説明

耐熱塑性変形性に優れたWC基超硬合金製切削工具および表面被覆WC基超硬合金製切削工具

【課題】切刃部が局部的に高温に曝されるようなTi基合金、Ni基合金、Co基合金等の耐熱合金の切削加工において、すぐれた耐熱塑性変形性を備えることにより、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する切削工具を提供する。
【解決手段】 55〜90質量%のCuと残部がCoおよび不可避不純物からなる配合組成を有する結合材を4〜12質量%含有し、あるいはさらに、VC、Cr、TiC、TaC、NbCのうちの1種以上を合計0.1〜2質量%含有し、残部がWCおよび不可避不純物からなる配合組成を有する圧粉体の焼結体で構成され、必要に応じて、その表面を、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、TiとAlの複合窒化物のいずれか1種または2種以上の単層、複層からなる硬質被覆層が蒸着形成されてなる切削工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被削材の熱伝導率が小さく、切削加工時に切れ刃が高熱となるような耐熱合金の切削加工において、すぐれた耐熱塑性変形性を備えることにより、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する炭化タングステン基超硬合金製切削工具に関するものであり、さらに、上記炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体の表面に硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、結合相形成成分としてCoを含有し、残りがWCおよび不可避不純物からなるWC基超硬工具が知られており、このWC基超硬合金において、Co含有量を一定にするとWC粒の微細なものほど硬さは大きくなり、耐摩耗性が向上する。そのため、例えば、特許文献1に示されるように、VC、Cr、TiC、TaC、NbCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を添加して焼結時のWC成長を防ぐことが行われている。
しかし、WC基超硬合金は一般的に焼結によって作製され、しかも、焼結温度が高いため、焼結時のWC粒の成長を十分に抑止することができず、十分な耐摩耗性を得られないという問題があった。
そこで、特許文献2に示されるように、WC基超硬合金の結合相成分であるCoにCuを添加含有させ、Co−1.2〜50質量%Cuの成分組成からなる結合相を構成することにより、焼結時の液相出現温度を下げ、WC基超硬合金の低温での焼結を可能とし、その結果として、耐摩耗性の低下防止を図ったWC基超硬工具が知られているが、このWC基超硬工具では、Cu成分を過多(50質量%以上)に添加すると硬度低下が生じるとの理由からCu含有量の上限は50質量%に制限されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−15135号公報
【特許文献2】特開平4−66640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに、高能率化、低コスト化の要求は強く、また、切削工具の汎用化も求められているところであるが、例えば、特許文献1,2に示される従来のWC基超硬工具を、通常条件の切削加工で用いた場合には特段の問題は生じない。
しかし、これを、特に、熱伝導率が小さく、切削加工時に切れ刃が高熱となるようなTi基合金、Ni基合金、Co基合金等の耐熱合金の切削加工に用いた場合には、切削時の高熱により、特に切刃部が局部的に高熱にさらされ、熱塑性変形を発生しやすくなり、また、その結果としての偏摩耗を発生しやすくなるため、これが原因となり、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、Ti基合金、Ni基合金、Co基合金等の耐熱合金等の切削加工に用いた場合でも、すぐれた耐熱塑性変形性を発揮し、偏摩耗等が生じることなく長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するWC基超硬工具について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
【0006】
通常、WC基超硬合金からなる焼結体の製造は、特定の平均粒径のWC粉末、Co粉末とともに、必要に応じて、VC粉末、Cr粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末を所定割合になるように配合した原料粉末を湿式ボールミル中で混合し、成形したのち、この圧粉成形体を温度:1400〜1450℃で約1時間焼結することにより行われている(この方法で製造されたWC基超硬合金焼結体を、以下、通常WC基超硬合金焼結体という)。
【0007】
本発明では、上記通常のWC基超硬合金焼結体の製造方法において、結合相形成成分として、所定平均粒径および所定割合のCu粉末をさらに追加して添加配合することにより原料粉末を調製し、これを焼結することにより焼結体を作製したところ、得られたWC基超硬合金焼結体(以下、本発明WC基超硬合金焼結体という)の組織には、WC粒子と結合相との界面にCu富化層の存在が観察された。
そして、通常WC基超硬合金焼結体と、WC粒子と結合相との界面にCu富化層が存在する組織を有する上記本発明WC基超硬合金焼結体との物性(硬度)を比較調査したところ、図1に示される興味深い現象を見出したのである。
