するにつれて、核のPI染色は増加する。従って、これらの細胞でのPI染色対SYTO−17染色の平衡は、PIがSYTO−17をDNAから置き換えるにつれて、約1:1から数倍高いPI強度にまで及ぶ。
【0038】
生存及び死亡細胞は、全細胞計数と同様、生存及び死亡細胞計数を別々に決定するために、結果として得られる画像で区別された。一研究では、最近トリプシン処理され、培養フラスコから分離された、A549細胞は、50から500細胞/μLまで及び濃度でDMEM細胞媒質内にくぎ付けにされた。それぞれの試料は、10μM SYTO−17+10μM PIで10分間培養され、次いでそれぞれの試料からのアリコートが、ヘマサイトメータ室内に移された。試料は、上述のようにヘマサイトメータ室内で撮像され、画像は、生存、死亡及び全細胞計数のために分析された。線形性結果は、優れており(図6Bを参照)、3つの計数はすべて、0.99以上のR2値を有した。これは、分析及びゲートでコントロールするアルゴリズムの改善によって解決することができるが、画像分析アルゴリズム又はゲートでコントロールする処理の最適化は行われず、偽陽性からの約25細胞/μLの背景計数は明らかであった。
【0039】
上述のシステムは、血液試料内のCD4+細胞を検出し、数えるために使用された。溶解血液細胞に対して、結果はCD3、CD4及びCD45陽性細胞を数えるためのフローサイトメトリと比べて全く引けを取らない。図7A〜7B及び8A〜8Bで示されるデータによって例示されるように、優れた画像品質を有する蛍光ラベル付き抗CD3及び抗CD4抗体をそれぞれ追加することによって、CD3及びCD4細胞表面マーカーの両方が全血内の細胞を識別するために使用された。
【0040】
上述のシステムの性能は、従来のビーズに基づく免疫分析からの光信号を数え、定量化することによって、さらに検査された。インターロイキン2(IL−2)を測定するための、BD Biosience(San Jose、CA)サイトメータビーズ分析(CBA)からのビーズは、例えば非特許文献28の製造者手順を使用して、いくつかの濃度のIL−2と組み合わされ、ラベル付き抗IL−2抗体で染色された。ビーズからの信号をフローサイトメータで分析する代わりに、ラベル付きビーズは、上述のシステムで撮像され、その後それらが数えられ、信号強度に従って分類された。結果は、図9で例示される。
【0041】
定義
一般に、別に特に定義されずに、本明細書で使用される術語は、次の専門書、即ち非特許文献21、22、29、30及び同様のもので表わされるなどの、分析化学、生化学、分子生物学、細胞生物学、顕微鏡法、画像分析、及び同様のものを含む、本発明に関連する分野でのそれらの慣例的用法に対応する意味を有する。
【0042】
「被分析物」は、その存在もしくは不在が検出されるべき、又はその量が測定されるべき、試料中の物質、化合物、又は組成を意味する。被分析物は、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、有機分子、ハプテン、エピトープ、生体細胞の一部分、タンパク質の翻訳後修飾、受容体、複合糖類、ビタミン、ホルモン、及び同様のものを含むが、それらには限定されない。単一の分子的実体と関連する1つより多くの被分析物、例えば同じタンパク質上に異なるリン酸化部位があってもよい。
【0043】
「抗体」又は「免疫グロブリン」は、特定の抗原又は抗原決定基と特異的に結合することができる、自然な又は組み換えもしくは化学的手段によって合成的に生成される、タンパク質を意味する。抗体は普通、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から成る、約150、000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。それぞれの軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結され、一方ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンイソタイプの重鎖間で変化する。それぞれの重鎖及び軽鎖はまた、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。それぞれの重鎖は、一端部に可変領域(VH)を有し、その後に多数の定常領域が続く。