説明

絶縁材料、フィルム、回路基板及びこれらの製造方法

粒度分布において異なる粒径範囲に2つのピークを示す誘電率が50以上のフィラーと、絶縁性の樹脂とが複合化された誘電率10以上の絶縁材料;1)チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛からなる群から選ばれた1種以上のフィラーと、2)絶縁性の樹脂と、3)カルボン酸基を含む分散剤とを必須成分として含む誘電率10以上の絶縁材料;または、誘電率が50以上のフィラーと、フィラーを分散させるための分散剤と、絶縁樹脂を必須成分とする絶縁材料であって、絶縁材料硬化物を120℃、20時間の条件で、耐圧容器を用いて水で抽出を行い、得られた抽出液のpHが6以上である絶縁材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、基板内蔵コンデンサ材料に好適な、高誘電率化・薄型化が可能な絶縁材料、フィルム、回路基板及びこれらの製造方法に関するものである。
従来技術
近年、電子機器の小型化・軽量化の要求に伴い、配線板の薄型化・高密度化が進んでいる。特に、情報通信分野および情報処理分野の電子機器においては、高機能化についての要求が強い。そのため、高機能化部品を搭載するため実装面積確保の必要性が高まっている。
これまで、実装面積を確保するため、表面実装部品の微小化、端子の狭ピッチ化、基板のファインパターン化、部品を基板表面に高密度に実装するSMT(表面実装技術)化、さらにはそれらを高度化したAdvanced SMT化等が検討されてきた。
しかし、近年では高機能化の役割を果たす能動素子(チップ部品)の実装面積に対して、電気的調整を行う受動素子部品(キャパシタ、インダクタ、レジスタ)の実装面積が半分以上を占めている。それゆえ、小型化・高機能化の障害となっていた。
このため、受動素子の機能を基板内部に形成する「受動素子内蔵基板」の開発が求められている。特に受動素子の半分以上を占めるキャパシタの内蔵化に関して、絶縁層をキャパシタの誘電体として利用することが提案されている。受動素子の機能を基板に内蔵することで、従来、表面実装部品と配線板間の電気的接続に使用されていたはんだ接合部が無くなる。そのため、信頼性が向上し、回路設計の自由度が増加することが期待されている。また、内蔵化により受動素子を効果的な位置に形成できることから、配線長が短縮でき、結果として寄生容量が低減され電気特性が向上することが期待されている。さらに、表面実装の必要がなくなることから低コスト化が図れることが期待されている。
内蔵キャパシタの性能である静電容量は次式によって表されるが、静電容量を向上させるには、絶縁層の高誘電率化や絶縁層の薄型化が有効である。
C=ε・εr・A/t ・・・(式1)
ここで、C:静電容量(F)、ε:真空中の誘電率(8.85F/m)、εr:絶縁層の比誘電率、A:電極面積(m)、t:絶縁層の厚み(m)である。
プリント配線板用の絶縁層としては、従来から、ガラスクロスに樹脂を含浸乾燥し、樹脂を半硬化状態にしたガラスクロスプリプレグが使用されてきた。多層プリント配線板には、該ガラスプリプレグの他にガラスクロスを用いないプリプレグであるフィルム形成能を有する樹脂を半硬化状態にした接着フィルムが用いられている。これらは、例えば、特開平6−200216号公報および特開平6−329998号公報に開示されている。また、多層プリント配線板には、該接着フィルムを銅箔の片面に形成した銅はく付き接着フィルムが使用されている。これは、例えば、特開平6−196862号公報に開示されている。
従来は一般的にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をガラスクロスに含浸したり、銅箔上に塗工したりした絶縁樹脂が使用されていた。その誘電率は3から5程度であった。このような材料を内蔵キャパシタの誘電体として用いる方法が提案されている。これは、例えば、米国特許番号 5079069に開示されている。しかしながら、前記の通り誘電率が一桁であった。また、キャパシタの静電容量を高めるためには絶縁層の厚さを薄くするなどの必要があった。
ガラスクロスを使用したプリプレグを薄型化するためには、基材とするガラスクロスそのものの厚みを薄型化する必要がある。現在、薄型のガラスクロスとして20μm程度のものが市販されている。しかしながら、薄型化に伴いガラスクロスの強度が低下し塗工時に基材が破れやすいなどの工程上の問題点があった。また、樹脂を含浸後絶縁層として使用するため含浸後の厚みがもとの基材以上の厚みとなるなど、薄型化に限界があった。
ガラスクロスを用いないプリプレグである半硬化状態にした接着フィルムは、一般的に熱硬化性成分を含む有機絶縁材料で構成されている。ガラスクロスを使用したプリプレグよりは薄型化が可能なものの、誘電率を高めることは困難であった。
誘電率を高める手法として誘電率の比較的高い無機フィラーを有機材料と複合化した絶縁材料が検討された例がある。20μmや40μmの平均粒径を持つ球状の無機フィラーを使用して高誘電率化した報告もあった。例えば、特開昭53−88198号公報に開示されている。しかし、静電容量を高めるために複合材料の薄型化を行おうとしても、無機フィラーの粒径が大きいため薄型化が困難であった。また、充分に粒径の小さい粒子を用いた場合には、複合化した際のワニスのチキソ性が上昇し、均一な絶縁層を得ることができないなどの問題点が発生する。さらに、誘電率を高める目的でフィラーを高充填化した場合に、フィラー間に樹脂が充分充填されず、ボイドや欠陥を生じ、誘電率が上昇しなかったり、絶縁材料として使用した際に欠陥が信頼性等に悪影響を及ぼしたりするなどの問題があった。
【発明の開示】
本発明の第1の実施態様は、粒度分布において異なる粒径範囲に2つのピークを示す誘電率が50以上のフィラーと、絶縁樹脂とが複合化された、誘電率10以上の絶縁材料に関する。
本発明の第2の実施態様は、1)チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛からなる群から選ばれた1種以上のフィラーと、2)絶縁樹脂と、3)カルボン酸基を含む分散剤とを必須成分として含む誘電率10以上の絶縁材料に関する。
