説明

線材移送切断機

【課題】線材を切断する際、端面に擦り傷を生じることがなく、高い寸法精度で短寸材及び長寸材の双方を検出することのできる線材移送切断機を提供する。
【解決手段】本発明の線材移送切断機1は、基部に配設され線材を一定長ずつ移送する移送手段と、該線材の移送長を測定する測長手段と、移送された該線材を切断するカッターと、該移送手段及び該測長手段及び該カッターの動作を制御する制御手段と、を備える線材移送切断機であって、移送される該線材に押圧されることにより該基部9に対して変位するストッパ部材4を備え、該測長手段(リニアエンコーダ5)は該ストッパ部材4の変位量を測定することを特徴とする。また、前記ストッパ部材4を前記線材の移送方向と反対向きに付勢する付勢手段(コイルばね7)を備えることが好ましい。前記ストッパ部材4は複数あって前記線材に押圧される被押圧面43の形状が異なり、かつ取り替え可能であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属線などの線材を移送しつつ所定の長さに切断する線材移送切断機に関し、より詳細には線材の測長機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトなどの各種機械部品は、圧造、転造、切削などの機械加工を行う工作機械により量産されるのが一般的である。これらの工作機械に供給する加工用素材を製作するために、金属線など長尺のコイル状の線材の一端を引き出して移送しつつ所定の長さに切断する線材移送切断機が広く用いられている。線材移送切断機は単独で用いられるだけでなく、他の工作機械の内部に収納あるいは隣接して配設され、切断した線材を自動的に供給するように構成されていることも多い。
【0003】
線材移送切断機では、ローラ方式あるいはグリッパ方式の移送機構により線材を移送し、剪断式のカッターで切断して、加工用素材を製作するのが一般的である。ここで、線材の滑りや移送機構のガタなどにより、線材が一定値よりも短く切断されて短寸材となり、正規の機械加工ができなくなるおそれがあった。このため、線材の移送が正規に行われたことを確認する各種の対策が従来から行われてきた。例えば、ローラ方式では線材を移送してストッパに強く圧接するため、線材とストッパとの当接状態を通電により確認する装置が用いられてきた。また、グリッパ方式では、移送される線材に摩擦接触して回転するローラの回転角から移送長を演算するロータリーエンコーダ装置が用いられてきた。さらには、特許文献1には切断機構の短寸材検出装置が開示されている。特許文献1の装置では、移動可能なストッパと測距センサとを備え、切断が行われる直前に測定を行って許容範囲と比較している。なお従来は、線材を十分に移送しきれずに短寸材となることはあっても、構造上長寸材は考慮しなくてよかった。
【特許文献1】実開平5−28532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の線材移送切断機では、線材を移送する大きな力でストッパに強く圧接した状態で切断を行っているので、線材の長さ方向に圧縮力が加わった状態で剪断力を重畳させていた。このため、線材とカッターとの間や、線材とストッパとの間には大きな摩擦力が発生して、線材の端面に擦り傷が生じやすかった。線材に生じた擦り傷は、機械加工後の部品の寸法精度や表面外観などの品質の低下につながることもあり、回避すべき不具合である。この対策として、線材のストッパへの圧接を止めると、新たに長寸材の生じるおそれが生じる。また、線材の種類によっては、端面に凹凸やバリと呼ばれる突起が生じて寸法測定時の精度を低下させるおそれがあった。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、線材を切断する際、端面に擦り傷を生じることがなく、高い寸法精度で短寸材及び長寸材の双方を検出することのできる線材移送切断機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の線材移送切断機は、基部に配設され線材を一定長ずつ移送する移送手段と、該線材の移送長を測定する測長手段と、移送された該線材を切断するカッターと、該移送手段及び該測長手段及び該カッターの動作を制御する制御手段と、を備える線材移送切断機であって、移送される該線材に押圧されることにより該基部に対して変位するストッパ部材を備え、該測長手段は該ストッパ部材の変位量を測定することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の線材移送切断機は、前記ストッパ部材を前記線材の移送方向と反対向きに付勢する付勢手段を備えることが好ましい。前記ストッパ部材は複数あって前記線材に押圧される被押圧面の形状が異なり、かつ取り替え可能であってもよい。前記測長手段は、前記ストッパ部材に押圧されて変位する測定ロッドをもつリニアエンコーダであってもよい。さらに、前記制御手段は、前記測長手段が測定した前記ストッパ部材の前記変位量を、あらかじめ設定された基準値及び許容範囲と比較した結果を判定信号にして制御するようにしてもよい。
