説明

組込装置および制御方法

【課題】FPGAの障害対策を適切に実行すること。
【解決手段】組込装置100は、プログラミング可能なFPGA140に用いられる定義用データ、組込装置100の立ち上げ時に利用されるブートプログラム、制御プログラムをフラッシュメモリ110a、110bに記憶し、フラッシュメモリ110cに設定情報を記憶する。そして、フラッシュメモリ切替制御部130が設定情報を基にしてフラッシュメモリを選択(図1に示す例では、フラッシュメモリ110aあるいはフラッシュメモリ110bのいずれか一方を選択)し、選択したフラッシュメモリに記憶された定義用データをFPGA140に組み込むと共に、かかるフラッシュメモリに記憶されたブートプログラムおよび制御プログラムを読み出して組込装置100を立ち上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プログラミング可能な論理回路に用いられる定義用データを異なる記憶装置に記憶し、当該記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込装置およびその制御方法に関し、特に、FPGA等に対する障害対策を適切に実行可能な組込装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔地からのファームウェアの更新が可能な組込装置が普及している。図7は、従来の組込装置を含んだファームウェア更新システムを説明するための説明図である。このファームウェア更新システムは、同図に示すように、組込装置50と、監視制御装置60と、保守センターサーバ70とから構成される。組込装置50は、ネットワーク(図示略)を介して監視制御部60に接続され、監視制御装置60は、ネットワークを介して保守センターサーバ70に接続されている。
【0003】
ここで、保守センターサーバ70は、定期的または組込装置50においてハード/ソフト障害が発生した場合に、修正したファームウェア(以下、修正ファーム)を監視制御装置60に出力する装置である。
【0004】
監視制御装置60は、組込装置50のハード/ソフト障害を常時監視し、組込装置50において障害が発生した場合に、障害の内容を保守センターサーバ70に自動通知する装置である。そして、監視制御装置60は、保守センターサーバ70から修正ファームを取得した場合に、修正ファームを記憶装置61に記憶した後、かかる修正ファームを組込装置50に適用させる。記憶装置61は、修正ファームなどを記憶する記憶装置である。
【0005】
組込装置50は、監視制御装置60によって適用された修正ファームによって各種処理を実行する装置である。ここで、図7を利用して、組込装置50の構成について説明する。組込装置50は、フラッシュメモリ51と、マイクロプロセッサ52と、FPGA(Field Programmable Gate Array)53と、コンフィギュレーションROM(C−ROM)54と、メインメモリ55と、ネットワークインターフェース56とをバス57で接続して構成される。
【0006】
フラッシュメモリ51は、各種データを記憶する手段(格納手段)であり、ブートプログラム領域、制御領域、第1のプログラム領域および第2のプログラム領域を備える。このうち、ブートプログラム領域は、ブートプログラムを記憶する領域であり、制御領域は、第1のプログラム領域および第2のプログラム領域に記憶されるプログラムの各種制御情報を記憶する領域である。また、第1のプログラム領域および第2のプログラム領域は、各種プログラム(上述した修正ファームに対応するプログラム)を記憶する領域である。以下、第1のプログラム領域に記憶されたプログラムを第1のプログラム、第2のプログラム領域に記憶されたプログラムを第2のプログラムと表記する。
【0007】
ここで、制御領域のデータ構造について説明する。図8は、制御領域のデータ構造の一例を示す図である。図8に示すように、この制御領域は、第1世代〜第n世代(nは2以上の整数)までの複数の制御領域を有し、各制御領域は、有効/無効フラグ、動作版数、プログラム領域情報、切替要因、切替実行日時を備える。
【0008】
このうち、有効/無効フラグは、対応する制御領域の情報が有効か無効かを示すフラグである。例えば、制御領域(第1世代)の有効/無効フラグが有効となっていれば、制御領域(第1世代)に記憶された情報は有効となる。なお、古い制御情報を記憶する制御領域の有効/無効フラグは無効に設定される。
【0009】
動作版数は、第1のプログラム領域および第2のプログラム領域に記憶されたプログラムのプログラム版数の情報を示す。プログラム領域情報は、制御プログラムの起動領域の情報を示す(第1のプログラムあるいは第2のプログラムのどちらのプログラムで起動するかを示す情報)。
【0010】
切替要因は、プログラムの切り換えを行う場合の要因を記憶する情報であり、切替実行日時は、プログラムの切替を実行した日時を記憶する情報である。
【0011】
図7の説明に戻ると、マイクロプロセッサ52は、フラッシュメモリ51からメインメモリ55に読み出された第1のプログラムあるいは第2のプログラムにより、組込装置50の制御を行う手段である。マイクロプロセッサ52は、フラッシュメモリ51のプログラム領域情報(図8参照)を基にして、第1のプログラムあるいは第2のプログラムを選択し、選択したプログラムにより組込装置50の制御を行う。
【0012】
また、マイクロプロセッサ52は、ファームウェアを更新する場合(監視制御装置から修正ファームを受信した場合)に、フラッシュメモリ51を参照し、有効フラグが立っている制御情報(制御領域に記憶された情報)を検索する。そして、その制御情報のプログラム領域情報から更新プログラムを書き込む領域を判定する。
【0013】
プログラム領域情報より、例えば、第1のプログラム領域が運用系(第1のプログラムを利用して各種制御を行っている)であり、第2のプログラム領域が待機系(第2のプログラムを利用していない)である場合には、マイクロプロセッサ52は、第2のプログラム領域に更新プログラムを書き込む。そして、ファームウェア(自己)リセットの再起動により、更新プログラムでの立ち上げを行う。
【0014】
FPGA53は、マイクロプロセッサ52からの制御信号に応じてメインメモリ55およびフラッシュメモリ51等の制御を行う手段であり、プログラマブルロジックデバイス(PLD)とかフィールドプログラマブルゲートアレイといったプログラム可能な論理回路である。C−ROM54は、FPGA53によって使用されるプログラムを記憶する手段である。
【0015】
メインメモリ55は、各種情報を記憶する手段であり、SDRAM(Synchronous Dynamic random-access Memory)などで構成される。ネットワークインターフェース56は、所定の通信プロトコルを使用して主に監視制御装置60と通信を行う手段である。
【0016】
