説明

耐熱天然樹脂基板及び、耐熱天然樹脂基板の製造方法

【課題】化石資源に代わるカーボンニュートラルを目指した天然樹脂の耐熱性、耐衝撃性、耐加水分解性、成形性などの機能的欠点を克服し、天然の自然物のみを原料としながら簡便な製造方法によって、250℃以上の耐熱性と耐熱膨張性及び、高温環境での反りをも抑制し、なおかつ軽量で強度もある耐熱天然樹脂基板及び、耐熱天然樹脂基板の製造方法の提供を行う。
【解決手段】天然繊維による織布とガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムからなる芯材及び補強材と、ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層材で構成された積層体であり、エボナイトの絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性、機械的強度と、ガラス質微小中空球体の軽量性、耐熱性、耐熱膨張性、天然繊維の軽量性、強度、衝撃性の機能を有し、耐熱性と耐熱膨張性に優れ、高温環境下での反りも少ない耐熱天然樹脂基板及び、耐熱天然樹脂基板の製造方法の提供を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材と、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた後に加硫処理を施したエボナイトからなる表層材で構成された積層体による天然樹脂基板であり、エボナイトが持つ絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性、機械的強度に優れた特性に、エボナイトにガラス質微小中空球体を含有することで耐熱性と耐熱膨張性を向上させ、さらには天然繊維からなる織布と弾性ゴムによる芯材及び補強材からもたらせられる強度と衝撃性及び高温環境下における反りの抑制、天然繊維からなる織布とガラス質微小中空球体による軽量性を付加することで、天然樹脂でありながら、軽量で強度があり耐熱性と耐熱膨張性に優れ、高温環境下における反りも少ない耐熱天然樹脂基板及び、耐熱天然樹脂基板の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の持続と化石資源の枯渇から、化石資源に代わるカーボンニュートラルを目指した天然樹脂の開発が盛んに行われている。しかしながら現存するバイオマスを原料とした天然樹脂のほとんどは複雑な製造工程を必要とし、例えば、天然樹脂に代表されるポリ乳酸樹脂は、糖化、発酵、精製、重合と多くの製造工程を要することで製造コストが高価になってしまう。またポリ乳酸樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、耐加水分解性、成形性などの機能に劣り、その機能欠点を補うために、成長が早く、なおかつ二酸化炭素排出量削減及び二酸化炭素の固定化に期待されているケナフ等の植物資源を用いた天然繊維を含有したポリ乳酸樹脂であっても、その耐熱温度はせいぜい170℃程度である。(例えば、特許文献1)そのため耐熱性を要求する製品若しくは、製造工程上で250℃を超える高温加工を必要とする製品に対応する天然樹脂若しくは天然樹脂基板は存在しておらず、ガラス基板、ポリイミド基板、ポリエステル基板、セラミック、金属箔等に代わるカーボンニュートラルの天然樹脂基板を用いた製品が現れてこなかった。
【0003】
上記のガラス基板、ポリイミド基板、ポリエステル基板、セラミック、金属箔等を用いた製品として太陽電池がある。(例えば、特許文献2)太陽電池は、地球環境の持続と化石資源の枯渇から、化石資源に代わる次世代のエネルギーとして期待されている。しかしながら現在の太陽電池は重量もかさばる上に製造コストが高く、また導入コストも高いという欠点があるため、容易に扱える製品とまではなってはいない。したがって太陽電池の普及を図るために、太陽電池の軽量化と低コスト化を図る安価な樹脂や金属箔による太陽電池基板材の研究開発が盛んに行われてはいるが、太陽電池製造時の製膜温度はかなりの高温になるため、太陽電池に用いられる樹脂は高耐熱性を求められることとなる。しかしながら既存の樹脂のなかで耐熱性に優れている樹脂は限られており、高耐熱樹脂のほとんどは高価であるという欠点を有している。なお天然樹脂に限ってでは高耐熱性の天然樹脂は皆無である。また限られた高耐熱樹脂であっても、半導体との異なる熱膨張によって生じる半導体層へのクラック、高温の製膜加工時での樹脂が反ってしまう問題が残っており、(例えば、特許文献3)高耐熱だけではなく、熱膨張も少なく、高温環境での反りも発生しない安価な樹脂基板の実用化が望まれている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−185789号公報
【特許文献2】特公昭59−53178号公報
【特許文献3】特開2000−140143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、化石資源に代わるカーボンニュートラルを目指した天然樹脂若しくは天然繊維含有樹脂の欠点を克服し、天然の自然物のみを原料とし、なおかつ簡便な製造方法によって250℃以上の耐熱性と耐熱膨張性、そして高温環境における反りの発生もなく、安価に製造できることと、強度、軽量共に、ポリイミド(PI)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)等のスーパエンジニアリングプラスチック同等若しくは、それ以上でありながら、絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性にも優れ、機械的強度も強い耐熱天然樹脂基板の提供を行う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の耐熱天然樹脂基板は、化石資源に代わるカーボンニュートラルを目指した素材であり、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材と、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた後に加硫処理を施したエボナイトからなる表層材で構成された積層体である。またこの耐熱天然樹脂基板は、天然の自然物のみを原料とし、なおかつ簡便な製造方法により安価で製造ができる上に、250℃以上の耐熱性と耐熱膨張性及び、高温環境における反りもなく、軽量で強度がありながら、エボナイトの特性である、絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、機械的強度も強い機能をも有することを特徴とする耐熱天然樹脂基板である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の耐熱天然樹脂基板は、天然の自然物のみを原料とし、なおかつ簡便な製造方法でありながら、エボナイトにガラス質微小中空球体を含有することで耐熱性と耐熱膨張性を向上させ、なおかつエボナイトの絶縁性、耐候性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、機械的強度に優れた特性に、天然繊維からなる織布と弾性ゴムによる芯材及び補強材からもたらせられる強度と衝撃性及び高温環境下における反りの抑制、さらには、天然繊維からなる織布とガラス質微小中空球体による軽量性の機能をも付加することで、天然樹脂でありながら軽量で強度があり、250℃以上の耐熱性を有する耐熱天然樹脂基板である。したがって耐熱性を要求する製品若しくは製造工程上で250℃を超える高温加工を必要とする製品及び、ガラス基板、ポリイミド基板、ポリエステル基板、セラミック、金属箔などを用いる製品等の代替品としての活用に期待ができる。

