説明

繊維強化樹脂製配管材の製造方法

【課題】管端に差口を有するパイプ継手を、インフュージョン成形法を用いて生産性よく製造することができる繊維強化樹脂製配管材の製造方法を提供する。
【解決手段】成形型1の型面に沿う筒状をした強化繊維層2を、気密性フィルム5で覆い、この気密性フィルム5と成形型1との間に形成される気密空間S内に収容し、気密空間S内を大気圧より減圧したのち、強化繊維層2の端部を気密性フィルム5の外側から接続される他の配管材の管端部の内径と略同じ内径をした外径規制型7を装着して外径規制し、減圧状態を保ちながら気密空間S外からマトリックス樹脂を気密空間S内に供給して強化繊維層2に含浸させ、含浸完了後、含浸されたマトリックス樹脂を硬化あるいは固化させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製配管材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化樹脂製配管材は、コア金型に熱硬化性樹脂を含浸したロービングを巻き付けて、かつ、ガラスマットやガラスクロスをハンドレイアップ法で含浸しながら成形する方法が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この成形方法はマトリックス樹脂が含浸された強化繊維を、開放された状態で成形型への巻付けるようになっているため、製造中にスチレン等が揮散するなどといった環境上の問題があり、近年では、環境配慮型の成形方法として真空吸引による減圧環境下で成形を行うインフュージョン成形法等の真空注入成形法が注目されつつある。
【0003】
インフュージョン成形法とは、基本的に、成形型の上に、強化繊維からなる強化繊維層を設け、この強化繊維層の上に、必要に応じて離型シート及び樹脂拡散材を配置した状態で、強化繊維層をバッグフィルムと一般に称される気密性フィルムで覆い、強化繊維層を気密空間内に収容したのち、この気密空間内の空気を吸引排気して気密空間内を減圧状態にする。そして、この減圧状態の気密空間内にマトリックス樹脂を注入して、マトリックス樹脂を強化繊維層に含浸させたのち、マトリックス樹脂を硬化または固化させて成形品を得るようになっている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
例えば、このインフュージョン成形法を利用して、繊維強化樹脂管等の筒状成形品を製造するのに、図4に示すような方法が提案されている。すなわち、この方法は、以下の手順で成形品を製造するようにしている。
(1)円筒状あるいは円柱状をした成形型100の型面に沿ってシート状あるいはテープ状をした強化繊維材料を巻回し、筒状をした強化繊維層200を形成する。
【0005】
(2)この強化繊維層200の周囲に必要に応じて離型布(図示せず)や樹脂拡散媒体(図示せず)を巻いたのち、ホース、スパイラルチューブ等の樹脂注入口を備えた樹脂注入管300と、ホース、スパイラルチューブ等の吸気口を備えた吸気管400とを強化繊維層200を挟むように成形型100に装着する。なお、樹脂注入管300には、マトリックス樹脂Pのタンク310からの樹脂供給管320が接続され、吸気管400には、真空ポンプ(図示せず)に接続される吸気管路410が接続されている。吸気管路410は、途中にドレンタンク420が設けられている。
(3)樹脂注入管300及び吸気管400より成形型100の端部側に、シール用パテ、両面粘着テープ等のシール材500を環状に巻き付けたのち、筒状をした気密性フィルム600によって両側のシール用パテ500部分を含むように成形型100の周囲を囲み、シール材500によって気密性フィルム600と成形型100との間に気密空間Sが形成されるようにシールする。
【0006】
(4)真空ポンプを稼動させて気密空間S内の空気を吸気管400の吸気口から吸引して気密空間S外に排気し、気密空間S内を所定の圧力まで減圧したのち、樹脂供給管320のバルブを開き、マトリックス樹脂Pを気密空間S内に自然圧(大気圧)で供給し、強化繊維層200に含浸させる。
(5)含浸が完了後、吸気及びマトリックス樹脂Pの供給を停止し、マトリックス樹脂Pを硬化あるいは固化させて成形品を得る。
【0007】
しかし、この方法を用いて受口を備えた継手を作製しようとした場合、成形された継手は、内壁面が成形型100の型面に密着した状態でマトリックス樹脂が硬化または固化するため、内壁面は寸法精度のよいものができるのであるが、受口部分と継手本体部分との継ぎ目部分において、内径が大きく変化するために、受口部分と継手本体部分との継ぎ目部分の肉厚の制御が困難で、工業的な生産性に問題がある。