このように、従来の組込装置50は、フラッシュメモリ51に記憶された複数の制御プログラム(第1のプログラム、第2のプログラムなど)から最適な制御プログラムを選択して装置の立ち上げを行うと共に、待機系となるプログラム領域に更新プログラム(修正ファーム)を書き込み、ファームウェアの更新を行っているので、トラブル解決までの時間短縮、修正ファーム適用の作業工程数を削減している。
【0017】
しかし、上述した組込装置50は、制御プログラムのみの変更しかできず、C−ROM54に記憶されたFPGA53のデータを更新することができないという問題があった。そのため、ブートプログラムやFPGAの論理回路に障害が発生した場合、組込装置50のハードウェアを直接交換する必要があり、トラブル解決までに時間を長く有するなどの問題があった。
【0018】
そこで、特許文献1では、予め、複数のC−ROMを組込装置に実装させ、FPGAに障害発生した場合には、C−ROMを切り換えてFPGAの論理回路を変更することで、FPGAの障害対策を行うという技術が公開されている。
【0019】
【特許文献1】特開2000−311945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、FPGAに発生し得る障害は多岐にわたるため、上述した従来の技術のように、予め障害を予測して論理回路を変更するプログラムを複数のC−ROMに網羅的に記憶させておくことが難しく、FPGAに対する障害対策を適切に実行することができないという問題があった。
【0021】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、FPGAの障害対策を適切に実行することができる組込装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、プログラミング可能な論理回路に用いられる定義用データを異なる記憶装置に記憶し、当該記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込装置であって、前記記憶装置とは別に設置され、前記論理回路に組み込む定義用データを記憶する記憶装置の情報を含んだ設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、前記設定情報記憶手段に記憶される設定情報に基づいて前記記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、上記発明において、前記記憶装置は、前記定義用データに加えてブートプログラムおよびファームウェアをさらに記憶し、前記組込制御手段は、前記設定情報に基づいて前記記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶されたブートプログラムおよびファームウェアを利用して自組込装置を立ち上げることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上記発明において、前記設定情報は、前記論理回路に組み込まれた定義用データを記憶する記憶装置を示す運用系記憶装置と、前記論理回路に組み込まれていない定義用データを記憶する記憶装置を示す待機系記憶装置とを識別する識別情報をさらに含み、更新された定義用データを取得した場合に、前記識別情報を基にして前記待機系記憶装置に記憶された定義用データを更新する更新手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、上記発明において、前記定義用データを組み込んだ論理回路にエラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段と、前記エラー判定手段の判定結果に基づいて前記設定情報を更新する設定情報更新手段とをさらに備えたことを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、上記発明において、前記エラー判定手段は、前記ブートプログラムおよびファームウェアにエラーが発生したか否かをさらに判定し、判定結果を外部の装置に出力することを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、プログラミング可能な論理回路に用いられる定義用データを異なる第1の記憶装置に記憶し、当該第1の記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込装置の制御方法であって、前記第1の記憶装置とは別に設置された第2の記憶装置に、前記論理回路に組み込む定義用データを記憶する第1の記憶装置の情報を含んだ設定情報を記憶する設定情報記憶工程と、前記設定情報に基づいて前記第1の記憶装置を選択し、選択した第1の記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込制御工程と、を含んだことを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、上記発明において、前記第1の記憶装置は、前記定義用データに加えてブートプログラムおよびファームウェアをさらに記憶し、前記組込制御工程は、前記設定情報に基づいて前記第1の記憶装置を選択し、選択した第1の記憶装置に記憶されたブートプログラムおよびファームウェアを利用して自組込装置を立ち上げることを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、上記発明において、前記組込装置は前記第1の記憶装置を複数備え、前記設定情報は、前記論理回路に組み込まれた定義用データを記憶する第1の記憶装置を示す運用系記憶装置と、前記論理回路に組み込まれていない定義用データを記憶する第1の記憶装置を示す待機系記憶装置とを識別する識別情報をさらに含み、更新された定義用データを取得した場合に、前記識別情報を基にして前記待機系記憶装置に記憶された定義用データを更新する更新工程をさらに含んだことを特徴とする。
【0030】
また、本発明は、上記発明において、前記定義用データを組み込んだ論理回路にエラーが発生したか否かを判定するエラー判定工程と、前記エラー判定工程の判定結果に基づいて前記設定情報を更新する設定情報更新工程とをさらに含んだことを特徴とする。
【0031】
また、本発明は、上記発明において、前記エラー判定工程は、前記ブートプログラムおよびファームウェアにエラーが発生したか否かをさらに判定し、判定結果を外部の装置に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、定義用データを記憶した記憶装置とは別に設置された記憶装置において、論理回路に組み込む定義用データを記憶する記憶装置の情報を含んだ設定情報を記憶し、設定情報に基づいて記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶された定義用データを論理回路に組み込むので、論理回路に対する障害対策を適切に実行することができる。
【0033】
