説明

組電池、電池パック

【課題】組電池を構成する各電池モジュールの寿命のバラツキを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】組電池1は、車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する組電池であって、複数の電池セル12Aが並列接続された電池モジュール10Bと、複数の単電池が並列接続され、電池モジュール10Bよりも放熱性の低い領域に位置する電池モジュール10Aと、を有し、電池モジュール10Aは、電池モジュール10Bよりも電池セル12Aが多いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池によって構成される組電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を意識した車両として、車両走行用の電動モータを搭載した電気自動車、ハイブリッド自動車などが注目され、実用されている。電動モータは、充放電可能な複数の単電池で構成される組電池から出力される電力により駆動する。
【0003】
組電池には、電池容量を大きくするために複数の単電池を並列接続して1つの電池モジュールとし、出力を増大させるために複数の電池モジュールを直列接続させた構成のものがある。
【0004】
また車両内の配置スペースの関係で、電池モジュールの近くにジャンクションボックス(以下、J/Bと記す)や充電器、排気管といった発熱体が存在する場合がある。
【0005】
関連のある技術として、複数の素電池(単電池)が収納された容器内で、一部の素電池の放熱性が他より低く、充放電サイクルに伴って素電池間の容量格差の拡大するところを、予めその一部素電池の容量を他より大きいものにする組電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−269360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発熱体が近くにある電池モジュール等、放熱性の低い領域(スポット的高熱部位)に位置する電池モジュールは、内部の単電池の容量が発熱体からの熱により他の単電池の容量よりも早期に低下するため、寿命が短くなる。この問題への対処として、従来、スポット的高熱部位に配置される電池モジュールを基準として組電池の寿命を決定している。しかしながらこの対処では、最も劣化する電池モジュールによってパック出力が決まってしまうため、他の電池モジュールを使いきれずに寿命となってしまう。
【0008】
また上記問題への対処として、車種毎に、組電池毎にそれぞれ冷却設計をチューニングする手法もあるが、複数の電池モジュールへ一括送風して冷却するような冷却構造とすることができないため、電池モジュールに個別対応した複雑な冷却構造が必要となる。また車種毎に発熱体の位置が異なり、発熱レベルも異なるため、これらに応じた設計が毎回必要となり、汎用性に欠ける。
【0009】
特許文献1を車載用の電池に適用する場合、容量の異なる単電池を組み合わせ、劣化進度の高い箇所に容量の大きい単電池を配置することとなる。単電池の容量を決める場合に発熱体の熱量も考慮する必要があるため、様々な容量の単電池を用意する必要がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされるものであり、電池モジュールの劣化進度(劣化の進み具合い)のバラツキを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の組電池は、(1)車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する組電池であって、複数の単電池が並列接続された第1電池モジュールと、複数の単電池が並列接続され第1電池モジュールよりも放熱性の低い領域に位置する第2電池モジュールと、を有し、第2電池モジュールは、第1電池モジュールよりも単電池の個数が多いことを特徴とする。この構成により、第2電池モジュールの劣化進度を抑え、第1電池モジュールと第2電池モジュールとの間で生ずる劣化進度のバラツキを抑制することができる。
【0012】
(2)上記(1)の構成において、第2電池モジュールは、前記第1電池モジュールよりも発熱体に近い領域に位置することを特徴とする。この構成により、発熱体近くの第2電池モジュールの劣化進度を抑えることができ、電池モジュールの劣化進度のバラツキを抑制できる。
【0013】
