説明

繊維強化樹脂製部品とその製造方法

【課題】 部品に負角部分があっても型抜きが可能な繊維強化樹脂製部品とその製造方法の提供。
【解決手段】(1)外壁11と空間部12とを有し、空間部12のうち負角となる部分13にはフォームコア15が配置されており、フォームコア15に沿って補強リブ18が形成されている繊維強化樹脂製部品10。負角部分13がなくなり、型を抜くことが可能になる。(2)繊維強化樹脂製部品10がスプリングサポートであり、補強リブ18の一端がスプリング座の中心線上にある。スプリング荷重をメンバー19に伝達できる。(3)スプリング座には、カラーナットが埋め込まれている。(4)型に第1の繊維強化樹脂製シートを貼付し、負角部分13にフォームコア15をセットし、第2の繊維強化樹脂製シートを貼付し、第1の繊維強化樹脂製シートと第2の繊維強化樹脂製シートを熱硬化させる、繊維強化樹脂製部品10の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂(FRP)製部品とその製造方法に関する。本発明のFRP製部品は、たとえば車両の懸架装置のスプリングサポートに適用できる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2は、車両の懸架装置のフロントサスペンションのスプリング上部を支持するスプリングサポートを開示している。
【特許文献1】特開平11−91621号公報
【特許文献2】2001−233246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図14、図15に示すように、スプリングサポート1を型成形でFRPにて作製する場合、車両メンバー2の中心を通る線3とスプリング座4の中心を通る線5がオフセットしていると、スプリングサポート1の内部空間6に型抜き方向に負角となる部分7が形成され、負角部分7に型が延びて進入すれば型抜きができなくなることがある。
その場合は、
(イ)スプリングサポートを一体部品で作製することが困難になり部品点数増とスプリングサポートの剛性低下を招くという問題が生じるか、あるいは
(ロ)スプリングサポートの内部空間の全体にフォームコアを入れて対応しなければならなくなり、その結果、重量増を招くという問題が生じる。
【0004】
本発明の目的は、繊維強化樹脂製部品(たとえば、スプリングサポート等、ただし、スプリングサポートに限るものではない)を型成形で作製する場合、部品の内部空間に型抜き方向に負角となる部分があっても、
(i)型抜きが可能で、しかも
(ii)(イ)繊維強化樹脂製部品を一体部品で作製することが可能、あるいは、(ロ)繊維強化樹脂製部品の内部空間の一部にのみフォームコアを入れれば済む、繊維強化樹脂製部品とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する、または上記目的を達成する本発明はつぎのとおりである。
(1) 外壁と、該外壁の内部に形成され一部に型を抜く時に負角となる部分がある空間部とを有する繊維強化樹脂製部品であって、前記空間部のうち型を抜く時に負角となる部分にはフォームコアが配置されており、前記フォームコアの、前記空間部のうち前記フォームコアが配置されていない部分に対向する面に沿って前記外壁の2壁面間にわたって延びる補強リブが形成されている繊維強化樹脂製部品。
(2) 前記繊維強化樹脂製部品が車両の懸架装置のスプリングサポートであり、該スプリングサポートが取り付けられる車両メンバーの中心と該スプリングサポートのスプリング座の中心とが互いにオフセットしており、前記補強リブの一端がスプリング座の中心を通るスプリング中線上に位置する(1)記載の繊維強化樹脂製部品。
(3) 前記繊維強化樹脂製部品の前記スプリング座には、カラーナットが埋め込まれている(2)記載の繊維強化樹脂製部品。
(4) 外壁と、該外壁の内部に形成され一部に型を抜く時に負角となる部分がある空間部とを有する繊維強化樹脂製部品の製造方法であって、
前記型に第1の繊維強化樹脂製シートを貼付する第1の工程と、
前記第1の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記型の、前記空間部の前記型を抜く時に負角となる部分に面する前記第1の繊維強化樹脂製シート部分の外面にフォームコアをセットする第2の工程と、
前記第1の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記型と前記フォームコアとの両方を覆うように第2の繊維強化樹脂製シートを貼付する第3の工程と、
