説明

置換フェニルメタノン誘導体

本発明は、一般式(i):[式中、R1は、非置換であるか、又は低級アルキルもしくはハロゲンにより置換されている、−OR1’、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり;R1’は、低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、又は−(CH−シクロアルキルであり;Rは、−S(O)−低級アルキル、−S(O)NH−低級アルキル、NO又はCNであり;Rは、非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、CN、NO、ハロゲン、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルコキシ、アリールもしくはスルホンアミドからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されているアリール又はヘテロアリールであり;Xは、結合、−CH−、−NH−、−CHO−又は−OCH−であり;nは、1又は2であり;mは、1又は2であり;oは、0又は1である]の化合物、その薬学的に許容しうる酸付加塩、それらを含有する医薬組成物、及び神経障害及び精神神経障害の処置におけるそれらの使用に関する。一般式(I)の化合物が、グリシントランスポーター1(GlyT−1)の良好な阻害剤であることが見い出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式I:
【0002】
【化1】

【0003】
[式中、
1は、非置換であるか、又は低級アルキルもしくはハロゲンにより置換されている、−OR1’、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり;
1’は、低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、又は−(CH−シクロアルキルであり;
は、−S(O)−低級アルキル、−S(O)NH−低級アルキル、NO又はCNであり;
は、非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、CN、NO、ハロゲン、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルコキシ、アリールもしくはスルホンアミドからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されているアリール又はヘテロアリールであり;
Xは、結合、−CH−、−NH−、−CHO−又は−OCH−であり;
nは、1又は2であり;
mは、1又は2であり;
oは、0又は1である]の化合物、及びその薬学的に許容しうる酸付加塩に関する。
【0004】
本発明は、一般式Iの化合物、それらを含有する医薬組成物、及び神経障害及び精神神経障害の処置におけるそれらの使用に関する。驚くべきことに、一般式Iの化合物が、グリシントランスポーター1(GlyT−1)の良好な阻害剤であること、及びそれらが、グリシントランスポーター2(GlyT−2)阻害剤に対する良好な選択性を有することが見い出された。
【0005】
統合失調症は、エピソード性陽性症状(例えば、妄想、幻覚、思考障害及び精神病)及び持続性陰性症状(例えば、平坦化情動(flattened affect)、注意障害及び引きこもり)ならびに認知障害を特徴とする、進行性の破壊的な神経疾患である(Lewis DA and Lieberman JA, Neuron, 28:325-33, 2000)。ここ数十年間、「ドーパミン作動性機能亢進」仮説に研究が集中しており、このことがドーパミン系の遮断を伴う治療的介入を導いている(Vandenberg RJ and Aubrey KR., Exp. Opin. Ther. Targets, 5(4):507-518, 2001;Nakazato A and Okuyama S, et al., Exp. Opin. Ther. Patents, 10(1):75-98, 2000)。この薬理学的アプローチでは、機能的帰結の前兆である、陰性症状及び認知症状への取り組みが不充分である(Sharma T., Br. J. Psychiatry, 174(suppl. 28):44-51, 1999)。
【0006】
1960年代半ばに、非競合的NMDA受容体アンタゴニストである、フェンシクリジン(PCP)や関連薬剤(ケタミン)のような化合物による、グルタミン酸系の遮断によって引き起こされる精神異常発現作用に基づく、統合失調症の補完モデルが提案された。興味深いことに、健常ボランティアでは、PCP誘発精神異常発現作用は、陽性及び陰性症状ならびに認知機能障害を併せ持ち、よって患者での統合失調症に酷似している(Javitt DC et al., Biol. Psychiatry, 45: 668-679, 1999)。さらに、NMDAR1サブユニットの発現レベルが低下しているトランスジェニックマウスは、薬理学的に誘発した統合失調症のモデルにおいて観察されるものと同様な行動異常を示し、このことは、NMDA受容体活性の低下が統合失調症様行動をもたらすというモデルを支持している(Mohn AR et al., Cell, 98: 427-236, 1999)。
【0007】
グルタミン酸神経伝達、特にNMDA受容体活性は、シナプス可塑性、学習及び記憶において重要な役割を果たし、NMDA受容体は、シナプス可塑性及び記憶形成の閾値をゲートするための段階的スイッチとして働くようである(Wiley, NY; Bliss TV and Collingridge GL, Nature, 361: 31-39, 1993)。NMDA NR2Bサブユニットを過剰発現するトランスジェニックマウスは、シナプス可塑性の増強ならびに学習及び記憶における優れた能力を示す(Tang JP et al., Natur, 401-63-69, 1999)。
【0008】
したがって、グルタミン酸欠乏が統合失調症の病態生理に関係しているならば、特にNMDA受容体活性化を介しての、グルタミン酸伝達の増強は、抗精神病効果と認知増強効果の両方を生じることが予測されよう。
【0009】
アミノ酸であるグリシンは、CNSにおいて少なくとも2つの重要な機能を有することが知られている。これは、ストリキニーネ感受性グリシン受容体に結合して、阻害性アミノ酸として作用し、そしてまた、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体機能に対するグルタミン酸との必須コアゴニスト(co-agonist)として作用して、興奮活性に影響を及ぼす。グルタミン酸は、シナプス終末から活性依存的に放出されるが、グリシンは、より一定のレベルで見かけ上存在しており、そしてグルタミン酸に対するその応答について受容体を調節/制御しているようである。
【0010】
神経伝達物質のシナプス濃度を制御するための最も有効な方法の1つは、シナプスでのその再取り込みに影響を及ぼすことである。神経伝達物質トランスポーターは、細胞外空間から神経伝達物質を除去することにより作用し、その細胞外寿命を制御することができ、それによってシナプス伝達の大きさを調節することができる(Gainetdinov RR et al, Trends in Pharm. Sci., 23(8): 367-373, 2002)。
【0011】
神経伝達物質トランスポーターのナトリウム及び塩化物ファミリーの一部を形成する、グリシントランスポーターは、シナプス前神経終末及び周囲の微細グリア突起へのグリシンの再取り込みにより、シナプス後グリシン作動性作用の終結及び低細胞外グリシン濃度の維持において重要な役割を果たす。
【0012】
2つの別個のグリシントランスポーター遺伝子が、哺乳動物の脳からクローニングされており(GlyT−1及びGlyT−2)、これらは、約50%のアミノ酸配列相同性を有する2つのトランスポーターを生じる。GlyT−1は、オルタナティブスプライシング及び選択的プロモーター使用から生じる4つのアイソフォームを与える(1a、1b、1c及び1d)。齧歯類の脳では、これらのアイソフォームのうちの2つのみが見い出されている(GlyT−1a及びGlyT−1b)。GlyT−2もまた、ある程度の異種性を呈する。2つのGlyT−2アイソフォーム(2a及び2b)が齧歯類の脳において同定されている。GlyT−1は、CNS及び末梢組織に局在していることが知られており、一方GlyT−2は、CNSに特異的である。GlyT−1は、優勢にグリアに分布しており、そしてストリキニーネ感受性グリシン受容体に対応する領域だけでなく、その領域の外側(NMDA受容体機能の調節に関与すると想定されている)にも見い出される(Lopez-Corcuera B et al., Mol. Mem. Biol., 18: 13-20, 2001)。従って、NMDA受容体活性を増強するための1つのストラテジーは、GlyT−1トランスポーターの阻害により、シナプスNMDA受容体の局所の微小環境におけるグリシン濃度を上昇させることである(Bergereon R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 15730-15734, 1998;Chen L. et al., J. Neurophysiol., 89(2): 691-703, 2003)。