本発明の第3の実施態様は、誘電率が50以上のフィラーと、フィラーを分散させるための分散剤と、絶縁樹脂を必須成分とし、絶縁材料硬化物を120℃、20時間の条件で、耐圧容器を用いて水で抽出を行い、得られた抽出液のpHが6以上である絶縁材料に関する。
第1の実施態様において、誘電率が50以上のフィラーは、累積率50%における粒径が異なる2種のフィラーを含有することが好ましい。誘電率が50以上のフィラーは、累積率50%における粒径が1〜3μmとなるように累積率50%における粒径が異なる2種のフィラーを含有することがさらに好ましい。さらに、2種のフィラーは、累積率50%における粒径が1〜5μmである誘電率が50以上のフィラーと、累積率50%における粒径が0.01〜1μmである誘電率が50以上のフィラーとを含有することが好ましい。さらに、累積率50%における粒径が1〜5μmのフィラーをフィラー全体の50重量%以上含有し、累積率50%における粒径が0.01〜1μmのフィラーを残部として含有することが好ましい。
第2の実施態様において、カルボン酸基を含む分散剤は、カルボン酸基を含む重合体が好ましい。
第1〜3の実施態様において、誘電率が50以上のフィラーの含有率は、絶縁材料100体積部のうち30〜90体積部であることが好ましい。
第1及び3の実施態様において、フィラーは、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム及びジルコン酸鉛からなる群から選ばれた1種以上であることが好ましい。
第1〜3の実施態様において、絶縁樹脂として、重量平均分子量1万以上のフィルム形成能を有する高分子量成分と、熱硬化性成分とを含むことが好ましい。高分子量成分は、絶縁樹脂中に好ましくは5〜95重量%含有される。高分子量成分は、好ましくは、フェノキシ樹脂類、ポリアミドイミド樹脂類、ポリアクリルニトリル樹脂類、ポリフェニレンオキサイド樹脂類及びポリアクリロニトリルブタジエン樹脂類から選ばれた一種類以上の成分である。熱硬化性成分は、好ましくは、エポキシ樹脂及びその硬化剤であるフェノール樹脂を含む。
第1〜3の実施態様による絶縁材料を、金属箔上に塗付した熱圧接着可能なフィルムとしてもよく、このとき塗布された絶縁材料は半硬化されていてもよい。また、絶縁材料を、プラスチックフィルムキャリア上に塗布して熱圧接着可能なフィルムとしてもよく、塗布された絶縁材料は半硬化されていてもよい。さらに、絶縁材料の両面に導電性層を設けたフィルムとしてもよく、このとき絶縁材料は硬化されていてもよい。
また、第1または2の実施態様による絶縁材料を3〜100μmの絶縁層または熱硬化性絶縁層として備えた回路基板としてもよい。第3の実施態様による絶縁材料を、3〜100μm、好ましくは10〜100μmの絶縁層または熱硬化性絶縁層として備えた回路基板としてもよい。
さらに、本発明の実施態様は、上記の絶縁材料を回路上に塗布し、絶縁層とする回路基板の製造方法に関する。この製造方法は熱硬化する工程を含んでいてもよい。
さらに、本発明の実施態様は、上記の金属箔付き絶縁材料の金属箔の無い樹脂面に、熱圧着により新たな金属箔を接着した、両面金属箔付き絶縁材料の製造方法に関する。
さらに、本発明の実施態様は、上記の金属箔付き絶縁材料を、所望の回路パターンを形成した回路基板上に、熱圧着により接着し、絶縁層とする回路基板の製造方法に関する。
さらに、本発明の実施態様は、上記のフィルムからプラスチックフィルムキャリアを取除き、絶縁材料の両面に金属箔を配し熱圧着によりするフィルムの製造方法に関する。
さらに、本発明の実施態様は、上記のフィルムからプラスチックフィルムキャリアを取除き、絶縁材料の両面に所望の回路パターンを形成した回路基板を配し、熱圧着により接着して絶縁層とする回路基板の製造方法に関する。
さらに、本発明の実施態様は、上記のフィルムからプラスチックフィルムキャリアを取除き、絶縁材料の片面に所望の回路パターンを形成した回路基板を配し、他面に導電性金属箔を配し、熱圧着により接着する回路基板の製造方法に関する。
さらに、本発明の実施態様は、上記のフィルムからプラスチックフィルムキャリアを取除き、所望の回路パターンを形成した回路基板上に熱圧着して接着するか、又は前記フィルムを所望の回路パターンを形成した回路基板上に熱圧着して接着した後にプラスチックフィルムキャリアを取り除き、絶縁材料上に導電性めっき、導電性材料のスパッタ又は導電性塗料の塗付により導体を形成する回路基板の製造方法に関する。
さらに、本発明の実施態様は、回路基板上に形成したフィルム上に、導電性めっき、導電性材料のスパッタ又は導電性塗料の塗布により導体を形成する回路基板の製造方法に関する。
第1の実施態様によると、2種のフィラーを組み合わせるため、フィラーの高充填率化を可能とし絶縁材料を高誘電率化できる。粒径の小さいフィラーを使用できるため高誘電率絶縁材料の薄型化が可能である。また、高誘電率化及び取り扱い性に優れた絶縁ワニスとその絶縁ワニスを用いた多層プリント配線板を提供することが可能である。
第2の実施態様によると、高誘電率化及び取り扱い性に優れた絶縁ワニスとその絶縁ワニスを用いた多層プリント配線板を提供することが可能である。
第3の実施態様によると、高誘電率化及び信頼性に優れた絶縁ワニスとその絶縁ワニスを用いた多層プリント配線板を提供することが可能である。なお、ここで言う信頼性とは、絶縁材料の絶縁劣化の指標を指す。通常、配線板に用いる絶縁材料は、実使用時に絶縁劣化が発生しないように、予め絶縁信頼性の評価を行う。これは、例えば、85℃、85%RHの高温高湿層中に材料を設置し、所望の電圧を印加する加速試験により評価が行われる。この加速試験により、短時間で実使用時の絶縁劣化を予測することが可能となる。
本明細書は、日本国特許出願 特願2003−140704号(出願日2003年5月19日)、特願2003−140714号(出願日2003年5月19日)及び特願2003−162001号(出願日2003年6月6日)に含まれる主題に関するものであって、これらを全体的に参照として本明細書に組み込む。
