繊維基材の成形方法及び成形装置
【課題】繊維基材の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる繊維基材の成形方法及び成形装置を提供する。
【解決手段】加熱された繊維基材11を当該繊維基材11の外縁部の少なくとも一部が成形型12,13からはみ出している状態で圧縮成形する圧縮成形工程と、前記圧縮成形工程の後、前記成形型12,13を型締めしたままの状態で、前記繊維基材11の前記成形型12,13からはみ出している部分11cを切断刃25により切断する切断工程と、を含む。圧縮成形の際ではなく圧縮成形後に切断するので、バリの発生を抑制できる。
【解決手段】加熱された繊維基材11を当該繊維基材11の外縁部の少なくとも一部が成形型12,13からはみ出している状態で圧縮成形する圧縮成形工程と、前記圧縮成形工程の後、前記成形型12,13を型締めしたままの状態で、前記繊維基材11の前記成形型12,13からはみ出している部分11cを切断刃25により切断する切断工程と、を含む。圧縮成形の際ではなく圧縮成形後に切断するので、バリの発生を抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維基材の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボード基材を加熱して圧縮成形する成形装置において、圧縮成形の際に不要部を切断するものが知られている(例えば特許文献1参照)。この成形装置では、上型を下降させてボード基材を圧縮成形する際に上型によって切断刃が押し下げられ、押し下げられた切断刃と下型の抜き刃とによりボード基材の不要部を切断している。
【特許文献1】特開2002−254461公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般に切断刃と抜き刃との間には作動上隙間が必要である。しかしながら、ボード基材は加熱されて軟化しているので、切断刃と抜き刃との間に隙間があると切断の際にボード基材の端末が切断刃に引き摺られて隙間に入り込み、それによりボード基材の端末にバリが発生するという問題がある。この隙間は成形を繰り返すに従って徐々に広がり、よりバリが発生し易くなる。バリが生じるとその後にバリの除去作業が必要となるため、生産性が低下する。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、繊維基材の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる繊維基材の成形方法及び成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、繊維基材の成形方法であって、加熱された繊維基材を当該繊維基材の外縁部の少なくとも一部が成形型からはみ出している状態で圧縮成形する圧縮成形工程と、前記圧縮成形工程の後、前記成形型を型締めしたままの状態で、前記繊維基材の前記成形型からはみ出しているはみ出し部分を切断刃により切断する切断工程と、を含むことを特徴とする。
この発明によると、繊維基材の外縁部のうち成形型からはみ出しているはみ出し部分の切断を、圧縮成形の際ではなく、圧縮成形後に行う。圧縮成形後は圧縮成形の際に比べて繊維基材の温度が低下しているので、圧縮成形の際に切断する場合に比べて切断時に繊維基材の端末が切断刃に引き摺られ難くなる。繊維基材の端末が切断刃に引き摺られ難くなると、繊維基材の端末にバリが発生し難くなる。よってこの発明によると、繊維基材の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる。
更に、この発明によると、成形型を型締めしたままの状態で切断するので、型開きした後に切断する場合に比べて効率よく切断できる。
【0006】
第2の発明は、第1の発明の繊維基材の成形方法であって、前記はみ出し部分を狭持手段によって狭持する狭持工程を更に含み、前記圧縮成形工程において、前記はみ出し部分が前記狭持手段によって狭持されている状態で圧縮成形することを特徴とする。
この発明によると、はみ出し部分を狭持手段によって狭持することにより、繊維基材を張った状態で圧縮成形することができ、繊維基材にしわが発生することを抑制できる。
【0007】
第3の発明は、繊維基材を圧縮成形する成形装置であって、第1型と第2型とを有する成形型と、前記第1型又は前記第2型の少なくとも一方の型を他方の型に向けて移動させることにより前記第1型と前記第2型とを型締めさせる第1の駆動手段と、切断刃と、前記切断刃を移動させる第2の駆動手段と、を備え、前記第2の駆動手段は、前記第1型と前記第2型とが型締めされた状態で前記切断刃を移動させ、前記繊維基材の外縁部のうち前記成形型からはみ出しているはみ出し部分を前記切断刃により切断することを特徴とする。
この発明によると、切断刃を移動させる第2の駆動手段を、第1型又は第2型の少なくとも一方の型を移動させて型締めさせる第1の駆動手段とは別に有している。これにより、繊維基材の外縁部のうち成形型からはみ出しているはみ出し部分を切断する工程を、第1型と第2型とを型締めして繊維基材を圧縮成形する工程の後に独立して行うことができる。圧縮成形後は圧縮成形の際に比べて繊維基材の温度が低下しているので、圧縮成形後に切断するようにすると、圧縮成形の際に切断する場合に比べて切断の際に繊維基材の端末が切断刃に引き摺られ難くなる。繊維基材の端末が切断刃に引き摺られ難くなると、繊維基材の端末にバリが発生し難くなる。よってこの発明によると、繊維基材の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる。
更に、この発明によると、成形型を型締めされた状態で切断するので、型開きした後に切断する場合に比べて効率よく切断できる。
【0008】
第4の発明は、第3の発明の繊維基材の成形方法であって、前記切断刃が一体に設けられ前記成形型に対して摺動する摺動部材と、前記はみ出し部分を間に挟んで前記摺動部材とは逆側になる位置に配置されている押圧部材と、前記押圧部材を前記摺動部材に向けて付勢する付勢手段と、を有し、前記摺動部材と前記押圧部材とにより前記はみ出し部分を狭持する狭持手段を更に備えることを特徴とする。
