説明

経路探索装置、交通シミュレーション装置、歩行者挙動予測装置、及びプログラム

【課題】歩行者が現実に選択する経路を探索することができるようにする。
【解決手段】経路候補生成手段によって、地図情報に基づいて、歩行者の出発地から目的地までの経路の候補を複数生成する。そして、算出手段によって、歩行者の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出する。従って、経路の候補の各々の危険度を考慮して、経路を選択することができるため、歩行者が現実に選択する経路を探索することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路探索装置、交通シミュレーション装置、歩行者挙動予測装置、及びプログラムに係り、特に、歩行者又は自転車の目的地までの経路を探索する経路探索装置、歩行者又は自転車の挙動をシミュレーションする交通シミュレーション装置、歩行者又は自転車の挙動を予測する歩行者挙動予測装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歩行者の個人属性や歩行状況に基づいて、歩行者の歩行経路を決定する方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
また、歩行者の現在位置および過去の軌跡から歩行者の挙動を推定し、歩行者事故の危険性を判断している車載装置が知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特許第3370555号
【特許文献2】特開平8−202982号
【特許文献3】特開2006−330822
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1、2に記載の技術では、事故に遭う危険等のリスクを考慮していないため、歩行者が現実に選択する経路を決定することができない、という問題がある。
【0005】
また、特許文献3に記載の技術では、歩行者側からの判断、例えば「車両が手前の横断歩道を通過するので別の方向の横断歩道を渡ろう」といったリスクを考慮した判断を行っていないため、歩行者が現実に選択する経路を推測することができない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、歩行者又は自転車が現実に選択する経路を探索することができる経路探索装置、交通シミュレーション装置、歩行者挙動予測装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る経路探索装置は、地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の出発地から目的地までの経路の候補を複数生成する経路候補生成手段と、歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、前記経路の候補上に存在する前記移動場所の種類に応じた総危険度を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記経路の候補の各々の総危険度を出力する出力手段とを含んで構成されている。
【0008】
第2の発明に係るプログラムは、コンピュータを、地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の出発地から目的地までの経路の候補を複数生成する経路候補生成手段、歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、前記経路の候補上に存在する前記移動場所の種類に応じた総危険度を算出する算出手段、及び前記算出手段によって算出された前記経路の候補の各々の総危険度を出力する出力手段として機能させるためのプログラムである。
【0009】
第1の発明及び第2の発明によれば、経路候補生成手段によって、地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の出発地から目的地までの経路の候補を複数生成する。そして、算出手段によって、歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出し、出力手段によって、算出手段によって算出された経路の候補の各々の総危険度を出力する。
【0010】
従って、経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出することにより、経路の候補の各々の危険度を考慮して、経路を選択することができるため、歩行者又は自転車が現実に選択する経路を探索することができる。
【0011】
第1の発明に係る出力手段は、経路生成手段によって生成された複数の経路の候補と、経路の候補の各々の総危険度とを表示することができる。これにより、表示された総危険度を考慮して、オペレータが、経路を選択することができる。
【0012】
第1の発明に係る経路探索装置は、出力手段によって出力された経路の候補の各々の総危険度に基づいて、経路生成手段によって生成された複数の経路の候補から、歩行者又は自転車の経路を選択する経路選択手段を更に含むことができる。これによって、歩行者又は自転車が現実に選択する経路を探索することができる。
【0013】
上記の歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類は、横断歩道、歩車分離の歩道、歩車非分離の歩道、及び車道を含むことができる。
【0014】
また、車道に対する危険度を、車道の単位時間当たりの車両交通量の各々又は車道を走行する車両の複数の平均車速度の各々に対して定めることができる。これによって、車道を走行する車両を考慮して、歩行者又は自転車の移動場所である車道の危険度を算出することができる。
【0015】
上記の経路探索装置は、歩行者又は自転車の現在位置に対する車両の位置、及び車両の速度の少なくとも一方に基づいて、経路生成手段によって生成された経路の候補の各々に対して、歩行者又は自転車が車両と衝突する衝突危険度を算出する衝突危険度算出手段と、出力手段によって出力された経路の候補の各々の総危険度と、衝突危険度算出手段によって算出された衝突危険度とに基づいて、経路生成手段によって生成された複数の経路の候補から、歩行者又は自転車の経路を選択する経路選択手段を更に含むことができる。これによって、歩行者又は自転車の現在位置の近く走行する車両との衝突危険度を考慮して、歩行者又は自転車の経路を選択することができる。
【0016】
上記の経路候補生成手段は、出発地から目的地までの経路において経由する複数の経由候補ポイントと複数の経由候補ポイントのうちの2つの経由候補ポイントを接続した複数のリンクとを生成し、生成した複数のリンクを用いて、経路の候補を複数生成し、算出手段は、生成された複数のリンクの各々について、リンク上に存在する移動場所の種類に応じて、危険度を算出し、算出した複数のリンクの各々の危険度に基づいて、経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出することができる。
【0017】
上記の経路探索装置は、経路候補生成手段によって生成された経路の候補の各々について旅行時間を算出すると共に、歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に応じて予め定められた移動するときの負荷量に基づいて、複数の経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総負荷量を算出し、算出された旅行時間及び総負荷量に基づいて、複数の経路の候補の各々について、移動したときのコストを算出するコスト算出手段と、出力手段によって出力された危険度及びコスト算出手段によって算出されたコストに基づいて、経路生成手段によって生成された複数の経路の候補から、歩行者又は自転車の経路を選択する経路選択手段とを更に含むことができる。これによって、経路の候補の各々の危険度とコストとを考慮して、経路を選択することができるため、歩行者又は自転車が現実に選択する経路を探索することができる。
【0018】
また、上記の総負荷量を、負荷量、天候、走って移動するか否か、及び法律に違反した移動であるか否かに基づいて算出することができる。これによって、天候による負荷や、走ることによる負荷、法律に違反することによる負荷を考慮して、経路を選択することができる。
【0019】
また、上記の経路選択手段は、出力手段によって出力された総危険度、コスト算出手段によって算出されたコスト、及び設定された前記歩行者又は自転車の個人の特性に基づいて、歩行者又は自転車の経路を選択することができる。これによって、歩行者又は自転車の危険度とコストと個人の特性とを考慮して、経路を選択することができるため、歩行者又は自転車が現実に選択する経路を探索することができる。
【0020】
第3の発明に係る経路探索装置は、地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の現在位置から目的地までの経路の候補上に存在する経由地点を複数生成する経由地点生成手段と、歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、前記経由地点生成手段によって生成された経由地点の各々について、前記現在位置から前記経由地点までの経路上に存在する前記移動場所の種類に応じた総危険度を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記経由地点の各々の総危険度を出力する出力手段とを含んで構成されている。
