説明

線維芽細胞増殖因子−7産生促進剤、及びそれを含有する頭皮・頭髪用化粧料、並びに飲食物

【課題】 FGF−7産生に優れた効果を有するFGF−7産生促進剤を提供すること、及び、それを用いた頭皮・頭髪用化粧料並びに飲用物を提供すること。
【解決手段】 FGF−7産生促進剤を(A)フォルスコリンと(B)オウギエキス及び/又はチンピエキスからなるものとし、さらに、このFGF−7産生促進剤を含有する頭皮・頭髪用化粧料及び飲食物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛乳頭細胞における線維芽細胞増殖因子−7(以下、FGF−7という。)発現を亢進させるFGF−7産生促進剤、及び、該FGF−7産生促進剤を含有する育毛・養毛に有効な頭皮・頭髪用化粧料、並びに、飲食物に関する。
【背景技術】
【0002】
不規則な生活やストレス等の社会環境、食生活の変化により、抜け毛や脱毛、細毛、薄毛の悩みは、壮年男性だけでなく、若年層や女性にも広がっていることから、養育毛剤及び養育毛用化粧料に対する社会的期待は高まっている。これを受けて、育毛促進、保湿、フケやかゆみの予防、抗炎症、脱毛予防等を目的とした多くの養育毛剤が上市されている。
【0003】
細胞成長因子の一種であるFGF−7(別名KGF)は、ケラチノサイト増殖因子、角質細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子などと呼ばれ、頭髪の薄毛部位では減少していることが知られている。
【0004】
これに関連して、毛包の細胞におけるケラチノサイト増殖因子(FGF−7)の発現を亢進させることにより毛髪の太毛化を維持・促進する方法、並びにアデノシンまたはその誘導体を含有するFGF−7の発現を亢進させる組成物を開示する文献(特許文献1)、コロソリン酸の配合により、線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)等の産生促進効果を有する頭髪化粧料を開示する文献(特許文献2)、KGFによる化学療法誘発生脱毛症の治療方法を開示する文献(特許文献3)が知られている。
【0005】
そして、FGF−7は、頭髪の細毛、薄毛改善の極めて有効な因子であり、FGF−7産生促進効果を高める様々な方法が提案されているが、これらの方法をもってしても細毛、薄毛改善効果は十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2005/044205号公報
【特許文献2】WO2006/090613号公報
【特許文献3】特表2002−526026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、FGF−7産生に優れた効果を有するFGF−7産生促進剤の提供、及びそれを用いた頭皮・頭髪用化粧料、並びに飲用物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、植物由来成分のフォルスコリンは、FGF−7産生を促進する効果を有するが、これに特定の植物抽出エキスを併用することにより、フォルスコリンのFGF−7産生能力が飛躍的に増大することを見出し本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)フォルスコリンと(B)オウギエキス及び/又はチンピエキスからなるFGF−7産生促進剤を提供し、さらに、該FGF−7産生促進剤を含有するFGF−7産生促進効果の顕著な頭皮・頭髪用化粧料、及び飲食物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の、フォルスコリンとオウギエキス及び/又はチンピエキスとからなるFGF−7産生促進剤は、毛乳頭細胞のFGF−7産生能力を劇的に促進する効果を有するものであり、これを頭皮・頭髪用化粧料あるいは飲食物に用いることで、細毛、薄毛の予防、更には毛髪の再生を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のFGF−7産生促進剤は、フォルスコリンと、オウギエキス及びチンピエキスから選ばれる少なくとも1種の植物抽出エキスからなるものである。これらはいずれも、医薬又は植物エキスあるいはそれらを精製した成分であり、医薬又は民間薬、食品、化粧品の成分として一般的に用いられているものである。
【0012】
本発明で使用するフォルスコリンとは、コレウスフォルスコリ(Coleus forskohlii)等のシソ科植物の塊根の抽出物から分離、精製され、構造決定された物質である。フォルスコリンは、上記植物の根からの抽出物を用いることができ、さらに、生化学試薬として市販されているものを用いることもできる。
【0013】
