説明

組電池

【課題】 室温より高い温度にて動作させられる素電池を複数接続した組電池において、各素電池内部の温度を均一に保つことができるとともに、各素電池を動作温度まで早く昇温させることができ、かつ、断熱容器に収容した全体の大きさを小型化可能な組電池を提供する。
【解決手段】 組電池10を構成する断熱容器としての筐体2内には、9個の扁平形状の単位組電池1がその厚み方向に積層されて収容されている。単位組電池1同士はその構成要素としての素電池の側面を密着させるように配置されて全体の組電池10を構成している。単位組電池1を加熱するためのヒーター3が、その幅広面が単位組電池1の幅広面と接するように、隣接する単位組電池1間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温より高い温度にて動作させられる素電池を複数接続した組電池に関し、特に溶融塩電池に適した組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電力貯蔵や自動車向けの比較的大型の二次電池の開発が進められている。所望の電圧及び所望の容量を得るためには、複数の素電池(単電池)を直並列に接続した組電池が用いられる。
常温で動作させる組電池として、リチウムイオン電池やニッケルマンガン電池の素電池を複数接続した組電池が知られている。この組電池においては、充放電の際に組電池を構成する各素電池内で熱が発生するため、発生した熱を速やかに冷却できるように組電池の放熱性を確保することが要求される。例えば、特許文献1においては、隣接する各素電池間に放熱部材として機能し得る間隔保持板(スペーサ)を挟んで組電池の放熱性を高めている。
【0003】
また、室温よりも高い温度で動作させる組電池として、ナトリウム硫黄電池の素電池を複数接続した組電池が知られている。この組電池は保温のため真空断熱容器に収容されており、また、安全性の問題から各素電池の隙間には絶縁性の砂が充填され、各素電池を動揺しないように固定すると同時に局所的な異常加熱や活物質の漏洩を防止している。
また、この組電池の動作温度は300〜350℃という高温度であり、組電池をこの温度まで昇温する必要があるとともに、組電池を構成する各素電池の特性を十分に引き出すため、組電池を収容した断熱容器内の温度分布を均一にする必要がある。例えば、特許文献2や特許文献3においては、断熱容器内の底面や周壁面に電気ヒータを設置し、そのヒータにより断熱容器内の温度を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−48996号公報
【特許文献2】特開平11−162507号公報
【特許文献3】特開2003−234132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、100℃以下の温度で動作し、加熱時の安全性の高い溶融塩電池の素電池を複数接続した組電池を開発している。かかる溶融塩電池は、常温では固体の塩を比較的低温に加熱して溶融塩とし、電解質として用いる。このため、加熱手段を備えるとともに組電池を断熱容器に収容することで、電解質を溶融状態に維持しつつ運転する必要がある。
この溶融塩電池の組電池においては、各素電池内部の温度の均一性が要求される。電解質である溶融塩の温度にばらつきがあると、温度の高い部分では溶融塩の局所的な蓄熱により電池寿命の低下を引き起こし、また、温度の低い部分ではイオン伝導度が大きく低下して電池の内部抵抗の不均一が発生し、特定の電池のみに過大な電流が流れるなどの負荷の分布による特性の低下、電池寿命の低下を引き起こす。
また、溶融塩電池の組電池を電気自動車やハイブリッド自動車の二次電池に用いる場合には、組電池をできる限り早く動作温度まで昇温させる必要がある。また、断熱容器に収容した組電池全体の大きさを小型化することも要求される。
【0006】
しかしながら、上述のナトリウム硫黄電池の組電池のように、断熱容器内の底面や周壁面に加熱手段を備える場合、各素電池内部の温度を均一に保つためには断熱容器を構成する断熱材を厚くする必要があるため、断熱容器に収容した組電池全体の大きさが大型化するという問題がある。