【0021】
第3の発明に係る経路探索装置によれば、経由地点生成手段によって、地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の現在位置から目的地までの経路の候補上に存在する経由地点を複数生成する。そして、算出手段によって、歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、経由地点生成手段によって生成された経由地点の各々について、現在位置から経由地点までの経路上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出し、出力手段によって、算出手段によって算出された経由地点の各々の総危険度を出力する。
【0022】
従って、経由地点の各々について、経由地点までの経路上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出することにより、経由地点の各々の危険度を考慮して、経路を選択することができるため、歩行者又は自転車が現実に選択する経路を探索することができる。
【0023】
第4の発明に係る交通シミュレーション装置は、上記の経路選択手段を含む経路探索装置と、車両をモデル化した車両モデルを走行させると共に、前記経路探索装置によって選択された経路に従って、歩行者をモデル化した歩行者モデル又は自転車をモデル化した自転車モデルを移動させて、交通状態をシミュレーションするシミュレーション手段とを含んで構成されている。
【0024】
第4の発明に係る交通シミュレーション装置によれば、経路探索装置によって、複数の経路の候補から、歩行者又は自転車の経路を選択する。そして、シミュレーション手段によって、車両をモデル化した車両モデル又は自転車をモデル化した自転車モデルを走行させると共に、経路探索装置によって選択された経路に従って、歩行者をモデル化した歩行者モデル又は自転車をモデル化した自転車モデルを移動させて、交通状態をシミュレーションする。
【0025】
従って、経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出し、経路の候補の各々の危険度を考慮して選択した経路に従って、歩行者モデル又は自転車モデルを移動させることにより、歩行者又は自転車が現実に選択する経路に従って歩行者モデル又は自転車モデルを移動させた交通状態をシミュレーションすることができる。
【0026】
第4の発明に係る交通シミュレーション装置は、ドライバ属性及び事故環境毎に、事故誘発要因となるドライバ又は車両の事象を表すドライバ事故情報を記憶すると共に、歩行者属性又は自転車属性、及び事故環境毎に、事故誘発要因となる歩行者又は自転車の事象を表す歩行者事故情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたドライバ事故情報に基づいて、事故誘発要因となるドライバ又は車両の事象を発生するドライバ事象発生手段と、前記記憶手段に記憶された歩行者事故情報に基づいて、事故誘発要因となる歩行者又は自転車の事象を発生する歩行者事象発生手段とを更に含み、前記シミュレーション手段は、前記記憶手段に記憶されたドライバ事故情報、及び車両モデルが走行する道路環境に基づいて、事故誘発要因となるドライバ又は車両の事象を発生させる場合には、前記事象を発生させるように、車両モデルの挙動を決定する車両挙動決定手段と、前記記憶手段に記憶された歩行者事故情報、前記経路探索装置によって選択された経路、及び歩行者モデルが歩行する道路環境又は自転車モデルが走行する道路環境に基づいて、事故誘発要因となる歩行者又は自転車の事象を発生させる場合には、前記事象を発生させるように、歩行者モデル又は自転車モデルの挙動を決定する歩行者挙動決定手段とを備え、前記車両挙動決定手段によって決定した車両モデルの挙動に基づいて、前記車両モデルを走行させると共に、前記歩行者挙動決定手段によって決定した歩行者モデル又は自転車モデルの挙動に基づいて、前記歩行者モデル又は自転車モデルを移動させて、交通状態をシミュレーションすることができる。これによって、事故の発生をシミュレーションすることができる。
【0027】
また、上記の交通シミュレーション装置は、車両モデルに安全システムを搭載させて交通状態をシミュレーションした結果と、車両モデルに安全システムを搭載させずに交通状態をシミュレーションした結果とを比較することにより、前記安全システムの効果を評価する評価手段を更に含み、前記車両挙動決定手段は、前記記憶手段に記憶されたドライバ事故情報、車両モデルが走行する道路環境、及び車両モデルの安全システムの搭載有無に基づいて、車両モデルの挙動を決定することができる。これによって、車両に搭載する安全システムの効果を評価することができる。
【0028】
また、上記の交通シミュレーション装置は、歩行者モデル又は自転車モデルに安全システムを携帯させて交通状態をシミュレーションした結果と、歩行者モデル又は自転車モデルに安全システムを携帯させずに交通状態をシミュレーションした結果とを比較することにより、前記安全システムの効果を評価する評価手段を更に含み、前記歩行者挙動決定手段は、前記記憶手段に記憶された歩行者事故情報、前記経路探索装置によって選択された経路、歩行者モデルが歩行する道路環境又は自転車モデルが走行する道路環境、及び歩行者モデル又は自転車モデルの安全システムの携帯有無に基づいて、歩行者モデル又は自転車モデルの挙動を決定することができる。これによって、歩行者又は自転車に携帯させる安全システムの効果を評価することができる。
【0029】
第5の発明に係る歩行者挙動予測装置は、上記の経路選択手段を含む経路探索装置と、前記経路選択手段によって選択された経路に基づいて、予測対象の歩行者又は自転車の挙動を予測する予測手段とを含んで構成されている。
【0030】
第5の発明に係る歩行者挙動予測装置は、経路探索装置によって、複数の経路の候補から、歩行者又は自転車の経路を選択する。そして、予測手段によって、予測対象の歩行者又は自転車の挙動を予測する。
【0031】
従って、経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出して、経路の候補の各々の危険度を考慮して、経路を選択し、歩行者又は自転車の挙動を予測することにより、高精度に歩行者又は自転車の挙動を予測することができる。
【0032】
第6の発明に係るプログラムは、コンピュータを、地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の出発地から目的地までの経路の候補を複数生成する経路候補生成手段、歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、前記経路の候補上に存在する前記移動場所の種類に応じた総危険度を算出する算出手段、前記算出手段によって算出された前記経路の候補の各々の総危険度を出力する出力手段、前記出力手段によって出力された前記経路の候補の各々の総危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された複数の経路の候補から、前記歩行者又は自転車の経路を選択する経路選択手段、及び車両をモデル化した車両モデルを走行させると共に、前記経路選択手段によって選択された経路に従って、歩行者をモデル化した歩行者モデル又は自転車をモデル化した自転車モデルを移動させて、交通状態をシミュレーションするシミュレーション手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明の経路探索装置及びプログラムによれば、経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出することにより、又は、経由地点の各々について、経由地点までの経路上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出することにより、経路の候補の各々の危険度又は経由地点の各々の危険度を考慮して、経路を選択することができるため、歩行者又は自転車が現実に選択する経路を探索することができる、という効果が得られる。
【0034】
また、本発明に係る交通シミュレーション装置及びプログラムによれば、経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出し、経路の候補の各々の危険度を考慮して選択した経路に従って、歩行者モデル又は自転車モデルを移動させることにより、歩行者又は自転車が現実に選択する経路に従って歩行者モデル又は自転車モデルを移動させた交通状態をシミュレーションすることができる、という効果が得られる。
【0035】
また、本発明に係る歩行者挙動予測装置によれば、経路の候補の各々について、経路の候補上に存在する移動場所の種類に応じた総危険度を算出して、経路の候補の各々の危険度を考慮して、経路を選択し、歩行者又は自転車の挙動を予測することにより、高精度に歩行者又は自転車の挙動を予測することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態では、歩行者をモデル化した歩行者モデルを仮想的に道路に歩行させる歩行者シミュレーション装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0037】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る歩行者シミュレーション装置10は、歩行環境データベース12と、歩行者データベース14と、歩行者シミュレーション部16とを備えている。歩行者シミュレーション装置10は、例えばネットワークに接続されたコンピュータにより実現され、コンピュータには、後述するシミュレーション処理ルーチンを実行するためのプログラムが記憶されている。