【発明を実施するための最良の形態】
(フィラー)
第1および3の実施態様に用いる誘電率50以上のフィラーとしては、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム及びジルコン酸鉛からなる群から選ばれた1種以上を使用することができる。これらのフィラーの形状は、破砕状でも球状でもよい。
第1の実施態様では必須であるが、第2の実施態様においても、フィラーを効率的に充填させるために、粒度分布において異なる粒径範囲に2つのピークを示すフィラーを用いてもよい。フィラーの粒径は二種類の、累積率50%における粒径が異なるフィラーを用いてもよい。二種類のフィラーの累積率50%における粒径のうち、好ましくは、第一のフィラーは1〜5μmのフィラーを使用する。第一のフィラーとして一種類又は二種類以上を組合わせてもよい。また、このフィラーは、フィラー全体において50重量%以上を占めることが好ましい。第二のフィラーとして、累積率50%における粒径が0.01〜1μmのフィラーを使用することが好ましい。第二のフィラーとして一種類又は二種類以上を組合わせても良い。また、第一のフィラーと併せた配合量が100重量%になるように配合する。また、第一のフィラーと第二のフィラーを併せたときの累積率50%の粒径が1〜3μmの範囲に収まるように、第一及び第二のフィラーを組合わせることが好ましい。このとき、累積率50%の粒径が1μmより小さいとワニスの粘度上昇を招きやすく、3μmより大きいと複合材料を薄型化したときに絶縁不良を引起す可能性が高まる場合がある。
本発明の第2の実施態様に用いるフィラーとしては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛からなる群から選ばれた1種以上が選択される。これらのフィラーの形状は、破砕状でも球状でもよい。
本発明の第2の実施態様に用いるフィラーの粒径は0.01〜10μmの範囲が好ましく、0.01〜5μmがより好ましい。平均粒径の異なる二種以上のフィラーを使用しても良い。フィラーの粒径が0.01μmより小さいとワニスの粘度上昇を招きやすく、10μmより大きいと複合材料を薄型化することが困難な場合がある。
いずれの実施態様においても、フィラーの含有率は、絶縁材料100体積部のうち30〜90体積部になるようにするのが好ましい。30体積部以下であると高誘電率化の効果が少なく、90体積部以上であるとボイドの発生等を招き、信頼性の低下や誘電率の低下等を招く場合がある。
(絶縁性の樹脂)
絶縁性の樹脂には、重量平均分子量1万以上のフィルム形成能を有する高分子量成分及び熱硬化性樹脂成分が含まれ、さらに、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤及び希釈剤等を含んでいてもよい。
本発明で使用する絶縁性の樹脂としては、従来のガラスクロスを基材としたプリプレグに使用されている樹脂及びガラスクロス基材を含まない接着フィルムあるいは銅箔付き接着フィルムに使用されている熱硬化性樹脂を使用することができる。
(高分子量成分)
重量平均分子量1万以上の高分子量成分としては、フィルム状に塗付乾燥したときに、フィルム形成能を有するものであればよい。フィルム形成能を有する高分子量成分として、例えば、フェノキシ樹脂類、ポリアミドイミド樹脂類、ポリアクリルニトリル樹脂類、ポリフェニレンオキサイド樹脂類、ポリアクリロニトリルブタジエン樹脂類から選ばれた一種類以上を用いることができる。これらの中でもエポキシ樹脂と相溶性であるフェノキシ樹脂類、ポリアミドイミド樹脂類、ポリアクリロニトリル−ブタジエン樹脂類が好適である。フェノキシ樹脂類としては、例えば、フェノキシ樹脂、難燃化されたブロム化フェノキシ樹脂、シアノエチル化フェノキシ樹脂などが挙げられる。ポアリミドイミド樹脂類としては、例えば、ポリアミドイミド樹脂、Si含有ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。
上記の高分子量成分は、絶縁性樹脂のうち5〜95重量%にするのが好ましい。5重量%未満であると、複合した材料のフィルム形成能が不足し取り扱いの低下を招き、95重量%より多いと粘度上昇等を招き作業性等に劣る場合がある。
(熱硬化性成分)
本発明に用いる熱硬化性樹脂は、硬化して接着作用を呈するものであればよい。熱硬化性の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビストリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂またはこれらの種々の変性樹脂類が好適である。この中で、プリント配線板特性上、特に、ビストリアジン樹脂、エポキシ樹脂が好適である。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂及びそれらのハロゲン化物、水素添加物、及び前記樹脂の混合物が好適である。これらの中でも、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂またはサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂は耐熱性に優れ好ましい。
(硬化剤)
このような樹脂の硬化剤としては、従来使用しているものが使用でき、樹脂がエポキシ樹脂の場合、例えば、ジシアンジアミド、フェノール水酸基を1分子中に2個以上有する化合物である、ビスフェノールA樹脂、ビスフェノールF樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、サリチルアルデヒドノボラック樹脂及びこれらのフェノール樹脂のハロゲン化物、水素化物、トリアジン構造含有物等を使用できる。これらの硬化剤は選ばれた一種又は二種以上の樹脂を併用しても良い。
この硬化剤の前記樹脂に対する場合は、従来使用している割合でよく、エポキシ当量に対して水酸基当量が0.5〜2.0当量の範囲が好ましい。但し、ジシアンジアミドでは樹脂100重量部に対して2〜5重量部の範囲が好ましい。