それぞれの軽鎖は、一端部に可変領域(VL)及びもう一方の端部に定常領域を有する、即ち軽鎖の定常領域は、重鎖の第1の定常領域と整列させられ、軽鎖可変領域は、重鎖の可変領域と整列させられる。定常領域は、抗体を抗原に結合する際には直接には含まれない。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なる部類に割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要な部類、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、それらのいくつかは、下位分類(イソタイプ)、例えば、IgG、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分割することができる。本明細書で使用されるような、「抗体フラグメント」及びそれのすべての文法的変形は、抗原結合部位又は無傷の抗体の可変領域を含む無傷の抗体の一部分として定義され、その一部分は、無傷の抗体のFc領域の定常重鎖領域(即ち、抗体イソタイプに応じて、CH2、CH3、及びCH4)がない。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、及びFvフラグメント;ダイアボディ(diabody);(1)一本鎖Fv(scFv)分子(2)1つの軽鎖可変領域だけ、又は関連する重鎖部分なしで軽鎖可変領域の3CDRを含むフラグメントを含む一本鎖ポリペプチド及び(3)1つの重鎖可変領域だけ、又は関連する軽鎖部分なしで重鎖可変領域の3CDRを含むフラグメントを含む一本鎖ポリペプチドを制限なく含む、途切れない一連の隣接するアミノ酸残基(本明細書では「一本鎖抗体フラグメント」又は「一本鎖ポリペプチド」と呼ばれる)から成る一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体フラグメント;ならびに抗体フラグメントから形成される多特異的又は多価構造を含む。本明細書で使用されるような術語「単クローン抗体」(mAb)は、実質的に同質の抗体の個体群から得られる抗体を参照する、即ちその個体群を構成する個々の抗体は、少量存在することがある自然に生じる可能な突然変異を除いて同等である。単クローン抗体は、非常に特異的であり、単一抗原部位に向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に向けられる異なる抗体を典型的に含む、従来の(多クローン性の)抗体準備と対照的に、それぞれのmAbは、抗原上の単一決定基に向けられる。それらの特異性に加えて、単クローン抗体は、それらが、他の免疫グロブリンによって汚染されずに、ハイブリドーマ培養によって合成することができるという点で有利である。免疫分析で使用するための抗体の生成及び選択における指針は、容易に利用できる教科書及びマニュアル、例えば、非特許文献31〜33、及び同様のもので見いだすことができる。
【0044】
「抗原決定基」又は「エピトープ」は、単一の抗体分子が結合する分子、普通はタンパク質の表面上の部位を意味する、即ち、一般にタンパク質は、いくつかの又は多くの異なる抗原決定基を有し、多くの異なる特異性の抗体と反応する。好ましい抗原決定基は、タンパク質のリン酸化部位である。
【0045】
「結合化合物」は、特定の標的分子と特異的に結合することができる化合物を意味する。結合化合物の例は、抗体、レクチン、核酸、アプタマー、及び同様のものを含む(例えば、非特許文献34、35を参照)。
【0046】
本明細書で使用されるような「複合体」は、お互いに直接的又は間接的に接触する分子の集団又は集合を意味する。一態様では、分子の複合体に関連する、又は特異性もしくは特異的結合に関連する「接触」又はさらに明確には「直接接触」は、ファンデルワールス力、水素結合、イオン性及び疎水性相互作用、ならびに同様のものなどの引力非共有相互作用が、分子の相互作用を支配するように、2つ以上の分子が十分に接近することを意味する。そのような態様では、分子の複合体は、分析条件のもとでは複合体が、その構成分子の非集合又は非複合状態よりも熱力学的により好都合であるという点で安定である。本明細書で使用されるように、「複合体」は普通、2つ以上のタンパク質の安定な集合を参照する。一態様では、「複合体」は、標的タンパク質の抗原決定基と特異的に結合された抗体などの2つのタンパク質の安定な集合を参照する。
【0047】