【0008】
基部は、線材移送切断機の各部材を配設するためのフレームに相当する。また、他の工作機械と連結する際には、基部は連結部材あるいは共通フレームとしての機能を果たすことができる。
【0009】
移送手段は、金属線などの線材を間欠的に一定長ずつ移送する手段であり、例えばローラ方式やグリッパ方式の移送機構を適用することができる。ローラ方式では、一対の円筒状のローラが線材を挟持し、ローラが回転することにより線材を押し出して移送する。グリッパ方式では、可動グリッパが線材の移送方向に往復動して往動ストローク分ずつ線材を移送し、固定グリッパが切断時及び可動グリッパの復動時に線材を保持している。本発明は、上記例示の方式に限定されず、あらゆる移送方式に適用することができる。
【0010】
カッターは、移送された線材を切断して加工用素材を製作する手段である。カッターは、例えば、基部に固定されている固定刃と、線材に交差しながら往復動する移動刃とで構成することができる。
【0011】
ストッパ部材は、移送される線材に押圧されることにより基部に対して変位するようになっている。ストッパ部材は、例えば、基部に固定されたガイド筒あるいはガイド溝の中を、線材の移送方向に摺動する棒状の部材で形成することができる。ストッパ部材と基部との間には、ストッパ部材を線材の移送方向と反対向きに付勢する付勢手段を備えることが好ましい。そして、移送される線材が移送の途中でストッパ部材に当接し、以降は付勢手段に抗してストッパ部材を押圧し変位させるように配置することができる。付勢手段は、線材がストッパ部材に当接するときの衝撃を吸収して和らげるとともに、両者を安定して接触させ後述の変位量測定の精度を高める作用がある。付勢手段には、例えばコイルばねを用いることができる。
【0012】
線材の端面により押圧されるストッパ部材の被押圧面の形状は、線材の性状にあわせて形成することが好ましい。例えば、太くて硬い線材で端面周縁に突出するバリが懸念される場合には、ストッパ部材の被押圧面は線材断面よりも小さくして、線材の中央部分のみで押圧するように形成することができる。柔らかい線材の場合には、ストッパ部材の被押圧面を広く滑らかにして、ストッパ部材が線材の端面を傷付けないように形成することができる。また、被押圧面に弾性をもつ緩衝部材を付加し、当接時の衝撃を吸収しあるいは端面の凹凸の影響を平均化することもできる。このように、被押圧面の形状が異なる複数のストッパ部材をもち、線材の性状にあわせて取り替えて使用するようにしてもよい。
【0013】
測長手段は、ストッパ部材の変位量を測定する手段であり、間接的に線材の移送長すなわち加工用素材の切断長を測定する手段である。測長手段には各種のセンサを適用することができるが、測定精度や耐久性、経済性などを総合的に勘案するとリニアエンコーダが好ましい。リニアエンコーダには、例えばエンコーダ本体に摺動自在に保持される測定ロッドをもち、測定ロッドの移動量を測定する方式のものがある。この測定ロッドがストッパ部材に押圧されて変位するように、リニアエンコーダを基部に配設することができる。
【0014】
制御手段は、移送手段及び測長手段及びカッターの動作を制御する機能を有しており、線材の移送、測長、切断のタイミング制御を行っている。本発明の制御手段には、線材切断長の判定機能をもたせるようにしてもよい。すなわち、制御手段は、測長手段が測定したストッパ部材の変位量をあらかじめ設定された基準値及び許容範囲と比較することができる。そして比較した結果を判定信号にして、各部を制御するようにしてもよい。なお、基準値は、正規の移送量が実現されたときの値とする。また、許容範囲は、切断された加工用素材を機械加工する上で許容される寸法公差以内とする。許容範囲は正負両側に別々に設け、異なる値としてもよい。
【0015】
比較した結果、測定値が許容範囲内であれば、制御手段は「正常」の判定信号を出力して、動作を継続することができる。比較した結果、測定値が許容範囲を逸脱した場合には、制御手段は「異常」の判定信号を出力して動作を中断し、さらに、作業者に対して「異常」を表示あるいは通報することが好ましい。なお、制御手段には、例えばマイクロコンピュータを応用した電子制御装置を適用することができる。
【0016】