【0008】
つまり、図1にみられるように、結合相成分として所定量のCuを含有する本発明WC基超硬合金焼結体の常温硬さは、通常WC基超硬合金焼結体のそれに比して若干下回っているが、900℃という高温下で高温硬さを調査したところ、本発明WC基超硬合金焼結体の高温硬さは通常WC基超硬合金焼結体のそれを上回っており、本発明WC基超硬合金焼結体は、硬度低下の温度依存性が小さく、高温条件下でも優れた高温硬さを有することが分かる。
【0009】
前記特許文献2に記載のものでも、原料粉末中にCu粉末を追加配合して焼結することによりWC基超硬合金焼結体(以下、従来WC基超硬合金焼結体という)を得ているが、この従来WC基超硬合金焼結体中に含有されるCu含有量については、WC基超硬工具の硬度低下を防止するという観点からCu含有量上限値が50質量%に制限されている。
しかし、本発明者等の知見によれば、WC基超硬合金焼結体の結合相におけるCuの配合割合を55〜90質量%(=Cu×100/(Co+Cu))に高めた場合には、WC粒子と結合相との界面にCu富化層が存在する組織が形成されることによって、硬度低下の温度依存性が小さくなるため、予想に反して、高温条件下でも優れた高温硬さを維持できることを見出したのである。
【0010】
上記のとおり、本発明WC基超硬合金焼結体は、高温条件下で優れた高温硬さを備えることから、本発明WC基超硬合金焼結体から構成されたWC基超硬工具およびさらに硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆WC基超硬工具は、切刃部が局部的に高温に曝されるTi基合金、Ni基合金、Co基合金等の耐熱合金等の切削加工に用いた場合でも、すぐれた耐熱塑性変形性を示し、偏摩耗等の発生を生じることなく長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものである。
【0011】
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1) Cuを55〜90質量%含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる配合組成を有する結合材を用い、
前記結合材:4〜12質量%、残部がWCおよび不可避不純物からなる配合組成を有する圧粉体の焼結体で構成されてなることを特徴とするWC基超硬合金製切削工具。
(2) 前記結合材:4〜12質量%、VC、Cr、TiC、TaC、NbCのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.1〜2質量%を含有し、残部がWCおよび不可避不純物からなる配合組成を有する圧粉体の焼結体で構成されてなることを特徴とする請求項1に記載のWC基超硬合金製切削工具。
(3) 請求項1または2に記載のWC基超硬合金製切削工具の表面に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、TiとAlの複合窒化物のうちから選ばれる1種の単層または2種以上の複層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆WC基超硬合金製切削工具。」
に特徴を有するものである。
【0012】
この発明のWC基超硬工具について、以下に詳細に説明する。
この発明のWC基超硬工具は、WC粉末、Co粉末に加えてCu粉末を配合し、さらに、必要に応じて、VC粉末、Cr粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末を所定割合になるように配合した原料粉末を、湿式ボールミル中で混合し、所定形状にプレス成形したのち、この圧粉成形体を1400〜1550℃の温度範囲で、所定圧(≒30〜700Pa)のHeまたはAr雰囲気中で焼結し、さらに、所定圧(≒3〜10MPa)のHeまたはAr雰囲気中で熱間静水圧プレス(HIP)成形することにより、本発明WC基超硬合金焼結体を作製し、これを所定形状に加工することにより、本発明のWC基超硬工具を製造することができる。
ここで、焼結時の雰囲気を約30〜700PaのHeまたはArとしたのは、焼結時にCu成分が蒸発し目標組成の結合相が得られなくなることを防止するためであり、また、熱間静水圧プレス(HIP)で成形するとしたのは、Cu含有による焼結性の低下を補完するためである。
【0013】
WC粉末、Co粉末に加えるCu粉末は、本発明WC基超硬合金焼結体中で、Co成分と共にCo−Cu相からなる結合相を形成するが、WC基超硬合金焼結体における結合相の含有割合が4質量%未満では、WC基超硬合金の緻密化が十分になされず、一方、結合相の含有割合が12質量%を越えると、WC基超硬合金の硬度が低下し、Ti基合金、Ni基合金、Co基合金等の耐熱合金の切削加工において耐摩耗性が低下傾向を示すようになることから、本発明WC基超硬合金焼結体における結合相の含有割合は4〜12質量%と定めた。
【0014】
結合相を形成するCo−Cu相は、Co相単独の結合相に比してすぐれた熱伝導率を有すると共に、Co−Cu相におけるCu成分は、WC粒と結合相との界面にWC粒との濡れ性の低いCu富化層を形成し、これによって、焼結組織中にWCスケルトン構造が形成され、その結果として、Co−Cu相からなる結合相を有する本発明WC基超硬合金焼結体は、高温硬さに優れ、かつ、高温下でのWC粒の再配列による熱塑性変形の発生を抑制することができる。