【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態においての耐熱天然樹脂基板の断面図。
【図2】本発明の実施の形態においての耐熱天然樹脂基板の製造フローチャート。
【図3】本発明の実施の形態においての耐熱天然樹脂基板の真空引きによる型詰め加工のフローチャート。
【図4】本発明の実施の形態においての耐熱天然樹脂基板の拘束高温加熱処理及び拘束高温加硫処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実態の形態について説明する。
芯材及び補強材の原料は、主に天然繊維の織布、天然ゴムと架橋剤、そしてガラス質微小中空球体から構成される。

天然繊維の織布
(1)芯材及び補強材に用いる天然繊維の織布は、植物及び動物に由来する天然繊維による織布であり、このうち植物に由来する植物性天然繊維としては、ヘンプ、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、シュロ、芭蕉、綿花、麦、稲、竹、各種針葉樹、各種広葉樹などから得られた天然繊維であり、これらの1種若しくは2種以上を併用してもよい。
(2)芯材及び補強材に用いる天然繊維の織布は、昆虫であるカイコから得られる絹及び、各種動物の獣毛に由来する動物性天然繊維の併用及び単独使用も可能である。
(3)芯材及び補強材に用いる天然繊維の織布は、天然繊維を原料にして製造される植物系の再生繊維や、ペットボトル等を再生して製造される化学系の再生繊維との併用及び、単独使用も可能である。また化学繊維であるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表されるポリアミド系合成繊維、アセテートに代表されるセルロース系半合成繊維、プロミックスに代表されるタンパク質系半合成繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジックに代表されるセルロース系再生繊維、無機繊維であるガラス繊維や炭素繊維との併用及び単独使用も可能である。
(4)芯材及び補強材に用いる天然繊維の織布は、穀物資源から発酵により得られる乳酸を原料とするポリ乳酸を繊維化した生分解性繊維との併用及び単独使用も可能である。
(5)上記の植物性天然繊維、動物性天然繊維、化学繊維、生分解性繊維のうちで、地球環境の持続を考慮した結果、植物性天然繊維が好ましく、そのなかでもヘンプから得られた植物性天然繊維の靭皮部から得られるヘンプ繊維からなる織布が好ましい。
(6)芯材及び補強材で用いられる天然繊維からなる織布の量及び厚みは特に限定せず、求められる製品の厚みに応じて天然繊維からなる織布の厚みを決定すればよい。また天然繊維からなる織布を積み重ねることで芯材及び補強材の厚みの調整を行うことも可能である。