本発明で使用するオウギエキスは、キバナオウギ、ナイモウオウギ、またはその他のマメ科植物の乾燥した根から得られる抽出物である。
【0014】
本発明で使用するチンピエキスは、ウンシュウミカンの成熟した果皮から得られる抽出物である。
【0015】
本発明で用いるオウギエキス、チンピエキス、コレウスフォルスコリエキス等の植物抽出エキスは、上記の各植物の各種部位、あるいは、その破砕物から溶媒抽出して得ることができる。
【0016】
抽出溶媒に特に制限はなく、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級1価アルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類等一般に用いられる有機溶媒を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種、または2種以上を混合して用いることができ、水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。
【0017】
水と併用する有機溶媒としては炭素数4以下の低級アルコールが好ましく、特に水とエタノールの混合溶媒が好ましい。水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、その混合割合は質量基準で、水:有機溶媒=10:90〜80:20とすることが好ましい。抽出温度としては15〜100℃が好ましく、15〜50℃での抽出がより好ましい。抽出温度を50℃以下とすることにより、植物抽出エキスの分解や変質を抑えることができる。抽出時間に制限はないが、抽出温度が50℃を超える場合、30秒〜5時間が好ましく、50℃以下で抽出する場合には5分〜7日間が好ましい。
【0018】
前記各植物抽出エキスは、溶剤を揮発させた植物抽出エキスの液状品、凍結乾燥した粉末品として用いることができ、さらに、溶剤に溶解した液状品として用いることもできる。溶剤に溶解した液状品として用いる場合、エタノール、1,3−ブチレングリコール等の皮膚刺激性の低い溶媒を抽出溶媒に用いることが好ましく、これらと水との混合溶媒を抽出溶媒として用いることもできる。
【0019】
本発明のFGF−7産生促進剤は、前記フォルスコリンとオウギエキス及びチンピエキスから選ばれる少なくとも1種とからなる。フォルスコリンは単独でも毛乳頭細胞のFGF−7産生促進効果を有するが、水に難溶の物質であるため、頭皮・頭髪用化粧料に対する配分量が制限され、毛乳頭細胞のFGF−7産生促進効果をもそれにより制限される。しかし、ここにオウギエキス及び/又はチンピエキスを併用することにより毛乳頭細胞でのFGF−7産生を飛躍的に促進する効果を得ることができる。
【0020】
本発明のFGF−7産生促進剤は毛乳頭細胞を賦活し、毛髪の細毛、薄毛の予防、毛髪の再生に寄与するものであり、本発明のFGF−7産生促進剤をそのまま養育毛剤として、あるいは頭皮・頭髪用化粧料に配合して、直接頭皮の毛乳頭細胞を賦活することができる。本発明のFGF−7産生促進剤は、通常の頭皮・頭髪用外用剤で使用されている薬剤等と組み合わせて使用することもでき、併用薬剤により本発明の効果がより発現しやすくなる。
【0021】
本発明のFGF−7産生促進剤を配合できる頭皮・頭髪用化粧料の剤型に制限はなく、例えば、シャンプー、コンディショナー、トニック、スタイリング剤、ペースト剤、クリーム、ジェル、軟膏、ローション、乳液、パック、パウダー、ハップ剤等として、頭皮・頭髪に用いることができる。
【0022】
本発明のFGF−7産生促進剤の頭皮・頭髪用化粧料への配合量に特に制限はなく、任意の濃度で用いることができるが、フォルスコリンの好ましい配合量は、剤型中に0.001〜2質量%であり、より好ましくは、0.1〜1質量%である。
【0023】
オウギエキス、チンピエキスの好ましい配合量は、共に0.001〜5質量%であり、より好ましくは、共に、0.5〜5質量%である。植物抽出エキスの配合量が前記下限未満では、FGF−7産生促進による育毛効果があまり期待できず、前記上限を超えて使用しても、配合量に見合う効果が得られないおそれがある。
【0024】
フォルスコリンに対して、オウギエキスとチンピエキスの両方を共に併用する場合の好ましいオウギエキスとチンピエキスの配合量は、剤型中に、それぞれ0.001〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0025】
オウギエキスとチンピエキスとを同時に用いる場合の、オウギエキスとチンピエキスの配合割合に特に制限はなく、任意の割合で配合することができる。
【0026】