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、樹脂がエポキシ樹脂の場合、例えば、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等を使用することができる。
この硬化促進剤の前記樹脂に対する割合は、従来使用している割合でよく、樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲が好ましく、0.01〜1.0重量部の範囲がより好ましい。硬化促進剤の量が、0.001重量部未満であると、硬化不足を生じ易く、10重量部を超えると、作製したワニスのポットライフの低下、コストの上昇を引き起こす場合がある。
(希釈剤)
本発明の複合材料は、溶剤にて希釈して樹脂ワニスとして使用することが望ましい。溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を使用できる。
この希釈剤の前記樹脂に対する割合は、複合材料100重量部に対して1〜200重量部の範囲が好ましく、5〜100重量部の範囲がさらに好ましい。希釈剤の量が1重量部未満であると取扱性に劣り、200重量部を超えると作業性に劣る場合がある。
(その他の配合剤)
さらに本発明においては、上記した各成分の他に、必要に応じて従来より公知のカップリング剤、イオン補足剤等を樹脂中に適宜配合してもよい。
(分散剤)
多数のフィラーを分散させるために分散剤を用いる。分散剤としては成分中にカルボン酸基を一つ含むものが挙げられる。さらに分散剤としてカルボン酸基を一つ以上含む重合体が挙げられる。
市販のカルボン酸基を含む分散剤としては、例えば、ディスパロン2150(楠本化成(株)社製、商品名)、ホモゲノールL−18、ホモゲノールL−1820(花王(株)社製、商品名)がある。
分散剤の配合量はフィラーの重量に対して、0.001〜8重量%の範囲で用いることが好ましく、0.005〜5重量%の範囲で用いることが特に好ましい。
分散剤は硬化後の抽出液のpHに与える影響が大きい。したがって、樹脂硬化後に酸性分が抽出され難い分散剤を選択することにより、抽出液のpHが適切な値となる様に調製することが容易になる。酸性分が樹脂中に取り込まれる様な分散剤が好ましく、カルボン酸含有重合物や多価カルボン酸などのカルボン酸型の分散剤が特に好ましい。また、他の酸性基を持つポリマー型の分散剤等、硬化後に水に酸性分が比較的溶けやすい分散剤も抽出液のpHが6以上となる範囲で用いる限り使用可能である。
(混練方法)
フィラーの分散性を向上させるために、二種のフィラー、絶縁性の樹脂及び希釈剤を混合してワニスを作製した後、らいかい機、3本ロールミル、ビーズミル、サンドミル等での混練を組み合わせて行うと粒子の凝集を低減することができ好ましい。また、超音波発振器を備えた装置によってフィラーを分散させることもできる。混練後、減圧下への放置、減圧下での攪拌脱泡等によりワニス中の気泡を除去することが望ましい。
(キャリアフィルム)
本発明において絶縁材料(Bステージ状態)をキャリアフィルムに形成する場合には、キャリアフィルムとしては、例えば、銅箔、アルミ箔等の導電性金属箔、さらに導電性金属箔の塗付面に接着性向上のための粗化処理を施したものを用いることもできる。また、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムを使用することもできる。さらに、前記金属箔及びフィルムの表面を離型剤により処理したものを使用することができる。
(塗工方式)
キャリアフィルム上への塗工方法としては従来用いられている方法を適用することができ、所望の塗付厚で複合材料を塗布することができればよい。また、樹脂ワニス中の溶剤除去や、熱硬化成分の樹脂を半硬化状態にすることができる加熱乾燥装置を備えた装置を使用すると作業性が向上し、より好ましい。塗工方法としては、例えば、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、ダイコータ等の塗工方式を採用することができる。
(絶縁層の厚み)
絶縁層の厚みは3〜100μmの間が好ましい。100μmより厚いとキャパシタの誘電体として用いた際に、得られる静電容量が低下する可能性がある。また、3μmより薄いと均一な塗膜が得られない可能性がある。絶縁層の厚みは10〜100μmの間がより好ましい。絶縁層の厚みを10μm以上とすることで絶縁信頼性の確保が容易になる。
(回路板の形成)
回路板の絶縁層として使用するため、導電性金属箔付き絶縁材料を、所望の回路パターンを形成した基板上に、熱圧接着することにより形成することができる。また、プラスチックキャリア付き絶縁材料を使用して基板上に熱圧接着してもよい。絶縁性の樹脂が熱硬化性の場合は、熱圧接着時又は別工程で樹脂を熱硬化すると、耐熱性、接着性、ガラス転移温度などの特性が向上し望ましい。熱圧接着の方法としては従来使用している方法を使用することができ、プレス積層、真空プレス積層、ロールラミネート、バッチ式プレス法等の方法が利用できる。
また、絶縁ワニスを基板上に直接塗布し、加熱乾燥することにより絶縁層を形成することもできる。
第3の実施態様による絶縁材料は、絶縁材料の水での抽出液がpH6以上となる様に調製する。これにより絶縁信頼性に優れた材料を提供できる。ここで、水での抽出とは、硬化した絶縁材料を水と共に耐圧容器等に密封し、120℃の高温槽に20時間投入し得られる水溶液ある。この抽出液のpHは、絶縁材料に用いる分散剤の選択、配合などにより調製できる。また、抽出液のpHは、9以下であることが好ましい。
以下、第1の実施態様の実施例を説明するが、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
(実施例A−1)