(3)また、上記(2)の構成において、前記発熱体は、前記組電池の充放電の際に発熱する発熱機器であり、前記発熱機器は、例えば、前記組電池の充放電を許容する第1の状態と、充放電を許容しない第2の状態との間で動作するリレーを収容したジャンクションボックスである。また前記発熱機器は、車両外部に設けられた電源により該組電池を充電するための充電器であってもよい。また、前記発熱体は、車両の排気ガスを放出する排気管であってもよい。
【0014】
また本発明の組電池は、(4)車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する組電池であって、複数の単電池が並列接続された電池モジュールであり冷却経路内に配置される第1電池モジュールと、複数の単電池が並列接続された電池モジュールであり第1電池モジュールよりも冷却経路の下流側に配置される第2電池モジュールと、を有し、第2電池モジュールは、第1電池モジュールよりも単電池の個数が多いことを特徴とする。この構成により、放熱性が低くなる下流側に配置される第2電池モジュールの劣化進度を抑えることができ、第1電池モジュールとの間での劣化進度のバラツキを抑制することができる。
【0015】
(5)上記(4)の構成において、前記第1電池モジュール、前記第2電池モジュールは、それぞれ金属板を有し、各電池モジュール内の複数の単電池は、前記金属板に固定されていることを特徴とする。この構成により、電池モジュール内での単電池の温度バラツキを解消することができる。
【0016】
(6)また上記(4)の構成において、前記第2モジュールが配置される位置における冷却経路の断面積は、前記第1モジュールが配置される位置における冷却経路の断面積よりも小さいことを特徴とする。この構成により、より下流側にある第2モジュール付近の冷却風の流速が上がり冷却性能が向上するため、電池モジュール内での単電池の温度バラつきを抑制することができる。
【0017】
本発明の電池パックは、(7)車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する組電池を備える電池パックであって、冷却経路と、複数の単電池が並列接続された電池モジュールであり冷却経路内に配置される第1電池モジュールと、複数の単電池が並列接続された電池モジュールであり、第1電池モジュールよりも前記冷却経路の下流側に配置される第2電池モジュールと、を有し、第2電池モジュールは、第1電池モジュールよりも単電池の個数が多いことを特徴とする。この構成においても、上記(4)の構成と同様に、下流側に配置される第2電池モジュールの劣化進度を抑えることができ、第1電池モジュールとの間での劣化進度のバラツキを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電池モジュールの劣化進度のバラツキを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】車両の一部におけるハード構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の組電池の構成例を示す平面図である。
【図3】第1実施形態の組電池の構成例を示す断面図である。
【図4】第2実施形態の電池モジュールの構成例を示す模式図である。
【図5】第2実施形態の電池パックの構成、および冷却風の方向を示す図である。
【図6】図5で示す構成とは異なる構成の電池パック、および冷却風の方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、各実施形態の態様について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態である車両の一部におけるハード構成を示すブロック図である。同図において、点線の矢印は信号の流れる方向を示している。車両100は、バッテリの出力を用いてモータを駆動する駆動経路とエンジンによる駆動経路とを有し、車両外部の外部電源を用いてバッテリを充電可能なプラグインハイブリッド車両である。ただし、車両100は、車両外部の外部電源を用いてバッテリを充電可能であって、エンジンを省略した電気車両であってもよい。また、車両100は、車両外部の外部電源を用いたバッテリの充電が不可能なハイブリッド車両であってもよい。
【0021】