この発明によると、付勢手段で押圧部材を摺動部材に向けて付勢することにより、はみ出し部分を摺動部材と押圧部材とで狭持することができる。これにより、繊維基材を張った状態で圧縮成形することができ、繊維基材にしわが発生することを抑制できる。
【0009】
第5の発明は、第3又は第4の発明の繊維基材の成形方法であって、前記切断刃は交換可能であることを特徴とする。
この発明によると、切断刃が摩耗しても交換できる。
【0010】
第6の発明は、第5の発明の繊維基材の成形方法であって、前記第1型又は前記第2型のいずれか一方の型は前記繊維基材を圧縮する面と当該面に連なる側面とで形成される稜線部に前記切断刃と協働して前記はみ出し部分を剪断する固定刃が形成されており、前記切断刃は前記固定刃よりも軟質であることを特徴とする。
切断刃を固定刃よりも軟質にすると、切断刃が摩耗することにより、固定刃にかかる負荷が低減される。これにより固定刃が摩耗し難くなる。固定刃が摩耗した場合には第1型ごと又は第2型ごと交換しなければならないので、固定刃が摩耗し難くなると第1型ごと又は第2型ごとの交換回数を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、繊維基材の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8によって説明する。
本実施形態では、木材等を解織して得た木質繊維、あるいはケナフ等の靭皮植物繊維に熱可塑性樹脂であるポリプロピレンを含浸させた繊維基材を成形して車両のドアを車室内側から覆うトリムボードを製造する場合を例に説明する。
尚、ポリプロピレンは繊維を繋ぐバインダーとしての役割を果たしているが、トリムボードをポリエステル、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート等のポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂と繊維との混合物にて形成してもよい。
【0013】
(1)繊維基材の成形装置
図1及び図2は本発明の実施形態1に係る繊維基材の成形装置1(以下「成形装置1」という)の断面を示す模式図であって、図1は型開き状態、図2は型締め状態を示す模式図である。
トリムボード11は、繊維マットから繊維基材11を形成する一次成形工程(図示省略)、形成された繊維基材11を加熱する加熱工程(図示省略)、加熱された繊維基材11を成形装置1にセット(図1参照)し、圧縮成形して所定形状のトリムボード11(図2参照)に成形し、成形したトリムボード11の不要部を切断する二次成形工程を経て製造される。成形装置1はこれらの工程のうち二次成形工程において用いられる。本実施形態では二次成形工程によって圧縮成形された繊維基材11のことをトリムボード11というものとし、これらには同一の符号を用いるものとする。
【0014】
図1に示すように、成形装置1は、可動型12(第1型に相当)、可動型12を移動させる図示しない第1の駆動装置(第1の駆動手段に相当)、固定型13(第2型に相当)、摺動部材14、摺動部材14を移動させる第2の駆動装置15(第2の駆動手段に相当)、押圧部材16、押圧部材16を上方向に付勢するコイルばね17(付勢手段に相当)などを備えている。
【0015】
可動型12は固定型13とともに成形型を構成している。可動型12は下方に突出した形状をなし、図示しない第1の駆動装置により上下方向に移動する。
図示しない第1の駆動装置は可動型12を上下方向に移動させることができるものであればよく、例えば電動モータによるアクチュエータ、エアシリンダ、油圧シリンダ、電磁ソレノイドアクチュエータを用いることができる。第1の駆動装置は図示しないコントローラによって制御され、コントローラは例えば電動モータに取り付けられたパルスエンコーダによりその回転位置を検出し、それに基づいて可動型12を型締め位置及び型開き位置に上下動させることができる。
【0016】
固定型13は下方に凹んだ形状をなし、可動型12と所定距離離間して対向配置されている。固定型13の上端面21(繊維基材を圧縮する面の一例)と外周面20(繊維基材を圧縮する面に連なる側面の一例)とによって形成される稜線部には、摺動部材14に形成されている切断刃25と協働してトリムボード11の不要部を切断する固定刃19(以下「シャー刃」という)が全周に亘って形成されている。
【0017】
図2に示すように、成形されたトリムボード11は平面部11aとその平面部11aの外縁部を上方に折り曲げることにより平面部11aから立ち上がる外壁11bとを備えた構造となる。
図1に示すように、摺動部材14は内周面23が可動型12の外周面22に当接しており、摺動部材14は可動型12に対して上下方向に摺動する。摺動部材14の下端面24は、トリムボード11の外縁部を下方向に押圧するために概ね水平な平坦面として形成されている。
【0018】
図3は、可動型12及び摺動部材14を上方から見た模式図である。トリムボード11は車両のドア形状に応じた形状に形成されるものであるが、ここでは簡略化して長方形で示している。図示するように摺動部材14は枠状に形成されており、その内周形状は可動型12の外周形状と一致している。図3では可動型12の後ろに隠れて見えていないが、固定型13の外周形状も可動型12の外周形状と一致している。
【0019】
図1に示すように、摺動部材14の内周面23と下端面24との稜線部には、固定型13に形成されているシャー刃19と協働してトリムボード11の不要部を切断する切断刃25が形成されている。切断刃25は摺動部材14の内周の全周にわたって形成されている。
第2の駆動装置15は、摺動部材14を上下方向に移動させる。第2の駆動装置15は摺動部材14を上下方向に移動させることができるものであればよく、第1の駆動装置と同様に例えば電動モータによるアクチュエータ、エアシリンダ、油圧シリンダ、電磁ソレノイドアクチュエータを用いることができる。なお、第2の駆動装置15は周方向に離間して複数設けられていてもよい。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態では第2の駆動装置15は図示しない第1の駆動装置によって可動型12と伴に上下動するものとする。第2の駆動装置15が可動型12と伴に上下動すると、結果として摺動部材14も可動型12の上下動と伴に上下動することになる。これは、繊維基材11を固定型13上に載置する作業が行えるよう、摺動部材14と押圧部材16との間に空間を確保するためである。なお、摺動部材14と押圧部材16とは型開きした状態のとき固定型13の上に繊維基材11を載置できる程度に離間していればよく、第2の駆動装置15は必ずしも可動型12と伴に上下動しなくてもよい。