フェノキシ樹脂10重量部(YP−50、東都化成製、重量平均分子量59,000)に、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂27重量部(YD−8125、東都化成製、エポキシ当量175)とオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂13重量部(YDCN703、東都化成製、エポキシ当量210)を加え、硬化剤としてビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂25重量部(LF−2882、大日本インキ工業製、水酸基当量118)、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(2PZ−CN、四国化成製)0.3重量部、フィラー分散剤としてリン酸エステル系ポリマ(W9010、BYKケミー社製、固形分50重量%)7重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加え35重量%のワニスを調整した。
得られたワニスに累積率50%の粒径が1.5μmのチタン酸バリウム(BT−100PR、富士チタン工業製、誘電率1,500)220重量部と、累積率50%の粒径が0.6μmのチタン酸バリウム(HPBT−1、富士チタン工業製、誘電率1,500)55重量部を混合し、ビーズミルを用いて混練した後、目開き70μmのナイロンメッシュでろ過し充填材複合ワニスを得た。
(実施例A−2)
シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂40重量部(日立化成工業製、重量平均分子量50,000)に、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂12重量部(YD−8125、東都化成製、エポキシ当量175)を加え、硬化剤としてオルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂2.4重量部(KA−1160、大日本インキ工業製、水酸基当量119)、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール0.1重量部(2PZ−CN、四国化成製)、フィラー分散剤としてリン酸エステル系ポリマ5重量部(W9010、BYKケミー社製、固形分50重量%)からなる組成物に、メチルエチルケトンを加え35重量%のワニスを調整した。
得られたワニスに累積率50%の粒径が1.5μmのチタン酸バリウム160重量部(BT−100PR、富士チタン工業製、誘電率1,500)と、累積率50%の粒径が0.6μmのチタン酸バリウム40重量部(HPBT−1、富士チタン工業製、誘電率1,500)を混合し、ビーズミルを用いて混練した後、目開き70μmのナイロンメッシュでろ過し充填材複合ワニスを得た。
(実施例A−3)
無機フィラーのうち累積率50%の粒径0.6μmのチタン酸バリウムを累積率50%の粒径が0.6μmの二酸化チタン(TM−1、富士チタン工業製、誘電率96)55重量部としたほかは、実施例A−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(実施例A−4)
無機フィラーのうち累積率50%の粒径が0.6μmのチタン酸バリウムを累積率50%の粒径が0.6μmの二酸化チタン(TM−1、富士チタン工業製、誘電率96)55重量部としたほかは、実施例A−2と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(参考例A−1)
無機フィラーのうち累積率50%の粒径が1.5μmのチタン酸バリウムを使用せず、累積率50%の粒径が0.6μmのチタン酸バリウム(HPBT−1、富士チタン工業製、誘電率1,500)を275重量部使用したほかは、実施例A−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(参考例A−2)
無機フィラーのうち累積率50%の粒径が0.6μmのチタン酸バリウムを使用せず、累積率50%の粒径が1.5μmのチタン酸バリウム(BT−100PR、富士チタン工業製、誘電率1,500)を275重量部使用したほかは、実施例A−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(実施例A−5〜8)
実施例A−1〜4で作製したワニスを、厚さ12μmの銅箔上にコンマコータにて塗付・流延し、温度130℃で2分間加熱乾燥して、溶剤を除去するとともに、樹脂を半硬化して、絶縁層の厚さが20μmの銅箔付き絶縁材料を作製した。
(参考例A−4)
参考例A−1で作製したワニスを塗工しようとしたが、チキソ性が高く均一な厚みの絶縁層を形成するのは困難であった。
(参考例A−5)
参考例2で作製したワニスを、厚さ12μmの銅箔上にコンマコータにて塗付・流延し、温度130℃で2分間加熱乾燥して、溶剤を除去するとともに、樹脂を半硬化して、絶縁層の厚さが20μmの銅箔付き絶縁材料を作製した。
(Bステージフィルム取扱性)
取扱性はカッターナイフにより、樹脂の飛散等なくきれいに切断でき、絶縁材料同士のブロッキングが発生しなかったものを○、それ以外を×とした。
(誘電特性評価)
実施例A−5〜8、参考例A−5で作製した絶縁層の厚さ20μmの銅箔付き絶縁材料を絶縁層が向かい合うように重ねて積層し、昇温速度5℃/分、硬化温度180℃、硬化時間60分、プレス圧力2.5MPa、真空条件5.3kPa以下の条件で熱圧接着・硬化した。成形後銅箔部分を片面にφ20mmのパターンをエッチングにより形成しLCRメータにて誘電特性を評価した。
(はんだ耐熱性評価)
実施例A−5〜8、参考例A−5で作製した絶縁層の厚さ20μmの銅箔付き絶縁材料を、接着処理を施した銅張り積層板(MCL−E−679、日立化成工業製)に積層し、昇温速度5℃/分、硬化温度180℃、硬化時間60分、プレス圧力2.5MPa、真空条件5.3kPa以下の条件で熱圧接着・硬化した。成形後の試験片を25mm×25mmのサイズに切断しはんだ耐熱性の試験片とした。試験片を260℃のはんだ浴上に2分間浮かべ、異常が発生しなかったものを○、外層銅箔フクレ等の異常を発生したものを×とした。