【0013】
グリシントランスポーター阻害剤は、神経障害及び精神神経障害の処置に適している。関係する疾患状態の大多数は、精神病、統合失調症(Armer RE and Miller DJ, Exp. Opin. Ther. Patents, 11(4): 563-572, 2001)、重症大鬱病性障害のような精神病性気分障害、双極性障害に関連する急性躁病又は鬱病のような精神障害に関連する気分障害、及び統合失調症に関連する気分障害(Pralong ET et al., Prog. Neurobiol., 67: 173-202, 2002)、自閉性障害(Carlsson ML, J. Neural Trans., 105: 525-535, 1998)、加齢関連認知症及びアルツハイマー型の老年認知症を含む認知症のような認知障害、ヒトを含む哺乳動物における記憶障害、注意欠陥障害、及び疼痛(Armer RE and Miller DJ, Exp. Opin. Ther. Patents, 11(4): 563-572, 2001)である。
【0014】
従って、GlyT−1阻害を介してNMDA受容体の活性化を増大させることは、精神病、統合失調症、認知症、及び注意欠陥障害やアルツハイマー病のような認知過程が損なわれた他の疾患を処置する薬剤につながりうる。
【0015】
本発明の目的は、式Iの化合物それ自体、Glyt−1阻害を介するNMDA受容体の活性化に関連する疾患の処置用医薬の製造のための式Iの化合物及びその薬学的に許容しうる塩の使用、その製造、本発明の化合物に基づく医薬及びその製造、ならびに精神病、記憶及び学習における機能障害、統合失調症、認知症、及び注意欠陥障害やアルツハイマー病のような認知過程が損なわれた他の疾患のような疾病の制御又は予防における式Iの化合物の使用である。
【0016】
本発明の化合物を使用する好ましい適応症は、統合失調症、認知障害及びアルツハイマー病である。
【0017】
さらに、本発明は、すべてのラセミ混合物、すべてのそれらの対応する鏡像異性体及び/又は光学異性体を包含する。
【0018】
本明細書で用いられる用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含む、飽和直鎖又は分枝鎖基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、2−ブチル、t−ブチルなどを意味する。好ましいアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0019】
本明細書で用いられる用語「シクロアルキル」は、3〜6個の炭素原子を含む、飽和環を意味する。
【0020】
本明細書で用いられる用語「低級アルコキシ」は、上記のような1〜6個の炭素原子を含む飽和直鎖又は分枝鎖基であって、酸素原子を介して結合している基を意味する。
【0021】
用語「ハロゲン」は、塩素、ヨウ素、フッ素及び臭素を意味する。
【0022】
用語「アリール」は、少なくとも1つの環が芳香族の性質である1又は2環の縮合環からなる一価環状芳香族炭化水素基、例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル又はビフェニルを意味する。
【0023】
用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1個のヘテロ原子を含む、1又は2環の縮合環の一価芳香族炭素環基、例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、又は1,3,5−トリアジニルを意味する。
【0024】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1個のヘテロ原子を含む、1又は2環の縮合環の非芳香族炭化水素基、例えば、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル又はチオモルホリニルを意味する。
【0025】
用語「ハロゲンにより置換されているアルキル」は、例えば、以下の基:CF、CHF、CHF、CHCF、CHCHF、CHCHF、CHCHCF、CHCHCHCF、CHCHCl、CHCFCF、CHCFCHF、CFCHFCF、C(CHCF、CH(CH)CF又はCH(CHF)CHFを意味する。
【0026】
用語「薬学的に許容しうる酸付加塩」は、無機酸及び有機酸、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩を包含する。
【0027】
本出願の好ましい化合物は、Xが結合であり、Rが、非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、CN、NO、ハロゲン、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルコキシ、アリールもしくはスルホンアミドからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されているフェニルである式Iの化合物、例えば、以下の化合物:
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−メタノンである。
【0028】
本出願の好ましい化合物は、Xが−CH−であり、Rが、非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、CN、NO、ハロゲン、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルコキシ、アリールもしくはスルホンアミドからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されているフェニルであるさらなる式Iの化合物、例えば、以下の化合物:
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−[5−メタンスルホニル−2−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−プロポキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−(4’−フルオロ−4−メタンスルホニル−ビフェニル−2−イル)−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−(2−シクロブチルメトキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン又は
rac−(2−シクロペンチルオキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノンである。
【0029】
本出願の好ましい化合物は、Xが−OCH−であり、Rが、非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、CN、NO、ハロゲン、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルコキシ、アリールもしくはスルホンアミドからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されているフェニルであるさらなる式Iの化合物、例えば、以下の化合物:
rac−[3−(4−クロロ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン、
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−(3−p−トリルオキシメチル−ピロリジン−1−イル)−メタノン、
rac−[3−(ビフェニル−4−イルオキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン、
rac−4−{1−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−ベンゾイル]−ピロリジン−3−イルメトキシ}−ベンゾニトリル、
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−ニトロ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメトキシ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−[3−(3,4−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン又は
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(3−メトキシ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−メタノンである。
【0030】
本発明の別の実施態様は、Xが−NH−又は−CHO−である化合物である。
【0031】
本発明の式Iの化合物及びその薬学的に許容しうる塩は、当該技術分野で公知の方法、例えば、以下を含む、下記(a)〜(c)の方法により調製することができる
a)式II:
【0032】
【化2】