本発明のFGF−7産生促進剤を頭皮・頭髪用化粧料に配合する場合、必要に応じて有機溶剤に溶解して用いることができる。ここで用いる有機溶剤としては、皮膚刺激性の低い前記エタノール、1,3−ブチレングリコール等が好ましい。
【0027】
本発明の頭皮・頭髪用化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、FGF−7産生促進剤に加え、頭皮・頭髪用化粧料として従来から使用されている公知の機能成分、例えば、保湿剤、エモリエント剤、血行促進剤、細胞賦活化剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤、美白剤、過酸化物抑制剤等を配合することができる。
【0028】
公知の機能成分として、グリセリン、ブチレングリコール、尿素、アミノ酸類等の保湿剤;スクワラン、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ホホバ油、シリコン油等のエモリエント剤;ビタミンE類、トウガラシチンキ等の血行促進剤;核酸等の細胞賦活化剤、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジブチルヒドロキシアニソール(BHA)、酢酸トコフェロール等の抗酸化剤;グリチルリチン、アラントイン等の抗炎症剤;ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン塩、パラヒドロキシ安息香酸エステル等の抗菌剤;アスコルビン酸等の美白剤;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)等の過酸化物抑制剤等、種々の機能成分を配合することができ、オウゴンエキス、イチョウエキス、胎盤抽出物、乳酸菌培養抽出物等の植物・動物・微生物由来の各種抽出物等も制限なく添加して使用することができる。
【0029】
本発明のFGF−7産生促進剤を含有する頭皮・頭髪用化粧料に、さらにミノキシジル等の既知の育毛成分を加えることもできる。これにより効果的な育毛効果が期待される。
【0030】
本発明のFGF−7産生促進剤は、飲食物に配合することもでき、前記FGF−7産生促進剤の他に、通常食品に使用されている様々な材料を併用することができる。頭皮・頭髪用化粧料として用いることに加え、飲食物として体内に取り込むことで、毛乳頭細胞をより活性化し、FGF−7の産生が促進される。飲食物への配合量に特に制限はなく、任意の濃度で用いることができるが、フォルスコリンの好ましい配合量は、剤型中に0.001〜2質量%であり、より好ましくは、0.1〜1質量%である。オウギエキス、チンピエキスの好ましい配合量は、共に0.001〜5質量%であり、より好ましくは、共に、0.5〜5質量%である。植物抽出エキスの配合量が前記下限未満では、FGF−7産生促進による養育毛効果があまり期待できず、前記上限値を超えて使用しても使用量に見合う効果が得られないおそれがある。
【0031】
フォルスコリンに対して、オウギエキスとチンピエキスの両方を併用する場合、好ましいオウギエキス及びチンピエキスの配合量は、剤型中にそれぞれ0.001〜5質量%であり、より好ましくはそれぞれ0.5〜5質量%である。オウギエキスとチンピエキスとを同時に用いる場合の、オウギエキスとチンピエキスの配合割合にも特に制限はなく、任意の割合で配合することができる。
【0032】
本発明の飲食物の剤型に制限はなく、例えば、ビスケット、クッキー、キャンディー、ガム、粉末、錠剤、カプセル剤等の固形製剤、飲料等の液体製剤、ゼリー等の半固形製剤等を例示することができる。
【0033】
また、本発明の頭皮・頭髪用化粧料及び飲食物には、その剤型化のために界面活性剤、油脂類等の基材成分や、必要に応じて増粘剤、防腐剤、等張化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、香料、着色料等、頭皮・頭髪用化粧料または飲食物に従来用いられている種々の添加物を併用できる。
【0034】
本発明で使用できる界面活性剤に特に制限はなく、一般的な非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
【0035】
例えば、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物、高級脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物、高級脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加物、多価アルコールの脂肪酸エステル、硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ステロール等のアルキレンオキサイド付加物等の非イオン界面活性剤;アルキル硫酸ナトリウム、アルキロイルメチルタウリンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤;塩化アルキルピリジニウム、塩化ジステアリルジメリルアンモニウム等の陽イオン界面活性剤;アミノプロピオン酸ナトリウム、アルキルポリアミノエチルグリシン等の両性界面活性剤が挙げられる。そして、これらの界面活性剤は1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0036】
