説明

組成物及びその製造方法、多孔質材料及びその形成方法、層間絶縁膜、半導体材料、半導体装置、並びに低屈折率表面保護膜

【課題】低い比誘電率と高い機械的強度とを併せ持つ多孔質材料を製造でき、かつ保存安定性にすぐれる組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルコキシシラン化合物の加水分解物と、一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物と、界面活性剤と、電気陰性度が2.5以下の元素と、を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及びその製造方法、多孔質材料及びその形成方法、層間絶縁膜、半導体材料、半導体装置、並びに低屈折率表面保護膜に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物と無機化合物との自己組織化を利用することで合成される均一なメソ細孔を持つ多孔質無機酸化物は、ゼオライトなどの従来の多孔質無機酸化物に比べ、高い細孔容積、表面積などを持つことが知られており、例えばフィルム状の形態として、触媒担体、分離吸着剤、燃料電池、センサーなどへ利用することが検討されている。
【0003】
このような均一なメソ細孔を持つ酸化物の一つである多孔質シリカフィルムを光機能材料、電子機能材料など、特に半導体層間絶縁膜に用いる場合に問題となるのは、フィルムの空隙率と機械的強度との両立である。すなわち、フィルム中の空隙率を高くすると、フィルムの密度が小さくなるため比誘電率が小さくなり空気の比誘電率である1に近づくが、一方で空隙率が高くなると内部空間が増加するので、機械的強度は著しく低下する。
また、多孔質シリカのメソ細孔は、表面積が著しく大きく、その表面にシラノール(Si−OH)基を有するため、比誘電率の大きいHOを容易に吸着する。従って、この吸着が増すと、空隙率を高めることによって低下した比誘電率は逆に上昇してしまうという問題がある。
【0004】
O吸着を防止する方法として、フィルム中に疎水性官能基を導入する方法が提案されている。例えば、細孔内シラノール基をトリメチルシリル化することによって水の吸着を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、環状シロキサン化合物を金属触媒の非存在下においてSi−O結合からなる多孔質フィルムに接触させることにより、疎水性を向上できるだけでなく、機械的強度も向上できることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
これらの方法は、疎水性を向上するだけではなく、機械的強度も同時に改善できる方法であるが、環状シロキサン化合物により多孔質フィルムを処理するための特殊な装置、あるいは排ガスを処理するための設備が必要となり、より簡易な処理方法が求められていた。
【0006】
また添加物添加による性能改善を目的として、シリカ系被膜形成用組成物に、アルカリ金属化合物を含有させるという報告もある(例えば、特許文献3参照)。アルカリ金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等を挙げることができ、このアルカリ金属化合物を含有することにより、シリカ系被膜形成用組成物から形成されるシリカ系被膜の誘電率を低下させるだけでなく、機械強度を向上させることができ、さらに、多孔質フィルム組形成用組成物の保存安定性をも向上させることができると報告している。
【0007】
しかしながら、半導体分野などより精密な物性制御が必要な分野においては、多孔質フィルムの原料である多孔質フィルム形成用組成物について、より高度な保存安定性が求められる。
【0008】
以上のように、光機能材料、電子機能材料などに好適に使用できる多孔質フィルムの製造技術は進歩し、比誘電率を下げる方法や機械強度を高める改質方法が提案されているものの、より低い比誘電率とより高い機械強度との両方をともに満足する多孔質フィルムを製造する技術、及び、より保存安定性に優れた多孔質フィルム形成用組成物を作製する技術は、充分に確立されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第00/39028号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/026765号パンフレット
【特許文献3】特開2006−291107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、低い比誘電率(以下、「低誘電率」ということがある)と高い機械的強度とを併せ持つ多孔質材料を製造でき、かつ保存安定性にすぐれる組成物及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、低い比誘電率と高い機械的強度とを併せ持つ多孔質材料及びその形成方法を提供することである。
また、本発明の目的は、前記多孔質材料を含む層間絶縁膜、該層間絶縁膜を含む半導体材料、該半導体材料を含む半導体装置、及び、前記多孔質材料を含む低屈折率表面保護膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の化合物を含む組成物が上記課題を解決することを見出し、発明を完成するに至った。
即ち、上記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
【0012】
<1> (A)アルコキシシラン化合物の加水分解物と、
(B)下記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物と、
【0013】
【化1】



【0014】
〔一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、又は−C2d−1基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子であることはない。
及びRは、ケイ素原子と酸素原子とを相互に連結して環状シロキサン構造を形成する単結合を表すか、又は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、若しくは−C2d−1基を表す。
aは1〜6の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、cは0〜10の整数を表し、dは2〜4の整数を表し、nは3以上の整数を表す。〕
【0015】
(C)界面活性剤と、
(D)電気陰性度が2.5以下の元素と、
を含む組成物である。
【0016】
<2> 前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物が、環状シロキサン化合物である<1>に記載の組成物である。
【0017】
<3> 前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物が、下記一般式(2)で表される環状シロキサン化合物である<1>に記載の組成物である。
【0018】
【化2】



【0019】
〔一般式(2)中、R、R、R10、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、又は−C2d−1基、を表す。但し、R及びRが同時に水素原子であることはなく、R10及びR11が同時に水素原子であることはなく、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。
aは1〜3の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、cは0〜10の整数を表し、dは2〜4の整数を表す。
Lは0〜8の整数を表し、mは0〜8の整数を表し、nは0〜8の整数を表し、かつ3≦L+m+n≦8である。〕
【0020】
<4> 更に、(E)下記一般式(3)で表されるジシリル化合物の加水分解物を含む<1>に記載の組成物である。
【0021】
【化3】



【0022】
〔一般式(3)中、R14、R15、R16、R17、R18、及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、又は−(CH(CFCF基を表し、aは1〜3の整数、bは0〜4の整数、cは0〜10の整数を表す。
Xは、酸素原子、又は>NR20基、を表し、R20は、水素原子又は−C2e+1基を表し、eは1〜3の整数を表す。〕
【0023】
<5> 前記(D)電気陰性度が2.5以下の元素は、イオン半径が1.6Å以上の元素である<1>に記載の組成物である。
<6> 前記(D)電気陰性度が2.5以下の元素は、原子量が130以上の元素である<1>に記載の組成物である。
<7> 前記(D)電気陰性度が2.5以下の元素が、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、及びランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である<1>に記載の組成物である。
【0024】
<8> 少なくとも、アルコキシシラン化合物、触媒、及び有機溶媒を、20℃〜70℃で0.5時間〜7時間混合する工程と、
前記混合により得られた混合物に、界面活性剤を添加する工程と、
前記界面活性剤が添加された混合物を、質量が10%〜50%となるまで濃縮する工程と、
前記濃縮された混合物を、有機溶媒で希釈する工程と、
前記希釈された混合物に、電気陰性度が2.5以下である元素を添加する工程と、
前記元素が添加された混合物に、下記一般式(1)で表されるシロキサン化合物を添加する工程と、
を有する組成物の製造方法である。
【0025】
【化4】