車両100は、組電池1と、充電器22と、平滑用コンデンサC1、C2と、電圧コンバータ32と、インバータ33と、モータジェネレータMG1と、モータジェネレータMG2と、動力分割プラネタリーギヤP1と、リダクションプラネタリーギヤP2と、減速機Dと、エンジン34と、リレー31と、DC/DCコンバータ41と、補機バッテリ42と、吸気ファン44と、ECU50と、監視ユニット51と、インレット62とを含む。
【0022】
車両100は、さらに、電源ラインPL1と、接地ラインSLとを含む。組電池1は、リレー31を構成するシステムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pを介して、電圧コンバータ32に接続されている。組電池1のプラス端子には、システムメインリレーSMR−Gが接続され、組電池1のマイナス端子には、システムメインリレーSMR−Bが接続されている。また、システムメインリレーSMR−Pおよびプリチャージ抵抗31Aは、システムメインリレーSMR−Bに対して並列に接続されている。
【0023】
これらのシステムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pは、コイルに対して通電したときに接点が閉じるリレーである。SMRがオンとは通電状態を意味し、SMRがオフとは非通電状態を意味する。
【0024】
ECU50は、電流遮断時、すなわちイグニッションスイッチがOFF位置になるときには、全てのシステムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pをオフする。すなわち、システムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pのコイルに対する励磁電流をオフにする。なお、イグニッションスイッチは、OFF位置→ON位置の順に切り替わる。
【0025】
ECU50は、車両100全体の制御を司る。ECU50は、CPU、MPUであってもよいし、これらのCPUなどにおいて実行される処理の少なくとも一部を回路的に実行するASIC回路を含んでも良い。また、CPUなどの個数は、単数であってもよいし、或いは複数であってもよい。したがって、例えば、電圧コンバータ32を制御するCPUと、吸気ファン44の駆動を制御するCPUとが異なっていても良い。ECU50は、補機バッテリ42から電力が供給されることにより、起動する。
【0026】
ハイブリッドシステム起動時(メイン電源接続時)、すなわち、たとえば運転者がブレーキペダルを踏み込んでプッシュ式のスタートスイッチを押し込むと、ECU50は、最初にシステムメインリレーSMR−Gをオンにする。次に、ECU50は、システムメインリレーSMR−Pをオンしてプリチャージを実行する。
【0027】
システムメインリレーSMR−Pにはプリチャージ抵抗31Aが接続されている。このため、システムメインリレーSMR−Pをオンしてもインバータ33への入力電圧は緩やかに上昇し、突入電流の発生を防止できる。
【0028】
イグニッションスイッチがON位置からOFF位置に切り替わると、ECU50は、先ずシステムメインリレーSMR−Bをオフし、続いてシステムメインリレーSMR−Gをオフする。これにより、組電池1とインバータ33との間の電気的な接続が遮断され、電源遮断状態となる。システムメインリレーSMR−B,SMR−G,SMR−Pは、ECU50から与えられる制御信号に応じて導通/非導通状態が制御される。
【0029】
コンデンサC1は、電源ラインPL1と接地ラインSL間に接続され、ライン間電圧を平滑化する。また、電源ラインPL1と接地ラインSL間には、DC/DCコンバータ41が接続されている。DC/DCコンバータ41は、組電池1から供給される電力を降圧して、補機バッテリ42を充電したり、或いは吸気ファン44に電力を供給する。
【0030】
電圧コンバータ32は、コンデンサC1の端子間電圧を昇圧する。コンデンサC2は、電圧コンバータ32によって昇圧された電圧を平滑化する。インバータ33は、電圧コンバータ32から与えられる直流電圧を三相交流に変換してモータジェネレータMG2に出力する。リダクションプラネタリーギヤP2は、モータジェネレータMG2で得られた動力を減速機Dに伝達して、車両100を駆動する。動力分割プラネタリーギヤP1は、エンジン34で得られた動力を二経路に分割し、一方は減速機Dを介して車輪に伝達され、他方はモータジェネレータMG1を駆動して発電を行う。
【0031】