また、底面や周壁面の加熱手段に近い素電池は早く動作温度まで昇温することができるが、加熱手段から遠い素電池は動作温度まで昇温するのに時間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、各素電池内部の温度を均一に保つことができるとともに、各素電池を動作温度まで早く昇温させることができ、かつ、断熱容器に収容した全体の大きさを小型化可能な組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る組電池は、複数の扁平形状の素電池がその厚み方向に積層されて断熱容器に収容され、室温より高い温度にて動作させられる組電池であって、前記素電池を加熱する扁平形状の加熱手段を備え、前記加熱手段は、その幅広面が前記素電池の幅広面と接するように、隣接する前記素電池間に介在されている(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、隣接する素電池間に加熱手段が介在されているため、組電池の内側から素電池を昇温することができる。このため、組電池の外側から加熱する従来の方法よりも、各素電池内部の温度を均一に保ち易く、また、各素電池を動作温度まで早く昇温させることができる。また、断熱容器を薄くすることができるため、断熱容器に収容した組電池全体の大きさを小さくすることができる。
なお、ここでいう断熱容器とは、断熱材を内部に備える容器であればよく、容器が断熱材と一体になっていることを要しない。
【0010】
特に、前記素電池は、室温より高い温度で溶融する溶融塩を電解質として用いた溶融塩電池であると、本発明の効果が著しく、好ましい(請求項2)。
【0011】
隣接する素電池間に加熱手段が介在されていることにより、素電池の電解質である溶融塩の温度を均一に保つことができるため、電池寿命の低下や電池特性の低下を防止することができる。
【0012】
また、前記組電池は、前記加熱手段の前記幅広面と前記素電池の前記幅広面とが密着する方向に、前記素電池を加圧する加圧手段を前記断熱容器内に備えることが好ましい(請求項3)。
【0013】
加熱手段と素電池との密着性が高まり、加熱手段から素電池への熱伝導性が良くなるため、素電池内部の温度を均一に保ち易い。また、素電池を動作温度まで早く昇温させることができる。
【0014】
また、前記加熱手段は、前記素電池が複数積層される毎に前記素電池間に介在されていることが好ましい(請求項4)。
【0015】
素電池が積層される毎に、隣接する素電池間に加熱手段が介在されていると、各素電池内部の温度を均一に保ち易く、また、各素電池を早く昇温させることはできるが、加熱手段の数が増えることから、組電池全体のコスト増と容積増を招く。そこで、複数の素電池が積層される毎に、隣接する素電池間に加熱手段が介在されるようにすることで、各素電池の内部温度の均一性・昇温の速度と、組電池全体のコスト・容積とのバランスを良好にすることができる。
【0016】
また、前記加熱手段は、さらに、前記断熱容器の内壁面に対向する幅広面を備える前記素電池に対し、当該加熱手段の幅広面が当該素電池の前記幅広面と対向するように設置されていることが好ましい(請求項5)。
【0017】
組電池の内側から素電池を加熱するだけでなく、組電池の外側からも素電池を加熱することで、各素電池内部の温度をより均一に保ち易く、また、各素電池を動作温度までより早く昇温させることができる。
【0018】
また、前記素電池が直方体形状であると(請求項6)、素電池と加熱手段とを互いに密着させやすいため、各素電池内部の温度を均一に保ち易く、また、各素電池を動作温度まで早く昇温させることができる。なお、直方体形状には略直方体形状も含まれるものとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、各素電池内部の温度を均一に保つことができるとともに、各素電池を動作温度まで早く昇温させることができ、かつ、断熱容器に収容した全体の大きさを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1に係る組電池の全体構造を説明する斜視図である。
【図2】図1のA−A’部で切った断面を模式的に示した図である。
【図3】実施の形態1に係る組電池の一例として、図1に用いる単位組電池の構成を説明する図である。
【図4】実施の形態1に係る組電池に用いる素電池の一例としての溶融塩電池の構成を示す図であり、Aは溶融塩電池の内部構成を模式的に示す上面図、Bは同縦断面図である。
【図5】加熱シミュレーション対象とした組電池の1/2モデルを説明するための図である。
【図6】1/2モデルの組電池を用いて加熱シミュレーションを実施したときの各素電池の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1:
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施の形態1に係る組電池の全体構造を説明する斜視図である。内部を説明するために一部を開口して表現している。図1は、素電池が4個直列に接続されてなる単位組電池を9個並列に接続されてなる組電池の構成例である。