【0026】
〔一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、又は−C2d−1基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子であることはない。
及びRは、ケイ素原子と酸素原子とを相互に連結して環状シロキサン構造を形成する単結合を表すか、又は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、若しくは−C2d−1基を表す。
aは1〜6の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、cは0〜10の整数を表し、dは2〜4の整数を表し、nは3以上の整数を表す。〕
【0027】
<9> <1>に記載の組成物を乾燥して組成物層を形成する組成物層形成工程と、
形成された組成物層を80℃〜400℃で加熱する加熱工程と、
加熱された組成物層に紫外線照射を行う紫外線照射工程と、
を含む多孔質材料の形成方法である。
【0028】
<10> 更に、前記紫外線照射工程後に、組成物層とシリル化剤との接触反応処理を行う接触反応処理工程を含む<9>に記載の多孔質材料の形成方法である。
<11> <9>に記載の多孔質材料の形成方法によって形成された多孔質材料である。
【0029】
<12> 密度が0.5g/cm〜2.0g/cmであり、
赤外吸収スペクトルの波数1800cm−1〜波数4800cm−1の範囲において、
(I)アルキル基のC−H伸縮運動に起因する明確な1つの吸収ピークを有し、
(II)SiOH基のSi−О伸縮運動に起因する吸収ピーク強度が、前記アルキル基のC−H伸縮運動に起因する吸収ピーク強度の0.30倍以下であり、
(III)HSiO基のSi−H伸縮運動に起因する明確な1つの吸収ピークを有し、その波数が2300cm−1より小さく、かつ、その強度が、前記アルキル基のC−H伸縮運動に起因する吸収ピーク強度の0.5倍〜3.0倍である<11>に記載の多孔質材料である。
【0030】
<13> <11>に記載の多孔質材料を含む層間絶縁膜である。
<14> <13>に記載の層間絶縁膜を含む半導体材料である。
<15> <14>に記載の半導体材料を含む半導体装置である。
<16> <11>に記載の多孔質材料を含む低屈折率表面保護膜である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、低い比誘電率と高い機械的強度とを併せ持つ多孔質材料を製造でき、かつ保存安定性にすぐれる組成物及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、低い比誘電率と高い機械的強度とを併せ持つ多孔質材料及びその形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記多孔質材料を含む層間絶縁膜、該層間絶縁膜を含む半導体材料、該半導体材料を含む半導体装置、及び、前記多孔質材料を含む低屈折率表面保護膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図2】実施例1に係る多孔質材料のリーク電流密度を示すグラフである。
【図3】実施例2に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図4】実施例2に係る多孔質材料のリーク電流密度を示すグラフである。
【図5】実施例3に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図6】実施例3に係る多孔質材料のリーク電流密度を示すグラフである。
【図7】実施例3に係る多孔質材料の、保管日数(storage time(d))と比誘電率kとの関係を示すグラフである。
【図8】実施例4に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図9】実施例4に係る多孔質材料のリーク電流密度を示すグラフである。
【図10】実施例5に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図11】実施例5に係る多孔質材料のリーク電流密度を示すグラフである。
【図12】実施例6に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図13】実施例6に係る多孔質材料のリーク電流密度を示すグラフである。
【図14】比較例1に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図15】比較例1に係る多孔質材料のリーク電流密度を示すグラフである。
【図16】比較例2に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図17】比較例3に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図18】比較例3に係る多孔質材料のリーク電流密度を示すグラフである。
【図19】比較例4に係る多孔質材料のFT−IRスペクトルである。
【図20】比較例4に係る多孔質材料のリーク電流密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の組成物は、(A)アルコキシシラン化合物の加水分解物(以下、「(A)成分」ともいう)と、(B)前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物(以下、「(B)成分」ともいう)と、(C)界面活性剤と、(D)電気陰性度が2.5以下の元素(以下、「(D)元素」ともいう)と、を含む。
また、本発明の一実施の形態によれば、所望の特性を有する多孔質材料は、(a)組成物の製造工程、(b)該組成物を使用した成膜工程を経ることで作製される。
すなわち、組成物の製造工程では、アルコキシシラン化合物と、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物と、界面活性剤と、電気陰性度が2.5以下である元素と、を混合する過程で、適宜、前記アルコキシシラン化合物及び前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物を加水分解する処理を行って組成物を調製する。この組成物は、更に、(E)前記一般式(3)で表されるジシリル化合物の加水分解物(以下、「(E)成分」ともいう)を含んでいてもよい。
次いで、成膜工程では、組成物を基板に塗布し、加熱後、紫外線を照射することで所望の特性を有する多孔質材料が得られる。
【0034】
さらに、本発明について詳細に述べる。
<(a)組成物の製造工程>
上記組成物を調製する方法の一例について、以下具体的に説明する。
【0035】
例えば、アルコキシシラン化合物を有機溶媒と混合し、触媒と水とを加え加水分解を行う。
これにより、アルコキシシラン化合物の加水分解物((A)成分)を含む溶液が得られる。
【0036】
前記触媒の使用量は特に制限されず、アルコキシシラン化合物の加水分解・脱水縮合を促進する量を適宜選択すればよい。好ましくは、アルコキシシラン化合物1モルに対して、触媒が0.1〜0.001モルの範囲である。加水分解に使用される水の使用量も特に制限されず、広い範囲から適宜選択できる。好ましくはアルコキシシラン化合物のアルコキシ基1モルに対して、水が1〜10モルである。
【0037】
加水分解は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜70℃の範囲で、数分〜24時間、好ましくは0.5〜7時間(より好ましくは1〜7時間)撹拌することにより行う。この範囲内であれば、加水分解反応が進まないことはなく、また、副反応を併発するようなことなく、上記アルコキシシラン化合物の加水分解物((A)成分)を含有する溶液が得られる。
ここでいう加水分解物とは、アルコキシシラン化合物の転化率が90%以上であるときの反応生成物を示す。転化率は既存の分析手法にて確認できるが、液相クロマトグラフィー(LC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により実施できる。
【0038】
次いで、(A)成分を含む溶液を撹拌しながら、上記(C)界面活性剤を添加する。(C)界面活性剤は成膜工程中にて空孔形成の役割を持つ。(C)界面活性剤の添加時における形態は特に制限されず、固体、液体、溶媒に溶解した溶液などでもよい。(C)界面活性剤の添加量は、最終的に得られる多孔質材料(例えば、多孔質フィルム)の設計性能などに応じて適宜選択することができるが、(A)成分中のSiに対して、0.002〜1倍、好ましくは0.05〜0.15倍のモル比であることが望ましい。この範囲であれば、界面活性剤が少なすぎて空孔が得られないことはなく、また、界面活性剤が多すぎて、フィルムの形成ができないこともなく、フィルム中に空孔を導入できる。
【0039】
次いで、(A)成分と(C)界面活性剤とを含む混合溶液を濃縮する。
濃縮の目的は、最終的に得られる多孔質材料の膜厚を任意の厚さに制御するため、溶液中の(A)成分の濃度を調節することと、成膜工程における塗布、加熱時にすばやく乾燥させるため、混合溶液中の水の割合を下げることである。
混合溶液の濃縮率は、最終的に得られる多孔質材料の設計性能や塗布、加熱条件によって適宜選択することができるが、好ましくは、混合溶液の質量が10%〜50%(より好ましくは15%〜30%)となるまで濃縮する。即ち、好ましくは、濃縮前の混合溶液の質量に対し、濃縮後の混合溶液の質量が10%〜50%(より好ましくは15%〜30%)となるように濃縮する。この範囲であれば、過剰に濃縮してゲルが析出することもなく、また、塗布、加熱時に成膜できないということもない。
【0040】
前記濃縮後、(A)成分が所定の濃度となるまで、有機溶媒を添加することで、所望の組成物の前駆体溶液が得られる。
次いで、この前駆体溶液に(D)元素を添加し、混合する。この際、(D)元素単体又は(D)元素を含む化合物を、単独又は複数組み合わせて添加し、混合してもよい。(D)元素を添加する目的は、(A)成分と(B)成分との反応性を高め、最終的に得られる多孔質材料の疎水性、及び、機械強度を高めるためである。
【0041】
(D)元素の添加量は、上記前駆体溶液に対して、1〜5000ppm、好ましくは、5〜100ppm、より好ましくは、10〜30ppmの範囲で添加できる。この範囲内であれば、添加量が少なすぎて反応性が低いということもなく、また、添加量が多すぎて得られたフィルムの電気特性が低下するということもない。
【0042】
次いで、(D)元素が添加された前駆体溶液に、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物(例えば、環状シロキサン化合物)を添加する。この場合、一般式(1)で表されるシロキサン化合物を単体で添加しても、有機溶媒に溶解させたものを添加してもよい。前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物は、前駆体溶液中に含まれる触媒と水とによって加水分解される。これにより、一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物((B)成分)が前駆体溶液中にて形成される。
【0043】
ここでいう加水分解物とは、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の転化率が90%以上であるときの反応生成物を示し、前駆体溶液中で前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の一部が、前記(A)成分又は前記アルコキシシラン化合物と結合したものも含まれる。前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物は、前記(A)成分又は前記アルコキシシラン化合物と結合することで、最終的に得られる多孔質材料の疎水性と機械強度を高める役割を持つ。
前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の転化率は既存の分析手法にて確認できるが、液相クロマトグラフィー(LC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により実施できる。
【0044】
前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の添加量は、最終的に得られる多孔質材料の設計性能などに応じて適宜選択することができるが、前記アルコキシシラン化合物のSi(即ち、前記(A)成分中のSi)に対して、好ましくは0.1〜100モル%、より好ましくは0.5〜50モル%、更に好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜25モル%であることが望ましい。この範囲であれば、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物が少なすぎて必要量の(B)成分が得られず、多孔質材料の性能が低下するということはなく、また、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物が多すぎて、前駆体溶液中の触媒と水だけでは加水分解反応が進行しないということはない。
【0045】
また、必要に応じ、加水分解反応を促進するために、触媒及び水を添加してもよい。加水分解は、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物を添加後、0〜100℃、好ましくは20〜70℃の範囲で、数分〜24時間、好ましくは0.5〜7時間撹拌することで良好に進行する。
【0046】
また、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物とともに、前記一般式(3)で表されるジシリル化合物を前駆体溶液中に添加してもよい。この場合、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物と混合した状態で添加しても、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物を添加する前、又は、後に添加してもよく、添加する際の形態は、単体でも有機溶媒に溶解した溶液でもいずれの方法であってもよい。
【0047】
前記一般式(3)で表されるジシリル化合物は、前駆体溶液中に含まれる触媒と水によって加水分解され、前記ジシリル化合物の加水分解物((E)成分)が前駆体溶液中にて形成される。
【0048】
ここでいう加水分解物とは、前記ジシリル化合物の転化率が90%以上であるときの反応生成物を示し、前駆体溶液中で前記ジシリル化合物の一部が前記(A)成分及び/又は前記(B)成分と結合したものも含まれる。転化率は既存の分析手法にて確認できるが、例えば、液相クロマトグラフィー(LC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により確認できる。
【0049】
前記ジシリル化合物の添加は、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の補助的な役割を示し、得られる多孔質材料の疎水性と機械強度向上に寄与する。更に、前記ジシリル化合物を含むことで、組成物の保存安定性が更に向上する。
前記ジシリル化合物の加水分解は上記環状シロキサン化合物を添加した場合と同様にして良好に実施できる。ジシリル化合物の添加量は、最終的に得られる多孔質材料の設計性能などに応じて適宜選択することができるが、上記のアルコキシシラン化合物のSi(即ち、前記(A)成分中のSi)に対して、好ましくは0.1〜100モル%、より好ましくは0.5〜50モル%、更に好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
【0050】
上記のようにして得られた前駆体溶液を0〜100℃、好ましくは20〜70℃の範囲で、数分〜24時間、好ましくは0.5〜7時間熟成することで、本発明の組成物が得られる。
【0051】
以上、本発明の組成物の製造方法の一形態について説明したが、その中でも特に好ましい一形態は、少なくとも、アルコキシシラン化合物、触媒、及び有機溶媒を、20℃〜70℃で0.5時間〜7時間混合する工程と、前記混合により得られた混合物に、界面活性剤を添加する工程と、前記界面活性剤が添加された混合物を、質量が10%〜50%となるまで濃縮する工程と、前記濃縮された混合物を、有機溶媒で希釈する工程と、前記希釈された混合物に、電気陰性度が2.5以下である元素を添加する工程と、前記元素が添加された混合物に、下記一般式(1)で表されるシロキサン化合物を添加する工程と、を有する形態である。
上記形態において、前記シロキサン化合物の添加後、更に、20℃〜70℃で0.5時間〜7時間混合することがより好ましい。
以下、上記記載の各成分について詳細に説明する。
【0052】
(アルコキシシラン化合物)
本発明の組成物は、(A)成分として、アルコキシシラン化合物(但し、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物であるアルコキシシラン化合物を除く)の加水分解物を含有する。
前記アルコキシシラン化合物は、加水分解して(及び必要に応じ重縮合して)、加水分解物((A)成分)となる。
前記加水分解物は、得られる多孔質材料の主骨格を形成する成分であり、緻密な無機ポリマーであることが好ましい。
前記アルコキシシラン化合物は、アルコキシ基(ケイ素原子に結合したアルコキシ基)の加水分解により生じたシラノール基の部位で重縮合し、無機ポリマーを形成する。このため、緻密な無機ポリマーとして(A)成分を得るためには、使用するアルコキシシラン化合物1分子中に少なくともアルコキシド基が2つ以上含まれることが好ましい。ここで、アルコキシ基は、1つのケイ素原子に2つ以上結合してもよい。また、前記アルコキシシラン化合物は、1つのケイ素に1つのアルコキシ基が結合した結合単位が、同一分子内に2つ以上含まれる化合物であってもよい。
【0053】
そのようなアルコキシシラン化合物としては、下記一般式(i)で表される化合物、下記一般式(ii)で表される化合物、及び下記一般式(iii)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0054】
Si(OR ・・・ (i)
〔式中、Rは互いに同一でも異なってもよく、それぞれ−C2a+1基、フェニル基を示し、aは1〜6の整数である。〕
【0055】
Si(OR4−x ・・・ (ii)
〔式中、Rは、−C2a+1基、フェニル基、−CF(CF)(CH)基、水素原子、フッ素原子を示し、Rは互いに同一でも異なってもよく、それぞれ−C2a+1基、フェニル基を示し、xは0〜3の整数、aは1〜6の整数、bは0〜10の整数、cは0〜4の整数である。〕
【0056】
(OR3−ySi−A−Si(OR3−z ・・・ (iii)
〔式中、y、zは互いに同一でも異なってもよく、0〜2の整数、R及びRは互いに同一でも異なってもよく、それぞれ、−C2a+1基、フェニル基、−CF(CF)(CH)基、水素原子、又はフッ素原子を示す。R及びRは互いに同一でも異なってもよく、それぞれ−C2a+1基、又はフェニル基を示し、aは1〜6の整数、bは0〜10の整数、cは0〜4の整数を示す。Aは、酸素原子、−(CH−基、又はフェニレン基を示し、dは1〜6の整数である。〕
【0057】
本発明におけるアルコキシシラン化合物としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブチルシラン等の4級アルコキシシラン;トリメトキシフルオロシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリイソプロポキシフルオロシラン、トリブトキシフルオロシラン等の3級アルコキシフルオロシラン;
【0058】
CF(CF)CHCHSi(OCH)、CF(CF)CHCHSi(OCH)、CF(CF)CHCHSi(OCH)、CF(CF)CHCHSi(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSi(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSi(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSi(OCH)、CF(C)CHCHSi(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSi(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSi(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSi(OCH)、CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)CH2CHSiCH(OCH)、CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、(CF)CF(CF)CHCHSiCH(OCH)、CF(C)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF(C)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)(C)CHCHSiCH(OCH)、CF(CF)CHCHSi(OCHCH)、CF(CF)CHCHSi(OCHCH)、CF(CF)CHCHSi(OCHCH)、CF(CF)CHCHSi(OCHCH)等のフッ素含有アルコキシシラン;
【0059】
トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリエトキシプロピルシラン等の3級アルコキシアルキルシラン;
【0060】
トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシクロロフェニルシラン、トリエトキシクロロフェニルシラン等の3級アルコキシアリールシラン;
トリメトキシフェネチルシラン、トリエトキシフェネチルシラン等の3級アルコキシフェネチルシラン;
【0061】
ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン等の2級アルコキシアルキルシラン;
【0062】
1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジメチルメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジメチルエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(ジメチルメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(ジメチルエトキシシリル)ヘキサン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン等のビス−アルコキシシラン;等を挙げることができる。
【0063】
本発明では、上記アルコキシシラン化合物から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0064】
(有機溶媒)
本発明で用いることができる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノ
ール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;
【0065】
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペ
ンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;
【0066】
エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオ
キソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;
【0067】
ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素系溶媒;等を挙げることができる。
【0068】
本発明では、上記有機溶媒から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0069】
(触媒)
本発明において、前駆体組成物溶液中で用いることができる触媒は、例えば、少なくとも1種類以上の酸性触媒又は塩基性触媒である。
【0070】
前記酸性触媒としては、無機酸や有機酸を挙げることができる。
【0071】
前記無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸、及び臭化水素酸等を挙げることができる。
【0072】
前記有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、及びリンゴ酸等を挙げることができる。
【0073】
前記塩基性触媒としては、アンモニウム塩及び窒素含有化合物を挙げることができる。
【0074】
前記アンモニウム塩としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウム等を挙げることができる。
【0075】
前記窒素含有化合物としては、例えば、ピリジン、ピロール、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、ピペラジン、1−メチルピペラジン、2−メチルピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、ピコリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、2−ピラゾリン、3−ピロリン、キヌキリジン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びトリブチルアミン等を挙げることができる。
【0076】
さらに、前記(D)元素を含む酸・塩基性化合物も全て触媒として使用することができる。
【0077】
また、前記触媒として、90〜200℃の温度範囲で熱分解する化合物(以下、「特定熱分解性化合物」ともいう)を選択することも好ましい。
このような特定熱分解性化合物は、添加時には触媒として作用せず、基板上へ塗布・昇温後に触媒として作用することができる。
また、特定熱分解性化合物添加後の組成物のpHは6.5〜8であることが好ましい。pHが6.5未満の酸性となると、触媒として求電子反応による加水分解を促進する場合があり、pHが8を超えると、添加と同時に求電子反応による加水分解を促進してゲル化を引き起こし、多孔質を半導体に利用する場合に不都合が生じる場合があるため、好ましくない。
【0078】
前記特定熱分解性化合物としては、分子内に、ウレア結合、ウレタン結合、及びアミド結合の少なくとも1つを含有する有機化合物が好ましい。
前記ウレア結合を含有する有機化合物としては、下記一般式(v)で表されるウレア化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0079】
【化5】