前記第2の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記第1の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記型と前記フォームコアを、バッグで覆ってバッグ内の圧力を低減することにより、前記第2の繊維強化樹脂製シートを前記第1の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記型と前記フォームコアに密着させる第4の工程と、
前記バッグの外側から熱を加えて前記第1の繊維強化樹脂製シートと前記第2の繊維強化樹脂製シートを熱硬化させるとともに、前記第1の繊維強化樹脂製シートと前記第2の繊維強化樹脂製シートを一体化させる第5の工程と、
前記バッグを除去し前記型を抜く第6の工程と、
を有する繊維強化樹脂製部品の製造方法。
(5) 前記繊維強化樹脂製部品が車両の懸架装置のスプリングサポートであり、前記繊維強化樹脂製部品の前記スプリング座にカラーナットを埋め込む第7の工程をさらに有する(4)記載の繊維強化樹脂製部品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)の繊維強化樹脂製部品によれば、部品内部空間のうち型を抜く時に負角となる部分にフォームコアを配置し、フォームコアの、内部空間のフォームコア配置部以外の部分に対向する面に沿って外壁の2壁面間にわたって延びる補強リブを形成したので、負角部分がフォームコアで埋められてなくなり、型抜きが可能になる。
また、繊維強化樹脂製部品が、補強リブと外壁間にフォームコアを内蔵した一体部品となり、繊維強化樹脂製部品を一体部品で作製することが可能となる。さらに、部品内部空間のうち型を抜く時に負角となる部分のみにフォームコアを配置するだけで済み、その他の部分は空間としたので、内部空間全域にフォームコアを配置する場合に比べて、繊維強化樹脂製部品を軽量化できる。
【0007】
上記(2)の繊維強化樹脂製部品では、繊維強化樹脂製部品がスプリングサポートであり、車両メンバーの中心とスプリングサポートのスプリング座の中心とが互いにオフセットしているので、スプリングサポート内部空間に、型抜き方向に負角部分が生じるが、上記(1)の適用があるため、型抜き可能である。
また、補強リブの一端がスプリング座の中心を通るスプリング中線上に位置するため、スプリングからの荷重が補強リブとスプリングサポート外壁を介して車両メンバーによって受けられる。その結果、スプリングサポートの荷重伝達経路の剛性、強度が向上する。
【0008】
上記(3)の繊維強化樹脂製部品によれば、繊維強化樹脂製部品のスプリング座には、カラーナットが埋め込まれているので、カラーナットを金属製としておくことにより、アタッチメントをスプリングサポートにボルト締めする時に、ナットのネジ部が破損しないで済む。その結果、アタッチメントの、スプリングサポートへの取付け部の構造上の信頼性が向上する。
【0009】
上記(4)の繊維強化樹脂製部品の製造方法によれば、第1〜第6の工程を順に実行することにより、無理なく、繊維強化樹脂製部品の空間部分の負角部分にフォームコアを埋設できるとともに、フォームコアの空間部分対向面に沿って補強リブを形成でき、上記(1)の繊維強化樹脂製部品を製造できる。
また、上記(5)の繊維強化樹脂製部品の製造方法によれば、第7の工程を有するので、上記(3)の繊維強化樹脂製部品を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の繊維強化樹脂製部品とその製造方法を、図1〜図13を参照して説明する。
【0011】
まず、本発明の繊維強化樹脂製部品10を、図1〜図7を参照して説明する。
図1〜図7に示すように、本発明の繊維強化樹脂(FRP)製部品10は、外壁11と、該外壁11の内部に形成された空間部12とを有する繊維強化樹脂製部品である。外壁11は一端が開放した袋状の形状を有し、袋状の内部は空間部12となっている。繊維強化樹脂製部品10の製造工程では、外壁11の一端の開放部26から部品10を成形するための型14(図8〜図13参照)が空間部12に出し入れされる。繊維強化樹脂は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)であってもよいし、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)であってもよい。繊維強化樹脂の樹脂は、熱硬化性樹脂であることが望ましい。ただし、熱硬化性樹脂に限るものではない。繊維強化樹脂製部品10の外壁11の内部に形成された空間部12は、空間部12の一部に、型14を抜く時に型抜き方向に負角となる部分(型抜きができない部分)13を有する。
