説明

緊急時避難誘導システム

【課題】地震発生時に利用者に速やかに地震の発生と利用者の居場所付近の安全な避難場所を案内すること。
【解決手段】携帯電話を利用者端末として利用し、携帯電話基地局で公共情報機関より地震情報を取得し、発生場所とマグニチュード情報から基地局のサービスエリア内で、安全な避難場所を利用者にわかりやすい方法で指示して避難場所の案内を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出かけた先で天変地異が発生し、安全な場所に避難を必要とする場合に利用者の位置情報を元に、安全な避難場所や避難方向をガイドし、利用者を安全に避難場所に導く緊急時避難誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話の所持率は極めて高く、一人一台を上回る普及を見せている。不意の地震時に自宅付近で有れば指定された避難場所は日頃の防災訓練や広報頒布資料によって概ね理解しているから、実際に地震が発生したときに指定の避難場所まで避難するのは、そう難しい事ではない。
【0003】
しかし、外出時に不意の地震に遭遇した時に外出先の安全な避難場所を知ろうとすると、慣れない場所では方向もわからず非常に不安な思いをすることになる。
【0004】
そこで、携帯電話基地局が比較的限られた範囲内の利用者を対象にサービスを行う点を利用して、携帯電話基地局と携帯電話会社が契約した公共地震情報報知機関と、同機関からの地震情報を受信する地震情報受信手段と基地局が設置されたグローバル座標情報を取得する手段とで構成され、地震発生時に基地局内に記憶された安全な避難場所への誘導を行うものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−174111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の緊急通報システムでは、利用者に地震の発生を知らせる事はできても、利用者の滞在地域に根ざした安全な避難場所を利用者に開示する構成にはなっていない問題点があった。
【0006】
また、公共放送による地震情報の報知も考えられるが、公共放送を利用して、安全な避難場所を探し出すには、以下のような問題点がある。
【0007】
(1)最近ではワンセグ受信機の普及で出先で公共放送を試聴できる環境が整いつつあるが、まだまだ普及率は低い。また、地下では受信不可能である。
【0008】
(2)利用者の利用形態を鑑みると、歩行移動中に携帯端末で、ワンセグ放送を試聴しながら移動することは、非常に希であり、利用者は地震波が到達してから公共放送を試聴して震源地、マグニチュードを確認するしか方法がない。従って即時性に欠ける。
【0009】
(3)地下での公共放送の受信は不可能であり、公共放送によって、避難情報を得ようとすると、地上まで出る必要がある。
【0010】
(4)公共放送は、携帯電話の基地局のカバー範囲と比べると受信範囲が広域に渡り、地域に特化した情報を伝えるには、極めて冗長度が高く、必要な情報を探し出しにくい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の緊急時避難誘導システムは、公共地震報知機関からの情報を携帯電話基地局で受信し基地局に具備したグローバル座標設定もしくは、絶対座標検出手段からの座標情報から自局の位置と前述の公共地震報知機関からの地震
の大きさ、発生場所情報と自局の座標情報から、基地局内部に記憶した安全な避難場所を利用者に通信伝送し利用者を避難場所に安全に速やかに誘導することを目的としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の緊急時避難誘導システムは、第1の通信手段によって得られた地震情報と位置座標情報取得手段から得られた座標情報から、演算処理を行い利用者に地震の発生情報と安全な避難場所を音声と文書又は画像情報の提供で安全な避難場所の提供をするため、基地局内部に記憶した安全な避難場所を利用者に通信伝送し利用者を避難場所に安全に速やかに誘導することができる。特に、地震の発生位置、地震の・強度(マグニチュード)に応じて避難方向、避難場所を利用者に通報できるため安全かつ的確な避難誘導情報を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、無線通信により契約利用者に音声と文書又は画像情報の提供を行う携帯電話基地局内のシステムであって、第1の通信手段と、自局の位置座標情報を取得する手段とを具備し、第1の通信手段によって得られた地震情報と位置座標情報取得手段から得られた座標情報から演算処理を行い利用者に地震の発生情報と安全な避難場所を音声と文書又は画像情報の提供で安全な避難場所の提供をするため、利用者に安全かつ速やかに避難方向を提示する事ができるものである。
【0014】
第2の発明は、第1の発明の位置座標情報を基地局設置時に、予め設定するもので、この座標情報を基に周辺の避難場所情報を携帯電話会社のデーターベースより取得し基地局内の避難情報記憶手段に記憶するものである。予め基地局を設置する場所は決まっているから基地局の座標情報を予め設定しておく事で、特別な、座標情報取得手段を必要せず安価に基地局が実現できるものである。
