説明

肺の機能と異常を調べるための方法と組成物

【課題】喫煙者と非喫煙者において、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と肺気腫の傾向および/または程度を、遺伝的多型と変化した遺伝子発現の分析結果を利用して評価および診断する方法並びにCOPDおよび/または肺気腫に関連した肺機能障害の傾向および/または程度を診断する方法を提供する。
【解決手段】特定の物質から選択した1つ以上の多型を分析する方法を含んでおり、その遺伝子型が、その対象が保有するCOPDおよび/または肺気腫の発症素因または潜在的発症リスクを示している方法。これらの多型を直接分析すること、またはこれらの多型と連鎖不平衡になっている多型を分析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙者と非喫煙者において、遺伝的多型と変化した遺伝子発現を利用して、肺の機能および/または異常を調べる方法、その中でも特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と肺気腫の素因および/または程度を診断する方法に関する。本発明は、COPDおよび/または肺気腫に関連した肺機能障害の素因および/または程度を診断する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は先進国における死因の第4位を占めており、世界中の病院における再入院の主要な原因である。COPDは、潜行性の炎症と進行性の肺破壊を特徴とする。COPDに侵された喫煙者で肺機能の50%以上がすでに不可逆的に失われてしまったときに激しい呼吸困難が見られて初めて、COPDであることが臨床的に明らかになる。肺機能のこの喪失は、呼出流速(特に、1秒間の努力呼出量、すなわちFEV1)が低下していることで臨床的に検出される。COPDの95%以上は喫煙に起因するが、喫煙者のほんの20%ほどだけがCOPDへと進む(感受性のある喫煙者)。研究により、驚くべきことに、喫煙量で説明されるのは、肺機能喪失の約16%にしかすぎないことがわかった。多数の家系について兄弟姉妹(双生児と非双生児)での一致を比較した研究から家族性の傾向が強いことが明らかになったため、COPD疾患感受性遺伝子(またはこの疾患を変化させる遺伝子)の探索が進められている。
【0003】
気道疾患の治療は進歩しているにもかかわらず、現在の治療法では、進行性の肺機能喪失を伴っていて呼吸不全から死へと至るCOPDの自然な進行を大きく変えることはできない。禁煙によって肺機能のこの低下は少なくなるが、感受性のある喫煙者が喫煙開始から約20年以内に禁煙しないのであれば、肺機能の喪失は大きく、呼吸困難の悪化という症状は逆行させることができない。禁煙の研究から、喫煙者が禁煙するのを助ける方法は必ずしも成功しないことがわかる。血清コレステロールと冠状動脈疾患の関係が発見されたのと同様、COPDに関与する因子をよりよく理解することにより、リスクのある喫煙者を同定するテストを開発できるようにするとともに、喫煙の有害な効果を減らすための新しい治療法を発見できるようにする必要がある。
【0004】
多くの疫学的研究はどれも、20箱×年以上にわたって喫煙すると、肺機能の分布が3つのピークを持つことを示している。すなわち、60箱×年超でさえ正常な肺機能を維持している喫煙者(抵抗力のある喫煙者)がある割合で存在し、肺機能は徐々に低下するものの症状を示すことは決してない人がある割合で存在し、肺機能を加速的に喪失して必ずCOPDになる人がある割合で存在する。これは、喫煙者の中に、COPDに対する抵抗力のある集団と、中程度のリスクを持つ集団と、より高いリスクを持つ集団(感受性のある喫煙者と名づける)の3通りが存在することを示している。
【0005】
COPDは多彩な疾患であり、その中には、タバコの煙への慢性的曝露や他の大気汚染による炎症性外傷の後に起こる再生プロセスの一部として発症するさまざまな程度の肺気腫や慢性気管支炎が含まれる。多くの遺伝子がCOPDの発症に関係しているように見える。
【0006】
さまざまな肺疾患を発症する傾向の診断と評価に役立つ多数のバイオマーカーがこれまでに同定されている。その中には、PCT国際出願PCT/NZ02/00106(WO 02/099134として公開されており、その全体がこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されているように、例えば以下のような一塩基多型がある:ヒト・マクロファージエラスターゼ(MMP12)をコードしている遺伝子のプロモータ内のA-82G;トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)をコードしている遺伝子のコドン10内のT→C;スーパーオキシドディスムターゼ3(SOD3)をコードしている遺伝子のC+760G;メタロプロテイナーゼ組織インヒビター3(TIMP3)をコードしている遺伝子のプロモータ内のT-1296C;ならびにこれら多型と連鎖不平衡になっている多型。
【0007】
対象が肺疾患(例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺気腫)の発症素因、またはCOPD/肺気腫に関連した肺機能障害の発症素因を、特にその対象が喫煙者である場合に評価できるさらに別のバイオマーカーがあると、望ましくかつ有用であろう。
【0008】
本発明が目的とするのは、主として、そのようなバイオマーカーと、そのバイオマーカーを利用して疾患の発症素因、および/または発症リスク、および/または発症を評価する方法である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ある種の多型が、COPDおよび/または肺気腫を患っている対象では対照となる対象よりも頻繁に見られることに主として基づいている。これらの多型を分析すると、遺伝子型と、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの間の関係が明らかになる。
【0010】
したがって本発明の1つの特徴によれば、対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べる方法、および/またはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を診断する方法であって、
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 C/G;
インターロイキン18(IL18)をコードしている遺伝子内の105 C/A;
IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 G/C;
プラスミノーゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G;
インターフェロンγ(IFN-γ)をコードしている遺伝子内の874 A/T;
腫瘍(Tissue)壊死因子α(TNFα)をコードしている遺伝子内の+489 G/A;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y A/G;
細胞間接着分子1(ICAM1)をコードしている遺伝子内のE469K A/G;
カスパーゼ(NOD2)をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン G/C;
マンノース結合レクチン2(MBL2)をコードしている遺伝子内の161 G/A;
チマーゼ1(CMA1)をコードしている遺伝子内の-1903 G/A;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン G/A;
5リポ-オキシゲナーゼ(ALOX5)をコードしている遺伝子内の-366 G/A;
熱ショック・タンパク質70(HSP70)をコードしている遺伝子内のHOM T2437C;
カルシウム依存性塩素イオンチャネル1(CLCA1)をコードしている遺伝子内の+13924 T/A;
単球分化抗原CD-14(CD-14)をコードしている遺伝子内の-159 C/T;
エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 C/T;
マトリックス・メタロプロテイナーゼ1(MMP1)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G(1G対立遺伝子だけに関する);
からなるグループの中から選択した1つ以上の多型を分析する操作を含んでおり、
その遺伝子型が、その対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している方法が提供される。
【0011】
これらの多型を直接分析すること、またはこれらの多型と連鎖不平衡になっている多型を分析することが可能である。
【0012】
連鎖不平衡は、2つ以上の突然変異または多型が非常に近接しているため一緒に遺伝するという、遺伝学における現象である。これは、遺伝子型を決定する際に、1つの多型の存在が発見されると他方の存在も推定されることを意味する。(Reich D.E.他、「ヒト・ゲノムにおける連鎖不平衡」、Nature、2001年、第411巻、199〜204ページ。)
【0013】
分析には、1つ以上の上記多型に加え、
β2アドレナリン受容体(ADBR)をコードしている遺伝子内の16アルギニン/グリシン;
インターロイキン13(IL13)をコードしている遺伝子内の130アルギニン/グルタミン(G/A);
NOシンターゼ3(NOS3)をコードしている遺伝子内の298アスパラギン酸/グルタミン酸(T/G);
グルタチオンSトランスフェラーゼP(GST-P)をコードしている遺伝子内のイソロイシン105バリン(A/G);
ビタミンD結合タンパク質(VDBP)をコードしている遺伝子内のグルタミン酸416アスパラギン酸(T/G);
VDBPをコードしている遺伝子内のリシン420トレオニン(A/C);
IL13をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1055 C/T;
TNFαをコードしている遺伝子のプロモータ内の-308 G/A;
インターロイキン1B(IL1B)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-511 A/G;
ミクロソーム・エポキシドヒドロラーゼ(MEH)をコードしている遺伝子内のチロシン113ヒスチジン T/C;
MEHをコードしている遺伝子内のアルギニン139 G/A;
ADBRをコードしている遺伝子内のグルタミン27グルタミン酸 C/G;
からなるグループの中から選択した1つ以上の多型の分析を含めることができる。
【0014】
これらの多型を直接分析すること、またはこれらの多型と連鎖不平衡になっている多型を分析することが可能である。
【0015】
組み合わせて分析することができる多型としては、さらに、
メタロプロテイナーゼ1(MMP1)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G(2G対立遺伝子だけに関する);
メタロプロテイナーゼ9(MMP9)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1562 C/T;
グルタチオンSトランスフェラーゼ1(GST-1)をコードしている遺伝子内のM1(GSTM1)ヌル;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子の3'領域内の1237 G/A;
MMP12をコードしている遺伝子のプロモータ内の-82 A/G;
TGFβをコードしている遺伝子のコドン10内のT→C;
SOD3をコードしている遺伝子内の760 C/G;
TIMP3をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1296 T/C;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内のS突然変異;
からなるグループの中から選択した1つ以上の多型がある。
【0016】
本発明の方法では、ここでも、具体的に挙げた多型と連鎖不平衡になっている多型を分析することが可能である。
【0017】
したがって別の特別な一実施態様では、上記の方法は、COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 C/G多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0018】
この実施態様では、-765 CC遺伝子型または-765 CG遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0019】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、IL18をコードしている遺伝子内の105 C/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0020】
この実施態様では、105 AA遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0021】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 G/C多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0022】
この実施態様では、-133 CC遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0023】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、PAI-1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0024】
この実施態様では、-675 5G5G遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0025】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、IFN-γをコードしている遺伝子内の874 A/T多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0026】
この実施態様では、874 AA遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0027】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、腫瘍壊死因子α(TNFα)をコードしている遺伝子内の+489 G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0028】
この実施態様では、+489 AA遺伝子型または+489 AG遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0029】
この実施態様では、+489 GG遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0030】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y A/G多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0031】
この実施態様では、C89Y AA遺伝子型または AG遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0032】
この実施態様では、C89Y GG遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0033】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、細胞間接着分子1(ICAM1)をコードしている遺伝子内のE469K A/G多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0034】
この実施態様では、E469K GG遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0035】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、カスパーゼ(NOD2)をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン G/C多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0036】
この実施態様では、グリシン881アルギニン GC遺伝子型またはCC遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0037】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、マンノース結合レクチン2(MBL2)をコードしている遺伝子内の161 G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0038】
この実施態様では、161 GG遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0039】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、チマーゼ1(CMA1)をコードしている遺伝子内の-1903 G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0040】
この実施態様では、-1903 AA遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0041】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0042】
この実施態様では、アルギニン197グルタミン AA遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0043】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、5リポ-オキシゲナーゼ(ALOX5)をコードしている遺伝子内の-366 G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0044】
この実施態様では、-366 AA遺伝子型または-366 AG遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0045】
この実施態様では、-366 GG遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0046】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、熱ショック・タンパク質70(HSP70)をコードしている遺伝子内のHOM T2437C多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0047】
この実施態様では、HOM T2437C CC遺伝子型またはCT遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0048】
この実施態様では、HOM T2437C TT遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0049】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、カルシウム依存性塩素イオンチャネル1(CLCA1)をコードしている遺伝子内の+13924 T/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0050】
この実施態様では、+13924 AA遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0051】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、単球分化抗原CD-14(CD-14)をコードしている遺伝子内の-159 C/T多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0052】
この実施態様では、-159 CC遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることが好ましい。
【0053】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 C/T多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0054】
この実施態様では、エキソン1 +49 CT遺伝子型またはTT遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0055】
さらに別の特別な一実施態様では、上記の方法は、MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G多型(1G対立遺伝子だけに関する)、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析を少なくとも含んでおり、この遺伝子型が、対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している。
【0056】
この実施態様では、1G1G遺伝子型または1G2G遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0057】
上記の特別な実施態様のそれぞれにおける多型は、単独で分析すること、または2つ以上を任意に組み合わせて分析することが可能であるが、後者がより好ましい。
【0058】
さらに別の一実施態様では、上記の方法は、1つ以上の上記多型と、別の少なくとも1つの多型を組み合わせて分析する操作をさらに含んでおり、その別の少なくとも1つの多型の選択は、
ADBRをコードしている遺伝子内の16アルギニン/グリシン;
NOS3をコードしている遺伝子内の298アスパラギン酸/グルタミン酸(T/G);
VDBPをコードしている遺伝子内のリシン420トレオニン(A/C);
VDBPをコードしている遺伝子内のグルタミン酸416アスパラギン酸(T/G);
GST-Pをコードしている遺伝子内のイソロイシン105バリン(A/G);
IFN-γをコードしている遺伝子内の874 A/T;
IL13をコードしている遺伝子内の130アルギニン/グルタミン(G/A);
TNFαをコードしている遺伝子のプロモータ内の-308 G/A;
IL1Bをコードしている遺伝子のプロモータ内の-511 A/G;
MEHをコードしている遺伝子内のチロシン113ヒスチジン T/C;
MEHをコードしている遺伝子内のアルギニン139 G/A;
ADBRをコードしている遺伝子内のグルタミン27グルタミン酸 C/G;
IL13をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1055 C/T;
MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G;
MMP9をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1562 C/T;
GST-1をコードしている遺伝子内のM1ヌル;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子の3'領域内の1237 G/A;
MMP12をコードしている遺伝子のプロモータ内の-82 A/G;
TGFβをコードしている遺伝子のコドン10内のT→C;
SOD3をコードしている遺伝子内の760 C/G;
TIMP3をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1296 T/C;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内のS突然変異;
これらと連鎖不平衡になっている多型;
からなるグループの中から行なう。
【0059】
これらの方法は、喫煙者(現在の喫煙者と以前の喫煙者の両方)で特に有効である。
【0060】
本発明の文脈では、“多型”という用語が、あらゆる変異体と突然変異(その中には、遺伝子の全体的または部分的な欠如(例えばヌル突然変異)が含まれる)を記述するのに用いられていることが理解されよう。同様に、本発明の文脈では、“一塩基多型”または“SNP”という用語に、1塩基ヌクレオチド置換と、短い欠失や挿入による多型が含まれる。
【0061】
さらに、この明細書に記載した多型は、2つのカテゴリーに分類されることがわかるであろう。すなわち、分析によって、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少を示していることがわかる多型(“防御(protective)多型”または“防御SNP”と名づけることができる)と、分析によって、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加を示していることがわかる多型(“感受性(susceptibility)多型”または“感受性SNP”と名づけることができる)である。
【0062】
したがって本発明により、対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べる方法、および/またはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を診断する方法であって、
COPDおよび/または肺気腫の傾向の減少、および/または潜在的リスクの減少、および/または発症の減少と関係する少なくとも1つの防御SNP対立遺伝子の存在または不在を調べ;
どの防御SNP対立遺伝子も存在していない場合には、COPDおよび/または肺気腫の傾向、および/または潜在的なリスク、および/または発症の増加と関係する少なくとも1つの感受性SNP対立遺伝子の存在または不在を調べる操作を含んでおり;
防御SNP対立遺伝子が1つ以上存在していることは、COPDおよび/または肺気腫の傾向の減少、および/または潜在的なリスクの減少、および/または発症の減少を示しており、どの防御SNP対立遺伝子も不在であってそれに少なくとも1つの感受性SNP対立遺伝子の存在が組み合わさっていることは、COPDおよび/または肺気腫の傾向の増加、および/または潜在的なリスクの増加、および/または発症の増加を示している方法がさらに提供される。
【0063】