図1において、組電池10を構成する断熱容器としての筐体2内には、9個の扁平形状の単位組電池1がその厚み方向に積層されて収容されている。単位組電池1は直方体形状であり、両端部側面に充放電のための端子が形成されている。本例において筐体2の大きさは295×720×450mmである。9個の各単位組電池1は、並列に並べられ、接続端子板4aおよび4bにボルト5によりそれぞれ固定されて電気的に並列に接続されている。接続端子板はその端部を筐体2の外部に引き出す構造になっており、接続端子板4aがプラス極、接続端子板4bがマイナス極として利用される。また各単位組電池1は複数の加熱手段としてのヒーター3により加熱される。ヒーターは扁平形状であり、外部からの配線(図示せず)により通電され、その発熱により組電池10を室温よりも高温状態に維持できるように加熱する。温度調節は温度センサと制御回路による既知の制御手段により行うことができる。
【0022】
図2を用いて内部構成をさらに説明する。図2は図1のA−A’部で切った断面を模式的に示した図である。
筐体2の内面は断熱材7に覆われ、筐体内全体を保温するように構成されている。筐体2および断熱材7の材質は特に限定されず、組電池全体の機械的保護、保温等の観点で選択される材料を用いることができる。たとえば筺体2をアルミニウム合金で構成すると軽量化および強度の両立の点で好ましい。
【0023】
内部には9個の単位組電池1が並べられ、その3個毎の単位組電池間に、ヒーター3としての板状ヒーターが、その幅広面と単位組電池の幅広面とが接するように配置されている。
このように、隣接する単位組電池間(隣接する素電池間)にヒーターが介在されていることから、組電池の内側から素電池を昇温することができ、組電池の外側のみから加熱するよりも、各素電池内部の温度を均一に保ち易く、また、各素電池を動作温度まで早く昇温させることができる。また、筐体2の断熱材7の厚みを薄くすることができるため、筐体2に収容した組電池10全体の大きさを小さくすることができる。
【0024】
また、ヒーター3は、両端側の単位組電池1、すなわち、断熱材7の内壁面に対向する幅広面を備える単位組電池に対し、ヒーター3の幅広面が当該単位組電池の幅広面と対向するように設置されている。
このように、組電池の外側からも素電池を加熱することにより、各素電池内部の温度をより均一に保ち易く、また、各素電池を動作温度までより早く昇温させることができる。
【0025】
単位組電池1とヒーター3とは、より密着して接するように板バネ6によって単位組電池1の積層方向に加圧付勢されている。ここで、密着とは、通常の意味において顕著な隙間無く、面と面が互いに接している状態をいうものであり、言い換えれば面と面の間を流体が容易に流動しない程度に接している状態である。
これにより、単位組電池(素電池)とヒーターとの密着性が高まり、ヒーターから単位組電池(素電池)への熱伝導性が良くなるため、素電池内部の温度を均一に保ち易い。また、各素電池を動作温度まで早く昇温させることができる。さらに、組電池全体の振動や断熱材等の長期的な変形などがあっても密着が崩れない効果がある。
なお、密着するように並べられた単位組電池1とヒーター3のそれぞれの間に隙間が生じないように付勢する加圧手段であれば、板バネに限定されるものではない。
【0026】
ヒーター3は本例のように単位組電池(素電池)が複数積層される毎に単位組電池間(素電池間)に配置されるものに限定されず、またその数も本例に限定されるものではない。
単位組電池が1つ積層される毎に単位組電池間にヒーターを配置すると、温度の均一性及び昇温の速度の点から好ましいが、ヒーターの数が増えることから、組電池全体のコスト増と容積増を招く。そこで、本例では各素電池の内部温度の均一性・昇温速度と、組電池全体のコスト・容積とのバランスを考慮して、単位組電池が複数(例えば、3個)積層される毎に単位組電池間にヒーターを配置している。
【0027】
ヒーター3は板状ヒーターを例示しており、これに限定されるものではないが、ヒーター3が扁平形状であれば、単位組電池(素電池)と密着させやすく、特にヒーター3が板状ヒーターであれば、直方体形状の単位組電池(素電池)とより密着させやすい。また、個々の単位組電池、あるいはその構成要素となる個々の素電池を効率よく、また出来るだけ均一に加熱するために、ヒーター3は単位組電池の側面と同程度に面積の大きな板状ヒーターが好ましい。
【0028】
単位組電池1、あるいはその構成要素となる個々の素電池の形状は直方体形状に限られないが、直方体形状とすることで、単位組電池(素電池)と板状ヒーターとを互いに密着させやすくなるため、各素電池内部の温度を均一に保ち易く、また、各素電池を動作温度まで早く昇温させることができる。なお、ここでの直方体形状には略直方体形状も含まれるものとする。
【0029】