なお、結合相成分としてCu成分を含有させた場合、常温硬さについては、Cu成分を含有させない結合相(Co相)を有する通常WC基超硬合金焼結体に比して若干劣るものの、すでに述べたように、Co−Cu相からなる結合相を備えた本発明WC基超硬合金焼結体は、焼結組織中にWCスケルトン構造が形成されているため、Cuを含有しない通常WC基超硬合金焼結体よりも、その高温硬さ、耐熱塑性変形性が優れている。
【0015】
Co−Cu相からなる結合相におけるCu成分の含有割合(=Cu×100/(Co+Cu))が55質量%未満の場合には、Cu含有による熱伝導率向上効果が十分でないばかりか、WCスケルトン構造の形成も充分でないため、すぐれた高温硬さおよび耐熱塑性変形性を発揮することができず、一方、Cu成分の含有割合が90質量%を超えると、結合相の融点が著しく低下するため高温での耐熱塑性変形性が低下することから、Co−Cu相からなる結合相におけるCu成分の含有割合(=Cu×100/(Co+Cu))は55〜90質量%と定めた。
【0016】
本発明WC基超硬合金焼結体では、VC、Cr、TiC、TaC、NbCのうちから選ばれる1種または2種以上の成分を含有することができる。
VC、Cr、TiC、TaC、NbCのうちから選ばれる1種または2種以上の成分は、いずれも、焼結時のWCの粒成長を抑制する作用があるが、その合計含有量が0.1質量%未満では、粒成長抑制作用が小さく、一方、2質量%を越えて含有すると複合炭化物相が析出し、硬度が低下傾向を示すようになるので、VC、Cr、TiC、TaC、NbCのうちから選ばれる1種または2種以上の成分の含有量は、その合計量で0.1〜2質量%と定めた。
【0017】
また、本発明のWC基超硬合金焼結体は、これをそのまま切削工具として用いることができるばかりか、その表面に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、TiとAlの複合窒化物のうちから選ばれる1種の単層または2種以上の複層からなる硬質被覆層を、物理蒸着及び/又は化学蒸着により形成することによって、Cu富化層の形成、WCスケルトン構造の形成を何ら妨げることなく、一段と耐熱性、耐摩耗性の向上を図ることができるばかりか、工具寿命の延命化を図ることができるのである。
【発明の効果】
【0018】
この発明のWC基超硬工具、表面被覆WC基超硬工具は、これを構成するWC基超硬合金焼結体の結合相が、55〜90質量%のCuと残部はCoの組成からなり、結合相中のCu成分が、WC粒と結合相との界面にWC粒との濡れ性の低いCu富化層を形成することによって、焼結組織中にWCスケルトン構造が形成されているため、高温硬さに優れ、かつ、耐熱塑性変形性にも優れ、切刃部が局部的に高温に曝されるTi基合金、Ni基合金、Co基合金等の耐熱合金等の切削加工に用いた場合でも、偏摩耗等の発生を生じることなく長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明WC基超硬合金焼結体と従来WC基超硬合金焼結体の常温硬さ及び高温硬さを示す。
【図2】WCスケルトン構造からなる焼結組織を有する本発明超硬工具の金属組織(模式図)を示す。
【図3】WCスケルトン構造が形成されていない焼結組織の比較例超硬工具の金属組織(模式図)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、この発明の切削工具を実施例により具体的に説明する。
【実施例】
【0021】
原料粉末として、いずれも0.5〜5μmの平均粒径を有する、Co粉末、Cu粉末、VC粉末、Cr粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、表3に示される温度範囲に昇温し、同じく表3に示される雰囲気中で焼結するとともに、同じく表3に示される雰囲気中で熱間静水圧プレス(HIP)処理した後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもった本発明WC基超硬合金製切削工具(本発明超硬工具という)1〜12を作製した。
なお、本発明超硬工具11,12については、工具基体表面に、アークイオンプレーティング装置を用いて、表4に示されるとおりの組成および平均膜厚の硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明請求項3に対応する表面被覆WC基超硬合金製切削工具11,12とした。
【0022】
また、比較の目的で、原料粉末を、表2に示される配合組成となるように配合し、ワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、表3に示される温度範囲に昇温し、同じく表3に示される雰囲気中での焼結、熱間静水圧プレス(HIP)処理した後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもった比較例WC基超硬合金製切削工具(比較例超硬工具という)1〜8を作製した。
【0023】
上記本発明超硬工具1〜12および比較例超硬工具1〜8のそれぞれについて、焼結組織を走査型電子顕微鏡(倍率:5000)で観察し、かつ、WC粒と結合相との界面についてオージェ分光分析を行ったところ、本発明超硬工具1〜12はいずれも、WC粒と結合相との界面にCu富化層が形成されたWCスケルトン構造を有することが確認された。
これに対して、比較例超硬工具1〜8のいずれについても、Cu富化層の形成は確認できず、WCスケルトン構造の形成は不十分であった。
【0024】