また、本発明によれば、定義用データに加えてブートプログラムおよびファームウェアをさらに記憶装置に記憶し、設定情報に基づいて記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶されたブートプログラムおよびファームウェアを利用して自組込装置を立ち上げるので、ブートプログラムおよびファームウェアの障害対策を適切に実行することができる。
【0034】
また、本発明によれば、設定情報は、運用系記憶装置と、待機系記憶装置とを識別する識別情報をさらに含み、更新された定義用データを取得した場合に、識別情報を基にして待機系記憶装置に記憶された定義用データを更新するので、組込装置を停止させることなく、更新された定義用データを記憶装置に記憶させることができる。
【0035】
また、本発明によれば、定義用データを組み込んだ論理回路にエラーが発生したか否かを判定し、判定結果に基づいて設定情報を更新するので、エラーが発生した場合であっても、適切に組込装置を立ち上げることができる。
【0036】
また、本発明によれば、ブートプログラムおよびファームウェアにエラーが発生したか否かをさらに判定し、判定結果を外部の装置に出力するので、障害対策を迅速に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る組込装置および制御方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0038】
まず、本実施例にかかる組込装置の概要および特徴について説明する。本実施例にかかる組込装置は、プログラミング可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)に用いられる定義用データ(コンフィギュレーションデータ)を異なる複数の記憶装置に記憶し、この記憶装置に記憶された定義データをFPGAに組み込む装置に関するものであり、定義用データを記憶する記憶装置とは別に、FPGAに組み込むべき定義用データを記憶する記憶装置の情報を含んだ設定情報を記憶装置に記憶し、この記憶装置に記憶された設定情報に基づいて記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶された定義用データをFPGAに組み込む。
【0039】
また、本実施例にかかる組込装置は、外部の装置から更新された定義用データを取得した場合に、取得した定義用データによって記憶装置に記憶されていた古い定義用データを更新し、更新した定義用データを新たにFPGAに組み込む。
【0040】
このように、本実施例にかかる組込装置は、定義用データを記憶した記憶装置とは別の記憶装置に設定情報を記憶し、この設定情報を基にしてFPGAに組み込む定義用データを記憶した記憶装置を選択し、選択した記憶装置の定義用データを読み出してFPGAに組み込むので、効率よくFPGAに更新された定義用データを組み込むことができる。
【0041】
また、本実施例にかかる組込装置は、更新された定義用データを取得した場合に、取得した定義用データによって記憶装置に記憶されていた古い定義用データを更新し、更新した定義用データを新たにFPGAに組み込むので、FPGAに組み込むべき複数の定義用データを予め組込装置が保持していなくても、FPGAに対する障害対策を適切に実行することができる。
【0042】
次に、本実施例にかかる組込装置を含んだ更新システムについて説明する。図1は、本実施例にかかる更新システムの構成を示す図である。同図に示すように、この更新システムは、組込装置100と、監視制御装置200と、保守センターサーバ300とから構成される。
【0043】
ここで、保守センターサーバ300は、定期的または組込装置100において障害が発生した場合(組込装置100のブートプログラム、制御プログラムあるいは定義用データに障害が発生した場合)に、障害の内容に応じて更新用のデータ(定期的に更新される各種プログラム、ブートプログラム、制御プログラムあるいは定義用データの更新データ)を監視制御装置200に出力する装置である。
【0044】
監視制御部200は、組込装置100の障害を常時監視し、組込装置100において障害が発生した場合に、障害の内容を保守センターサーバ300に出力する装置である。ここで、監視制御装置200の構成について説明する。図1に示すように、この監視制御装置200は、ネットワークインターフェース210と、マイクロプロセッサ220と、コントローラ230と、メインメモリ240とをバス250で接続して構成される。
【0045】
ネットワークインターフェース210は、所定の通信プロトコルを使用してデータ通信を実行する手段である。このネットワークインターフェース210は、主に、組込装置100および保守センターサーバ300との間でデータ通信を実行する。
【0046】
マイクロプロセッサ220は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する制御手段である。コントローラ230は、組込装置100の障害を常時監視し、組込装置100において障害が発生した場合に、障害の内容を保守センターサーバ300に出力する手段である。
【0047】
コントローラ230は、組込装置100において発生した障害が定義用データの障害である場合には、定義用データに障害が発生した旨の情報を保守センターサーバ300に出力する。また、コントローラ230は、組込装置100において発生した障害がブートプログラムの障害である場合には、ブートプログラムに障害が発生した旨の情報を保守センターサーバ300に出力する。また、コントローラ230は、組込装置100において発生した障害が制御プログラム(ファームウェアを含む)である場合には、制御プログラムに障害が発生した旨の情報を保守センターサーバ300に出力する。
【0048】
そして、コントローラ230は、保守センターサーバ300から更新用のデータを取得した場合に、取得した更新用のデータを記憶装置200aに記憶した後、かかる更新用のデータを組込装置100に適用させる。記憶装置200aは、更新用のデータを記憶する記憶手段である。
【0049】
メインメモリ240は、マイクロプロセッサ220による各種処理に必要なデータおよびプログラムを記憶する記憶手段(格納手段)である。
【0050】
続いて、組込装置100の構成について説明する。図1に示すように、この組込装置100は、フラッシュメモリ110a〜110cと、マイクロプロセッサ120と、フラッシュメモリ切替制御部130と、FPGA140と、メインメモリ150と、ネットワークインターフェース160と、エラー検出部170とをバス180で接続して構成される。
【0051】
このうち、フラッシュメモリ110aおよび110bは、各種データを記憶する手段(格納手段)であり、ブートプログラム領域、制御領域、制御プログラム領域、FPGAデータ領域を備える。このうち、ブートプログラム領域は、ブートプログラムを記憶する領域であり、制御領域は、制御プログラム領域およびFPGAデータ領域に記憶されるプログラムの各種制御情報を記憶する領域である。制御プログラム領域は、ファームウェアを記憶する領域である。FPGAデータ領域は、FPGA140に組み込まれる定義用データを記憶する領域である。