上記少なくとも1つの防御SNP対立遺伝子の選択は、
COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 C対立遺伝子;
IL13をコードしている遺伝子内の130アルギニン/グルタミン A対立遺伝子;
NOS3をコードしている遺伝子内の298アスパラギン酸/グルタミン酸 T対立遺伝子;
VDBPをコードしている遺伝子内のリシン420トレオニン A対立遺伝子;
VDBPをコードしている遺伝子内のグルタミン酸416アスパラギン酸 T対立遺伝子;
GSTP-1をコードしている遺伝子内のイソロイシン105バリン A対立遺伝子;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内のS対立遺伝子;
TNFαをコードしている遺伝子内の+489 G対立遺伝子;
TNFαをコードしている遺伝子内の-308 G対立遺伝子;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y A対立遺伝子;
MBL2をコードしている遺伝子内の161 G対立遺伝子;
CMA1をコードしている遺伝子内の-1903 A対立遺伝子;
NAT2をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン A対立遺伝子;
MEHをコードしている遺伝子内のヒスチジン139アルギニン G対立遺伝子;
ALOX5をコードしている遺伝子内の-366 A対立遺伝子;
HSP70をコードしている遺伝子内のHOM 2437 T対立遺伝子;
エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 T対立遺伝子;
ADBRをコードしている遺伝子内のグルタミン27グルタミン酸 G対立遺伝子;及び
MMP1をコードしている遺伝子内の-1607 1G対立遺伝子;
からなるグループの中から行なうことが好ましい。
【0064】
さらに別の観点として、本発明により、対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べる方法、並びに/あるいはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を診断する方法であって、
COPDおよび/または肺気腫の傾向の減少、および/または潜在的リスクの減少、および/または発症の減少と関係する少なくとも1つの防御SNP遺伝子型の存在または不在を調べ;
どの防御SNP遺伝子型も存在していない場合には、COPDおよび/または肺気腫の傾向、および/または潜在的なリスク、および/または発症と関係する少なくとも1つの感受性SNP遺伝子型の存在または不在を調べる操作を含んでおり;
その遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫の発症素因、および/または潜在的発症リスク、および/または発症可能性を示している方法がさらに提供される。
【0065】
一実施態様では、上記少なくとも1つのSNPの遺伝子型の選択を、
COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 CC遺伝子型またはCG遺伝子型;
IL13をコードしている遺伝子内の130アルギニン/グルタミン AA遺伝子型;
NOS3をコードしている遺伝子内の298アスパラギン酸/グルタミン酸 TT遺伝子型;
VDBPをコードしている遺伝子内のリシン420トレオニン AA遺伝子型またはAC遺伝子型;
VDBPをコードしている遺伝子内のグルタミン酸416アスパラギン酸 TT遺伝子型またはTG遺伝子型;
GSTP-1をコードしている遺伝子内のイソロイシン105バリン AA遺伝子型;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内のMS遺伝子型;
TNFαをコードしている遺伝子内の+489 GG遺伝子型;
TNFαをコードしている遺伝子内の-308 GG遺伝子型;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y AA遺伝子型またはAG遺伝子型;
MBL2をコードしている遺伝子内の161 GG遺伝子型;
CMA1をコードしている遺伝子内の-1903 AA遺伝子型;
NAT2をコードしている遺伝子内のアルギニン117グルタミン AA遺伝子型;
MEHをコードしている遺伝子内のヒスチジン139アルギニン GG遺伝子型;
ALOX5をコードしている遺伝子内の-366 AA遺伝子型またはAG遺伝子型;
HSP70をコードしている遺伝子内のHOM T2437C TT遺伝子型;
エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 CT遺伝子型またはTT遺伝子型;並びに
ADBRをコードしている遺伝子内のグルタミン27グルタミン酸 GG遺伝子型;及び
MMP1をコードしている遺伝子内の-1607 1G1G遺伝子型または1G2G遺伝子型;
からなるグループの中から行なう。
【0066】
さらに別の一実施態様では、上記の方法は、
SODをコードしている遺伝子内の+760GG遺伝子型または+760CG遺伝子型;
TIMP3をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1296TT遺伝子型;及び
TGFβをコードしている遺伝子のコドン10内のCC遺伝子型(ホモP対立遺伝子);
からなるグループの中から選択した少なくとも1つの防御SNP遺伝子型の存在または不在を明らかにする追加ステップを含んでいる。
【0067】
さらに別の一実施態様では、COPDおよび/または肺気腫の発症素因、および/または潜在的発症リスク、および/または発症と関係する上記少なくとも1つの感受性SNP遺伝子型の選択を、
IL18をコードしている遺伝子内の105 AA遺伝子型;
IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 CC遺伝子型;
PAI-1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 5G5G遺伝子型;
IL13をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1055 TT遺伝子型;
IFN-γをコードしている遺伝子内の874 TT遺伝子型;
TNFαをコードしている遺伝子内の+489 AA遺伝子型またはAG遺伝子型;
TNFαをコードしている遺伝子内の-308 AA遺伝子型またはAG遺伝子型;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y GG遺伝子型;
ICAM1をコードしている遺伝子内のE469K GG遺伝子型;
NOD2をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン GC遺伝子型またはCC遺伝子型;
IL1Bをコードしている遺伝子内の-511 GG遺伝子型;
MEHをコードしている遺伝子内のチロシン113ヒスチジン TT遺伝子型;
ALOX5をコードしている遺伝子内の-366 GG遺伝子型;
HSP70をコードしている遺伝子内のHOM T2437C CC遺伝子型またはCT遺伝子型;
CLCA1をコードしている遺伝子内の+13924 AA遺伝子型;及び
CD-14をコードしている遺伝子内の-159 CC遺伝子型;
からなるグループの中から行なう。
【0068】
さらに別の一実施態様では、COPDおよび/または肺気腫の発症素因、および/または潜在的発症リスク、および/または発症と関係する上記少なくとも1つの感受性SNP遺伝子型の選択を、
MMP12をコードしている遺伝子のプロモータ内の-82 AA遺伝子型;
MMP9をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1562 CT遺伝子型または-1562 TT遺伝子型;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子の3'領域内の1237 AG遺伝子型または1237 AA遺伝子型(対立遺伝子の遺伝子型がTtまたはtt);及び
MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の2G2G遺伝子型;
からなるグループの中から行なう。
【0069】
さらに別の観点として、本発明により、対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べるため、並びに/あるいはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を診断する方法であって、COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内に-765 C対立遺伝子、および/またはα1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内にS対立遺伝子が存在しているか不在であるかを調べる操作を含んでおり、その対立遺伝子が1つ以上存在していることが、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少、および/またはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性の減少を示している方法が提供される。
【0070】
さらに別の観点として、本発明により、対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べるため、並びに/あるいはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を診断する方法であって、COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内に-765 CC遺伝子型またはCG遺伝子型、および/またはα1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内にMS遺伝子型が存在しているか不在であるかを調べる操作を含んでおり、その遺伝子型が1つ以上存在していることが、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少、および/またはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性の減少を示している方法が提供される。
【0071】
本発明の特に好ましい一実施態様では、対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べる方法であって、
COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 C/G;
IL18をコードしている遺伝子内の105 C/A;
IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 G/C;
PAI-1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G;
IFN-γをコードしている遺伝子内の874 A/T;
腫瘍壊死因子α(TNFα)をコードしている遺伝子内の+489 G/A;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y A/G;
細胞間接着分子1(ICAM1)をコードしている遺伝子内のE469K A/G;
カスパーゼ(NOD2)をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン G/C;
マンノース結合レクチン2(MBL2)をコードしている遺伝子内の161 G/A;
チマーゼ1(CMA1)をコードしている遺伝子内の-1903 G/A;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン G/A;
5リポ-オキシゲナーゼ(ALOX5)をコードしている遺伝子内の-366 G/A;
熱ショック・タンパク質70(HSP70)をコードしている遺伝子内のHOM T2437C;
カルシウム依存性塩素イオンチャネル1(CLCA1)をコードしている遺伝子内の+13924 T/A;
単球分化抗原CD-14(CD-14)をコードしている遺伝子内の-159 C/T;
エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 C/T;及び
MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G(1G対立遺伝子だけに関する);
からなるグループの中から選択した1つ以上の多型に加え、
ADBRをコードしている遺伝子内の16アルギニン/グリシン;
IL13をコードしている遺伝子内の130アルギニン/グルタミン(G/A);
NOS3をコードしている遺伝子内の298アスパラギン酸/グルタミン酸(T/G);
GSTPをコードしている遺伝子内のイソロイシン105バリン(A/G);
VDBPをコードしている遺伝子内のグルタミン酸416アスパラギン酸(T/G);
VDBPをコードしている遺伝子内のリシン420トレオニン(A/C);
IL13をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1055 C/T;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子のS突然変異;
TNFαをコードしている遺伝子のプロモータ内の-308 G/A;
インターロイキン1B(IL1B)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-511 A/G;
ミクロソーム・エポキシドヒドロラーゼ(MEH)をコードしている遺伝子内のチロシン113ヒスチジン T/C;
MEHをコードしている遺伝子内のアルギニン139 G/A;及び
ADBRをコードしている遺伝子内のグルタミン27グルタミン酸 C/G;
からなるグループの中から選択した1つ以上の多型を分析する操作を含む方法が提供される。
【0072】
本発明の好ましい一実施態様では、防御遺伝子型が2つ以上存在していることが、COPDおよび/または肺気腫の発症リスクが減少していることを示す。
【0073】
本発明の好ましいさらに別の一実施態様では、感受性遺伝子型が2つ以上存在していることが、COPDおよび/または肺気腫の発症リスクが増加していることを示す。
【0074】
本発明の好ましいさらに別の一実施態様では、感受性遺伝子型が1つ以上存在しているかどうかとは無関係に、防御遺伝子型が2つ以上存在していることが、COPDおよび/または肺気腫の発症リスクが減少していることを示す。
【0075】
さらに別の特徴として、対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べる方法、および/またはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を診断する方法であって、
シクロオキシゲナーゼ(COX2)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 C/G;
インターロイキン18(IL18)をコードしている遺伝子内の105 C/A;
IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 G/C;
プラスミノーゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G;
インターフェロン-γ(IFN-γ)をコードしている遺伝子内の874 A/T;
β2アドレナリン受容体をコードしている遺伝子内の16アルギニン/グリシン;
インターロイキン13(IL13)をコードしている遺伝子内の130アルギニン/グルタミン(G/A);
NOシンターゼ3(NOS3)をコードしている遺伝子内の298アスパラギン酸/グルタミン酸;
グルタチオンSトランスフェラーゼP(GST-P)をコードしている遺伝子内のイソロイシン105バリン(A/G);
ビタミンD結合タンパク質(VDBP)をコードしている遺伝子内のグルタミン酸416アスパラギン酸(T/G);
ビタミンD結合タンパク質をコードしている遺伝子内のリシン420トレオニン(A/C);
インターロイキン13をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1055 C/T;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内のS突然変異;
腫瘍壊死因子α(TNFα)をコードしている遺伝子内の+489 G/A;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y A/G;
細胞間接着分子1(ICAM1)をコードしている遺伝子内のE469K A/G;
カスパーゼ(NOD2)をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン G/C;
マンノース結合レクチン2(MBL2)をコードしている遺伝子内の161 G/A;
チマーゼ1(CMA1)をコードしている遺伝子内の-1903 G/A;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン G/A;
5リポ-オキシゲナーゼ(ALOX5)をコードしている遺伝子内の-366 G/A;
熱ショック・タンパク質70(HSP70)をコードしている遺伝子内のHOM T2437C;
カルシウム依存性塩素イオンチャネル1(CLCA1)をコードしている遺伝子内の+13924 T/A;
単球分化抗原CD-14(CD-14)をコードしている遺伝子内の-159 C/T;
エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 C/T;
TNFαをコードしている遺伝子のプロモータ内の-308 G/A;
インターロイキン1B(IL1B)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-511 A/G;
ミクロソーム・エポキシドヒドロラーゼ(MEH)をコードしている遺伝子内のチロシン113ヒスチジン T/C;
MEHをコードしている遺伝子内のアルギニン139 G/A;
ADBRをコードしている遺伝子内のグルタミン27グルタミン酸 C/G;及び
MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G(1G対立遺伝子だけに関する);
からなるグループの中から選択した2つ以上の多型を分析する操作を含む方法が提供される。
【0076】
いろいろな実施態様では、上記のどの1つ以上の方法も、NOS3をコードしている遺伝子のコドン298にマッピングされる位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含んでいる。
【0077】
前記の位置にグルタミン酸が存在することが、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスク、および/またはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を示していることが好ましい。
【0078】
前記の位置にアスパラギンが存在することが、COPDおよび/または肺気腫の発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0079】
いろいろな実施態様では、上記のどの1つ以上の方法も、ビタミンD結合タンパク質をコードしている遺伝子のコドン420にマッピングされる位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含んでいる。
【0080】
前記の位置にトレオニンが存在することが、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスク、および/またはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を示していることが好ましい。
【0081】
前記の位置にリシンが存在することが、COPDおよび/または肺気腫の発症リスクの減少を示していることが好ましい。
【0082】
いろいろな実施態様では、上記のどの1つ以上の方法も、SMAD3をコードしている遺伝子のコドン89にマッピングされる位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含んでいる。
【0083】
いろいろな実施態様では、上記のどの1つ以上の方法も、ICAM1をコードしている遺伝子のコドン469にマッピングされる位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含んでいる。
【0084】
いろいろな実施態様では、上記のどの1つ以上の方法も、NOD2をコードしている遺伝子のコドン881にマッピングされる位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含んでいる。
【0085】
いろいろな実施態様では、上記のどの1つ以上の方法も、NAT2をコードしている遺伝子のコドン197にマッピングされる位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含んでいる。
【0086】
いろいろな実施態様では、上記のどの1つ以上の方法も、MEHをコードしている遺伝子のコドン113にマッピングされる位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含んでいる。
【0087】
いろいろな実施態様では、上記のどの1つ以上の方法も、MEHをコードしている遺伝子のコドン139にマッピングされる位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含んでいる。
【0088】
いろいろな実施態様では、上記のどの1つ以上の方法も、ADBRをコードしている遺伝子のコドン27にマッピングされる位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含んでいる。
【0089】
別の特徴として、本発明により、この明細書に記載した本発明の好ましい方法で使用する一群のヌクレオチド・プローブおよび/またはヌクレオチド・プライマーが提供される。そのヌクレオチド・プローブおよび/またはヌクレオチド・プライマーは、遺伝子の多型領域をカバーしているか、そのヌクレオチド・プローブおよび/またはヌクレオチド・プライマーを用いて遺伝子の多型領域をカバーするように使用できることが好ましい。
【0090】
さらに別の観点として、本発明により、この明細書に記載した予後予測、および/または診断、および/またはスクリーニングに使用するため、この明細書に記載した1つ以上の感受性多型または防御多型をコードしている核酸配列とのハイブリダイゼーション、またはそれと相補的な配列とのハイブリダイゼーションが可能な核酸配列が提示された基板を有する核酸マイクロアレイが提供される。
【0091】
別の観点として、本発明により、この明細書に記載した予後予測、および/または診断、および/またはスクリーニングに使用するため、この明細書に記載した感受性多型または防御多型と結びついたときに発現が上方調節または下方調節される遺伝子の産物と結合できる抗体を提示する基板を含む抗体マイクロアレイが提供される。
【0092】
さらに別の観点として、本発明により、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクが増加している対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫を発症している対象の治療方法であって、防御遺伝子型の存在および/または機能上の効果をその対象の体内で遺伝子型または表現型に関して再現するステップを含む方法が提供される。
【0093】
さらに別の観点として、本発明により、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加している対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫を発症している対象であって、発現した遺伝子産物の生理学的に活性な濃度が、その対象の年齢と性別にとって正常な範囲の外にあるように遺伝子の発現を上方調節または下方調節する、遺伝子の発現を上方調節または下方調節する検出可能な感受性多型を持っている対象の治療方法であって、その発現した遺伝子産物の生理学的に活性な濃度を、その対象の年齢と性別にとって正常な範囲内に戻すステップを含む方法が提供される。
【0094】
さらに別の特徴として、本発明により、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内に存在する-765 C/G多型の位置にGG遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でCOX2の活性を低下させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法が提供される。
【0095】
一実施態様では、薬剤は、COX2阻害剤、または非ステロイド抗炎症薬(NSAID)であり、COX2阻害剤は、セレブレックス(セレコキシブ)、ベクストラ(バルデコキシブ)、ビオックス(ロフェコキシブ)からなるグループの中から選択することが好ましい。
【0096】
本発明のさらに別の観点として、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象であって、IL18をコードしている遺伝子内の105 C/A多型の位置にAA遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でIL18の活性を増大させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法が提供される。
【0097】
本発明のさらに別の観点として、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、IL18をコードしている遺伝子内の-133 G/C多型の位置にCC遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でIL18の活性を増大させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法が提供される。
【0098】
さらに別の観点として、本発明により、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、PAI-1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G多型の位置に5G5G遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でPAI-1の活性を増大させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法が提供される。