【0008】
さらに、前者の従来のハンドレイアップ成形法及び後者のインフュージョン成形法を利用した方法のいずれにおいても、成形時に外壁面を外側から規制されていないため、差口構造の継手を作製しようとした場合、成形後、削り出し等の後加工を施して差口部分を作製する必要があり、生産性が悪いという問題がある。
他方、短繊維を予め混合した樹脂を、継手形状の金型内に注形あるいは射出して成形する方法もあるが、長繊維の補強に比べて、強度が劣る問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平6−328624号公報
【特許文献2】特開2002−307463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて、管端に差口を有するパイプ継手を、インフュージョン成形法を用いて生産性よく製造することができる繊維強化樹脂製配管材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかる繊維強化樹脂製配管材の製造方法は、筒状または柱状をした成形型の型面に沿う強化繊維からなる筒状をした強化繊維層を、気密性フィルムで覆い、この気密性フィルムと成形型との間に形成される気密空間内に前記強化繊維層を収容し、前記気密空間内を大気圧より減圧したのち、この減圧状態を保ちながら気密空間外からマトリックス樹脂を前記気密空間内に供給して前記強化繊維層に含浸させる工程と、含浸された前記マトリックス樹脂を硬化あるいは固化させる工程と、を備え、他の配管材の管端部に端部が内嵌される繊維強化樹脂製配管材の製造方法であって、前記マトリックス樹脂が硬化あるいは固化する前に、前記強化繊維層の前記他の配管材の管端部に対応する部分を前記気密性フィルムの外側から接続される他の配管材の管端部の内径と略同じ内径をした外径規制型を装着して外径規制し、その後、前記マトリックス樹脂を硬化あるいは固化させることを特徴としている。
【0012】
本発明の製造方法は、特に限定されないが、筒状になった強化繊維層のすべての筒端部をマトリックス樹脂含浸前に外径規制型で規制するとともに、強化繊維層のすべての筒端部側から気密空間内の空気を吸引排気しながら強化繊維層の筒中央部からマトリックス樹脂を供給するようにしてもよい。
【0013】
外径規制型による規制のタイミングは、マトリックス樹脂が硬化あるいは固化する前であれば特に限定されないが、気密空間内を減圧状態にしたのちに、外径規制型を装着する
ことが好ましい。
外径規制型は、特に限定されないが、装着性、脱型性を考慮すると、2つ以上に分割できる割り型や、ばねによって収縮して型締め状態となり、ばね付勢力に抗する力を工具や手で加えることによって拡径して型締めを解除できるワンタッチクリップ等を用いることが望ましい。
外径規制型の素材は、特に問わないが、必要な外径寸法にするために、変形などしない強度が必要である。
【0014】
気密空間内の減圧は、特に限定されないが、例えば、吸気口を有する吸気管を気密空間内に配置するとともに、この吸気管に気密性フィルムの継ぎ目部分等から気密空間内に差し込まれ、真空ポンプなどの減圧ポンプに接続された管やホースの端部を連結させて、この管やホース及び吸気管を介して行うことができる。
減圧時の気密空間内の圧力は、できるだけ低い方が好ましい。すなわち、できるだけ真空に近づける方が強化繊維層への含浸速度が速くなる。
【0015】
気密空間内へのマトリックス樹脂の供給は、特に限定されないが、例えば、注入口を有する樹脂供給管を気密空間内に配置するとともに、この樹脂供給管に気密性フィルムの継ぎ目部分等から気密空間内に差し込まれ、マトリックス樹脂タンクに接続された管やホースの端部を連結させて、この管やホース及び樹脂供給管を介して行うことができる。
なお、マトリックス樹脂タンクから樹脂供給管へのマトリックス樹脂の供給は、気密空間内の減圧による大気圧との圧力差を利用した吸引力だけでの供給で十分であるが、含浸速度を速めるために、マトリックス樹脂タンクに送液ポンプを設け、この送液ポンプよって加圧しながら供給しても構わない。
【0016】
本発明の製造方法で得られる繊維強化樹脂製配管材としては、特に限定されないが、例えば、短管継手、ベント管、エルボ管、レジューサー管、チーズ管などである。
【0017】