このモータジェネレータMG1において発電された電力は、モータジェネレータMG2の駆動に用いられることでエンジン34を補助する。また、リダクションプラネタリーギヤP2は、車両減速時に、減速機Dを介して伝達される動力をモータジェネレータMG2に伝達し、モータジェネレータMG2を発電機として駆動する。このモータジェネレータMG2で得られた電力は、インバータ33において三相交流から直流電圧に変換され、電圧コンバータ32に伝達される。このとき、ECU50は、電圧コンバータ32が降圧回路として動作するように制御する。電圧コンバータ32で降圧された電力は、組電池1に蓄電される。
【0032】
監視ユニット51は、組電池1の電圧、電流及び温度に関する情報を取得する。監視ユニット51は、組電池1とともにユニット化されている。監視ユニット51は、組電池1から取得した情報をECU50に対して出力する。ECU50は、監視ユニット51から取得した情報に基づき、組電池1の充放電を制御したり、或いは吸気ファン44の駆動を制御する。
【0033】
ここで、吸気ファン44は、回転動作に応じて車室内の空気を組電池1に対して供給する。すなわち、ECU50は、車両100のイグニッションスイッチがオンされた状態で、組電池1の温度が所定値よりも高いと判定した場合には、吸気ファン44を作動させる。
【0034】
充電器22は、リレー31を介して、組電池1に接続されている。リレー31が開いた状態である場合には、組電池1が、電圧コンバータ32、充電器22等から電気的に遮断される。リレー31が閉じた状態である場合には、組電池1が、電圧コンバータ32、充電器22等と電気的に接続される。
【0035】
ECU50は、車両外部の商用電源から組電池1の充電が行われるときに、充電器22を駆動するための駆動信号を生成して出力する。インレット62は、車両100の側部に設けられていても良い。インレット62には、車両100と外部電源とを連結する充電ケーブルのコネクタが接続される。なお、本願発明は、インレット62及びコネクタを接続しない非接触充電に適用することもできる。
【0036】
図2、図3を参照しながら、第1実施形態の組電池の構成例を説明する。図2は、車両に搭載された組電池の平面模式図であり、図3は断面模式図である。
【0037】
J/B(ジャンクションボックス)20は、電線の結合、分岐、中継する際に用いられる端子や端末を収容する機器であり、リレー31を収容する機器である。排気管21は、内燃機関からの排気ガスを外部へ排出する導出管である。
【0038】
J/B20、充電器22は、組電池1の充放電の際に発熱する発熱機器であり、排気管21は、高温の排出ガスを放出することで発熱体となる。発熱体とは、高温の排気ガスを放出する排気管21や、組電池1の充放電の際に発熱する発熱機器を含み、発熱機器とは、J/B20や充電器22のことをいう。
【0039】
組電池1は、複数の単電池12Aを並列接続して成る電池モジュール10A(第2電池モジュール)、10B(第1電池モジュール)を、直列接続した構成となっており、車両100のリアシートS後方部、ラゲージルームの下方に配置される。本例のように、ラゲージルームの下方に配置するのはあくまでも一例である。図2、図3の例において、電池モジュール10Aは、J/B20、排気管21、充電器22等の発熱体の近くに配置され、電池モジュール10Bよりも発熱体からの受熱の影響を多く受ける位置、すなわち放熱性の低い領域に配置される。
【0040】
また電池モジュール10Aと10Bとでは、並列接続される単電池12Aの数が異なっており、発熱体近くの電池モジュール10Aの方が、電池モジュール10Bよりも単電池12Aの数が多くなっている。単電池12Aは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池であり、単一の電池セル、或いは複数の電池セルを接続した構成でもよい。ここで、電池セルとは、充放電可能な最小単位の要素を意味する。
【0041】
図2、図3の例では、電池モジュール10Aは4×5(=20)の単電池12Aによって構成され、電池モジュール10Bは3×3(=9)の単電池12Aによって構成されているが、態様を限定するものではなく、単電池の特性や発熱体からの受熱量に応じて実装される。
【0042】
ここで、発熱体近くの電池モジュールの単電池個数を、他の電池モジュールの単電池個数よりも多くする意義について説明する。並列接続される単電池の数が多い程、並列回路の性質によって1つの単電池に流れる電流値が低くなる。よって単電池の数が多い程、単電池の内部抵抗により生ずる発熱量が抑えられ、熱による単電池の劣化進度を低減させることができる。したがって、電池モジュール内の単電池の個数を可変とし、発熱体近くに配置される電池モジュールについては単電池の並列数が多くなるように調整することで、同じ種類の単電池を使用しつつ各電池モジュールの劣化進度のバラツキを抑制することができる。