【0099】
さらに別の観点として、本発明により、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、IFN-γをコードしている遺伝子内の874 A/T多型の位置にAA遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でIFN-γの活性を変化させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法が提供される。
【0100】
さらに別の観点として、本発明により、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、CD-14をコードしている遺伝子内の-159 C/T多型の位置にCC遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でCD-14および/またはIgEの活性を変化させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法が提供される。
【0101】
さらに別の観点として、本発明により、感受性多型または防御多型と結びついたときに発現が上方調節または下方調節される遺伝子の発現および/または活性を変化させる化合物をスクリーニングする方法であって、
遺伝子の発現の上方調節または下方調節と関係していることがわかっている感受性多型または防御多型を含む細胞に候補化合物を接触させるステップと;
その候補化合物との接触後にその遺伝子の発現を測定するステップとを含んでおり、
接触ステップ前と比較したときの接触ステップ後の発現レベルの変化が、その化合物がその遺伝子の発現および/または活性を変化させる能力を示している方法が提供される。
【0102】
細胞は、予備スクリーニングによって上記多型の存在が確認されているヒト肺細胞であることが好ましい。
【0103】
細胞は、上記遺伝子の発現の上方調節と関係する感受性多型を含んでおり、スクリーニングは、その遺伝子の発現を下方調節する候補化合物を探すためである。
【0104】
あるいは細胞は、上記遺伝子の発現の下方調節と関係する感受性多型を含んでおり、スクリーニングは、その遺伝子の発現を上方調節する候補化合物を探すためである。
【0105】
別の一実施態様では、細胞は、上記遺伝子の発現の上方調節と関係する防御多型を含んでおり、スクリーニングは、その遺伝子の発現をさらに上方調節する候補化合物を探すためである。
【0106】
あるいは細胞は、上記遺伝子の発現の下方調節と関係する防御多型を含んでおり、スクリーニングは、その遺伝子の発現をさらに下方調節する候補化合物を探すためである。
【0107】
別の観点として、本発明により、感受性多型または防御多型と結びついたときに発現が上方調節または下方調節される遺伝子の発現および/または活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
感受性多型または防御多型と結びついたときに発現が上方調節または下方調節される遺伝子を含む細胞(ただしその細胞内ではその遺伝子の発現は上方調節も下方調節もされていない)に候補化合物を接触させるステップと;
その候補化合物と接触させた後にその遺伝子の発現を測定するステップとを含んでおり、
接触ステップ前と比較したときの接触ステップ後の発現レベルの変化が、その化合物がその遺伝子の発現および/または活性を変化させる能力を示している方法が提供される。
【0108】
細胞は、予備スクリーニングによって上記遺伝子の存在及び上記遺伝子の発現のベースラインレベルが確認されているヒト肺細胞であることが好ましい。
【0109】
遺伝子の発現は、感受性多型と結びついたときに下方調節され、スクリーニングは、細胞内でその遺伝子の発現を上方調節する候補化合物を探すためであることが好ましい。
【0110】
あるいは遺伝子の発現は、感受性多型と結びついたときに上方調節され、スクリーニングは、細胞内でその遺伝子の発現を下方調節する候補化合物を探すためである。
【0111】
別の一実施態様では、遺伝子の発現は、防御多型と結びついたときに上方調節され、スクリーニングは、細胞内でその遺伝子の発現を上方調節する候補化合物を探すためである。
【0112】
あるいは遺伝子の発現は、防御多型と結びついたときに下方調節され、スクリーニングは、細胞内でその遺伝子の発現を下方調節する候補化合物を探すためである。
【0113】
さらに別の観点として、本発明により、COPDまたは肺気腫の素因を持つ対象、あるいはCOPDまたは肺気腫と診断された対象が、発現した遺伝子産物の生理学的に活性な濃度を、その対象の年齢と性別にとって正常な範囲内に戻す操作を含む予防法または治療法に反応する可能性があるかどうかを評価する方法であって、その対象の体内で、感受性多型の存在または不在を検出し、存在している場合には、その感受性多型が上記遺伝子の発現を上方調節または下方調節するため、発現した遺伝子産物の生理学的に活性な濃度が、その対象の年齢と性別にとって正常な範囲の外にあることを検出する操作を含んでおり、上記多型の存在が検出されることが、その対象が上記治療に反応する可能性のあることを示している方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0114】
候補遺伝子のいくつかの遺伝的変異(多型)を、症例-対照研究によって喫煙者と血液提供者で比較した。候補遺伝子の大半は、遺伝子の発現またはタンパク質の機能に影響を与えることが確認されている(あるいは確認されているようである)。具体的には、対照である血液提供者と、抵抗力のある喫煙者と、COPDを患っている喫煙者(早期発症者と通常発症者に分ける)で多型の頻度を比較した。本発明では、選択した候補遺伝子の多型に由来する防御多型と感受性多型の両方が存在していることを示す。
【0115】
この明細書に記載した一実施態様では、17個の感受性遺伝的多型と、19個の防御遺伝的多型が同定される。それを以下に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
感受性遺伝的多型は、存在していると、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの増加、および/またはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を示す多型である。それに対し、防御遺伝的多型は、存在していると、COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクの減少、および/またはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性の減少を示す多型である。
【0118】
上記多型のうちの多くを単独で分析することができる。それは以下のものである:
COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 C/G;
IL18をコードしている遺伝子内の105 C/A;
IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 G/C;
PAI-1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G;
IFN-γをコードしている遺伝子内の874 A/T;
腫瘍壊死因子α(TNFα)をコードしている遺伝子内の+489 G/A;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y A/G;
細胞間接着分子1(ICAM1)をコードしている遺伝子内のE469K A/G;
カスパーゼ(NOD2)をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン G/C;
マンノース結合レクチン2(MBL2)をコードしている遺伝子内の161 G/A;
チマーゼ1(CMA1)をコードしている遺伝子内の-1903 G/A;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン G/A;
5リポ-オキシゲナーゼ(ALOX5)をコードしている遺伝子内の-366 G/A;
熱ショック・タンパク質70(HSP70)をコードしている遺伝子内のHOM T2437C;
カルシウム依存性塩素イオンチャネル1(CLCA1)をコードしている遺伝子内の+13924 T/A;
単球分化抗原CD-14(CD-14)をコードしている遺伝子内の-159 C/T;及び
エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 C/T;
MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G(1G対立遺伝子だけに関する);
上記いずれかの多型と連鎖不平衡になっている多型。
【0119】
これらの多型は、2つ以上を組み合わせて分析すること、あるいは他の多型で患者のCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示すもの(その中には、上記多型のうちで残っているものが含まれる)と組み合わせて分析することができる。
【0120】
具体的に考察するのは、上記の多型とPCT国際出願PCT/NZ02/00106(WO 02/099134として公開されている)に記載されている多型の組み合わせである。
【0121】
多型の組み合わせを伴うアッセイが好ましい。
【0122】
統計的分析、特にこれらの多型を組み合わせた効果の統計的分析により、本発明の遺伝子アッセイを利用すると、あらゆる喫煙者のリスクの程度を明らかにすること、その中でも特に、COPDの発症リスクがより大きい喫煙者を同定することが可能になることがわかる。このような複合分析は、感受性多型だけの組み合わせについて、または防御多型だけの組み合わせについて、または両方の組み合わせについて行なうことができる。分析は、ステップ式に行なうこともできる。すなわち、まず最初に防御多型の存在または不在の分析を行ない、次いで防御多型が存在している場所でだけ感受性多型の分析を行なうこともできる。
【0123】
したがって、この明細書に記載したように、よくわかっている喫煙者のグループと非喫煙者のグループでこれら多型の頻度を系統的に分析することにより、COPDの発症に関与するいくつかのタンパク質を見いだし、予防を目的として、どの喫煙者でCOPDに関連した肺機能障害やCOPDを発症するリスクがより大きいかを突き止める能力を改善することができる。
【0124】
喫煙者のうちで少数の人だけがこれら疾患のうちの1つまたは組み合わせに罹患しているため、“感受性のある喫煙者”が存在していて、遺伝子メカニズムと高濃度の酸化剤への曝露が組み合わさったことの効果を通じてリスクが増加するようである。
【0125】
本発明の方法は、主として、COPDに関連した上記多型(すべて一塩基多型である)の検出と同定に関する。一般に、一塩基多型(SNP)は一塩基の変化または点突然変異であり、その結果として個人ごとに遺伝子が変化することになる。SNPは、ヒトのゲノムでは100〜300塩基ごとに約1個発生し、コード領域にも非コード領域にも発生する可能性がある。遺伝暗号には重複性があるため、コード領域のSNPは、産生されるタンパク質のアミノ酸配列を変化させることもあれば、変化させないこともある。非コード領域のSNPは、例えば制御領域(例えばプロモータ、転写因子結合部位、プロセシング部位、リボソーム結合部位)を変化させることによって遺伝子の発現を変化させ、遺伝子の転写、プロセシング、翻訳に影響を与える可能性がある。
【0126】
SNPによって大規模な関連づけ遺伝学の研究が容易になるため、最近はSNPの発見と検出に多大な注目が集まっている。SNPは、潜在的な形質も含めて多数の表現型形質(例えば疾患の傾向や程度、ウエルネスの傾向、薬剤に対する反応(例えば薬の副作用に対する感受性))のマーカーとして非常に有望である。特定のSNPと表現型形質の関係に関する知見は、個々人がその特定のSNPを持っているかどうかについての知見と合わさると、診断、予防、治療の目標を、疾患をよりよく制御し、疾患状態の理解を深め、最終的により効果的な治療法(例えば個人に合わせた治療計画)を容易に発見することに定めることが可能になる。
【0127】
実際、既知のSNPについてはデータベースが多数構築されており、そのようなSNPのいくつかについては、SNPと関係する生物学的効果のデータベースも多数構築されている。例えばNCBIのSNPデータベース“dbSNP”は、NCBIのEntrezシステムに組み込まれており、他のEntrezデータベース(例えばPubMedやGenBank)と同じ方法で検索できる。このデータベースは、ヒト・ゲノム配列上にマッピングされた150万個を超えるSNPの記録を含んでいる。それぞれのdbSNPへの入力事項としては、多型の配列文脈(すなわち周囲の配列)、(集団または個人での)多型の発生頻度、実験方法、プロトコル、変化を調べる条件などがあり、特定の表現型形質とSNPの関係についての情報も入力事項に含めることができる。
【0128】
SNPは健康とウエルネスに対する潜在的な影響があるということが少なくとも1つの理由となって、SNPを信頼性よく迅速に同定する方法の開発に多大な努力がこれまで重ねられてきており、現在も努力が重ねられている。これは容易な仕事ではない。ヒトのゲノムDNAは3×109個からなる塩基対のハプロイド・ゲノムを持つ複雑なものであり、それに見合った感度条件と識別条件が必要とされるというのが理由の一部である。
【0129】
SNPの検出を目的として遺伝子型を決定するための従来技術でよく知られている方法の1つに、DNAシークエンシングがある。この方法で必要とされるのは、プライマーまたはプローブの対立遺伝子特異的なハイブリダイゼーション;多型の近傍または隣に結合したプライマーへのヌクレオチドの対立遺伝子特異的な組み込み(“1塩基伸長”または“ミニシークエンシング”と呼ばれることがしばしばある);オリゴヌクレオチドの対立遺伝子特異的な連結(接合)(連結連鎖反応プローブまたは連結禁止プローブ);制限酵素によるオリゴヌクレオチドまたはPCR産物の対立遺伝子特異的な開裂(制限断片長多型分析すなわちRFLP);電気泳動またはクロマトグラフィの移動度における対立遺伝子に依存した差の識別;構造特異的な侵入性酵素(例えば構造特異的酵素)のいずれかである。
【0130】
DNAシークエンシングにより、SNPを直接決定して同定することができる。スクリーニングを目的とする場合には、一般に、特異性があって正確であるという利点よりも、ゲノム全体のシークエンシング(あるいは、たとえゲノムの一部を標的としたシークエンシングであっても)に固有の問題点のほうが大きい。この段階では、SNPを検出するための直接的なゲノム・シークエンシングはコスト的に引き合わず、時間もかかる。
【0131】
SNPを分析する別の方法は、いわゆるミニシークエンシング法である。この方法は、プライマーを、調べているテスト・サンプル上のSNP部位に隣接したDNA配列にハイブリダイズさせる操作を含んでいる。プライマーは、異なるタグを付けた4つすべての蛍光ジデオキシヌクレオチド(A、C、G、T)と、DNAポリメラーゼとを用い、ヌクレオチド1個分、延長されている。4つのヌクレオチドのうちの1つだけ(ホモの場合)、または2つ(ヘテロの場合)が組み込まれる。組み込まれる塩基は、SNP部位のヌクレオチドと相補的である。
【0132】
SNPを検出するため、核酸の立体配座の変化に依存した多数の方法が開発されてきた。
【0133】
例えば一本鎖高次構造多型(SSCP、Orita他、PNAS、1989年、第86巻、2766〜2770ページ)は、一本鎖核酸が溶液中で所定の条件下において二次構造を形成する能力に依存した方法である。二次構造は塩基組成に依存し、一塩基置換によって変えることができる。すると非変性条件下で電気泳動の移動度に差が生じる。さまざまな多型の検出は、一般に、放射能写真による(放射性標識をしたとき)か、バンドの銀染色によるか、検出可能な標識をしたプローブ断片を用いたハイブリダイゼーションによるか、蛍光PCRプライマーを使用し、あとで例えば自動化DNAシーケンサを用いてそのプライマーを検出するという方法による。
【0134】
一本鎖DNAの三次構造は、いろいろな物理的条件(例えば温度やイオン環境)のもとで変化する。したがってSSCPの感度は、これらの条件やそれ以外の条件に依存する。特定の配列という文脈では配列変異体を分離する条件を選択するときにいくつかの経験的規則が出現するが、ある変化が所定の条件下で検出できるかどうかの予測は、特にその変化が新しい配列という文脈にあるときには不可能である。PCR-SSCPが変化を検出する能力は一般に高く、300bp未満の断片について1回の試行で80%超であることが報告されている(HayashiとYandell、1993年)。しかし感度は100%でないため、新しいバンドが存在しないからといって分析した分子に変化がないとは言えない。
【0135】
SSCPの感度は断片が長くなるほど低下するため、300bp未満が最適である。より長い断片(300bpを超えるエキソンやcDNA全体)での変化を検出するには、重複した短いプライマー、またはSSCPの前に適切な制限酵素で消化させた長いPCR産物を用いるとよい。
【0136】
SSCPの改良は従来技術でよく知られており、例えば、異なるゲル走行条件を用いたり(例えば、異なる温度にする、あるいは添加物(例えばグリセロール(5〜10%)またはスクロース(10%))を添加する);異なるゲル・マトリックス(例えば、小さなポリアクリルアミド架橋剤比(49:1=アクリルアミド:ビス-アクリルアミド)(5〜10%ゲル)、GeneAmp、ハイドロリンク・ゲル、アガロース・ゲル)を使用したりする。
【0137】
SSCPに関して当業者によく知られている他のバリエーションとしては、以下のものがある。
【0138】
RNA-SSCP。RNA塩基対はRNA-DNA塩基対よりも安定であるため、一本鎖RNAのほうが一本鎖DNAよりも二次構造のレパートリーが多いはずであり、より多彩な立体配座を取ることが予測される。したがってRNA-SSCPは、配列の変化に対してより感度が高いため、より大きな断片を分析できるという利点がある。しかしRNA鎖を作るほうが一般に不便である。なぜなら、RNA-SSCPのために試験管内で転写を行なう追加ステップが一般に必要とされるからである。さらに、転写物が豊富にあるためrSSCPを臭化エチジウムで検出できるとはいえ、より複雑でコストがかかるという理由でこの方法は広く利用されてはいない。
【0139】
REF-SSCP。SSCPの改良であり、制限エンドヌクレアーゼ・フィンガープリンティングが組み込まれていて、大きな断片のサイズを約150bpまで小さくすることを目的としている。消化後、産物を混合し、末端に32Pで標識し、変性させ、非変性条件下で電気泳動にかける。この系がもたらす情報は、2つの“成分”を含んでいる。制限部位の獲得または喪失(制限成分の情報)と、断片の異常な移動度(“SSCP成分”)である。
【0140】
ddF:ジデオキシ・フィンガープリンティング。ジデオキシ配列決定とSSCPの間のハイブリッド。ddFは、1つのジデオキシヌクレオチド・ターミネータとサンガー・シークエンシング反応をさせた後、非変性電気泳動を行なう操作を含んでいる。ddFパターンは、“ジデオキシ成分”と“SSCP成分”に分割される。ジデオキシ成分の感度は不変であるが、SSCP成分は、ゲルの条件、温度、セグメントのサイズ、配列の関係によって変化する。この方法は、変化した大まかな位置を決定できるという点で、標準的なSSCPよりも有利である。
【0141】
bi-ddF:二方向性ジデオキシ・フィンガープリンティング。この方法は、“第2世代のddF”と見なすことができ、それぞれの端部に対する2つのプライマーを用いてジデオキシ末端反応を同時に実施する。ddFだけの場合と比べて2つの利点がある。第1は、ddF成分によってほとんどの一塩基置換を検出できることであり、第2は、移動度の変化を下流方向または上流方向で検出できるためにSSCP成分が増大することである。これらの利点は、bi-ddFを利用すると、ゲノムDNAのより大きな領域をより大きな感度でスクリーニングできることを意味している。
【0142】
蛍光PCR-SSCP。この方法は、多型を検出するための自動化シーケンサにSSCPを適合させた方法である。例えば多重蛍光PCR-SSCPは、PCR産物の内部に多重蛍光染料で標識し、制限酵素で消化させた後、SSCPを実施し、蛍光染料を検出できる自動化DNAシーケンサで分析する方法である。蛍光PCR-SSCP(CE-FSSCP)を検出するため、分子篩ポリマー系を利用した、自動化キャピラリーに基づく電気泳動技術も開発されている。
【0143】
異なる核酸構造の移動度が異なることを利用した他の方法としては、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)がある。変性剤(尿素および/またはホルムアミド)の濃度が次第に大きくなる勾配、または温度が次第に上がっていく勾配の中で、二本鎖DNA(dsDNA)の電気泳動を行なう。変性剤の濃度が大きくなる、あるいは温度が上がるにつれ、DNA内の各ドメインがそのドメインの融点(Tm)に応じて解離していく。鎖が解離すると、電気泳動の移動度が小さくなる。2つのホモ二本鎖DNAで1bpの違いがあると、Tmが1℃以上異なる可能性がある。ヘテロ二本鎖に塩基のミスマッチがあると、ドメインの顕著な不安定化が起こり、その結果としてホモ二本鎖とヘテロ二本鎖でTmの差が6℃にもなる。こうした理由により、野生型の断片と変異体の断片の間のヘテロ二本鎖が、一般に点変化の分析に用いられる。放射性標識、臭化エチジウム、銀染色が、検出に一般に利用されている。
【0144】
この方法は、約1000bpまでの断片を分析するのに使用できる。溶融するドメインの数が増えるにつれて移動度のシフトが少なくなるため、検出される変化の分画は、断片のサイズが大きくなるにつれて減少する。
【0145】
ヘテロ二本鎖分析(HET)では、SNPを識別するのに同様の分子的基礎を利用する。ヘテロ二本鎖は、野生型DNA分子と変異DNA分子の混合物を熱で変性させた後に再びアニールすることによって生じる。非変性ポリアクリルアミド・ゲルの中では、ホモ二本鎖とヘテロ二本鎖で電気泳動の移動度が異なる。これらの二本鎖は、臭化エチジウムまたは銀染色によって一般に検出される。
【0146】
変性高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)は、上記分離法(例えばゲル電気泳動)の代わりに従来技術でよく知られているHPLC法を利用してSNPを検出するさらに別の方法であり、例えばHPLCカラムから異なる速度で溶離するホモ二本鎖とヘテロ二本鎖を検出することで、ミスマッチ・ヌクレオチドとSNPの検出が可能になる。
【0147】
SNPを検出するさらに別の方法は、さまざまな試薬(例えば化学的開裂剤、核酸分解酵素)を用いた開裂に対する感度が一本鎖核酸と二本鎖核酸で異なることに基づいている。例えば所定の条件下では、RNA:DNAヘテロ二本鎖内のミスマッチがRNアーゼAによって開裂する。開裂後、標識した断片をDGGEで分析する。この方法には欠点がいくつかある。例えば、プリン塩基を含む変化が開裂する効率は低いため、この方法は、多数のSNPを分析するのには適していない。
【0148】
酵素ミスマッチ開裂(EMC)として知られる別の方法では、SNP含有DNA又は野生型対立遺伝子及び突然変異対立遺伝子のPCR産物をそれぞれ熱変性させることによって生じるヘテロ二本鎖をインキュベートし、例えばバクテリオファージT4エンドヌクレアーゼYII、またはT7エンドヌクレアーゼIで開裂させる。得られた断片を電気泳動で分析し、従来技術でよく知られている方法で検出する。
【0149】
同様に、化学的開裂法(CCM)では、ヘテロ二本鎖内で誤対合したヌクレオチドを、マクサム-ギルバート・シークエンシング法で一般に用いられている化学物質で変化させる。ヒドロキシアミンが、誤対合したシトシン残基と反応し、四酸化オスミウムが、誤対合したチミジン残基と反応する。次に、DNA:DNAヘテロ二本鎖またはDNA:RNAヘテロ二本鎖の化学的に修飾された部位をピペリジンで開裂させ、断片(通常は放射性標識または蛍光標識する)を検出する。
【0150】
さらに別のバリエーションは、開裂断片長多型(CFLP)として知られている。DNAの一本鎖が変性後に再び折り畳まれるとき、配列に依存して折り畳まれたヘアピン状の配置になった二次構造が形成される。クリーバーゼIエンドヌクレアーゼがヘアピン・ループの5'末端を一本鎖DNAと二本鎖DNAの接合部の位置で開裂させる。すると、DNAのその鎖に特有な断片の集合が生じる。配列内の変化(例えばSNP)は、形成された二次構造と観察されるCFLPパターンとを変化させるであろう。CFLPパターンは、一般に短い変性PAGE上で分離される。断片の検出は、たいてい、PCRプライマーの1つに標識することによってなされる。
【0151】
核酸配列における変化の検出にミスマッチ結合タンパク質も利用されてきた。変化は、例えばMutSタンパク質(大腸菌DNAミスマッチ修復系の一成分)が、あるいはヒトhMSH2タンパク質とGTBPタンパク質が、ミスマッチ塩基を含む二本鎖DNA分子に結合することによって検出される。これらヘテロ二本鎖は、従来技術でよく知られている方法(例えば熱で変性させた後、再びアニールする方法)で作る。次に、二本鎖DNAをミスマッチ結合タンパク質とともにインキュベートし、変化を移動度シフト・アッセイによって検出する。例えばある単純なアッセイは、ヘテロ二本鎖に対してミスマッチ結合タンパク質が結合することによってヘテロ二本鎖がエキソヌクレアーゼによる分解から保護されるという事実に基づいている。
【0152】
さらに別の具体例であるタンパク質翻訳テスト(PTT)は、PCR、転写、翻訳の組み合わせに基づいている。この方法では、翻訳終止の変化を選択的に検出する。その変化は、SDS-PAGEによってタンパク質のレベルで明らかになる。プロモータ(例えばT7プロモータ)と真核生物の翻訳開始配列をPCRプライマーに連結する。転写-翻訳と続く反応においては、検出可能な標識を付けたアミノ酸の存在下で、PCR産物を鋳型として使用する。翻訳産物のサイズをゲル電気泳動で分析する。変化によって終止コドンが生じると、翻訳が途中で終了し、サイズが本来よりも小さなタンパク質産物になる。このアッセイには制約があり、異なるサイズの翻訳産物になることで検出が可能になる変化しか検出できない。そのため、ミスセンス変異は検出されない。
【0153】
SNPの検出に現在利用されている多くの方法には、部位特異的および/または対立遺伝子特異的なハイブリダイゼーションが含まれている。これらの方法は、主に、オリゴヌクレオチドが、注目のSNPを含む標的配列を識別して結合することに依存している。
【0154】