【0080】
一般式(v)中、R21、R22、R23、R24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、フェニル基、−C2a+1基を示し、aは1〜3の整数である。
一般式(v)で表されるウレア化合物として、具体的には、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、エチルウレア等が挙げられる。これらの中でも特に尿素が好ましい。
【0081】
また、前記ウレタン結合を含有する化合物としては、下記一般式(vi)で表されるウレタン化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0082】
【化6】




【0083】
一般式(vi)中、R31、R32、R33は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、フェニル基、−C2a+1基を示し、aは1〜3の整数である。
一般式(vi)で表されるウレタン化合物として、具体的には、メチルカーバメート、エチルカーバメート等が挙げられる。
【0084】
また、前記アミド結合を含有する化合物としては、一般式(vii)で表されるアミド化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0085】
【化7】




【0086】
一般式(vii)中、R41、R42、R43は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、フェニル基、−C2a+1基を示し、aは1〜3の整数である。
一般式(vii)で表されるアミド化合物として、具体的には、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0087】
本発明においては、上記特定熱分解性化合物として、一般式(v)で表されるウレア化合物、一般式(vi)で表されるウレタン化合物、及び一般式(vii)で表されるアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの中では、一般式(v)で表されるウレア化合物が好ましい。
【0088】
((C)界面活性剤)
本発明の組成物は、(C)界面活性剤を含有する。
前記界面活性剤としては特に制限はないが、例えば、分子量200〜5000の界面活性剤が好ましい。分子量が小さい場合には、十分な空孔が形成されないためフィルムの低誘電率化ができない場合があり、また、分子量が大きい場合には、形成される空孔が大きくなりすぎ得られるフィルムの機械強度が低下する場合がある。
好ましくは、例えば、以下の界面活性剤を挙げることができる。
【0089】
(I)長鎖アルキル基及び親水基を有する化合物。
ここで、長鎖アルキル基としては、好ましくは炭素原子数8〜24のもの、さらに好ましくは炭素原子数12〜18のものである。また、親水基としては、例えば、4級アンモニウム塩、アミノ基、ニトロソ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基等が挙げられ、なかでも4級アンモニウム塩、又はヒドロキシ基であることが好ましい。
前記界面活性剤として具体的には、次の一般式(x)で示されるアルキルアンモニウム塩が好ましい。
【0090】
2n+1(N(CH)(CH))(CH)N(CH)2L+1(1+a) ・・・ 一般式(x)
〔上記一般式(x)中、aは0〜2の整数であり、bは0〜4の整数であり、nは8〜24の整数であり、mは0〜12の整数であり、Lは1〜24の整数であり、Xは水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、HSO又は1価の有機アニオンを表す。〕
【0091】
a、b、n、m、Lが前記範囲内であり、Xが前記イオンであれば、形成される空孔がより適当な大きさとなり、空孔形成後の気相反応において対象化合物が十分に空孔内へ浸透し、目的とする重合反応が生じ易い。
【0092】
(II)ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物。
ここで、ポリアルキレンオキシド構造としてはポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、ポリテトラメチレンオキシド構造、ポリブチレンオキシド構造等を挙げることができる。
前記ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物としては、具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンブロックコポリマー;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル型化合物;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエーテルエステル型化合物;等を挙げることができる。
【0093】
本発明においては、上記界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を用いることできる。
【0094】
((D)電気陰性度が2.5以下の元素)
本発明の組成物は、(D)電気陰性度が2.5以下の元素((D)元素)を含有する。
本発明で用いる(D)元素については、上述したように、前記(A)成分と前記(B)成分との反応性を高め、最終的に得られる多孔質材料の疎水性、及び、機械強度を高める効果がある。
【0095】
この効果についての詳細な機構は明らかでないが、(D)元素によって前記(B)成分の持つ有機官能基が引き抜かれることで反応活性点となり、結果として、前記(B)成分が効率よく前記(A)成分と結合し、緻密な無機ポリマーが形成されると推定される。
【0096】
このような効果をもたらすためには、(D)元素が、Si、O、Cなどの組成物中の元素に対し、可逆的な結合状態を持つ元素であることが重要であると考えられる。そのような適切な相互作用を持つためには、Si、O、Cとは異なるポーリングの電気陰性度を持つ元素が好ましい。具体的には、Oの電気陰性度3.5より低い電気陰性度を持つ元素が好ましく、Cの電気陰性度2.5より低い電気陰性度を持つ元素がより好ましく、Siの電気陰性度1.8よりも小さい電気陰性度を持つ元素がさらに好ましい。
【0097】
また、このとき、多孔質材料中に含有される金属元素には、どのような応力、特に電気的応力が印加されても多孔質材料中に安定に存在する、といった性質が求められる。また、該金属元素には、その多孔質材料が適用される対象物において、例えば半導体装置において、多孔質材料(多孔質膜)以外の要素に悪影響を与えない、といった性質が求められる。このとき含まれる元素が通常の金属元素の場合、半導体の性能そのものに悪影響を与えてしまうため、好ましくない。
【0098】
しかしながら、半導体に悪影響を与えない元素、例えば金属ではあっても、両性元素であるAl、Zn、Sn、Pb等であれば、既に半導体装置でも使用例があり、この限りではない。
【0099】
また、(D)元素としては、多孔質膜に多少の電気的応力が加わっても移動しにくいイオン半径1.6Å以上の大きな元素が好ましい。
また、(D)元素としては、原子量では130以上、具体的には周期律表における第6周期に分類される重い元素(原子番号55以上の元素)が好ましい。
【0100】
上記した条件を満たし、本発明で使用できる代表的な(D)元素としては、例えば、B、Al、P、Zn、Ga、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Te、Rb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、及びランタノイド等を挙げることができる。また好ましくは、Cs、Ba、ランタノイド、Hf、P、Pb、Bi、Po、Se、Te、As、Rb、Al、及びSnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素である。また、これらの元素は、本発明の組成物中に少なくとも1種存在していればよい。
【0101】
上記の(D)元素を導入する方法については、(D)元素そのものを導入する方法であっても、(D)元素を含む化合物を導入する方法であってもよく、その添加方法は特に制限されるものではない。
【0102】
前記(D)元素を含む化合物としては、特に制限はなく、例えば、硝酸塩化合物、酸化物化合物、有機金属化合物、塩基性化合物が挙げられる。その他、本発明における(D)元素を含む公知の化合物であってもよい。
これらの化合物を用いて、(D)元素を導入することができる。この際、これらの化合物と、水やアルコール等の有機溶媒と、の混合物として導入することが好ましい。
【0103】
(一般式(1)で表されるシロキサン化合物)
本発明の組成物は、(B)成分として、下記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物を含有する。
【0104】
【化8】