【0021】
図1に示すように、押圧部材16は繊維基材11の外縁部のうち成形型からはみ出しているはみ出し部分11cを間に挟んで摺動部材14とは逆側に位置している。押圧部材16も摺動部材14と同様に枠状に形成されており、内周面が固定型13の外周面20に当接している。押圧部材16はコイルばね17によって摺動部材14に向けて付勢されており、上端面27が固定型13の上端面21と概ね面一となる高さまで押し上げられている。
【0022】
なお、押圧部材16の上方向への移動を規制するストッパ(図示省略)を設け、押圧部材16の上端面27が固定型13の上端面21と概ね面一となる高さまで押し上げられるとストッパにより押圧部材16のそれ以上の上方向への移動が規制される構成であってもよい。
【0023】
コイルばね17の上端は押圧部材16に係止されており、下端は例えばボルスタに固定されている固定部材18に係止されている。コイルばね17は固定型13の周方向に離間して複数設けられている。
なお、本実施形態では押圧部材16を摺動部材14に向けて付勢する付勢手段としてコイルばね17を用いているが、付勢手段は押圧部材16を上方向に押圧できるものであって且つ摺動部材14によって押圧部材16が下方向に押された場合に押圧部材16が付勢手段の付勢力に抗して下方向に移動できるものであればよく、例えばエアシリンダ、油圧シリンダを用いてもよい。
【0024】
図4は、シャー刃19及び切断刃25を拡大して示す模式図である。切断刃25とシャー刃19との間には水平方向に5/100mm程度の隙間(刃クリアランス)が確保されている。仮にこの隙間がないとすると僅かな製造公差によって切断刃25とシャー刃19とが干渉し、それにより切断刃25が下降できなくなってしまう虞があるからである。
【0025】
切断刃25は摺動部材14に一体形成されており、本実施形態の成形装置1では切断刃25が摩耗した場合には摺動部材14ごと交換できるように構成されている。
また、切断刃25はシャー刃19よりも摩耗し易く構成されている。具体的には例えば、切断刃25は焼き入れされていない鋼であり、シャー刃19は焼き入れされている鋼である。切断刃25をシャー刃19よりも軟質にすると、切断刃25が摩耗することにより、シャー刃19にかかる負荷が低減される。これによりシャー刃19が摩耗し難くなる。シャー刃19が摩耗した場合には固定型13ごと交換しなければならないので、シャー刃19が摩耗し難くなると固定型13ごとの交換回数を低減できる。また、刃の交換は摺動部材14だけ行えばよく、交換作業が容易になる。
【0026】
(2)トリムボードの成形
一次成形工程では、繊維マットを本来のトリムボード11よりも大きめの寸法で切断することにより繊維基材11を形成する。
加熱工程では、一次成形によって形成された繊維基材11を再度ポリプロピレンが溶融軟化する程度に加熱する。
【0027】
二次成形工程では、加熱された繊維基材11の外縁部を摺動部材14と押圧部材16とで狭持する狭持工程と、繊維基材11を圧縮成形して所定形状のトリムボード11に成形する圧縮成形工程と、圧縮成形したトリムボード11の不要部を切断する切断工程とが行われる。以下、二次成形工程について説明する。
【0028】
図5〜図8は成形装置1及びトリムボード(繊維基材)11の断面の一部を示す模式図であって、二次成形工程を時系列で示す模式図である。
二次成形工程では、初めに図5に示すように加熱工程で加熱された繊維基材11を固定型13上にセットする。このとき繊維基材11は図示するように外縁部の一部11cが成形型からはみ出る。なお、繊維基材11は外縁部が全周に亘って成形型からはみ出す構成であってもよいし、外縁部のうち一部のみがはみ出す構成であってもよい。
【0029】
次に、図6に示すように摺動部材14を下方に移動させ、摺動部材14と押圧部材16とによって、繊維基材11の外縁部のうち成形型からはみ出したはみ出し部分11cを狭持する。
次に、図7に示すように可動型12を下方に移動させて型締めする。これにより一次成形した繊維基材11が圧縮成形され、所定の凹凸形状を有するトリムボード11に成形される。このとき、トリムボード11ははみ出し部分11cが摺動部材14と押圧部材16とによって狭持されていることにより、張った状態で圧縮成形される。これによりトリムボード11にしわが発生することを低減しつつ圧縮成形することができる。
【0030】
次に、図8に示すように、第2の駆動装置15を作動させて摺動部材14を下方に移動させる。摺動部材14を下方に移動させると押圧部材16もコイルばね17の付勢力に抗して下方に移動する。そして、摺動部材14を下方に移動させると、摺動部材14に設けられている切断刃25と固定型13に設けられているシャー刃19とによる剪断によって、はみ出し部分11cが切断される。これによりトリムボード11が所定形状に成形される。
【0031】
(3)実施形態の効果
本実施形態の効果を、圧縮成形の際に不要部の切断を行う比較例と比較しつつ説明する。
図9A〜図9Dは比較例の成形工程を時系列で示す模式図であって、図9Aは型締め前、図9B及び図9Cは型締め中、図9Dは型締め状態を示している。図9A〜図9Dでは、可動型30と固定型31とで繊維基材32を圧縮成形する際に、切断刃34及び切断刃35によって繊維基材32の不要部36を切断する。
【0032】
図9Eは比較例の圧縮成形によって成形された繊維基材32の端末を示す模式図である。比較例では圧縮成形の際に不要部36の切断を行うので、繊維基材32の温度が高い状態で切断することになる。繊維基材32の温度が高いと繊維基材32が相対的に軟化しており、切断の際(例えば図9Dの破線で示す円38で示す状態になる際)に繊維基材32の端末が切断刃34に引き摺られ易くなる。その結果、図9Eに示すようなバリ37が発生し易くなる。
【0033】
