説明

絶縁型電圧検出回路

【課題】回路構成が単純で、廉価な部品のみにより構成される、簡易的な絶縁型電圧検出回路を提供する。
【解決手段】レジスタ1に設定されたデータに比例したパルス幅の第1のPWM信号を出力するパルス幅変調回路2と、その出力を絶縁して第2のPWM信号として出力する第1の絶縁手段3と、第2のPWM信号をアナログ電圧信号aに変換する変換回路4と、アナログ電圧信号aと検出対象であるアナログ電圧信号bを比較し、2つの極性をもつ比較信号を出力する比較器5と、その比較信号を絶縁して2つの極性を有する第2の比較信号cとして出力する第2の絶縁手段6とを備え、第2の絶縁手段6から出力される第2の比較信号cの結果を所定の周期で検出し、アナログ電圧信号aと検出対象であるアナログ電圧信号bが等しくなるように、レジスタ1に設定するデータをCPU7により増減させるようにした絶縁型電圧検出回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ電圧信号をディジタル・データに絶縁して変換するA/D変換機能を備えた絶縁型電圧検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電圧領域に渡ってアナログ電圧信号をディジタル・データに変換する場合、アナログ電圧信号を一度、パルス幅変調して絶縁した後、パルス幅復調して元のアナログ電圧信号に戻し、既存のA/D変換手段にてディジタル・データを読み取っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3157364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されたような従来の技術では、回路が複雑で部品点数も多く、また、高価なA/D変換器がないとディジタル・データに変換ができないため、廉価で簡単な回路を構成することができなかった。
本発明は、回路構成が単純で、廉価な部品のみにより構成される、簡易的な絶縁型電圧検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の第1の構成は、CPUから、所定の周期でデータが設定されるレジスタと、そのレジスタに設定されたデータに比例したパルス幅の第1のPWM信号を出力するパルス幅変調回路と、パルス幅変調回路から出力される第1のPWM信号を絶縁して第2のPWM信号として出力する第1の絶縁手段と、第2のPWM信号をアナログ電圧信号に変換する、フィルタ機能を有した変換回路と、その変換回路から出力されるアナログ電圧信号aと検出対象であるアナログ電圧信号bを比較し、2つの極性をもつ比較信号を出力する比較器と、その比較器から出力される2つの極性を有する第1の比較信号を絶縁して2つの極性を有する第2の比較信号cとして出力する第2の絶縁手段とを備え、第2の絶縁手段から出力される第2の比較信号cの結果を所定の周期で検出し、アナログ電圧信号aと検出対象であるアナログ電圧信号bが等しくなるように、前記レジスタに設定するデータを前記CPUにより増減させるようにしたものである。
【0006】
この第1の構成においては、レジスタに設定するデータの増減に応じてアナログ電圧信号aも増減する。このアナログ電圧信号aを検出対象であるアナログ電圧信号bと比較器で比較し、2つの極性(HighレベルとLowレベル)を有する信号として出力し、第2の絶縁手段で絶縁された第2の比較信号cを得る。比較信号c=Lowレベルの場合、CPUからレジスタに設定するデータを、前回値より任意量を増加して設定し、アナログ電圧信号aの電圧レベルを増加する。比較信号c=Highレベルの場合、CPUからレジスタに設定するデータを、前回値より任意量を減少して設定し、アナログ電圧信号aの電圧レベルを減少させる。このようにして、アナログ電圧信号aと検出対象アナログ電圧信号bが常に等しくなるように制御する。このとき、レジスタに設定するデータを読み取ることにより、検出対象アナログ電圧信号bを、ディジタル・データとして検出する。
【0007】
また本発明の第2の構成は、前記第2の比較信号cの極性が、ある回数連続で変化しない場合に、前記レジスタに設定するデータの増減量を増加させ、また所定の回数、極性が変化した場合に、前記レジスタに設定するデータの増減量を減少させる手段を前記CPUに設けたものである。