【0105】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、又は−C2d−1基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子であることはない。
一般式(1)中、R及びRは、ケイ素原子と酸素原子とを相互に連結して環状シロキサン構造を形成する単結合を表すか、又は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、若しくは−C2d−1基を表す。
一般式(1)中、aは1〜6(好ましくは1〜3)の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、cは0〜10の整数を表し、dは2〜4の整数を表し、nは3以上の整数を表す。
【0106】
本発明の組成物が、前記(A)成分及び前記(D)元素に加え、更に一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物を含有することにより、該組成物を用いて作製される多孔質材料を疎水化することができ(即ち、比誘電率kを下げることができ)、該多孔質材料の強度を高くすることができる。更には、組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0107】
一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物、前記(A)成分、前記(D)元素、及び(C)界面活性剤を含有する本発明の組成物は、特に、組成物を用いた塗布膜に紫外線(UV)を照射することにより界面活性剤の少なくとも一部を除去して多孔質材料を形成する場合において、得られる多孔質材料の疎水性を顕著に向上させることができる。
このような効果が得られることについて推定される理由を、以下、一般式(1)で表されるシロキサン化合物と、ヘキサメチルジシロキサン等のジシリル化合物と、を対比しながら説明する。但し、本発明は以下の理由に限定されることはない。
【0108】
一般式(1)で表されるシロキサン化合物は、ケイ素原子(Si)を含まない官能基を2つ有するSi(具体的には、R及びRを有するSi)を含んでいる。
本発明では、Siを含まない官能基を2つ有するSiを「2官能のケイ素原子(Si)」ということがあり、ケイ素原子(Si)を含まない官能基を3つ有するSiを「3官能のケイ素原子(Si)」ということがある。
例えば、一般式(1)においてnが3であってR及びRが単結合でない場合は、Si−Oの繰り返し単位を3つ含んで構成される主鎖のうち、中央のSiが2官能のケイ素原子であり、両端のSiが3官能のケイ素原子である。また、一般式(1)では、2官能のSiに結合する2つの官能基(R及びR)のうち、少なくとも一方は、疎水性基(フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、又は−C2d−1基)となっている。
【0109】
一方、ヘキサメチルジシロキサン等のジシリル化合物は、3官能のSiを2つ有しており、2官能のケイ素原子は有していない。
また、ヘキサメチルジシロキサンでは、3官能のSiに結合する3つの官能基は、全てメチル基(疎水性基)である。
【0110】
本発明者等は、FT−IRを用いた調査の結果、2官能のSiに置換する疎水性基は、3官能のSiに置換する疎水性基よりも、UV耐性が高い(即ち、UV照射により遊離しにくい)との知見を得た。
従って、一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物を含有する本発明の組成物にUVを照射して多孔質材料を形成することにより、一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物の代わりにジシリル化合物の加水分解物を用いた場合と比較して、多孔質材料中により多くの疎水性基を残すことができるので、多孔質材料の疎水性を顕著に向上させることができると考えられる。
【0111】
但し、上記の記載は、(A)成分に対するジシリル化合物の加水分解物の添加により、多孔質材料の疎水性が弱められることを意味するものではない。
即ち、後述するように、一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物とジシリル化合物の加水分解物とを併用することにより、一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物のみを用いる場合と比較して、多孔質材料の疎水性及び機械的強度をより一層向上させることができる。
【0112】
なお、一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物は、上述した多孔質材料の疎水性向上の機能だけでなく、前述のとおり、(D)元素の存在下で(A)成分と結合することにより、多孔質材料の強度を向上させる機能をも有している。
更には、一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物は、組成物の保存安定性を向上させる機能をも有している。
【0113】
上記UV照射による疎水化(比誘電率低減)の観点からは、前記一般式(1)において、R及びRは、水素原子、フェニル基、−C2a+1基(aは1〜6の整数)、又は−(CH(CFCF基であることが好ましく、水素原子又は−C2a+1基(aは1〜6の整数)であることがより好ましく、水素原子又は−C2a+1基(aは1〜3の整数)であることが更に好ましく、一方が水素原子で他方が−C2a+1基(aは1〜3の整数)であることが特に好ましい。
また、前記R及び前記Rは、疎水化(比誘電率低減)及び機械的強度向上の観点より、ケイ素原子と酸素原子とを相互に連結して環状シロキサン構造を形成する単結合であること(即ち、一般式(1)で表されるシロキサン化合物が、環状シロキサン化合物であること)が好ましい。
また、本発明の効果の観点からは、前記一般式(1)中のnは、3〜8の整数がより好ましい。
【0114】
−環状シロキサン化合物−
前記環状シロキサン化合物は、炭素数1〜6(好ましくは1〜3)のアルキル基又はフェニル基からなる疎水性基と、水素原子と、ヒドロキシ基又はハロゲン原子からなる官能基と、をそれぞれ、少なくとも1つずつ有する化合物であることが好ましい。このアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができ、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれる。
【0115】
また、前記環状シロキサン化合物として、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0116】
【化9】



【0117】
一般式(2)中、R、R、R10、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、若しくは−C2d−1基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子であることはなく、R10及びR11が同時に水素原子であることはなく、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。
ここで、aは1〜3の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、cは0〜10の整数を表し、dは2〜4の整数を表す。
一般式(2)中、Lは0〜8の整数を表し、mは0〜8の整数を表し、nは0〜8の整数を表し、かつ3≦L+m+n≦8である。
【0118】
ここで、R、R、R10、R11、R12、及びR13は、前述の紫外線照射による疎水化(比誘電率低減)の観点からは、水素原子、フェニル基、−C2a+1基(aは1〜6の整数)、又は−(CH(CFCF基であることが好ましく、水素原子又は−C2a+1基(aは1〜6の整数)であることがより好ましく、水素原子又は−C2a+1基(aは1〜3の整数)であることが更に好ましく、一方が水素原子で他方が−C2a+1基(aは1〜3の整数)であることが特に好ましい。
【0119】
前記環状シロキサン化合物としては、具体的に、トリ(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、トリフェニルトリメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,2,3,4,5,6−ヘキサメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラエチル−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,2,3−トリエチル−2,4,6−トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができる。
本発明において用いられ得る環状シロキサン化合物は、これらの中から1種又は2種以上を用いることができる。上記環状シロキサンのうち、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが特に好ましい。
【0120】
(ジシリル化合物)
本発明の組成物は、ジシリル化合物の加水分解物を含有することが好ましい。
ここで、ジシリル化合物は、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の補助的な役割を果たす成分であり、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物とともに用いられることにより、得られるフィルムの疎水化と高強度化に寄与し、組成物の保存安定性を高める効果を発現する。
【0121】
この原因として推定ではあるが、前記ジシリル化合物を添加した場合、SiOを主骨格とした無機ポリマー(前記(A)成分及び前記(B)成分を含む)中に存在する未反応のシラノール基を、疎水性シリル基でキャップすると考えられる。そのため、前記ジシリル化合物を添加する効果としては、疎水性シリル基による疎水性向上効果に加え、フィルム表面にシラノール基と比較して大きな疎水性シリル基が結合することによる、「スプリングバック効果」(J. Electrachem. Soc.誌、2003年、150巻、F123頁)による機械強度向上効果が考えられる。また、無機ポリマーの末端シラノール基をキャップすることは同時に組成物中での無機ポリマーの過剰な重合を阻害するため、前記ジシリル化合物を添加する効果としては、組成物の保存安定性が向上の効果も考えられる。
【0122】
本発明の組成物がジシリル化合物を含む場合、該組成物は、特に、組成物を用いた塗布膜に紫外線(UV)を照射することにより界面活性剤の少なくとも一部を除去して多孔質材料を形成する場合において、得られる多孔質材料の機械的強度を顕著に向上させることができる。
このような効果が得られることについて推定される理由を以下に説明するが、本発明は以下の理由に限定されることはない。
即ち、前述のとおり、ジシリル化合物中の3官能のSiに置換する疎水性基は、例えば一般式(1)で表されるシロキサン化合物中の2官能のSiに置換する疎水性基よりも、UV照射により遊離し易い。このため、UV照射によりジシリル化合物は、疎水性基の少なくとも一部を失い、反応性が高い状態となる。従って、疎水性基の少なくとも一部を失ったジシリル化合物が、前記(A)成分及び前記(B)成分から形成される骨格中に組み込まれ、該骨格の機械的強度を更に向上させるものと考えられる。
以上で説明したとおり、本発明の組成物がジシリル化合物を含む場合であって、該組成物を用いた塗布膜に紫外線(UV)を照射する系においては、前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物が特に疎水性を向上させ、前記ジシリル化合物が特に機械的強度を向上させる。
【0123】
前記ジシリル化合物として、下記一般式(3)で表されるジシリル化合物が好ましい。
【0124】
【化10】




