説明

脂環式ジアルジミン類を含む脂環式ポリウレタン組成物

本発明は、脂環式イソシアナート基を有する少なくとも1つのポリウレタンポリマーPと、少なくとも1つの脂環式ジアルジミンを含むポリウレタン組成物に関する。このタイプの組成物は、弾性接着剤、シーリング剤、コーティング材として適切であり、良好な加工特性を有している一方で組成物の光安定性及び良好な貯蔵安定性によって特徴付けられる。本発明に係る組成物は、気泡を形成することなく、かつ臭気を放つことなく、速やかに硬化する。硬化されたとき、本組成物は、高い安定性及び低粘着性を有しており、マイグレーション可能な成分が染み出す傾向が低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン組成物の分野に関するものであり、特に弾性接着剤、シーラント、及びコーティングとして使用されるポリウレタン組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアナート基を有するポリウレタンポリマー類に基づく湿気硬化型組成物は、弾性接着剤、シーラント、及びコーティングとして使用されてきた。これらのポリウレタンポリマー類は、典型的にはポリオール類から形成され、特に、ポリエーテルポリオール類またはポリエステルポリオール類、及びポリイソシアナート類から形成される。しかしながら、そのような芳香族ポリイソシアナートに基づくポリウレタンポリマー類は、光及び熱の影響によって変色または黄変しやすい傾向を有している。それ故に、例えば、薄い陰影模様仕様に着色されるか透明である床カバリング、或いは淡色に着色された目に見えるジョイントなどの、色彩安定性を重要視する製品への適用には適していない。
【0003】
脂肪族ポリイソシアナート類、特に脂環式ポリイソシアナート類から、色彩安定性を有するポリウレタン組成物を得ることが可能である。しかしながら、そのような脂環式ポリウレタン組成物は、不都合な点を有している。これらの脂環式ポリウレタン組成物は、芳香族ポリイソシアナート類に基づく組成物と比較して、硬化速度が極めて遅く、硬化状態の機械的安定性及び硬度が低い。
【0004】
湿気硬化型ポリウレタン組成物中に、「潜在硬化剤(latent hardeners)」と称する、キャップされた(capped)アミン類を使用することにより、硬化速度を増大することができ、さらには気泡形成を抑制することができる。この潜在硬化剤は、例えば、ポリオキサゾリジン類、ポリケチミン類、またはポリアルジミン類を含むが、組成物が硬化する際に揮発性かつ強い臭気を有する脱離生成物、とりわけアルデヒド類またはケトン類を放出し、かつ/或いは組成物の貯蔵安定性を低下するといった不都合を生じることとなる。米国特許第4,469,831号明細書(特許文献1)は、一部の例として、高い貯蔵安定性を有する湿気硬化型の一成分系組成物について記載しているが、離脱するアルデヒドが、強力かつはっきりと感じられる臭気を有するといった重大な不都合な点を有している。
【0005】
国際公開第2004/013200号(特許文献2)は、無臭のポリアルジミン類を含む湿気硬化型ポリウレタン組成物について開示しており、当該組成物は貯蔵安定性を有しており、気泡を形成したり、臭気を発したりすることなく硬化する。硬化反応の工程において、これらポリアルジミン類は脱離生成物として非揮発性アルデヒドを放出して硬化される組成物中に残存するので、柔軟効果をもたらすことになる。特許文献2に記載のポリアルジミン類により、より高い硬化速度を有する、脂肪族ポリイソシアナート類に基づいた湿気硬化型ポリウレタン組成物を形成することができる。しかしながら、そのような黄変しないポリウレタン組成物における、相対的に低い機械強度及び硬度の課題は未だ解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,469,831号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/013200号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Houben-Weyl、“Methoden der organischen Chemie” [Methods of Organic Chemistry]、第8巻、516-528ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本願発明の目的は、速やかに硬化し、高い硬度及び強度を備えており、さらには良好な貯蔵安定性及び優れた加工性、かつ気泡を形成することなく或いは臭気を発することなく硬化する、硬化状態において黄変しないポリウレタン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、請求項1に記載の組成物は所望の特性を有していることが見出された。この組成物は、脂環式イソシアナート基を有するポリウレタンポリマーと、脂環式ジアミン由来のジアルジミン類との組み合わせに基づいている。
【0010】