部位特異的ハイブリダイゼーションによってSNPを検出または同定する方法の大多数は、標的をPCRなどの方法で増幅して感度と特異性を向上させる必要がある(例えばアメリカ合衆国特許第5,679,524号、PCT公開公報WO 98/59066、PCT公開公報WO 95/12607を参照のこと)。ヒトDNAの全体を採取するとき、SNP部位を含む標的配列は、そのヒトDNA全体のほんの一部にすぎない。例えば20塩基対からなる標的配列は、全DNAのわずか0.00000033%である(正常な二倍体ゲノムでは、所定の標的配列のコピーが2つあるが、それぞれの人が異なるSNPを持つ可能性があるため、その2つのコピーは異なる部位であると考えることができる)。したがって数マイクログラムという典型的なDNAサンプルだと、感度不足のために現在ある多くの方法では不十分である可能性がある。
【0155】
より重要なことだが、1つのヌクレオチドを識別できるほど十分に短いオリゴヌクレオチドを用いて例えば20塩基対からなる標的配列にハイブリダイゼーションさせても、必ずしも標的領域だけにハイブリダイズするのではなく、ゲノム内の他の領域にもわずかな割合で結合する。非標的DNAの量が圧倒的に多いため、非特異的ハイブリダイゼーションによって大きなバックグラウンドが発生し、特定の信号が埋もれてしまう可能性がある。したがって1つの標的領域をPCRで増幅することは、非特異的配列の量を劇的に減らすための好ましいステップである。この増幅ステップは、“複雑さ低減”と呼ばれる。しかしPCR法の忠実さには限度がある。PCRプライマーのペアが組み合わさることで、偽の反応生成物が生成されたり、特定の領域が欠けたりする可能性がある。さらに、標的としない配列がコピーされた後や、1つのエラーが標的配列に導入された場合には、間違った組み込みのために最終的な反応生成物に含まれるエラーの数がPCR増幅を1回行なうごとに指数関数的に増大する。したがってPCRのエラーは、核酸の集団の中で稀な変異を探す場合に大きな欠点となる可能性がある。
【0156】
アフィメトリックス社(サンタ・バーバラ、カリフォルニア州)とナノジェン社(サン・ディエゴ、カリフォルニア州)の方法では、1塩基ミスマッチを含む二本鎖DNAは、塩基が完全に対になっている二本鎖よりもはるかに不安定であるという事実を利用する。マッチした二本鎖の存在は、蛍光によって検出される。
【0157】
アメリカ合衆国出願第20050059030号(その全体がこの明細書に組み込まれているものとする)には、あらかじめ増幅することも複雑さを減らすこともなく、目的とする配列を選択的に豊富にするとともに、いかなる酵素反応の助けを借りることもなく、ヒトDNA全体に含まれる一塩基多型を検出する方法が記載されている。この方法では、2つのハイブリダイゼーション・イベントを含む1ステップ・ハイブリダイゼーションを利用する。2つのハイブリダイゼーション・イベントとは、標的配列の第1の部分が捕捉プローブにハイブリダイズするイベントと、標的配列の第2の部分が検出プローブにハイブリダイズするイベントである。両方のハイブリダイゼーション・イベントは、同じ反応中に起こる。標的配列は、まず最初に捕捉オリゴヌクレオチドと結合し、次いで検出プローブ(例えばナノ粒子)にもハイブリダイズする。あるいは標的配列は、最初に検出プローブに結合し、次いで捕捉オリゴヌクレオチドに結合する。
【0158】
アメリカ合衆国出願第20050042608号(その全体がこの明細書に組み込まれているものとする)には、Thorpらによる「核酸のハイブリダイゼーションを電気化学的に検出する方法」(アメリカ合衆国特許第5,871,918号)を改変した方法が記載されている。アメリカ合衆国出願第20050042608号の方法により、核酸標的に含まれるSNP部位に位置する一塩基多型の存在または不在を調べることができる。簡単に説明すると、複数の捕捉プローブを設計するが、そのとき、それぞれの捕捉プローブが、異なるSNP塩基を含むとともに、SNP塩基のそれぞれの側にプローブの塩基配列を含んでいるようにする。プローブの塩基は、SNP部位に隣接する対応する標的配列と相補的である。それぞれの捕捉プローブは、基板の導電性動作面上にあって非導電性外側層を有する別々の電極に固定される。それぞれの捕捉プローブと核酸標的の間のハイブリダイゼーションの程度は、遷移金属を用いて各電極における酸化-還元反応を検出することによって調べる。各電極における酸化速度の差を利用し、選択した核酸標的が選択したSNP部位に一塩基多型を有するかどうかを明らかにする。
【0159】
メガタイプ(登録商標)技術を利用したリンクス・セラピューティックス社(ヘイウォード、カリフォルニア州)の方法により、ゲノム材料の小さなプールまたは大きなプールから、非常に多くのSNPの遺伝子型を同時に決定することができる。この方法では、蛍光標識したプローブを用い、回収した2つのゲノム集団を比較する。その結果、SNPのマッピングやSNPに関する知識をあらかじめ必要とすることなく、2つの集団を区別するSNP群を含むDNA断片の検出と回収が可能になる。
【0160】
SNPを検出して同定する他の方法が数多く存在している。その中には、例えば質量分析を利用し、SNPとハイブリダイズするプローブを測定する方法がある。この方法は、質量分析をどれだけ迅速に実行できるかに幅があり、1日に数サンプルから、質量コード・タグを用いて1日に40,000個のSNPという高スループットまでが可能である。好ましい1つの具体例は、例えばCOX2遺伝子のプロモータに本発明の多型を含む核酸配列、またはそれと相補的な配列を、質量分析で調べるというものである。このような質量分析法は当業者によく知られており、本発明の遺伝子型決定法を改変し、本発明の多型(例えばCOX2のプロモータにおける本発明の多型)を質量分析で調べられるようにすることができる。
【0161】
SNPは、連結ビット(ligation-bit)分析で調べることもできる。この分析では、プライマー間に一塩基のギャップがある2つのプライマーを用いて標的とハイブリダイズさせる必要がある。4つあるヌクレオチドのそれぞれを、DNAポリメラーゼと、リガーゼと、標的DNAと、プライマーとを含む別々の反応混合物に添加する。ポリメラーゼは、SNPと相補的な第1のプライマーの3'末端をヌクレオチドに付加する。次に、リガーゼが、隣接した2つのプライマーを連結する。サンプルを加熱すると、連結が起こっていた場合には、今やより大きくなったプライマーがハイブリダイズされたままになり、信号として例えば蛍光を検出することができる。これらの方法に関するさらに詳しい説明は、アメリカ合衆国特許第5,919,626号、第5,945,283号、第5,242,794号、第5,952,174号に見いだすことができる。
【0162】
アメリカ合衆国特許第6,821,733号(その全体がこの明細書に組み込まれているものとする)には、2つの核酸分子の配列の違いを検出する方法であって、その2つの核酸分子を、4者間複合体の形成と分枝点の移動が可能になる条件下で接触させるステップと;その4者間複合体を、トレーサ分子および検出分子と、検出分子がトレーサ分子または4者間複合体と結合できる条件下で接触させるステップと;4者間複合体に曝露する前と後で検出分子へのトレーサ分子の結合を調べるステップを含む方法が記載されている。検出分子への結合に関して4者間複合体とトレーサ分子の競合があるということは、2つの核酸が異なることを示している。
【0163】
タンパク質またはプロテオミクスに基づく方法は、多型の検出と分析にも適している。発現するタンパク質に変化をもたらす多型、または発現するタンパク質の変化と関係する多型は、タンパク質を分析することによって直接検出できる。そのためには、サンプル内のさまざまなタンパク質を例えばゲル電気泳動やHPLCで分離し、そうやって得られたタンパク質またはペプチドを例えばNMRやタンパク質のシークエンシング(例えば化学的シークエンシングや、より一般的な質量分析)によって同定する必要がある。プロテオミクスに基づく方法は従来技術でよく知られており、自動化できる可能性が大きい。例えば統合システム(例えばプロテオーム・システムズ社のプロテオームIQ(登録商標)システム)により、サンプルの調製、タンパク質の分離、画像の獲得と分析、タンパク質のプロセシング、質量分析、バイオインフォーマティクス技術を組み合わせた高スループットのプロテオーム分析用プラットフォームが提供される。
【0164】
タンパク質を同定するプロテオミクス法の大多数では、質量分析を利用する。例えば、イオン・トラップ質量分析、液体クロマトグラフィ(LC)、LC/MSn質量分析、ガス・クロマトグラフィ(GC)、フーリエ変換-イオン・サイクロ(登録商標)トロン共鳴-質量分析器(FT-MS)、MALDI-TOF質量分析、ESI質量分析、ならびにこれらの変形法がある。質量分析法は、タンパク質の翻訳後修飾(例えばリン酸化、グリコシル化)を調べるのにも役立つため、タンパク質の翻訳後修飾を変化させる多型や、タンパク質の翻訳後修飾の変化と関係する多型を調べるのに役立つ。
【0165】
関連する技術もよく知られており、例えば“化学的インクジェット・プリンタ”などのタンパク質プロセシング装置がある。このインクジェット・プリンタには圧電性プリント技術が使われており、2-D PAGEゲルから膜に電気ブロットしたタンパク質サンプルを酵素または化学物質を用いてin situで消化させることが、選択したタンパク質のスポットに酵素または化学物質を直接噴射することによって可能になる。タンパク質をその場で消化させ、インキュベートした後に、膜を、ペプチド分析用の質量分析器に直接入れることができる。
【0166】
当業者であれば、特に特定のSNPがプロモータなどの遺伝子調節領域に発生した場合に、そのSNPを変化した遺伝子発現と関連づける方法を知っているであろう。遺伝子発現の変化は、SNPがタンパク質をコードしている遺伝子のコード領域に位置する場合にも起こる可能性がある。例えばその領域でSNPが多様な使用頻度のコドンと関係していると、そのSNPは、tRNAの量の違いと関係することになる。発現のこのような変化は、従来技術でよく知られている方法によって明らかにすることができるため、そのようなSNPの検出に利用できる。同様に、SNPが遺伝子のコード領域に発生したときに類似したアミノ酸置換にならない場合には、その置換の結果として遺伝子産物の機能が変化する可能性がある。同様に、遺伝子産物がRNAである場合には、そのようなSNPによってRNA遺伝子産物の機能が変化する可能性がある。機能の何らかの変化は例えば活性アッセイまたは機能アッセイで調べることができ、その変化を利用して、このようなSNPを検出することができる。
【0167】
SNPを検出して同定する上記の方法を本発明の方法で利用できる。
【0168】
もちろん、本発明に従ってSNPを検出して同定するには、テストする材料を含むサンプルを対象から採取する。サンプルとしては、目的とするSNP(場合によっては目的とするポリペプチド)を含んでいる可能性のあるあらゆるサンプルが可能であり、サンプルは、あらゆる体液(血液、尿、唾液など)、生検サンプル、または他の組織調製物から得ることができる。
【0169】
DNAまたはRNAは、従来技術で知られている多数の方法のうちの任意の方法でサンプルから単離することができる。例えば核酸の精製方法は、Tijssen、『生化学と分子生物学における実験技術:核酸プローブとのハイブリダイゼーション、パート1:理論と核酸の調製』、エルスヴィア社、ニューヨーク、ニューヨーク州、1993年と、Maniatis, T.、Fritsch, E.F.、Sambrook, J.、『分子クローニングのマニュアル』、1989年に記載されている。
【0170】
多型/SNPの存在または不在の検出を助けるため、核酸プローブおよび/または核酸プライマーを用意するとよい。そのようなプローブは、多型の存在または不在を示す染色体の変化に対して特異的な核酸配列を持っており、標的となる多型と組み合わさったときに検出可能な信号を放出する物質で標識することが好ましい。
【0171】
核酸プローブとしては、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、任意のRNA様材料、任意のDNA様材料(例えばペプチド核酸、分岐したDNAなど)が可能である。プローブは、センス・ポリヌクレオチド・プローブでも、アンチセンス・ポリヌクレオチド・プローブでもよい。標的ポリヌクレオチドが二本鎖である場合には、プローブとしてセンス鎖またはアンチセンス鎖が可能である。標的ポリヌクレオチドが一本鎖である場合には、プローブは、相補的な一本鎖である。
【0172】
プローブは、従来技術でよく知られているいろいろな合成法または酵素法で調製することができる。プローブは、全体または一部を、従来技術でよく知られている化学的な方法で合成することができる(Caruthers他、Nucleic Acids Res.、Symp. Ser.、215〜233ページ、1980年)。あるいはプローブは、全体または一部を酵素を利用して作ることもできる。
【0173】
ヌクレオチド類似体は、従来技術でよく知られた方法を利用してプローブに組み込むことができる。唯一の条件は、組み込まれたヌクレオチド類似体が、標的ポリヌクレオチド配列と塩基対を形成せねばならないことである。例えばいくつかのグアニン・ヌクレオチドを、シトシン残基と塩基対を形成するヒポキサンチンで置換することができる。しかしこれらの塩基対は、グアニンとシトシンの間の塩基対ほど安定ではない。あるいはアデニン・ヌクレオチドを、アデニンとチミジンの間に形成されるよりも強い塩基対を形成する2,6-ジアミノプリンで置換することもできる。
【0174】
さらに、プローブは、化学的に誘導体化したヌクレオチド、または酵素で誘導体化したヌクレオチドを含むことができる。典型的な化学的修飾としては、アシル基、アルキル基、アリール基、アミノ基を用いた誘導体化がある。
【0175】
プローブは、基板上に固定化することができる。好ましい基板は、堅固な支持体または半堅固な支持体のうちで適切なものであり、具体的には、膜、フィルタ、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁性ビーズ、非磁性ビーズ、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微粒子、キャピラリーなどがある。基板の表面はいろいろな形状(例えばウエル、溝、ピン、チャネル、穴)にすることが可能であり、そこにポリヌクレオチド・プローブを結合させる。基板は光を透過させることが好ましい。
【0176】
さらに、プローブは基板に直接結合させる必要はなく、リンカー基を通じて基板に結合させることができる。リンカー基は、付着したプローブに曝露するため一般に長さが6〜50原子になっている。好ましいリンカー基としては、エチレングリコール・オリゴマー、ジアミン、二酸などがある。基板表面の反応基は、リンカーの末端部の一方と反応してリンカーを基板に結合させる。次に、リンカーの他方の末端部を機能化し、プローブと結合できるようにする。
【0177】
プローブは、基板表面でプローブを合成するための試薬を供給することによって、あるいはあらかじめ形成したDNA断片またはクローンを基板表面に供給することによって、基板に付着させることができる。代表的なディスペンサーは、溶液を基板に供給するマイクロピペットである。基板に対するマイクロピペットの位置は、ロボット・システムを用いて制御される。試薬が複数の反応領域に同時に供給されるようにするため、多数のディスペンサーを設置することができる。
【0178】
核酸マイクロアレイが好ましい。そのようなマイクロアレイ(その中に核酸チップも含まれる)は、従来技術でよく知られている(例えば、アメリカ合衆国特許第5,578,832号、第5,861,242号、第6,183,698号、第6,287,850号、第6,291,183号、第6,297,018号、第6,306,643号、第6,308,170号を参照のこと。なおこれら特許文献のそれぞれは、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0179】
あるいは抗体マイクロアレイを作ることもできる。そのようなマイクロアレイの作り方の本質的なことは、SchweitzerとKingsmore、「マイクロアレイ上でのタンパク質の測定」、Curr. Opin. Biotechnol.、2002年、第13巻(1)、14〜19ページ;Avseekno他、「エレクトロスプレー蒸着によって製造した免疫化学マイクロアレイへのタンパク質の固定化」、Anal. Chem.、2001年15、第73巻(24)、6047〜6052ページ;Huang、「抗体をベースとしたタンパク質マイクロアレイ・システムにおける複数タンパク質の検出」、Immunol. Methods、2001年1、第255巻(1〜2)、1〜13ページに記載されている。
【0180】
本発明は、本発明で使用するためのキットの製造も意図している。適切なキットとしては、本発明で使用するさまざまな試薬が適切な容器またはパッケージング材料(例えばチューブ、バイアル、収縮包装したパッケージ、ブロー成形したパッケージ)に入ったものが挙げられる。
【0181】
本発明のキットに含めるのに適した材料としては、以下に示すもののうちの1つ以上が挙げられる:DNA配列またはcDNA配列のドメインのうちの注目の遺伝的多型に隣接しているドメインとアニールする遺伝子特異的PCRプライマーのペア(オリゴヌクレオチド);PCRを実施することなく、ゲノムDNAまたはcDNAの中の特定の配列ドメインを増幅することが可能な試薬;PCRまたはPCR以外の方法で増幅された配列ドメインに存在する可能性のあるさまざまな対立遺伝子を区別するのに必要な試薬(例えば制限エンドヌクレアーゼや、多型の1つの対立遺伝子に優先的にアニールするオリゴヌクレオチド(例えばオリゴヌクレオチドからの信号を増幅する酵素または蛍光化学基を含むように改変されていて、対立遺伝子の識別をより確実にするもの));さまざまな対立遺伝子に由来する産物を物理的に分離するのに必要な試薬(例えば電気泳動で使用するアガロースまたはポリアクリルアミドと緩衝液、HPLCカラム、SSCPゲル、ホルムアミド・ゲル、MALDI-TOFのためのマトリックス支持体)。
【0182】
本発明の予測方法により、所定の対象にとって多数の治療法および/または治療計画が適しているかどうかを評価し、適しているものをその対象で実現することができる。その方法のうちで最も簡単なものは、対象にライフスタイルを変える動機を与えることであろう。例えば対象が現在喫煙者である場合、本発明の方法によって禁煙する動機を与えることができる。
【0183】
治療的介入または治療の方法は、多型の性質と、その多型の生物学的効果とから予測される。例えば感受性多型が遺伝子発現の変化と関係している場合には、介入または治療は、例えばその遺伝子の発現を変化させることが可能な試薬の投与によってその遺伝子の正常な発現を回復することに向けられることが好ましい。SNPの対立遺伝子または遺伝子型が遺伝子発現の減少と関係している場合には、治療は、その遺伝子の発現を増加させることが可能な試薬を投与する操作を含むことができ、逆にSNPの対立遺伝子または遺伝子型が遺伝子発現の増加と関係している場合には、治療は、その遺伝子の発現を減少させることが可能な試薬を投与する操作を含むことができる。遺伝子の発現を変化させるのに役立つ方法は、従来技術でよく知られている。例えばSNPの対立遺伝子または遺伝子型が遺伝子発現の上方調節と関係している場合には、例えばRNAi法またはアンチセンス法を利用した治療を実現してmRNAの量を減らし、その結果としてその遺伝子の発現を減らすことができる。あるいは治療は、例えばその遺伝子の産物の活性を変化させることによってその遺伝子の異常な発現を元に戻す方法を含むこともできる。
【0184】
感受性SNP対立遺伝子または感受性SNP遺伝子型が遺伝子産物の機能低下、または遺伝子産物の発現レベル低下と関係している場合には、治療的介入または治療は、その機能を増大または置換する操作を含むこと、あるいは対象の体内での遺伝子産物の量を、例えばその遺伝子産物またはそれと機能が同等なものを投与して増やす操作を含むことができる。例えばSNPの対立遺伝子または遺伝子型が酵素機能の低下と関係している場合には、治療は、活性な酵素または酵素類似体を対象に投与する操作を含むことができる。同様に、SNPの対立遺伝子または遺伝子型が遺伝子産物の機能増大と関係している場合には、治療的介入または治療は、例えばその遺伝子産物の阻害剤、またはその遺伝子産物のレベルを低下させることが可能な薬剤を対象に投与してその機能を低下させる操作を含むことができる。例えばSNPの対立遺伝子または遺伝子型が酵素機能の増大と関係している場合には、治療は、酵素阻害剤を対象に投与する操作を含むことができる。
【0185】
同様に、有益な(防御)SNPが特定の遺伝子の上方調節、または酵素その他のタンパク質の発現の上方調節と関係している場合には、治療は、抵抗力のある遺伝子型が欠如している個人の体内でそのような上方調節または発現を模倣させること、および/またはそのような酵素その他のタンパク質をその個人に供給することに向けられる。さらに、防御SNPが特定の遺伝子の下方調節、または酵素その他のタンパク質の発現の低下または消失と関係している場合には、望ましい治療は、防御遺伝子型が欠如している個人の体内でそのような条件を模倣させることに向けられる。
【0186】
同定した上記のさまざまな多型と、肺がんに対する対象の感受性(又はそれ以外)の間の関係は、候補治療薬の設計および/またはスクリーニングにも応用される。これは特に、感受性多型または防御多型との関係が遺伝子発現の上方調節または下方調節として現われる場合に当てはまる。そのような場合、その上方調節または下方調節に対する候補治療薬の効果は容易に検出できる。
【0187】
例えば一実施態様では、存在しているヒト肺臓と細胞培養物をSNPの遺伝子型に関して上記のようにしてスクリーニングする。(ヒト肺臓と細胞培養物の情報に関しては、例えばBohinski他、1996年、Molecular and Cellular Biology、第14巻、5671〜5681ページ;Collettsolberg他、1996年、Pediatric Research、第39巻、504ページ;Hermanns他、2004年、Laboratory Investigation、第84巻、736〜752ページ;Hume他、1996年、In Vitro Cellular & Developmental Biology-Animal、第32巻、24〜29ページ;Leonardi他、1995年、第38巻、352〜355ページ;Notingher他、2003年、Biopolymers(Biospectroscopy)、第72巻、230〜240ページ;Ohga他、1996年、Biochemical and Biophysical Research Communications、第228巻、391〜396ページを参照のこと。なおそれぞれの文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。)感受性遺伝子型と防御遺伝子型のグループを代表する培養物を選択するとともに、防御遺伝子型が存在している場合に上方調節または下方調節される遺伝子の発現に関して“正常”と考えられる培養物も選択する。
【0188】
このような培養物のサンプルを候補治療化合物のライブラリと照合し、以下に示す事柄のどれかまたはすべてに関してスクリーニングを行なう:(a)感受性遺伝子型において通常は上方調節される感受性遺伝子の下方調節;(b)感受性遺伝子型において通常は下方調節される感受性遺伝子の上方調節;(c)防御遺伝子型において通常は下方調節されるか発現しない(つまり、いかなる形態も発現しない)防御遺伝子の下方調節;(d)防御遺伝子型において通常は上方調節される防御遺伝子の上方調節。感受性遺伝子型を有する培養物の中で感受性遺伝子および/または防御遺伝子の調節状態および/または作用を変化させる能力に関し、化合物を選択する。
【0189】
同様に、ある多型が、それが存在していることで、発現した遺伝子産物の生理学的に活性な濃度が対象にとっての正常範囲の外に出るような多型であり、しかも発現した遺伝子産物のレベルを正常な範囲に戻す予防措置または治療措置を取ることができる場合には、個々の対象のスクリーニングを行ない、その回復手段から利益を得られる可能性があるかどうかを調べることができる。そのようなスクリーニングは、対象にその多型が存在しているか不在であるかを、この明細書に記載した任意の方法で検出する操作を含んでいる。そして多型が存在している対象は、治療による利益を受ける可能性があると判断される。
【実施例】
【0190】
実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれら実施例に限定されることはない。
【0191】
〔実施例1〕
ケース関連づけ研究
対象のリクルート
これまでに1年に少なくとも15箱喫煙してきて慢性閉塞性肺疾患(COPD)と医師に診断されたヨーロッパ出身の対象をリクルートした。対象は、以下の基準を満たしていた:年齢が50歳超で、40歳以降に息切れの症状が現われ、1秒間の努力呼出量(FEV1)が予想値の70%未満であり、比FEV1/FVC(1秒間の努力呼出量/努力肺活量)が79%未満である(アメリカ胸郭学会の基準)。294人の対象をリクルートした。そのうちの58%が男性であり、FEV1/FVCの平均値(±95%信頼区間)は51%(49〜53)、FEV1の平均値は予想値の43%(41〜45)であった。平均年齢、1日に吸うタバコの数、箱×年の経歴は、それぞれ、65歳(64〜66)、24本/日(22〜25)、50箱×年(41〜55)であった。最低でも20箱×年の喫煙をし、これまで息切れをしたことがなく、過去に閉塞性肺疾患と診断されたことがなく、特に子ども時代に喘息や慢性閉塞性肺疾患と診断されたことがない217人のヨーロッパ系の対象についても調べた。この対照群は、中高年のクラブを通じてリクルートした。63%が男性で、FEV1/FVCの平均値(95%信頼区間)が82%(81〜83)、FEV1の平均値が予想値の96%(95〜97)であった。平均年齢、1日に吸うタバコの数、箱×年の経歴は、それぞれ、59歳(57〜61)、24本/日(22〜26)、42箱×年(39〜45)であった。PCRに基づいた方法(Sanford他、1999年)を利用し、すべての対象でα1-アンチトリプシン(S対立遺伝子とZ対立遺伝子)の遺伝子型を調べ、ZZ対立遺伝子である対象を除外した。COPDのコホートと、抵抗力のある喫煙者のコホートで、MZ遺伝子型である対象が同じ割合(それぞれのコホートに5%)になるようにした。地方の血液提供サービスを通じて190人のヨーロッパ系血液提供者(喫煙状況は不明)を継続的にリクルートした。63%が男性で、平均年齢は50歳であった。
【0192】
この研究により、対照と比較してCOPD患者で頻度がより多い多型は、肺機能障害とCOPDの発症に関する感受性が大きいことを反映している可能性のあることがわかる。同様に、感受性のある喫煙者(COPD患者および/または対照)と比べて抵抗力のある喫煙者で頻度がより多い多型は、防御の役割を果たしている可能性がある。
【0193】
【表2】