単位組電池1の隣り合う面同士(例えば図2の最も右に図示される単位組電池1の面11aとその左となりの単位組電池1の面11b)は電極等の突起を有さない平面で構成されており、互いに密着しやすいようになっている。
【0030】
単位組電池1の表面は金属が好ましい。単位組電池の表面は後述の例のように単位組電池を構成する素電池の表面そのものであっても良いし、素電池の組を収納する別なケースの表面であってもよい。金属は熱伝導が良好であることから好ましく用いられる。電池全体の軽量化も考慮すると、ケースにはアルミニウムまたはその合金が好ましく用いられる。さらに軽量化を目的としてマグネシウム合金を用いることも好ましい。
【0031】
図3は、上記の単位組電池1の内部構造を説明する縦断面図である。単位組電池1は、複数の素電池を電気的に直列接続して電池電圧を高くした組電池である。本例では図3のように4つの素電池20を連結した例を示すが、連結数は4つに限定されるものではない。例えば素電池が電圧3Vの溶融塩電池であれば連結数を4つとすることで、単位組電池としての公称電圧が12Vとなり、既存の自動車用鉛蓄電池等に相当する電池として使用でき、また既存の電池に用いられる機器(例えば充電器)の流用が容易にできる点で好ましく用いられる。
【0032】
図4は、図3を構成する素電池20としての溶融塩電池の構造を説明する図であり、図4のAは溶融塩電池の内部構成を模式的に示す上面図、Bは同溶融塩電池の構成を模式的に示す縦断面図である。
【0033】
まず図4および図3を参照して素電池20から説明する。本例の溶融塩電池では、複数(図では6つ)の矩形平板状の負極21と、袋状のセパレータに各別に収容された複数(図では5つ)の矩形平板状の正極41とが、上下方向に沿う状態で交互に対向して横方向(図では前後方向)に並設されている。1組の負極21、セパレータ31及び正極41が1つの発電要素を構成し、本実施の形態では5つの発電要素及び1つの他の負極21が積層されて、直方体状のアルミニウム合金からなる電池容器内に収容されている。電池容器は、上面に開口部を有する容器本体25と、容器本体25の開口部の内周に形成された段部に内嵌されて開口部を塞ぐ矩形平板状の蓋体26とを有している。電池容器の内側は、フッ素樹脂コーティングによって絶縁処理が施されている。
【0034】
負極21のそれぞれの上端部には、容器本体25の短辺側に位置する一方の側壁25Aに近い側に、電流を取り出すための矩形のアルミニウム合金からなる接続タブ22の下端部がそれぞれ接合されている。接続タブ22及びその上部は、平面視が側壁25B側に開いたコの字状をなす接続部材23が有する2つの腕部231及び231の相対向する2面に夫々溶接されている。接続部材23は、面方向が腕部231と平行な矩形の接続板部232を有し、該接続板部232の上部中央には、側壁25Aに開設された貫通孔25Hと対向する取付孔233が設けられている。
【0035】
正極41のそれぞれの上端部には、容器本体25の短辺側に位置する他方の側壁25Bに近い側に、電流を取り出すための矩形のアルミニウム合金からなる接続タブ42の下端部がそれぞれ接合されている。接続タブ42及びその上部は、平面視が側壁25A側に開いたコの字状をなす接続部材43が有する2つの腕部431及び431の相対向する2面に夫々溶接されている。接続部材43は、面方向が腕部431と平行な矩形の接続板部432を有し、該接続板部432の上部中央には、側壁25Bに開設された貫通孔25Hと対向する取付孔433が設けられている。このように、上述した5つの発電要素及び1つの負極21が電気的に並列接続されて、電池容量が大きい溶融塩電池を構成する。
【0036】
負極21は、負極活物質である錫がメッキされたアルミニウム箔からなる。アルミニウムは、正/負各電極の集電体に適した材料であり、且つ溶融塩に対して耐腐食性を有する。負極21は活物質を含めた厚さが約0.14mmであり、縦方向及び横方向夫々の寸法が、100mm及び120mmである。なお容器本体の大きさは縦方向(高さ)180mm×横方向(横幅)150mm×厚さ35mmである。
【0037】
正極41は、アルミニウム合金の多孔質体を集電体とし、該集電体にバインダと導電助剤と正極活物質であるNaCrOとを含む合剤を充填して、約1mmの板厚に形成してある。正極41の縦方向及び横方向夫々の寸法は、デンドライトの発生を防止するために、負極21の縦方向及び横方向の寸法より小さくしてあり、正極41の外縁が、セパレータ31を介して負極21の周縁部に対向するようになっている。尚、正極41の集電体は、例えば、繊維状のアルミニウムからなる不織布であってもよい。
【0038】
セパレータ31は、溶融塩電池が動作する温度で溶融塩に対する耐性を有するフッ素樹脂の膜からなり、多孔質に且つ袋状をなすように形成されている。セパレータ31は、負極21及び正極41と共に、直方体状の電池容器内に満たされた溶融塩30の液面下約10mmの位置から下側に浸漬されている。これにより、多少の液面低下が許容される。