これに対し、本発明の実施形態1に係る繊維基材の成形方法によると、トリムボード11の外縁部のうち成形型からはみ出しているはみ出し部分11cの切断を、圧縮成形の際ではなく、圧縮成形後に行う。圧縮成形後は圧縮成形の際に比べてトリムボード11の温度が低下しているのでトリムボード11は相対的に硬化しており、切断の際にトリムボード11の端末が切断刃25に引き摺られ難くなる。トリムボード11の端末が切断刃25に引き摺られ難くなると、トリムボード11の端末にバリが発生し難くなる。よってこの発明によると、トリムボード11の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる。この結果、バリの除去作業が不要となり、生産性の低下を低減できる。
【0034】
更に、実施形態1に係る繊維基材の成形方法によると、成形型を型締めしたままの状態で切断するので、型開きした後に切断する場合に比べて効率よく切断できる。例えば型開きした後に切断する場合は、トリムボード11が動かないよう何らかの手段でトリムボード11を固定し直して切断する必要がある。これに対し、成形型を型締めしたままの状態で切断すると、成形型によってトリムボード11が固定されているので、改めて固定する作業は不要であり、効率よく切断できる。
【0035】
更に、実施形態1に係る繊維基材の成形方法によると、摺動部材14と押圧部材16とで外縁部を狭持することにより、トリムボード11を張った状態で圧縮成形することができ、トリムボード11にしわが発生することを抑制できる。
【0036】
更に、実施形態1に係る繊維基材の成形方法によると、トリムボード11の温度が低下しているので、ポリプロピレンが溶けて切断刃25とシャー刃19との隙間に入り込み難い。これにより、ポリプロピレンが隙間に入り込むことによる切断能力の低下を低減できる。
【0037】
また、実施形態1に係る成形装置1によると、切断刃25を移動させる第2の駆動装置15を、可動型12を移動させて型締めする図示しない第1の駆動装置とは別に有している。これにより、はみ出し部分11cを切断する工程を、可動型12と固定型13とを型締めしてトリムボード11を圧縮成形する工程の後に独立して行うことができる。圧縮成形後は圧縮成形の際に比べてトリムボード11の温度が低下しているので、トリムボード11の端末にバリが発生し難くなる。
【0038】
更に、実施形態1に係る成形装置1によると、切断刃25と摺動部材14とを一体に形成しているので、切断刃25の移動と摺動部材14の移動とを第2の駆動手段で行うことができ、摺動部材14を移動させるための手段を別途備える場合に比べて成形装置1の構成を簡素化できる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施形態では車両のドアを車室内側から覆うトリムボード11を成形する場合を例に説明したが、車両のピラーを車室内側から覆うピラーガーニッシュ、シートバックボード、パッケージトレイ、クォータトリム、デッキサイドトリムなどの車両用内装材の成形に本発明を適用してもよい。
また、本発明の成形方法は車両に用いられる成形品の成形に限定されず、繊維基材を素材として圧縮成形と切断工程とを経て成形される建材、家具などの成形品に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る繊維基材の成形装置を型開きした状態の模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係る繊維基材の成形装置を型締めした状態の模式図。
【図3】本発明の一実施形態に係る第1型及び摺動部材を上方から見た模式図。
【図4】本発明の一実施形態に係る固定刃及び切断刃を拡大して示す模式図。
【図5】本発明の一実施形態に係る成形装置及び繊維基材の断面の模式図。
【図6】本発明の一実施形態に係る成形装置及び繊維基材の断面の模式図。
【図7】本発明の一実施形態に係る成形装置及び繊維基材の断面の模式図。
【図8】本発明の一実施形態に係る成形装置及び繊維基材の断面の模式図。
【図9A】比較例の成形工程を示す模式図。
【図9B】比較例の成形工程を示す模式図。
【図9C】比較例の成形工程を示す模式図。
【図9D】比較例の成形工程を示す模式図。
【図9E】比較例によって生じたバリを示す模式図。
【符号の説明】
【0041】
1…繊維基材の成形装置
11…トリムボード(繊維基材)
12…可動型(第1型)
13…固定型(第2型)
14…摺動部材
15…第2の駆動装置(第2の駆動手段)
16…押圧部材
17…コイルばね(付勢手段)
19…シャー刃(固定刃)
20…外周面(繊維基材を圧縮する面に連なる側面)
21…上端面(繊維基材を圧縮する面)
22…外周面(成形型の側面)
25…切断刃
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維基材の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボード基材を加熱して圧縮成形する成形装置において、圧縮成形の際に不要部を切断するものが知られている(例えば特許文献1参照)。この成形装置では、上型を下降させてボード基材を圧縮成形する際に上型によって切断刃が押し下げられ、押し下げられた切断刃と下型の抜き刃とによりボード基材の不要部を切断している。
【特許文献1】特開2002−254461公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般に切断刃と抜き刃との間には作動上隙間が必要である。しかしながら、ボード基材は加熱されて軟化しているので、切断刃と抜き刃との間に隙間があると切断の際にボード基材の端末が切断刃に引き摺られて隙間に入り込み、それによりボード基材の端末にバリが発生するという問題がある。この隙間は成形を繰り返すに従って徐々に広がり、よりバリが発生し易くなる。バリが生じるとその後にバリの除去作業が必要となるため、生産性が低下する。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、繊維基材の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる繊維基材の成形方法及び成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、繊維基材の成形方法であって、加熱された繊維基材を当該繊維基材の外縁部の少なくとも一部が成形型からはみ出している状態で圧縮成形する圧縮成形工程と、前記圧縮成形工程の後、前記成形型を型締めしたままの状態で、前記繊維基材の前記成形型からはみ出しているはみ出し部分を切断刃により切断する切断工程と、を含むことを特徴とする。