この第2の構成においては、比較信号cの極性が、ある回数連続で変化しない場合は、回路の動作遅れが想定され、また比較信号cの極性変化が、ある回数以上である場合は回路動作が速すぎることが想定されるので、レジスタに設定するデータの増減量を調整することにより、回路の動特性が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の構成によれば、絶縁型電圧検出回路を、CPU、レジスタ、パルス幅変調回路、絶縁手段、変換回路、比較器という廉価な部品のみにより構成でき、また回路構成が単純であるので、性能を低下させることなく、簡易的な絶縁型電圧検出回路を得ることができる。
また、第2の構成により、検出対象のアナログ電圧信号に対する検出データの遅れを改善し、動特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図1および図2を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態の構成を示す回路図、図2は本実施の形態における信号処理のシーケンス図である。
図1に示すように、本実施の形態の絶縁型電圧検出回路は、CPU7を含む演算装置8から任意の周期でデータが設定されるレジスタ1と、そのレジスタ1に設定されたデータに比例したパルス幅のPWM信号を出力するパルス幅変調回路2と、パルス幅変調回路2から出力される第1のPWM信号を絶縁して第2のPWM信号として出力する第1の絶縁手段3と、第2のPWM信号をアナログ電圧信号に変換するフィルタ機能を有した変換回路4と、変換回路4から出力されるアナログ電圧信号aと検出対象であるアナログ電圧信号bを比較し、2つの極性をもつ比較信号を出力する比較器5と、比較器5から出力される2つの極性を有する第1の比較信号を絶縁して2つの極性を有する第2の比較信号cとして出力する第2の絶縁手段6と、第2の絶縁手段6から出力される第2の比較信号cの結果を任意の周期で検出し、アナログ信号aと検出対象であるアナログ信号bが等しくなるようにレジスタ1に任意の周期で設定するデータを任意のデータ量で増減させるCPU7とで構成される。なお、第1の絶縁手段3および第2の絶縁手段6は、それぞれフォトダイオードとフォトトランジスタからなるフォトカプラを用いている。
【0010】
本発明の実施の形態において、演算装置8は、CPU7と、CPU7から任意の周期でデータが設定されるレジスタ1と、そのレジスタ1に設定されたデータに比例したパルス幅のPWM信号を出力するパルス幅変調回路2とを備えており、演算装置8からパルス幅変調回路2により、第1のPWM信号を出力する。次に、第1の絶縁手段3により、第1のPWM信号を絶縁して第2のPWM信号を生成し、PWM信号をアナログ電圧信号に変換するフィルタ機能を有した変換回路4にて、第2のPWM信号をアナログ電圧信号aに変換し、出力する。
【0011】
本実施の形態では、レジスタ1に設定するデータと、アナログ電圧信号aとの関係は、以下のようになる。
レジスタ1に設定するデータを増加 → アナログ電圧信号aが増加
レジスタ1に設定するデータを減少 → アナログ電圧信号aが減少
2つのアナログ電圧信号を比較し、2つの極性をもつ比較信号を出力する比較器5により、アナログ電圧信号aと、検出対象であるアナログ電圧信号bを比較し、比較器5から第1の比較信号を出力する。この第1の比較信号を第2の絶縁手段6にて絶縁し、第2の比較信号cを生成する。
【0012】
ここで、アナログ電圧信号a、検出対象アナログ電圧信号bと第2の比較信号cの関係は、以下のようになる。
アナログ電圧信号 a>b のとき、比較信号c=Highレベル(Vcc)
アナログ電圧信号 a<b のとき、比較信号c=Lowレベル (SG)
第2の比較信号cの結果を任意の周期で演算装置8にて検出し、以下の処理を行う。
【0013】
比較信号c=Lowレベルの場合、CPU7からレジスタ1に設定するデータを、前回値より任意量を増加して設定し、アナログ電圧信号aの電圧レベルを増加する。また、比較信号c=Highレベルの場合、CPU7からレジスタ1に設定するデータを、前回値より任意量を減少して設定し、アナログ電圧信号aの電圧レベルを減少させる。
これらの動作をCPU7により行い、アナログ電圧信号aと検出対象アナログ電圧信号bが常に等しくなるように制御する。このとき、レジスタ1に設定するデータを読み取ることにより、検出対象アナログ電圧信号bを、ディジタル・データとして検出する。