本発明において使用される強化繊維としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、塩化ビニル繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、アセテート繊維等の他の有機合成繊維や、金属繊維等の他の無機繊維や、麻や竹などの天然繊維やレーヨン等の再生繊維等が挙げられ、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維が好ましく、コストパフォーマンスを考慮するとガラス繊維がより好ましい。また、これらの繊維は混合して使用してもよい。
また、これらの繊維は、少なくとも一部に連続長繊維が用いられていることが好ましく、ロービング、織布、不織布等、糸状、マット形状、テープ形状に加工したのち、例えば、成形型に巻回することによって強化繊維層を形成することができる。
なお、使用する強化繊維の強度および疎密度は、所望する成形品の強度と肉厚(積層量)に応じて適宜選択される。また、外径規制型が入りやすいように、外径規制をする端部のみ、巻きつけるガラス繊維のテンションを小さくすること、巻き付け数を少なくすること、巻き付けピッチを荒くすることも、効果がある
【0018】
本発明において使用されるマトリックス樹脂としては、特に限定されないが、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシベンゾイル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、酢酸セルロース樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0019】
また、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、予め反応促進剤(触媒や硬化剤)を混合しておき、この反応促進剤の働きによって硬化を進行させることが望ましい。また、反応を促進させるために、成形型とともに、強化繊維層に含浸されたマトリックス樹脂を加熱しても構わない。加熱の方法は、特に限定されないが、例えば、成形型に予め取り付けたヒーターによって加熱や、成形型を加熱炉に入れて、加熱する方法が挙げられる。
【0020】
使用するマトリックス樹脂の含浸時の粘度は、得ようとする配管材のサイズや肉厚により、変わるが、1.0Pa・s以下が好ましく、0.2Pa・s以下がより好ましい。
すなわち、粘度が高すぎるとマトリックス樹脂が強化繊維層に含浸しにくくなり、含浸不良を起こす可能性が高くなる。従って、使用するマトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、供給する樹脂はあらかじめ加温して溶融状態にするとともに、粘度を低下させておくことが必要になる場合がある。
なお、マトリックス樹脂には着色用の顔料や、成形後の耐久性などを考慮し、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを適宜配合してもよい。
【0021】
本発明において用いられる気密性フィルムは、強化繊維層を気密状態に覆うことができれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの樹脂製のものが挙げられ、チューブ状に予め成形されたものを用いることが好ましい。
気密性フィルムと、成形型との間、気密性フィルムと樹脂注入管、吸気管等との間のシールの方法は、特に限定されないが、例えば、粘着テープ、シール用パテなどを利用する方法が挙げられる。
【0022】
また、本発明においては、必要に応じて、気密性フィルムの剥離を促すための離型布や気密空間内に供給されたマトリックス樹脂を拡散流動させて強化繊維層の強化繊維中に素早くかつ均一に含浸できるようにする樹脂拡散媒体を強化繊維層に沿って設けるようにしてもよい。
【0023】
上記離型布としては、特に限定されないが、例えば、樹脂を容易に通す細かい孔を有し、かつマトリックス樹脂との離型性の良いシリコンコーティングされたナイロン布が挙げられる。