【0038】
歩行環境データベース12は、道路地図、信号、建物、天気、歩行時の明暗などを示す歩行環境情報を記憶している。
【0039】
歩行者データベース14は、歩行者の各々の歩行者属性を記憶している。具体的には、歩行者データベース14は、歩行者毎に、出発地、目的地、出発時刻、年齢、性別、身体能力、意識水準などを記憶している。
【0040】
歩行者シミュレーション部16は、歩行環境データベース12及び歩行者データベース14の各データに基づいて、各歩行者の挙動を再現する。歩行者シミュレーション部16は、歩行環境作成更新部18と、経由候補ポイントリンク生成部20と、歩行者挙動計算部22とを備えている。
【0041】
歩行環境作成更新部18は、歩行環境データベース12に記憶されている道路地図を示す歩行環境情報に基づいて、道路モデルを作成すると共に、その他の歩行環境情報に基づいて、歩行環境モデルを作成し、また、歩行者データベース14からのデータに基づいて、道路モデル上に歩行者モデルを配置する。また、歩行者挙動計算部22で計算された歩行者モデルの挙動に基づき、歩行者モデルの配置位置を更新する。
【0042】
経由候補ポイントリンク生成部20は、歩行者データベース14からの出発地や目的地などのデータ、及び歩行環境作成更新部18からの道路モデル及び歩行環境モデルに基づいて、道路モデル上に歩行者モデルが移動する経由候補ポイントとリンクとを生成する。
【0043】
図2(A)に示すように、歩行者の出発地O及び目的地Dに基づいて、道路モデル上の、施設入り口、交差点角、及び車道や歩道属性の異なる境界の地点に、歩行者モデルが経由する経由候補ポイントを複数作成する。経由候補ポイント間の距離が長い場合には、その間にも経由候補ポイントを作成する。
【0044】
また、図2(B)に示すように、2つの候補経由ポイントを接続してリンクを複数作成する。出発地Oから目的地Dに遠ざかる方向であっても、例えば200m以上離れた候補経由ポイント間にはリンクを生成しない。
【0045】
また、図3(A)に示すような信号交差点にリンクを生成する場合には、図3(B)に示すように、横断歩道上や交差点内を通るように2つの経由候補ポイントを接続してリンクを生成する。
【0046】
図4に示すように、経由候補ポイント間に障害物(例えば、ガードレール、分離帯、街路樹)がある場合には、リンクの始点となる経由候補ポイントと障害物の端点とを結ぶ延長線上に経由候補ポイントを更に作成し、作成された経由候補ポイントを用いてリンクを作成する。
【0047】
歩行者挙動計算部22は、経由候補ポイントリンク生成部20で生成された経由候補ポイントとリンクを用いて、最適な経路を決定する。経路の決定の際には、信号等の周辺環境や車両の認知が行われ、それらの存在(移動物体の場合は速度も考慮)と各々までの距離に基づき、速度等の行動および最適経路が判断される。また、この判断に基づき、歩行者の挙動が計算され、計算された挙動に基づいて、歩行環境作成更新部18によって歩行者位置が更新される。
【0048】
経路を決定する場合には、Dikstra法を用いて、出発地から目的地までの最適経路を探索する。なお、目的地までの距離が長い場合には、途中の経由地点までの最適経路を探索するようにしてもよい。
【0049】
経路の決定では、目的地までの経路の候補の各々に対する歩行者jの効用Ukjに基づいて、複数の経路の候補から最適な経路が選択される。効用Ukjは、経路の候補上に存在する各リンクiの移動したときのコストCijおよび移動するときの危険度を表わすリスクRijを用いて以下の(1)式によって算出される。
【0050】
【数1】

【0051】
ただし、kは、経路の候補上に存在するリンクの集合を示す。
【0052】
上記の(1)式のように、経路の候補の各々の効用は、経路の候補上に存在する各リンクのコストの総和とリスクの総和との和によって求められる。
【0053】
ここで、コストCijは、旅行時間Tijと負荷Bijとを用いて以下の(2)式によって算出される。
【0054】
【数2】

【0055】
上記の(2)式のように、経路の候補の各々のコストの総和は、経路の候補上に存在する各リンクの旅行時間の総和と負荷の総和との和によって求められる。
【0056】
なお、同じ経路でも、移動方法(歩くのか、走るのか)に選択肢がある場合は、各々異なる経路の候補とする。例えば、経路の候補が、横断歩道や横切る予定の車道の30m手前から渡り終えるまでの経路であって、例えば、図5に示すような信号交差点でリンクが生成された場合には、図6に示すように、リンクIおよびリンクIの各々は1つのリンクではなく、Iについて、2つのリンク(I6Run、I6Walk)が存在し、Iについて、2つのリンク(I8Run、I8Walk)が存在する。
【0057】
また、旅行時間Tijは、以下の(3)式に示すように、リンク長と移動速度との関数よって算出される。
旅行時間Tij=f(リンク長、移動速度) ・・・(3)
ただし、移動速度は、歩行者属性である年齢、身体能力、及び意識水準に基づいて決定される。また、信号待ち又は車両通過待ちの予測時間が、旅行時間に加算される。
【0058】
ここで、旅行時間の算出方法について説明する。まず、歩行者の歩行者属性の年齢に応じて、図7に示すような予め定められた年齢と速度との関係から、歩行速度VWalkあるいは走行速度VRunが決定される。そして、歩行者属性の身体能力および意識水準を考慮して、以下の(4)式、(5)式によって、移動速度としての歩行速度又は走行速度が計算される。
ij=VWalk+α×(意識水準レベル)+β×(身体能カレベル) ・・・(4)
ij=VRun+α×(意識水準レベル)+β×(身体能カレベル) ・・・(5)
【0059】
ただし、α、βは、予め定められたパラメータであり、意識水準レベルは、歩行者属性の意識水準に応じて、図8に示すような予め定められた関係から決定され、身体能力レベルは、歩行者属性の身体能力に応じて、図9に示すような予め定められた関係から決定される。
【0060】
次に、以下の(6)式を用いて、移動速度Vij及びリンク長Lに基づく旅行時間に、信号待ち及び車両通過待ちの各々の予測時間を加算して、旅行時間を算出する。
ij=L/Vij
+γsignal×(青信号になるまでの予測時間×予測誤差)
+γcar×(車両が通過するまでの予測時間×予測誤差) ・・・(6)
【0061】
ただし、γsignalは、信号待つ場合には1、待たない場合には0であり、γcarは、車の通過を待つ場合には1、待たない場合には0である。また、信号待ち及び車両通過待ちの各々の予測時間には予測誤差が考慮され、予測誤差は、意識水準、年齢、及び経験を考慮して、以下の(7)式を用いて算出される。
予測誤差=α×(意識水準レベル)
+β×(年齢レベル)+γ×(経験レベル) ・・・(7)
ただし、α、β、γは、予め定められたパラメータであり、意識水準レベルは、歩行者属性の意識水準に応じて、図10に示すような予め定められた関係から決定され、年齢レベルは、歩行者属性の年齢に応じて、図11に示すような予め定められた関係から決定される。また、経験レベルは、歩行者属性の経験に応じて、図12に示すような予め定められた関係から決定される。
【0062】
次に、負荷Bijは、<1>歩道橋などの道路の高低や舗装状態等の歩行環境、<2>天候、<3>走る移動である否か、及び<4>移動が違反であるか否か、に応じた心身負荷を表わしており、以下の(8)式に示すように、歩行環境、リンク長、移動速度、身体能力、年齢、及び法遵守傾向の関数として計算される。
ij=f(歩行環境、リンク長、移動速度、身体能力、年齢、法遵守傾向)
=L/Vij
×((歩行環境負荷の重み)+α×(歩行環境負荷の身体能カレベル)+β×(歩行環境負荷の年齢レベル)+a×η×(天候負荷の重み)
+b×(γ×(走る負荷の身体能カレベル)+δ×(走る負荷の年齢レベル))
+κ×(違反行動負荷の重み)×(法遵守レベル))
・・・(8)
【0063】
ただし、aは、移動場所が屋内である場合に0.0、移動場所が屋外であって屋根が有る場合に0.5、移動場所が屋外であって屋根がない場合に1.0である。bは、歩く移動である場合に0であり、走る移動である場合に1である。また、α、β、γ、δ、η、κは、予め定められたパラメータである。
【0064】
また、歩行環境負荷の重みは、図13に示すように、移動場所の種類「舗装有り、平坦」、「坂道(急)」、「坂道(普通)」、「坂道(緩い)」、「歩道橋」、「砂利道」、「幅員小の歩道」、及び「階段」の各々に対して予め定められた重み係数である。歩行環境負荷の身体能力レベルは、歩行者属性の身体能力に応じて、図14に示すような予め定められた関係から決定され、歩行環境負荷の年齢レベルは、歩行者属性の年齢に応じて、図15に示すような予め定められた関係から決定される。
【0065】
また、天候負荷の重みは、図16に示すように、天候の種類「雨」、「雪」、「霧」、「雲」、「晴れ」、「気温」、及び「湿度」の各々について、天候のレベル(大、中、小)に応じて予め定められた重み係数であり、走る負荷の身体能力レベルは、歩行者属性の身体能力に応じて、図17に示すような予め定められた関係から決定され、走る負荷の年齢レベルは、歩行者属性の年齢に応じて、図18に示すような予め定められた関係から決定される。
【0066】
また、違反行動負荷の重みは、図19に示すように、違反内容の種類「赤信号」、「点滅信号」、「車道の横切り」、及び「交差点内の横切り」の各々について予め定められた重み係数である。また、法遵守レベルは、歩行者属性の法遵守傾向に応じて、図20に示すような予め定められた関係から決定される。