【0033】
の化合物を、TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)のような活性化剤の存在下、式III:
【0034】
【化3】

【0035】
の化合物と反応させて、式I:
【0036】
【化4】

【0037】
[式中、置換基R、R及びRは上記で定義するとおりであり、m及びnは互いに独立して1又は2である]の化合物を得ること;
b)式IV:
【0038】
【化5】

【0039】
の化合物を、ホスフィンの存在下、ミツノブ(Mitsunobu)条件の下で、式:
【0040】
【化6】

【0041】
の化合物と反応させて、式I:
【0042】
【化7】

【0043】
[式中、置換基R、R及びRは上記で定義するとおりであり、Xは−OCH−であり、m及びnは互いに独立して1又は2である]の化合物を得ること;
c)式V:
【0044】
【化8】

【0045】
の化合物を、ナトリウムtert−ブトキシドのような塩基の存在下、式:
【0046】
【化9】

【0047】
[式中、Halは、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲン原子である]の化合物と反応させて、式I:
【0048】
【化10】

【0049】
[式中、置換基R、R及びRは上記で定義するとおりであり、Xは−CHO−であり、m及びnは互いに独立して1又は2である]の化合物を得ること、および
所望であれば、得られた化合物を、薬学的に許容しうる酸付加塩に変換すること。
【0050】
式Iの化合物は、変法(a)〜(c)に従って、以下のスキーム1〜3を用いて調製しうる。出発物質は、市販されているか、化学文献で公知であるか、または当該技術分野で周知の方法に従って調製しうる。
【0051】
【化11】