【0125】
一般式(3)中、R14、R15、R16、R17、R18、及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、又は−(CH(CFCF基を表し、aは1〜3の整数、bは0〜4の整数、cは0〜10の整数を表す。
Xは、酸素原子、又は>NR20基、を表し、R20は、水素原子又は−C2e+1基を表し、eは1〜3の整数を表す。
【0126】
このような上記一般式(3)で示されるジシリル化合物としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、等を挙げることができる。本発明において用いられ得るジシリル化合物は、これらの中から1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ジシリル化合物のうち、ヘキサメチルジシロキサンが好ましい。
また、一般式(3)で表されるジシリル化合物は、その他のシリル化合物と併用してもよい。その他のシリル化合物としては、塩化トリメチルシリル、塩化トリエチルシリル、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、トリメチルシリルジフェニルアミン等が挙げられる。
【0127】
<(b)多孔質材料の成膜工程>
本発明の多孔質材料は、上述のような本発明の組成物を基板に塗布して組成物層を形成し、形成された組成物層を加熱処理し、加熱処理された組成物層に紫外線を照射することにより得られる。また、得られた膜をシリル化剤によってシリル化してもよい。
【0128】
上記基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス、石英、シリコンウエハ、ステンレス、プラスチック等を挙げることができる。その形状も、特に制限されず、板状、皿状等のいずれであってもよい。
【0129】
上記において、基板に組成物を塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップ法等の一般的な方法を挙げることができる。例えば、スピンコート法の場合、スピナー上に基板を載置して、この基板上に塗布液を滴下し、100〜10000rpmの回転速度で行う。塗布により、基板上に、(A)成分、(B)成分、(C)界面活性剤、及び(D)元素を含むシリカゾルである前駆体材料(組成物層)が得られる。
【0130】
得られた組成物層は次の工程で加熱処理される。
該加熱処理における加熱温度は、80℃〜400℃が好ましい。
ここでいう加熱処理とは、有機溶媒、水などの揮発成分を除去することを目的とした200℃未満での加熱処理(低温加熱処理)と、空孔形成のため添加した界面活性剤を熱分解除去することを目的とした200℃以上での加熱処理(高温加熱処理)のいずれの加熱処理についても含まれる。
塗布直後の前駆体材料は、有機溶媒や水が前駆体材料中に吸着した状態であるので、低温加熱処理により、揮発成分を除去することが好ましい。
前記低温加熱処理の温度は、80〜200℃、好ましくは100〜150℃である。この温度であれば、有機溶媒、水のような揮発成分が除去され、しかも、急激な加熱によるフィルムの膨れ、剥がれ等の不都合は生じない。低温加熱処理に要する時間は、1分以上あればよいが、ある時間を超えると硬化速度は極端に遅くなるので、効率を考えれば1〜60分が好ましい。
シリカゾルを加熱させる方法としては特に制限されず、ゾルを加熱させるための公知の方法をいずれも採用できる。
【0131】
次いで、高温加熱処理を実施する。
前記高温加熱処理における加熱温度は、高温ほど界面活性剤の分解が容易となるが、半導体プロセス上の問題を考慮すれば、400℃以下好ましくは、350℃以下の温度であることがより好ましい。少なくとも200℃以上、好ましくは300℃以上の温度がプロセス時間も考慮すると好ましい。また、高温加熱は、窒素、酸素、水素、空気など、加熱雰囲気に特に制限はなく公知の方法によって実施できるが、半導体プロセスで実施する場合では、Cu配線の酸化により配線抵抗が上昇するため、非酸素雰囲気下で実施することが好ましい。ここでいう非酸化性雰囲気とは、焼成(高温加熱処理)時の酸素濃度が50ppm以下であることを示す。
【0132】
以上の観点より、本発明における加熱処理の形態としては、前述の組成物層を、まず80℃〜200℃で加熱処理し、次に300℃〜400℃で加熱処理する形態が特に好ましい。
【0133】
本発明によれば、前記加熱処理された組成物層に対し、紫外線を照射することが、低誘電率、且つ、高機械強度である多孔質材料を形成するために非常に重要である。
前記紫外線照射の効果について詳細に検討したところ、驚くべきことに、ある特定の範囲で紫外線を照射すると、比誘電率を更に低減でき、機械強度を更に向上できることがわかった。
即ち、特定の範囲で紫外線を照射すると、組成物層中では、(B)成分に含まれる、2官能のケイ素原子(Si)に結合した2つの官能基のうちどちらか1つのみ(即ち、一般式(1)中、R及びRのいずれか一方)が優先的にSiから遊離する。このとき、前述のとおり、2官能のSiに結合した疎水性基は比較的遊離しにくいため、例えば、R及びRのうち一方が水素原子で他方が疎水性基の場合には、Siからは水素原子が優先的に遊離し、Siには疎水性基が残る。
さらに、Siの官能基が失われた部位と、組成物層の骨格上に存在するシラノール基と、が反応し、組成物層の骨格から、親水性であるシラノール基が除去されることがわかった。
さらに、上記の範囲で紫外線を照射する限りにおいては、Siに残った疎水性基(即ち、一般式(1)中、R及びRのいずれか一方)は遊離することなくそのまま維持され、その結果、多孔質材料中には疎水性を発現するために必要十分な量の疎水性基が残ることがわかった。
以上より、(B)成分が組成物層の骨格と結合することで補強材として機能し、水の吸着点となるシラノール基を除去し、さらに、疎水性に必要な疎水性基を維持すると考えられる。従って、低誘電率、且つ、高機械強度である多孔質材料が形成されると考えられる。
【0134】
上述のような多孔質材料を得るための好ましい紫外線処理の条件としては以下の条件が挙げられる。
例えば、紫外線の波長は、好ましくは10〜400nm、さらに好ましくは150〜250nmである。この範囲であれば、上述の(B)成分中の官能基をケイ素原子から切断するだけの十分なエネルギーを持つ。紫外線強度は、官能基の切断時間などに影響を及ぼし、紫外線強度が高いほど、時間が短縮されるので、好ましくは1〜50mW/cm、さらに好ましくは5〜20mW/cmである。この範囲であれば、強度が小さすぎて(B)成分中の官能基がケイ素原子から切断しないということもなく、強度が多すぎて(B)成分が保有する全ての官能基が切断され、得られる多孔質材料の疎水性が損なわれるということもない。
【0135】
紫外線照射温度は、好ましくは10〜400℃、さらに好ましくは150〜350℃、特に好ましくは200〜350℃である。高温にすれば、紫外線照射による官能基とケイ素原子との切断、及び、官能基が切れた部位とシラノールとの反応において、反応速度が向上するため好ましい。紫外線照射時間については特に制限はないが、経済性を考慮すれば、照射時間20分以内、好ましくは10分以内で実施することが好ましい。また、紫外線照射時の圧力は0.01〜101.3kPaの範囲で好ましく実施できる。また、紫外線照射は非酸化性雰囲気で実施することが好ましい。紫外線照射時に酸素が存在すると、紫外線によりオゾンが発生し、フィルム中の疎水性基が酸化され疎水性基が減少するため、酸素濃度は10ppm以下に制御することが好ましい。
【0136】
また、本発明では、紫外線照射後の組成物層(多孔質材料)を、さらにシリル化剤によりシリル化処理してもよい。シリル化処理は公知の方法により、特に制限なく実施できる。
ここで、シリル化剤としては特に限定はないが、例えば、前記一般式(2)で表されるシロキサン化合物や、前記一般式(3)で表されるジシリル化合物、その他のシリル化合物を用いることができる。
【0137】
このように、誘電率が低く、機械強度が優れる多孔質材料を得るためには、主骨格を形成する前記(A)成分と、空孔形成に寄与する(C)界面活性剤と、主骨格を補強する前記(B)成分と、前記(A)成分と前記(B)成分との反応性を高める(D)元素と、を含む組成物を用いて成膜し、紫外線を照射することが重要である。また、上記組成物中に前記(E)成分を添加しても特性に優れる多孔質材料が好ましく得られる。
【0138】
<多孔質材料>
本発明の多孔質材料は、上述の製造方法により製造されるものである。
本発明の多孔質材料は、比誘電率低減と機械的強度向上との両立の観点から、密度が0.5g/cm〜2.0g/cmであることが好ましく、密度が0.7g/cm〜1.2g/cmであることがより好ましい。
ここで、密度は、XRD装置(リガク社、TPR−In−Plane)を用い、X線電源50kV、300mA、波長1.5418Åの条件で、0〜1.5°の走査範囲で常法にて測定された値を指す。
【0139】
また、本発明の多孔質材料は、比誘電率低減及び機械的強度向上の観点から、赤外吸収スペクトルの波数1800cm−1〜波数4800cm−1の範囲において、(I)アルキル基のC−H伸縮運動に起因する明確な1つの吸収ピーク(以下、「ピーク(I)」ともいう)を有し、(II)SiOH基のSi−О伸縮運動に起因する吸収ピーク(以下、「ピーク(II)」ともいう)の強度I(II)が、前記アルキル基のC−H伸縮運動に起因する吸収ピーク強度I(I)の0.30倍以下であり、(III)HSiO基のSi−H伸縮運動に起因する明確な1つの吸収ピーク(以下、「ピーク(III)」ともいう)を有し、その波数が2300cm−1より小さく、かつ、その強度I(III)が、前記アルキル基のC−H伸縮運動に起因する吸収ピーク強度の0.5倍〜3.0倍である多孔質材料であることが好ましい。
【0140】
本発明において赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IRスペクトル)を表す。
前記ピーク(I)の存在は、多孔質材料中に、疎水基であるアルキル基が存在することを示す。従って、ピーク(I)がないということは多孔質材料が疎水化されていないことを意味する。アルキル基がメチル基の場合、ピーク(I)は、波数2900cm−1〜3100cm−1付近に現れる。
【0141】
前記ピーク(II)は、Si−OH基に起因するピークであり、具体的には3600cm−1〜3800cm−1付近に現れる。
前記ピーク(II)の強度は前記ピーク(I)の強度の0.30以下であること、即ち、強度比〔I(II)/I(I)〕が0.30以下であることが好ましい。
具体的には、3300cm−1から3800cm−1の範囲でのベースラインに対するピーク(II)の高さが、前述のアルキル基由来の吸収ピークの高さに対して0.30倍以下の高さであることが好ましい。
ここで、Si−OH基は反応性が高く、特に水分子を吸着し易い。このため、多孔質材料中のSi−OH基は、少ない方が好ましい。従って、前記赤外吸収スペクトル中には、ピーク(II)が存在しないことが特に好ましい。
【0142】
前記ピーク(III)は、HSiO基に起因するピークである。
ピーク(III)の波数は2300cm−1より小さいことが好ましい。これにより、多孔質材料の膜強度はより高くなる。
また、ピーク(III)はピーク(I)の0.5倍〜3倍の強度を有すること、即ち、比〔I(III)/I(I)〕が0.5〜3であることが好ましい。ピーク(I)に対して0.5倍より小さい場合はシリカ骨格が十分に強化されていない場合がある。また、ピーク(I)に対して0.5倍より小さい場合、界面活性剤が完全に除去できておらず残留していることによって、ピーク(I)の強度が大きくなったことも疑われる。一方、HSiO基由来のピーク強度が大きすぎることは、逆にアルキル基の数が不十分(つまり疎水化が不十分)である場合がある。
【0143】
さらに、本発明の多孔質材料は、その赤外吸収スペクトルにおいて、前記ピーク(III)より低波数側(例えば、波数2100cm−1〜2200cm−1付近)に、(IV)H(CH)SiO基のSi−H伸縮運動に起因する吸収ピーク(以下、「ピーク(IV)」ともいう)を有していてもよい。以下、ピーク(IV)の強度を「I(IV)」とする。
強度比〔I(IV)/I(III)〕は、0.05〜0.50が好ましく、0.07〜0.40がより好ましい。
前記強度比が0.50以下であることは、前記(A)成分と前記(B)成分との反応がより効果的に行われていることを示す。
【0144】
以上で説明した本発明の多孔質材料は、誘電率と疎水性の両方に優れると共に機械的強度にも優れているため、層間絶縁膜や配線間絶縁膜等の半導体材料;分子記録媒体、透明導電性膜、固体電解質、光導波路、LCD用カラー部材等の光機能材料や電子機能材料として用いることができる。特に、半導体材料の層間絶縁膜や配線間絶縁膜には、低誘電率、疎水性や高機械的強度が求められていることからも、このような低誘電率、疎水性、機械的強度に優れる本発明の多孔質材料を用いることは好都合である。
【0145】
以下に、本発明の多孔質材料である多孔質フィルムを、層間絶縁膜又は配線間絶縁膜として用いた半導体装置の製造例について具体的に説明する。この製造は、半導体装置の公知の製造プロセス条件に従って実施できる。
【0146】
まず、上述のように、基板表面上に、多孔質材料(多孔質フィルム)を形成する。本発明の多孔質材料の製造方法によれば、低誘電率、疎水性に優れると共に高機械的強度を有する層間絶縁膜又は配線間絶縁膜を得ることができる。次いで、公知の製造プロセス条件に従って、この多孔質フィルム上へハードマスクとフォトレジストを形成し、フォトレジストのパターン通りにエッチングする。エッチング後、気相成長法(CVD)によりその多孔質フィルム表面に窒化チタン(TiN)や窒化タンタル(TaN)等からなるバリア膜を形成する。
【0147】
本発明の多孔質フィルム表面にバリア膜を形成した後、公知のプロセス条件に従って、メタルCVD法、スパッタリング法又は電解メッキ法により銅配線を形成し、さらにCMPにより膜を平滑化する。次いで、その膜の表面にキャップ膜を形成する。さらに必要であれば、ハードマスクを形成し、上記の工程を繰り返すことで多層化することができ、本発明の半導体装置を製造することができる。
【0148】
以上、本発明の組成物及び多孔質材料を、半導体回路素子(半導体装置)における、層間絶縁膜や配線間絶縁膜等の半導体材料として用いる場合について説明したが、本発明の組成物及び多孔質材料の用途は、当該用途に限定されることはない。
例えば、本発明の組成物及び多孔質材料は、水溶液中での表面加工が必要な防水膜電気材料、触媒材料、フィルター材料等、種々の用途に好適に用いられる。
また、本発明の多孔質材料は比誘電率が低いため、屈折率が低い。このため本発明の多孔質材料は、低屈折率表面保護膜としても好適に用いることができる。
ここで、低屈折率表面保護膜は、表面反射の抑制による透過率向上が必要とされる用途に用いられる表面保護膜である。
ここで、低屈折率表面保護膜としては、反射防止膜、発光素子用膜、ハードコート膜、偏光子保護フィルム等が挙げられる。
ここでいう低屈折率とは、屈折率が1.3以下(好ましくは1.25〜1.18)であることを指す。ここで、屈折率は、SOPRA社GES5を使用して入射角75°固定、解析角45°で常法にて測定された値を指す。
【実施例】
【0149】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
【0150】
− アルコキシシラン化合物 −
テトラエトキシシラン(山中セミコンダクター製、電子工業グレード、Si(OC)。
【0151】
− 一般式(I)で表されるシロキサン化合物 −
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(トリケミカル社製の環状シロキサン化合物、電子工業グレード、(CHSi(H)O))。
【0152】
− (C)界面活性剤 −
ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(シグマケミカル社製、商品名:Brij78、C1837(CHCHO)20OH)を、電子工業用エタノールに溶解した後、イオン交換樹脂を用いて10ppb以下まで脱金属処理を施したものである。
【0153】
− (D)元素 −
硝酸セシウム水溶液(和光純薬、特級、CsNO)中のセシウム(Cs)。
【0154】
− ジシリル化合物 −
ヘキサメチルジシロキサン(アルドリッチ製、((CHSi)O)を蒸留精製したものである。
【0155】
− 水 −
脱金属処理された抵抗値18MΩ以上の純水。
【0156】
− 有機溶媒 −
エタノール(和光純薬製、電子工業グレード、COH)
1−プロピルアルコール(関東化学製、電子工業グレード、CHCHCHOH)
2−ブチルアルコール(関東化学製、電子工業グレード、CH(C)CHOH)。
【0157】
− シリル化剤 −
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(トリケミカル社製、電子工業グレード、(CHSi(H)O))。
【0158】
(前駆体溶液の調製)