【0067】
次に、リスクの算出方法について説明する。歩行者モデルjのリンクiに対するリスクRijは、以下の(9)式のように、危険を伴う歩行環境等の変化しない静的なリスクの関数fを用いて算出される。
ij=f(歩行環境、リンク長、移動速度、年齢、経験)
=Li/Vij
×(歩行環境の重み+α×経験レベル+β×年齢レベル) ・・・(9)
【0068】
ただし、α、βは予め定められたパラメータであり、歩行環境の重みは、図21に示すように、移動場所の種類「横断歩道」、「車道(交通量小)」、「車道(交通量大)」、「車道(交差点内)」、「歩車分離の歩道」、及び「歩車非分離の歩道」の各々に対して予め定められた重み係数である。上記図21のように、移動場所の種類「車道」の重み係数は、車道を走行する車両の交通量(小、大)に応じて定められている。なお、移動場所の種類「車道」の重み係数を、車両の平均速度(小、大)に応じて定めてもよい。
【0069】
また、経験レベルは、歩行者属性の経験に応じて、図22に示すような予め定められた関係から決定され、年齢レベルは、歩行者属性の年齢に応じて、図23に示すような予め定められた関係から決定される。
【0070】
また、歩行者混雑率、移動場所に存在する歩行者、移動場所が自転車用道路と分離されているか否か、移動場所の自転車通行量、車道の大型車混入率などを更に考慮して、リスクを算出するようにしてもよい。
【0071】
以上のことから、経路の候補に対するリスクの総和は、経路の候補上に存在するリンクに該当する移動場所の種類に応じて上記(9)式により算出されるリスクの総和となる。
【0072】
歩行者挙動計算部22は、経由候補ポイントリンク生成部20で生成された歩行者jに関するリンクiの各々について、コストCijとリスクRijとを算出し、経路の候補の各々について、経路の候補上に該当する全てのリンクのコストCを総和すると共に、リスクRを総和して、コストCの総和とリスクの総和との和によって効用Uを算出する。そして、経路の候補の各々の効用Uに基づいて、効用Uが最小となる経路の候補を検索し、検索された経路の候補を最適な経路として決定する。
【0073】
次に、第1の実施の形態に係る歩行者シミュレーション装置10の動作について説明する。まず、オペレータによって、歩行者シミュレーション装置10に、シミュレーション開始時刻及び終了時刻が入力され、シミュレーションの開始指示が入力されると、歩行者シミュレーション装置10において、図24に示すシミュレーション処理ルーチンが実行される。
【0074】
まず、ステップ100において、歩行環境データベース12の道路地図を示す歩行環境情報に基づいて道路モデルを生成すると共に、信号や建物などを示す歩行環境情報に基づいて、シミュレーション開始時刻における歩行環境モデルを生成し、ステップ102で、歩行者データベース14のデータに基づいて、開始時刻が出発時刻に該当する歩行者モデルを道路モデル上の出発地に配置し、そして、ステップ104において、各歩行者モデルについて、出発地から目的地までの複数の経由候補ポイントを道路モデル上に生成すると共に、生成された経由候補ポイントに基づいて、リンクを道路モデル上に複数生成する。
【0075】
次のステップ106では、対象となる歩行者モデルについて、歩行者モデルが認知する道路環境を取得し、ステップ108において、上記ステップ106で取得した認知する道路環境に基づいて、判断処理を行う。
【0076】
上記ステップ108の判断処理では、認知する道路環境に基づいて、経路の候補の各々について、リスクの総和及びコストの総和を算出し、リスクの総和とコストの総和とに基づいて、効用を算出する。そして、効用が最小となる経路の候補を検索し、検索された経路の候補を最適経路として判断する。そして、ステップ110で、判断された最適経路に基づいて、対象となる歩行者モデルの挙動を計算する。
【0077】
次のステップ112では、道路モデル上に配置されている全ての歩行者モデルについて、上記ステップ106〜ステップ110の処理を実行したか否かを判定し、全ての歩行者モデルについて実行されていない場合には、ステップ106へ戻り、次の歩行者モデルについて認知、判断、挙動の各処理を実行する。一方、全ての歩行者モデルについて、上記ステップ106〜ステップ110の処理を実行した場合には、ステップ114へ進み、現在時刻を次の時刻に更新する。
【0078】
そして、ステップ116では、歩行する道路環境モデルを、更新された時刻における歩行する道路環境モデルに更新すると共に、上記ステップ110で計算された歩行者モデルの挙動に基づいて、歩行者モデルの配置位置を更新する。なお、目的地に到着した歩行者モデルについては、この時点で、消滅させる。
【0079】
次のステップ118では、終了時刻であるか否かを判定し、現在時刻が終了時刻である場合には、シミュレーション処理ルーチンを終了するが、現在時刻が終了時刻でない場合には、ステップ120において、歩行者モデルを追加するか否かを判断し、歩行者データベース14のデータに基づいて、更新された現在時刻が出発時刻である歩行者が存在しない場合には、ステップ106へ戻るが、一方、現在時刻が出発時刻である歩行者が存在する場合には、歩行者モデルを追加すると判断し、ステップ122において、現在時刻が出発時刻である歩行者モデルを道路モデル上の出発地に配置する。
【0080】
そして、ステップ124において、上記ステップ122で新たに配置された歩行者モデルの各々について、出発地から目的地までの複数の経由候補ポイント及び複数のリンクを道路モデル上に生成して、ステップ106へ戻る。
【0081】
上述したように、シミュレーション処理ルーチンが実行されると、歩行者データベース14のデータが示す歩行者の歩行者モデルの各々について、認知、判断、及び挙動の各処理に基づいて、各歩行者モデルの最適経路を選択して、選択された経路に従って、各歩行者モデルを目的地に向けて移動するようにシミュレーションが行われる。
【0082】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る歩行者シミュレーション装置によれば、経路の候補の各々について、経路の候補上に存在するリンクに対応する移動場所の種類を考慮したリスクの総和を算出し、経路の候補の各々に対するリスクの総和を考慮して選択した経路に従って、歩行者モデルを移動させることにより、歩行者が現実に選択する経路に従って歩行者モデルを移動させた交通状態をシミュレーションすることができる。
【0083】
また、経路の候補の各々のリスクの総和とコストの総和とを考慮して、経路を選択することができるため、歩行者が現実に選択する経路に従って歩行者モデルを移動させた交通状態をシミュレーションすることができる。
【0084】
また、歩行者モデルの個人属性、能力、および周辺の道路環境に基づくリスクを考慮して、歩行者の経路および挙動をシミュレーションすることにより、実際に近い歩行者行動をシミュレーションすることができる。
【0085】
また、個人属性に応じた経路や挙動の嗜好に加え、坂道などの環境の身体負荷を考慮して、最適経路を判断し、挙動を計算しているため、現実により近い歩行者経路および挙動を再現することができる。
【0086】
なお、上記の実施の形態では、コストの総和とリスクの総和との和によって効用を算出している場合を例に説明したが、コストとリスクとの各々に対して重み付けをして、効用を算出するようにしてもよい。この場合には、歩行者の個人特性、例えば年齢に応じて重み係数を設定して、以下の(10)式によって、歩行者モデルjの経路の候補(kを経路の候補上に存在するリンクの集合とする)に関する効用Ukjを算出するようにしてもよい。
【0087】
【数3】

【0088】
ただし、wCjは、歩行者モデルjの年齢に応じたコストに関する重み係数、wRjは、歩行者モデルjの年齢に応じたリスクに関する重み係数である。例えば、図25(A)、(B)に示すように、コストに関する重み係数及びリスクに対する重み係数を、年齢に応じて、予め定めておけばよい。年齢が低いあるいは高い場合には、コストよりもリスクの重み係数が大きくなるように設定し、また、コストに関する重み係数とリスクに対する重み係数との和が1となるように設定すればよい。これによって、歩行者のリスクとコストと個人の特性とを考慮して、最適な経路を選択することができるため、歩行者が現実に選択する経路に基づいて、歩行者モデルの経路及び挙動をシミュレーションすることができる。
【0089】
また、コストの総和とリスクの総和との和によって算出される効用に基づいて、最適な経路を選択している場合を例に説明したが、経路の候補の各々について算出されるリスクの総和に基づいて、経路の候補から最適な経路を選択するようにしてもよい。この場合には、リスクの総和が最小となる経路の候補を最適な候補として選択すればよい。
【0090】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、歩行者をモデル化した歩行者モデル及び車両をモデル化した車両モデルの挙動をシミュレーションする交通シミュレーション装置に本発明を適用した場合を例に説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0091】
第2の実施の形態では、歩行者モデルの挙動と共に車両モデルの挙動をシミュレーションしている点と、事故を発生させている点とが第1の実施の形態と主に異なっている。
【0092】