【0052】
TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)のような活性化剤及びN−エチルジイソプロピルアミンのような塩基の存在下で、式IIのアミン誘導体を、適切に置換した式IIIの酸と反応させることにより、一般式Iの化合物を調製することができる(スキーム1)。
【0053】
式IIのアミン化合物は、市販されているか、化学文献で公知であるか、または当該技術分野で周知の多様な方法を用いて調製しうる。
【0054】
式IIIの酸は、化学文献で公知であるか、または当該技術分野で周知の多様な方法を用いて調製しうる。
【0055】
【化12】

【0056】
一般式Iの化合物を、スキーム2に示した代替経路によっても調製することができる。例えば、トリフェニルホスフィン又はジフェニル−2−ピリジルホスフィンのようなホスフィン、及びジ−tert−ブチルアゾジカルボキシラート又はジエチルアザジカルボキシラートのようなジアルキルアザジカルボキシラートの存在下、ミツノブ反応条件の下で、式IVのヒドロキシ化合物を、式R−OHのアルコールと反応させることにより、式I(X:OCH)の化合物を調製することができる。TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)のような活性化剤及びN−エチルジイソプロピルアミンのような塩基の存在下、式VIのアミンを、適切に置換した式IIIの酸と反応させることにより、式IVの化合物を調製することができる。
【0057】
【化13】

【0058】
一般式Iの化合物を、スキーム3に示した代替経路によっても調製することができる。例えば、ナトリウムtert−ブトキシドのような塩基の存在下、式Vのヒドロキシ化合物を、式R−CH−Hal(式中、Halは、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲン原子である)のアルキル化剤と反応させることにより、式I(X:CHO)の化合物を調製することができる。TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)のような活性化剤及びN−エチルジイソプロピルアミンのような塩基の存在下、式VIIのアミンを、適切に置換した式IIIの酸と反応させることにより、式Vの化合物を調製することができる。
【0059】
化合物の単離及び精製
本明細書中に記載の化合物及び中間体の単離及び精製は、所望であれば、任意の適切な分離又は精製手順、例えば、濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、厚層(thick-layer)クロマトグラフィー、分取用低圧もしくは高圧液体クロマトグラフィー、又はこれらの手順の組み合わせにより達成することができる。適切な分離及び単離手順の具体例は、下記の調製例及び実施例を参照して得ることができる。しかし、他の同等な分離又は単離手順も当然使用しうる。式Iのキラル化合物のラセミ混合物は、キラルHPLCを用いて分離することができる。
【0060】
式Iの化合物の塩
式Iの化合物は、例えば、残基Rが脂肪族又は芳香族アミン部分のような塩基性基を含む場合には、塩基性となりうる。そのような場合、式Iの化合物は対応する酸付加塩に変換されうる。
【0061】
この変換は、少なくとも化学量論的量の適切な酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、及び有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などで処理することにより達成される。典型的には、遊離塩基をジエチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、エタノール又はメタノールなどの不活性有機溶媒に溶解し、同様の溶媒中の酸を加える。温度は0℃〜50℃の間に維持する。得られた塩は自然に沈殿するか、またはより極性の低い溶媒を用いて溶液から取り出しうる。
【0062】
式Iの塩基性化合物の酸付加塩は、少なくとも化学量論的等量の適切な塩基、例えば、水酸化ナトリウム又はカリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニアなどで処理することにより、対応する遊離塩基に変換しうる。
【0063】
式Iの化合物及びその薬学的に使用しうる付加塩は、有用な薬理学的性質を有する。具体的には、本発明の化合物は、グリシントランスポーター1(GlyT−1)の良好な阻害剤であることが見い出された。
【0064】
本化合物を、後述の試験に従って検討した。
【0065】
溶液及び材料
DMEM完全培地:栄養混合物F−12(Gibco Life-technologies)、ウシ胎仔血清(FBS)5%(Gibco life technologies)、ペニシリン/ストレプトマイシン1%(Gibco life technologies)、ハイグロマイシン0.6mg/ml(Gibco life technologies)、グルタミン1mM(Gibco life technologies)。
【0066】
取り込み緩衝液(UB):150mM NaCl、10mM Hepes−トリス(pH7.4)、1mM CaCl、2.5mM KCl、2.5mM MgSO4、10mM(+)D−グルコース。
mGlyT1b cDNAで安定にトランスフェクトしたFlp−in(商標)−CHO(Invitrogenカタログ番号R758−07)細胞。
【0067】
グリシン取り込み阻害アッセイ(mGlyT−1b)
1日目に、mGlyT−1b cDNAでトランスフェクトした哺乳動物細胞(Flp−in(商標)−CHO)を、96ウェル培養プレート中のハイグロマイシンを含まない完全F−12培地に40,000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。2日目に、培地を吸引し、細胞を取り込み緩衝液(UB)で2回洗浄した。次いで、細胞を、(i)潜在的競合物質なし、(ii)10mM非放射性グリシン、(iii)ある濃度の潜在的阻害剤のいずれかと共に、22℃で20分間インキュベートした。ある範囲の濃度の潜在的阻害剤を使用して、50%の効果をもたらす阻害剤の濃度(例えば、50%のグリシン取り込みを阻害する競合物質の濃度である、IC50)を算出するためのデータを生成した。次いで、[H]−グリシン60nM(11〜16Ci/mmol)及び25μM非放射性グリシンを含む溶液を直ちに加えた。穏やかに振とうしながらプレートをインキュベートし、混合物の吸引と氷冷UBでの洗浄(3回)により反応を停止させた。細胞をシンチレーション液で溶解し、3時間振とうし、シンチレーションカウンターを用いて細胞中の放射活性を計数した。
【0068】
好ましい化合物は、下記の表に示すように、GlyT−IでのIC50(μM)を0.09〜0.50の範囲で示す。
【0069】
【表1】