この発明によると、繊維基材の外縁部のうち成形型からはみ出しているはみ出し部分の切断を、圧縮成形の際ではなく、圧縮成形後に行う。圧縮成形後は圧縮成形の際に比べて繊維基材の温度が低下しているので、圧縮成形の際に切断する場合に比べて切断時に繊維基材の端末が切断刃に引き摺られ難くなる。繊維基材の端末が切断刃に引き摺られ難くなると、繊維基材の端末にバリが発生し難くなる。よってこの発明によると、繊維基材の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる。
更に、この発明によると、成形型を型締めしたままの状態で切断するので、型開きした後に切断する場合に比べて効率よく切断できる。
【0006】
第2の発明は、第1の発明の繊維基材の成形方法であって、前記はみ出し部分を狭持手段によって狭持する狭持工程を更に含み、前記圧縮成形工程において、前記はみ出し部分が前記狭持手段によって狭持されている状態で圧縮成形することを特徴とする。
この発明によると、はみ出し部分を狭持手段によって狭持することにより、繊維基材を張った状態で圧縮成形することができ、繊維基材にしわが発生することを抑制できる。
【0007】
第3の発明は、繊維基材を圧縮成形する成形装置であって、第1型と第2型とを有する成形型と、前記第1型又は前記第2型の少なくとも一方の型を他方の型に向けて移動させることにより前記第1型と前記第2型とを型締めさせる第1の駆動手段と、切断刃と、前記切断刃を移動させる第2の駆動手段と、を備え、前記第2の駆動手段は、前記第1型と前記第2型とが型締めされた状態で前記切断刃を移動させ、前記繊維基材の外縁部のうち前記成形型からはみ出しているはみ出し部分を前記切断刃により切断することを特徴とする。
この発明によると、切断刃を移動させる第2の駆動手段を、第1型又は第2型の少なくとも一方の型を移動させて型締めさせる第1の駆動手段とは別に有している。これにより、繊維基材の外縁部のうち成形型からはみ出しているはみ出し部分を切断する工程を、第1型と第2型とを型締めして繊維基材を圧縮成形する工程の後に独立して行うことができる。圧縮成形後は圧縮成形の際に比べて繊維基材の温度が低下しているので、圧縮成形後に切断するようにすると、圧縮成形の際に切断する場合に比べて切断の際に繊維基材の端末が切断刃に引き摺られ難くなる。繊維基材の端末が切断刃に引き摺られ難くなると、繊維基材の端末にバリが発生し難くなる。よってこの発明によると、繊維基材の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる。
更に、この発明によると、成形型を型締めされた状態で切断するので、型開きした後に切断する場合に比べて効率よく切断できる。
【0008】
第4の発明は、第3の発明の繊維基材の成形方法であって、前記切断刃が一体に設けられ前記成形型に対して摺動する摺動部材と、前記はみ出し部分を間に挟んで前記摺動部材とは逆側になる位置に配置されている押圧部材と、前記押圧部材を前記摺動部材に向けて付勢する付勢手段と、を有し、前記摺動部材と前記押圧部材とにより前記はみ出し部分を狭持する狭持手段を更に備えることを特徴とする。
この発明によると、付勢手段で押圧部材を摺動部材に向けて付勢することにより、はみ出し部分を摺動部材と押圧部材とで狭持することができる。これにより、繊維基材を張った状態で圧縮成形することができ、繊維基材にしわが発生することを抑制できる。
【0009】
第5の発明は、第3又は第4の発明の繊維基材の成形方法であって、前記切断刃は交換可能であることを特徴とする。
この発明によると、切断刃が摩耗しても交換できる。
【0010】
第6の発明は、第5の発明の繊維基材の成形方法であって、前記第1型又は前記第2型のいずれか一方の型は前記繊維基材を圧縮する面と当該面に連なる側面とで形成される稜線部に前記切断刃と協働して前記はみ出し部分を剪断する固定刃が形成されており、前記切断刃は前記固定刃よりも軟質であることを特徴とする。
切断刃を固定刃よりも軟質にすると、切断刃が摩耗することにより、固定刃にかかる負荷が低減される。これにより固定刃が摩耗し難くなる。固定刃が摩耗した場合には第1型ごと又は第2型ごと交換しなければならないので、固定刃が摩耗し難くなると第1型ごと又は第2型ごとの交換回数を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、繊維基材の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8によって説明する。
本実施形態では、木材等を解織して得た木質繊維、あるいはケナフ等の靭皮植物繊維に熱可塑性樹脂であるポリプロピレンを含浸させた繊維基材を成形して車両のドアを車室内側から覆うトリムボードを製造する場合を例に説明する。
尚、ポリプロピレンは繊維を繋ぐバインダーとしての役割を果たしているが、トリムボードをポリエステル、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート等のポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂と繊維との混合物にて形成してもよい。
【0013】
(1)繊維基材の成形装置
図1及び図2は本発明の実施形態1に係る繊維基材の成形装置1(以下「成形装置1」という)の断面を示す模式図であって、図1は型開き状態、図2は型締め状態を示す模式図である。
トリムボード11は、繊維マットから繊維基材11を形成する一次成形工程(図示省略)、形成された繊維基材11を加熱する加熱工程(図示省略)、加熱された繊維基材11を成形装置1にセット(図1参照)し、圧縮成形して所定形状のトリムボード11(図2参照)に成形し、成形したトリムボード11の不要部を切断する二次成形工程を経て製造される。成形装置1はこれらの工程のうち二次成形工程において用いられる。本実施形態では二次成形工程によって圧縮成形された繊維基材11のことをトリムボード11というものとし、これらには同一の符号を用いるものとする。
【0014】
図1に示すように、成形装置1は、可動型12(第1型に相当)、可動型12を移動させる図示しない第1の駆動装置(第1の駆動手段に相当)、固定型13(第2型に相当)、摺動部材14、摺動部材14を移動させる第2の駆動装置15(第2の駆動手段に相当)、押圧部材16、押圧部材16を上方向に付勢するコイルばね17(付勢手段に相当)などを備えている。