図26に示すように、第2の実施の形態に係る交通シミュレーション装置210は、歩行環境データベース12と、歩行者データベース14と、ドライバデータベース212と、実事故データベース214と、交通シミュレーション部216と、シミュレーション結果データベース218とを備えている。
【0093】
ドライバデータベース212は、各々の車両を運転するドライバ属性を記憶している。具体的には、ドライバデータベース212は、ドライバ毎に、ドライバ属性として、出発地、目的地、出発時刻、経路、年齢、性別、運転スキル、及び法遵守傾向を記憶している。
【0094】
実事故データベース214は、加害者属性としてのドライバ属性、被害者属性としての歩行者属性、事故内容、事故要因、事故環境、及び事故状況を記憶している。なお、これらのデータは、ネットワークを介してリアルタイムで入力されたものでもよいし、オペレータにより入力されたものでもよい。
【0095】
実事故データベース214は、事故内容として、分類された事故内容毎の事故件数を記憶している。例えば「直進車両の認知ミスによる右直事故件数」、「居眠りによる追突事故件数」、「脇見による追突件数」を記憶している。また、各事故内容の分類に対して、加害者の年齢、性別、運転経験、被害者の年齢、性別、事故誘発要因(助手席同乗者との会話、探し物、携帯電話操作など)、事故発生時の天気、事故環境の明暗、交差点規模、事故発生場所(交差点内、交差点直前など)、事故状況(停止、先行車両に追従、加速など)が記憶されている。
【0096】
交通シミュレーション部216は、歩行環境データベース12、歩行者データベース14、ドライバデータベース212、及び実事故データベース214の各データに基づいて、各歩行者モデルの挙動及び各車両モデルの挙動を再現して、交通流を再現する。交通シミュレーション部216は、道路環境経路生成部218と、道路環境更新部220と、歩行者挙動計算部222と、車両挙動計算部224と、交通状況管理部226とを備えている。
【0097】
道路環境経路生成部218は、歩行環境データベース12からのデータに基づいて、道路モデルや建物などの歩行環境モデルを作成すると共に、歩行者データベース14からのデータに基づいて、歩行者モデルを道路モデル上に配置する。また、ドライバデータベース212からのデータに基づいて、車両モデルを道路モデル上に配置する。また、歩行者データベース14からのデータに基づき、各歩行者モデルの複数の経由候補ポイントと複数のリンクとを道路モデル上に生成する。
【0098】
道路環境更新部220は、交通状況管理部226から出力された各車両モデルおよび各歩行者モデルの位置情報や速度情報に従って、各車両モデルおよび各歩行者モデルの配置位置を更新する。
【0099】
歩行者挙動計算部222は、道路環境経路生成部218で生成された経由候補ポイントとリンクを用いて、経路の候補から最適な経路を決定する。経路の決定では、各歩行者属性に応じて、歩行者モデルが歩行環境や周辺車両、歩行者を認知して、経由候補ポイント及びリンクで表わされる経路の候補から最適経路を判断すると共に、希望速度などの希望行動を判断する。そして、判断された最適経路と希望行動に基づいて、挙動を決定する。さらに、希望速度に基づき移動量を計算する。また、実事故データベース214のデータに基づいて、歩行者属性、歩行する道路環境、及び歩行状況に応じて、歩行者モデルの挙動にエラーを発生させて、事故を発生させる。
【0100】
経路の決定は、第1の実施の形態と同様に、目的地までの経路の候補(経路の候補上に存在するリンクの集合をkとする)の各々に対する歩行者jの効用Ukjに基づいて行われ、上記の(1)式によって、リスクとコストとから経路の候補の各々について効用Ukjが算出される。
【0101】
歩行者jのリンクiのリスクRijは、以下の(11)式のように、車両との衝突に関する時々刻々と変化する衝突危険度としての動的なリスクの関数fと危険を伴う環境等の変化しない静的なリスクの関数fとを用いて算出される。
ij=f(移動速度、車両速度、
コンフリクトポイントまでの時間差、信号現示の予測)
+f(歩行環境、リンク長、移動速度、年齢、経験) ・・・(11)
ここで、
=Li/Vij
×(歩行環境の重み+α×経験レベル+β×年齢レベル) ・・・(12)
=γ×δ×e−(コンフリクトポイントまでの時間差) ・・・(13)
【0102】
ただし、γは予め定められたパラメータであり、δは、信号が青あるいは青になるのを待つ場合又は接近車両の通過を待つ場合、0であり、その他の場合、1である。
【0103】
上記の(13)式のように、衝突危険度としての動的なリスクは、コンフリクトポイントまでの時間差に基づいて算出され、コンフリクトポイントまでの時間差は、歩行者モデルの現在位置に対する車両モデルの位置と、歩行者モデルの移動速度と車両モデルの車両速度との相対的な速度とに基づいて求められる。
【0104】
車両挙動計算部224は、走行する道路環境、周辺車両、周辺歩行者の状況に基づき、各ドライバ属性に応じた認知により、希望行動(希望経路、速度、加減速度など)を判断し、判断された希望行動から操作を決定し、決定された操作に基づいて、車両の挙動を決定する。さらに、車両およびドライバ属性に基づき移動量を計算する。また、実事故データベース214のデータに基づいて、ドライバ属性、走行する道路環境、及び走行状況に応じて、車両の挙動にエラーを発生させて、事故を発生させる。
【0105】
交通状況管理部226は、計算ステップ毎の個々の車両モデルおよび歩行者モデルの位置、速度、加減速度を管理する。また、道路モデル上の車両モデルおよび歩行者モデルの発生、消滅も管理する。
【0106】
シミュレーション結果データベース218は、交通シミュレーション部216からシミュレーション結果として得る事故件数及び事故状況を記憶している。
【0107】
次に、第2の実施の形態に係る交通シミュレーション装置210の動作について説明する。まず、オペレータによって、交通シミュレーション装置210に、シミュレーション開始時刻及び終了時刻が入力され、シミュレーションの開始指示が入力されると、交通シミュレーション装置210において、図27に示すシミュレーション処理ルーチンが実行される。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0108】
まず、ステップ250において、歩行環境データベース12の道路地図を示す歩行環境情報に基づいて道路モデルを生成すると共に、信号や建物を示す歩行環境情報に基づいて、シミュレーション開始時刻における道路環境モデルを生成し、ステップ252で、歩行者データベース14のデータに基づいて、開始時刻が出発時刻に該当する歩行者モデルを道路モデル上の出発地に配置すると共に、ドライバデータベース212のデータに基づいて、開始時刻が出発時刻に該当する車両モデルを道路モデル上の出発地に配置する。
【0109】
そして、ステップ104において、各歩行者モデルについて、出発地から目的地までの複数の経由候補ポイント及び複数のリンクを生成する。
【0110】
次のステップ254では、対象となる歩行者モデルについて、歩行者モデルが認知する道路環境を取得し、ステップ256において、上記ステップ254で取得した認知する道路環境に基づいて、判断処理を行う。
【0111】
上記ステップ256の判断処理では、認知する道路環境に基づいて、経路の候補の各々について、リスクの総和及びコストの総和を算出し、リスクの総和とコストの総和とに基づいて、効用を算出する。そして、効用が最小となる経路の候補を検索し、検索された経路の候補を最適経路として判断する。
【0112】
そして、ステップ257で、判断された最適経路に基づいて、対象となる歩行者モデルの挙動を計算する。また、上記ステップ257において、実事故データベース214のデータに基づいて、歩行者属性、及び上記ステップ254で認知した歩行する道路環境に応じて、歩行者モデルの挙動にエラーを発生させて、事故を発生させる。
【0113】
次のステップ112では、配置されている全ての歩行者モデルについて、上記ステップ254〜257の処理を実行したか否かを判定し、全ての歩行者モデルについて実行されていない場合には、ステップ254へ戻り、次の歩行者モデルについて認知、判断、挙動の各処理を実行する。一方、全ての歩行者モデルについて、上記ステップ254〜257の処理を実行した場合には、ステップ258へ進む。
【0114】
ステップ258では、対象となる車両モデルのドライバについて、ドライバが認知する走行する道路環境を取得し、ステップ260において、上記ステップ258で認知した走行する道路環境に基づいて、希望経路、希望速度、希望加減速度などの希望行動を判断する。そして、ステップ262では、上記ステップ260で判断された希望行動に基づいて、車両モデルの操作を決定し、ステップ264において、上記ステップ262で決定された操作に基づいて、対象となる車両モデルの挙動を計算する。
【0115】
また、上記ステップ264において、実事故データベース214のデータに基づいて、ドライバ属性、及び上記ステップ258で認知した走行する道路環境に応じて、車両モデルの挙動にエラーを発生させて、事故を発生させる。
【0116】
次のステップ266では、配置されている全ての車両モデルのドライバについて、上記ステップ258〜264の処理を実行したか否かを判定し、全てのドライバについて実行されていない場合には、ステップ258へ戻り、次の車両モデルのドライバについて認知、判断、操作、挙動の各処理を実行する。一方、全ての車両モデルのドライバについて、上記ステップ259〜264の処理を実行した場合には、ステップ114へ進む。
【0117】