本発明において使用可能な基材成分に特に制限はなく、例えば、オリーブ油、ツバキ油、アボカド油、マカデミアナッツ油、杏仁油、ホホバ油、スクワラン、スクワレン、馬油等、一般的に知られている油脂類を用いることができる。
【0037】
本発明において使用可能な増粘剤に特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、及びこれらの各種誘導体;ヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース類及びその誘導体;デキストラン、ゼラチン、アラビアガム、トラガントガム等のガム類;カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子を用いることができる。
【0038】
本発明において使用可能な防腐剤に特に制限はなく、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル、パラオキシ安息香酸塩とその誘導体、フェノキシエタノール、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン塩等を用いることができる。
【0039】
本発明において使用可能な等張化剤として、特に制限はなく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の無機塩類を用いることができる。
【0040】
本発明において使用可能な紫外線吸収剤として、特に制限はなく、例えば、パラアミノ安息香酸、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を用いることができる。
【0041】
本発明において使用可能なキレート剤として、特に制限はなく、例えば、エチレンジアミン四酢酸、フィチン酸、クエン酸及びこれらの水溶性塩等を用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を更に詳しく説明するために実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0043】
・オウギエキスの製造方法
キバナオウギの根を50g採取し、25℃の50質量%エタノール水溶液375mlで、24時間振とうした。これをろ過し、得られた抽出液から水、エタノールを減圧留去後、凍結乾燥してオウギエキスを得た。得られたオウギエキスを、以下に示す実施例に使用した。
・チンピエキスの製造方法
ウンシュウミカンの果皮を50g採取し、25℃の50質量%エタノール水溶液375mlで、24時間振とうした。これをろ過し、得られた抽出液から水、エタノールを減圧留去後、凍結乾燥してチンピエキスを得た。得られたチンピエキスを、以下に示す実施例に使用した。
・コレウスフォルスコリエキスの製造方法
コレウスフォルスコリの塊根を50g採取し、25℃の50質量%エタノール水溶液375mlで、24時間振とうした。これをろ過し、得られた抽出液から水、エタノールを減圧留去後、凍結乾燥してコレウスフォルスコリエキスを得た。得られたコレウスフォルスコリエキスを、以下に示す実施例に使用した。
・フォルスコリン(試薬)
シグマアルドリッチジャパン(株)製のフォルスコリンを用いた。
【0044】
(I)FGF−7産生促進剤
1.細胞の培養
ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC、500,000cells/ml/本、TOYOBO社製)250,000cellsを、10%牛胎児血清(FBS)を含むGIBCO社製ダルベッコ改変イーグル培地(D−MEM)でシャーレに播種し、37℃、5%CO2の条件下で6日間培養した(この間、1日おきに培地を交換した)。
【0045】
サブコンフルエント状態の毛乳頭細胞をトリプシン処理で剥離し、ウシI型コラーゲン処理した24ウェルプレートの各ウェルに4,000cellsを播種して、6日間培養した(この間、1日おきに培地を交換した)。
【0046】
6日間培養した毛乳頭細胞に表1に記載のとおりに調整したフォルスコリン、コレウスフォルスコリエキス、オウギエキス、チンピエキスを適宜添加したD−MEM培地(FBS無添加)を加えて24時間培養した。