【0052】
ここで、制御領域のデータ構造について説明する。図2は、本実施例にかかる制御領域のデータ構造の一例を示す図である。同図に示すように、この制御領域は、第1世代〜第n世代(nは2以上の整数)までの複数の制御領域を有し、各制御領域は、有効/無効フラグ、動作版数、切替要因、切替実行日時を備える。
【0053】
このうち、有効/無効フラグは、対応する制御領域の情報が有効か無効かを示すフラグである。例えば、制御領域(第1世代)の有効/無効フラグが有効となっていれば、制御領域(第1世代)に記憶された情報は有効となる。なお、古い制御情報を記憶する制御領域の有効/無効フラグは無効に設定される。
【0054】
動作版数は、制御プログラム領域およびFPGAデータ領域に記憶されたファームウェア、ブートプログラム領域に記憶されたブートプログラムおよび定義用データの版数の情報を示す。切替要因は、プログラムの切替を行う場合の要因を記憶する情報であり、切替実行日時は、プログラムの切替を実行した日時を記憶する情報である。
【0055】
図1の説明に戻ると、フラッシュメモリ110cは、組込装置100の起動時に利用するフラッシュメモリの設定情報を記憶する記憶手段(格納手段)である。図3は、設定情報のデータ構造の一例を示す図である。同図に示すように、この設定情報は、フラッシュメモリ識別情報と、運用系フラグと、待機系フラグとを備える。
【0056】
このうち、フラッシュメモリ識別情報は、フラッシュメモリを識別する情報であり、例えば、「F0001」は、フラッシュメモリ110aに対応し、「F0002」は、フラッシュメモリ110bに対応する。
【0057】
運用系フラグは、運用系となるフラッシュメモリを示すフラグである。具体的には、運用系フラグがオンとなるフラッシュメモリが運用系のフラッシュメモリとなる。図3に示す例では、フラッシュメモリ識別情報「F0001」のフラッシュメモリ110aが運用系のフラッシュメモリとなっている。組込装置100は、起動時に、運用系フラグがオンとなっているフラッシュメモリから定義用データを読み込んでFPGA140に組み込むとともに、かかるフラッシュメモリからブートプログラムおよび制御プログラム(ファームウェア)を読み出して立ち上げを実行する。
【0058】
待機系フラグは、待機系となるフラッシュメモリを示すフラグである。具体的には、待機系フラグがオンとなるフラッシュメモリが待機系のフラッシュメモリとなる。図3に示す例では、フラッシュメモリ識別情報「F0002」のフラッシュメモリ110bが待機系のフラッシュメモリとなっている。更新された各種データ(ブートプログラム、制御プログラム、定義用データ)は、待機系のフラッシュメモリに書き込まれる。
【0059】
マイクロプロセッサ120は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する制御手段である。フラッシュメモリ切替制御部130は、フラッシュメモリ110cに記憶された設定情報を読み出し、読み出した設定情報に基づいて運用系となるフラッシュメモリと待機系となるフラッシュメモリとを切り替える手段である。
【0060】
例えば、図3のように設定情報が設定されている場合には、フラッシュメモリ切替制御部130は、フラッシュメモリ110aを運用系に切り替える。マイクロプロセッサ120は、運用系のフラッシュメモリに記憶されたブートプログラムおよび制御プログラムをメインメモリ150に読み出し、読み出したブートプログラムおよび制御プログラムを実行して組込装置100の立ち上げを行う。
【0061】
FPGA140は、マイクロプロセッサ120からの制御信号に応じてメインメモリ150およびフラッシュメモリ110a〜110c等の制御を行う手段であり、プログラマブルロジックデバイス(PLD)とかフィールドプログラマブルゲートアレイといったプログラム可能な論理回路である。FPGA140は、フラッシュメモリ切替制御部130によって運用系に切り替えられたフラッシュメモリから定義用データを読み出して、読み出した定義用データを組み込み、各種処理を実行する。
【0062】
メインメモリ150は、各種情報を記憶する手段であり、SDRAM(Synchronous Dynamic random-access Memory)などで構成される。ネットワークインターフェース160は、所定の通信プロトコルを使用して主に監視制御装置200と通信を行う手段である。
【0063】
エラー検出部170は、運用系となるフラッシュメモリに記憶されたブートプログラム、制御プログラムおよび定義用データに障害が発生したか否かを判定する手段である。また、エラー検出部170は、監視制御装置200から更新用のデータを取得した場合に、その旨をマイクロプロセッサ120に通知する。
【0064】
エラー検出部170が障害の発生を判定する手法は、従来技術による障害検出手法を利用すればよい。例えば、FPGA140が定義用データを組み込んだ後、所定期間内にFPGA140からの応答がない場合には、エラー検出部170は、定義用データに障害が発生したと判定し、障害の内容を監視制御装置200に出力する(この場合には、定義用データに障害が発生した旨の情報を監視制御装置200のコントローラ230に出力する)。同様に、エラー検出部170は、ブートプログラムに障害が発生した場合や、制御プログラムに障害が発生した場合にも、障害の内容を監視制御装置200に出力する。
【0065】
続いて、更新用のデータを取得した場合の処理について説明すると、エラー検出部170は、監視制御装置200から更新用のデータを取得した場合にその旨をマイクロプロセッサ120に通知し、マイクロプロセッサ120は、フラッシュメモリ110cに記憶された設定情報から待機系のフラッシュメモリを判定し、判定したフラッシュメモリに更新用のデータを書き込む。
【0066】
更新用のデータがブートプログラムの更新データである場合には、マイクロプロセッサ120は、ブートプログラム領域に記憶されたブートプログラムを更新し、制御領域の制御情報を更新する。更新用のデータが制御プログラム(ファームウェア)の更新データである場合には、マイクロプロセッサ120は、制御プログラム領域に記憶された制御プログラムを更新し、制御領域の制御情報を更新する。また、更新用のデータが定義用データの更新データである場合には、マイクロプロセッサ120は、FPGAデータ領域に記憶された定義用データを更新し、制御領域の制御情報を更新する。
【0067】
そして、マイクロプロセッサ120は、待機系のフラッシュメモリに対する更新用のデータの登録が完了した後に、フラッシュメモリ110cに記憶された設定情報を変更するとともに、組込装置100のリセットを行う。設定情報の更新を具体的に説明すると、マイクロプロセッサ120は、更新用のデータの登録が完了したフラッシュメモリの運用系フラグをオン、待機系フラグをオフとし、それまで運用系となっていたフラッシュメモリの運用系フラグをオフ、待機系フラグをオンとする。
【0068】