ステップ114では、現在時刻を次の時刻に更新し、ステップ268では、更新された時刻における道路環境モデルに更新すると共に、上記ステップ110で計算された歩行者モデルの挙動及び上記ステップ264で計算された車両モデルの挙動に基づいて、歩行者モデル及び車両モデルの位置を更新する。なお、目的地に到着した歩行者モデル及び車両モデルについては、この時点で、消滅させる。
【0118】
次のステップ118では、終了時刻であるか否かを判定し、現在時刻が終了時刻である場合には、シミュレーション処理ルーチンを終了するが、現在時刻が終了時刻でない場合には、ステップ270において、車両モデルを追加するか否かを判断し、ドライバデータベース212のデータに基づいて、現在時刻が出発時刻であるドライバが存在しない場合には、ステップ120へ移行するが、一方、現在時刻が出発時刻であるドライバが存在する場合には、車両モデルを追加すると判断し、ステップ272において、現在時刻が出発時刻であるドライバの車両モデルを道路モデル上の出発地に配置して、ステップ120へ移行する。
【0119】
ステップ120では、歩行者モデルを追加するか否かを判断し、現在時刻が出発時刻である歩行者モデルが存在しない場合には、ステップ254へ戻るが、一方、現在時刻が出発時刻である歩行者モデルが存在する場合には、歩行者モデルを追加すると判断し、ステップ122において、現在時刻が出発時刻である歩行者モデルを道路モデル上の出発地に配置する。
【0120】
そして、ステップ124において、上記ステップ122で新たに配置された歩行者モデルの各々について、出発地から目的地までの複数の経由候補ポイント及び複数のリンクを生成して、ステップ254へ戻る。
【0121】
上述したシミュレーション処理ルーチンを実行することにより、実事故データに基づいて、歩行者属性及び歩行環境に応じて、歩行者モデルの挙動にエラーを発生させ、また、ドライバ属性及び走行環境に応じて、車両モデルの挙動にエラーを発生させて、交通事故を発生させる。このように、歩行者モデル及び車両モデルの環境に応じた事故の発生をシミュレーションし、シミュレーション結果として、事故件数や事故状況を示す情報を取得することができる。
【0122】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る運転支援装置によれば、静的なリスクと共に、歩行者の現在位置の近く走行する車両との衝突危険度を表わす動的なリスクを考慮して、経路の候補から最適な経路を選択することができる。
【0123】
また、歩行者モデルの挙動だけでなく、車両モデルの挙動や事故の発生をシミュレーションすることができる。
【0124】
なお、コストの総和とリスクの総和との和によって算出される効用に基づいて、最適な経路を選択している場合を例に説明したが、リスクの総和に基づいて、経路の候補から最適な経路を選択するようにしてもよい。この場合には、静的なリスクの総和と動的なリスクの総和との和が最小となる経路の候補を最適な候補として選択すればよい。
【0125】
次に、第3の実施の形態に係る交通シミュレーション装置について説明する。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0126】
第3の実施の形態では、安全システムの搭載有無の各々について、交通シミュレーションを行い、安全システムの効果の評価を行っている点が第2の実施の形態と異なっている。
【0127】
図28に示すように、第3の実施の形態に係る交通シミュレーション装置310は、歩行環境データベース12と、歩行者データベース14と、ドライバデータベース212と、実事故データベース214と、交通シミュレーション部316と、シミュレーション結果データベース318と、効果評価部330とを備えている。
【0128】
交通シミュレーション部316は、道路環境経路生成部218と、道路環境更新部220と、安全システム部320と、歩行者挙動計算部322と、車両挙動計算部324と、交通状況管理部226とを備えている。
【0129】
安全システム部320は、道路環境更新部220から道路環境モデル、車両モデル、及び歩行者モデルの状況を得て、車両モデル又は歩行者モデルの危険度を判定し、危険な車両モデル又は歩行者モデルに対して、危険情報の提供や制御を与える。オペレータからの設定に基づいて、車両モデルに安全システムが搭載される場合には、車両モデルに対して、危険情報の提供や制御を行い、歩行者モデルが安全システムを携帯する場合には、歩行者モデルに対して、危険情報の提供や制御を行う。また、オペレータからの設定に基づいて、安全システムが車両モデルに搭載されず、歩行者モデルが安全システムを携帯しない場合には、危険情報の提供や制御を一切行わない。
【0130】
歩行者挙動計算部322は、認知及び判断の過程において、道路環境経路生成部218で生成された複数の経由候補ポイントと複数のリンクを用いて表わされた経路の候補から最適な経路を判断し、判断された経路に基づいて、挙動を計算する。また、実事故データベース214のデータに基づいて、歩行者属性、歩行する道路環境、及び歩行状況に応じて、歩行者モデルの挙動にエラーを発生させて、事故を発生させる。安全システムを携帯している歩行者モデルに対しては、安全システム部320から危険情報や制御を得て、危険情報や制御に基づく判断や挙動を決定する。
【0131】
車両挙動計算部324は、走行する道路環境、周辺車両、及び周辺歩行者の状況に基づき、各ドライバ属性に応じた認知により、希望行動(希望経路、速度、加減速度など)を判断し、判断に基づいて操作を決定し、操作に基づいて車両モデルの挙動を決定する。また、実事故データベース214のデータに基づいて、ドライバ属性、走行環境、及び走行状況に応じて、車両モデルの挙動にエラーを発生させて、事故を発生させる。安全システムの車載機を搭載している車両モデルのドライバに対しては、安全システム部320から危険情報や車両制御を得て、危険情報や制御に基づく判断、操作、又は挙動を決定する。
【0132】
シミュレーション結果データベース318は、交通シミュレーション部316からシミュレーション結果として得る事故件数及び事故状況を記憶すると共に、効果評価部330から出力された安全システムによる事故削減率を記憶している。
【0133】
効果評価部330は、シミュレーション結果データベース318から、安全システムを用いなかった場合の事故件数と、安全システムを用いた場合の事故件数とを取得して、安全システムによる事故削減率を算出して出力する。
【0134】
次に、第3の実施の形態に係る交通シミュレーション装置310の動作について説明する。
【0135】
オペレータの入力によって、安全システムを車両モデルに搭載せず、かつ、歩行者モデルに携帯させないように設定して、上記の第2の実施の形態と同様に、シミュレーション処理ルーチンを実行させ、シミュレーション結果の出力として得られる事故件数及び事故状況をシミュレーション結果データベース318に記憶する。
【0136】
次に、車両モデルに安全システムを搭載させるように設定して、シミュレーション処理ルーチンを実行させる。このシミュレーション処理ルーチンでは、安全システム部320から得られる危険情報の提供や制御に応じて、安全システムの車載機を搭載している車両モデルのドライバに対する認知、判断、操作、及び挙動の各処理を実行する。そして、シミュレーション結果の出力として得られる事故件数及び事故状況をシミュレーション結果データベース318に記憶する。
【0137】
そして、安全システムによる事故削減率を算出して、車載器の安全システムの効果の評価として出力する。
【0138】
次に、歩行者モデルに安全システムを携帯させるように設定して、シミュレーション処理ルーチンを実行させる。このシミュレーション処理ルーチンでは、安全システム部320から得られる危険情報の提供や制御に応じて、安全システムを携帯している歩行者モデルに対する認知、判断、及び挙動の各処理を実行する。そして、シミュレーション結果の出力として得られる事故件数及び事故状況をシミュレーション結果データベース318に記憶する。
【0139】
そして、安全システムによる事故削減率を算出して、歩行者携帯用の安全システムの効果の評価として出力する。
【0140】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る運転支援装置によれば、車両に搭載する安全システムの効果や歩行者に携帯させる安全システムの効果を評価することができる。
【0141】
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、歩行者の行動を予測する歩行者行動予測装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0142】
第4の実施の形態に係る歩行者行動予測装置では、予測対象となる歩行者について、出発地として現在位置が入力され、歩行者の状況に基づいて、目的地を推定する。
【0143】
そして、予め用意された道路地図情報と予測対象の歩行者の出発地及び目的地とに基づいて、複数の経由候補ポイントと複数のリンクとを道路地図上に生成し、経由候補ポイントとリンクとで表される複数の経路の候補を生成する。
【0144】
そして、複数の経路の候補の各々について、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同様の方法を用いて、経路の候補上に存在するリンクに対応する移動場所の種類を考慮して、リスクの総和及びコストの総和を算出し、効用を算出する。算出された効用が最小となる経路の候補を検索し、検索された経路の候補を最適な経路として選択し、選択された経路に基づいて、予測対象の歩行者の挙動を計算して、予測される行動として出力する。
【0145】