【0012】
空間部12のうち型14を抜く時に負角となる部分13には、フォームコア15が配置されている。フォームコア15は、以下に述べる補強リブを形成する時に繊維強化樹脂シートを貼付するためのコア(中子)になる部材である。フォームコア15は、金属部品に比べて軽量であれば、材料は限定されないが、たとえば、発泡樹脂等から構成されることが好ましい。
【0013】
フォームコア15の、空間部12のうちフォームコア15が配置されていない部分(空間のままに残された部分)に対向する面15aに沿って、外壁11の2壁面(外壁11の、互いに離れた2つの部位の内壁面)16、17間にわたって延びる補強リブ18が形成されている。補強リブ18は繊維強化樹脂製であり、望ましくは、外壁11と熱融着できる繊維強化樹脂製であり、特に望ましくは、外壁11と同じ種類の繊維強化樹脂製である。補強リブ18の繊維強化樹脂は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)であってもよいし、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)であってもよい。補強リブ18の繊維強化樹脂の樹脂は、熱硬化性樹脂であることが望ましい。ただし、熱硬化性樹脂に限るものではない。
【0014】
補強リブ18の両端部が接続する外壁11の2壁面16、17のうち一つの壁面16は、袋状の外壁11の底壁部(袋状の外壁11の開放部26の対向壁)に位置し、他の壁面17は、外壁11の負角となる部分13の始まり部(袋状の外壁11の開放部に近い側で外壁11の底壁部から遠い側の始まり部)かその近傍に位置する。補強リブ18は、2壁面16、17間にわたって、直線状またはほぼ直線状に延びる。
【0015】
図1に示すように、繊維強化樹脂製部品10は、たとえば車両の懸架装置のスプリングサポートが繊維強化樹脂製である場合の、その繊維強化樹脂製のスプリングサポート10(繊維強化樹脂製部品と同じであるためスプリングサポートにも符号10を付す)である。ただし、繊維強化樹脂製部品10はスプリングサポート10に限るものではない。
【0016】
スプリングサポート10は開放部側端部で車両メンバー19に固定される。スプリングサポート10の空間部12の底壁部22は懸架装置のスプリング25のスプリング座22(図1の例では、底壁部22と同じ部分であるためスプリング座にも符号22を付す)となる。
【0017】
スプリングサポート10が取り付けられる車両メンバー19の断面の中心20を通る中心線21と該スプリングサポート10のスプリング座22の中心23を通る中心線24(スプリング25の中心線24と同じ)とが互いに中心線24と直角方向に互いにオフセットしている。このオフセットをもつスプリングサポート10では、スプリングサポート10の空間部12のうち開放部26の直下から横方向にはみ出した部分が型14を抜く時に型抜き方向に負角となる部分13を構成する。
【0018】
スプリングサポート10の補強リブ18の一端は、スプリングサポート10のスプリング座22の中心23を通るスプリング中心線24上に位置し、スプリングサポート10の外壁11のスプリング座22の中心を構成する壁面16と結合している。補強リブ18の他端は、スプリングサポート10の外壁11の、負角となる部分13の始まり部の壁面17と結合している。
【0019】
図3に示すスプリングサポート10は、図1に示すスプリングサポート10の空間部12の底壁部22の下方に、さらに、フォームコア15Aを配置し、このフォームコア15Aを外壁11の繊維強化樹脂と同じ種類の繊維強化樹脂製の外壁11Aで囲い、外壁11Aの下壁をスプリング座22Aとし、スプリング座22Aのフォームコア15A側に金属製のカラーナット27を埋設したものである。この構造によって、金属製アタッチメント28(図1)の金属製のカラーナット27への螺合取付けの構造上の信頼性を向上させている。カラーナット27の中心線は、スプリング25の中心線24上にある。カラーナット27の上面は、スプリングサポート10の空間部12の底壁部22の下面に接触していてもよいし、あるいは底壁部22の下面から離れていて、底壁部22の下面とカラーナット27の上面との間にフォームコア15Aが存在していてもよい。
【0020】