【0015】
第3の発明は、基地局内部に具備したGPS受信機によって、自局の座標情報を取得するものである。GPSによって、基地局の座標情報を取得するので、設置時に基地局毎に個別設定を行う必要が無く基地局を設置した後基地局が自ら自局の座標情報を取得することで、正確な座標情報を得る事ができるので、出荷時に特別な設定をする必要が無く量産が容易になるメリットがあるものである。
【0016】
第4の発明は地震発生情報を取得した基地局が地震の発生座標情報と地震の強度情報(マグニチュード)から、基地局までの距離、地震の伝達時間を演算して緊急度に応じて利用者に報知する手段を変更するものである。
【0017】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれかに記載の緊急避難誘導システムの少なくとも1つの手段をコンピューターに実行させるためのプログラムである。プログラムで有るのでマイコンなどを用いて本発明の音声認識システムの一部または全てを容易に実現することができる。また、記憶媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態)
図1に本発明による緊急避難誘導システムの基地局のブロック構成図を図2の基地局の周囲の避難場所と地震発生場所を図式図、図3にシステムの動作フローチャートを示す。
【0020】
まず、発明の動作説明の前に地震情報の入手経路について簡単に説明する。地震が発生
すると、外部情報機関(例えば気象台、大学、NPO)(図示せず)から地震に関する情報が発信される。この情報を通信キャリアである携帯電話会社(図示せず)が速やかに取得できるネットワークを予め構築する。このネットワークが構築されており、携帯電話会社に地震情報が伝わると、携帯電話会社は自社の管理下の基地局に通信手段を使って地震情報を伝送する。
【0021】
まず、基地局の動作について図1を使って説明する。図1は、本発明の緊急避難誘導システムを実現するために必要な構成要素をブロック図にしたものである。ここで、10は各種構成要素からのデーターを基に、演算処理を行うマイクロコンピューター、20は携帯電話会社の情報センターから地震情報を受信、並びに、利用者に避難情報を通信伝送する通信手段である。なお通信手段としては主に、無線通信手段が使われるが、携帯電話会社からの情報通信には有線通信が使われても良い。
【0022】
30は地域避難情報データーベースで、基地局設置後、携帯電話会社のデーターセンターから基地局の周辺の安全な、避難場所の情報を逐次通信して記録し、データーベースとして蓄積したものである。40は、基地局絶対座標設定又は検出手段であり、基地局を設置した時に、緯度、経度の絶対座標情報を手動により設定する物、又はGPS受信機を具備し、GPS衛星からの信号受信によって、設置された基地局の絶対座標を緯度、経度情報として取得する物であっても構わない。
【0023】
まず、地震が発生すると、前述の様に、外部情報機関から地震の震源地と強度(マグニチュード)情報が発表され、通信手段20を通じて、基地局に情報が伝えられる。基地局では、得られた地震情報と基地局の絶対座標情報を演算し、地域避難データーベースを参照して安全な避難場所を選択し、利用者に安全な避難場所を選定して連絡する。
【0024】
この動作を図2の二次元チャートと図3の動作フローチャートを使って説明する。
【0025】
図2で50、60、70は区画で例えば市又は区単位の境界を示している。区画AがA市、又はA区、区画BがB市又はB区と言った具合である。100、101と200、201の波線はそれぞれの場所の位置関係を説明するために一義的に引いた経度線、緯度線を表している。ここで、100の経度線は仮に東経137度40分3秒101の経度線は東経137度40分30秒を表し、200の緯度線は北緯35度51分15秒を201度の緯度線は北緯35度50分45秒を表すとして説明する。
【0026】
基地局300の座標は東経137度40分3秒と北緯35度51分15秒の交点の座標に位置し、震源400はそれより、南東方向の東経137度40分30秒と北緯35度51分45秒の交点にあったとする。410は目標となる建築物500番台はそれぞれの区画に有る避難場所、300は基地局310で表す一点鎖線は基地局のサービスエリア、600は利用者を表している。
【0027】
携帯電話会社は、外部情報機関(公共情報機関)と予め契約して、地震発生時には地震情報を取得できるように、しておくことで地震情報を得る事ができる。
【0028】
震源地400で地震が発生すると、前述したように、外部情報機関(公共情報機関)によって検出された地震の震源地とマグニチュード情報が携帯電話会社に通報され、その地震情報には震源の情報(緯度情報、経度情報、マグニチュード)が含まれる。
【0029】
図3のST1で地震情報の受信を行い、ST2で情報の有無を評価する、もし地震がなければ、受信を繰り返す手順を繰り返す。