天然ゴム
(7)芯材及び補強材に用いる天然ゴムは、液状ゴム、ゴム樹液、それを濃縮したもの、さらには保存剤等を配合したもの及び、固形ゴムを液状化したものである。
(8)芯材及び補強材に用いる天然ゴムの配合割合は、天然ゴム 100重量部に対し、水道水 200重量部以上で希薄したものである。

架橋剤
(9)芯材及び補強材となる積層体に用いる架橋剤は、200〜500メッシュの粉末の硫黄であり、その配合割合は天然ゴム 100重量部に対し0〜5重量部である。

ガラス質微小中空球体
(10)芯材及び補強材に用いるガラス質微小中空球体として、アルミナバブル、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、パーライトなどが挙げられるが、地球環境の持続を考慮した結果、自然物を原料としたシラスバルーンとパーライトが好ましく、そのなかでも中心粒径が小さく、耐熱性、軽量性、強度等を考慮すると、微粉のシラスバルーンが最も好ましい。
(11)上記のガラス質微小中空球体の形状は真球状が最も好ましい形状だが、中空体であれば特に形状にはこだわらない。またガラス質微小中空球体の中心粒径としては10〜20μmが好ましく、そのなかでも最も好ましい中心粒径は14μm前後である。
(12)芯材及び補強材に用いるガラス質微小中空球体の配合割合は、天然ゴム 100重量部に対し、ガラス質微小中空球体 30〜70重量部であることが好ましい。

その他
(13)拘束高温加硫処理時の臭気発生抑制剤として、ヒバオイルを0〜10重量部配合することが好ましい。
(14)拘束高温加硫処理時に発生する臭気ガス発生の低減を図るために、0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなる水溶液に接触させることが好ましい。

【0010】
表層部となるエボナイトの原料及び配合割合は、主に天然ゴムと架橋剤、そしてガラス質微小中空球体から構成される。

天然ゴム
(15)表層部となるエボナイトに用いる天然ゴムは、液状ゴム、ゴム樹液、それを濃縮したもの、さらには保存剤等を配合したもの及び、固形ゴムを液状化したものである。
(16)表層部となるエボナイトに用いる天然ゴムの配合割合は、天然ゴム 100重量部に対し、水道水 100〜200重量部以上で希薄したものである。

架橋剤
(17)表層部となるエボナイトに用いる架橋剤は、200〜500メッシュの粉末の硫黄であり、その配合割合は天然ゴム 100重量部に対し30〜40重量部である。

ガラス質微小中空球体
(18)表層部となるエボナイトに用いるガラス質微小中空球体として、アルミナバブル、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、パーライトなどが挙げられるが、地球環境の持続を考慮した結果、自然物を原料としたシラスバルーンとパーライトが好ましく、そのなかでも中心粒径が小さく、耐熱性、軽量性、強度等を考慮すると、微粉のシラスバルーンが最も好ましい。
(19)上記のガラス質微小中空球体の形状は真球状が最も好ましい形状だが、中空体であれば特に形状にはこだわらない。またガラス質微小中空球体の中心粒径としては10〜20μmが好ましく、そのなかでも最も好ましい中心粒径は14μm前後である。
(20)表層部となるエボナイトに用いるガラス質微小中空球体体の配合割合は、天然ゴム 100重量部に対し、ガラス質微小中空球体 60重量部前後であることが好ましい。