つぎに、本発明の繊維強化樹脂製部品10の製造方法を、図8〜図13、および図1〜図7を参照して説明する。
本発明の繊維強化樹脂製部品10の製造方法は、外壁11と、該外壁11の内部に形成され一部に型を抜く時に負角となる部分13がある空間部12とを有する繊維強化樹脂製部品の製造方法である。
【0021】
本発明の繊維強化樹脂製部品10の製造方法は、以下の第1〜第6の工程を第1〜第6の工程順に実行する方法からなる。図3のようにカラーナット27を埋め込む場合は、本発明の繊維強化樹脂製部品10の製造方法は、さらに第7の工程を有する。
【0022】
第1の工程では、図8に示すように、型14に第1の繊維強化樹脂製シート30(熱硬化後、外壁11および補強リブ18を構成するシート)を貼付する。シート30は、型14の表面に複数層または単層、貼付する。型14は、空間部12のうち型14を抜く時に負角となる部分13には形成されていない。そのため、シート30の熱硬化後、型14を、外壁11と干渉することなく、空間部12から抜くことができる。
【0023】
第2の工程では、図9に示すように、第1の繊維強化樹脂製シート30を貼付した型14の、空間部12のうち型14を抜く時に負角となる部分13に面する、第1の繊維強化樹脂製シート部分31(補強リブ18となる部分)の外面にフォームコア15をセットし、仮止めする。フォームコア15は、空間部12のうち型14を抜く時に負角となる部分13を埋める。フォームコア15は、フォームコア15の外面に繊維強化樹脂製シートが貼付される時のコア(中子)となる。
【0024】
第3の工程では、図10に示すように、第1の繊維強化樹脂製シートを30貼付した型14と、フォームコア15との両方を覆うように、第2の繊維強化樹脂製シート32を貼付する。第2の繊維強化樹脂製シート32は、シート30のうち熱硬化後補強リブ18を構成する部分31には、該部分31にフォームコア15がセットされているため、貼付されない。
【0025】
第4の工程では、図11に示すように、第2の繊維強化樹脂製シート32を貼付した、第1の繊維強化樹脂製シート30を貼付した型14とフォームコア15を、バッグ29で覆ってバッグ29内の圧力を低減することにより、第2の繊維強化樹脂製シート32を、第1の繊維強化樹脂製シート30を貼付した型14とフォームコア15に密着させる。
【0026】
第5の工程では、図12に示すように、バッグ29の外側から熱を加えて第1の繊維強化樹脂製シート30と補強リブ31と第2の繊維強化樹脂製シート32を熱硬化させるとともに、第1の繊維強化樹脂製シート30と第2の繊維強化樹脂製シート32を互いに一体化させ、外壁11と補強リブとなる部分31を作製する。型14の外面部位では、第1の繊維強化樹脂製シート30と第2の繊維強化樹脂製シート32とが外壁11を構成し、フォームコア15の外面部位では、第2の繊維強化樹脂製シート32のみが外壁11を構成する。型14とフォームコア15の間の部位は、第1の繊維強化樹脂製シート30からなる補強リブ18が存在する。
【0027】
第6の工程では、図13に示すように、バッグ29を除去し、型14を抜いて、外壁11内に空間部12を形成する。これによって、図1の繊維強化樹脂製部品10が製造される。この繊維強化樹脂製部品10を車両のメンバー19に取付け、スプリング25の座部材とすると、図1の車両の懸架装置のスプリングサポート10となる。
【0028】
繊維強化樹脂製部品10が図3に示す車両の懸架装置のスプリングサポートである場合は、繊維強化樹脂製部品10の製造方法は、さらに第7の工程を有する。
第7の工程では、スプリングサポート10のスプリング座22にカラーナット27を埋め込む。さらに詳しくは、図3のスプリングサポート10の空間部12の底壁部22の下方に、さらに、フォームコア15Aを配置し、このフォームコア15Aを図3のスプリングサポート10の外壁11の繊維強化樹脂と同じ種類の繊維強化樹脂製の外壁11Aで囲い、外壁11Aの下壁をスプリング座22Aとし、スプリング座22Aのフォームコア15A側に金属製のカラーナット27を埋設する。そして、外壁11Aの下壁の外側から加熱して、外壁11Aを硬化させるとともに、外壁11Aと図1のスプリングサポート10の外壁11とを熱で一体化させる。
【0029】
上記のように、第6の工程の後に第7の工程を実行してもよいが、それに代えて、第7の工程を第3の工程と第4の工程との間においてもよい。その場合は、第7の工程の後に第4の工程のバッグ29をかけてバッグ29内を低圧にし、その後第5の工程を実行して外壁11、11A、補強リブ18を熱硬化させるとともに外壁11と外壁11Aを一体化させ、ついで第6の工程の型抜きを行う。