このように、マイクロプロセッサ120が待機系となるフラッシュメモリに更新用のデータを書き込み、フラッシュメモリ110cの設定情報を変更するので、組込装置100が再起動した場合に、障害のない更新用のデータを基にして各種処理を実行することができる。
【0069】
次に、本実施例にかかる組込装置100の処理について説明する。図4は、本実施例にかかる組込装置100の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、組込装置100は、フラッシュメモリ切替制御部130がフラッシュメモリ110cから設定情報を取得し(ステップS101)、設定情報に基づいてフラッシュメモリを選択する(ステップS102)。
【0070】
そして、FPGA140は、定義用データを取得し(ステップS103)、FPGA140がコンフィギュレーションを実行し(ステップS104)、エラー検出部170は障害を検出したか否かを判定する(ステップS105)。
【0071】
エラー検出部170が障害を検出した場合には(ステップS106,Yes)、エラー検出部170は、障害の内容を監視制御装置200に出力し(ステップS107)、更新処理を実行し(ステップS108)、ステップS101に移行する。
【0072】
一方、エラー検出部が障害を検出しなかった場合には(ステップS106,No)、フラッシュメモリからブートプログラムを読出し(ステップS109)、障害が発生したか否かを判定する(ステップS110)。
【0073】
エラー検出部170がブートプログラムの障害を検出した場合には(ステップS111,Yes)、ステップS107に移行する。一方、障害を検出しなかった場合には(ステップS111,No)、制御プログラムの読出しを行い(ステップS112)、障害を検出したか否かを判定する(ステップS113)。
【0074】
エラー検出部170が制御プログラムの障害を検出した場合には(ステップS114,Yes)、ステップS107に移行する。一方、障害を検出しなかった場合には(ステップS114,No)、組込装置100の立ち上げを行う。
【0075】
続いて、図4のステップS108において示した更新処理について説明する。図5は、更新処理の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、組込装置100が更新用のデータを取得した場合に(ステップS201)、マイクロプロセッサ120がフラッシュメモリ110cに記憶された設定情報を取得して更新用のデータを書き込むフラッシュメモリを選択する(ステップS202)。
【0076】
そして、マイクロプロセッサ120が更新用のデータをフラッシュメモリに書き込み(ステップS203)、フラッシュメモリ110cに記憶された設定情報を更新し(ステップS204)、組込装置100をリセットする(ステップS205)。
【0077】
このように、フラッシュメモリ切替制御部130がフラッシュメモリ110cに記憶された設定情報を基にしてフラッシュメモリを選択し、選択したフラッシュメモリに記憶されるブートプログラム、制御プログラムおよび定義用データによって組込装置100の立ち上げを実行するので、ブートプログラム、制御プログラム、定義用データを効率よく更新することができる。
【0078】
上述してきたように、本実施例にかかる組込装置100は、プログラミング可能なFPGA140に用いられる定義用データ、組込装置100の立ち上げ時に利用されるブートプログラム、制御プログラムをフラッシュメモリ110a、110bに記憶し、フラッシュメモリ110cに設定情報を記憶し、フラッシュメモリ切替制御部130が設定情報を基にしてフラッシュメモリを選択(図1に示す例では、フラッシュメモリ110aあるいはフラッシュメモリ110bのいずれか一方を選択)し、選択したフラッシュメモリに記憶された定義用データをFPGA140に組み込むと共に、かかるフラッシュメモリに記憶されたブートプログラムおよび制御プログラムを読み出して組込装置100を立ち上げるので、フィールドにおいて、ブートプログラム、制御プログラム、FPGAの定義用データの版数アップが可能となり、組込装置100のブートプログラムやハードウェア(FPGA)に障害が発生した場合にでもハードウェアを交換することなく保守センターサーバ300からの修正プログラムを適用できる。
【0079】
また、本実施例にかかる組込装置100は、待機系のフラッシュメモリに更新されたデータを書き込むので、顧客のシステムを業務停止することなく保守可能で、保守時間を大幅に短縮することができる。また、基板を工場に返却する必要がないため、保守作業や工場の作業工数を大幅に削減することができる。改版が生じた場合にでも改版作業時間を短縮できる。
【0080】
また、エラー検出部170が、組込装置100の立ち上げ時に障害を検出した場合に、障害の内容を監視制御装置200に通知し、マイクロプロセッサ120が更新用のデータを取得して待機系のフラッシュメモリに記憶し、再起動するので、障害対策を効率よく実行することができる。
【0081】
なお、本実施例にかかる組込装置100は、自装置(組込装置100)が立ち上がった後、運用中にエラーが発生した場合にも、障害内容を監視制御装置200に通知し、更新処理を実行する。すなわち、組込装置100のエラー検出部170が、ブートプログラム、制御プログラムあるいはFPGAデータのバグを検出した場合には、障害内容を監視制御装置200に通知する。そして、エラー検出部170は、保守センターサーバ300から送られる更新データを待機系のフラッシュメモリに記録し、フラッシュメモリ110cに記憶された設定情報を変更する(各フラッシュメモリの運用系フラグおよび待機系フラグのオン・オフを切り換える)。その後、組込装置100は、エラー検出部170によりリセットされ、図4に対応する処理を実行する。
【0082】
組込装置100が立ち上がった後の不具合検出は、管理者が行っても構わない。管理者が工場などで、ブートプログラム、制御プログラムあるいはFPGAデータのバグを検出した場合には、更新プログラムを保守センターサーバ300に置き、待機系のフラッシュメモリに更新プログラムを記憶させると共に、組込装置100にフラッシュメモリ110cの設定情報を更新させ、図4に対応する処理を組込装置100に実行させる。
【0083】
また、組込装置100は、各フラッシュメモリに記憶された新旧データを選択して立ち上げを行っているので、万が一トラブルにより新版数の立ち上げに失敗した場合にでも、旧版数の切替および再起動により即時復旧することができる。
【0084】
ところで、本実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部あるいは一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0085】
また、図示した組込装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部がCPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0086】
