説明

組立式収納家具

【課題】複数の面板により大型の背板を構成する場合に組立作業効率(施工性)を向上させる構造を備えた組立式収納家具を提供する。
【解決手段】分割された複数の面板10・11を係合により連結して背板1として用い、この背板1に更に側板及び天板を連結して組立式収納家具を構成するにあたり、背板1に対して共通の天板3を係合させ、この係合部たる天板背板係合部5において天板3に対する各面板10・11の高さ方向の位置決めをなすようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の面板により大型の背板を構成する組立式収納家具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばノックダウン等に好適な組立式収納家具を構成する場合、背板等の大型の面板は分割して組み立てることが有効である。例えば、特許文献1等に示されるものは、分割した二つの面板を左右に隣接させ、隣接した面板の縁部に沿って長尺な連結部材を介在させ、この連結部材の適宜箇所を左右の面板にねじ止めすることによって、大型の背板を構成することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−173459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構造であると、連結に別途の連結部材等が必要になる上に、左右の面板の高さが厳密に揃った状態でねじ止めしないと天板が適切に収まらなくなるので、場合によってはベース上に載せ置いて高さを揃えた作業で連結作業等をする必要があり、施工性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、このような複数の面板により大型の背板を構成する場合に組立作業効率を向上させる構造を備えた組立式収納家具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0007】
すなわち、本発明の組立式収納家具は、分割された複数の面板を係合により連結して背板として用い、この背板に更に側板及び天板を連結して構成される収納家具であって、前記背板に対して共通の天板を係合させ、この係合部において天板に対する各面板の高さ方向の位置決めをなすようにしたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、天板と背板とを係合させるだけで高さ方向の位置関係が揃うので、無造作に作業しても面板の高さ位置が食い違うことが無くなり、組立作業効率(施工性)を向上させることが可能となる。
【0009】
背板及び天板の連結強度を向上させるためには、前記背板及び前記天板は、いずれか一方が他方を巻き込むように係合することが望ましい。
【0010】
背板及び天板を組み付ける係合操作を簡易化するためには、前記背板及び前記天板は、係合した位置から組立位置まで回転させることで係合状態が維持若しくは係合が深まるように構成されていることが好ましい。
【0011】
ガタつきなく適切に背板と天板とを連結するためには、前記背板及び前記天板は、組立状態において前記係合部に弾性反発力を蓄積しながら止着具により止着されることが効果的である。
【0012】
背板を構成する面板同士の連結強度を向上させるためには、前記面板同士は、いずれか一方が他方を巻き込むように係合することが好ましい。
【0013】
背板を構成する面板同士を組み付ける係合操作を簡易化するためには、前記面板同士は、回転によって交差状態から面一状態にまで係合可能とされることが望ましい。
【0014】
背板を構成する面板同士を組み付ける係合操作を容易且つ円滑に行うためには、係合状態で隣接する二つの面板のうち少なくとも一つの面板の上端及び下端に折り曲げ部を設け、これら折り曲げ部を面板同士の係合部を高さ方向両側から挟む位置に配置していることが好ましい。
【0015】
背板の面一度や面剛性を有効に高めるためには、前記面板同士の係合部には、当該面板同士を面一にした際に突き当たることにより面板同士の相対回転を規制する回転規制部が設けてあることが効果的である。
【0016】
底板を適切に支持するためには、底板の後端部に後折り曲げ部を設け、この後折り曲げ部と前記面板同士の係合部とが止着具によって止着されていることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の組立式収納家具は、以上説明した構成であるから、天板と背板とを係合させるだけで高さ方向の位置関係が揃うので、施工性を向上させることが可能となる。したがって、複数の面板を連結して背板を構成するにあたり好適となる構造を備えた組立式収納家具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る組立式収納家具の全体構成を示す斜視図。