上述のように構成された本発明の線材移送切断機は、次のように動作、作用する。移送手段が線材を移送すると、移送の途中で線材の先端がストッパ部材の被押圧面に当接する。さらに移送手段が移送を続けると、ストッパ部材と基部との間に配設された付勢手段に抗して、線材がストッパ部材を押圧し一定長まで変位させる。このストッパ部材の変位量が、測長手段によって測定される。例えば、リニアエンコーダの測定ロッドがストッパ部材に押圧されて一緒に移動し、変位量が測定される。次に制御手段は、測長手段の測定値を基準値及び許容範囲と比較する。そして、測定値が許容範囲内であれば「正常」と判定し、カッターにより線材を切断して一つの加工用素材を製作し、最初の状態に戻る。
【0017】
測定値が許容範囲を逸脱している場合には、制御手段は「異常」と判定し、動作を中断するとともに、「異常」を表示あるいは通報する。そして、作業者により点検が行われて、正常に移送できなかった原因が調査される。また、既に長尺材あるいは短尺材が製作されていれば、除去された後に動作が再開される。
【0018】
なお、線材の材質あるいは太さを変更するときには、線材に合わせて最も適当なストッパ部材を選定し、取り替えて使用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の線材移送切断機では、移送される線材に押圧されるストッパ部材を備え、ストッパ部材の変位量を測定している。このため、線材切断時には長さ方向に移送する大きな力は作用しておらず、線材とカッターとの間や、線材とストッパとの間に大きな摩擦力が発生することがなく、線材の端面に擦り傷が生じることはない。また、ストッパ部材は複数あって、線材により押圧される被押圧面の形状が異なり、かつ線材の性状にあわせて取り替えて使用できるようにしている。このため、線材端面のバリや凹凸の影響を受けず、高い寸法精度で短寸材及び長寸材の双方を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図3を参考にして説明する。図1は本発明の実施例の線材移送切断機1の全体構成図であり、(a)は初期状態、(b)は線材移送後の切断直前の状態を示している。本発明の線材移送切断機1は、移送手段に相当するグリッパ式移送機構2、カッター3、ストッパ部材4、測長手段に相当するリニアエンコーダ5、制御手段6、で構成されている。
【0021】
グリッパ式移送機構2は、図1には省略されている基部に配設され、可動グリッパ21と固定グリッパ22とで構成されている。可動グリッパ21及び固定グリッパ22はアクチュエータをもち、線材を把持及び解放するようになっている。また、可動グリッパ21は、図1の図中左右方向に一定長L1だけ往復ストローク移動するようになっている。一定長L1は、製作する加工用素材の所望の長さであり、切断作業開始前に設定されている。
【0022】
グリッパ式移送機構2では、次の手順により線材Mを移送している。すなわち、図1(a)の初期状態において、先ず可動グリッパ21が図中右方向から供給されている線材Mを把持する。このとき固定グリッパ22は線材22を解放している。次に、可動グリッパ21が図中の左方向へ一定長L1だけ移動し、把持した線材Mを一定長L1移送する。次に固定グリッパ22が線材Mを把持し、可動グリッパ21は線材Mを解放して右方向へ移動し元の位置に戻る。
【0023】
カッター3は、移送される線材Mを受け入れられるように、移送手段2の移送方向側に隣接して配設されている。カッター3は、固定刃31と可動刃32とで構成されている。固定刃31及び可動刃32は筒状であり、その中央を線材Mが通過するように基部に固定配置されている。可動刃32の側面の刃端面は、固定刃31の側面の刃端面を図中の上下方向に摺動するように配設されている。したがって、可動刃32が摺動することにより、固定刃31との間で線材Mが剪断される。
【0024】
ストッパ部材4は、グリッパ式移送機構2とカッター3とを結ぶ線材移送方向の延長線上(図中左方向)の位置に、移送方向に変位可能に配設され、基部によって保持されている。図1(a)の初期状態において、ストッパ部材4とカッター3の切断点との距離L0は、前記一定長L1よりもわずかに正規変位dLだけ小さくなるように配置されている。したがって、線材Mが一定長L1だけ移送されると、図1(b)に示されるように、ストッパ部材4は正規変位dLだけ線材移送方向に変位するようになっている。
【0025】
リニアエンコーダ5は、ストッパ部材4のさらに移送方向側の位置に、固定設置されている。リニアエンコーダ5は、エンコーダ本体部51と測定ロッド55とで構成されている。測定ロッド55は棒状の部材であり、ストッパ部材4に当接して配置され、ストッパ部材4とともに動き、エンコーダ本体部51に対して変位するようになっている。
【0026】
制御手段6は、グリッパ式移送機構2及びカッター3及びリニアエンコーダ5の動作を制御している。すなわち、固定グリッパ21及び可動グリッパ22の把持及び解放のタイミングと、可動グリッパ22の往復移動のタイミングを制御して、線材Mを一定長L1ずつ移送し、リニアエンコーダ5の測定タイミングを制御し、可動刃32を駆動して線材Mを切断している。リニアエンコーダ5による測定は、線材Mの移送が終了してカッター3が動作する直前に行われる。