【0043】
単電池の温度は、単電池での発熱量と、冷却機能以外の周辺環境による放熱性能(環境温度<単電池の制御温度の場合)、または受熱量(環境温度>単電池の制御温度の場合)によって決まる。本実施形態では、上記のように単電池での発熱量を単電池の個数で調整する。
【0044】
具体的には、発熱体近くの電池モジュールの単電池数を、発熱体からより離れた位置に配置される他のモジュールの単電池数より増やすことで、並列回路の性質を使って1つの単電池当たりの電流値を他の電池モジュールより下げる。単電池の発熱量は、
(単電池の内部抵抗)×(電流値)
で表すことができるため、電流値を下げることで単電池の発熱量を抑えることができる。
【0045】
並列数の差の導出方法は、次の通りとなる。
【0046】
1.発熱体が近くにあるか否かによるセルの放熱性能差または受熱差(=ΔW)を求める。
【0047】
2.基本並列数(標準とする電池モジュールに含まれる単電池の数)Nにおける車両出力要求の電流値Iを求め、単電池1個当たりの電流値(I/N)を算出する。
【0048】
3.ΔWを1個当たり単電池の発熱量でカバーするので、追加する単電池の個数をX、内部抵抗Rとすると、
ΔW=(I/N)×R−(I/(N+X))×R
となり、追加する単電池の個数Xは、
X=(I/√((I/N)−ΔW/R))−N
で求めることができる。
【0049】
なお、本実施形態で説明した電池モジュール内の単電池の数を調整する方法に対して、さらに、発熱体付近の冷媒の温度を他よりも低くしたり、発熱体付近の冷媒の流量を他より大きくする方法を組み合わせても、同様に各電池モジュールの劣化進度のバラつきを抑制することができる。
【0050】
上記では、放熱性の低い領域に位置する電池モジュールとして、発熱体の近くに位置する電池モジュールを例示した。しかしながら、発熱体が無くても、例えば、組電池の中央に位置する電池モジュールは側方に位置する電池モジュールよりも、充放電等に伴う発熱により熱がこもり易く、より温度が高くなる(放熱性が悪くなる)。このことから、組電池の中央に位置する電池モジュールを少なくとも含んだ領域の電池モジュールについても、上記発熱体の例と同様の問題が起こり得る。
【0051】
このことから、組電池中央部の電池モジュールについても、他の電池モジュールよりも組電池の並列数を多くして、単電池の発熱量を抑えることで、電池モジュールの劣化進度のバラツキを抑制することができる。この例以外でも、放熱性のより低い領域に位置する電池モジュールについては、放熱性のより高い領域にある電池モジュールよりも組電池の個数を多くすることで、電池モジュールの劣化進度のバラツキを抑制することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、発熱体近くに配置される電池モジュールを、放熱性の低い領域に位置する電池モジュールとして説明し、当該電池モジュールの単電池数を、他の電池モジュールの単電池数よりも多くすることで、各電池モジュールの劣化進度のバラツキを抑制する実装例について説明した。第2の実施形態では、冷却経路を考慮することで劣化進度のバラツキを抑制する実装例について説明する。
【0052】
第2実施形態で用いる電池モジュールの一例を図4に示す。電池モジュール11は、並列接続された複数の単電池12Bが金属板13に固定されている構成となる。第2実施形態の組電池は、1つの冷却経路内に、図4の例で示す電池モジュール11を複数直列接続して配置する構成とし、単電池12Bそれぞれの表面に冷却風が流れる構成とする。またこのように複数の単電池12Bを金属板13に固定させることで、単電池間の温度バラツキを抑制し、電池モジュール内での単電池の温度バラツキを解消することができる。
【0053】
図5に、本実施形態の組電池の構成例、および冷却経路の一例を示す。本実施形態の電池パック150Aは、組電池1Aと冷却経路Rとを有し、組電池1Aは冷却経路R内に配置されている。
【0054】
導入管130内のファン131(例えばシロッコ式ファン、フロスフロー型のファンであり、図1の吸気ファン44に相当する)により、車室内空気が吸気チャンバ132まで吸気される。この吸気による冷却風は、分流して組電池1Aの各電池モジュールを冷却し、下流側の廃棄チャンバ133を通過してラゲージルームに排出される。また組電池1Aの配置位置での冷却経路Rの断面は、上流の吸気チャンバ132側から下流の排気チャンバ133側まで可変なく同じ大きさとなっている(D1=D2)。