【図2】同収納家具を構成する背板及び側板の上部を示す分解斜視図。
【図3】図2におけるA1−A1部位断面図。
【図4】背板を構成する面板同士の連結部位周辺を模式的に示す正面図。
【図5】背板を構成する面板同士の組立に関する模式的断面図。
【図6】背板及び天板の組立に関する模式的断面図。
【図7】天板の側端部と側板の上端部の入隅部周辺を示す斜視図。
【図8】天板と側板の係合部を模式的に示す断面図。
【図9】同収納家具の下部を示す斜視図。
【図10】同収納家具において側板の前下端部同士を連結する前補強部材を示す斜視図。
【図11】図10に示す前補強部材の取付に関する模式的な側面図。
【図12】同収納家具において底板の取付に関する模式的な斜視図。
【図13】同収納家具において側板と前補強部材とを連結するアジャスタ取付部材の取付に関する模式的斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態の組立式収納家具Faは、前面を開口させた中空の家具本体Fa1を主体とするオープン収納型の収納家具である。勿論、家具本体Fa1の前面に、家具本体Fa1の前面開口を閉止する閉止位置又は開放する開放位置に回転により開閉可能となる対をなす開き扉Fa2を取り付けて、開き戸型の収納家具を構成してもよく、またスライド移動する扉を取り付けて引き戸型の収納家具を構成してもよい。
【0021】
家具本体Fa1は、壁体である背板1と、同じく壁体であって背板1の両側端部に取り付けられる側板2と、側板2の上端部間に取り付けられる天板3と、側板2の下端部間に取り付けられる底板4とを箱状に組み付けることにより構成され、内部に収納空間SP1を形成する。なお、以下の説明において、開き扉Fa2が位置する側を前方(前側)とし、背板1が位置する側を後方(後側)とし、天板3が位置する側を上方(上側)とし、底板4が位置する側を下方(下側)とし、家具本体Fa1を構成する背板1、側板2、天板3及び底板4に囲まれる収納空間SP1側を内方(内側)とし、家具本体Fa1の反収納空間側を外方(外側)とし、前方から後方に向かって右を右方(右側)、左を左方(左側)とする。
【0022】
背板1は、図2、図3及び図4に示すように、分割された複数の面板10・11を連結して構成されるもので、各面板10・11は、一枚の板材を塑性変形加工(例えば板金加工等)により適宜折り曲げて形成される。左面板10及び右面板11には、家具本体Fa1の背面を構成する正面視略矩形状の後面12の左側端、右側端及び上下端を前方へ略直角に折り曲げて左側端面13、右側端面14、上端面15及び下端面16を形成している。左面板10は、その右側端部を折り曲げることで右側端面14を有する左面板内折り曲げ部10aが形成されているとともに、右面板11には、その左側端部を折り曲げることで左側端面13を有する右面板内折り曲げ部11cが形成されている。左面板10及び右面板11は、各々の側端部同士を互いに突き合わせた状態で左面板内折り曲げ部10aと右面板内折り曲げ部11cとを係合することにより連結される。すなわち、左面板内折り曲げ部10a及び右面板内折り曲げ部11cが、両面板10・11を連結する左右面板係合部17を構成している。左右面板係合部17は、図5(a)に示すように、内折り曲げ部10a・11cを各々の面板10・11の面方向を交差させた交差状態で係合させ、図5(b)に示すように、交差状態から各々の面方向が略一致した面一状態となるまで両面板10・11を相対回転させることで、面板10・11同士のいずれか一方が他方を巻き込むように係合して係合が深まる構造をなしている。勿論、係合が深まらなくても係合している状態を維持する構造にしてもよい。
【0023】
具体的には、図3に示すように、左面板内折り曲げ部10aは、左面板10の右側端部を略直角に折り曲げて前方に突出する右側端面14を形成するとともに、その先端部を更に左方及び後方に同じに折り曲げ、その先端部を更に後方に向かうように折り曲げることで、平面視略鈎状に形成されている。一方、右面板内折り曲げ部11cは、右面板11の左側端部を前方に折り曲げて前方に突出する左側端面13を形成するとともに、その先端部を更に左方に略直角に折り曲げ、その先端部を更に後方に略直角に折り曲げ、更にまたその先端部を右方に略直角に折り曲げることで、左面板内折り曲げ部10aに対応する平面視略鈎状に形成されている。左面板内折り曲げ部10aの先端部を左方且つ後方に同時に折り曲げることにより、係合時に右面板内折り曲げ部11cの先端部を引き寄せる弾性反発力が蓄積されるように構成されている。