【0027】
また、制御手段6には、あらかじめ正規変位dLが基準値として設定されている。さらに、加工用素材の機械加工上の許容される寸法公差に余裕をもって許容範囲が定められ、設定されている。そして、測定値が基準値及び許容範囲と比較されて「正常」または「異常」が判定される。さらに、測定値が許容範囲を逸脱した「異常」を表示するために、制御手段6は警告ランプなどの異常表示手段61を備えている。なお、制御手段6には、数値演算機能と電気的制御機能を備えた電子制御装置が用いられている。
【0028】
次に、ストッパ部材4及びリニアエンコーダ5の詳細な構成について、図2を参照して説明する。図2はストッパ部材4及びリニアエンコーダ5の詳細を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。ストッパ部材4は、摺動部材41と、被押圧部材42と、エンコーダ押圧部材46と、が一体になって形成されている。
【0029】
摺動部材41は棒状の部材であり、基部9に設けられたガイド筒91の内部に摺動可能に保持されている。摺動部材41は、ガイド筒91の内部を摺動し、線材移送方向(図2の左方向)に変位するようになっている。
【0030】
被押圧部材42は、摺動部材41の線材供給側(図2の右側)に一体に設けられる略矩形の部材である。被押圧部材42のカッター3と向かい合う正面は、移送される線材Mが当接して押圧する被押圧面43であり、線材Mの端部を傷つけないように精密に仕上げられている。被押圧部材42の被押圧面43の裏側は制止面44である。制止面44とガイド筒91との間には間隙が設けられ、間隙寸法Dはストッパ部材4が変位し得る最大変位寸法となっている。間隙寸法Dは、前記正規変位dLよりも大きく、正常な線材Mの移送に対して余裕をもつ値とされている。また、間隙寸法Dはリニアエンコーダ5の測定範囲を超えない値とされ、万一過大な変位が生じてもリニアエンコーダ5を破損させないように保護している。被押圧部材42の下面には、凹状の係止部45が設けられている。係止部45は、ガイド筒91に2つのねじ92によって留められ延設された抜け止めガイド93と係合し、ストッパ部材4全体がガイド筒91から抜け落ちるのを防止している。また、ねじ92及び抜け止めガイド93を取り外すことにより、ストッパ部材4の取り替えができるようになっている。
【0031】
エンコーダ押圧部材46は、摺動部材41の線材移送側(図2の左側)に一体に設けられ、径の異なる段差を持つ棒状の部材である。そして、径の変わる段差部分と、対向するリニアエンコーダ5の固定座52との間に、付勢手段に相当するコイルばね7が配設されている。コイルばね7は、ストッパ部材4全体を押圧して線材供給側の初期位置に保持するが、移送手段2ほどの強度は持たない。したがって、線材Mが移送されるとコイルばね7は圧縮されて、ストッパ部材4は変位する。このとき、コイルばね7の付勢力により、線材Mと被押圧面43との密着性が確保できる。エンコーダ押圧部材46の径の細い端面には、リニアエンコーダ5の測定ロッド55が当接している。
【0032】
リニアエンコーダ5は、エンコーダ本体部51と測定ロッド55とで構成されている。エンコーダ本体部51は略矩形であり、付属する固定座52が2本のボルト95によって基部9に固定されている。また、エンコーダ本体部51から電線53が引き出されて制御手段6に接続され、電源供給及び信号出力がなされている。電線53はシールド付であり、電気的ノイズの影響を受けないようになっている。
【0033】
測定ロッド55は、エンコーダ本体部51から線材供給側に、変位可能に突出する棒状の部材である。測定ロッド55の先端には、曲率をもつ椀形測定子56が付設されて、エンコーダ押圧部材46に当接している。そして、図3に示されるように、線材Mがストッパ部材4を押圧して変位させた状態では、測定ロッド55も同じだけ変位して、線材Mの移送長を測定できるようになっている。すなわち、正規変位dLが測定されれば、所望の長さL1が丁度移送されたことになる。また、測定値と正規変位dLとの違いは、そのまま移送長の誤差となるので、設定されている許容範囲と比較することができる。
【0034】
上述のように構成された実施例の線材移送切断機1は、次のように動作、作用する。図1(a)の初期状態において、グリッパ式移送機構2が線材Mを所望の長さL1だけ移送しようとすると、移送の途中で線材Mの先端がストッパ部材4の当接部材42の被押圧面43に当接する。さらにグリッパ式移送機構2が移送を続けると、線材Mはコイルばね7に抗して、ストッパ部材4を押圧し変位させる。このとき、ストッパ部材4の変位に伴って、リニアエンコーダ5の測定ロッド55も一緒に変位する。ここで、制御手段6は、線材Mの移送が終了したことを認識し、リニアエンコーダ5による測定を実行する。そして、得られたストッパ部材4の変位量の測定値を、設定された基準値dL及び許容範囲と比較する。