【0070】
式Iの化合物及び式Iの化合物の薬学的に許容しうる塩は、医薬として、例えば、医薬製剤の形態で使用することができる。医薬製剤は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の形態で、経口投与することができる。しかし投与はまた、例えば坐剤の形態で直腸内に、又は例えば注射剤の形態で非経口的に行うこともできる。
【0071】
式Iの化合物は、医薬製剤を製造するために、薬学的に不活性な無機又は有機担体と共に加工することができる。乳糖、コーンスターチ又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などを、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤のためのそのような担体として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤のための適切な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体及び液体ポリオールなどである。しかし、活性物質の性質に応じて、軟ゼラチンカプセル剤の場合は、通常担体を必要としない。液剤及びシロップ剤の製造に適切な担体は、例えば、水、ポリオール、グリセリン、植物油などである。坐剤に適切な担体は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半液体又は液体ポリオールなどである。
【0072】
更に、医薬製剤は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、着香剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含むことができる。それらは、その他の治療上有用な物質も更に含有することができる。
【0073】
式Iの化合物又はその薬学的に許容しうる塩及び治療上不活性な担体を含む医薬もまた、その製造方法と同様に、本発明の目的であり、その方法は1つ以上の式Iの化合物及び/又は薬学的に許容しうる酸付加塩、及び所望であれば1つ以上の他の治療上有用な物質を、1つ以上の治療上不活性な担体と共にガレヌス製剤投与形態にすることを含む。
【0074】
本発明による最も好ましい適応症は、中枢神経系の障害を含むものであり、例えば、統合失調症、認知障害及びアルツハイマー病の処置又は予防である。
【0075】
投与量は、広い範囲内で変化させることができ、当然各々の特定の症例における個々の要求に適応されなければならない。経口投与の場合、成人用の投与量を一般式Iの化合物1日当たり約0.01mg〜約1000mg又はその薬学的に許容しうる塩の対応する量で変えることができる。1日投与量は、単回用量として又は分割用量で投与してよく、加えて、必要性が見出される場合、上限を超えることもできる。
【0076】
錠剤の処方(湿式造粒)
品目 成分 mg/錠剤
5mg 25mg 100mg 500mg
1.式Iの化合物 5 25 100 500
2.無水乳糖DTG 125 105 30 150
3.Sta-Rx 1500 6 6 6 30
4.微晶質セルロース 30 30 30 150
5.ステアリン酸マグネシウム 1 1 1 1
合計 167 167 167 831
【0077】
製造手順
1.品目1、2、3及び4を混合し、精製水と共に造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を適切な微粉砕装置に通す。
4.品目5を加え、3分間混合し、適切な成形機で圧縮する。
【0078】
カプセルの処方
品目 成分 mg/カプセル
5mg 25mg 100mg 500mg
1.式Iの化合物 5 25 100 500
2.含水乳糖 159 123 148 ---
3.コーンスターチ 25 35 40 70
4.タルク 10 15 10 25
5.ステアリン酸マグネシウム 1 2 2 5
合計 200 200 300 600
【0079】
製造手順
1.品目1、2及び3を適切なミキサーで30分間混合する。
2.品目4及び5を加え、3分間混合する。
3.適切なカプセルに充填する。
【0080】
以下の実施例は本発明を説明するが、その範囲を制限することを意図するものではない。以下の略語を実施例で使用した:
TBTU:2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート;
【0081】
式IIの中間体の合成
実施例A1
rac−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ピロリジン
a)rac−3−ヒドロキシ−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ピロリジン−1−カルボン酸エチルエステル
【0082】
【化14】