【0055】
冷却経路R内の冷却風の温度は、上流側の電池モジュールでの発熱の影響を受けるため、下流側になるにつれて上昇する。従って、下流側の電池モジュールの放熱性(冷却風による冷却効率)は上流側の電池モジュールよりも低くなり、下流側の電池モジュールは、温度が上昇しやすくなるため、劣化を早めて充放電サイクル性が低下する。
【0056】
この下流側の電池モジュールの劣化進度を遅らせるため、本実施形態では、下流側の電池モジュールの単電池数(並列接続数)を増やすことで、並列回路の性質を利用して1つの単電池当たりの電流値を上流側の電池モジュールより下げ、電池モジュールが発する発熱量を低下させる。
【0057】
図5に示す組電池1Aは、図4の電池モジュール11と同等構成である電池モジュール11A(第1電池モジュール)、電池モジュール11B(第2電池モジュール)によって構成される。電池モジュール11Aは単電池の個数が7であり、一方電池モジュール11Bは、単電池の個数が9とするが態様(単電池の個数や配列方法)は限定されない。
【0058】
電池モジュール11Bの方が電池モジュール11Aよりも下流側となるため、電池モジュール11Bは、電池モジュール11Aよりも放熱性の低い領域に位置する電池モジュールとなる。このため、第2実施形態では、図5に示すように同一冷却経路内で下流側に配置される電池モジュールの方が上流側に配置される電池モジュールよりも単電池の個数を多くする。この実装により、各電池モジュールの充放電サイクルのバラツキを抑制することができる。またこのように単電池の熱収支のバラツキを抑制することで、組電池の寿命(充放電サイクル性)を向上させる。
【0059】
単電池温度は、単電池自身の発熱量、および電池温度と冷却風温度との差(ΔT1)で決まる。上述のように、同一冷却経路内で1つ目の電池モジュールを通過した冷却風温度は、ΔT2増加する。すると、その下流にある電池モジュールはΔT1−ΔT2しか電池と冷却風との温度差がつかないため、具体的には下流側の電池モジュール内の単電池数を上流側の他のモジュールより増やすことで、並列回路の性質を使って単電池1つ当たりの電流値を他の電池モジュールより下げる。単電池の発熱量は、
(電池の内部抵抗)×(電流値)
で表すことができるため、電流値を下げることで単電池の発熱量を抑えることができる。
【0060】
並列数の差の導出方法は、次の通りとなる。
【0061】
1.上流側の電池モジュールと下流側の電池モジュールのモジュール直前冷却温度の差より算出される放熱量差(=ΔW)を求める。
【0062】
2.基本並列数Nにおける車両出力要求の電流値Iを求め、単電池1個当たりの電流値(I/N)を算出する。
【0063】
3.ΔWを1個当たり単電池の発熱量でカバーするので、追加する単電池の個数をX、内部抵抗Rとすると、
ΔW=(I/N)×R−(I/(N+X))×R
となり、追加するセル数Xは、
X=(I/√((I/N)−ΔW/R))−N
で求めることができる。
【0064】
また、冷却経路の形状を例えば図6のようにすることもできる。図6の冷却流路R_Aは、組電池1Bの配置位置において、吸気チャンバ132A側の上流よりも排気チャンバ133A側の下流の方が、流路断面が従変的に狭まる構成であり(D1>D2)、結果、下流になるにつれ流速が増す構成となる。よって、上流側に配置される電池モジュールよりも下流側に配置される電池モジュールの方が流速増加に伴う冷却効果が増すこととなる。このような冷却流路R_Aを有する電池パック150Bは、冷却流路R_Aの形状のみで劣化進度のバラツキを抑制することができる。
【0065】
従って、本実施形態において説明した、冷却経路のより下流側の電池モジュールの単電池数を上流側の電池モジュールの単電池数よりも多くする構成に対して、さらに、この図6で示すような、下流側の電池モジュールの位置における流路の断面積を、より上流側の電池モジュールの位置における流路の断面積よりも小さくする構成を組み合わせる実装でもよい。このような組み合わせによっても、各電池モジュールの劣化進度のバラつきを抑制することができる。
【0066】
第1実施形態の態様と、第2実施形態の態様とを組み合わせてもよい。また第1実施形態、第2実施形態は、一例として車両に搭載される実装について説明したが、態様を限定するものではなく、当該組電池はいかなる用途に使用されてもよい。
【0067】
また、第1実施形態、第2実施形態で説明した組電池1または組電池1Aと、図6で示す冷却経路R_Aとを少なくとも含めた電池パックが提供されてもよく、また組電池1と図5で示す冷却経路Rとを少なくとも含めた電池パックが提供されてもよい。