【0015】
可動型12は固定型13とともに成形型を構成している。可動型12は下方に突出した形状をなし、図示しない第1の駆動装置により上下方向に移動する。
図示しない第1の駆動装置は可動型12を上下方向に移動させることができるものであればよく、例えば電動モータによるアクチュエータ、エアシリンダ、油圧シリンダ、電磁ソレノイドアクチュエータを用いることができる。第1の駆動装置は図示しないコントローラによって制御され、コントローラは例えば電動モータに取り付けられたパルスエンコーダによりその回転位置を検出し、それに基づいて可動型12を型締め位置及び型開き位置に上下動させることができる。
【0016】
固定型13は下方に凹んだ形状をなし、可動型12と所定距離離間して対向配置されている。固定型13の上端面21(繊維基材を圧縮する面の一例)と外周面20(繊維基材を圧縮する面に連なる側面の一例)とによって形成される稜線部には、摺動部材14に形成されている切断刃25と協働してトリムボード11の不要部を切断する固定刃19(以下「シャー刃」という)が全周に亘って形成されている。
【0017】
図2に示すように、成形されたトリムボード11は平面部11aとその平面部11aの外縁部を上方に折り曲げることにより平面部11aから立ち上がる外壁11bとを備えた構造となる。
図1に示すように、摺動部材14は内周面23が可動型12の外周面22に当接しており、摺動部材14は可動型12に対して上下方向に摺動する。摺動部材14の下端面24は、トリムボード11の外縁部を下方向に押圧するために概ね水平な平坦面として形成されている。
【0018】
図3は、可動型12及び摺動部材14を上方から見た模式図である。トリムボード11は車両のドア形状に応じた形状に形成されるものであるが、ここでは簡略化して長方形で示している。図示するように摺動部材14は枠状に形成されており、その内周形状は可動型12の外周形状と一致している。図3では可動型12の後ろに隠れて見えていないが、固定型13の外周形状も可動型12の外周形状と一致している。
【0019】
図1に示すように、摺動部材14の内周面23と下端面24との稜線部には、固定型13に形成されているシャー刃19と協働してトリムボード11の不要部を切断する切断刃25が形成されている。切断刃25は摺動部材14の内周の全周にわたって形成されている。
第2の駆動装置15は、摺動部材14を上下方向に移動させる。第2の駆動装置15は摺動部材14を上下方向に移動させることができるものであればよく、第1の駆動装置と同様に例えば電動モータによるアクチュエータ、エアシリンダ、油圧シリンダ、電磁ソレノイドアクチュエータを用いることができる。なお、第2の駆動装置15は周方向に離間して複数設けられていてもよい。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態では第2の駆動装置15は図示しない第1の駆動装置によって可動型12と伴に上下動するものとする。第2の駆動装置15が可動型12と伴に上下動すると、結果として摺動部材14も可動型12の上下動と伴に上下動することになる。これは、繊維基材11を固定型13上に載置する作業が行えるよう、摺動部材14と押圧部材16との間に空間を確保するためである。なお、摺動部材14と押圧部材16とは型開きした状態のとき固定型13の上に繊維基材11を載置できる程度に離間していればよく、第2の駆動装置15は必ずしも可動型12と伴に上下動しなくてもよい。
【0021】
図1に示すように、押圧部材16は繊維基材11の外縁部のうち成形型からはみ出しているはみ出し部分11cを間に挟んで摺動部材14とは逆側に位置している。押圧部材16も摺動部材14と同様に枠状に形成されており、内周面が固定型13の外周面20に当接している。押圧部材16はコイルばね17によって摺動部材14に向けて付勢されており、上端面27が固定型13の上端面21と概ね面一となる高さまで押し上げられている。
【0022】
なお、押圧部材16の上方向への移動を規制するストッパ(図示省略)を設け、押圧部材16の上端面27が固定型13の上端面21と概ね面一となる高さまで押し上げられるとストッパにより押圧部材16のそれ以上の上方向への移動が規制される構成であってもよい。
【0023】
コイルばね17の上端は押圧部材16に係止されており、下端は例えばボルスタに固定されている固定部材18に係止されている。コイルばね17は固定型13の周方向に離間して複数設けられている。
なお、本実施形態では押圧部材16を摺動部材14に向けて付勢する付勢手段としてコイルばね17を用いているが、付勢手段は押圧部材16を上方向に押圧できるものであって且つ摺動部材14によって押圧部材16が下方向に押された場合に押圧部材16が付勢手段の付勢力に抗して下方向に移動できるものであればよく、例えばエアシリンダ、油圧シリンダを用いてもよい。
【0024】
図4は、シャー刃19及び切断刃25を拡大して示す模式図である。切断刃25とシャー刃19との間には水平方向に5/100mm程度の隙間(刃クリアランス)が確保されている。仮にこの隙間がないとすると僅かな製造公差によって切断刃25とシャー刃19とが干渉し、それにより切断刃25が下降できなくなってしまう虞があるからである。
【0025】
切断刃25は摺動部材14に一体形成されており、本実施形態の成形装置1では切断刃25が摩耗した場合には摺動部材14ごと交換できるように構成されている。
また、切断刃25はシャー刃19よりも摩耗し易く構成されている。具体的には例えば、切断刃25は焼き入れされていない鋼であり、シャー刃19は焼き入れされている鋼である。切断刃25をシャー刃19よりも軟質にすると、切断刃25が摩耗することにより、シャー刃19にかかる負荷が低減される。これによりシャー刃19が摩耗し難くなる。シャー刃19が摩耗した場合には固定型13ごと交換しなければならないので、シャー刃19が摩耗し難くなると固定型13ごとの交換回数を低減できる。また、刃の交換は摺動部材14だけ行えばよく、交換作業が容易になる。
【0026】
(2)トリムボードの成形
一次成形工程では、繊維マットを本来のトリムボード11よりも大きめの寸法で切断することにより繊維基材11を形成する。
加熱工程では、一次成形によって形成された繊維基材11を再度ポリプロピレンが溶融軟化する程度に加熱する。