図1の絶縁型電圧検出回路において、ある任意の周期で検出している第2の比較信号cの極性変化をカウントすることで、レジスタ1に設定するデータの増加減量を調整する。
【0014】
すなわち、任意の周期で検出した第2の比較信号cの極性がある回数連続で変化しない場合に、レジスタ1に設定するデータの増減量を増加させ、また任意の回数、極性が変化した場合にレジスタ1に設定するデータの増減量を減少させる手段をCPU7に設ける。その動作を図2を用いて説明する。
すなわち、任意の周期△t毎にレジスタ1にデータを設定し、且つ第2の比較信号cの極性を読み取るCPU7にて、時間t0〜t2までは、データの増加減量αによりアナログ電圧信号aを増加減量δにて増加させ、アナログ電圧信号aを検出対象アナログ電圧信号bに追従させている。時間t3にて、第2の比較信号cの極性が3回連続して変化していないので、データの増加減量αを2倍にして、アナログ電圧信号aの増加量δを2倍にするようにCPU7にて、アナログ電圧信号aを制御する。さらに続けて比較信号cの極性が変化しない場合には、更に4倍、8倍と増加減量αを上げることで、増加減量δを4倍、8倍とし、検出対象アナログ電圧信号bに追従させる。
【0015】
また、時間t6、t7のように、比較信号cの極性が2回連続で変化する場合には、データの増加減量αを1/2にし、アナログ電圧信号aの増加減量δを1/2にするようにCPU7にて、増加減量αを制御し、アナログ電圧信号aを検出対象アナログ電圧信号bに追従させる。
このようにして、レジスタ1に設定するデータの増減量を調整することにより、回路の動特性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、回路構成が単純で、廉価な部品のみにより構成される、簡易的な絶縁型電圧検出回路として、検出回路の電源電圧と駆動回路の電源電圧回路が異なるサーボモータ制御装置などに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の構成を示す回路図である。
【図2】本実施の形態における信号処理のシーケンス図である。
【符号の説明】
【0018】
1 レジスタ
2 パルス幅変調回路
3 第1の絶縁手段
4 フィルタ機能を有した変換回路
5 比較器
6 第2の絶縁手段
7 CPU
8 演算装置
a アナログ電圧信号
b 検出対象アナログ電圧信号
c 第2の比較信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUから、所定の周期でデータが設定されるレジスタと、
そのレジスタに設定されたデータに比例したパルス幅の第1のPWM信号を出力するパルス幅変調回路と、
前記パルス幅変調回路から出力される前記第1のPWM信号を絶縁して第2のPWM信号として出力する第1の絶縁手段と、
前記第2のPWM信号をアナログ電圧信号に変換する、フィルタ機能を有した変換回路と、
前記変換回路から出力されるアナログ電圧信号aと検出対象であるアナログ電圧信号bを比較し、2つの極性をもつ比較信号を出力する比較器と、
前記比較器から出力される2つの極性を有する第1の比較信号を絶縁して2つの極性を有する第2の比較信号cとして出力する第2の絶縁手段とを備え、
前記第2の絶縁手段から出力される第2の比較信号cの結果を所定の周期で検出し、前記アナログ電圧信号aと検出対象であるアナログ電圧信号bが等しくなるように、前記レジスタに設定するデータを前記CPUにより増減させるようにしたことを特徴とする絶縁型電圧検出回路。
【請求項2】
前記第2の比較信号cの極性が、ある回数連続で変化しない場合に、前記レジスタに設定するデータの増減量を増加させ、また所定の回数、極性が変化した場合に、前記レジスタに設定するデータの増減量を減少させる手段を前記CPUに設けたことを特徴とする請求項1記載の絶縁型電圧検出回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−173928(P2006−173928A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361949(P2004−361949)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】