上記樹脂拡散媒体は、注入される樹脂が樹脂拡散媒体の隙間を通して、強化繊維層の樹脂拡散媒体に接する面に沿ってマトリックス樹脂を行きわたらせることができれば、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン製の網状のものが挙げられる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明にかかる繊維強化樹脂製配管材の製造方法は、筒状または柱状をした成形型の型面に沿う強化繊維からなる筒状をした強化繊維層を、気密性フィルムで覆い、この気密性フィルムと成形型との間に形成される気密空間内に前記強化繊維層を収容し、前記気密空間内を大気圧より減圧したのち、この減圧状態を保ちながら気密空間外からマトリックス樹脂を前記気密空間内に供給して前記強化繊維層に含浸させる工程と、含浸された前記マトリックス樹脂を硬化あるいは固化させる工程と、を備え、他の配管材の管端部に端部が内嵌される繊維強化樹脂製配管材の製造方法であって、マトリックス樹脂が硬化あるいは固化する前に、前記強化繊維層の前記他の配管材の管端部に対応する部分を前記気密性フィルムの外側から接続される他の配管材の管端部の内径と略同じ内径をした外径規制型を装着して外径規制し、その後、前記マトリックス樹脂を硬化あるいは固化させるようにしたので、管端に差口を有するパイプ継手を、削り出し等の後加工を行わなくても精度よく、かつ、生産性よく製造することができる。
【0025】
また、気密空間内を減圧状態にしたのち、外径規制型を装着するようにすれば、減圧によって強化繊維層が大気圧によって密に圧縮された状態になっているので、外径規制型の装着が容易になる。
【0026】
さらに、筒状になった強化繊維層のすべての筒端部をマトリックス樹脂含浸前に外径規制型で規制するとともに、前記強化繊維層のすべての筒端部側から気密空間内の空気を吸引排気しながら前記強化繊維層の筒中央部からマトリックス樹脂を供給するようにすれば、両側に差口を備えたパイプ継手となりうる繊維強化樹脂製配管材を安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明にかかる繊維強化樹脂製配管材の製造方法の1つの実施の形態をあらわしている。
【0028】
この繊維強化樹脂製配管材の製造方法は、以下のようにして両端に差口を有する繊維強化樹脂製配管材としてのパイプ継手を製造することができる。
(1)図1に示すように、円柱状の成形型1の型面に離型剤を塗布したのち、型面に沿って強化繊維層2を円筒状に設ける。
(2)強化繊維層2の上に必要に応じてシート状をした離型布及び樹脂拡散媒体を巻き付ける。
【0029】
(3)ホース、スパイラルチューブ等の吸気口(図示せず)を壁面に備えた吸気管3を強化繊維層2の両筒端部(図1では片側しかあらわれていない)に沿うように成形型1の周面に巻き付ける。
に沿うように成形型1の周面に巻き付ける。
(4)強化繊維層2の筒中央部において、ホース、スパイラルチューブ等の樹脂注入口(図示せず)を壁面に備えた樹脂注入管4を強化繊維層2の外周面に沿うように巻き付ける。
【0030】
(5)強化繊維層2、吸気管3及び樹脂注入管4を気密性フィルム5で覆うとともに、気密性フィルム5の一部から吸気管3及び樹脂注入管4に繋がる配管(図示せず)の一端を外部に露出させた状態にする。
(6)成形型1の両端部で気密性フィルム5の内周面と成形型1の外周面との間をシール材としての両面粘着テープ6で粘着固定してシールするとともに、図示していないが、気密性フィルム5の吸気管3及び樹脂注入管4に繋がる配管の貫通部をシールパッキン付きのクランプ等で挟むことによってシールして、気密性フィルム5と成形型1との間に気密空間Sを形成する。
【0031】
(7)図1では図示していないが、吸気管3に繋がる配管の他端に図4と同様のドレンタンク付きの吸気管路を介して真空ポンプを接続するとともに、樹脂注入管4に繋がる配管の他端にホースを介して図4と同様のマトリックス樹脂タンクを接続する。
(8)マトリックス樹脂タンクのバルブを閉じた状態で、真空ポンプを稼動させて気密空間S内の空気を吸気管3を介して吸引排気して気密空間S内を減圧する。
【0032】
(9)図2に示すように、強化繊維層2の両端部に気密性フィルム5越しに外径規制型7を外嵌する。
すなわち、外径規制型7は、図3に示すように、半円筒状の型本体部71と、型本体部71から外側に張り出す2つの鍔部72,72とを備える、二つ割りの分割型70,70からなる。
2つの型本体部71は、組み合わさることによって、得ようとする成形品の差口外径と同じ内径に筒体を形成するようになっている。また、鍔部72,72は、ボルト挿通孔72aを2つずつ備え、一方の分割型70の鍔部72と、他方の分割型70の鍔部72とを、ボルト挿通孔72aが一致するように突合せ、ボルト挿通孔72aに挿通したボルト73にナット74を締め込むことによって型本体部71が組み合わさった状態に保持できるようになっている。