その他
(21)拘束高温加硫処理時の臭気発生抑制剤として、ヒバオイルを0〜10重量部配合することが好ましい。
(22)拘束高温加硫処理時に発生する臭気ガスの発生低減を図るために、0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなる水溶液に接触させることが好ましい。

【0011】
型詰め加工
(23)耐熱天然樹脂基板の表層部に平滑性をもたらせるために、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた表層材となる混合物内の気泡を、真空環境を生み出す装置を用いて真空引きにて気泡を消滅させる。
(24)耐熱天然樹脂基板の表層部の平滑性をもたらせるために、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた表層材となる混合物を金型内に注入した後、金型ごと真空環境を生み出す装置内に固定し、金型面とガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた表層材となる混合物間で生じた気泡を真空引きにて消滅させる。
(25)(24)の真空引き加工による型詰め加工後、金型内のガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた表層材となる混合物の上に天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材を挿入する。その後、表層材となる混合物と芯材及び補強材とを密着させるために、再度真空環境を生み出す装置内に固定し真空引き加工を行う。
(26)ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた表層材となる混合物と、天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材を金型内で積層した後、耐熱天然樹脂基板のもう片面の表層部となるガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた表層材となる混合物を注入した後、注入した混合物の気泡を真空引きにて消滅させる。これは耐熱天然樹脂基板の表層部に平滑性をもたらせることと、真空引きを行うことで、金型内の三層の積層体を密着させ、高温環境時での積層部の剥がれを防止するためである。

【0012】
圧縮加工及び、圧着圧縮加工
(27)耐熱天然樹脂基板に均一な板厚を提供し、なおかつ高温環境での反りの発生を抑制するために、天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材に臭気ガスの発生低減の浸透処理を行った後、50kgf/cm2以上の加圧力で圧縮加工を行うことで、均一な板厚の芯材及び補強材と成す。この均一な板厚による芯材及び補強材が高温環境における反りの発生を抑制することとなる。なお圧縮加工時の加圧時間は特に限定しない。
(28)耐熱天然樹脂基板に平坦性と平滑性をもたらせることと、高温環境下での積層体の剥がれを防止するために、天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材の両面に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた表層材を積層させ、臭気ガスの発生低減の浸透処理を行った後、1,000kgf/cm2以上の加圧力で圧着圧縮加工を行う。なお圧着圧縮加工時の加圧時間は特に限定せず、希望する板厚に達した段階を加圧時間の目安とすれば良い。

【0013】
加熱、加硫処理加工
(29)圧着圧縮加工を行った積層体の表層部をエボナイトにするために、積層体を金属板で挟み拘束状態とし、加熱温度140℃以上加熱時間30分程度の拘束高温加熱処理を行い、続いて加熱温度250℃、加熱時間30分程度の拘束高温加硫処理を行い表層部がエボナイト積層体である耐熱天然樹脂基板と成す。なお積層体を金属板で挟み拘束状態とするのは、加熱による表層部の積層体の焼け防止と、架橋時における表層部の積層体の収縮における反り防止のためであり、加熱処理を拘束高温加熱処理と拘束高温加硫処理と2段階に分けるのは、天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材が焼けてしまうのを防止するためであり、ゴムの特性である低熱伝導性を生かし、芯材及び補強材の弾性ゴム状態を維持したまま、表層部の積層体のみをエボナイトにするためである。

【0014】
浸透処理
(30)天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材を、0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液に接触させることで、拘束高温加硫処理で発生する臭気ガスの低減を行う。
(31)天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材の両面に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた表層材を積層した後、0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液に接触させることで、拘束高温加硫処理に発生する臭気ガスの低減を行う。
(32)(30)(31)と2段階に浸透処理を行うことで、酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液の接触面が、積層体の表面だけではなく芯材内部にも持つことで、拘束高温加硫処理で発生する臭気ガスを効率的に抑えることができる。