【0030】
ここで、地震情報が受信されると、ST3で地震情報から震源の座標とマグニチュード情報を抽出し、更にST4で基地局の絶対座標情報と震源の座標、並びにマグニチュード情報から緊急度を算出する。例えば、震源の座標が基地局の座標に近く、マグニチュードが大きいほど緊急度は高く、震源地が基地局の座標より離れていた場合やマグニチュードの小さな地震は緊急度は低くランク設定される。ST5で基地局内に設けられた地域避難情報データーベース(図1−30)より震源地からより遠い避難場所を選択する。例えば、一点鎖線で示す310で囲まれた基地局300のサービスエリアには500A−1、500A−2、500C−1、500B−1と4つの避難区画があるが、震源が400の場合は震源から遠い500C−1の避難場所を選択する。ST6、ST7で緊急度を判定し、ST8、ST9、ST10でそれぞれ、緊急度に応じたアラーム設定を行い、ST11でアラーム情報と避難場所を利用者に無線配信する。
【0031】
アラームの緊急度は、緊急度の高いものから、緊急度1は警報音、バイブレーションを併用し、利用者に速やかに注意を喚起するようにする。逆に、震源地が遠方で、マグニチュードが小さい場合は緊急度3として、メールの一文だけで知らせる等すれば、利用者は緊急度に応じて異なる報知手段で地震を知る事ができることになり、緊急度の高い情報は速やかに、それ以外の情報は発生だけを知る事で、簡便に情報をウオッチでき、緊急度の高い情報の場合には速やかに避難場所に避難できる。また、利用者を誘導する際に避難場所を報知する際に基地局の周辺の目標建造物を指定して、例えば「○○電機の方向の××小学校の校庭に避難してください」の様に、地域で特徴的で目標物となりやすい建築物を避難方向の目安として通報することで、その土地に詳しくない旅行者や買い物客にも解りやすい避難誘導を行う事ができるものである。
【0032】
本発明の緊急避難誘導システムによれば、課題に述べた幾つかの問題点を解消することが可能であり、利用者に速やかに地震の発生と的確な避難場所を報知できるので、避難時にもパニックが発生したりすることがない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかる緊急時避難誘導システムは、地震情報と座標情報によって、演算処理を行い利用者に地震の発生情報と安全な避難場所を音声と文書又は画像情報の提供で安全な避難場所の提供をするため、基地局内部に記憶した安全な避難場所を利用者に通信伝送し利用者を避難場所に安全に速やかに誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態における緊急避難通報システムのブロック構成図
【図2】本発明の実施の形態における緊急避難通報システムの稼働エリアイメージ図
【図3】本発明の実施の形態における緊急避難通報システムの動作フロー図
【符号の説明】
【0035】
10 CPU(演算手段)
20 通信手段
30 地域避難情報データーベース
40 基地局絶対座標設定or検出手段
50 区画A
60 区画B
70 区画C
100 経度線 東経137度40分3秒101
101 経度線東経137度40分30秒
200 緯度線 北緯35度51分15秒
201 緯度線北緯35度50分45秒
300 基地局
310 基地局300のサービスエリア
400 震源地
410 目標建築物
500A−1 区画Aの避難場所A−1
500A−2 区画Aの避難場所A−2
500B−1 区画Bの避難場所B−1
500C−1 区画Cの避難場所C−1
600 利用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により契約利用者に音声と文書又は画像情報の提供を行う携帯電話基地局内のシステムであって、第1の通信手段と、自局の位置座標情報を取得する手段とを具備し、
前記第1の通信手段によって得られた地震情報と前記位置座標情報取得手段から得られた座標情報から演算処理を行い利用者に地震の発生情報と安全な避難場所を音声と文書又は画像情報の提供で安全な避難場所の提供をする緊急時避難誘導システム。
【請求項2】
自局の座標情報を基地局設置時に設定する請求項1記載の緊急時避難誘導システム。
【請求項3】
自局の位置情報をGPS受信機により得る請求項1記載の緊急時避難誘導システム。
【請求項4】
地震の強度、発生場所の遠近に応じて、利用者の所持端末の通報手段を変更する請求項1記載の緊急時避難誘導システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の緊急時避難誘導システムの少なくとも1つ以上の手段をコンピューターに実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−224723(P2010−224723A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69466(P2009−69466)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】