実施例A−5〜8は、参考例と比較して、積層板が有する特性を下げることなく、高誘電率化を達成する。参考例A−5は実施例A−5および6と同じ誘電率をもつチタン酸バリウムを同量分散させているにもかかわらず、誘電率の上昇が少なく、さらにはんだ耐熱性が低下した。これらは、単一の粒径のフィラーを用いたため、分散性が低下し材料中にボイドが発生したためと推測する。
以下、第2の実施態様の実施例を説明するが、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
(実施例B−1)
フェノキシ樹脂10重量部(YP−50、東都化成製、重量平均分子量59,000)に、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂27重量部(YD−8125、東都化成製、エポキシ当量175)とオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂13重量部(YDCN703、東都化成製、エポキシ当量210)を加え、硬化剤としてビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂25重量部(LF−2882、大日本インキ工業製、水酸基当量118)、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(2PZ−CN、四国化成製)0.3重量部、フィラー分散剤としてホモゲノールL−18(特殊ポリカルボン酸型界面活性剤、花王(株)製、固形分40重量%)7重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加え35重量%のワニスを調整した。
得られたワニスに平均粒径1.5μmのチタン酸バリウム(BT−100PR、富士チタン工業製、誘電率1,500)220重量部と、平均粒径0.6μmのチタン酸バリウム(HPBT−1、富士チタン工業製、誘電率1,500)55重量部を混合し、ビーズミルを用いて混練した後、目開き70μmのナイロンメッシュでろ過し充填材複合ワニスを得た。
(実施例B−2)
分散剤としてホモゲノールL−18の代わりに、ホモゲノールL−1820(特殊カルボン酸型重合物、花王(株)製、固形分20%)14重量部を用いた他は、実施例B−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(実施例B−3)
分散剤としてホモゲノールL−18の代わりに、ディスパロン2150(脂肪族多価カルボン酸、楠本化成(株)製、固形分50%)5.6重量部を用いた他は、実施例B−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(参考例B−1)
分散剤としてホモゲノールL−18の代わりに、W9010(リン酸エステル系ポリマ、BYKケミー社製、固形分50%)5.6重量部を用いたほかは、実施例B−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(参考例B−2)
分散剤W9010を用いない他は、実施例B−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(実施例B−4〜6)
実施例B−1〜3で作製したワニスを、厚さ12μmの銅箔上にコンマコータにて塗付・流延し、温度130℃で2分間加熱乾燥して、溶剤を除去するとともに、樹脂を半硬化して、絶縁層の厚さが20μmの銅箔付き絶縁材料を作製した。
(参考例B−3〜4)
参考例B−1〜2で作製したワニスを実施例4〜6と同様の方法で塗工し、絶縁層の厚さが20μmの銅箔付き絶縁材料を作製した。
作製した絶縁材料に関して、以下の項目について評価を行った。
(誘電特性評価)
第1の実施態様の実施例と同様の方法で測定した。
(はんだ耐熱性評価)
第1の実施態様の実施例と同様の方法で測定した。
(絶縁信頼性)
実施例B−4〜6、参考例B−3〜4で作製した絶縁層の厚さ20μmの銅箔付き絶縁材料を、接着処理を施した銅張り積層板(MCL−E−679、日立化成工業製)に積層し、昇温速度5℃/分、硬化温度180℃、硬化時間60分、プレス圧力2.5MPa、真空条件5.3kPa以下の条件で熱圧接着・硬化した。成形後の試験片を使用して、外層銅−内層銅間の絶縁樹脂の厚み方向における絶縁信頼性を試験した。処理条件は85℃、85%RHとし、印加電圧6DCVで試験を行った。1,000時間経過後の絶縁抵抗値が10Ω以上であり、銅箔上に外観以上の発生しなかったものを○とし、それ以外を×とした。

以上の結果から、次のことが分かる。
実施例B−4〜6は、参考例と比較して、積層板が有する特性を下げることなく、高誘電率化を達成する。さらに、フィラーを高充填率化しているにもかかわらず絶縁信頼性が良好である。参考例B−3は実施例B−4〜6と同じ誘電率をもつチタン酸バリウムを同量分散させているにもかかわらず、絶縁信頼性が低下した。参考例B−4は、分散剤以外は実施例B−4〜6と同様であるが誘電率の低下、耐熱性の低下、絶縁信頼性の低下が発生しており、これは分散剤を使用していないためと推測する。
したがって、本実施例の絶縁材料は、高誘電率フィラーを絶縁樹脂に複合化したときに効果的に誘電率を向上できる。また、絶縁材料としての特性を有しており基板内蔵キャパシタの材料として好適である。
本実施例の絶縁材料は、効率良く高誘電率が可能であり、これを使用した絶縁層は薄型の絶縁層でも絶縁信頼性に優れ、基板内臓キャパシタの誘電体として好適である。
以下、第3の実施態様の実施例を説明するが、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
(実施例C−1)