ここで、図1に示した組込装置100の具体的な構成について説明する。図6は、図1に示した組込装置100の具体的な構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この組込装置100は、マイクロプロセッサ400と、フラッシュメモリ410a〜410cと、フラッシュメモリ切替制御部420と、FPGA430と、SW440と、エラー検出部450とを備えて構成される。
【0087】
マイクロプロセッサ400は、図1に示したマイクロプロセッサ120に対応し、フラッシュメモリ410a〜410cに対してリード/ライト可能とする。フラッシュメモリ410a〜410cは、図1に示したフラッシュメモリ110a〜110cにそれぞれ対応し、フラッシュメモリ410a、410bは、異なる版数のブートプログラム、制御プログラムおよび定義用データを記憶する。組込装置100は、−CS1、−CS2で選択されたフラッシュメモリの内容で立ち上がる。なお、ここでは、フラッシュメモリ410a〜410cのフラッシュメモリのみを示すがこれに限定されるものではなく、その他のフラッシュメモリを備えて組込装置100を構成してもよい。
【0088】
フラッシュメモリ切替制御部420は、図1に示したフラッシュメモリ切替制御部130に対応し、フラッシュメモリ410cと、フラッシュメモリリード制御部421と、コンフィギュレーション制御部422と、論理回路部(レジスタ423,424、XOR(eXclusive OR)425、MPX(マルチプレクサ)426、セレクタ427,428、FWR(Firmware Reset Flag)429a、FCR(Force Reset Flag)429b)とを備えて構成される。
【0089】
フラッシュメモリ410cは、設定情報(図3参照)に対応するデータを記憶する。フラッシュメモリリード制御部421は、電源投入時、ファームリセット時、フォースリセット時、またはマイクロプロセッサ400からの指示により、フラッシュメモリ410cの読み出しを行い、読み出したデータをレジスタ423に格納する。なお、フラッシュメモリリード制御部421は、FPGA430のリード制御部431からの指示を受け付けた場合にも、フラッシュメモリ410cの読み出しを行う。
【0090】
コンフィギュレーション制御部422は、論理回路部によって選択されたフラッシュメモリに記憶された定義用データによってFPGA430をコンフィギュレーションする(定義用データをFPGA430に組み込む)。
【0091】
続いて、論理回路部の説明に移ると、レジスタ423は、フラッシュメモリ410cから読み出されたデータを記憶するレジスタである。レジスタ424は、電源投入時、ファームリセット時、フォースリセット時にレジスタ423と、FCR429bに記憶されたデータをXORした値を記憶するレジスタである。このレジスタ424には、運用系のフラッシュメモリを示すデータが記憶される。XOR425は、レジスタ423に記録された情報およびFCR429bに記憶された情報とをXORした結果をレジスタ424に出力する装置である。
【0092】
FWR429aは、マイクロプロセッサ400からファームウェアリセットが指示されたか否かのデータを格納するレジスタである。FCR429bは、フォースリセットが指示されたか否かのデータを格納するレジスタである。FWR429aおよびFCR429bは、電源投入時あるいはマイクロプロセッサ(FPGAのレジスタ経由)からリセット可能なレジスタである。
【0093】
MPX426は、電源投入時、ファームリセット時、フォースリセット時のFPGA430のコンフィギュレーションやファームブート、あるいは更新データ書き換え時にフラッシュメモリを選択する論理回路である。セレクタ427,428は、MPX426の指示により、フラッシュメモリを選択するセレクタである。
【0094】
FPGA430は、図1に示したFPGA140に対応し、リード制御部431と、レジスタ432,433と、FWR部434と、FCR435部とを備える。レジスタ432は、レジスタ423と同じ値を記憶するレジスタであり、マイクロプロセッサ400から読み出しが可能である。
【0095】
レジスタ433は、レジスタ424と同じ値を記憶するレジスタであり、マイクロプロセッサ400から読み出しが可能である。FWR部434は、FWR429aと同じ値を記憶するとともに、マイクロプロセッサ400からFWR429aの値をクリアすることができる。FCR部435は、FCR429bと同じ値を記憶するとともに、マイクロプロセッサ400からFCR429bの値をクリアすることができる。
【0096】
エラー検出部450は、図1に示したエラー検出部170に対応し、FPGA430の障害を検出した場合(定義用データを組み込んだ後、所定期間内に応答がない場合)には、SW(スイッチ)440をオンとする。SW440がオンとなると、FCR429bにフォースリセットを実行する旨の情報が記憶される。
【0097】
続いて、図6に示した組込装置100の処理について説明する。電源投入時、フラッシュメモリ切替制御部420は、フラッシュメモリリード制御部421が動作し、フラッシュメモリ410cの0番地の値を読み出し、読み出した値をレジスタ423,424に記憶する。
【0098】
コンフィギュレーション制御部422は、FPGA430のコンフィギュレーションを開始するため、−SELA信号をアクティブにする。論理回路部は、レジスタ424に示されたフラッシュメモリ選択情報により、FPGA430のコンフィギュレーションを行うフラッシュメモリを判定する。
【0099】
FPGA430のコンフィギュレーション終了後、マイクロプロセッサ400が動作を開始し、−SELB信号がアクティブとなり、論理回路部によりコンフィギュレーションした同じフラッシュメモリが選択されてブートが開始される。例えば、論理回路部は、レジスタ424に「1」が記憶されている場合には、フラッシュメモリ410aを選択し、レジスタ424に「0」が記憶されている場合には、フラッシュメモリ410bを選択する。
【0100】
ブートプログラムや制御プログラム、あるいは定義用データにデータ更新(修正)があった場合、マイクロプロセッサ400は、レジスタ424の値から更新プログラム(更新用データに対応)を書き込むフラッシュメモリを判定する。例えば、レジスタ424の値が「1」であれば、運用系のフラッシュメモリはフラッシュメモリ410aであるため、更新プログラムは、待機系のフラッシュメモリ410bに書き込まれる(マイクロプロセッサ400は、−SEL2信号を使用してフラッシュメモリ410bのデータを書き換える)。
【0101】
更新プログラムの書き込みが正常終了した後、マイクロプロセッサ400は、レジスタ424の反転値「0」をフラッシュメモリ410cの0番地に書き込む。この後、ファームウェア(自己)リセットの再起動により、フラッシュメモリ切替制御部420のフラッシュメモリリード制御部421が動作し、フラッシュメモリ410cの0番地の値を読み出し、レジスタ423,424にその値「0」を記憶する。このようにして、更新したデータでFPGAコンフィギュレーションとマイクロプロセッサ400のブートが可能となる。