【0083】
マグネシウム364mgを、窒素下、エーテル2mlに懸濁した。4−ブロモベンゾトリフルオリド150μlを加え、次にエーテル1.5ml中の4−ブロモベンゾトリフルオリド12.6mmolの溶液を室温で10分間かけて滴下した。1.5時間の撹拌中にグリニャール試薬が形成される間に、混合物は穏やかに発熱性になり、赤褐色に変色した。混合物を0℃に冷却した。エーテル14ml中の1−N−エトキシカルボニル−3−ピロリドン12.5mmolの溶液を滴下した。反応混合物を室温にし、2時間30分撹拌した。20%NHClを0℃で滴下して、反応をクエンチした。混合物を室温に温めた。水層をエーテルで3回抽出した。合わせた有機相を水及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発させた。残留物をシリカゲル(溶離剤:ヘプタン−酢酸エチル 1/1)で精製して、標記化合物(61%)を黄色の固体として得た。MS(m/e):362.2([M+59]、100%)。
【0084】
b)rac−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ピロリジン−3−オール
【0085】
【化15】

【0086】
ジオキサン15ml中のrac−3−ヒドロキシ−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ピロリジン−1−カルボン酸エチルエステル1.98mmolの溶液に、ブタノール中のKOH 2.5N溶液8mlを加えた。溶液を還流下で2時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残留物を水に取った。水相をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、乾燥させた。化合物をヘキサン/エーテル(約2:1)に懸濁し、濾過し、ヘキサンですすいで、標記化合物(57%)を明褐色の固体として得た。MS(m/e):232.1([M+1]、100%)。
【0087】
c)3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール
【0088】
【化16】

【0089】
ジクロロメタン0.4ml中のrac−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ピロリジン−3−オール0.43mmolの懸濁液に、アルゴン下、TFA 0.4mlを加えた。反応混合物を還流下で5日間撹拌し、濃縮した。残留物を酢酸エチルに溶解し、pHが9〜10になるまで、2N NaOHを加えた。有機相をNaSOで乾燥させ、蒸発させて、標記化合物(18%)を油状物として得た。MS(m/e):214.2([M+1]、100%)。
【0090】
d)3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ピロリジン
【0091】
【化17】

【0092】
3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール0.08mmolをMeOHに溶解し、pHが1になるまでエーテル中のHClを加えた。5分間撹拌した後、溶媒を蒸発させた。メタノール0.7ml中のこの塩の溶液に、アルゴン下、10%Pd/C 2mgを加え、混合物を、水素の大気圧下、室温で4時間水素化した。混合物を冷却し、アルゴンでフラッシュし、メタノールで希釈し、濾過し、溶媒を真空中で除去して、標記化合物(64%)を油状物として得た。MS(m/e):216.3([M+1]、100%)。
【0093】
実施例A2
rac−3−o−トリル−ピロリジン
a)rac−3−ヒドロキシ−3−o−トリル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【0094】
【化18】

【0095】
実施例A1(a)と同様にして、N−boc−3−ピロリジノン及びo−トリル−マグネシウムブロミドから調製して、標記化合物を明黄色の油状物として得た。MS(m/e):278.2(M+H、100%)。
【0096】
b)3−o−トリル−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール
【0097】
【化19】

【0098】
実施例A1(c)と同様にして、rac−3−ヒドロキシ−3−o−トリル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルから調製して、標記化合物を橙色の油状物として得た。MS(m/e):160.2(M+H、100%)。
【0099】
c)rac−3−o−トリル−ピロリジン
【0100】
【化20】

【0101】
実施例B3と同様にして、3−o−トリル−2,5−ジヒドロ−1H−ピロールから調製して、標記化合物を黄色の油状物として得た。MS(m/e):162.3(M+H、100%)。
【0102】
実施例A3
rac−3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン酢酸
【0103】
【化21】

【0104】
実施例A1(d)と同様にして、HClを酢酸で置き換え、1−ベンジル−3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン(CAS: 336182-64-0)から調製して、標記化合物を明褐色の油状物として得た。MS(m/e):230.4(M+H、100%)。
【0105】
実施例A4
rac−3−(3−フルオロ−ベンジル)−ピロリジン
【0106】
【化22】

【0107】
実施例A1(d)と同様にして、1−ベンジル−3−(3−フルオロ−ベンジル)−ピロリジンから調製して、標記化合物を無色の油状物として得た。MS (m/e):180(M+H、100%)。
【0108】
実施例A5
rac−ピロリジン−3−イル−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−アミン塩酸塩
【0109】
【化23】

【0110】
実施例A1(d)と同様にして、(1−ベンジル−ピロリジン−3−イル)−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−アミン(CAS: 816468-46-9)から調製して、標記化合物を白色の固体として得た。MS(m/e):230.9(M+H、100%)。
【0111】
実施例B1
4’−フルオロ−4−メタンスルホニル−ビフェニル−2−カルボン酸
【0112】
【化24】