フェノキシ樹脂10重量部(YP−50、東都化成製、重量平均分子量59,000)に、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂27重量部(YD−8125、東都化成製、エポキシ当量175)とオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂13重量部(YDCN703、東都化成製、エポキシ当量210)を加え、硬化剤としてビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂25重量部(LF−2882、大日本インキ工業製、水酸基当量118)、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(2PZ−CN、四国化成製)0.3重量部、フィラー分散剤としてホモゲノールL−18(特殊ポリカルボン酸型界面活性剤、花王(株)製、固形分40重量%)7重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加え35重量%のワニスを調整した。
得られたワニスに平均粒径1.5μmのチタン酸バリウム(BT−100PR、富士チタン工業製、誘電率1,500)220重量部と、平均粒径0.6μmのチタン酸バリウム(HPBT−1、富士チタン工業製、誘電率1,500)55重量部を混合し、ビーズミルを用いて混練した後、目開き70μmのナイロンメッシュでろ過し充填材複合ワニスを得た。
(実施例C−2)
分散剤としてホモゲノールL−18の代わりに、ホモゲノールL−1820(特殊カルボン酸型重合物、花王(株)製、固形分20%)14重量部を用いた他は、実施例C−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(実施例C−3)
分散剤としてホモゲノールL−18の代わりに、ディスパロン2150(脂肪族多価カルボン酸、楠本化成(株)製、固形分50%)5.6重量部を用いた他は、実施例C−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(参考例C−1)
分散剤としてホモゲノールL−18の代わりに、W9010(リン酸エステル系ポリマ、BYKケミー社製、固形分50%)5重量部を用いたほかは、実施例C−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(参考例C−2)
分散剤としてホモゲノールL−18の代わりに、Disperbyk−110(酸性基を持つポリマ、BYKケミー社製、固形分50重量%)10重量部を用いた他は、実施例C−1と同様にして充填材複合ワニスを得た。
(実施例C−4〜6)
実施例C−1〜3で作製したワニスを、厚さ12μmの銅箔上にコンマコータにて塗付・流延し、温度130℃で2分間加熱乾燥して、溶剤を除去するとともに、樹脂を半硬化して、絶縁層の厚さが20μmの銅箔付き絶縁材料を作製した。
(参考例C−3〜4)
参考例C−1〜2で作製したワニスを実施例C−4〜6と同様の方法で塗工し、絶縁層の厚さが20μmの銅箔付き絶縁材料を作製した。
作製した絶縁材料に関して、以下の項目について評価を行った。
(Bステージフィルム取扱性)
取扱性は、カッターナイフにより、樹脂の飛散がなくきれいに切断でき、絶縁材料同士のブロッキングが発生しなかったものを○、それ以外を×とした。
(誘電特性評価)
第1の実施態様の実施例と同様の方法で測定した。
(はんだ耐熱性評価)
第1の実施態様の実施例と同様の方法で測定した。
(抽出液の作成と評価)
実施例C−4〜6、参考例C−3〜4で作成した絶縁層の厚さ20μmの銅箔付き絶縁材料を樹脂面が向かい合わせになる様に構成し、昇温速度5℃/分、硬化温度180℃、硬化時間60分、プレス圧力2.5MPa、真空条件5.3kPa以下の条件で熱圧接着、硬化した。成形後の試験片の銅はくをエッチングにより除去し、エッチング液を充分すすいだ後に乾燥し、硬化物を得た。
耐圧性のステンレスジャケットを具備した、テフロンるつぼ(フロン工業株式会社製)中に、蒸留水40g、上記硬化物0.4g量り取り、蒸留水中に硬化物が浸漬するようにして密封した。その後、この耐圧容器を120℃の高温槽中に20時間投入し抽出を行った。
この抽出液のpHを、東亜電波工業(株)pHメータHM−40Sを使用して、室温で測定した。
(絶縁信頼性)
実施例C−4〜6,参考例C−3〜4で作成した絶縁層の厚さ20μmの銅箔付き絶縁材料を、接着処理を施した銅張り積層板(MCL−E−679、日立化成工業製)に積層し、昇温速度5℃/分、硬化温度180度、硬化時間60分、プレス圧力2.5MPa、真空条件5.3kPa以下の条件で熱圧接着・硬化した。成形後の試験片を使用して、外層銅−内層銅管の絶縁樹脂の厚み方向の絶縁信頼性を試験した。処理条件は85℃、85%RHとし、印可電圧6DCVで試験を行った。1,000時間経過後の絶縁抵抗値が10Ω以上のものを○とし、それ以外を×とした。

以上の結果から、次のことが分かる。
抽出液のpHが6以上で実施例C−4〜6の材料は、優れた絶縁信頼性を示した。これに対して、参考例C−3〜4は、抽出液のpHが6未満であり、材料の絶縁信頼性に劣った。
したがって、本実施例によると、絶縁材の抽出液のpHが6以上の場合には、高誘電率フィラーを絶縁樹脂に複合化し、絶縁層が薄い場合でも優れた絶縁信頼性を示す。本実施例の絶縁ワニスを用いて得られた絶縁材料は、絶縁信頼性に優れた高誘電材料であり、これを使用した絶縁層は基板内蔵キャパシタの誘電体として好適である。
以上の様に、本実施例によると、高誘電率化および信頼性に優れた絶縁ワニスとその絶縁ワニスを用いた多層プリント配線板を提供することができる。
前述したところが、この発明の好ましい実施態様であること、多くの変更及び修正をこの発明の精神と範囲にそむくことなく実行できることは当業者によって理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度分布において異なる粒径範囲に2つのピークを示す誘電率が50以上のフィラーと、絶縁性の樹脂とが複合化された誘電率10以上の絶縁材料。
【請求項2】
前記誘電率が50以上のフィラーは、累積率50%における粒径が1〜5μmである誘電率が50以上のフィラーと、累積率50%における粒径が0.01〜1μmである誘電率が50以上のフィラーとを含有する請求項1に記載の絶縁材料。
【請求項3】
前記誘電率が50以上のフィラーは、累積率50%における粒径が1〜5μmのフィラーをフィラー全体の50重量%以上含有し、累積率50%における粒径が0.01〜1μmのフィラーを残部として含有する請求項1又は2に記載の絶縁材料。