【0027】
二次成形工程では、加熱された繊維基材11の外縁部を摺動部材14と押圧部材16とで狭持する狭持工程と、繊維基材11を圧縮成形して所定形状のトリムボード11に成形する圧縮成形工程と、圧縮成形したトリムボード11の不要部を切断する切断工程とが行われる。以下、二次成形工程について説明する。
【0028】
図5〜図8は成形装置1及びトリムボード(繊維基材)11の断面の一部を示す模式図であって、二次成形工程を時系列で示す模式図である。
二次成形工程では、初めに図5に示すように加熱工程で加熱された繊維基材11を固定型13上にセットする。このとき繊維基材11は図示するように外縁部の一部11cが成形型からはみ出る。なお、繊維基材11は外縁部が全周に亘って成形型からはみ出す構成であってもよいし、外縁部のうち一部のみがはみ出す構成であってもよい。
【0029】
次に、図6に示すように摺動部材14を下方に移動させ、摺動部材14と押圧部材16とによって、繊維基材11の外縁部のうち成形型からはみ出したはみ出し部分11cを狭持する。
次に、図7に示すように可動型12を下方に移動させて型締めする。これにより一次成形した繊維基材11が圧縮成形され、所定の凹凸形状を有するトリムボード11に成形される。このとき、トリムボード11ははみ出し部分11cが摺動部材14と押圧部材16とによって狭持されていることにより、張った状態で圧縮成形される。これによりトリムボード11にしわが発生することを低減しつつ圧縮成形することができる。
【0030】
次に、図8に示すように、第2の駆動装置15を作動させて摺動部材14を下方に移動させる。摺動部材14を下方に移動させると押圧部材16もコイルばね17の付勢力に抗して下方に移動する。そして、摺動部材14を下方に移動させると、摺動部材14に設けられている切断刃25と固定型13に設けられているシャー刃19とによる剪断によって、はみ出し部分11cが切断される。これによりトリムボード11が所定形状に成形される。
【0031】
(3)実施形態の効果
本実施形態の効果を、圧縮成形の際に不要部の切断を行う比較例と比較しつつ説明する。
図9A〜図9Dは比較例の成形工程を時系列で示す模式図であって、図9Aは型締め前、図9B及び図9Cは型締め中、図9Dは型締め状態を示している。図9A〜図9Dでは、可動型30と固定型31とで繊維基材32を圧縮成形する際に、切断刃34及び切断刃35によって繊維基材32の不要部36を切断する。
【0032】
図9Eは比較例の圧縮成形によって成形された繊維基材32の端末を示す模式図である。比較例では圧縮成形の際に不要部36の切断を行うので、繊維基材32の温度が高い状態で切断することになる。繊維基材32の温度が高いと繊維基材32が相対的に軟化しており、切断の際(例えば図9Dの破線で示す円38で示す状態になる際)に繊維基材32の端末が切断刃34に引き摺られ易くなる。その結果、図9Eに示すようなバリ37が発生し易くなる。
【0033】
これに対し、本発明の実施形態1に係る繊維基材の成形方法によると、トリムボード11の外縁部のうち成形型からはみ出しているはみ出し部分11cの切断を、圧縮成形の際ではなく、圧縮成形後に行う。圧縮成形後は圧縮成形の際に比べてトリムボード11の温度が低下しているのでトリムボード11は相対的に硬化しており、切断の際にトリムボード11の端末が切断刃25に引き摺られ難くなる。トリムボード11の端末が切断刃25に引き摺られ難くなると、トリムボード11の端末にバリが発生し難くなる。よってこの発明によると、トリムボード11の圧縮成形と切断とを行う際のバリの発生を抑制できる。この結果、バリの除去作業が不要となり、生産性の低下を低減できる。
【0034】
更に、実施形態1に係る繊維基材の成形方法によると、成形型を型締めしたままの状態で切断するので、型開きした後に切断する場合に比べて効率よく切断できる。例えば型開きした後に切断する場合は、トリムボード11が動かないよう何らかの手段でトリムボード11を固定し直して切断する必要がある。これに対し、成形型を型締めしたままの状態で切断すると、成形型によってトリムボード11が固定されているので、改めて固定する作業は不要であり、効率よく切断できる。
【0035】
更に、実施形態1に係る繊維基材の成形方法によると、摺動部材14と押圧部材16とで外縁部を狭持することにより、トリムボード11を張った状態で圧縮成形することができ、トリムボード11にしわが発生することを抑制できる。
【0036】
更に、実施形態1に係る繊維基材の成形方法によると、トリムボード11の温度が低下しているので、ポリプロピレンが溶けて切断刃25とシャー刃19との隙間に入り込み難い。これにより、ポリプロピレンが隙間に入り込むことによる切断能力の低下を低減できる。
【0037】
また、実施形態1に係る成形装置1によると、切断刃25を移動させる第2の駆動装置15を、可動型12を移動させて型締めする図示しない第1の駆動装置とは別に有している。これにより、はみ出し部分11cを切断する工程を、可動型12と固定型13とを型締めしてトリムボード11を圧縮成形する工程の後に独立して行うことができる。圧縮成形後は圧縮成形の際に比べてトリムボード11の温度が低下しているので、トリムボード11の端末にバリが発生し難くなる。
【0038】
更に、実施形態1に係る成形装置1によると、切断刃25と摺動部材14とを一体に形成しているので、切断刃25の移動と摺動部材14の移動とを第2の駆動手段で行うことができ、摺動部材14を移動させるための手段を別途備える場合に比べて成形装置1の構成を簡素化できる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施形態では車両のドアを車室内側から覆うトリムボード11を成形する場合を例に説明したが、車両のピラーを車室内側から覆うピラーガーニッシュ、シートバックボード、パッケージトレイ、クォータトリム、デッキサイドトリムなどの車両用内装材の成形に本発明を適用してもよい。
また、本発明の成形方法は車両に用いられる成形品の成形に限定されず、繊維基材を素材として圧縮成形と切断工程とを経て成形される建材、家具などの成形品に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る繊維基材の成形装置を型開きした状態の模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係る繊維基材の成形装置を型締めした状態の模式図。