【0113】
水30ml中の2−ヨード−5−メタンスルホニル−安息香酸(CAS: 845616-08-2)6.1mmol、4−フルオロベンゼンボロン酸12.2mmol、炭酸ナトリウム18.4mmol及び酢酸パラジウム(II)0.3mmolの混合物を室温で48時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を37%HClで酸性化した。混合物を室温で30分間撹拌した。固体を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、標記化合物(92%)を得た。黄色の固体。MS(m/e):293.2([M−H]、100%)。
【0114】
実施例B2
5−メタンスルホニル−2−(4−メチル−ピラゾール−1−イル)−安息香酸
a)5−メタンスルホニル−2−(4−メチル−ピラゾール−1−イル)−安息香酸メチルエステル
【0115】
【化25】

【0116】
ガラス管中に、2−ヨード−5−メタンスルホニル−安息香酸メチルエステル(CAS: 847547-09-5)0.29mmol、4−メチルピラゾール0.35mmol、炭酸カリウム0.59mmol、CuI 0.06mmol及びジオキサン(脱気)0.4ml中のtrans−1,2−ジアミノシクロヘキサン0.12mmolの溶液を順次加えた。管にアルゴンを充填し、キャップで密閉した。反応混合物を120℃で一晩加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、ジクロロメタン及び水を加えた。水相をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。粗化合物をFlashpackカートリッジ10g(溶離剤:ヘプタン/酢酸エチル)で精製して、標記化合物(57%)を明黄色の油状物として得た。MS(m/e):295.0([M+H]、100%)。
【0117】
(b)5−メタンスルホニル−2−(4−メチル−ピラゾール−1−イル)−安息香酸
【0118】
【化26】

【0119】
THF 2.2ml及び水2.2ml中の5−メタンスルホニル−2−(4−メチル−ピラゾール−1−イル)−安息香酸メチルエステル2.08mmolに、水酸化リチウム3.12mmolを加え、反応混合物を室温で2時間撹拌した。その後、溶媒を真空中で除去し、残留物を水に取り、3N HClを加えて酸性化して、濾過後、標記化合物を白色の固体として得た(88%)。MS(m/e):279.1([M−H]、100%)。
【0120】
実施例B3
5−メタンスルホニル−2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−安息香酸
【0121】
【化27】

【0122】
メタノール0.5ml中の2−(3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−5−メタンスルホニル−安息香酸(CAS: 847547-05-1)0.07mmolに、アルゴン下、Pd/C 20mg、続いてギ酸アンモニウム0.07mmolを加えた。反応混合物を30分間還流し、濾過し、蒸発させた。水を加え、溶液を2N HClでpH1に酸性化した。水相をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、蒸発させて、標記化合物を無色の油状物として得た。MS(m/e):283.2([M−H]、100%)。
【0123】
実施例C1
rac−(3−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−イル)−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン
【0124】
【化28】

【0125】
N,N−ジメチルホルムアミド40ml中の5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−安息香酸(CAS: 845616-82-2)0.01molの溶液に、TBTU 3.57g、N−エチルジイソプロピルアミン8.5ml及びrac−ピロリジン−3−イル−メタノール(CAS: 5082-74-6)1gを順次加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、次に真空中で濃縮した。混合物を酢酸エチルに取り、水で2回、飽和NaHCOで2回洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過した。溶媒を蒸発させた。粗油状物をシリカゲル(溶離剤:酢酸エチル)で精製して、標記化合物をオフホワイトの泡状物として得た。MS(m/e):396.1(M+H、100%)。
【0126】
式Iの化合物の合成
実施例C1と同様にして、以下の表の化合物1〜27を、酸誘導体及びアミン誘導体から調製した。
【0127】
【表2】











【0128】
実施例28
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメチル−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン
【0129】
【化29】

【0130】
テトラヒドロフラン1.4ml中のrac−(3−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−イル)−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン(実施例C1)70mgの溶液に、4−ヒドロキシベンゾトリフルオリド30mg及びジフェニル−2−ピリジルホスフィン50mgを加えた。ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシラート43mgを加えた。混合物を70℃で23時間撹拌した。溶媒を真空中で除去した。油状物をシリカゲル(溶離剤:酢酸エチル)で精製して、黄色のゴム状物を得た。ゴム状物を酢酸エチルに溶解した。溶液を5N HClで3回、水で1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、標記化合物を明黄色の泡状物として得た。MS(m/e):540.3(M+H、100%)。
【0131】
実施例28と同様にして、以下の表の化合物29〜39を、rac−(3−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−イル)−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン(実施例C1)及びフェノール試薬から調製した。
【0132】
【表3】





【0133】
実施例40
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)−ピロリジン−1−イル]−メタノン
a)rac−(3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン
【0134】
【化30】

【0135】
実施例C1と同様にして、5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−安息香酸(CAS: 845616-82-2)及びrac−3−ピロリジノールから調製した。粗物質をジクロロメタンで結晶化して、標記化合物を白色の固体として得た。MS(m/e):382.3(M+H、100%)。
【0136】
b)rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)−ピロリジン−1−イル]−メタノン
【0137】
【化31】