【0024】
面板10・11同士の係合部たる左右面板係合部17は、各々の縁部を折り曲げてなる折り曲げ部(11c,10a)により構成されており、これら折り曲げ部(11c,10a)の少なくともいずれか一方には、その先端部をほぼ周回させて開口を形成し、この開口に他方の折り曲げ部を挿入した状態で相対回転することにより面板10・11同士のいずれか一方が他方を巻き込むように係合する。すなわち、右面板11の右面板内折り曲げ部11cは、その先端部がほぼ周回して開口を形成しており、この開口に左面板10の左面板内折り曲げ部10aの先端部を挿入した状態で両面板10・11同士が相対回転(例えば左面板10が、両面板が面一となる展開状態に向かって交差状態から回転することが挙げられる)することにより、右面板内折り曲げ部11cが左面板内折り曲げ部10aを巻き込むように係合する構造をなしている。また、左面板内折り曲げ部10aの一部である右側端面14と右面板内折り曲げ部11cの一部である左側端面13とは、両面板10・11同士を略面一にした際に突き当たり、これ以上両面板10・11同士が相対回転することを規制する回転規制部18を構成している。
【0025】
両面板10・11には、図2及び図4に示すように、その上下端部をそれぞれ前方に折り曲げることで上端面15を有する背板上折り曲げ部1b及び下端面16を有する背板下折り曲げ部1dが形成されている。両面板10・11のうち少なくとも左面板10に形成される背板上折り曲げ部1b及び背板下折り曲げ部1dは、その上端面15及び下端面16が面板10・11同士の係合部である左右面板係合部17を高さ方向(上下方向)から挟む位置に配置されており、面板10・11同士を回転により係合するにあたり、面板10・11同士が高さ方向(上下方向)に相対位置することを抑制している。また、図2及び図3に示すように、両面板10・11を連結した背板1は、その外側の両側端部を折り曲げることで左側端面13又は右側端面14をそれぞれ有する背板外折り曲げ部1c,1aが形成されている。
【0026】
天板3は、図1に示すように、一枚の板材を塑性変形加工(例えば板金加工等)により適宜折り曲げて形成されるもので、家具本体Fa1の天板面を構成する平面視略矩形状の上面30の両側端及び前後端を下方に略直角に折り曲げて両側端面31、前端面32及び後端面33を形成している。天板3には、図6に示すように、その後端部を折り曲げることで後端面33を有する天板後折り曲げ部3fが形成されている。天板3及び背板1は、天板3の後端部及び背板1の上端部を互いに突き合わせた状態で天板後折り曲げ部3fと背板上折り曲げ部1bとを係合させることにより連結される。すなわち、天板後折り曲げ部3f及び背板上折り曲げ部1bが、天板3と背板1とを連結する天板背板係合部5を構成している。天板背板係合部5は、図6(b)に示すように、天板後折り曲げ部3f及び背板上折り曲げ部1bを係合させ、図6(b)→図6(a)のように、係合した位置から組立位置まで背板1及び天板3を相対回転させることで、背板1及び天板3のいずれか一方が他方を巻き込むように係合して係合が深まる構造をなしている。組立位置は、天板3の面方向と背板1の面方向とが略直交する位置関係であり、天板3及び背板1を組み付けた位置である。勿論、係合が深まらなくても係合している状態を維持する構造にしてもよい。なお、天板3は、背板1に対して係合した位置から組立位置に向かって係合状態を維持したまま若しくは係合を深めるように相対回転するように構成しているが、相対回転に限らず移動または姿勢変更可能に構成してもよい。
【0027】
具体的には、図6(a)に示すように、天板後折り曲げ部3fは、天板3の後端部を略直角に折り曲げて下方に突出する後端面33を形成し、後端面33の先端部を更に前方に略直角に折り曲げて上面30に対向する下面33aを形成し、その先端部を更に下方に略直角に折り曲げ、その先端部を更に後方に略直角に折り曲げ、更にその先端部を上方に略直角に折り曲げることで、断面視略鈎状に形成されている。一方、背板上折り曲げ部1bは、背板1の上端部を略直角に折り曲げて前方に突出する上端面15を形成し、上端面15の先端部を下方且つ後方に同時に折り曲げ、その先端部を更に後方に向かうように折り曲げることで、天板後折り曲げ部3fに対応する断面略鈎状に形成されている。背板上折り曲げ部1bの先端部を下方且つ後方に同時に折り曲げることにより、係合時に天板後折り曲げ部3fの先端部を引き寄せる弾性反発力が蓄積されるように構成されている。
【0028】