【0030】
つぎに、本発明の繊維強化樹脂製部品10とその製造方法の作用、効果を説明する。
図1の繊維強化樹脂製部品10では、部品内部空間12のうち型14を抜く時に負角となる部分13にフォームコア15を配置し、フォームコア15の、内部空間12のフォームコア配置部以外の部分に対向する面15aに沿って外壁11の2壁面16、17間にわたって延びる補強リブ18を形成したので、負角部分13がフォームコア15で埋められてなくなり、型抜きが可能になる。
【0031】
また、繊維強化樹脂製部品10が、補強リブ18と外壁11間にフォームコア15を内蔵した一体部品となり、繊維強化樹脂製部品10を単一の一体部品で作製することが可能となる。さらに、部品内部空間12のうち型を抜く時に負角となる部分13のみにフォームコア15を配置するだけで済み、その他の部分は空間のまま残したので、内部空間12の全域にフォームコア15を配置する場合に比べて、繊維強化樹脂製部品10を軽量化できる。
【0032】
繊維強化樹脂製部品10がスプリングサポートであり、車両メンバー19の中心20を通る中心線21とスプリングサポート10のスプリング座22の中心23を通る中心線24とが互いにオフセットしている場合は、スプリングサポート内部空間12に、型抜き方向に負角部分13が生じるが、負角部分13がフォームコア15で埋められるため、型抜きが可能になる。
【0033】
補強リブ18の一端がスプリング座22の中心23を通るスプリング中線24上に位置する場合は、スプリング25からの荷重が補強リブ18とスプリングサポート外壁11(フォームコア15の外面に沿った部分の外壁部分)とから構成される三角形部(三角形のため剛性が高い部分)を介して車両メンバー19によって受けられる。その結果、スプリングサポート10の荷重伝達経路の剛性、強度が向上する。
【0034】
図3のように、繊維強化樹脂製部品10のスプリング座22Aに、カラーナット27が埋め込まれている場合は、カラーナット27を金属製としておくことにより、アタッチメント28(図1に示す)をスプリングサポート10にボルト締めする時に、ナット27のネジ部が破損しないで済む。その結果、アタッチメント28のスプリングサポート10への取付け部の構造上の信頼性が向上する。
【0035】
本発明の繊維強化樹脂製部品10の製造方法では、第1〜第6の工程を順に実行することにより、無理なく、繊維強化樹脂製部品10の空間部分12の負角部分13にフォームコア15を埋設できるとともに、フォームコア15の空間部分対向面15aに沿って補強リブ18を形成できる。補強リブ18とフォームコア15の外面の外壁部分11aで三角形の高剛性部分を形成する場合は、スプリングサポート10の荷重伝達経路の剛性、強度を高めることができ、車両懸架装置のスプリング25からの荷重を円滑に車両メンバー19で受けることができる。
【0036】
また、カラーナット27を埋設する第7の工程を有する場合は、図3の繊維強化樹脂製部品10を製造できる。繊維強化樹脂製部品10のスプリング座22Aに、カラーナット27が埋め込まれるので、カラーナット27を金属製としておくことにより、アタッチメント28(図1に示す)をスプリングサポート10にボルト締めする時に、ナット27のネジ部が破損しないで済む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例の繊維強化樹脂製部品10を、車両メンバーと懸架装置のスプリングとの間に配置した場合の、断面図である。
【図2】図1の繊維強化樹脂製部品10の側面図である。
【図3】本発明の実施例の繊維強化樹脂製部品10にカラーナットを埋設した場合の、繊維強化樹脂製部品10の断面図である。
【図4】図3の繊維強化樹脂製部品10の斜視図である。
【図5】図4の繊維強化樹脂製部品10の、斜め上方から見た斜視図である。
【図6】図4の繊維強化樹脂製部品10を上方から見た平面図である。
【図7】図4の繊維強化樹脂製部品10を側面から見た側面図である。
【図8】図1の繊維強化樹脂製部品10の製造方法の第1の工程にある、繊維強化樹脂製部品10の製造途中段階の断面図である。
【図9】図1の繊維強化樹脂製部品10の製造方法の第2の工程にある、繊維強化樹脂製部品10の製造途中段階の断面図である。
【図10】図1の繊維強化樹脂製部品10の製造方法の第3の工程にある、繊維強化樹脂製部品10の製造途中段階の断面図である。
【図11】図1の繊維強化樹脂製部品10の製造方法の第4の工程にある、繊維強化樹脂製部品10の製造途中段階の断面図である。