【0033】
(10)吸気管3からの吸引排気を続けながら、マトリックス樹脂タンクのバルブを開き、マトリックス樹脂タンク内のマトリックス樹脂を気密空間S側に吸引し、樹脂注入管4から気密空間S内にマトリックス樹脂を供給し、強化樹脂層2に含浸させる。
すなわち、気密空間S内は、減圧状態になっているので、マトリックス樹脂タンクのマトリックス樹脂が大気圧に押されて配管を介して樹脂注入管4に流れ込み、その供給口から気密空間S内に供給される。そして、気密空間S内に供給されたマトリックス樹脂は全体に広がりながら、吸気管3の吸気口からの吸引力と、毛管現象により吸気口側に向かって流れ、強化樹脂層4に含浸されていく。
【0034】
(11)含浸が完了すれば、真空ポンプを停止するとともに、マトリックス樹脂タンクのバルブを閉じ、マトリックス樹脂を硬化または固化させたのち、外径規制型7、気密性フィルム5、必要に応じて樹脂拡散媒体、離型布を取り除いた後、成形型1から成形品(図示せず)を取り外す。
【0035】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、外径規制型を装着したのちに、マトリックス樹脂を強化繊維層に含浸するようにしていたが、マトリックス樹脂が含浸されたのちに、マトリックス樹脂が硬化あるいは固化する前に外径規制型を装着してもよい。
上記の実施の形態では、強化繊維層の両端部を外径規制型で外径規制するようにしていたが、差口を片側にしか設けない場合は、差口を設ける側のみ外径規制型で外径規制するようにしても構わない。また、この場合、樹脂注入管は、外径規制型で外径規制しない側の強化繊維層の端部に沿って設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる繊維強化樹脂製配管材の製造方法の1つの実施の形態であって、その外径規制型装着前の成形型の状態をあらわす断面図である。
【図2】本発明にかかる繊維強化樹脂製配管材の製造方法の1つの実施の形態であって、その外径規制型装着後の成形型の状態をあらわす半断面図である。
【図3】外径規制型の1例をあらわす分解斜視図である。
【図4】従来のインフュージョン成形法を用いた筒型繊維強化樹脂成形品の製造方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1 成形型
2 強化繊維層
3 吸気管
4 樹脂注入管
5 気密性フィルム
6 両面粘着テープ(シール材)
7 外径規制型
S 気密空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状または柱状をした成形型の型面に沿う強化繊維からなる筒状をした強化繊維層を、気密性フィルムで覆い、この気密性フィルムと成形型との間に形成される気密空間内に前記強化繊維層を収容し、前記気密空間内を大気圧より減圧したのち、この減圧状態を保ちながら気密空間外からマトリックス樹脂を前記気密空間内に供給して前記強化繊維層に含浸させる工程と、
含浸された前記マトリックス樹脂を硬化あるいは固化させる工程と、を備え、他の配管材の管端部に端部が内嵌される繊維強化樹脂製配管材の製造方法であって、
マトリックス樹脂が硬化あるいは固化する前に、前記強化繊維層の前記他の配管材の管端部に対応する部分を前記気密性フィルムの外側から接続される他の配管材の管端部の内径と略同じ内径をした外径規制型を装着して外径規制し、その後、前記マトリックス樹脂を硬化あるいは固化させることを特徴とする繊維強化樹脂製配管材の製造方法。
【請求項2】
気密空間内を減圧状態にしたのち、外径規制型を装着する請求項1に記載の繊維強化樹脂製配管材の製造方法。
【請求項3】
筒状になった強化繊維層のすべての筒端部をマトリックス樹脂含浸前に外径規制型で規制するとともに、前記強化繊維層のすべての筒端部側から気密空間内の空気を吸引排気しながら前記強化繊維層の筒中央部からマトリックス樹脂を供給する請求項1または請求項2に記載の繊維強化樹脂製配管材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−248554(P2009−248554A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103196(P2008−103196)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】