図2には、WCスケルトン構造からなる焼結組織を有する本発明超硬工具の金属組織模式図を示す。
図3には、WCスケルトン構造が形成されていない焼結組織の比較例超硬工具の金属組織模式図を示す。
また、表1には、オージェ分光分析によって測定したWC粒と結合相との界面に形成されたCu富化層の平均厚みおよび平均Cu組成(いずれも5か所測定の平均値)を示す。
ここで、オージェ電子分光装置(AES)にて、WC粒と結合相との界面を垂直に横切る方向に線分析を実施した際に、Cu/(Co+Cu)>55質量%となる領域をCu富化層であると定義し、さらに、該Cu富化層について、5本線分析した時の厚みの平均値をCu富化層の平均厚みであると定義する。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】
つぎに、上記本発明超硬工具1〜12および比較例超硬工具1〜8について、
被削材 : Ti−6Al−4Vの丸棒、
切り込み: 1.0 mm、
送り : 0.2 mm/rev.、
切削時間: 10 分、
の条件の下、70m/min(切削条件Aという),100m/min(切削条件Bという)の二種類の切削速度で、Ti基耐熱合金の湿式連続切削加工試験を行った。
また、
被削材 :質量%で、Cr:18.0%,Mo:3.0%,Fe:18.5%,Ti:0.9%,Al:0.5%、Nb+Ta:5.1%,残部:Ni(および不可避不純物)の丸棒、
切り込み: 1.0 mm、
送り : 0.2 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件の下、50m/min(切削条件Cという)の切削速度で、Ni基耐熱合金の湿式連続切削加工試験を行った。
いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表5に示した。
【0030】
【表5】

【0031】
表5に示される結果から、本発明超硬工具1〜12は、これを構成するWC基超硬合金焼結体の結合相が、55〜90質量%のCuと残部はCoの組成からなり、結合中のCu成分が、WC粒と結合相との界面にWC粒との濡れ性の低いCu富化層を形成することによって、焼結組織中にWCスケルトン構造が形成されているため、高温硬さに優れ、かつ、耐熱塑性変形性にも優れることから、切刃部が局部的に高温に曝されるTi基合金、Ni基合金、Co基合金等の耐熱合金の切削加工に用いた場合でも、偏摩耗等の発生を生じることなく長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
特に、工具基体表面にさらに硬質被覆層を蒸着形成した本発明超硬工具11,12は、より一段とすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
これに対して、比較例超硬工具1〜8においては、切刃部が局部的に高温に曝されるTi基合金、Ni基合金、Co基合金等の耐熱合金の切削加工に用いた場合には、切刃部のチッピング・欠損発生あるいは偏摩耗の発生等により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明のWC基超硬合金製切削工具、表面被覆WC基超硬合金製切削工具は、Ti基合金、Ni基合金、Co基合金等の耐熱合金の切削加工ばかりでなく、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工にも勿論使用可能であり、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮し、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に適うものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cuを55〜90質量%含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる配合組成を有する結合材を用い、
前記結合材:4〜12質量%、残部がWCおよび不可避不純物からなる配合組成を有する圧粉体の焼結体で構成されてなることを特徴とするWC基超硬合金製切削工具。
【請求項2】
前記結合材を4〜12質量%含有するとともに、VC、Cr、TiC、TaC、NbCのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.1〜2質量%含有し、残部がWCおよび不可避不純物からなる配合組成を有する圧粉体の焼結体で構成されてなることを特徴とする請求項1に記載のWC基超硬合金製切削工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載のWC基超硬合金製切削工具の表面に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、TiとAlの複合窒化物のうちから選ばれる1種の単層または2種以上の複層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆WC基超硬合金製切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−88253(P2011−88253A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244338(P2009−244338)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】