【0194】
遺伝子型決定法
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)のプロモータの-765G/C多型と、α1-アンチトリプシンの遺伝子型決定
ゲノムDNAを全血サンプルから抽出した(Maniatis, T.、Fritsch, E.F.、Sambrook, J.、『分子クローニングのマニュアル』、1989年)。以前に発表されている方法(Papafili, A.他、2002年。その全体が、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)をわずかに変更した方法でシクロオキシゲナーゼ2の-765多型を調べた。20ngのゲノムDNAと、500ピコモルのフォワードプライマーおよびリバースプライマーと、0.2mMのdNTPと、10mMのトリス-HCl(pH8.4)と、150mMのKClと、1.0mMのMgCl2と、1ユニットのポリメラーゼ(ライフテクノロジーズ社)とを含む全体積25μlの中でPCR反応を行なわせた。サイクリング時間は、95℃で3分間インキュベートした後、94℃で50秒間、66℃で60秒間、72℃で60秒間を33サイクルであった。その後、72℃で10分間にわたって最後の伸長反応を行なわせた。臭化エチジウムで染色した3%アガロース・ゲルに紫外線を照射することにより、4μlのPCR産物を可視化した。増幅産物のアリコート3μlを4ユニットのAciI(ロッシュ・ディアグノスティックス社、ニュージーランド国)で37℃にて1時間にわたって消化させた。TBE緩衝液を用い、2.5%アガロース・ゲル上で80mVにて2.0時間にわたって消化後の産物を分離した。臭化エチジウムで染色した後に紫外線を照射することにより、得られた生成物を123bpのラダーを基準として可視化した。上記のPCRに基づいた方法(Sandford他、1999年)を利用し、対象とするすべてのCOPDを患っている喫煙者と抵抗力のある喫煙者でα1-アンチトリプシンのS対立遺伝子とZ対立遺伝子の遺伝子型を調べた。
【0195】
エラフィンの+49C/T多型
ゲノムDNAを全血サンプルから抽出した(Maniatis, T.、Fritsch, E.F.、Sambrook, J.、『分子クローニングのマニュアル』、1989年)。エラフィンの+49多型を、以前に発表されている方法(Kuijpers, A.L.A.他、Clinical Genetics、1998年、第54巻、96〜101ページ。その全体が、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)をわずかに変更した方法でエラフィンの+49多型を調べた。20ngのゲノムDNAと、500ピコモルのフォワードプライマーおよびリバースプライマーと、0.2mMのdNTPと、10mMのトリス-HCl(pH8.4)と、150mMのKClと、1.0mMのMgCl2と、1ユニットのタック・ポリメラーゼ(ライフテクノロジーズ社)とを含む全体積25μlの中でPCR反応を行なわせた。サイクリング時間は、95℃で3分間インキュベートした後、94℃で50秒間、66℃で60秒間、72℃で60秒間を33サイクルであった。その後、72℃で10分間にわたって最後の伸長反応を行なわせた。臭化エチジウムで染色した3%アガロース・ゲルに紫外線を照射することにより、4μlのPCR産物を可視化した。増幅産物のアリコート3μlを4ユニットのFok1(ロッシュ・ディアグノスティックス社、ニュージーランド国)で37℃にて1時間にわたって消化させた。TBE緩衝液を用い、2.5%アガロース・ゲル上で80mVにて2.0時間にわたって消化後の産物を分離した。臭化エチジウムで染色した後に紫外線を照射することにより、得られた生成物を123bpのラダーを基準として可視化した。
【0196】
マトリックスメタロプロテイナーゼ1遺伝子の-1607 1G2G多型の遺伝子型決定
フェノールとクロロホルムを用いた標準的な方法でゲノムDNAを抽出した。患者のコホートと対照のコホートを、戦略的に負の対照を含む96ウエルのPCR形式に構成した。アッセイ用プライマー、PCRの条件、RFLPアッセイの詳細は、以前に報告されている(Dunleavey, L.他)。遺伝子型決定は、上記のプロトコルをわずかに変更し、われわれ自身の実験室の条件で最適になるようにして行なった。PCRの反応物をMJリサーチ・サーモサイクラーの中に入れ、80ngのゲノムDNAと、100ngのフォワードプライマーおよびリバースプライマーと、200mMのdNTPと、20mMのトリス-HCl(pH8.4)と、50mMのKClと、1.5mMのMgCl2と、1.0ユニットのタック・ポリメラーゼ(キアジェン社)とを含む全体積25μlの中で増幅した。フォワードプライマーとリバースプライマーの配列は、5'-TCG TGA GAA TGT CTT CCC ATT-3'(配列番号1)と5'-TCT TGG ATT GAT TTG AGA TAA GTG AAA TC-3'(配列番号2)であった。サイクリング条件は、94℃で60秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を35サイクルであり、最後に3分間にわたって伸長させた。増幅産物のアリコートを、6ユニットの制限酵素XmnI(ロッシュ・ディアグノスティックス社、ニュージーランド国)で指定された温度条件にて4時間にわたって消化させた。6%ポリアクリルアミド・ゲル上で消化後の産物を分離した。臭化エチジウムで染色した後に紫外線を照射することによってこの産物を可視化し、移動状態を基準となる1kbのプラス・ラダー(インヴィトロジェン社)と比較した。遺伝子型をデータ・スプレッドシートに記録し、統計的に分析した。
【0197】
他の多型の遺伝子型決定
ゲノムDNAを全血サンプルから抽出した(Maniatis, T.、Fritsch, E.F.、Sambrook, J.、『分子クローニングのマニュアル』、1989年)。精製したゲノムDNAのアリコート(濃度が10ng/μl)を96ウエルのプレートに入れ、以下に示す配列、増幅条件、方法を利用し、シーケノム(登録商標)システム(シーケノム(登録商標)オートフレックス質量分析器とサムソン社の24ピン・ナノディスペンサー)上で遺伝子型を決定した。
【0198】
PCR多重反応では以下の条件を用いた:最終濃度は、10×緩衝液につき、15mMのMgCl2を1.25×、25mMのMgCl2を1.625mM、25mMのdNTP混合物を500μM、4μMのプライマーを100nM、タック・ポリメラーゼ(キアジェン社、ホット・スタート)を0.15ユニット/反応、ゲノムDNAを10ng/μlであった。サイクリング時間は、95℃で15分間の後、5℃で15秒間、56℃で30秒間、72℃で30秒間を45サイクルであり、最後に3分間にわたって伸長を行なった。エビのアルカリホスファターゼ(SAP)を用いた処理(1回のPCR反応で2μl〜5μl)を行ない、35℃で30分間にわたってインキュベートし、次いで伸長反応(SAPで処理した後に2μl〜7μlを添加)を実施した。伸長反応では、反応1回ごとに、水0.76μl;hME10×停止緩衝液0.2μl;hMEプライマー(10μM)1μl;マスエクステンド酵素0.04μlを用いた。
【0199】
【表3】