天板3及び背板1の係合部たる天板背板係合部5は、各々の縁部を折り曲げてなる折り曲げ部(3f,1b)により構成されており、これら折り曲げ部(3f,1b)の少なくともいずれか一方には、その先端部をほぼ周回させて開口を形成し、この開口に他方の折り曲げ部を挿入した状態で相対回転することにより、天板3又は背板1のいずれか一方が他方を巻き込むように係合する。すなわち、天板3の天板後折り曲げ部3fは、その先端部がほぼ周回して開口を形成しており、この開口に背板1の背板上折り曲げ部1bの先端部を挿入した状態で天板3及び背板1が相対回転(例えば背板1に対して天板3が下方から上方に向かって回転することが挙げられる)することにより、天板後折り曲げ部3fが背板上折り曲げ部1bを巻き込むように係合する構造をなしている。また、天板3と背板1とを係合させて図6(a)に示す組立状態にしたときには、図4に示すように、背板1を構成する左面板10の上端面15と背板1を構成する右面板11の上端面15とが、共通の天板3の下面33aに突き当たり、天板3に対する各面板10・11の高さ方向を揃える位置決めがなされるように設定してある。
【0029】
側板2は、図2及び図3に示すように、一枚の板材を塑性変形加工(例えば板金加工等)により適宜折り曲げて形成されるもので、家具本体Fa1の側面を構成する略矩形状の外面20の上下端及び前後端を内方に略直角に折り曲げて上端面21、下端面22(図9参照)、後端面23及び前端面24を形成している。側板2は、図3に示すように、その後端部を折り曲げることで後端面23を有する側板後折り曲げ部2fが形成されている。側板2及び背板1は、側板2の後端部及び背板1の外側端部を互いに突き合わせた状態で側板後折り曲げ部2fと背板外折り曲げ部1c,1aとを係合させることにより連結される。すなわち、側板後折り曲げ部2f及び背板外折り曲げ部1c,1aが、側板2と背板1とを連結する側板背板係合部6を構成している。側板背板係合部6は、図6に示す背板1と天板3の組み付けと同様に、側板後折り曲げ部2f及び背板外折り曲げ部1c,1aを係合させ、係合した位置から組立位置まで側板2及び背板1を相対回転させることで、側板2及び背板1のいずれか一方が他方を巻き込むように係合して係合が深まる構造をなしている。組立位置は、側板2の面方向と背板1の面方向とが略直交する位置関係であり、側板2及び背板1を組み付けた位置である。勿論、係合が深まらなくても係合している状態を維持する構造にしてもよい。なお、側板2は、背板1に対して係合した位置から組立位置に向かって係合状態を維持したまま若しくは係合を深めるように相対回転するように構成しているが、相対回転に限らず移動または姿勢変更可能に構成してもよい。
【0030】
具体的には、図3に示すように、側板後折り曲げ部2fは、側板2の後端部を略直角に折り曲げて内方に突出する後端面23を形成し、後端面23の先端部を更に前方に略直角に折り曲げ、その先端部を更に内方に折り曲げて後端面23に平行な前面23aを形成し、前面23aの先端部を更に後方に折り曲げ、その先端部を更に外方に折り曲げることで、断面略鈎状に形成されている。一方、背板外折り曲げ部1c,1aは、背板1の外側端部を略直角に折り曲げて前方に突出する左側端面13又は右側端面14をそれぞれ形成し、その先端部を内方且つ後方に同時に折り曲げて後面12に対向する前面12aを形成し、前面12aの先端部を後方に向かうように折り曲げることで、側板後折り曲げ部2fに対応する横断面鈎状に形成されている。背板外折り曲げ部1c,1aの先端部を内方且つ後方に同時に折り曲げることで、側板後折り曲げ部2fの先端部を引き寄せる弾性反発力が蓄積されるように構成されている。
【0031】
側板2及び背板1の係合部たる側板背板係合部6は、各々の縁部を折り曲げてなる折り曲げ部(2f,1c等)により構成されており、これら折り曲げ部(2f,1c等)の少なくともいずれか一方には、その先端部をほぼ周回させて開口を形成し、この開口に他方の折り曲げ部を挿入した状態で相対回転することにより、側板2又は背板1のいずれか一方が他方を巻き込むように係合する。すなわち、側板2の側板後折り曲げ部2fは、その先端部がほぼ周回して開口を形成しており、この開口に背板1の背板外折り曲げ部1c,1aの先端部を挿入した状態で側板2及び背板1が相対回転(例えば背板1に対して側板2が内方から外方に向かって回転することが挙げられる)することにより、側板後折り曲げ部2fが背板外折り曲げ部1c,1aを巻き込むように係合する構造をなしている。また、側板背板係合部6は、側板2及び背板1の高さ方向全域に亘って略同一の断面をなしており、側板2は、背板1との係合状態を維持したまま天板に対する遠近方向(上下方向)に沿ってスライド移動可能に構成されている。
【0032】