請求項1に記載の組成物は速やかに硬化し、硬化するにつれて粘着性が実質的に無くなる。硬化した後には、本組成物は予想外に高い硬度及び硬度を示し、これは先行技術に記載の組成物に基づいて想定できたものではない。したがって、本組成物は、コーティング、特に床カバリングとして、かつ接着剤またはシーラントとして極めて適している。
【0011】
さらには、驚くことに、非脂環式ジアルジミン類を含むか或いはジアルジミン類を含まない従来の組成物と比較して、請求項1に記載の組成物は、ポリマー内に結合せずに存在する液体成分、特に脂環式ジアルジミンを調製に使用されたアルデヒド類、及び任意選択で存在する可塑剤がマイグレーションの結果としてしみ出す傾向が極めて低いことが見出された。結果的に、請求項1に記載の組成物を、例えばジョイント用シーラントとして適用することで、不純物、特にダストが付着することによる表面の汚れ、或いは基材にスポットを残すといったことが低減される。
【0012】
また、本組成物は、貯蔵安定性を備えており、特異的な臭気を発したり気泡を形成したりすることなく硬化し、光及び熱の影響を受けて黄変しない。
【0013】
本発明のさらなる実施態様は、その他の独立請求項の主題である。本発明のとりわけ好適な実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の実施態様においては、本発明は、脂環式イソシアナート基を有する少なくとも1つのポリウレタンポリマーPと、少なくとも1つの式(I)の脂環式ジアルジミンとを含む組成物を提供する。
【0015】
【化1】

【0016】
R1及びR2基は、それぞれ独立して、1〜12個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であるか、或いは、4〜20個の炭素原子を有し、5〜8個、好ましくは6個の炭素原子を有する任意に置換された炭素環式環の一部である、二価の炭化水素基を一緒になって形成する。好ましくは、R1及びR2基はそれぞれメチル基である。
【0017】
R3基は、水素原子、またはアルキルもしくはアリールアルキル基であり、特に1〜12個の炭素原子を有するアルキルもしくはアリールアルキル基であり、特に水素原子である。
【0018】
R4基は、6〜30個の炭素原子を有し、かつ任意にヘテロ原子を含む炭化水素基であるか、或いは式(II)で示される基である。
【0019】
【化2】

【0020】
前記式において、R5基は、任意に環状要素を有しており、任意に少なくとも1つのヘテロ原子、特にエーテル、エステル、またはアルデヒド基の形態で酸素を含む、6〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐したアルキル基であるか、或いは、6〜30個の炭素原子を有する一価または多価不飽和の直鎖もしくは分岐した炭化水素基であるか、或いは、任意に置換された芳香族またはヘテロ芳香族の5もしくは6員環である。R4は、好ましくは式(II)の基であり、式中、R5は、とりわけ11〜30個の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくは11個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0021】
最も好ましくは、式(I)の脂環式ジアルジミン類であり、式中、R1及びR2はそれぞれメチル基であり、R3は水素原子であり、かつR4は式(II)で示される基であり、式中、R5は炭素数11〜30のアルキル基であり、好ましくは炭素数11のアルキル基である。
【0022】
さらには、式(I)の脂環式ジアルジミン中のAは、2つの第一級アミノ基が除去された脂環式第一級ジアミン基であって、この基はイソシアナート基と反応性を有する官能基を有していない。
【0023】
さらに具体的には、Aは、ヒドロキシ基、第一級または第二級アミノ基、メルカプト基、ウレア基、及び活性水素を有するその他の基を含有していない。
【0024】
本明細書において、例えば、ポリイソシアナートまたはポリオールなどの「ポリ」で始まる物質の名称は、形式的には、1分子内にその名称に現われる官能基を2つ以上有する物質を示す。
【0025】
本明細書において、用語「ポリマー」は、第一に、化学的に均質な高分子の集合体であるが、重合度、分子質量、及び鎖長に関しては異なっており、かつ重合化反応(重合、重付加、重縮合)によって調製されたものを包含する。第二に、この用語は、重合反応からの高分子に係る集合体の誘導体、すなわち、例えば、既存の高分子上の官能基の付加反応または置換反応によって得られ、かつ化学的に均質または不均質であってもよい化合物をも包含する。さらにこの用語は、プレポリマーとして知られる物質、すなわち、反応性のオリゴマー状予備付加体であってその官能基が高分子の構成に関与するものも包含する。
【0026】
用語「ポリウレタンポリマー」は、ジイソシアナートの重付加法として知られる手法によって調製されるすべてのポリマーを包含する。この用語は、実質的に、或いは完全にウレタン基を含まないポリマーをも包含する。ポリウレタンポリマー類の例として、ポリエーテルポリウレタン類、ポリエステルポリウレタン類、ポリエーテルポリウレア類、ポリウレア類、ポリエステルポリウレア類、ポリイソシアヌラート類、及びポリカルボジイミド類が挙げられる。