【0039】
接続部材23及び43の夫々は、負極21及び正極41と外部の電気回路とを接続するための外部電極の役割を果たすものであり、溶融塩30の液面より上側に位置するようにしてある。溶融塩30は、FSI(ビスフルオロスルフォニルイミド)又はTFSI(ビストリフルオロメチルスルフォニルイミド)系アニオンと、ナトリウム及び/又はカリウムのカチオンとからなるが、これに限定されるものではない。
【0040】
上述した構成において、上述のヒーター3を用いて電池容器全体を85℃〜95℃に加熱することにより、溶融塩30が融解して、接続部材23,43を介しての充電及び放電が可能となる。
【0041】
以下、単位組電池1について図3および図4を参照して説明する。素電池20としての4つの溶融塩電池が、隣り合う容器本体25の短辺側の側壁同士が密着するように配置される。各容器本体25内には、接続部材23,43によって並列接続された前記5つの発電要素(負極21、セパレータ31に包まれた正極41)及び1つの負極21と溶融塩30とが組み込まれている。密着された側壁の上部中央には、横方向に貫通する貫通孔25Hが設けられており、この貫通孔25Hにテフロン(登録商標)等からなる絶縁性のブッシング(軸受筒)を解して、アルミニウム合金からなるボルト51が挿通されている。ボルト51は、同じくアルミニウム合金からなるナット52により締め付けられ、素電池20が固定されると共に電気的に直列に接続される。
【0042】
次に、溶融塩電池に用いた導電材料について説明する。溶融塩30のような電解質に接する部位にイオン化傾向が異なる金属(導電材料)を置いた場合、一方の金属から他の金属に電流が流れることによって電蝕が発生する。このため、本実施の形態では、上述したように、接続タブ22,42、接続部材23,43、ボルト51及びナット52は、負極21及び正極41と同種の導電材料(本実施の形態ではアルミニウム合金)を含むようにしてあり、電蝕の発生が防止されている。上述したように、電池容器もアルミニウム合金からなる。
【0043】
以上のように、素電池20同士はその電池容器の側面を密着させるように配置されて単位組電池1を構成し、また、単位組電池1同士はその構成要素としての素電池20の側面を密着させるように配置されて全体の組電池10を構成している。
この溶融塩電池の組電池10は、各素電池20内部の温度の均一性が要求される。電解質である溶融塩の温度にばらつきがあると、温度の高い部分では溶融塩の局所的な蓄熱により電池寿命の低下を引き起こし、また、温度の低い部分ではイオン伝導度が大きく低下して電池の内部抵抗の不均一が発生し、特定の電池のみに過大な電流が流れるなどの負荷の分布による特性の低下、電池寿命の低下を引き起こす。
また、溶融塩電池の組電池10を電気自動車やハイブリッド自動車の二次電池に用いる場合には、組電池をできる限り早く動作温度まで昇温させる必要がある。また、断熱容器に収容した組電池全体の大きさを小型化することも要求される。
そこで、実施形態1に係る溶融塩電池の組電池10においては、ヒーター3を、その幅広面が単位組電池1(素電池20)の幅広面と接するように、隣接する単位組電池1(素電池20)間に介在させている。
これにより、組電池10の内側から素電池20を昇温することができ、組電池10の外側のみから加熱するよりも、各素電池20内部の温度を均一に保ち易く、また、各素電池20を動作温度まで早く昇温させることができ、溶融塩電池の組電池10の電池寿命の低下や電池特性の低下を防止することができる。
【実施例】
【0044】
発明者らは、上記の組電池10について加熱シミュレーションを実施した。加熱シミュレーションの対象とした組電池10の詳細は以下の通りである。
まず、筐体2をアルミニウム製とし、筐体2の断熱材7は、厚みを50mmとした。
素電池20については、容器本体25をアルミニウム製とし、その大きさを縦方向(高さ)150mm×横方向(横幅)130mm×厚さ36mmとした。溶融塩30は、その液面が素電池20の容器本体25の底面から110mmの高さとなるように、当該素電池20の容器本体25内に注入する状態とした。
ヒーター3については、その大きさを縦方向(高さ)100mm×横方向(横幅)260mmとし、横幅が素電池20の容器本体25の2つ分の横幅に一致するようにした。また、ヒーター3の縦方向の中心が、素電池20の容器本体25において溶融塩30が満たされた部分の縦方向の中心に一致するように、ヒーター3の下端を素電池20の容器本体25の下から5mmの位置となるように配置した。周囲環境温度は25℃とし、ヒーター3の温度は100℃とした。