天板3の両側端部及び側板2の上端部は、図7及び図8に示すように、組立位置で突き当たる位置関係にあり、収納空間側において互いに対向する位置関係となるように天板3及び側板2にそれぞれ取付部7a,7bを設け、組立位置において両取付部7a,7b同士をネジ等の止着具voを用いて連結するように構成している。
【0033】
具体的には、天板3は、図8に示すように、その両側端部を折り曲げることで下方に突出する両側端面31を有する天板側端折り曲げ部3c・3cが形成されている。天板側端折り曲げ部3cは、側端面31の先端部を更に内方に略直角に折り曲げて上面30に平行に対向する下面31aを形成し、下面31aの先端部を更に内方且つ上方に同時に折り曲げて傾斜面31bを形成し、傾斜面31bの先端部を更に上方に向かうように折り曲げて起立面31cを形成することで、断面略台形状をなす折り曲げ片や取付片とも呼ばれる取付部7aを構成している。一方、側板2は、図2及び図8に示すように、その上端部を折り曲げることで内方に突出する上端面21を有する側板上折り曲げ部2bが形成されている。側板上折り曲げ部2bは、上端面21の先端部を更に内方且つ上方に折り曲げて傾斜面21bを形成し、傾斜面21bの先端部を更に上方に向かうように折り曲げて起立面21cを形成することで、天板側端折り曲げ部3cに対応する横断面略台形状をなす折り曲げ片や取付片とも呼ばれる取付部7bを構成している。これら取付部7a,7bは、図2及び図7に示すように、天板3の両側端及び側板2の上端部に奥行き方向に沿って形成されており、図8に示すように天板3及び側板2の組立位置において取付部7aの下面31a,傾斜面31b,起立面31cと取付部7bの上端面21,傾斜面21b,起立面21cとが収納空間SP1側でそれぞれ対向する位置関係にあり、連結部分となる取付部7a,7bが外部に露出せずに外観(見栄え)を損ない難くなる。取付部7a,7bの形状が受け皿のような略台形をなし、これらが凹凸関係で向き合っているので、天板3と側板2とが組立位置に向かう際に取付部7a、7b同士が相対的にスライド或いは回転しながら呼び込み合うことでガイド部材の役割を果たしている。これら取付部7a,7b同士がガイド部材の役割を果たす組み付け方の一例としては、天板3及び背板1が組付位置にある状態から更に天板3を天板背板係合部5の弾性を利用して上方に回転させて保持しておき、この状態で背板1に対して側板2を係合させながら回転により組立位置に持っていき、上方に保持しておいた天板3を下方に回転させて側板2に対して天板3を組立位置に向かわせることが挙げられる。この場合、上方に保持しておいた天板3を回転により下方に落とす際に、取付部7a,7b同士が相対的にスライド或いは回転しながら呼び込み合うガイド部材の役割を果たす。
【0034】
図7及び図8に示すように、各々の取付部7a,7bの傾斜面31b,21bには、組立位置で合致するネジ止め用の孔7s・7sが形成されており、この孔7sにネジ等の止着具voを差し込んで連結される。これらねじ止め用の孔7s・7sは、組み立て状態で軸心が合致するように位置関係が規定されており、これら孔7s・7sの合致するか否かによって位置決め状態を確認可能にしている。また、ネジ止め用の孔7sが形成される傾斜面21b,31bの傾斜により、ネジやボルト等の止着具voの軸が収納空間SP1内方を向くようにし、止着具voを締めやすくしている。また、図8に示すように、組立位置において取付部7aの傾斜面31b及び取付部7bの傾斜面21bには若干の隙間が設けてあり、ネジ等の止着具voで止めた場合に取付部7a,7b同士の間に弾性反発力が蓄積されるように構成されている。
【0035】
側板2の前端部は、図2に示すように、その前端部を内方に折り曲げて前端面24を形成するとともに、前端面24の先端部を後方に略直角に折り曲げ、その先端部を更に内方に折り曲げて前端面24に対向する後面24aを形成している。この後面24aは、側板背板係合部6を構成する前面23aに対向する位置関係にあり、これら後面24a及び前面23a間に配置される棚板90を保持するフック等の保持具を取り付けるための棚板取付孔91が後面24a及び側板背板係合部6に形成されている。
【0036】
天板3の前端部には、図7に示すように、その前端部を下方に折り曲げて前端面32を形成するとともに、前端面32の先端部を更に後方に略直角に折り曲げて下面32aを形成し、下面32aの先端部を更に下方に折り曲げて天板の前端部に前框とも呼ばれる下向き突出部32bを形成している。
【0037】