【0027】
本明細書中において、「脂環式第一級ジアミン」という用語は、脂環式である炭化水素基に結合される2つの第一級アミノ基を有するか、或いは脂環式要素を有するジアミンを示す。
【0028】
本明細書において、用語「活性水素」は、窒素、酸素、または硫黄原子と結合する脱プロトン化されない水素原子を示す。
【0029】
式(I)の脂環式ジアルジミンは、式H2N-A-NH2で表される少なくとも1つの脂環式第一級ジアミンと、式(III)で表される少なくとも1つのアルデヒドとの縮合反応によって調製することができる。
【0030】
【化3】

【0031】
式H2N-A-NH2の好適な脂環式第一級ジアミン類は、例えば、1,3-及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-シクロヘキシルアミノ-3-アミノプロパン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA;三井化学株式会社製)3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、または3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0032】
式H2N-A-NH2の好適な脂環式第一級ジアミン類は、少なくとも1つのアミノ基が脂環式環に直接結合するジアミン類である。そのような好適な脂環式第一級ジアミン類は、1,2-ジアミノシクロヘキサン(DCH)、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(H12MDA)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、2,2’-、2,4’-、及び4,4’-ジアミノビシクロヘキシル、2-及び4-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン、及び1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサンからなる群からとりわけ選択される。好ましくは、DCH、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、IPDA、H12MDA、及びビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンである。最も好ましくは、IPDA及びH12MDAである。
【0033】
式(I)の脂環式ジアルジミンを調製するには、一般的に式(III)のアルデヒド類が用いられる。これらのアルデヒド類は、R1、R2、R3及びR4基がイソシアナート基と反応性を有する官能基を有しない特性を有する。さらに詳しくは、R1、R2、R3及びR4は、ヒドロキシ基、第一級または第二級アミノ基、メルカプト基、ウレア基、及び活性水素を含むその他の基を有さない。
【0034】
第1の実施形態において、式(III)の好適なアルデヒド類は、R4基として、6〜30個の炭素原子を有し、かつ任意にヘテロ原子を含有する炭化水素基を有している。これらは、脂肪族、アリール脂肪族、または脂環式2,2-二置換3-ヒドロキシアルデヒド類と、フェノール類またはアルコール類(例えば、脂肪アルコール類)とのエーテル類である。適当な2,2-二置換3-ヒドロキシアルデヒド類は、言い換えると、第一級または第二級脂肪族アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)と、第二級脂肪族、第二級アリール脂肪族、または第二級脂環式アルデヒド(例えば、イソブチルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、2-エチルカプロンアルデヒド、シクロペンタンカルボキサルデヒド、シクロヘキサンカルボキサルデヒド、1,2,3,6-テトラヒドロベンズアルデヒド、2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、2-フェニルプロピオンアルデヒド(ハイドラトロプアルデヒド)、またはジフェニルアセトアルデヒド)とのアルドール反応、とりわけ交差アルドール反応によって得ることができる。とりわけ適当なアルデヒド類は、2,2-ジメチル-3-ラウロキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ステアロキシプロパナールである。
【0035】
第2の好適な実施形態において、適当な式(III)のアルデヒド類は、式(IV):
【化4】

の化合物であり、式中、R1、R2、R3、及びR5は、それぞれ既に定義したとおりである。
【0036】