【0138】
DMF 1ml中のrac−(3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル)−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン100mgの溶液に、アルゴン下、0℃で、4−(トリフルオロメチル)ベンジルクロリド0.042ml、続いてナトリウム−tert−ブトキシド31.2mgを加えた。反応混合物を室温で2日間撹拌し、蒸発させた。残留物を酢酸エチルに溶解し、水で2回抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。残留物をシリカゲル(溶離剤:酢酸エチル)で精製して、標記化合物を油状物として得た。MS(m/e):540.2(M+H、100%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】


[式中、
1は、非置換であるか、又は低級アルキルもしくはハロゲンにより置換されている、−OR1’、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり;
1’は、低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、又は−(CH−シクロアルキルであり;
は、−S(O)−低級アルキル、−S(O)NH−低級アルキル、NO又はCNであり;
は、非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、CN、NO、ハロゲン、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルコキシ、アリールもしくはスルホンアミドからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されているアリール又はヘテロアリールであり;
Xは、結合、−CH−、−NH−、−CHO−又は−OCH−であり;
nは、1又は2であり;
mは、1又は2であり;
oは、0又は1である]の化合物、及びその薬学的に許容しうる酸付加塩。
【請求項2】
Xが結合であり、Rが、非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、CN、NO、ハロゲン、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルコキシ、アリールもしくはスルホンアミドからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されているフェニルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
化合物が、
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−メタノンである、請求項2に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
Xが−CH−であり、Rが、非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、CN、NO、ハロゲン、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルコキシ、アリールもしくはスルホンアミドからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されているフェニルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項5】
化合物が、
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−[5−メタンスルホニル−2−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−プロポキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−(4’−フルオロ−4−メタンスルホニル−ビフェニル−2−イル)−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−(2−シクロブチルメトキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン又は
rac−(2−シクロペンチルオキシ−5−メタンスルホニル−フェニル)−[3−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−ピロリジン−1−イル]−メタノンである、請求項4に記載の式Iの化合物。
【請求項6】
Xが−OCH−であり、Rが、非置換であるか、又は低級アルキル、低級アルコキシ、CN、NO、ハロゲン、ハロゲンにより置換されている低級アルキル、ハロゲンにより置換されている低級アルコキシ、アリールもしくはスルホンアミドからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されているフェニルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項7】
化合物が、
rac−[3−(4−クロロ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン、
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−(3−p−トリルオキシメチル−ピロリジン−1−イル)−メタノン、
rac−[3−(ビフェニル−4−イルオキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン、
rac−4−{1−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−ベンゾイル]−ピロリジン−3−イルメトキシ}−ベンゾニトリル、
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−ニトロ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(4−トリフルオロメトキシ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−メタノン、
rac−[3−(3,4−ジクロロ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−メタノン又は
rac−[5−メタンスルホニル−2−((S)−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−[3−(3−メトキシ−フェノキシメチル)−ピロリジン−1−イル]−メタノンである、請求項6に記載の式Iの化合物。
【請求項8】
Xが−NH−である、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項9】
Xが−CHO−である、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項10】
a)式II:
【化2】


の化合物を、TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)のような活性化剤の存在下、式III:
【化3】


の化合物と反応させて、式I:
【化4】


[式中、置換基R、R及びRは請求項1において定義するとおりであり、m及びnは互いに独立して1又は2である]の化合物を得ること;
b)式IV:
【化5】


の化合物を、ホスフィンの存在下、ミツノブ条件の下で、式:
【化6】


の化合物と反応させて、式I:
【化7】


[式中、置換基R、R及びRは請求項1において定義するとおりであり、Xは−OCH−であり、m及びnは互いに独立して1又は2である]の化合物を得ること;
c)式V:
【化8】


の化合物を、ナトリウムtert−ブトキシドのような塩基の存在下、式:
【化9】


[式中、Halは、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲン原子である]の化合物と反応させて、式I:
【化10】


[式中、置換基R、R及びRは請求項1において定義するとおりであり、Xは−CHO−であり、m及びnは互いに独立して1又は2である]の化合物を得ること、および
所望であれば、得られた化合物を、薬学的に許容しうる酸付加塩に変換することを含む、請求項1に記載の式Iの化合物の調製方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法又は同等な方法により調製される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の1種以上の化合物及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む医薬。
【請求項13】
グリシン取り込み阻害剤に基づく疾病の処置用の、請求項12に記載の医薬。
【請求項14】
疾病が、精神病、疼痛、記憶及び学習における機能障害、統合失調症、認知症及び認知過程が損なわれた他の疾患、注意欠陥障害又はアルツハイマー病である、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
精神病、疼痛、記憶及び学習における神経変性機能障害、統合失調症、認知症及び認知過程が損なわれた他の疾患、注意欠陥障害又はアルツハイマー病の処置用の医薬の製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項16】
本明細書中上記の発明。

【公表番号】特表2009−541251(P2009−541251A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515835(P2009−515835)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055871
【国際公開番号】WO2007/147770
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】