左右の側板2・2の連結強度を補強するとともに、脚部となる高さ調節用のアジャスタの取付場所を確保すべく、図1に示すように、左右の側板2・2の前部下端部同士の間を接続する位置に前框とも呼ばれる前補強部材7が係合により取り付けられており、図9に示すように、前補強部材7と側板2とを接続する位置に、高さ調節用のアジャスタを取り付けるためのアジャスタ取付部材8を係合により取り付けている。
【0038】
前補強部材7は、板材を塑性変形加工(例えば板金加工等)により適宜折り曲げて形成され、左右の側板2・2の下端部同士の間を連結する連結部材としての役割を果たすもので、図9及び図10に示すように、略矩形状の前面70の上縁部及び下縁部をそれぞれ折り曲げて後方に延びる上折り曲げ片71及び下折り曲げ片72とをそれぞれ形成し、両側端部において上折り曲げ片71及び下折り曲げ片72の先端(後端)を接続する位置に後面73が設けてある。この後面73には、図10に示すように、前補強部材7を側板2に取り付けるための対をなす前補強部材取付係合部73aと、ネジ止め用の孔73bとが設けられている。対をなす前補強部材取付係合部73aは、向きの異なる複数の爪部、すなわち後方且つ上方に開く上向き爪部73cと、上向き爪部73cの下方部位に配置され後方に開く後向き爪部73d・73dとから構成されている。これに対して、側板2の前端面24には、前補強部材取付係合部73aを構成する各爪部73c,73dが差し込まれる取付孔24h・24iと、ネジ止め用の孔24jとが形成されている。そして、前補強部材7を側板2に取り付ける際には、図11(a)及び図10に示すように、対をなす前補強部材取付係合部73aを構成する上向き爪73c・73cを左右の側板2・2に形成された取付孔24h・24hに差し込んで前補強部材7を各側板2・2の前端面24に係合し、図11(a)→図11(b)のように係合位置から回転して側板の前端面24と前補強部材7の後面73を接触(重合)させ、図10及び図11(b)に示すように、この状態でボルトやネジ等の止着具voを前補強部材取付係合部73aから変位した位置のネジ止め用の孔73b・24jに差し込んで前補強部材7を止着している。
【0039】
図10に示すように、下折り曲げ片72は、前補強部材7の前面70の下端部を後方に略直角に折り曲げて下端面72aを形成し、下端面72aの先端部を更に上方に略直角に折り曲げて形成される。また、上折り曲げ片71は、前補強部材7の前面70の上端部を後方に略直角に折り曲げて上面71aを形成し、上面71aの先端部を更に上方に略直角に折り曲げ、その先端部を更に後方に折り曲げ、その先端部を更に下方に略直角に折り曲げ、その先端部を更に後方に略直角に折り曲げて底板4を設置するための載置面71bを形成している。なお、図1に示す開き扉Fa2や引き戸を取り付ける場合には、図10及び図1に示す上折り曲げ片71の上面71a及び図7に示す天板3の下面32aに、開き扉Fa2を回転可能に支持するための図示しない支持機構や引き戸をスライド動作させるための図示しないレール等が設置される。
【0040】
底板4は、図12に示すように、板材を塑性変形加工(例えば板金加工等)により適宜折り曲げて形成されるもので、底面40の前端部を下方に折り曲げて前面41を形成し、前面41の先端部を後方に略直角に折り曲げて前部下面41aを形成するとともに、底面40の後端部を折り曲げて底面40の後端がオーバーハングするように下方に延びる後面42を有する後折り曲げ部43を形成している。底板4の中央部には、底面40を支持する奥行き方向に延びる断面略U字形状の底板補強部材44が設けられている。そして、底板4を取り付ける際には、底面40の後端のオーバーハング領域Arに形成された後方へ開く爪部44a・44b・44cを、側板背板係合部6および左右面板係合部17にそれぞれ形成した底板取付孔45・45・45に差し込んで、底板4の前部下面41aを載置面71bに載置し、図12に示すように、底板4のうち底板補強部材44の設けられる部位(前部下面41aの一部)と底板補強部材44とを載置面71bに止着具voで止着するとともに、図9に示すように、底板4の後折り曲げ部43の後面42と面板10・11同士の係合部たる左右面板係合部17とをボルト等の止着具voで止着している。図12に示すように、底板4の底面40のうちオーバーハング領域Arは、側板背板係合部6や左右面板係合部17の形状に合わせた切り欠きを設けておき、切り欠き以外の部位は、背板1との間に収納物を通さない程度に近接又は接触させて背板1との間の隙間を低減又は無くしている。
【0041】