式(IV)の化合物は、上記に記載される2,2-二置換3-ヒドロキシアルデヒド類(例えば、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロパナール、2-ヒドロキシメチル-2-メチルブタナール、2-ヒドロキシメチル-2-エチルブタナール、2-ヒドロキシメチル-2-メチルペンタナール、2-ヒドロキシメチル-2-エチルヘキサナール、1-ヒドロキシメチル-シクロペンタンカルボキサルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボキサルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキセ-3-エンカルボキサルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-フェニルプロパナール、3-ヒドロキシ-2-メチル-2-フェニルプロパナール、及び3-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルプロパナール)と、適当なカルボン酸類との反応によってとりわけ調製されるエステル類である。
【0037】
適当なカルボン酸類の例として、飽和脂肪族カルボン酸類(例えば、2-エチルカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸);モノ不飽和脂肪族カルボン酸類(例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸);ポリ不飽和脂肪族カルボン酸類(例えば、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸);脂環式カルボン酸類(例えば、シクロヘキサンカルボン酸);アリール脂肪族カルボン酸類(例えば、フェニル酢酸);芳香族カルボン酸類(例えば、安息香酸、ナフトエ酸、トルイル酸、アニス酸);これら酸の異性体;天然の油及び脂肪類(例えば、菜種油、ひまわり油、亜麻仁油、オリーブ油、ココナッツ油、核油、ヤシ油)からの工業的鹸化に由来する脂肪酸混合物;及びジカルボン酸類(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、3,6,9-トリオキサウンデカンジオン酸、及び類似のポリエチレングリコールの誘導体)と、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、これらアルコール類のより高度な同族体及び異性体)とのモノエステル化によって得られる、モノアルキル及びモノアリールジカルボキシラート類が挙げられる。
【0038】
好適な式(IV)のアルデヒド類は、3-ベンゾイルオキシ-2,2-ジメチルプロパナール、3-シクロヘキサノイルオキシ-2,2-ジメチルプロパナール、2,2-ジメチル-3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ミリストイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-パルミトイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ステアロイルオキシプロパナール、及びその他の2,2-二置換3-ヒドロキシアルデヒドのエステル類縁体である。
【0039】
とりわけ好適な実施形態では、R4は式(II)の基であり、式中、R5は、フェニル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシル、及び炭素数11、13、15、及び17のアルキル基からなる群から選択される。
【0040】
とりわけ、2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールが好ましい。
【0041】
式(IV)のアルデヒドの好適な調製方法では、2,2-二置換3-ヒドロキシアルデヒド〔例えば、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロパナール、これは好ましくは、例えばホルムアルデヒド(またはパラホルムアルデヒド)とイソブチルアルデヒドとから適切な場合には系内で調製可能である〕を、カルボン酸と反応させて、対応するエステルを形成する。このエステル化反応は、既知の方法によって溶媒を使用することなく行うことができる。この方法は、例えば、Houben-Weyl、“Methoden der organischen Chemie”[Methods of Organic Chemistry]、第8巻、516-528ページ(非特許文献1)に記載されている。
【0042】
R5基が少なくとも1つのヘテロ原子、とりわけ、エーテル、エステル、またはアルデヒド基の形で酸素原子を有する式(IV)のアルデヒドを調製するには、2,2-二置換3-ヒドロキシアルデヒドを、対応する官能基を含有するカルボン酸と反応させるか、或いはジカルボン酸と反応させる。例えば、二つの2,2-二置換3-ヒドロキシアルデヒド類と、脂肪族または脂環式ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、またはシクロヘキサン二酸)とのエステル化反応は、対応する式(V):
【化5】

の脂肪族または脂環式ジアルデヒドを与え、式中、R6は、ジカルボン酸の炭化水素基である。
【0043】