【0015】
表層部の表面処理
(33)天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材の両面に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた表層材との積層体の圧縮処理を施した凝固物の表面処理として、天然物である未熟な果実を粉砕、圧搾して得られた汁液を発酵・熟成させて得られる柿渋や、陶磁器や琺瑯に用いられる釉薬を薄めたものを用いることも可能である。また炭酸リチウムや、二酸化チタン等の無機化合物の併用も可能である。なお柿渋や釉薬を用いる表面処理は高温拘束加硫処理前に完了させなければならない。これは表層部がエボナイトとなってからでは、より高精度の平滑性が期待できなくなるからである。
(34)表層部となるエボナイトの表面処理としてバフ仕上げによる研磨加工を行うことも可能である。

【0016】
次に、図1〜図4に基づいて本発明の実態の形態に係る耐熱天然樹脂基板における作製の実施例を説明する。
本発明の実態の形態に係る耐熱天然樹脂基板は、天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材と、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた後に加硫処理を施したエボナイトからなる表層材で構成された積層体であり、図1に耐熱天然樹脂基板の断面図を示している。また図2は耐熱天然樹脂基板の製造方法のフローチャートであり、図3は耐熱天然樹脂基板に平坦性と平滑性に寄与する真空引きによる型詰め加工のフローチャートであり、図4は耐熱天然樹脂基板に平坦性と平滑性に寄与し、さらには耐熱天然樹脂基板の反りの抑制を抑えるために行う拘束高温加熱処理及び拘束高温加硫処理のフローチャートである。

【0017】
耐熱天然樹脂基板 1は、図1に示すように、ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部の表面に表面処理を行った表面処理部 2と、表層部の片面となるガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体 31、そしてもう片面の表層部であるガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体 32、天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体 4である。

【0018】
天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体 4の作製。
(35)図1に示す天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる積層体4は、図2に示す原料M00の天然ゴムM10 100重量部に対し、硫黄M20 0〜30重量部、ガラス質微小中空球体M30 30〜70重量部、水道水M40 200重量部以上、その他配合剤M50のヒバオイル 0〜10重量部を混合S10で混合を行いバインダM100と成す。
(36)次に図2に示すバインダM100を天然繊維からなる織布M60に塗布含浸加工S20で天然繊維からなる織布M60に十分に含浸するようにバインダM100を塗布した後に乾燥S30を行った後に天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる積層体4が均一な板厚になるように50kgf/cm2以上の加圧力で圧縮加工S40を行う。
(37)図2に示す浸透処理S50では、0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液M200接触させた後に乾燥S60を行うことで図1に示す天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる積層体4と成す。

【0019】
ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体 31の作製。
(38)図1に示すガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部3は、図2に示す原料M00の天然ゴムM10 100重量部に対し、硫黄M20 30〜40重量部、ガラス質微小中空球体M30 30〜70重量部、水道水M40 130重量部以上、その他配合剤M50のヒバオイル 0〜10重量部を混合S70で混合を行いガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31となる表層材M110と成す。
(39)次に図2と図3に示すガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31となる表層材M110を、図2の型詰め加工S80の詳細である図3に示す型注入S801で金型に注入した後に、真空環境が作り出される装置5に入れ、真空引きS802で装置内を真空状態とすることでガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31となる表層材M110内の気泡を消滅させる。その後ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31となる表層材M110を乾燥S803で乾燥を行い、ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31となる表層材M110を凝固させることで、図1に示すガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31を成す。