前補強部材7には、図10に示すように、上折り曲げ片71と上折り曲げ片71とを接続して上折り曲げ片71を支持する第二の補強部材74が左右の二箇所に設けられている。第二の補強部材74は、起立する板状の縦補強面74aの上縁を内方に略直角に折り曲げて形成された上補強面74bと、縦補強面74aの下縁を内方に略直角に折り曲げて形成された下補強面74cとを有し、上補強面74bが上折り曲げ片71を支持する状態で溶接され、下補強面74cが下折り曲げ片72に支持される状態で溶接されて、上折り曲げ片71と上折り曲げ片71とを接続しており、底板4に加わる荷重が上折り曲げ片71に作用した場合に前補強部材7の変形を抑制するものである。
【0042】
アジャスタ取付部材8は、図9に示すように、家具本体Fa1の下部四隅に取り付けられて、高さ調節可能な脚部でもある図示しないアジャスタを取り付けるための部材で、板材を塑性変形加工(例えば板金加工等)により適宜折り曲げて形成されるものである。アジャスタ取付部材8は、図9及び図13に示すように、平面視略三角形の底面80を主体とし、前補強部材7と側板2との入隅部において前補強部材7と側板2とを接続する位置、若しくは、側板2と背板1との入隅部において側板2と背板1とを接続する位置に配置される。この底面80には、アジャスタ取付部材8を前補強部材7且つ側板2若しくは背板1且つ側板2に取り付けるためのアジャスタ取付部材係合部81と、ネジ止め用の孔82とが設けられている。アジャスタ取付部材係合部81は、向きの異なる複数の爪部、すなわち上方且つ内方に開く対をなす内向き爪部81a・81aと、上方に開く対をなす上向き爪部81b・81bとから構成されている。これら内向き爪部81a及び上向き爪部81bは、共に断面が長尺状に形成されており、各々の長手方向が略八の字状に交差するようにされて、荷重に対する強い方向を互いに交差させている。これに対して、側板2、前補強部材7及び背板1の下端面22,72a,16には、内向き爪部81a及び上向き爪部81bが差し込まれる取付孔92a,92bと、ネジ止め用の孔92cとが形成されている。そして、アジャスタ取付部材8を取り付ける際には、対をなす内向き爪部81a・81aを前補強部材7の取付孔92a,側板2の取付孔92aに差し込んでアジャスタ取付部材8をアジャスタ取付部材係合部81を介して前補強部材7及び側板2に係合し、その位置から爪部81aを支点に回転してアジャスタ取付部材8の底面80を前補強部材7の下端面72a,側板2の下端面22に接触(重合)させ、この状態で図9に示すようにボルトやネジ等の止着具voをアジャスタ取付部材係合部81から変位した位置のネジ止め用の孔82,92cに差し込んでアジャスタ取付部材8を止着している。なお、背板1と側板2に取り付ける場合も同様に取り付けられる。
【0043】
アジャスタ取付部材8を止着した状態では、図9に示すように、底板4の下に前補強部材7、側板2・2及び背板1によって扁平空間SP2が形成されており、家具本体Fa1の下部四隅、すなわち前補強部材7と側板2の入隅部、側板2と背板1の入隅部に配置されたアジャスタ取付部材8に設けられたアジャスタ取付箇所83が前記扁平空間SP2側(内方)に持ち出されている。これによって、アジャスタ取付箇所83に取り付けられるアジャスタの取付軸を扁平空間SP2に逃がすことが可能となり、簡易な構成でアジャスタの取付軸を逃がす空間を確保している。
【0044】
以上のように、本実施形態の組立式収納家具Faは、分割された複数の面板10・11を係合により連結して背板1として用い、この背板1に更に側板2・2及び天板3を連結して組立式収納家具Faを構成するにあたり、背板1に対して共通の天板3を係合させ、この係合部(天板背板係合部5)において天板3に対する各面板10・11の高さ方向の位置決めをなすようにしている。
【0045】
この構成によれば、例えば面板10・11を床に置いた状態で天板3を係合させるだけで高さ方向の位置関係が揃うので、無造作に作業しても面板10・11の高さ位置が食い違うことが無くなり、組立作業効率(施工性)を向上させることが可能となる。
【0046】
特に、本実施形態では、背板1及び天板3は、いずれか一方が他方を巻き込むように係合するので、背板1及び天板3の係合が深まって連結強度を向上させることが可能となる。
【0047】
さらに、本実施形態では、背板1及び天板3は、係合した位置から組立位置まで回転させることで係合状態が維持若しくは係合が深まるように構成されているので、背板1及び天板3を組み付ける係合操作を簡易化することが可能となる。しかも、回転による係合構造を通じて背板1及び天板3の部材間に引き寄せ力を容易に導入することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、背板1及び天板3は、組立状態において係合部(天板背板係合部5)に弾性反発力を蓄積しながら止着具voにより止着されるので、背板1及び天板3の係合部たる天板背板係合部5が弾性反発力によるバネ作用を発現し、ガタつきのない適切な連結を行うことが可能となる。