このように、第4の実施の形態に係る歩行者行動予測装置によれば、経路の候補の各々について、経路の候補上に存在するリンクに対応する移動場所の種類を考慮して、リスクの総和及びコストの総和を算出し、経路の候補の各々のリスク及びコストを考慮して、経路を選択して、歩行者の挙動を予測することにより、高精度に歩行者の挙動を予測することができる。
【0146】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、最適な経路を探索してオペレータに表示する経路探索装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0147】
第5の実施の形態に係る経路探索装置では、歩行者であるオペレータから、出発地及び目的地が入力される。なお、出発地については、GPSなどを用いて取得した現在位置を、出発地として入力するようにしてもよい。
【0148】
そして、予め用意された道路地図情報と、歩行者の出発地及び目的地とに基づいて、複数の経由候補ポイントと複数のリンクとを道路地図上に生成し、経由候補ポイントとリンクとで表される複数の経路の候補を生成する。
【0149】
そして、複数の経路の候補の各々について、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の方法を用いて、経路の候補上に存在するリンクに対応する移動場所の種類を考慮して、リスクの総和及びコストの総和を算出し、効用を算出する。算出された効用が最小となる経路の候補を検索し、検索された経路の候補を最適な経路として選択し、選択された経路を表示する。
【0150】
このように、第5の実施の形態に係る経路探索装置によれば、経路の候補の各々について、経路の候補上に存在するリンクに対応する移動場所の種類に応じて、リスクの総和及びコストの総和を算出して、経路の候補の各々のリスク及びコストを考慮して、経路を選択することにより、最適な経路を探索することができる。
【0151】
なお、上記の実施の形態では、選択された最適な経路を表示する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、生成された経路の候補の各々と、各経路の候補に対して算出された効用(またはリスクの総和及びコストの総和)とを表示して、オペレータに、希望の経路を選択させるようにしてもよい。
【0152】
次に、第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態では、各経由地点までの経路について、リスク及びコストを考慮した効用を算出して、表示している点が第5の実施の形態と異なっている。
【0153】
第6の実施の形態に係る経路探索装置では、歩行者であるオペレータから、現在位置及び目的地が入力される。なお、現在位置については、GPSなどを用いて取得すればよい。
【0154】
そして、予め用意された道路地図情報と、歩行者の現在位置及び目的地とに基づいて、複数の経由候補ポイントと複数のリンクとを道路地図上に生成し、経路の候補として、生成された複数の経由候補ポイントの各々までの経路を生成する。
【0155】
そして、生成された複数の経路の各々について、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の方法を用いて、経路上に存在するリンクに対応する移動場所の種類を考慮して、リスクの総和及びコストの総和を算出し、効用を算出する。そして、生成された経由候補ポイントの各々と、各経由候補ポイントまでの経路に対して算出された効用(またはリスクの総和及びコストの総和)とを表示する。そして、オペレータは、表示された効用に基づいて、希望の経路を選択する。
【0156】
このように、第6の実施の形態に係る経路探索装置によれば、経由候補ポイントまでの経路の各々について、経路上に存在するリンクに対応する移動場所の種類に応じて、リスクの総和及びコストの総和を算出し、経由候補ポイントまでの経路の各々について、リスク及びコストを考慮した効用を表示することにより、オペレータに、希望の経路を選択させることができる。
【0157】
なお、上記の実施の形態では、Dikstra法を用いて経路探索を行なう場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、経路決定に、A法、CA法、ニューラルネットワークを用いる手法等の他の経路探索法を用いてもよい。
【0158】
また、上記では、予測対象が歩行者である場合について述べたが、歩行者に限らず、自転車や車イスを予測対象としてもよい。更に、車両として、二輪車を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る歩行者シミュレーション装置を示すブロック図である。
【図2】(A)道路モデル上に経由候補ポイントを生成した様子を示すイメージ図、及び(B)道路モデル上にリンクを生成した様子を示すイメージ図である。
【図3】(A)道路モデル上の信号交差点に経由候補ポイントを生成した様子を示すイメージ図、及び(B)道路モデル上の信号交差点にリンクを生成した様子を示すイメージ図である。
【図4】道路モデル上に障害物がある場合に経由候補ポイント及びリンクを生成した様子を示すイメージ図である。
【図5】道路モデル上の信号交差点に経由候補ポイント及びリンクが生成した様子を示すイメージ図である。
【図6】生成されたリンクに、2つのリンクが存在することを説明するための図である。
【図7】年齢と歩行速度及び走行速度の各々との関係を示すグラフである。
【図8】意識水準と移動速度に関する意識水準レベルとの関係を示すグラフである。
【図9】身体能力と移動速度に関する身体能力レベルとの関係を示すグラフである。
【図10】意識水準と予測誤差に関する意識水準レベルとの関係を示すグラフである。
【図11】年齢と予測誤差に関する年齢レベルとの関係を示すグラフである。
【図12】経験と予測誤差に関する経験レベルとの関係を示すグラフである。
【図13】移動場所の種類に対する歩行環境負荷の重み係数の例を示す表である。
【図14】身体能力と歩行環境負荷に関する身体能力レベルとの関係を示すグラフである。
【図15】年齢と歩行環境負荷に関する年齢レベルとの関係を示すグラフである。
【図16】天候の種類に対する歩行環境負荷の重み係数の例を示す表である。
【図17】身体能力と走る負荷に関する身体能力レベルとの関係を示すグラフである。
【図18】年齢と走る負荷に関する年齢レベルとの関係を示すグラフである。
【図19】違反内容の種類に対する違反行動負荷の重み係数の例を示す表である。
【図20】法遵守傾向と法遵守レベルとの関係を示すグラフである。
【図21】移動場所の種類に対するリスクの重み係数の例を示す表である。
【図22】経験とリスクに関する経験レベルとの関係を示すグラフである。
【図23】年齢とリスクに関する年齢レベルとの関係を示すグラフである。
【図24】本発明の第1の実施の形態に係る歩行者シミュレーション装置におけるシミュレーション処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図25】(A)年齢に対するコストに関する重み係数及びリスクに対する重み係数の例を示す表、及び(B)年齢とコストに関する重み係数及びリスクに対する重み係数の各々との関係を示すグラフである。
【図26】本発明の第2の実施の形態に係る交通シミュレーション装置を示すブロック図である。
【図27】本発明の第2の実施の形態に係る交通シミュレーション装置におけるシミュレーション処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図28】本発明の第3の実施の形態に係る交通シミュレーション装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0160】
10 歩行者シミュレーション装置
12 歩行環境データベース
14 歩行者データベース
16 歩行者シミュレーション部
18 歩行環境作成更新部
20 経由候補ポイントリンク生成部
22、222、322 歩行者挙動計算部
210、310交通シミュレーション装置
212 ドライバデータベース
214 実事故データベース
216、316交通シミュレーション部
218、318シミュレーション結果データベース
218 道路環境経路生成部
220 道路環境更新部
224、324車両挙動計算部
226 交通状況管理部
320 安全システム部
330 効果評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の出発地から目的地までの経路の候補を複数生成する経路候補生成手段と、
歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、前記経路の候補上に存在する前記移動場所の種類に応じた総危険度を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記経路の候補の各々の総危険度を出力する出力手段と、
を含む経路探索装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記経路生成手段によって生成された複数の経路の候補と、前記経路の候補の各々の総危険度とを表示する請求項1記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記出力手段によって出力された前記経路の候補の各々の総危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された複数の経路の候補から、前記歩行者又は自転車の経路を選択する経路選択手段を更に含む請求項1記載の経路探索装置。