また、簡単のため、ヒーター3の厚みはないものとし、断熱材7と素電池20(組電池10)の隙間はないものとした。
【0045】
図5は、加熱シミュレーション対象とした組電池の1/2モデルを説明するための図である。図5は、上記の組電池10の縦方向(高さ方向)の中心における断面を上から見た図であり、組電池10の太線で囲った右半分を加熱シミュレーションの対象とした。
組電池10の1/2モデルには素電池20が18個含まれており、図5に示すようにそれぞれに20−1〜20−18の番号を付した。
ヒーター3は、素電池20−1と断熱材7の間、素電池20−10と断熱材7の間、素電池20−3と素電池20−4の間、素電池20−12と素電池20−13の間、素電池20−6と素電池20−7の間、素電池20−15と素電池20−16の間、素電池20−9と断熱材7の間、素電池20−18と断熱材7の間に配置されている。
【0046】
図6は、1/2モデルの組電池を用いて加熱シミュレーションを実施したときの各素電池の温度変化を示すグラフである。図6において、曲線Aは18個の素電池のうちヒーター3に隣接している素電池20(素電池20−1、20−3、20−4、20−6、20−7、20−9、20−10、20−12、20−13、20−15、20−16、20−18)の温度変化を示すものであり、曲線Bはヒーター3に隣接していない素電池20(素電池20−2、20−5、20−8、20−11、20−14、20−17)の温度変化を示すものである。
図6から、ヒーター3に隣接している素電池20は溶融塩電池の動作温度である85℃に約10分で到達しており、ヒーター3に隣接していない素電池20は90℃に約13分で到達しており、いずれの素電池も溶融塩電池の動作温度に早く達していることがわかる。
このように、ヒーター3を、素電池20が3つ積層される毎に素電池20間に配置する構成とすることにより、組電池全体のコストと容積が大きくなることを抑制しつつ、各素電池20を組電池10の動作温度まで早く昇温させることができる。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の実施の形態においては、素電池は直方体形状のアルミニウム合金からなる容器で形成される構成であったが、これに限定されるわけではなく、扁平の袋状のラミネートフィルムからなる容器で形成される構成であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 単位組電池
2 筐体
3 ヒーター
4a,4b 接続端子板
5 ボルト
6 板バネ
7 断熱材
10 組電池
11a,11b 面
20 素電池
21 負極
22,42 接続タブ
23,43 接続部材
231,431 腕部
232,432 接続板部
233,433 取付孔
25 容器本体
25A,25B 側壁
25H 貫通孔
26 蓋体
30 溶融塩
31 セパレータ
41 正極
51 ボルト
52 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扁平形状の素電池がその厚み方向に積層されて断熱容器に収容され、室温より高い温度にて動作させられる組電池であって、
前記素電池を加熱する扁平形状の加熱手段を備え、
前記加熱手段は、その幅広面が前記素電池の幅広面と接するように、隣接する前記素電池間に介在されている、
組電池。
【請求項2】
前記素電池は、室温より高い温度で溶融する溶融塩を電解質として用いた溶融塩電池である、
請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記加熱手段の前記幅広面と前記素電池の前記幅広面とが密着する方向に、前記素電池を加圧する加圧手段を前記断熱容器内に備える、
請求項1又は2に記載の組電池。
【請求項4】
前記加熱手段は、前記素電池が複数積層される毎に前記素電池間に介在されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項5】
前記加熱手段は、さらに、前記断熱容器の内壁面に対向する幅広面を備える前記素電池に対し、当該加熱手段の幅広面が当該素電池の前記幅広面と対向するように設置されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項6】
前記素電池は、直方体形状である、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−174570(P2012−174570A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36596(P2011−36596)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】