【0049】
さらに、本実施形態では、面板10・11同士は、いずれか一方が他方を巻き込むように係合するので、面板10・11の係合が深まって連結強度を向上させることが可能となる。
【0050】
さらにまた、本実施形態では、面板10・11同士は、回転によって交差状態から面一状態にまで係合可能とされるので、面板10・11同士を組み付ける係合操作を簡易化することが可能となる。しかも、回転による係合構造を通じて面板10・11同士の部材間に引き寄せ力を容易に導入することが可能となる。
【0051】
さらにまた、本実施形態では、係合状態で隣接する二つの面板10・11のうち少なくとも一つの面板10の上端及び下端に折り曲げ部(背板上折り曲げ部1b,背板下折り曲げ部1d)を設け、これら折り曲げ部(背板上折り曲げ部1b,背板下折り曲げ部1d)を、面板10・11同士の係合部(左右面板係合部17)を高さ方向両側から挟む位置に配置しているので、面板10・11同士を回転により係合するにあたり、面板10・11同士が高さ方向に相対移動することを抑制するとともに折り曲げ部(背板上折り曲げ部1b,背板下折り曲げ部1d)が回転動作のガイドとなり、係合操作を容易且つ円滑に行うことが可能となる。また、面板10・11同士の高さ位置をある程度揃えることも可能となる。
【0052】
さらにまた、本実施形態では、面板10・11同士の係合部(左右面板係合部17)には、面板10・11同士を面一にした際に突き当たることにより面板10・11同士の相対回転を規制する回転規制部18が設けてあるので、面板10・11同士を組み付けた際に背板1の面一度を出しやすく、面剛性も有効に高めることが可能となる。
【0053】
その他、本実施形態では、底板4の後端部に後折り曲げ部43を設け、この後折り曲げ部43と面板10・11同士の係合部(左右面板係合部17)とが止着具voによって止着されているので、背板1のうち剛性の強い部位たる左右面板係合部17に底板4を止着して、底板4を適切に支持することが可能となる。
【0054】
なお、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…背板
1b…背板上折り曲げ部(折り曲げ部)
1d…背板下折り曲げ部(折り曲げ部)
10・11…面板
17…左右面板係合部(面板同士の係合部)
18…回転規制部
2…側板
3…天板
4…底板
43…後折り曲げ部
5…天板背板係合部(天板と背板の係合部)
vo…止着具
Fa…組立式収納家具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割された複数の面板を係合により連結して背板として用い、この背板に更に側板及び天板を連結して構成される収納家具であって、
前記背板に対して共通の天板を係合させ、この係合部において天板に対する各面板の高さ方向の位置決めをなすようにしたことを特徴とする組立式収納家具。
【請求項2】
前記背板及び前記天板は、いずれか一方が他方を巻き込むように係合する請求項1に記載の組立式収納家具。
【請求項3】
前記背板及び前記天板は、係合した位置から組立位置まで回転させることで係合状態が維持若しくは係合が深まるように構成されている請求項1に記載の組立式収納家具。
【請求項4】
前記背板及び前記天板は、組立状態において前記係合部に弾性反発力を蓄積しながら止着具により止着される請求項1〜3のいずれかに記載の組立式収納家具。
【請求項5】
前記面板同士は、いずれか一方が他方を巻き込むように係合する請求項1に記載の組立式収納家具。
【請求項6】
前記面板同士は、回転によって交差状態から面一状態にまで係合可能とされる請求項1又は5に記載の組立式収納家具。
【請求項7】
係合状態で隣接する二つの面板のうち少なくとも一つの面板の上端及び下端に折り曲げ部を設け、これら折り曲げ部を面板同士の係合部を高さ方向両側から挟む位置に配置している請求項6に記載の組立式収納家具。
【請求項8】
前記面板同士の係合部には、当該面板同士を面一にした際に突き当たることにより面板同士の相対回転を規制する回転規制部が設けてある請求項6又は7に記載の組立式収納家具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−90686(P2012−90686A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238945(P2010−238945)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】