「乾燥試薬」は、改善された保管寿命、運搬及び取扱の容易さ、改善された貯蔵、ならびに同様のもののために、脱水処方で提供される、緩衝剤、塩類などの分析試薬、酵素、共同因子、及び同様のものなどの活性化合物、又は抗体、アプタマー、もしくは同様のものなどの結合化合物を意味する。乾燥試薬の性質、組成、及び生成方法は、大きく異なり、そのような材料の処方及び生成は、参照により組み込まれる次の参考文献、即ちFrankらの特許文献9、Coleの特許文献10、Shenらの特許文献11、Tremlらの特許文献12、De Roiserらの特許文献13、Buhlらの特許文献14、McMillanの特許文献15、McMillanらの特許文献16、非特許文献36、37、及び同様のものによって証明されるように、当業者には既知である。乾燥試薬は、様々な方法で製造される、固体及び/又は半固体微粒子、粉末、錠剤、結晶、カプセル及び同様のものを含むが、それらには限定されない。一態様では、乾燥試薬は、凍結乾燥微粒子である。凍結乾燥微粒子は、一様な組成を有することができ、それぞれの微粒子は、同じ組成を有する、又はそれらは異なる組成を有する2つ以上の異なる種類の凍結乾燥微粒子が一緒に混合されるような異なる組成を有することができる。凍結乾燥微粒子は、免疫分析、酵素に基づく分析、酵素基質分析、DNAシークエンシング反応、及び同様のものを含む、多種多様の分析及び生化学反応のすべて又は一部分のための試薬を含むことができる。一態様では、本発明の凍結乾燥微粒子は、賦形剤及び少なくとも1つの分析の試薬を含む。凍結乾燥微粒子は、実施される分析の種類、所望の反応容積、所望の溶解速度、及び同様のものによって決定することができ、所定の寸法及び形状で製造することができる。乾燥試薬は賦形剤を含むことができ、それは通常、その材料に適切な整合性又は形を与えるために、材料に加えられる不活性物質である。大多数の賦形剤は、当業者には既知であり、多数の異なる化学構造を含むことができる。本発明で使用することができる賦形剤の例は、蔗糖、ブドウ糖、トレハロース、メレジトース、デキストラン、及びマンニトールなどの炭水化物;BSA、ゼラチン、及びコラーゲンなどのタンパク質;ならびにPEG及びポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマーを含む。凍結乾燥微粒子内の賦形剤の全量は、単一又は多重化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、賦形剤の種類は、乾燥試薬の吸湿量を制御する因子である。吸湿を低くすることで、乾燥試薬の完全性及び抗凍結剤能力を高めることができる。しかしながら、そのような組成からすべての水を除去することは、適切な配座を維持するためにある程度の量の結合水を必要とするそれらの反応成分、例えばタンパク質に悪影響を及ぼすであろう。
【0048】
「読み出し情報」は、数もしくは値に変換することができる、測定される及び/又は検出される1つのパラメータ又は複数のパラメータを意味する。いくつかの文脈では、読み出し情報は、そのような収集された又は記録されたデータの実際の数値表現を参照してもよい。例えば、マイクロアレイからの蛍光強度信号の読み出し情報は、マイクロアレイのそれぞれの混成部位で生成される信号の位置及び蛍光強度であり、従って、そのような読み出し情報は、例えば、マイクロアレイの画像として、数値表として、又は同様のものとして、様々な方法で記録され又は保存することができる。
【0049】
「試料」は、標的細胞、粒子、ビーズ、及び/又は被分析物の検出又は測定が求められる、生物学的、環境的、医学的、又は患者の源からの材料量を意味する。術語「試料」は、生物学的試料、例えば血液量、微生物培養物、もしくは同様のもの;環境的試料、例えば土壌もしくは水試料;医学的試料もしくは検体、例えば血液量もしくは組織;又は同様のものを包含する。試料は、合成起源の検体を含むことができる。生物学的試料は、乳製品、野菜、肉類及び肉類副産物、ならびに廃棄物などの、液体及び固体の食料及び飼料の製品及び原料と同様に、人間を含む動物の流体、固体(例えば、排せつ物)又は組織とすることができる。生物学的試料は、培養物、血液、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳液、リンパ液、痰、精液、針吸引物、及び同様のものを含むが、それらには限定されない、患者から取得される材料を含むことができる。生物学的試料は、有蹄動物、クマ、魚、げっ歯類、その他のような動物を含むが、それらには限定されない、野生の又は自然なままの動物と同様、家畜の様々な群のすべてから得ることができる。環境的試料は、食料及び牛乳の処理機器、装置、器材、用具、使い捨て及び非使い捨て種目から得られる試料と同様に、表面物質、土壌、水及び産業用試料などの環境物質を含む。これらの例は、本発明に適用できる試料の種類を限定するものとして解釈されるべきではない。術語「試料」及び「検体」は、交換可能に使用される。