90.9gのテトラエトキシシランと70.9gのエタノールを室温下で混合攪拌した後、1規定の硝酸80mLを添加し、50℃で1時間撹拌した。次に、20.9gのポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルを280gのエタノールで溶解した溶液を滴下混合した。混合後、30℃で4時間撹拌した。得られた溶液を25℃、30hPaの減圧下、90gになるまで濃縮した。濃縮後、1−プロピルアルコールと2−ブチルアルコールを体積で1:1に混合した溶液を添加し、前駆体溶液1885gを得た。
【0159】
<比誘電率kの測定>
各実施例及び各比較例の多孔質フィルムについて、水銀プローブ装置(SSM5130)を用い、25℃、相対湿度30%の雰囲気下、周波数1MHzにて常法により比誘電率を測定した。
なお、リーク電流密度が1.0×10−8A/cm以上であると、半導体用絶縁膜としての正確な比誘電率kが測定できない。
【0160】
<機械的強度の測定>
各実施例及び各比較例の多孔質フィルムについて、ナノインデンテーター(Hysitron社、Triboscope)により、膜厚の1/10以下の押し込み深さで常法により弾性率を測定した。
【0161】
<組成物の保存安定性評価>
各実施例及び各比較例の組成物を室温で50日放置後、組成物10gをシリンジに取り、シリンジの先にろ過フィルター(ADVANTEC製DISMIC−13JP、ポアサイズ:0.20μm、フィルター径:13mmφ)を装着した。次に、シリンジ内の組成物を前記ろ過フィルターに通すことで組成物の保存安定性を評価した。
ろ過圧力が0.10MPaより上昇せずに最後までろ過できた場合をA、ろ過圧力が0.10MPa以上に上昇するものの、最後までろ過できた場合をB、圧力上昇により最後までろ過できなかった場合をCとした。
【0162】
<多孔質フィルムのFT−IRスペクトルの測定>
各実施例及び各比較例の多孔質フィルムについて、FT−IRスペクトル(フーリエ変換赤外吸収スペクトル)の測定を行った。
ここでFT−IRスペクトルの測定は、FT−IR装置(DIGILAB社、DIGILAB Excalibur)を用い、基板を光路に対して入射角72°(Siのブリュスタ角)に調整して常法により行った。
また、FT−IRスペクトルの測定は、波数1800cm−1〜4800cm−1の範囲について行った。
【0163】
<多孔質フィルムのリーク電流密度の測定>
各実施例及び各比較例の多孔質フィルムについて、リーク電流密度の測定を行った。
ここでリーク電流密度は、水銀プローブ装置(SSM5130)を用い、25℃、相対湿度30%の雰囲気下、スキャン電圧範囲20〜−200Vで周波数1MHzにて、常法により測定した。
また、リーク電流密度の測定はシリコンウエハ内の9点について行った。
リーク電流密度が低い程、層間絶縁膜や配線間絶縁膜として優れている。
【0164】
<多孔質フィルムの密度の測定>
各実施例及び各比較例の多孔質フィルムについて、密度の測定を行った。
ここで、密度は、XRD装置(リガク社、TPR−In−Plane)を用い、X線電源50kV、300mA、波長1.5418Åの条件で、0〜1.5°の走査範囲で、常法にて測定した。
【0165】
〔実施例1〕
(多孔質フィルム形成用組成物の調製)
前駆体溶液300gに硝酸セシウム水溶液をCs濃度が15ppmとなるまで添加した。次いで、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1.7gを添加し、25℃で1時間撹拌し、多孔質フィルム形成用組成物を得た。この時の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの添加量は、テトラエトキシシランに対して10モル%であった。
得られた組成物の保存安定性を表1に示す。
【0166】
(多孔質フィルムの形成)
多孔質フィルム形成用組成物1.0mLをシリコンウエハ表面上に滴下し、2000r
pmで60秒間回転させて、シリコンウエハ表面に塗布した後、窒素雰囲気下150℃で1分間、次いで、350℃で10分間加熱処理した。その後、172nmエキシマランプを装備したチャンバー内で350℃まで加熱し、圧力1Paで出力14mW/cmにより、紫外線を10分間照射することにより、多孔質フィルム(多孔質シリカフィルム)を得た。
得られた多孔質フィルムの密度は、0.887g/cmであった。
また、得られた多孔質フィルムの、比誘電率k及び弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図1に、リーク電流密度を図2に、それぞれ示す。
【0167】
図1に示すFT−IRスペクトルにおいて、横軸は測定波数〔Wavenumber(cm-1)〕を表し、縦軸は吸収強度〔Absorbance(A.U.)〕(「A.U.」は任意単位)を表す。以降のFT−IRスペクトルも同様である。
図1に示すように、多孔質フィルムのFT−IRスペクトルは、3600cm−1〜3800cm−1付近に、SiOH基のSi−О伸縮運動に起因する吸収ピーク(ピーク(II)、強度I(II))を有しており、2900cm−1〜3100cm−1付近にアルキル基のC−H伸縮運動に起因する吸収ピーク(ピーク(I)、強度I(I))を有しており、2200cm−1〜2300cm−1付近にHSiO基のSi−H伸縮運動に起因する吸収ピーク(ピーク(III)、強度I(III))を有していた。
強度比〔I(II)/I(I)〕及び強度比〔I(III)/I(I)〕を表1に示した。
更に、多孔質フィルムのFT−IRスペクトルは、2100cm−1〜2200cm−1付近(ピーク(III)よりも低波数側に)に、H(CH)SiO基のSi−H伸縮運動に起因する吸収ピーク(ピーク(IV)、強度I(IV))を有していた。
但し、図1に示すように、ピーク(IV)の強度は非常に弱かった。強度比〔I(IV)/I(III)〕は、0.12であった。
【0168】
図2は、横軸をリーク電流密度J(A/cm)とし、縦軸を〔ln(ln(1/(1−F))〕としたワイブル分布である。図2中には、シリコンウエハ内9箇所のリーク電流密度がそれぞれプロットされている。以降のリーク電流密度の測定結果も同様である。
図2に示すように、測定点9点中9点において、リーク電流密度は1.0×10−9A/cm付近であり、リーク電流密度は十分に低く、膜面内分布も良好であった。
【0169】
〔実施例2〕
多孔質フィルム形成用組成物の調製において、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの量を3.4gに変更した以外は実施例1と同様にして多孔質シリカフィルムを形成した。この時の組成物中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン添加量は、テトラエトキシシランに対して20モル%であった。
得られた多孔質フィルムの密度は、0.879g/cmであった。
また、得られた多孔質シリカフィルムの、比誘電率k及び弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図3に、リーク電流密度を図4に、それぞれ示す。
【0170】
図3に示すように、多孔質フィルムのFT−IRスペクトルは、実施例1と同様にピーク(I)〜(IV)を有していたが、強度I(II)は実施例1より小さくなっていた。強度比〔I(II)/I(I)〕及び強度比〔I(III)/I(I)〕を表1に示した。
また、強度比〔I(IV)/I(III)〕は、0.15であった。
また、図4に示すように、測定点9点中9点において、リーク電流密度は1.0×10−9A/cm以下であり、リーク電流密度は十分に低かった。
【0171】
〔実施例3〕
多孔質フィルム形成用組成物の調製において、ヘキサメチルジシロキサン1.1gを更に添加した以外は実施例1と同様にして多孔質シリカフィルムを形成した。この時の組成物中のヘキサメチルジシロキサン添加量は、テトラエトキシシランに対して10モル%であった。
得られた多孔質フィルムの密度は、0.883g/cmであった。
また、得られた多孔質フィルムの、比誘電率k及び弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図5に、リーク電流密度を図6に、それぞれ示す。
次に、多孔質フィルム形成用組成物の保存安定性を評価するため、該組成物を冷蔵庫(温度5℃)で保管し、保管後の該組成物を用いて多孔質フィルムを形成し、得られた多孔質フィルムの比誘電率kを測定した。
図7は、上記条件下での多孔質フィルム形成用組成物の保管日数(strage time(d))と、該組成物を用いて形成された多孔質フィルムの比誘電率kと、の関係を示すグラフである。
図7に示すように、保管開始直後から保管日数(strage time(d))36日までの間において、比誘電率(k)は2.10付近であった。このように、多孔質フィルム形成用組成物は保管時間に対し変動が少なく、安定していた。
【0172】
図5に示すように、多孔質フィルムのFT−IRスペクトルは実施例1と同様にピーク(I)〜(IV)を有していたが、強度I(II)は実施例1より小さくなっていた。強度比〔I(II)/I(I)〕及び強度比〔I(III)/I(I)〕を表1に示した。
また、強度比〔I(IV)/I(III)〕は、0.16であった。
また、図6に示すように、測定点9点中9点において、リーク電流密度は1.0×10−9A/cm付近であり、リーク電流密度は十分に低かった。
【0173】
〔実施例4〕
多孔質フィルム形成用組成物の調製において、1,3,5,7−テトラメチルシクロテト
ラシロキサンの添加量を1.7gから0.8gに変えて、ヘキサメチルジシロキサン1.7gを更に添加した以外は実施例1と同様にして多孔質シリカフィルムを形成した。この時の組成物中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとヘキサメチルジシロキサン添加量は、テトラエトキシシランに対してそれぞれ5モル%、15モル%であった。
得られた多孔質フィルムの、比誘電率k及び弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図8に、リーク電流密度を図9に、それぞれ示す。
【0174】
図8に示すように、多孔質フィルムのFT−IRスペクトルは、実施例1と同様にピーク(I)〜(IV)を有していた。強度比〔I(II)/I(I)〕及び強度比〔I(III)/I(I)〕を表1に示した。
また、強度比〔I(IV)/I(III)〕は、0.18であった。
また、図9に示すように、測定点9点中9点において、リーク電流密度は1.0×10−9A/cm付近であり、リーク電流密度は十分に低かった。
【0175】
〔実施例5〕
実施例4で得られた多孔質フィルムを350℃に加熱し、30kPaの圧力で1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを1g/分導入し90分間シリル化処理した。
得られた多孔質フィルムの、比誘電率k及び弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図10に、リーク電流密度を図11に、それぞれ示す。
【0176】
図10に示すように、多孔質フィルムのFT−IRスペクトルは、実施例1と同様にピーク(I)〜(IV)を有していた。
強度比〔I(II)/I(I)〕及び強度比〔I(III)/I(I)〕を表1に示した。
また、図10に示すように、ピーク(IV)の強度は、実施例1〜4に比べて強かった。 強度比〔I(IV)/I(III)〕は、0.32であった。
また、図11に示すように、測定点9点中8点において、リーク電流密度は1.0×10−8〜1.0×10−9A/cm付近であり、リーク電流密度は低かった。
【0177】
〔実施例6〕
多孔質フィルム形成用組成物の調製において、テトラメチルジシロキサン0.95gを更に添加した以外は実施例1と同様にして多孔質シリカフィルムを形成した。この時の組成物中のテトラメチルジシロキサン添加量は、テトラエトキシシランに対して10モル%であった。
得られた多孔質フィルムの、比誘電率k及び弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図12に、リーク電流密度を図13、それぞれ示す。
【0178】
図12に示すように、多孔質フィルムのFT−IRスペクトルは、実施例1と同様の吸収ピークを有していた。更に、2100cm−1〜2200cm−1付近(ピーク(III)よりも低波数側に)に、H(CH)SiO基のSi−H伸縮運動に起因する吸収ピーク(ピーク(IV)、強度I(IV))を有していた。
また、図11に示すように、ピーク(IV)の強度は、実施例1〜4に比べて強かった。
強度比〔I(IV)/I(III)〕は、0.32であった。
強度比〔I(II)/I(I)〕、強度比〔I(III)/I(I)〕を表1に示した。
また、図13に示すように、測定点9点中9点において、リーク電流密度は1.0×10−9A/cm付近であり、リーク電流密度は低かった。
【0179】
〔比較例1〕
多孔質フィルム形成用組成物の調製において、Cs濃度を15ppmから0ppmに変えた以外は実施例1と同様にして多孔質シリカフィルムを形成した。
得られた多孔質フィルムの、弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図14に、リーク電流密度を図15に、それぞれ示す。
比誘電率kは、後述するようにリーク電流密度が高いため、正確に測定できなかった。
【0180】
図14に示すように、多孔質フィルムのFT−IRスペクトルは、実施例1と同様の吸収ピークを有していたが、実施例1〜6に比べてI(II)が高くなっていた。強度比〔I(II)/I(I)〕、強度比〔I(III)/I(I)〕、及び多孔質フィルムの空隙率を表1に示した。
また、図15に示すように、測定点9点中9点において、リーク電流密度は1.0×10−8A/cm以上であり、実施例1〜6に比べてリーク電流密度が高かった。
【0181】
〔比較例2〕
多孔質フィルム形成用組成物の調製において、1,3,5,7−テトラメチルシクロテト
ラシロキサンの添加量を1.7gから0gに変えた以外は実施例1と同様にして多孔質シリカフィルムを形成した。
得られた多孔質フィルムの、弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図16に、それぞれ示す。
得られた膜の絶縁性は悪く、リーク電流密度及び比誘電率kは測定できなかった。
リーク電流密度及び比誘電率kが測定できなかった原因は、図16のFT−IRスペクトルからわかるように、膜中のSiOHピーク(ピーク(II))が大きいためと考えられる。
強度比〔I(II)/I(I)〕及び強度比〔I(III)/I(I)〕を表1に示した。
【0182】
〔比較例3〕
多孔質フィルム形成用組成物の調製において、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの添加量を1.7gから0gに変えて、ヘキサメチルジシロキサン2.36gを添加した以外は実施例1と同様にして多孔質シリカフィルムを形成した。この時の組成物中のヘキサメチルジシロキサン添加量は、テトラエトキシシランに対して20モル%であった。
得られた多孔質フィルムの、弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図17に、リーク電流密度を図18に、それぞれ示す。
なお、比誘電率kは、後述するようにリーク電流密度が高いため、正確に測定できなかった。
【0183】
図17に示すように、多孔質フィルムのFT−IRスペクトルは、実施例1と同様の吸収ピークを有していたが、実施例1〜6に比べてI(II)が高くなっていた。
強度比〔I(II)/I(I)〕及び強度比〔I(III)/I(I)〕を表1に示した。
また、図18に示すように、測定点9点中8点において、リーク電流密度は1.0×10−7A/cm以上であり、実施例1〜6に比べてリーク電流密度が高かった。なお、1点は測定不能であった。
【0184】
〔比較例4〕
多孔質フィルム形成用組成物の調製において、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの添加量を1.7gから0.8gに変えて、ヘキサメチルジシロキサン1.7gを添加し、Cs濃度を15ppmから0ppmに変えた以外は実施例1と同様にして多孔質シリカフィルムを形成した。このときの組成物中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとヘキサメチルジシロキサン添加量は、テトラエトキシシランに対してそれぞれ5モル%、15モル%であった。
得られた多孔質フィルムの、弾性率Eを表1に、FT−IRスペクトルを図19に、リーク電流密度を図20に、それぞれ示す。
得られた膜の絶縁性は悪く、リーク電流密度を面内9点測定したが、そのうち8点は測定不可であった(図20)。膜の絶縁性が悪いため、比誘電率kは、正確に測定できなかった。
この原因は、図20のFT−IRスペクトルからわかるように、膜中のSiOHピークが大きいためと考えられる。
強度比〔I(II)/I(I)〕及び強度比〔I(III)/I(I)〕を表1に示した。
【0185】
【表1】