多型の遺伝子型を決定するためのシーケノムの条件-1
【0200】
【表4】

多型の遺伝子型を決定するためのシーケノムの条件-2
【0201】
【表5】

多型の遺伝子型を決定するためのシーケノムの条件-3
【0202】
【表6】

多型の遺伝子型を決定するためのシーケノムの条件-4
【0203】
【表7】

多型の遺伝子型を決定するためのシーケノムの条件-5
【0204】
【表8】

多型の遺伝子型を決定するためのシーケノムの条件-6
【0205】
【表9】

多型の遺伝子型を決定するためのシーケノムの条件-7
【0206】
【表10】

多型の遺伝子型を決定するためのシーケノムの条件-8
【0207】
結果
【表11】

*染色体の数(2n)遺伝子型
1.遺伝子型。抵抗力のある喫煙者とCOPDの患者でのCC/CG対GG、確率の比(OR)=1.98、95%信頼区間1.3〜3.1、χ2(イェーツの修正済み)=8.82、p=0.003、
CC/CG=COPDに対する防御
2.対立遺伝子。抵抗力のある喫煙者とCOPDの患者でのC対G、確率の比(OR)=1.92、95%信頼区間1.3〜2.8、χ2(イェーツの修正済み)=11.56、p<0.001、
C=COPDに対する防御
【0208】
【表12】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と対照でのGG対AG/AA、確率の比(OR)=1.83、95%信頼区間1.2〜2.8、χ2(イェーツの修正済み)=8.1、p=0.004、
GG=COPDに対する感受性(他のSNPの存在による)
2.対立遺伝子。抵抗力のある喫煙者と対照でのGG対AG/AA、確率の比(OR)=1.98、95%信頼区間1.3〜3.1、χ2(イェーツの修正済み)=9.43、p=0.002、
GG=COPDに対する防御(他のSNPの存在による)
【0209】
【表13】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と対照でのAA対AC/CC、確率の比(OR)=1.50、95%信頼区間1.0〜2.3、χ2(イェーツの修正済み)=4.26、p=0.04、
AA=COPDに対する感受性
2.対立遺伝子。COPDの患者と対照でのA対C、確率の比(OR)=1.46、95%信頼区間1.1〜2.0、χ2(イェーツの修正済み)=5.76、p=0.02
3.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのAA対AC/CC、確率の比(OR)=1.35、95%信頼区間0.9〜2.0、χ2(イェーツの修正済み)=2.39、p=0.12(傾向)、
AA=COPDに対する感受性
【0210】
【表14】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と対照でのCC対CG/GG、確率の比(OR)=1.44、95%信頼区間1.0〜2.2、χ2(イェーツの修正済み)=3.4、p=0.06、
CC=COPDに対する感受性
2.対立遺伝子。COPDの患者と対照でのC対G、確率の比(OR)=1.36、95%信頼区間1.0〜1.9、χ2(イェーツの修正済み)=53.7、p=0.05、
C=COPDに対する感受性
【0211】
【表15】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者での5G5G対それ以外、確率の比(OR)=1.55、95%信頼区間0.9〜2.6、χ2(イェーツの修正済み)=3.12、p=0.08、
5G5G=COPDに対する感受性
2.遺伝子型。COPDの患者と対照での5G5G対それ以外、確率の比(OR)=1.48、95%信頼区間0.9〜2.5、χ2(イェーツの修正済み)=2.43、p=0.12、
5G5G=COPDに対する感受性
3.対立遺伝子。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者での5G対4G、確率の比(OR)=1.33、95%信頼区間1.0〜1.8、χ2(イェーツの修正済み)=4.02、p=0.05、
5G=COPDに対する感受性
【0212】
【表16】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。抵抗力のある喫煙者と対照でのTT対 TG/GG、確率の比(OR)=2.2、95%信頼区間1.0〜4.7、χ2(イェーツの修正済み)=4.49、p=0.03、
TT遺伝子型=COPDに対する防御
【0213】
【表17】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。抵抗力のある喫煙者とCOPDの患者でのAA/AC対CC、確率の比(OR)=1.39、95%信頼区間0.9〜2.1、χ2(イェーツの修正済み)=2.59、p=0.10、
AA/AC遺伝子型=COPDに対する防御
2.対立遺伝子。抵抗力のある喫煙者とCOPDの患者でのA対C、確率の比(OR)=1.34、95%信頼区間1.0〜1.8、χ2(イェーツの修正済み)=3.94、p=0.05、
A対立遺伝子=COPDに対する防御
【0214】
【表18】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。抵抗力のある喫煙者と対照でのTT/TG対GG、確率の比(OR)=1.53、95%信頼区間1.0〜2.5、χ2(イェーツの修正済み)=3.52、p=0.06、
TT/TG遺伝子型=COPDに対する防御
2.対立遺伝子。抵抗力のある喫煙者と対照でのT対G、確率の比(OR)=1.27、95%信頼区間1.0〜1.7、χ2(イェーツの修正済み)=2.69、p=0.1、
T対立遺伝子=COPDに対する防御
【0215】
【表19】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。抵抗力のある喫煙者と対照でのAA対AG/GG、確率の比(OR)=1.45、95%信頼区間0.9〜2.2、χ2(イェーツの修正済み)=3.19、p=0.07、
AA遺伝子型=COPDに対する防御
2.対立遺伝子。抵抗力のある喫煙者と対照でのA対G、確率の比(OR)=1.34、95%信頼区間1.0〜1.8、χ2(イェーツの修正済み)=3.71、p=0.05、
A対立遺伝子=COPDに対する防御
【0216】
【表20】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と対照でのAA対AT/TT、確率の比(OR)=1.51、95%信頼区間0.9〜2.5、χ2(イェーツの修正済み)=3.07、p=0.08、
AA遺伝子型=COPDに対する感受性
【0217】
【表21】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。抵抗力のある喫煙者と対照でのAA対AG/GG、確率の比(OR)=2.94、95%信頼区間0.7〜14.0、χ2(イェーツの修正済み)=2.78、p=0.09、
AA遺伝子型=COPDに対する防御
【0218】
【表22】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのTT対TC/CC、確率の比(OR)=6.03、95%信頼区間1.1〜42、χ2(イェーツの修正済み)=4.9、p=0.03、
TT遺伝子型=COPDに対する感受性
【0219】
【表23】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。抵抗力のある喫煙者とCOPDの患者でのMS/SS対MM、確率の比(OR)=2.42、95%信頼区間1.2〜5.1、χ2(イェーツの修正済み)=5.7、p=0.01、
S=COPDに対する防御
【0220】
【表24】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのAA/AG対GG、確率の比(OR)=1.57、95%信頼区間0.9〜2.7、χ2(イェーツの修正済み)=2.52、p=0.11、
AA/AG=感受性(GG=防御)
2.対立遺伝子。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのA対G、確率の比(OR)=1.61、95%信頼区間1.0〜2.7、χ2(イェーツの修正済み)=3.38、p=0.07、
A=感受性
【0221】
【表25】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのGG対AG/AA、確率の比(OR)=0.77、95%信頼区間0.5〜1.2、χ2(イェーツの修正済み)=1.62、p=0.20、
GG=防御(AA/AG=感受性)傾向
2.対立遺伝子。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのA対G、確率の比(OR)=1.3、95%信頼区間0.9〜1.9、χ2(イェーツの修正済み)=1.7、p=0.20、
A=感受性傾向
【0222】
【表26】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのAA/AG対GG、確率の比(OR)=0.26、95%信頼区間0.04〜1.4、χ2(イェーツの修正済み)=3.19、p=0.07、
AA/AG=防御(GG=感受性)
【0223】
【表27】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのGG対AG/AA、確率の比(OR)=1.60、95%信頼区間0.9〜2.7、χ2(イェーツの修正済み)=3.37、p=0.07、
GG=感受性
2.対立遺伝子。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのG対A、確率の比(OR)=1.3、95%信頼区間1.0〜1.7、χ2(イェーツの修正済み)=2.90、p=0.09
【0224】
【表28】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのCC/CG対GG、確率の比(OR)=3.2、95%信頼区間0.6〜22、χ2(イェーツの修正済み)=2.41、p=0.11(裾野が1つ)、
GC/CC=感受性(傾向)
【0225】
【表29】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのGG対それ以外、確率の比(OR)=0.53、95%信頼区間0.4〜0.80、χ2(イェーツの修正済み)=8.55、p=0.003、
GG=防御
【0226】
【表30】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのAA対AG/GG、確率の比(OR)=0.73、95%信頼区間0.5〜1.1、χ2(イェーツの修正済み)=1.91、p=0.17、
AA=防御傾向
【0227】
【表31】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのAA対AG/GG、確率の比(OR)=0.50、95%信頼区間0.2〜1.0、χ2(イェーツの修正済み)=3.82、p=0.05、
AA遺伝子型=防御
【0228】
【表32】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのGG対AA/AG、確率の比(OR)=1.3、95%信頼区間0.9〜2.0、χ2(イェーツの修正済み)=1.86、p=0.17、
GG遺伝子型=感受性傾向
【0229】
【表33】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのTT対CT/CC、確率の比(OR)=1.5、95%信頼区間1.0〜2.2、χ2(イェーツの修正済み)=3.51、p=0.06、
TT遺伝子型=感受性
【0230】
【表34】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのGG対AA/AG、確率の比(OR)=0.64、95%信頼区間0.3〜1.4、χ2(イェーツの修正済み)=1.43、p=0.236、
GG遺伝子型=防御(傾向)
【0231】
【表35】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのAA/AG対GG、確率の比(OR)=0.60、95%信頼区間0.3〜1.1、χ2(イェーツの修正済み)=2.34、p=0.12、
AA/AG遺伝子型=防御(GG=感受性)傾向
【0232】
【表36】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのCC/CT対TT、確率の比(OR)=2.0、95%信頼区間1.3〜3.1、χ2(イェーツの修正済み)=9.52、p=0.002、
CC/CT遺伝子型=感受性(TT=防御)
【0233】
【表37】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのAA対AT/TT、確率の比(OR)=1.7、95%信頼区間1.0〜2.7、χ2(イェーツの修正済み)=4.51、p=0.03、
AA遺伝子型=感受性
【0234】
【表38】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのCC対CT/TT、確率の比(OR)=1.4、95%信頼区間0.9〜2.2、χ2(イェーツの修正済み)=2.12、p=0.15、
CC遺伝子型=感受性(傾向)
【0235】
【表39】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのCT/TT対CC、確率の比(OR)=0.70、95%信頼区間0.4〜1.3、χ2(イェーツの修正済み)=1.36、p=0.24、
CT/TT遺伝子型=防御(傾向のみ)
2.対立遺伝子。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのT対C、確率の比(OR)=0.69、95%信頼区間0.4〜1.2、χ2(イェーツの修正済み)=1.91、p=0.17、
T遺伝子型=防御(傾向のみ)
【0236】
【表40】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのGG対CG/CC、確率の比(OR)=0.74、95%信頼区間0.4〜1.2、χ2(イェーツの修正済み)=1.47、p=0.23、
GG遺伝子型=防御(傾向)
2.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者でのGG対CG/CC、確率の比(OR)=0.69、95%信頼区間0.4〜1.2、χ2(イェーツの修正済み)=2.16、p=0.14、
GG遺伝子型=防御(傾向)
【0237】
【表41】

*染色体の数(2n)
1.遺伝子型。COPDの患者と対照での1G1G対それ以外、確率の比(OR)=0.43、95%信頼区間0.3〜0.7、χ2(イェーツの修正済み)=13.3、p=0.0003、
1G1G遺伝子型=防御
2.対立遺伝子。COPDの患者と対照での1G対2G、確率の比(OR)=0.45、95%信頼区間0.3〜0.6、χ2(イェーツの修正済み)=28.8、p<0.0001、
1G=防御
3.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者での1G1G/1G2G対それ以外、確率の比(OR)=0.55、95%信頼区間0.4〜0.9、χ2(イェーツの修正済み)=6.83、p=0.009、
1G1G/1G2G遺伝子型=防御
4.対立遺伝子。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者での1G対2G、確率の比(OR)=0.73、95%信頼区間0.6〜1.0、χ2(イェーツの修正済み)=4.61、p=0.03、
1G=防御
5.遺伝子型。COPDの患者と対照での2G2G対1G1G/1G2G、確率の比(OR)=3.17、95%信頼区間1.9〜5.3、χ2(イェーツの修正済み)=21.4、p<0.0001、
2G2G遺伝子型=感受性
6.対立遺伝子。COPDの患者と対照での2G対1G、確率の比(OR)=2.2、95%信頼区間1.6〜3.0、χ2(イェーツの修正済み)=28.8、p<0.00001、
2G=感受性
7.遺伝子型。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者での2G2G対1G1G/1G2G、確率の比(OR)=1.81、95%信頼区間1.2〜2.9、χ2(イェーツの修正済み)=6.83、p=0.009、
2G2G遺伝子型=感受性
8.対立遺伝子。COPDの患者と抵抗力のある喫煙者での2G対1G、確率の比(OR)=1.4、95%信頼区間1.0〜1.8、χ2(イェーツの修正済み)=4.61、p=0.0003、
2G=感受性
【0238】
【表42】