【0050】
1つの分子の別の分子との結合に関連して「特異的な」又は「特異性」は、その分子の他の分子との実質的により少ない認識、接触、又は複合体形成とともに、2つの分子間の安定な複合体の認識、接触、及び形成を意味する。一態様では、第1の分子の第2の分子との結合に関連して「特異的な」は、第1の分子が反応物又は試料内の別の分子との複合体を認識し、形成する範囲では、それが、第2の分子と最大数の複合体を形成することを意味する。好ましくは、この最大数は、少なくとも30パーセントである。一般に、特異的な結合事象に含まれる分子は、それらの表面上に、及び/又は空洞内のタンパク質の場合には、お互いに結合する分子間の特異的な認識を生じさせる領域を有する。特異的な結合の例は、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドの間での二本鎖又は三本鎖の形成、受容体−配位子相互作用、ならびに同様のものを含む。本明細書で使用されるように、特異性又は特異的結合に関連して「接触」は、ファンデルワールス力、水素結合、塩基の積み重ね相互作用、イオン性及び疎水性相互作用、ならびに同様のものなどの弱い非共有化学的相互作用が、分子の相互作用を支配するのに十分に、2つの分子が接近することを意味する。
【0051】
上述の教示は、本発明を例示することを意図されており、それらの詳細によって、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。本発明の好ましい例示の実施形態が述べられるが、本発明から逸脱することなく、それらの中で様々な変形及び変更がなされてもよいことは、当業者には明らかであろうし、添付の特許請求の範囲では、本発明の真の精神及び範囲内に入る、すべてのそのような変形及び変更をカバーすることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の多重特徴を撮像するためのシステムであって、前記システムは、
各々が明確な波長帯域を有する照明ビームを連続的に生成することができる1つ又は複数の光源と、
それぞれの異なる特徴が、異なる分別励起可能なラベルを付けられるような、多重特徴を含む検体にラベルを付けることができる複数の分別励起可能なラベルと、
前記異なる分別励起可能なラベルの各々が、同じ波長帯域内の光信号を連続的に放射させられるように、照明ビームを前記検体上に連続的に導くための、前記1つ又は複数の光源と操作上関連するコントローラと、
そのような放射された光信号を収集し、前記検体の前記ラベル付き特徴に対応する連続的な画像を、画像データの連続的な組を形成するための光応答性表面に形成することができる光学システムとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
血液検体内で複数の分別励起可能なラベルを付けられた非赤血球を分析するための装置であって、前記装置は、
血液検体を含み、赤血球の光妨害層の形成を妨げる光収集軸に沿った寸法を有することができる試料チャンバーと、
各々が、明確な波長帯域を有する照明ビームで前記血液検体を照らすことができる多重光源と、
前記複数の分別励起可能なラベルの各々が、同じ波長帯域内の光信号を連続的に放射させられるように、それぞれの光源の前記照明ビームを前記検体上に連続的に導くための前記多重光源に結合されたコントローラと、
そのような放射された光信号を収集し、それらに対応する連続的な画像を、画像データの連続的な組を形成するための光応答性表面に形成することができる光学システムとを含み、
画像データの前記連続的な組を分析することによって、前記血液検体内の非赤血球を数えることを特徴とする装置。
【請求項3】
試料内の複数の異なる細胞被分析物の1つ又は複数のラベル付けで使用するためのプローブ組成であって、