【請求項4】
1)チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸鉛からなる群から選ばれた1種以上のフィラーと、2)絶縁性の樹脂と、3)カルボン酸基を含む分散剤とを必須成分として含む誘電率10以上の絶縁材料。
【請求項5】
前記カルボン酸基を含む分散剤は、カルボン酸基を含む重合物である請求項4に記載の絶縁材料。
【請求項6】
誘電率が50以上のフィラーと、フィラーを分散させるための分散剤と、絶縁樹脂を必須成分とする絶縁材料であって、絶縁材料硬化物を120℃、20時間の条件で、耐圧容器を用いて水で抽出を行い、得られた抽出液のpHが6以上である絶縁材料。
【請求項7】
前記誘電率が50以上のフィラーの含有率は、絶縁材料100体積部のうち30〜90体積部である請求項1〜6のいずれかに記載の絶縁材料。
【請求項8】
前記誘電率が50以上のフィラーは、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、二酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム及びジルコン酸鉛からなる群から選ばれた1種以上である請求項1〜3および6のいずれかに記載の絶縁材料。
【請求項9】
前記絶縁性の樹脂は、重量平均分子量1万以上のフィルム形成能を有する高分子量成分と、熱硬化性成分とを含む請求項1〜8のいずれかに記載の絶縁材料。
【請求項10】
前記高分子量成分を、絶縁性の樹脂中に5〜95重量%含有する請求項9に記載の絶縁材料。
【請求項11】
前記熱硬化性成分は、エポキシ樹脂及びその硬化剤であるフェノール樹脂を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の絶縁材料。
【請求項12】
前記高分子量成分は、フェノキシ樹脂類、ポリアミドイミド樹脂類、ポリアクリルニトリル樹脂類、ポリフェニレンオキサイド樹脂類及びポリアクリロニトリルブタジエン樹脂類から選ばれた一種類以上の成分である請求項9〜11のいずれかに記載の絶縁材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の絶縁材料が、金属箔上に塗付された熱圧接着可能なフィルム。
【請求項14】
請求項9〜12のいずれかに記載の絶縁材料が、金属箔上に塗付され半硬化された熱圧接着可能なフィルム。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の絶縁材料が、プラスチックフィルムキャリア上に塗布された熱圧接着可能なフィルム。
【請求項16】
請求項9〜12のいずれかに記載の絶縁材料が、プラスチックフィルムキャリア上に塗布され半硬化された熱圧接着可能なフィルム。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれかに記載の絶縁材料の両面に導電性層を備えたフィルム。
【請求項18】
請求項9〜12のいずれかに記載の絶縁材料の両面に導電性層を備え、前記絶縁材料が硬化したフィルム。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれかに記載の絶縁材料を3〜100μmの絶縁層として備えた回路基板。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれかに記載の絶縁材料を3〜100μmの熱硬化絶縁層として備えた回路基板。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれかに記載の絶縁材料を回路基板上に塗布し、絶縁層とする回路基板の製造方法。
【請求項22】
請求項9〜12のいずれかに記載の絶縁材料を回路基板上に塗布し、熱硬化して絶縁層とする回路基板の製造方法。
【請求項23】
請求項13又は14に記載のフィルムの金属箔の無い樹脂面に、熱圧着により新たな金属箔を接着したフィルムの製造方法。
【請求項24】
請求項13又は14に記載のフィルムを、所望の回路パターンを形成した回路基板上に、熱圧着により接着し、絶縁層とする回路基板の製造方法。
【請求項25】
請求項15又は16に記載のフィルムからプラスチックフィルムキャリアを取除き、絶縁材料の両面に金属箔を配し熱圧着により接着するフィルムの製造方法。
【請求項26】
請求項15又は16に記載のフィルムからプラスチックフィルムキャリアを取除き、絶縁材料の両面に所望の回路パターンを形成した回路基板を配し、熱圧着により接着して絶縁層とする回路基板の製造方法。
【請求項27】
請求項15又は16に記載のフィルムからプラスチックフィルムキャリアを取除き、絶縁材料の片面に所望の回路パターンを形成した回路基板を配し、他面に導電性金属箔を配し、熱圧着により接着する回路基板の製造方法。
【請求項28】
請求項15又は16に記載のフィルムからプラスチックフィルムキャリアを取除き所望の回路パターンを形成した回路基板上に熱圧着して接着するか、又は前記フィルムを所望の回路パターンを形成した回路基板上に熱圧着して接着した後にプラスチックフィルキャリアを取り除き、絶縁材料上に導電性めっき、導電性材料のスパッタ又は導電性塗料の塗付により導体を形成する回路基板の製造方法。
【請求項29】
回路基板上に形成した請求項17又は18に記載のフィルム上に、導電性めっき、導電性材料のスパッタ又は導電性塗料の塗付により導体を形成する回路基板の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/102589
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506300(P2005−506300)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007150
【国際出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】