【0035】
ここで、線材Mの移送が正常に行われていれば、測定値は基準値dLに一致するか、許容範囲内の値となる。したがって、制御手段6は「正常」と判定して動作を継続し、カッター3による切断を行い、続いて次の線材Mの移送を行う。測定値が許容範囲を逸脱している場合には、制御手段6は「異常」と判定して動作を中断するとともに、異常表示手段61により表示を行う。これにより、作業者が切断機1の点検を行い、必要な復旧措置を施した後に、動作が再開される。
【0036】
実施例の線材移送切断機1によれば、切断時には線材Mにグリッパ式移送機構2の移送力は作用しておらず、線材Mとカッター3との間や、線材Mとストッパ部材4の被押圧面43との間に大きな摩擦力が発生することがなく、線材Mの端面に擦り傷が生じることはない。また、ストッパ部材4を複数もち、線材の性状にあわせて取り替えて使用するようにしている。このため、線材端面のバリや凹凸の影響を受けず、高い寸法精度で短寸材及び長寸材の双方を検出することができる。さらに、コイルばね7を用いたことにより、線材Mと被押圧面43との密着性が向上して測定が安定するとともに、線材Mが激しく当接してリニアエンコーダ5を破損させるリスクも回避できた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の線材移送切断機は、単独の工作機械として用いる他、圧造成形を行う圧造機など他の工作機械の内部に収納あるいは隣接して配設し、加工用素材を自動で供給する用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例の線材移送切断機の全体構成図であり、(a)は初期状態、(b)は線材移送後の切断直前の状態を示している。
【図2】図1の実施例において、ストッパ部材及びリニアエンコーダの詳細を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図3】図2(a)の側面図において、線材がストッパ部材を押圧して変位させた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1:線材移送切断機
2:グリッパ式移送機構(移送手段)
21:可動グリッパ 22:固定グリッパ
3:カッター
31:固定刃 32:可動刃
4:ストッパ部材
41:摺動部材 42:被押圧部材 43:被押圧面
44:制止面 45:係止部
46:エンコーダ押圧部材
5:リニアエンコーダ(測長手段)
51:エンコーダ本体部 52:固定座 53:電線
55:測定ロッド 56:椀形測定子
6:制御手段 61:異常表示手段
7:コイルばね(付勢手段)
9:基部
91:ガイド筒 92:ねじ 93:ボルト
M:線材
L0:初期状態におけるストッパ部材とカッターの切断点との距離
L1:製作する加工用素材の所望の長さ
dL:正規変位(基準値)
D:間隙寸法(ストッパ部材の最大変位寸法)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部に配設され線材を一定長ずつ移送する移送手段と、該線材の移送長を測定する測長手段と、移送された該線材を切断するカッターと、該移送手段及び該測長手段及び該カッターの動作を制御する制御手段と、を備える線材移送切断機であって、
移送される該線材に押圧されることにより該基部に対して変位するストッパ部材を備え、該測長手段は該ストッパ部材の変位量を測定することを特徴とする線材移送切断機。
【請求項2】
前記ストッパ部材を前記線材の移送方向と反対向きに付勢する付勢手段を備える請求項1に記載の線材移送切断機。
【請求項3】
前記ストッパ部材は複数あって前記線材に押圧される被押圧面の形状が異なり、かつ取り替え可能である請求項1または2に記載の線材移送切断機。
【請求項4】
前記測長手段は、前記ストッパ部材に押圧されて変位する測定ロッドをもつリニアエンコーダである請求項1〜3に記載の線材移送切断機。
【請求項5】
前記制御手段は、前記測長手段が測定した前記ストッパ部材の前記変位量を、あらかじめ設定された基準値及び許容範囲と比較した結果を判定信号にして制御するようにした請求項1〜4に記載の線材移送切断機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−334640(P2006−334640A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162885(P2005−162885)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】