【0186】
(注1)(添加した一般式(I)で表されるシロキサン化合物のモル数/添加したアルコキシラン化合物のモル数)×100
(注2)(添加したジシリル化合物のモル数/添加したアルコキシラン化合物のモル数)×100
(注3)比較例1〜4では、リーク電流密度が高く(膜の絶縁性が悪く)、正確な比誘電率の測定を行うことができなかった。
【0187】
表1に示すように、(A)アルコキシシラン化合物の加水分解物と、(B)特定のシロキサン化合物の加水分解物と、(C)界面活性剤と、(D)電気陰性度が2.5以下の元素と、を含む実施例1〜6の組成物を用いて作製された多孔質フィルムでは、低い比誘電率kと高い弾性率Eとが両立されていた。更に、これらの実施例1〜6(特に、実施例3〜6)では、組成物の保存安定性にも優れていた。
【0188】
日本出願2008−096449の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、アルコキシシラン化合物、触媒、及び有機溶媒を、20℃〜70℃で0.5時間〜7時間混合する工程と、
前記混合により得られた混合物に、界面活性剤を添加する工程と、
前記界面活性剤が添加された混合物を、質量が10%〜50%となるまで濃縮する工程と、
濃縮された混合物を、有機溶媒で希釈する工程と、
希釈された混合物に、電気陰性度が2.5以下である元素を添加する工程と、
前記元素が添加された混合物に、下記一般式(1)で表されるシロキサン化合物を添加する工程と、
を有する組成物の製造方法。
【化1】