【0239】
【表43】

【0240】
【表44】

【0241】
【表45】

【0242】
【表46】

【0243】
【表47】

【0244】
【表48】

【0245】
考察
上記の結果から、喫煙環境に曝されている人では、いくつかの多型が、閉塞性肺疾患に対する感受性および/抵抗性と関係していることがわかる。個々の多型単独では、差があるとはいえ、受け入れられるような疾患の予測結果を提供できないように見える。これらの多型は、組み合わさることで、(COPDになっている)感受性のある喫煙者が抵抗力のある喫煙者から区別される。これらの多型は、プロモータの多型(遺伝子の発現を変化させ、したがってタンパク質の合成を変化させる)と、エキソンの多型(肺のリモデリングを起こさせることがわかっているプロセスにおいてアミノ酸配列を変化させる(発現および/または機能も変化させると考えられる)ことが知られている)の両方を表わしている。この明細書で同定された多型は、炎症、マトリックスのリモデリング、酸化ストレスなどのプロセスにとって中心的な役割を果たすタンパク質をコードしている遺伝子内に見いだされる。
【0246】
COPDである喫煙者と、肺機能がほぼ正常な喫煙者を比較することで、いくつかの多型が、比較群(血液提供者のコホートを含む)よりも有意に多いこと、または少ないことが明らかになった。
【0247】
・シクロオキシゲナーゼ2遺伝子のプロモータの-765 C/G多型を分析すると、C対立遺伝子とCC/CG遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも有意に多いことが見いだされた(OR=1.92、P<0.001と、OR=1.98、P=0.003)。これは、防御という役割に合致している。血液提供者のコホートよりも頻度が多いことも、C対立遺伝子(CC遺伝子型)が抵抗力のあるグループで大きな比率を占めていることを示している(表1を参照のこと)。
【0248】
・β2アドレナリン受容体遺伝子の16アルギニン/グリシン多型を分析すると、GG遺伝子型が、COPDのコホートで対照よりも有意に多いことが見いだされた(OR=1.83、P=0.004)。これは、この遺伝子型と喫煙への感受性が関連している可能性のあることを示している。GG遺伝子型は抵抗力のあるコホートでも大きな比率を占めているが、その効果は、防御多型の効果よりも弱い可能性がある(表2を参照のこと)。
【0249】
・インターロイキン18遺伝子の105 C/A多型を分析すると、A対立遺伝子とAA遺伝子型が、COPDのコホートで対照よりも有意に多いことが見いだされた(それぞれ、OR=1.46、P=0.02と、OR=1.50、P=0.04)。これは、感受性という役割に合致している。AA遺伝子型は、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホート(OR=1.35、P=0.12)より多くなってもいた。この傾向は、感受性という役割に合致している(表3aを参照のこと)。
【0250】
・IL18遺伝子のプロモータの-133 G/C多型を分析すると、C対立遺伝子とCC遺伝子型が、COPDのコホートで対照よりも有意に多いことが見いだされた(それぞれ、OR=1.36、P=0.05と、OR=1.44、P=0.06)。これは、感受性という役割に合致している。CC遺伝子型は、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホートより多くなってもいた。この傾向は、感受性という役割に合致している(表3bを参照のこと)。
【0251】
・プラスミノーゲンアクチベータインヒビター遺伝子のプロモータの-675 4G/5Gを分析すると、5G対立遺伝子と5G5G遺伝子型が、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホートよりも有意に多いことが見いだされた(それぞれ、OR=1.33、P=0.05と、OR=1.55、P=0.08)。これは、感受性という役割に合致している。5G5Gの頻度がCOPDのコホートで血液提供者のコホートよりも多いことも、5G5G遺伝子型が感受性と関係していることを示している(表4を参照のこと)。
【0252】
・NOシンターゼ3(NOS3)遺伝子の298アスパラギン酸/グルタミン酸(T/G)多型を分析すると、TT遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートで血液提供者のコホート(OR=2.2、P=0.03)よりも有意に多いことが見いだされた。これは、防御という役割に合致している(表5を参照のこと)。
【0253】
・ビタミンD結合タンパク質遺伝子のリシン420トレオニン(A/C)多型を分析すると、A対立遺伝子とAA/AC遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(それぞれ、OR=1.34、P=0.05と、OR=1.39、P=0.10)。これは、防御という役割に合致している(表6aを参照のこと)。
【0254】
・ビタミンD結合タンパク質遺伝子のグルタミン酸416アスパラギン酸(T/G)多型を分析すると、T対立遺伝子とTT/TG遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートで血液提供者のコホートよりも多いことが見いだされた(それぞれ、OR=1.27、P=0.10と、OR=1.53、P=0.06)。これは、防御という役割に合致している(表6bを参照のこと)。
【0255】
・グルタチオンSトランスフェラーゼP遺伝子のイソロイシン105バリン(A/G)多型を分析すると、A対立遺伝子とAA遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートで血液提供者のコホートよりも多いことが見いだされた(それぞれ、OR=1.34、P=0.05と、OR=1.45、P=0.07)。これは、防御という役割に合致している(表7を参照のこと)。
【0256】
・IFN-γ遺伝子の874 A/T多型を分析すると、AA遺伝子型が、COPDのコホートで対照よりも有意に多いことが見いだされた(OR=1.51、P=0.08)。これは、感受性という役割に合致している(表8を参照のこと)。
【0257】
・インターロイキン13遺伝子の130アルギニン/グルタミン(G/A)多型を分析すると、AA遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートで血液提供者のコホートよりも多いことが見いだされた(OR=2.94、P=0.09)。これは、防御という役割に合致している(表9aを参照のこと)。
【0258】
・インターロイキン13遺伝子の-1055 C/T多型を分析すると、TT遺伝子型が、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホートよりも多いことが見いだされた(OR=6.03、P=0.03)。これは、感受性という役割に合致している(表9bを参照のこと)。
【0259】
・α1-アンチトリプシンS多型を分析すると、S対立遺伝子とMS/SS遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(OR=2.42、P=0.01)。これは、防御という役割に合致している(表10を参照のこと)。
【0260】
・腫瘍壊死因子α遺伝子の+489 G/A多型を分析すると、A対立遺伝子と、AA/AG遺伝子型が、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホート(OR=1.57、P=0.11)よりも多いことが見いだされた。これは、感受性という役割に合致している(表11aを参照のこと)。逆に、GG遺伝子型は、抵抗力のある喫煙者のコホートでより多いことが見いだされた。これは、防御という役割に合致している(表11aを参照のこと)。
【0261】
・腫瘍壊死因子α遺伝子のプロモータ内の-308 G/A多型を分析すると、GG遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(OR=0.77、P=0.20)。これは、防御という役割に合致している(表11bを参照のこと)。逆に、A対立遺伝子と、AA遺伝子型およびAG遺伝子型は、COPDのコホートでより多いことが見いだされた(OR=1.3、P=0.20)。これは、感受性という役割に合致している(表11bを参照のこと)。
【0262】
・SMAD3遺伝子のC89Y A/G多型を分析すると、AA/AG遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(OR=0.26、P=0.07)。これは、防御という役割に合致している(表12を参照のこと)。逆に、GG遺伝子型は、COPDのコホートでより多いことが見いだされた。これは、感受性という役割に合致している(表12を参照のこと)。
【0263】
・細胞間接着分子1遺伝子のE469K A/G多型を分析すると、G対立遺伝子とGG遺伝子型が、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホートよりも多いことが見いだされた(それぞれ、OR=1.3、P=0.09と、OR=1.60、P=0.07)。これは、感受性という役割に合致している(表13を参照のこと)。
【0264】
・カスパーゼ(NOD2)遺伝子のグリシン881アルギニン G/C多型を分析すると、CC/CG遺伝子型が、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホートよりも多いことが見いだされた(OR=3.2、P=0.11)。これは、感受性という役割に合致している(表14を参照のこと)。
【0265】
・マンノース結合レクチン2遺伝子の161 G/A多型を分析すると、GG遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(OR=0.53、P=0.003)。これは、防御という役割に合致している(表15を参照のこと)。
【0266】
・チマーゼ1遺伝子の-1903 G/A多型を分析すると、AA遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(OR=0.73、P=0.17)。これは、防御という役割に合致している(表16を参照のこと)。
【0267】
・N-アセチルトランスフェラーゼ2遺伝子のアルギニン197グルタミン G/A多型を分析すると、AA遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(OR=0.50、P=0.05)。これは、防御という役割に合致している(表17を参照のこと)。
【0268】
・インターロイキン1B遺伝子の-511 A/G多型を分析すると、GG遺伝子型が、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホートよりも多いことが見いだされた(OR=1.3、P=0.17)。これは、感受性という役割に合致している(表18を参照のこと)。
【0269】
・ミクロソーム・エポキシドヒドロラーゼ遺伝子のチロシン113ヒスチジン T/C多型を分析すると、TT遺伝子型が、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホートよりも多いことが見いだされた(OR=1.5、P=0.06)。これは、感受性という役割に合致している(表19aを参照のこと)。
【0270】
・ミクロソーム・エポキシドヒドロラーゼ遺伝子のアルギニン139 G/A多型を分析すると、GG遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(OR=0.64、P=0.23)。これは、防御という役割に合致している(表19bを参照のこと)。
【0271】
・5リポ-オキシゲナーゼ遺伝子の-366 G/A多型を分析すると、AG/AA遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(OR=0.60、P=0.12)。これは、防御という役割に合致している(表20を参照のこと)。逆に、GG遺伝子型は、COPDのコホートでより多いことが見いだされた。これは、感受性という役割に合致している(表20を参照のこと)。
【0272】
・熱ショック・タンパク質70遺伝子のHOM T2437C多型を分析すると、CC/CT遺伝子型が、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホート(OR=2.0、P=0.002)よりも多いことが見いだされた。これは、感受性という役割に合致している(表21を参照のこと)。逆に、TT遺伝子型は、抵抗力のある喫煙者のコホートでより多いことが見いだされた。これは、防御という役割に合致している(表21を参照のこと)。
【0273】
・カルシウム依存性塩素イオンチャネル1遺伝子の+13924 T/A多型を分析すると、AA遺伝子型が、COPDのコホートで抵抗力のある喫煙者のコホート(OR=1.7、P=0.03)よりも多いことが見いだされた。これは、感受性という役割に合致している(表22を参照のこと)。
【0274】
・単球分化抗原CD-14遺伝子の-159 C/T多型を分析すると、CC遺伝子型が、COPDのコホートで喫煙者のコホートよりも多いことが見いだされた(OR=1.4、P=0.15)。これは、感受性という役割に合致している(表23を参照のこと)。
【0275】
・エラフィン遺伝子のエキソン1 +49 C/T多型を分析すると、T対立遺伝子と、CT/TT遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(それぞれ、OR=0.69、P=0.17と、OR=0.70、P=0.24)。これは、防御という役割に合致している(表24を参照のこと)。
【0276】
・β2アドレナリン受容体遺伝子のグルタミン27グルタミン酸 C/G多型を分析すると、GG遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートと血液提供者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことが見いだされた(それぞれ、OR=0.74、P=0.23と、OR=0.69、P=0.14)。これは、防御という役割に合致している(表25を参照のこと)。
【0277】
・MMP1遺伝子のプロモータの-1607 1G/2G多型を分析すると、1G対立遺伝子と1G1G/1G2G遺伝子型が、抵抗力のある喫煙者のコホートでCOPDのコホートよりも有意に多いことが見いだされた(それぞれ、OR=0.73、P=0.03と、OR=0.55、P=0.009)。これは、防御という役割に合致している。1G1Gの頻度が血液提供者のコホートでCOPDのコホートよりも多いことも、1G対立遺伝子が防御であることを示している(表26を参照のこと)。
【0278】
慢性閉塞性肺疾患(例えば肺気腫やCOPD)の傾向は、個人の遺伝子構成と、さまざまな大気汚染(そのうちで喫煙が最も一般的である)への生涯を通じた曝露が組み合わさった結果であるということが受け入れられている。同様に、COPDはいくつかの閉塞性肺疾患を包含していること、そして呼出流速(例えばFEV1)の障害を特徴とすることが受け入れられている。この明細書に示したデータは、いくつかの遺伝子がCOPDの発症に関与している可能性のあることを示唆している。多数の遺伝子突然変異が組み合わさって作用することで肺の損傷を促進したり肺を損傷から保護したりすることが、抵抗力または感受性の増大と関係している可能性がある。
【0279】
個々の多型の分析から、19個の防御遺伝子型を同定し、抵抗力のある喫煙者とCOPDを患っている喫煙者からなる喫煙者のコホートでその頻度を分析した。抵抗力のある喫煙者とCOPDを患っている喫煙者で防御遺伝子型(COX2のCC/CG、β2アドレナリン受容体のアルギニン16グリシンAA、インターロイキン13のアルギニン130グルタミン AA、NOシンターゼ3の298TT、ビタミンD結合タンパク質の420AA/ACの中から選択)が0個、1個、2+個存在している頻度を比較すると、有意差が見いだされた(全体のχ2=16.43、P=0.0003)。これは、防御遺伝子型を2個以上持っている喫煙者は、抵抗力が3倍以上である(OR=3.1、P=0.004)であるのに対し、防御遺伝子型を持たない喫煙者は、COPDに約2倍なりやすい(OR=1.74、P=0.006)ことを示している(表28を参照のこと)。別の方法で調べると、COPDになる可能性は、調べた防御遺伝子型を0個、1個、2+個持っている喫煙者で、それぞれ63%、55%、32%という具合に低下した。選択した別の防御遺伝子型(COX2のCC/CG、NOS3の298TT、VDBPの-420AA/AC、VDBPの-416TT/TG、GSTP1のAA、IL13の-140AA、α1-ATのMS/SSの中から選択)について分析すると、COPDになる喫煙者と抵抗力のある喫煙者の頻度に関し、テストした防御遺伝子型が0個の場合と1個以上の場合で有意差が見られた(OR=2.82、P=0.0004)(表30を参照のこと)。これは、テストした防御遺伝子型が0個だとCOPDに2〜3倍なりやすいことを示している。
【0280】
個々の多型についての分析結果をもとにして17個の感受性遺伝子型を同定し、抵抗力のある喫煙者とCOPDを患っている喫煙者からなる喫煙者のコホートでその頻度を分析した。抵抗力のある喫煙者とCOPDを患っている喫煙者で感受性遺伝子型(インターロイキン18の105AA、PAI-1の-675 5G5G、インターロイキン13の-1055TT、インターフェロンγの-874TTの中から選択)が0個、1個、2+個存在している頻度を比較すると、有意差が見いだされた(全体のχ2=8.72、P=0.01)。これは、テストした感受性遺伝子型を2個以上持っている喫煙者は、COPDに2倍以上なりやすい(OR=1.9、P=0.009)のに対し、テストした感受性遺伝子型を1個持っている喫煙者は、COPDに1.5倍なりやすい(OR=1.5、P=0.05)ことを示している(表29を参照のこと)。別の方法で調べると、COPDになる可能性は、調べた感受性遺伝子型を0個、1個、2+個持っている喫煙者で、それぞれ49%、55%、68%という具合に増加した。
【0281】
これらの知見は、本発明の方法により、個々の人について、症状が現われるはるか前にCOPDおよび/または肺気腫を予測できることを示している。
【0282】
したがってこれらの知見は、すでに説明したように、治療的介入および/または治療計画の機会も提供する。簡単に述べるならば、そのような介入または計画には、対象にライフスタイルの変更を準備させることや、異常な遺伝子発現または遺伝子産物の機能を正常化する治療法を含めることができる。例えばCOX2をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765G対立遺伝子は、発現がC対立遺伝子で観察されるよりも多いことに関係している。この明細書に示したように、C対立遺伝子は、COPDおよび/または肺気腫の発症素因または潜在的発症リスクに関する防御因子である。そのため-765G対立遺伝子を持つことがわかっている対象に適した治療法は、COX2をコードしている遺伝子の発現を低下させることが可能な薬剤の投与にすることができる。適切な別の治療法としては、例えば追加の治療、遺伝子治療、RNAiなどでそのような対象にCOX2阻害剤を投与することができる。別の一例では、この明細書に示したように、IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133C対立遺伝子が、COPDおよび/または肺気腫への感受性と関係している。IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133C対立遺伝子は、IL18のレベル上昇と関係しているため、-133C対立遺伝子を持つことがわかっている対象に適した治療法は、IL18をコードしている遺伝子の発現を増大させることが可能な薬剤の投与にすることができる。さらに別の一例では、この明細書に示したように、プラスミノーゲンアクチベータインヒビター遺伝子のプロモータ内の-675 5G5G遺伝子型が、COPDおよび/または肺気腫への感受性と関係している。5G対立遺伝子は、リプレッサー・タンパク質の結合増大およびその遺伝子の転写減少と関係していると報告されている。適切な1つの治療法としては、リプレッサーのレベルを低下させることが可能な薬剤および/またはリプレッサーの結合を阻止することが可能な薬剤の投与が可能である。するとそのリプレッサーが転写を下方調節する効果が緩和される。別の治療法としては遺伝子治療があり、例えばリプレッサーへの結合親和性が低下したプラスミノーゲンアクチベータインヒビター遺伝子の少なくとも1つのコピー(例えば、-675 4G4G遺伝子型を持つ遺伝子のコピー)を導入することが可能である。
【0283】
このような治療で使用するのに適した方法と薬剤は従来技術でよく知られており、この明細書に記載してある。
【0284】
この明細書で説明したように感受性多型と防御多型の両方が同定されると、候補化合物をスクリーニングし、予防法および/または治療法でその候補化合物がどのような効果をもたらすかを評価する機会も提供される。そのようなスクリーニング法は、多彩な候補化合物のどれが、感受性多型の遺伝子型または表現型の効果を逆転または補償する能力を持っているか、あるいは防御多型の遺伝子型または表現型の効果を模倣したり再現したりする能力を持っているかを明らかにする操作を含んでいる。
【0285】
さらに、利用できる予防法または治療法に対する対象の反応しやすさを評価する方法も提供される。その方法は、適用できる治療法が、発現した遺伝子の産物の生理学的に活性な濃度を、対象の年齢と性別にとって正常な範囲と比べて大きかったり小さかったりする状態から回復させることである場合に特に応用される。その場合、この方法は、感受性多型の存在または不在を検出する操作を含んでいる。存在している場合には、遺伝子の発現が上方調節または下方調節されるため、その結果として過剰状態または欠乏状態が現われる。するとその多型が存在している対象は、治療に対して反応する可能性がある。
【0286】
参考文献
【0287】
Maniatis, T.、Fritsch, E.F.、Sambrook, J.、『分子クローニングのマニュアル』、1989年。
Kuijpers, A.L.A.、Pfundt, R.、Zeeuwen, LJM.他、「SKALP/エラフィンの遺伝的多型は、乾癬の膿疱形態と関係していない」、Clin. Genetics、1998年、第54巻、96〜101ページ。
Papafili, A.他、2002年。「シクロオキシゲナーゼ-2において一般的なプロモータの変異は、遺伝子の発現を抑制する」、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol.、第20巻、1631〜1635ページ。
Sandford, A.J.他、1999年、「α1-アンチトリプシン遺伝子のZ突然変異およびS突然変異と、慢性閉塞性肺疾患のリスク」、Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol.、第20巻、287〜291ページ。
Waltenberg, J.、2001年、「不安定冠状動脈症候群の病理生理学的基礎」、Herz、第26巻、補巻1、2〜8ページ。
【0288】
この明細書で引用したり言及したりしたすべての出版物、学術論文、他の文献や材料は、本発明に関係する当業者のレベルを示すものであり、そのようなそれぞれの文献や材料は、その全体が個別に参考として組み込まれているかのようにして、あるいはこの明細書にその全体が開示されているかのようにして、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。出願人は、このようなすべての特許、出版物、学術論文、ウェブ・サイト、電子的に利用できる情報、他の参考材料や参考文書からのあらゆる材料、情報を、この明細書に物理的に組み込む権利を有する。
【0289】
この明細書に記載した具体的な方法や組成物は、さまざまな実施態様、または好ましい実施態様を代表する単なる例示であり、本発明の範囲を限定することを意図していない。他の目的、特徴、実施例、実施態様は、当業者がこの明細書を見ればわかるであろうゆえ、請求項の範囲によって規定される本発明の精神に含まれる。当業者にとって、本発明の範囲と精神を逸脱することなく、この明細書に開示した本発明に対してさまざまな置換や変更をなしうることは明らかであろう。この明細書で具体的に説明した本発明は、要素または制限のどれかが欠けていても適切に実施できるが、そのことが重要であるとは、この明細書に具体的には開示されていない。例えば本発明のそれぞれのケース、実施態様、実施例において、“備える”、“主として…からなる”、“からなる”という表現はどれも、この明細書では他の2つで置き換えることが可能であるため、範囲が異なる本発明のさまざまな別の実施態様の具体例となる。また、“備える”、“含む”、“含有する”などの表現は、広く制限なしで読まれるべきである。この明細書に具体的に記載した方法やプロセスは、ステップの順番を変えて実施でき、この明細書や請求項に示したステップの順番には限定されない。この明細書と添付の請求項では、単数形“1つの”や“その”には、文脈からそうではないことが明白な場合を除き、複数形が含まれるものとする。例えば“1個の宿主細胞”と書いてある場合、そのような宿主細胞の複数形も含まれる(例えば培養物や集団)。この特許は、この明細書に具体的に開示した実施例、実施態様、方法に限定されると解釈してはならない。この特許が、審査官や特許商標庁の他の職員による言明によって制限されると解釈することは、出願人が回答書で明示的に採用した具体的な制限または留保がない限りはない。
【0290】
使用した用語や表現は、説明のために用いたのであって範囲を制限することが目的ではないため、そのような用語や表現を使用するとき、記載されている表現またはその一部と同等なあらゆる表現が除外されることはなく、請求項に記載した本発明の範囲でさまざまな変更が可能であると考えられる。したがって、この明細書では本発明を好ましい実施態様やオプションとなる特徴に基づいて具体的に開示したが、当業者であれば、この明細書に開示した考え方のさまざまな改変や変更を思いつくであろう。そしてそのような改変や変更は、添付の請求項に規定されているように、本発明の範囲に含まれると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0291】
【図1】COPDを患っている人の割合を、変異した防御遺伝子の数に対してプロットしたグラフである。
【図2】COPDを患っている人の割合を、変異した感受性遺伝子の数に対してプロットしたグラフである。ここには直線的な関係が存在しており、変異した感受性遺伝子を4つ以上持つ人の80%という高い割合がCOPDになることが推定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べる方法、並びに/あるいはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を診断する方法であって、
COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 C/G;
IL18をコードしている遺伝子内の105 C/A;
IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 G/C;
PAI-1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G;
IFN-γをコードしている遺伝子内の874 A/T;
腫瘍壊死因子α(TNFα)をコードしている遺伝子内の+489 G/A;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y A/G;
細胞間接着分子1(ICAM1)をコードしている遺伝子内のE469K A/G;
カスパーゼ(NOD2)をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン G/C;
マンノース結合レクチン2(MBL2)をコードしている遺伝子内の161 G/A;
チマーゼ1(CMA1)をコードしている遺伝子内の-1903 G/A;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン G/A;
5リポ-オキシゲナーゼ(ALOX5)をコードしている遺伝子内の-366 G/A;
熱ショック・タンパク質70(HSP70)をコードしている遺伝子内のHOM T2437C;
カルシウム依存性塩素イオンチャネル1(CLCA1)をコードしている遺伝子内の+13924 T/A;
単球分化抗原CD-14(CD-14)をコードしている遺伝子内の-159 C/T;
エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 C/T;
MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G(1G対立遺伝子だけに関する);
上記いずれかの多型と連鎖不平衡になっている多型;
からなるグループの中から選択した1つ以上の多型を分析する操作を含んでおり、
その遺伝子型が、その対象が持つCOPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを示している方法。
【請求項2】
上記分析が、シクロオキシゲナーゼ2をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 C/G多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記分析が、インターロイキン18をコードしている遺伝子内の105 C/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記分析が、インターロイキン18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 G/C多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記分析が、プラスミノーゲンアクチベータインヒビター1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記分析が、インターフェロンγをコードしている遺伝子内の874 A/T多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記分析が、腫瘍壊死因子αをコードしている遺伝子内の489 G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記分析が、SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y A/G多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記分析が、細胞間接着分子1をコードしている遺伝子内のE469K A/G多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記分析が、カスパーゼ(NOD2)をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン 多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記分析が、マンノース結合レクチン2をコードしている遺伝子内の161 G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記分析が、チマーゼ1をコードしている遺伝子内の-1903 G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記分析が、N-アセチルトランスフェラーゼ2をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記分析が、5リポ-オキシゲナーゼをコードしている遺伝子内の-366 G/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記分析が、熱ショック・タンパク質70をコードしている遺伝子内のHOM T2437C多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
上記分析が、カルシウム依存性塩素イオンチャネル1をコードしている遺伝子内の+13924 T/A多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
上記分析が、単球分化抗原CD-14をコードしている遺伝子内の-159 C/T多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記分析が、エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 C/T多型、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
上記分析が、MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G多型(1G対立遺伝子だけに関する)、および/またはこの多型と連鎖不平衡になっている多型の分析である、あるいはその分析を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
上記分析が、
β2アドレナリン受容体をコードしている遺伝子内の16アルギニン/グリシン;
インターロイキン13(IL13)をコードしている遺伝子内の130アルギニン/グルタミン(G/A);
NOシンターゼ3(NOS3)をコードしている遺伝子内の298アスパラギン酸/グルタミン酸(T/G);
グルタチオンSトランスフェラーゼP(GST-P)をコードしている遺伝子内のイソロイシン105バリン(A/G);
ビタミンD結合タンパク質(VDBP)をコードしている遺伝子内のグルタミン酸416アスパラギン酸(T/G);
ビタミンD結合タンパク質をコードしている遺伝子内のリシン420トレオニン(A/C);
インターロイキン13をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1055 C/T;
TNFαをコードしている遺伝子のプロモータ内の-308 G/A;
インターロイキン1B(IL1B)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-511 A/G;
ミクロソーム・エポキシドヒドロラーゼ(MEH)をコードしている遺伝子内のチロシン113ヒスチジン T/C;
MEHをコードしている遺伝子内のアルギニン139 G/A;
ADBRをコードしている遺伝子内のグルタミン27グルタミン酸 C/G;
これらの多型と連鎖不平衡になっている多型;
からなるグループの中から選択した1つ以上の多型の分析をさらに含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
上記分析が、
MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G(2G対立遺伝子だけに関する);
MMP9をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1562 C/T;
GST-1をコードしている遺伝子内のM1ヌル;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子の3'領域内の1237 G/A;
MMP12をコードしている遺伝子のプロモータ内の-82 A/G;
TGFβをコードしている遺伝子のコドン10内のT→C;
SOD3をコードしている遺伝子内の760 C/G;
TIMP3をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1296 T/C;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内のS突然変異;及び
これらの多型と連鎖不平衡になっている多型;
からなるグループの中から選択した1つ以上の多型の分析をさらに含む、請求項1〜20と39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べる方法、並びに/あるいはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を診断する方法であって、
COPDおよび/または肺気腫の素因の減少、および/または潜在的リスクの減少、および/または発症の減少と関係する少なくとも1つの防御SNP遺伝子型の存在または不在を調べ;
どの防御SNP遺伝子型も存在していない場合には、COPDおよび/または肺気腫の傾向、および/または潜在的なリスク、および/または発症と関係する少なくとも1つの感受性SNP遺伝子型の存在または不在を調べる操作を含んでおり;
防御SNP遺伝子型が1つ以上存在していることは、COPDおよび/または肺気腫の素因の減少、および/または潜在的なリスクの減少、および/または発症の減少を示しており、任意の防御SNP遺伝子型の不在と少なくとも1つの感受性SNP遺伝子型の存在との組み合わせが、COPDおよび/または肺気腫の素因の増加、および/または潜在的なリスクの増加、および/または発症の増加を示している方法。
【請求項23】
上記少なくとも1つの防御SNP遺伝子型の選択を、
COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 CCまたはCG;
IL13をコードしている遺伝子内の130アルギニン/グルタミン AA;
NOS3をコードしている遺伝子内の298アスパラギン酸/グルタミン酸 TT;
VDBPをコードしている遺伝子内のリシン420トレオニン AAまたはAC;
VDBPをコードしている遺伝子内のグルタミン酸416アスパラギン酸 TTまたはTG;
GSTP-1をコードしている遺伝子内のイソロイシン105バリン AA;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内のMS;
TNFαをコードしている遺伝子内の+489 GG;
TNFαをコードしている遺伝子内の-308 GG;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y AAまたはAG;
MBL2をコードしている遺伝子内の161 GG;
CMA1をコードしている遺伝子内の-1903 AA;
NAT2をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン AA;
MEHをコードしている遺伝子内のヒスチジン139アルギニン GG;
ALOX5をコードしている遺伝子内の-366 AAまたはAG;
HSP70をコードしている遺伝子内のHOM T2437C TT;
エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 CTまたはTT;
ADBRをコードしている遺伝子内のグルタミン27グルタミン酸 GG;
MMP1をコードしている遺伝子内の-1607 1G1Gまたは1G2G;
からなるグループの中から行なう、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記少なくとも1つの防御SNP遺伝子型の選択を、
SOD3をコードしている遺伝子内の+760GGまたは+760CG;
TIMP3をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1296TT;
TGFβをコードしている遺伝子のコドン10内のCC(ホモP対立遺伝子);
からなるグループの中からも行なう、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記感受性SNP遺伝子型をテストするとき、
その感受性SNP遺伝子型の選択を、
インターロイキン18をコードしている遺伝子内の105 AA;
インターロイキン18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 CC;
プラスミノーゲンアクチベータインヒビター1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 5G5G;
インターロイキン13をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1055 TT;
インターフェロンγをコードしている遺伝子内の874 AA;
TNFαをコードしている遺伝子内の+489 AAまたはAG;
TNFαをコードしている遺伝子内の-308 AAまたはAG;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y GG;
ICAM1をコードしている遺伝子内のE469K GG;
NOD2をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン GCまたはCC;
IL1Bをコードしている遺伝子内の-511 GG;
MEHをコードしている遺伝子内のチロシン113ヒスチジン TT;
ALOX5をコードしている遺伝子内の-366 GG;
HSP70をコードしている遺伝子内のHOM T2437C CCまたはCT;
CLCA1をコードしている遺伝子内の+13924 AA;及び
CD-14をコードしている遺伝子内の-159 CC;
からなるグループの中から行なう、請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
上記感受性SNP遺伝子型をテストするとき、
その感受性SNP遺伝子型の選択を、
MMP12をコードしている遺伝子のプロモータ内の-82 AA;
MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 2G2G;
MMP9をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1562 CTまたは-1562 TT;及び
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子の3'領域内の1237 AGまたは1237 AA(対立遺伝子の遺伝子型がTtまたはtt);
からなるグループの中からも行なう、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法で使用する1つ以上のヌクレオチド・プローブおよび/またはヌクレオチド・プライマーであって、その1つ以上のヌクレオチド・プローブおよび/またはヌクレオチド・プライマーが、分析する多型が存在している遺伝子内の多型領域をカバーしているか、その1つ以上のヌクレオチド・プローブおよび/またはヌクレオチド・プライマーを用いて遺伝子内で分析する多型が存在している多型領域をカバーするように使用することが可能である、ヌクレオチド・プローブおよび/またはヌクレオチド・プライマー。
【請求項28】
請求項1に記載のグループから選択した1つ以上の感受性多型または防御多型をコードしている核酸配列とのハイブリダイゼーション、またはそれと相補的な配列とのハイブリダイゼーションが可能な核酸配列が提示された基板を有する核酸マイクロアレイ。
【請求項29】
COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクが増加している対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫を発症している対象の治療方法であって、請求項23に記載のグループから選択した防御遺伝子型の存在および/または機能上の効果をその対象の体内で遺伝子型または表現型に関して再現するステップを含む方法。
【請求項30】
COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクが増加している対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫を発症している対象であって、発現した遺伝子産物の生理学的に活性な濃度が、その対象の年齢と性別にとって正常な範囲の外にあるように遺伝子の発現を上方調節または下方調節する、請求項25に記載のグループから選択した検出可能な感受性遺伝子型を持っている対象の治療方法であって、その発現した遺伝子産物の生理学的に活性な濃度を、その対象の年齢と性別にとって正常な範囲内に戻すステップを含む方法。
【請求項31】
COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、COX2をコードしている遺伝子のプロモータ内に存在する-765 C/G多型の位置にGG遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でCOX2の活性を低下させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法。
【請求項32】
上記薬剤が、COX2阻害剤、または非ステロイド抗炎症薬(NSAID)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
上記COX2阻害剤の選択を、セレブレックス(セレコキシブ)、ベクストラ(バルデコキシブ)、ビオックス(ロフェコキシブ)からなるグループの中から行なう、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、インターロイキン18をコードしている遺伝子内の105 C/A多型の位置にAA遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でインターロイキン18の活性を増大させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法。
【請求項35】
COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、インターロイキン18をコードしている遺伝子内の-133 G/C多型の位置にCC遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でインターロイキン18の活性を増大させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法。
【請求項36】
COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、プラスミノーゲンアクチベータインヒビター1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G多型の位置に5G5G遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でプラスミノーゲンアクチベータインヒビター1の活性を増大させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法。
【請求項37】
COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、インターフェロン-γをコードしている遺伝子内の874 A/T多型の位置にAA遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でインターフェロン-γの活性を変化させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法。
【請求項38】
COPDおよび/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つ対象、あるいはCOPDおよび/または肺気腫になっている対象であって、CD-14をコードしている遺伝子内の-159 C/T多型の位置にCC遺伝子型が存在していることがわかっている対象の治療方法であって、その対象の体内でCD-14および/またはIgEの活性を変化させることが可能な薬剤をその対象に投与する操作を含む方法。
【請求項39】
対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または肺気腫の発症素因および/または潜在的発症リスクを持つかどうかを調べる方法、並びに/あるいはCOPDおよび/または肺気腫の発症可能性を診断する方法であって、
シクロオキシゲナーゼ(COX2)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-765 C/G;
インターロイキン18(IL18)をコードしている遺伝子内の105 C/A;
IL18をコードしている遺伝子のプロモータ内の-133 G/C;
プラスミノーゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-675 4G/5G;
インターフェロン-γ(IFN-γ)をコードしている遺伝子内の874 A/T;
β2アドレナリン受容体をコードしている遺伝子内の16アルギニン/グリシン;
インターロイキン13(IL13)をコードしている遺伝子内の130アルギニン/グルタミン(G/A);
NOシンターゼ3(NOS3)をコードしている遺伝子内の298アスパラギン酸/グルタミン酸;
グルタチオンSトランスフェラーゼP(GST-P)をコードしている遺伝子内のイソロイシン105バリン(A/G);
ビタミンD結合タンパク質(VDBP)をコードしている遺伝子内のグルタミン酸416アスパラギン酸(T/G);
ビタミンD結合タンパク質をコードしている遺伝子内のリシン420トレオニン(A/C);
インターロイキン13をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1055 C/T;
α1-アンチトリプシンをコードしている遺伝子内のS突然変異;
腫瘍壊死因子α(TNFα)をコードしている遺伝子内の+489 G/A;
SMAD3をコードしている遺伝子内のC89Y A/G;
細胞間接着分子1(ICAM1)をコードしている遺伝子内のE469K A/G;
カスパーゼ(NOD2)をコードしている遺伝子内のグリシン881アルギニン G/C;
マンノース結合レクチン2(MBL2)をコードしている遺伝子内の161 G/A;
チマーゼ1(CMA1)をコードしている遺伝子内の-1903 G/A;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードしている遺伝子内のアルギニン197グルタミン G/A;
5リポ-オキシゲナーゼ(ALOX5)をコードしている遺伝子内の-366 G/A;
熱ショック・タンパク質70(HSP70)をコードしている遺伝子内のHOM T2437C;
カルシウム依存性塩素イオンチャネル1(CLCA1)をコードしている遺伝子内の+13924 T/A;
単球分化抗原CD-14(CD-14)をコードしている遺伝子内の-159 C/T;
エラフィンをコードしている遺伝子内のエキソン1 +49 C/T;
TNFαをコードしている遺伝子のプロモータ内の-308 G/A;
インターロイキン1B(IL1B)をコードしている遺伝子のプロモータ内の-511 A/G;
ミクロソーム・エポキシドヒドロラーゼ(MEH)をコードしている遺伝子内のチロシン113ヒスチジン T/C;
MEHをコードしている遺伝子内のアルギニン139 G/A;
ADBRをコードしている遺伝子内のグルタミン27グルタミン酸 C/G;及び
MMP1をコードしている遺伝子のプロモータ内の-1607 1G/2G(1G対立遺伝子だけに関する);
からなるグループの中から選択した2つ以上の多型を分析する操作を含む方法。
【請求項40】
請求項1に記載のグループから選択した感受性多型または防御多型と結びついたときに発現が上方調節または下方調節される遺伝子の発現産物と結合できる抗体を提示する基板を含む抗体マイクロアレイ。
【請求項41】
請求項1に記載のグループから選択した感受性多型または防御多型と結びついたときに発現が上方調節または下方調節される遺伝子の発現および/または活性を変化させる化合物をスクリーニングする方法であって、
遺伝子の発現の上方調節または下方調節と関係していることがわかっている請求項1に記載のグループから選択される感受性多型または防御多型を含む細胞に候補化合物を接触させるステップと;
その候補化合物との接触後にその遺伝子の発現を測定するステップとを含んでおり、
接触ステップ前と比較したときの接触ステップ後の発現レベルの変化が、その化合物がその遺伝子の発現および/または活性を変化させる能力を示している方法。
【請求項42】
上記細胞が、予備スクリーニングによって上記多型の存在が確認されているヒト肺細胞である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
上記細胞が、上記遺伝子の発現の下方調節と関係する感受性多型を含んでおり、上記スクリーニングは、その遺伝子の発現を上方調節する候補化合物をスクリーニングするためである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
上記細胞が、上記遺伝子の発現の上方調節と関係する感受性多型を含んでおり、上記スクリーニングは、その遺伝子の発現を下方調節する候補化合物をスクリーニングするためである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
上記細胞が、上記遺伝子の発現の上方調節と関係する防御多型を含んでおり、上記スクリーニングは、その遺伝子の発現をさらに上方調節する候補化合物をスクリーニングするためである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
上記細胞が、上記遺伝子の発現の下方調節と関係する防御多型を含んでおり、上記スクリーニングは、その遺伝子の発現をさらに下方調節する候補化合物をスクリーニングするためである、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
請求項1に記載のグループから選択した感受性多型または防御多型と結びついたときに発現が上方調節または下方調節される遺伝子の発現および/または活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
請求項1に記載のグループから選択した感受性多型または防御多型と結びついたときに発現が上方調節または下方調節される遺伝子を含む細胞(ただしその細胞内ではその遺伝子の発現は上方調節も下方調節もされていない)に候補化合物を接触させるステップと;
その候補化合物と接触させた後にその遺伝子の発現を測定するステップとを含んでおり、
接触ステップ前と比較したときの接触ステップ後の発現レベルの変化が、その化合物がその遺伝子の発現および/または活性を変化させる能力を示している方法。
【請求項48】
上記細胞が、予備スクリーニングによって上記遺伝子の存在と発現のベースライン・レベルが確認されているヒト肺細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
感受性多型と結びついたときに上記遺伝子の発現が下方調節され、上記スクリーニングは、上記細胞内でその遺伝子の発現を上方調節する候補化合物をスクリーニングするためである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
感受性多型と結びついたときに上記遺伝子の発現が上方調節され、上記スクリーニングは、上記細胞内でその遺伝子の発現を下方調節する候補化合物をスクリーニングするためである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
防御多型と結びついたときに上記遺伝子の発現が上方調節され、上記スクリーニングは、上記細胞内でその遺伝子の発現を上方調節する候補化合物をスクリーニングするためである、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
防御多型と結びついたときに上記遺伝子の発現が下方調節され、上記スクリーニングは、上記細胞内でその遺伝子の発現を下方調節する候補化合物をスクリーニングするためである、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
COPDまたは肺気腫の素因を持つ対象、あるいはCOPDまたは肺気腫と診断された対象が、発現した遺伝子産物の生理学的に活性な濃度を、その対象の年齢と性別にとって正常な範囲内に戻す操作を含む予防法または治療法に反応する可能性があるかどうかを評価する方法であって、その対象の体内で、請求項1に記載のグループから選択した感受性多型の存在または不在を検出し、存在している場合には、その感受性多型が上記遺伝子の発現を上方調節または下方調節するため、発現した遺伝子産物の生理学的に活性な濃度が、その対象の年齢と性別にとって正常な範囲の外にあることを検出する操作を含んでおり、上記多型の存在が検出されることが、その対象が上記治療に反応する可能性のあることを示している方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−314315(P2006−314315A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360523(P2005−360523)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(505461728)シナージェンズ バイオサイエンス リミティド (5)
【Fターム(参考)】