【0068】
また、組電池1から供給される電力により走行用モータを駆動する第1の駆動経路のみを有する電気自動車、車両外部の商用電源による充電が不可能なハイブリッド自動車にも適用できる。
【0069】
以上に詳説したように、本実施形態の構成によって、放熱性の低い領域に位置する電池モジュールについては、他の電池モジュールよりも単電池の個数を増やすことで、組電池を構成する各電池モジュールの劣化進度のバラツキを抑制することができる。また本実施形態の構成によって、電池容量等の仕様の異なる単電池を用いることなく、劣化進度のバラツキを抑制することができる。
【符号の説明】
【0070】
1、1A、1B 組電池
10A、10B、11、11A、11B 電池モジュール
12A、12B 単電池
13 金属板
20 J/B
21 排気管
22 充電器
100 車両
150A、150B 電池パック
R、R_A 冷却流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する組電池であって、
複数の単電池が並列接続された第1電池モジュールと、
複数の単電池が並列接続され、前記第1電池モジュールよりも放熱性の低い領域に位置する第2電池モジュールと、を有し、
前記第2電池モジュールは、前記第1電池モジュールよりも前記単電池の個数が多いことを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記第2電池モジュールは、発熱体からの受熱の影響を、前記第1電池モジュールよりも多く受ける位置にあることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記発熱体は、前記組電池の充放電の際に発熱する発熱機器であることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記発熱機器は、前記組電池の充放電を許容する第1の状態と、充放電を許容しない第2の状態との間で動作するリレーを収容したジャンクションボックスであることを特徴とする請求項3に記載の組電池。
【請求項5】
前記発熱機器は、車両外部に設けられた電源により該組電池を充電するための充電器であることを特徴とする請求項3に記載の組電池。
【請求項6】
前記発熱体は、車両の排気ガスを放出する排気管であることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項7】
車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する組電池であって、
複数の単電池が並列接続された電池モジュールであり、冷却経路内に配置される第1電池モジュールと、
複数の単電池が並列接続された電池モジュールであり、前記第1電池モジュールよりも前記冷却経路の下流側に配置される第2電池モジュールと、を有し、
前記第2電池モジュールは、前記第1電池モジュールよりも前記単電池の個数が多いことを特徴とする組電池。
【請求項8】
前記第1電池モジュール、前記第2電池モジュールは、それぞれ金属板を有し、各電池モジュール内の複数の単電池は、前記金属板に固定されていることを特徴とする請求項7に記載の組電池。
【請求項9】
前記第2モジュールが配置される位置における冷却経路の断面積は、前記第1モジュールが配置される位置における冷却経路の断面積よりも小さいことを特徴とする請求項7または8に記載の組電池。
【請求項10】
車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する組電池を備える電池パックであって、
冷却経路と、
複数の単電池が並列接続された電池モジュールであり、冷却経路内に配置される第1電池モジュールと、
複数の単電池が並列接続された電池モジュールであり、前記第1電池モジュールよりも前記冷却経路の下流側に配置される第2電池モジュールと、を有し、
前記第2電池モジュールは、前記第1電池モジュールよりも前記単電池の個数が多いことを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105687(P2013−105687A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250235(P2011−250235)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】