【0047】
なお、フォルスコリン(試薬)はジメチルスルホキシドに溶解し、ジメチルスルホキシドの最終濃度が0.1質量%となるように培地中に添加した。オウギエキス、チンピエキス、コレウスフォルスコリエキスは50質量%エタノール水溶液を用いて25質量%、12.5質量%、10質量%、2.5質量%の溶液を調製し、エタノールの最終濃度が0.2質量%となるように培地中に添加した。これらを単独あるいは複数添加した培地をクリーンベンチ内で0.22 μmメンブランフィルターを用いて滅菌濾過したものを使用した。
【0048】
2.FGF−7量の測定
FGF−7の定量には「Quantikine(登録商標)Human KGF(FGF−7) IMMUNOASSAY KIT」(R&D System社製)を使用した。
【0049】
FGF−7抗体をコーティングしたウェルに、前記24時間培養後の培地100μLを添加し、室温で静置した。抗原抗体結合反応が終了した3時間後、各ウェルをKIT付属の洗浄液で5回洗浄して、未反応物を除去後、KGF Conjugate反応液(KITに付属のFGF−7検出抗体)を200μL添加し、室温で105分間静置してウェルのFGF−7に検出抗体を結合させた。
【0050】
結合反応終了後、未結合のFGF−7検出抗体を洗浄除去の上、発光試薬(テトラメチルベンジジン)を200μL添加して発色させ、30分間室温で静置後、KIT付属の反応停止液を50μL添加して測定試料とした。マイクロプレートリーダー(Model 550,Bio−Rad Laboratories社製)を用いて、吸光波長450nm(対照波長540nm)における吸光度を測定し、検量線を基に測定試料中のFGF−7濃度を算出した。
【0051】
上記試験の結果を表1に示す。
【表1】

【0052】
表1に示すように、FGF−7産生量は、0.004質量%のフォルスコリンで1.5倍に、0.1質量%のフォルスコリンで3.2倍になった。
【0053】
オウギエキスのFGF−7産生量は、0.1〜0.05質量%で1.1倍に、チンピエキスのFGF−7産生量は、0.1〜0.05質量%で1.2倍にしかならなかった。
【0054】
しかしながら、フォルスコリンにオウギエキス及び/又はチンピエキスを併用することにより、FGF−7産生量は増大し、それぞれを0.1質量%併用した実施例3、6、9、13でのFGF−7産生量は、6〜7倍にまで達した。
【0055】
以上のとおり、フォルスコリンと、オウギエキス及び/またはチンピエキス併用により、ヒト頭髪毛乳頭細胞でのFGF−7産生促進の相乗効果が確認された。
【0056】
(II)頭皮・頭髪用化粧料
本発明の植物抽出エキスからなるFGF−7産生促進剤を、頭皮・頭髪用化粧料に配合し、毛髪に対する効果を確認した。
FGF−7産生促進剤を配合した化粧料(シャンプー、コンディショナー、ヘアトニック)の組成を表2−1、表2−2、表2−3に示す。オウギ、チンピの各植物抽出エキスは凍結乾燥したものを用い、フォルスコリンは試薬を用いた。なお、配合量の単位はgで、表中の精製水の「残量」とは全量を100gとする量である。
【0057】
1.シャンプー
表2−1のA成分を混合の上75℃に加温し、撹拌しながら35℃まで冷却した。その後、撹拌を続けながらB成分を加えて、pHを4.5〜6と、粘度を1,000〜2,000mPa・sに調整した。さらにC成分を加えて、調整を終了した。
【0058】
【表2】

【0059】
2.コンディショナー
表2−2のD成分、E成分をそれぞれ75℃に加温し、D成分をパドルミキサーで撹拌しながら、E成分を少量ずつ加えた。その後、パドルミキサーで撹拌しながら冷却して、45℃以下でF成分を加えて調整を終了した。
【0060】
【表3】

【0061】
3.ヘアトニック
表2−3のG成分、H成分、I成分の全てを40℃に加温して混合した。
【0062】
【表4】

【0063】
評 価
前記実施例14〜43、比較例9〜11の頭皮・頭髪用化粧料について、それぞれ30〜50歳の細毛化を訴える男女5名ずつの(11群×3処方)計330名に対して、シャンプー及びコンディショナーについては毎日の入浴時に頭髪に適量使用し、ヘアトニックについては毎日の入浴後又は朝に頭皮又は頭髪に適量使用して、これを6ヶ月間続けるモニター試験を行い、下記の基準にて評価を行った。なお、この期間中、シャンプーのモニター試験対象者は、シャンプーのみ本発明のシャンプーを使し、これ以外の頭髪用化粧用については、通常使用しているものをそのまま使用した。
【0064】
コンディショナー、トニックのモニター試験対象者も、それぞれ、コンディショナー、トニック以外は、通常使用している頭髪用化粧品を使用した。
【0065】