〔一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、又は−C2d−1基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子であることはない。
及びRは、ケイ素原子と酸素原子とを相互に連結して環状シロキサン構造を形成する単結合を表すか、又は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、若しくは−C2d−1基を表す。
aは1〜6の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、cは0〜10の整数を表し、dは2〜4の整数を表し、nは3以上の整数を表す。〕
【請求項2】
前記希釈された混合物に電気陰性度が2.5以下である元素を添加する工程は、
前記元素の含有量が1〜5000ppmとなるように該元素を添加する請求項1に記載の組成物の製造方法。
【請求項3】
(A)アルコキシシラン化合物の加水分解物と、
(B)下記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物と、
【化2】




〔一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、又は−C2d−1基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子であることはない。
及びRは、ケイ素原子と酸素原子とを相互に連結して環状シロキサン構造を形成する単結合を表すか、又は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、若しくは−C2d−1基を表す。
aは1〜6の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、cは0〜10の整数を表し、dは2〜4の整数を表し、nは3以上の整数を表す。〕
(C)界面活性剤と、
(D)電気陰性度が2.5以下の元素と、
を含む組成物を乾燥して組成物層を形成する組成物層形成工程と、
形成された組成物層を80℃〜400℃で加熱する加熱工程と、
加熱された組成物層に紫外線照射を行う紫外線照射工程と、
を含む多孔質材料の形成方法。
【請求項4】
更に、前記紫外線照射工程後に、組成物層と、シリル化剤と、の接触反応処理を行う接触反応処理工程を含む請求項3に記載の多孔質材料の形成方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の多孔質材料の形成方法によって形成された多孔質材料。
【請求項6】
密度が0.5g/cm〜2.0g/cmであり、
赤外吸収スペクトルの波数1800cm−1〜波数4800cm−1の範囲において、
(I)アルキル基のC−H伸縮運動に起因する明確な1つの吸収ピークを有し、
(II)SiOH基のSi−О伸縮運動に起因する吸収ピーク強度が、前記アルキル基のC−H伸縮運動に起因する吸収ピーク強度の0.30倍以下であり、
(III)HSiO基のSi−H伸縮運動に起因する明確な1つの吸収ピークを有し、その波数が2300cm−1より小さく、かつ、その強度が、前記アルキル基のC−H伸縮運動に起因する吸収ピーク強度の0.5倍〜3.0倍である請求項5に記載の多孔質材料。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の多孔質材料を含む層間絶縁膜。
【請求項8】
請求項7に記載の層間絶縁膜を含む半導体材料。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体材料を含む半導体装置。
【請求項10】
請求項5又は請求項6に記載の多孔質材料を含む低屈折率表面保護膜。
【請求項11】
(A)アルコキシシラン化合物の加水分解物と、
(B)下記一般式(1)で表されるシロキサン化合物の加水分解物と、
【化3】




〔一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、又は−C2d−1基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子であることはない。
及びRは、ケイ素原子と酸素原子とを相互に連結して環状シロキサン構造を形成する単結合を表すか、又は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、若しくは−C2d−1基を表す。
aは1〜6の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、cは0〜10の整数を表し、dは2〜4の整数を表し、nは3以上の整数を表す。〕
(C)界面活性剤と、
(D)電気陰性度が2.5以下の元素と、
有機溶媒と、
を含む組成物。
【請求項12】
質量10gのうちの全量がポアサイズ0.20μmのフィルター(ADVANTEC製DISMIC−13JP、フィルター径:13mmΦ)を通過する請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
多孔質材料の形成に用いられる請求項11又は請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
半導体材料の形成に用いられる請求項11又は請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物が、環状シロキサン化合物である請求項11〜請求項14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記一般式(1)で表されるシロキサン化合物が、下記一般式(2)で表される環状シロキサン化合物である請求項11〜請求項15のいずれか1項に記載の組成物。
【化4】




〔一般式(2)中、R、R、R10、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、−(CH(CFCF基、又は−C2d−1基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子であることはなく、R10及びR11が同時に水素原子であることはなく、R12及びR13が同時に水素原子であることはない。
aは1〜3の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、cは0〜10の整数を表し、dは2〜4の整数を表す。
Lは0〜8の整数を表し、mは0〜8の整数を表し、nは0〜8の整数を表し、かつ3≦L+m+n≦8である。〕
【請求項17】
更に、(E)下記一般式(3)で表されるジシリル化合物の加水分解物を含む請求項11〜請求項16のいずれか1項に記載の組成物。
【化5】



〔一般式(3)中、R14、R15、R16、R17、R18、及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、−C2a+1基、又は−(CH(CFCF基を表し、aは1〜3の整数、bは0〜4の整数、cは0〜10の整数を表す。
Xは、酸素原子、又は>NR20基、を表し、R20は、水素原子又は−C2e+1基を表し、eは1〜3の整数を表す。〕
【請求項18】
前記(D)電気陰性度が2.5以下の元素は、イオン半径が1.6Å以上の元素である請求項11〜請求項17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記(D)電気陰性度が2.5以下の元素は、原子量が130以上の元素である請求項11〜請求項18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記(D)電気陰性度が2.5以下の元素が、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、及びランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である請求項11〜請求項19のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−90389(P2010−90389A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280942(P2009−280942)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【分割の表示】特願2009−531680(P2009−531680)の分割
【原出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」継続研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】