【0020】
ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体 31と、天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体 4、ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体 32からなる積層体である耐熱天然樹脂基板 1の作製。
(40)図2に示す型詰め加工S80の詳細図である図3に示すガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31となる表層材M110を乾燥S803で乾燥した後、(37)で作成している天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体4を芯材及び補強材挿入S804で型内に挿入する。
(41)次にガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体32となる表層材M110を、型注入S805で型内に挿入した天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体4の上に注入し、真空引きS806で真空環境が作り出される装置5を真空状態とすることで、型内の下部のガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31となる表層材M110と、天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体4及び、型内の上部のガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体32となる表層材M110を密着させると共に、型内の上部のガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体32となる表層材M110内の気泡を消滅させる。
(42)次に型内の下部のガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31となる表層材M110と、天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体4及び、型内の上部のガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体32となる表層材M110を密着させると共に、型内の上部のガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体32となる表層材M110内の気泡を消滅させた後、図1と図3に示す乾燥S90で乾燥させる。
(43)乾燥S90を完了したガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31と、天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体4、ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体32からなる積層体を型内から取り出し、0.005〜1.0規定の濃度の酸化カルシウムからなるアルカリ性の水溶液M200を接触させる浸透処理S100を行った後、乾燥S110で乾燥を行い、圧着圧縮加工S120で1,000kgf/cm2以上の加圧力で圧着圧縮する。なお加圧時間は特に限定せず、表層部の表面が滑らかになった時点を加圧時間の目安とすれば良い。
(44)図2に示す表面処理S200は天然物である未熟な果実を粉砕、圧搾して得られた汁液を発酵・熟成させて得られる柿渋や、陶磁器や琺瑯に用いられる釉薬を薄めたものを用いることも可能である。なお表面処理は高精度の平滑性を要求される場合のみで良い。
(45)図2と図3に示す圧着圧縮加工S120を行った後、(43)(44)を完了したガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31と、天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体4、ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体32からなる積層体を、図4に示す金属板6で挟んだ後に金属板6ごとクランプ等の拘束器具7で拘束を維持したままで高温環境を生み出す加熱器8に固定し、拘束高温加熱処理S130を加熱温度140℃以上、加熱時間30分程度行い、続いて拘束高温加硫処理S140を加硫温度250℃以上、加硫時間45分程度行いガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体31となる表層材M110と、ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体32となる表層材M110をエボナイトにする。
(46)図2、図4に示す冷却S140を金属板6ごとクランプ等の拘束器具7で拘束を維持したままで、約20分間冷却を行い、その後クランプ等の拘束器具7を解除し、完成S160で耐熱天然樹脂基板の完成と成す。
(47)図2で示す表面処理S201はバフ仕上げによる研磨加工であり、高精度の平滑性を要求された場合のみ表面処理S201を行えば良い。

【符号の説明】
【0021】
1 耐熱天然樹脂基板
2 ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部の表面に表面処理を行った表面処理部
32 ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第1積層体
33 ガラス質微小中空球体を含有したエボナイトからなる表層部である第3積層体
4 天然繊維による織布と弾性ゴムからなる芯材及び補強材からなる第2積層体
5 真空環境が作り出される装置
6 金属板
7 クランプ等の拘束器具
8 高温環境を生み出す加熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維による織布に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材と、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに多めの硫黄を加えた後に加硫処理を施したエボナイトからなる表層材で構成された積層体である耐熱天然樹脂基板及び、耐熱天然樹脂基板の製造方法。
【請求項2】
天然繊維からなる織布を用いることで耐熱天然樹脂基板に薄さと強度を両立させ、なおかつ高温環境における反りの発生を抑制させたことを特徴とする。
【請求項3】
天然繊維からなる織布を用いることで平坦性と平滑性を向上させ、なおかつ高温環境における反りの発生を抑制と積層体の剥がれを防止に寄与し、耐熱性、耐熱膨張性も向上したことを特徴とする。
【請求項4】
天然繊維の織布を用いることで加工工程を削減すると共に、ガラス質微小中空球体を含有した天然ゴムに少量の硫黄を加えたバインダを塗布含浸した芯材及び補強材を積み重ねることで様々な板厚の耐熱天然樹脂基板を製造可能とする製造方法。
【請求項5】
耐熱天然樹脂基板の表面処理剤として、天然物である未熟な果実を粉砕、圧搾して得られた汁液を発酵・熟成させて得られる柿渋や、陶磁器や琺瑯に用いられる釉薬を薄めたもの、または炭酸リチウムや、二酸化チタン等の無機化合物との併用したものを塗布する事で、耐熱性と平滑性を向上させたこと特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76400(P2012−76400A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225343(P2010−225343)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(709006666)
【Fターム(参考)】