評価は、側頭部を被験部位とし、使用前後での50本の毛髪の直径をシックネスゲージ7301(ミツトヨ社製)にて測定し、その平均毛髪径を求めて、比較することで効果を検証した。
【0066】
なお、使用期間中に皮膚の異常を訴えたものはいなかった。
【0067】
結果を表2−1、表2−2、表2−3に示す。
【0068】
有 効 :使用前に比べ、毛髪径の平均が10%以上の増加
やや有効:使用前に比べ、毛髪径の平均が5%以上から10%未満の増加
効果無し:使用前に比べ、毛髪径の平均の増加が5%未満
悪 化 :使用前に比べ、毛髪径の平均が5%以上減少
【0069】
本発明のFGF−7産生促進剤を配合した実施例14〜43の頭皮・頭髪用化粧料では、毛髪径が太くなるか、やや太くなり、毛髪の細毛化の改善が認められ、特に1質量%のフォルスコリン、0.5質量%のオウギエキスとチンピエキスとを配合した実施例23、33、43では、すべての被験者に効果が確認された。一方、比較例9〜11の頭皮・頭髪用化粧料では、ほとんど変化が見られなかった。
【0070】
(III)飲食物の処方例
表3−1及び表3−2に示す組成で、FGF−7産生促進剤を配合した、飲食物(ゼリー、サプリメント(錠剤))を調整した。調整法は下記のとおりである。
オウギ、チンピの各植物抽出エキスは凍結乾燥したものを用い、フォルスコリンは試薬を用いた。
なお、配合量の単位はgで、表中の精製水の「残量」とは全量を100gとする量である。
【0071】
1.ゼリー
表3−1のJ成分を、L成分の80℃のお湯に溶かし、K成分を溶解した後、よく混ぜ合わせた。型に10gずつ流し入れた後、冷蔵庫で固めて調整を終了した。
【0072】
【表5】

【0073】
2.サプリメント(錠剤)
表3−2のM成分とN成分を良く混ぜ合わせたものを、打錠機を用いてタブレット状に押し固め、錠剤を形成した。
【0074】
【表6】

【0075】
評 価
実施例44〜63、比較例12、13の飲食物について、毛髪の細毛化の悩みを有する30〜40代の女性を対象としたモニター試験を実施した。
【0076】
飲食物のそれぞれについて、女性10名ずつの(11群×2処方)計220名に対して、ゼリーについては、毎日の夕食後に100g摂取すること、サプリメント(錠剤)については、毎日の夕食後に5錠(1.5g)摂取すること以外は、通常の生活をするモニター試験を6ヶ月間続けた。評価は、側頭部を被験部位とし、使用前後での50本の毛髪の直径を、シックネスゲージ7301(ミツトヨ社製)にて測定し、その平均毛髪径を求めて、比較することで効果を検証した。
【0077】
なお、使用期間中に体調不良、皮膚の異常を訴えたものはいなかった。
【0078】
結果を表3−1及び表3−2に示す。
【0079】
有 効 :使用前に比べ、毛髪径の平均が10%以上の増加
やや有効:使用前に比べ、毛髪径の平均が5%以上から10%未満の増加
効果無し:使用前に比べ、毛髪径の平均の増加が5%未満
悪 化 :使用前に比べ、毛髪径の平均が5%以上減少
【0080】
本発明のFGF−7産生促進剤を配合した実施例44〜63の飲食物では、毛髪径が太くなるかやや太くなり、毛髪の細毛化の改善が認められ、特に1質量%のフォルスコリン、0.5質量%のオウギエキスとチンピエキスとを配合した実施例53、63では、すべての被験者に効果が確認された。一方、比較例12、13の飲食物では、頭髪にほとんど変化が認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
フォルスコリンとオウギエキス及び/又はチンピエキスとからなる植物抽出エキスは、FGF−7産生促進剤として有用である。本発明のフォルスコリンとオウギエキス及び/又はチンピエキスとからなるFGF−7産生促進剤は、毛乳頭細胞で産生されるFGF−7の量を増大させ、その結果、細毛、薄毛の予防、緩和、改善、及び毛髪の再生をなすものであり、各種頭皮・頭髪用化粧料及び飲食物への利用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フォルスコリンと、(B)オウギエキス及び/又はチンピエキスと、からなる線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載の線維芽細胞増殖因子−7産生促進剤を含有する頭皮・頭髪用化粧料。
【請求項3】
請求項1に記載の線維芽細胞増殖因子−7産生促進剤を含有する飲食物。

【公開番号】特開2011−84523(P2011−84523A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238855(P2009−238855)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】