各々が、異なる被分析物と特異的に結合することができる、被分析物−特異的プローブの混合物を含み、それぞれのプローブは、(a)結合条件のもとで細胞被分析物に特異的な結合化合物によって、及び(b)前記結合化合物に光ラベルを付けられることによって特徴づけられ、それぞれの異なるプローブの前記光ラベルは、異なる励起帯域を有し、すべてのプローブの前記光ラベルは、[前記プローブ組成の前記光ラベルの前記励起帯域から離れた]同じ波長範囲内の光信号を放射することを特徴とするプローブ組成。
【請求項4】
非赤血球の光学的分析のための使い捨て血液収集キュベットであって、前記キュベットは、
全血の試料を受け入れるための入口を有する混合チャンバーであって、前記混合チャンバーはさらに、前記全血試料と接触して溶解することができる乾燥試薬を含み、各々が非赤血球の異なる細胞被分析物と特異的に結合することができる、複数の被分析物−特異的プローブを含むプローブ組成を含み、それぞれのプローブは、(a)結合条件のもとで細胞被分析物に特異的な結合化合物によって、及び(b)前記結合化合物に光ラベルを付けられることによって特徴づけられ、それぞれの異なるプローブの前記光ラベルは、異なる励起帯域を有し、すべてのプローブの前記光ラベルは、同じ波長範囲内の光信号を放射する、混合チャンバーと、
前記混合チャンバー内の試料が、毛管作用によって試料チャンバーに移されるように、前記混合チャンバーに流体的に接続される前記試料チャンバーであって、前記試料チャンバーは、細胞被分析物に付けられたプローブによって生成される光信号が、前記試料の赤血球によって妨害されないように、光学的に透過する壁及び垂直な非赤血球の直径と実質的に同等な寸法を有する試料チャンバーとを含むことを特徴とするキュベット。
【請求項5】
前記寸法は、関心のある細胞と前記光学的に透過する壁との間での除核赤血球の光妨害層の形成を実質的に妨げることを特徴とする請求項4に記載のキュベット。
【請求項6】
非赤血球の光学的分析のための使い捨て血液収集キュベットであって、前記キュベットは、
全血の試料を受け入れることができる試料チャンバーであって、前記試料チャンバーは、本体内に配置され、それらの細胞被分析物に付けられたプローブによって生成される光信号が、前記試料の赤血球によって妨害されないように、少なくとも1つの光学的に透過する壁及び垂直な、非赤血球の直径と実質的に同等な寸法を有する、試料チャンバーと、
各々が非赤血球の異なる細胞被分析物と特異的に結合することができる、複数の被分析物−特異的プローブを含むプローブ組成を形成するために、前記試料との組合せで溶解する、前記試料チャンバー内の乾燥試薬であって、それぞれのプローブは、(a)結合条件のもとで細胞被分析物に特異的な結合化合物によって、及び(b)前記結合化合物に光ラベルを付けられることによって特徴づけられ、それぞれの異なるプローブの前記光ラベルは、異なる励起帯域を有し、すべてのプローブの前記光ラベルは、同じ波長範囲内の光信号を放射する、乾燥試薬とを含むことを特徴とするキュベット。
【請求項7】
複数の蛍光ラベルを付けられた検体を撮像するための装置であって、前記装置は、
それぞれの発光ダイオードが明確な波長帯域を有する照明ビームを生成し、前記検体を照らすことができる1つ又は複数の発光ダイオードと、
前記複数の蛍光ラベルの各々が光信号を連続的に放射させられるように照明ビームを前記検体上に導くための、前記発光ダイオードに結合されたコントローラと、
前記放射された光信号を収集し、対応する画像を、画像データを生成するための光応答性表面に形成することができる光学システムとを含み、前記光学システムは、異なる波長を有する多重光信号を獲得することができるカラーカメラを含むことを特徴とする装置。
【請求項8】
前記1つ又は複数の発光ダイオードは、複数の発光ダイオードであり、前記光学システムは、複数の組の画像データを生成し、それぞれのそのような組は、前記発光ダイオードのうちの異なる1つによる照明に応答して生成される光信号に対応することを特徴とする請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−517046(P2010−517046A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547440(P2009−547440)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/052041
【国際公開番号】WO2008/092075
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】