【0102】
なお、更新プログラムの書き込みに失敗した場合には、フラッシュメモリ410cのデータ書き換えを行わないため、現状版数のフラッシュメモリで立ち上がることができる。また、フラッシュメモリ410cのデータ書き換えに失敗した場合にでも現状版数のフラッシュメモリで立ち上がることができる。
【0103】
フォースリセットは、強制的に版数切替を行うリセットである(人手によるスイッチによっても実行可能とする)。フォースリセットが実行されると、フラッシュメモリ切替制御部420のFCR429bに「1」(要因)がセットされ、リセットによる再起動がかかり、フラッシュメモリリード制御部421が動作し、フラッシュメモリリード制御部421は、フラッシュメモリ410cの0番地の値を読み出し、レジスタ423に格納する。
【0104】
論理回路部(レジスタ424の入力は、レジスタ423とFCR429bとのXOR論理)によりFCR429bレジスタに格納された値がフォースリセット時には「1」であるため、レジスタ424にはレジスタ423の反転した値が格納される。
【0105】
これにより、立ち上げ(コンフィギュレーションとブート)を行うフラッシュメモリが運用系から待機系に切り替わる。マイクロプロセッサ400は、ブート完了後、FCR部435(FCR429bと同じ値を記憶)に要因が残っていることから、フォースリセットが実行されたと判定し、フラッシュメモリ410cの0番地の値をレジスタ433(レジスタ424と同じ値を記憶)と同じ値に書き換える。このように、マイクロプロセッサ400は、必ず立ち上がるべき、フラッシュメモリを選択できるようにフラッシュメモリ410cの値を書き換えているため、次の電源投入時にはフラッシュメモリの選択を間違うことがない。
【0106】
(付記1)プログラミング可能な論理回路に用いられる定義用データを異なる記憶装置に記憶し、当該記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込装置であって、
前記記憶装置とは別に設置され、前記論理回路に組み込む定義用データを記憶する記憶装置の情報を含んだ設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、
前記設定情報記憶手段に記憶される設定情報に基づいて前記記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込制御手段と、
を備えたことを特徴とする組込装置。
【0107】
(付記2)前記記憶装置は、前記定義用データに加えてブートプログラムおよびファームウェアをさらに記憶し、前記組込制御手段は、前記設定情報に基づいて前記記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶されたブートプログラムおよびファームウェアを利用して自組込装置を立ち上げることを特徴とする付記1に記載の組込装置。
【0108】
(付記3)前記設定情報は、前記論理回路に組み込まれた定義用データを記憶する記憶装置を示す運用系記憶装置と、前記論理回路に組み込まれていない定義用データを記憶する記憶装置を示す待機系記憶装置とを識別する識別情報をさらに含み、更新された定義用データを取得した場合に、前記識別情報を基にして前記待機系記憶装置に記憶された定義用データを更新する更新手段をさらに備えたことを特徴とする付記1または2に記載の組込装置。
【0109】
(付記4)前記定義用データを組み込んだ論理回路にエラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段と、前記エラー判定手段の判定結果に基づいて前記設定情報を更新する設定情報更新手段とをさらに備えたことを特徴とする付記1、2または3に記載の組込装置。
【0110】
(付記5)前記エラー判定手段は、前記ブートプログラムおよびファームウェアにエラーが発生したか否かをさらに判定し、判定結果を外部の装置に出力することを特徴とする付記4に記載の組込装置。
【0111】
(付記6)前記更新手段は、更新されたブートプログラムおよび/またはファームウェアを取得した場合に、前記識別情報を基にして前記待機系記憶装置に記憶されたブートプログラムおよび/またはファームウェアを更新することを特徴とする付記5に記載の組込装置。
【0112】
(付記7)プログラミング可能な論理回路に用いられる定義用データを異なる第1の記憶装置に記憶し、当該第1の記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込装置の制御方法であって、
前記第1の記憶装置とは別に設置された第2の記憶装置に、前記論理回路に組み込む定義用データを記憶する第1の記憶装置の情報を含んだ設定情報を記憶する設定情報記憶工程と、
前記設定情報に基づいて前記第1の記憶装置を選択し、選択した第1の記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込制御工程と、
を含んだことを特徴とする制御方法。
【0113】
(付記8)前記第1の記憶装置は、前記定義用データに加えてブートプログラムおよびファームウェアをさらに記憶し、前記組込制御工程は、前記設定情報に基づいて前記第1の記憶装置を選択し、選択した第1の記憶装置に記憶されたブートプログラムおよびファームウェアを利用して自組込装置を立ち上げることを特徴とする付記7に記載の制御方法。
【0114】
(付記9)前記組込装置は前記第1の記憶装置を複数備え、前記設定情報は、前記論理回路に組み込まれた定義用データを記憶する第1の記憶装置を示す運用系記憶装置と、前記論理回路に組み込まれていない定義用データを記憶する第1の記憶装置を示す待機系記憶装置とを識別する識別情報をさらに含み、更新された定義用データを取得した場合に、前記識別情報を基にして前記待機系記憶装置に記憶された定義用データを更新する更新工程をさらに含んだことを特徴とする付記7または8に記載の制御方法。
【0115】
(付記10)前記定義用データを組み込んだ論理回路にエラーが発生したか否かを判定するエラー判定工程と、前記エラー判定工程の判定結果に基づいて前記設定情報を更新する設定情報更新工程とをさらに含んだことを特徴とする付記7、8または9に記載の制御方法。
【0116】
(付記11)前記エラー判定工程は、前記ブートプログラムおよびファームウェアにエラーが発生したか否かをさらに判定し、判定結果を外部の装置に出力することを特徴とする付記10に記載の制御方法。
【0117】
(付記12)前記更新工程は、更新されたブートプログラムおよび/またはファームウェアを取得した場合に、前記識別情報を基にして前記待機系記憶装置に記憶されたブートプログラムおよび/またはファームウェアを更新することを特徴とする付記11に記載の制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上のように、本発明にかかる組込装置および制御方法は、複数の記憶装置の中から記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶されたデータを利用して装置の立ち上げを実行する組込装置に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本実施例にかかる更新システムの構成を示す図である。