【図12】図1の繊維強化樹脂製部品10の製造方法の第5の工程にある、繊維強化樹脂製部品10の製造途中段階の断面図である。
【図13】図1の繊維強化樹脂製部品10の製造方法の第6の工程にある、繊維強化樹脂製部品10の製造途中段階の断面図である。
【図14】従来の負角のあるスプリングサポートの斜視図である。
【図15】図14の負角のあるスプリングサポートの断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 繊維強化樹脂製部品
11 外壁
11A 外壁
12 空間部
13 型抜き方向に負角となる部分
14 型
15 フォームコア
15a フォームコアの空間部対向面
15A フォームコア
16、17 外壁の2壁面(外壁の、互いに離れた2つの部位の内壁面)
18 補強リブ
19 車両メンバー
20 車両メンバーの断面の中心
21 中心20を通る中心線
22 スプリング座(底壁部)
22A スプリング座
23 スプリング座の中心
24 中心23を通る中心線
25 スプリング
26 開放部
27 カラーナット
28 アタッチメント
29 バッグ
30 第1の繊維強化樹脂製シート
31 第1の繊維強化樹脂製シートのうち補強リブとなる部分
32 第2の繊維強化樹脂製シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁と、該外壁の内部に形成され一部に型を抜く時に負角となる部分がある空間部とを有する繊維強化樹脂製部品であって、前記空間部のうち型を抜く時に負角となる部分にはフォームコアが配置されており、前記フォームコアの、前記空間部のうち前記フォームコアが配置されていない部分に対向する面に沿って前記外壁の2壁面間にわたって延びる補強リブが形成されている繊維強化樹脂製部品。
【請求項2】
前記繊維強化樹脂製部品が車両の懸架装置のスプリングサポートであり、該スプリングサポートが取り付けられる車両メンバーの中心と該スプリングサポートのスプリング座の中心とが互いにオフセットしており、前記補強リブの一端がスプリング座の中心を通るスプリング中線上に位置する請求項1記載の繊維強化樹脂製部品。
【請求項3】
前記繊維強化樹脂製部品の前記スプリング座には、カラーナットが埋め込まれている請求項2記載の繊維強化樹脂製部品。
【請求項4】
外壁と、該外壁の内部に形成され一部に型を抜く時に負角となる部分がある空間部とを有する繊維強化樹脂製部品の製造方法であって、
前記型に第1の繊維強化樹脂製シートを貼付する第1の工程と、
前記第1の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記型の、前記空間部の前記型を抜く時に負角となる部分に面する前記第1の繊維強化樹脂製シート部分の外面にフォームコアをセットする第2の工程と、
前記第1の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記型と前記フォームコアとの両方を覆うように第2の繊維強化樹脂製シートを貼付する第3の工程と、
前記第2の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記第1の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記型と前記フォームコアを、バッグで覆ってバッグ内の圧力を低減することにより、前記第2の繊維強化樹脂製シートを前記第1の繊維強化樹脂製シートを貼付した前記型と前記フォームコアに密着させる第4の工程と、
前記バッグの外側から熱を加えて前記第1の繊維強化樹脂製シートと前記第2の繊維強化樹脂製シートを熱硬化させるとともに、前記第1の繊維強化樹脂製シートと前記第2の繊維強化樹脂製シートを一体化させる第5の工程と、
前記バッグを除去し前記型を抜く第6の工程と、
を有する繊維強化樹脂製部品の製造方法。
【請求項5】
前記繊維強化樹脂製部品が車両の懸架装置のスプリングサポートであり、前記繊維強化樹脂製部品の前記スプリング座にカラーナットを埋め込む第7の工程をさらに有する請求項4記載の繊維強化樹脂製部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−37157(P2008−37157A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210817(P2006−210817)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】