【請求項4】
前記歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類は、横断歩道、歩車分離の歩道、歩車非分離の歩道、及び車道を含む請求項1〜請求項3の何れか1項記載の経路探索装置。
【請求項5】
前記車道に対する危険度を、前記車道の単位時間当たりの車両交通量の各々又は前記車道を走行する車両の複数の平均車速度の各々に対して定めた請求項4記載の経路探索装置。
【請求項6】
歩行者又は自転車の現在位置に対する車両の位置、及び前記車両の速度の少なくとも一方に基づいて、前記経路生成手段によって生成された経路の候補の各々に対して、前記歩行者が前記車両と衝突する衝突危険度を算出する衝突危険度算出手段と、
前記出力手段によって出力された前記経路の候補の各々の総危険度と、前記衝突危険度算出手段によって算出された衝突危険度とに基づいて、前記経路生成手段によって生成された複数の経路の候補から、前記歩行者又は自転車の経路を選択する経路選択手段を更に含む請求項1〜請求項5の何れか1項記載の経路探索装置。
【請求項7】
前記経路候補生成手段は、前記出発地から前記目的地までの経路において経由する複数の経由候補ポイントと前記複数の経由候補ポイントのうちの2つの経由候補ポイントを接続した複数のリンクとを生成し、生成した複数のリンクを用いて、前記経路の候補を複数生成し、
前記算出手段は、生成された複数のリンクの各々について、前記リンク上に存在する前記移動場所の種類に応じて、前記危険度を算出し、算出した前記複数のリンクの各々の危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、前記経路の候補上に存在する前記移動場所の種類に応じた総危険度を算出する請求項1〜請求項6の何れか1項記載の経路探索装置。
【請求項8】
前記経路候補生成手段によって生成された経路の候補の各々について旅行時間を算出すると共に、前記歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に応じて予め定められた移動するときの負荷量に基づいて、前記複数の経路の候補の各々について、前記経路の候補上に存在する前記移動場所の種類に応じた総負荷量を算出し、算出された旅行時間及び総負荷量に基づいて、前記複数の経路の候補の各々について、移動したときのコストを算出するコスト算出手段と、
前記出力手段によって出力された危険度及び前記コスト算出手段によって算出されたコストに基づいて、前記経路生成手段によって生成された複数の経路の候補から、前記歩行者又は自転車の経路を選択する経路選択手段と、
を更に含む請求項1〜請求項7の何れか1項記載の経路探索装置。
【請求項9】
前記総負荷量を、前記負荷量、天候、走って移動するか否か、及び法律に違反した移動であるか否かに基づいて算出した請求項8記載の経路探索装置。
【請求項10】
前記経路選択手段は、前記出力手段によって出力された総危険度、前記コスト算出手段によって算出されたコスト、及び設定された前記歩行者又は自転車の個人の特性に基づいて、前記歩行者又は自転車の経路を選択する請求項8又は9記載の経路探索装置。
【請求項11】
地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の現在位置から目的地までの経路の候補上に存在する経由地点を複数生成する経由地点生成手段と、
歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、前記経由地点生成手段によって生成された経由地点の各々について、前記現在位置から前記経由地点までの経路上に存在する前記移動場所の種類に応じた総危険度を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記経由地点の各々の総危険度を出力する出力手段と、
を含む経路探索装置。
【請求項12】
請求項3、6、8、9、又は10記載の経路探索装置と、
車両をモデル化した車両モデルを走行させると共に、前記経路探索装置によって選択された経路に従って、歩行者をモデル化した歩行者モデル又は自転車をモデル化した自転車モデルを移動させて、交通状態をシミュレーションするシミュレーション手段と、
を含む交通シミュレーション装置。
【請求項13】
ドライバ属性及び事故環境毎に、事故誘発要因となるドライバ又は車両の事象を表すドライバ事故情報を記憶すると共に、歩行者属性又は自転車属性、及び事故環境毎に、事故誘発要因となる歩行者又は自転車の事象を表す歩行者事故情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたドライバ事故情報に基づいて、事故誘発要因となるドライバ又は車両の事象を発生するドライバ事象発生手段と、
前記記憶手段に記憶された歩行者事故情報に基づいて、事故誘発要因となる歩行者又は自転車の事象を発生する歩行者事象発生手段とを更に含み、
前記シミュレーション手段は、前記記憶手段に記憶されたドライバ事故情報、及び車両モデルが走行する道路環境に基づいて、事故誘発要因となるドライバ又は車両の事象を発生させる場合には、前記事象を発生させるように、車両モデルの挙動を決定する車両挙動決定手段と、前記記憶手段に記憶された歩行者事故情報、前記経路探索装置によって選択された経路、及び歩行者モデルが歩行する道路環境又は自転車モデルが走行する道路環境に基づいて、事故誘発要因となる歩行者又は自転車の事象を発生させる場合には、前記事象を発生させるように、歩行者モデル又は自転車モデルの挙動を決定する歩行者挙動決定手段とを備え、前記車両挙動決定手段によって決定した車両モデルの挙動に基づいて、前記車両モデルを走行させると共に、前記歩行者挙動決定手段によって決定した歩行者モデル又は自転車モデルの挙動に基づいて、前記歩行者モデル又は自転車モデルを移動させて、交通状態をシミュレーションする請求項12記載の交通シミュレーション装置。
【請求項14】
車両モデルに安全システムを搭載させて交通状態をシミュレーションした結果と、車両モデルに安全システムを搭載させずに交通状態をシミュレーションした結果とを比較することにより、前記安全システムの効果を評価する評価手段を更に含み、
前記車両挙動決定手段は、前記記憶手段に記憶されたドライバ事故情報、車両モデルが走行する道路環境、及び車両モデルの安全システムの搭載有無に基づいて、車両モデルの挙動を決定する請求項13記載の交通シミュレーション装置。
【請求項15】
歩行者モデル又は自転車モデルに安全システムを携帯させて交通状態をシミュレーションした結果と、歩行者モデル又は自転車モデルに安全システムを携帯させずに交通状態をシミュレーションした結果とを比較することにより、前記安全システムの効果を評価する評価手段を更に含み、
前記歩行者挙動決定手段は、前記記憶手段に記憶された歩行者事故情報、前記経路探索装置によって選択された経路、歩行者モデルが歩行する道路環境又は自転車モデルが走行する道路環境、及び歩行者モデル又は自転車モデルの安全システムの携帯有無に基づいて、歩行者モデル又は自転車モデルの挙動を決定する請求項13又は14記載の交通シミュレーション装置。
【請求項16】
請求項3、6、8、9、又は10記載の経路探索装置と、
前記経路探索装置によって選択された経路に基づいて、予測対象の歩行者又は自転車の挙動を予測する予測手段とを含む歩行者挙動予測装置。
【請求項17】
コンピュータを、
地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の出発地から目的地までの経路の候補を複数生成する経路候補生成手段、
歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、前記経路の候補上に存在する前記移動場所の種類に応じた総危険度を算出する算出手段、及び
前記算出手段によって算出された前記経路の候補の各々の総危険度を出力する出力手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項18】
コンピュータを、
地図情報に基づいて、歩行者又は自転車の出発地から目的地までの経路の候補を複数生成する経路候補生成手段、
歩行者又は自転車の移動場所の複数の種類の各々に対して予め定められた移動するときの危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された経路の候補の各々について、前記経路の候補上に存在する前記移動場所の種類に応じた総危険度を算出する算出手段、
前記算出手段によって算出された前記経路の候補の各々の総危険度を出力する出力手段、
前記出力手段によって出力された前記経路の候補の各々の総危険度に基づいて、前記経路生成手段によって生成された複数の経路の候補から、前記歩行者又は自転車の経路を選択する経路選択手段、及び
車両をモデル化した車両モデルを走行させると共に、前記経路選択手段によって選択された経路に従って、歩行者をモデル化した歩行者モデル又は自転車をモデル化した自転車モデルを移動させて、交通状態をシミュレーションするシミュレーション手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2009−19920(P2009−19920A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181304(P2007−181304)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】