【図2】本実施例にかかる制御領域のデータ構造の一例を示す図である。
【図3】設定情報のデータ構造の一例を示す図である。
【図4】本実施例にかかる組込装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】更新処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図1に示した組込装置の具体的な構成を示す機能ブロック図である。
【図7】従来の組込装置を含んだファームウェア更新システムを説明するための説明図である。
【図8】制御領域のデータ構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0120】
50,100 組込装置
51,110a、110b、110c,410a,410b,410c フラッシュメモリ
52,120,220,400 マイクロプロセッサ
53,140,430 FPGA
54 C−ROM
55,150,240 メインメモリ
56,160,210 ネットワークインターフェース
60,200 監視制御装置
61,200a 記憶装置
70,300 保守センターサーバ
130,420 フラッシュメモリ切替制御部
170,450 エラー検出部
230 コントローラ
421 フラッシュメモリリード制御部
422 コンフィギュレーション制御部
423,424,432,433 レジスタ
425 XOR
426 MPX
427,428 セレクタ
429a FWR
429b FCR
434 FWR部
435 FCR部
440 SW(スイッチ)
450 エラー検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラミング可能な論理回路に用いられる定義用データを異なる記憶装置に記憶し、当該記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込装置であって、
前記記憶装置とは別に設置され、前記論理回路に組み込む定義用データを記憶する記憶装置の情報を含んだ設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、
前記設定情報記憶手段に記憶される設定情報に基づいて前記記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込制御手段と、
を備えたことを特徴とする組込装置。
【請求項2】
前記記憶装置は、前記定義用データに加えてブートプログラムおよびファームウェアをさらに記憶し、前記組込制御手段は、前記設定情報に基づいて前記記憶装置を選択し、選択した記憶装置に記憶されたブートプログラムおよびファームウェアを利用して自組込装置を立ち上げることを特徴とする請求項1に記載の組込装置。
【請求項3】
前記設定情報は、前記論理回路に組み込まれた定義用データを記憶する記憶装置を示す運用系記憶装置と、前記論理回路に組み込まれていない定義用データを記憶する記憶装置を示す待機系記憶装置とを識別する識別情報をさらに含み、更新された定義用データを取得した場合に、前記識別情報を基にして前記待機系記憶装置に記憶された定義用データを更新する更新手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の組込装置。
【請求項4】
前記定義用データを組み込んだ論理回路にエラーが発生したか否かを判定するエラー判定手段と、前記エラー判定手段の判定結果に基づいて前記設定情報を更新する設定情報更新手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の組込装置。
【請求項5】
前記エラー判定手段は、前記ブートプログラムおよびファームウェアにエラーが発生したか否かをさらに判定し、判定結果を外部の装置に出力することを特徴とする請求項4に記載の組込装置。
【請求項6】
プログラミング可能な論理回路に用いられる定義用データを異なる第1の記憶装置に記憶し、当該第1の記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込装置の制御方法であって、
前記第1の記憶装置とは別に設置された第2の記憶装置に、前記論理回路に組み込む定義用データを記憶する第1の記憶装置の情報を含んだ設定情報を記憶する設定情報記憶工程と、
前記設定情報に基づいて前記第1の記憶装置を選択し、選択した第1の記憶装置に記憶された定義用データを前記論理回路に組み込む組込制御工程と、
を含んだことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
前記第1の記憶装置は、前記定義用データに加えてブートプログラムおよびファームウェアをさらに記憶し、前記組込制御工程は、前記設定情報に基づいて前記第1の記憶装置を選択し、選択した第1の記憶装置に記憶されたブートプログラムおよびファームウェアを利用して自組込装置を立ち上げることを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記組込装置は前記第1の記憶装置を複数備え、前記設定情報は、前記論理回路に組み込まれた定義用データを記憶する第1の記憶装置を示す運用系記憶装置と、前記論理回路に組み込まれていない定義用データを記憶する第1の記憶装置を示す待機系記憶装置とを識別する識別情報をさらに含み、更新された定義用データを取得した場合に、前記識別情報を基にして前記待機系記憶装置に記憶された定義用データを更新する更新工程をさらに含んだことを特徴とする請求項6または7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記定義用データを組み込んだ論理回路にエラーが発生したか否かを判定するエラー判定工程と、前記エラー判定工程の判定結果に基づいて前記設定情報を更新する設定情報更新工程とをさらに含んだことを特徴とする請求項6、7または8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記エラー判定工程は、前記ブートプログラムおよびファームウェアにエラーが発生したか否かをさらに判定し、判定結果を外部の装置に出力することを特徴とする請求項9に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−165627(P2008−165627A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356475(P2006−356475)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】