【図3】本発明の一実施形態に係る第1型及び摺動部材を上方から見た模式図。
【図4】本発明の一実施形態に係る固定刃及び切断刃を拡大して示す模式図。
【図5】本発明の一実施形態に係る成形装置及び繊維基材の断面の模式図。
【図6】本発明の一実施形態に係る成形装置及び繊維基材の断面の模式図。
【図7】本発明の一実施形態に係る成形装置及び繊維基材の断面の模式図。
【図8】本発明の一実施形態に係る成形装置及び繊維基材の断面の模式図。
【図9A】比較例の成形工程を示す模式図。
【図9B】比較例の成形工程を示す模式図。
【図9C】比較例の成形工程を示す模式図。
【図9D】比較例の成形工程を示す模式図。
【図9E】比較例によって生じたバリを示す模式図。
【符号の説明】
【0041】
1…繊維基材の成形装置
11…トリムボード(繊維基材)
12…可動型(第1型)
13…固定型(第2型)
14…摺動部材
15…第2の駆動装置(第2の駆動手段)
16…押圧部材
17…コイルばね(付勢手段)
19…シャー刃(固定刃)
20…外周面(繊維基材を圧縮する面に連なる側面)
21…上端面(繊維基材を圧縮する面)
22…外周面(成形型の側面)
25…切断刃
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された繊維基材を当該繊維基材の外縁部の少なくとも一部が成形型からはみ出している状態で圧縮成形する圧縮成形工程と、
前記圧縮成形工程の後、前記成形型を型締めしたままの状態で、前記繊維基材の前記成形型からはみ出しているはみ出し部分を切断刃により切断する切断工程と、
を含むことを特徴とする繊維基材の成形方法。
【請求項2】
前記はみ出し部分を狭持手段によって狭持する狭持工程を更に含み、
前記圧縮成形工程において、前記はみ出し部分が前記狭持手段によって狭持されている状態で圧縮成形することを特徴とする請求項1に記載の繊維基材の成形方法。
【請求項3】
繊維基材を圧縮成形する成形装置であって、
第1型と第2型とを有する成形型と、
前記第1型又は前記第2型の少なくとも一方の型を他方の型に向けて移動させることにより前記第1型と前記第2型とを型締めさせる第1の駆動手段と、
切断刃と、
前記切断刃を移動させる第2の駆動手段と、
を備え、前記第2の駆動手段は、前記第1型と前記第2型とが型締めされた状態で前記切断刃を移動させ、前記繊維基材の外縁部のうち前記成形型からはみ出しているはみ出し部分を前記切断刃により切断することを特徴とする繊維基材の成形装置。
【請求項4】
前記切断刃が一体に設けられ前記成形型に対して摺動する摺動部材と、
前記はみ出し部分を間に挟んで前記摺動部材とは逆側になる位置に配置されている押圧部材と、
前記押圧部材を前記摺動部材に向けて付勢する付勢手段と、
を有し、前記摺動部材と前記押圧部材とにより前記はみ出し部分を狭持する狭持手段を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の繊維基材の成形装置。
【請求項5】
前記切断刃は交換可能であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の繊維基材の成形装置。
【請求項6】
前記第1型又は前記第2型のいずれか一方の型は前記繊維基材を圧縮する面と当該面に連なる側面とで形成される稜線部に前記切断刃と協働して前記はみ出し部分を剪断する固定刃が形成されており、
前記切断刃は前記固定刃よりも軟質であることを特徴とする請求項5に記載の繊維基材の成形装置。
【請求項1】
加熱された繊維基材を当該繊維基材の外縁部の少なくとも一部が成形型からはみ出している状態で圧縮成形する圧縮成形工程と、
前記圧縮成形工程の後、前記成形型を型締めしたままの状態で、前記繊維基材の前記成形型からはみ出しているはみ出し部分を切断刃により切断する切断工程と、
を含むことを特徴とする繊維基材の成形方法。
【請求項2】
前記はみ出し部分を狭持手段によって狭持する狭持工程を更に含み、
前記圧縮成形工程において、前記はみ出し部分が前記狭持手段によって狭持されている状態で圧縮成形することを特徴とする請求項1に記載の繊維基材の成形方法。
【請求項3】
繊維基材を圧縮成形する成形装置であって、
第1型と第2型とを有する成形型と、
前記第1型又は前記第2型の少なくとも一方の型を他方の型に向けて移動させることにより前記第1型と前記第2型とを型締めさせる第1の駆動手段と、
切断刃と、
前記切断刃を移動させる第2の駆動手段と、
を備え、前記第2の駆動手段は、前記第1型と前記第2型とが型締めされた状態で前記切断刃を移動させ、前記繊維基材の外縁部のうち前記成形型からはみ出しているはみ出し部分を前記切断刃により切断することを特徴とする繊維基材の成形装置。
【請求項4】
前記切断刃が一体に設けられ前記成形型に対して摺動する摺動部材と、
前記はみ出し部分を間に挟んで前記摺動部材とは逆側になる位置に配置されている押圧部材と、
前記押圧部材を前記摺動部材に向けて付勢する付勢手段と、
を有し、前記摺動部材と前記押圧部材とにより前記はみ出し部分を狭持する狭持手段を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の繊維基材の成形装置。
【請求項5】
前記切断刃は交換可能であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の繊維基材の成形装置。
【請求項6】
前記第1型又は前記第2型のいずれか一方の型は前記繊維基材を圧縮する面と当該面に連なる側面とで形成される稜線部に前記切断刃と協働して前記はみ出し部分を剪断する固定刃が形成されており、
前記切断刃は前記固定刃よりも軟質であることを特徴とする請求項5に記載の繊維基材の成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【公開番号】特開2010−23466(P2010−23466A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191202(P2008−191202)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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