とりわけ好適な実施形態では、式(III)のアルデヒド類は無臭である。「無臭」物質とは、大部分の個人にとって臭気が極めて低く匂いを感じることができず、言い換えれば、鼻で知覚することができない物質を意味すると理解される。
【0044】
式(III)の無臭のアルデヒド類は、第一に、式(III)のアルデヒド類であって、式中、R4基は、11〜30個の炭素原子を有し、かつ任意にヘテロ原子を含有する炭化水素基を有するアルデヒド類であり;第二に、式(IV)のアルデヒド類であって、式中、R5基は、11〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐したアルキル基であって、前記アルキル基が任意に環状構造を有しており、任意に少なくとも1つのヘテロ原子、とりわけエーテル、エステルまたはアルデヒド基の形で酸素を有するアルキル基であるか、或いは、モノまたはポリ不飽和の場合、11〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐した炭化水素基である。
【0045】
そのような無臭のアルデヒド類の例としては、既に記載した2,2-二置換3-ヒドロキシアルデヒド類とカルボン酸類(例えば、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、天然の油及び脂肪類(例えば、菜種油、ひまわり油、亜麻仁油、オリーブ油、ココナッツ油、核油、ヤシ油)からの工業的鹸化に由来する脂肪酸、及びこれらの酸類を含む脂肪酸の工業的混合物)とのエステル化反応による生成物がある。好適な無臭の式(IV)のアルデヒド類は、2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ミリストイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-パルミトイルオキシプロパナール、及び2,2-ジメチル-3-ステアロイルオキシプロパナールである。特に好ましくは、2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールである。
【0046】
本発明において使用される式(I)の脂環式ジアルジミンは、種々の脂環式ジアルジミン類の混合物であってよく、とりわけ、様々な式NH2-A-NH2の脂環式第一級ジアミン類と、同一または異なる式(III)または(IV)のアルデヒド類とより得られる種々のジアルジミン類の混合物であってもよい。
【0047】
式(I)の脂環式ジアルジミン類は、アルジミノ基の炭素原子のα位に置換基として水素を有していないことから、互変異性エナミン類を形成し得ない特性を有している。そのようなアルジミン類は、たとえ高い反応性を有するイソシアナート基が分子内に存在しても、ポリウレタンポリマーPと共に貯蔵可能な混合物を得る。
【0048】
さらには、式(I)の脂環式ジアルジミン類は、微臭または無臭であり、それらの調製に使用される式(III)または(IV)のアルデヒドは微臭または無臭であるという特性を有している。
【0049】
組成物を硬化する工程において、放出される脱離生成物は、式(I)の脂環式ジアルジミンを調製するために用いられるアルデヒド、すなわち、式(III)または(IV)のアルデヒドである。式(I)の脂環式ジアルジミン類及びそれらのアルデヒド類が微臭または無臭であることにより、著しい臭気を発することなく硬化する組成物を得ることができる。上記の無臭の特性を有するそれらのアルデヒド類を、式(I)の脂環式ジアルジミン類を調製するために排他的に使用することにより、臭気を発生することなく硬化する組成物が得られる。
【0050】
ポリウレタンポリマーPは、一般的には少なくとも1つのポリオールと、少なくとも1つの脂環式ジイソシアナートとから調製される。
【0051】
ポリウレタンポリマーPの調製に用いることができるポリオール類は、例えば、下記の市販のポリオール類またはそれらの混合物であってよい:
- ポリエーテルポリオール類、ポリオキシアルキレンポリオールまたはオリゴエーテロール(oligoetherols)とも呼ばれ、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-または2,3-ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物の重合生成物であり、任意選択で、1分子当たり2つ以上の活性水素原子を有する開始剤を用いて重合されてもよく、開始剤分子は、例えば、水、アンモニア、または複数のOHまたは NH基を有する化合物、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-及び1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールの異性体類、ブタンジオールの異性体類、ペンタンジオール類、ヘキサンジオール類、ヘプタンジオール類、オクタンジオール類、ノナンジオール類、デカンジオール類、ウンデカンジオール類、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、及び上記の化合物の混合物である。例えば、ダブルメタルシアン化物錯体触媒(DMC触媒)を用いて調製された、低い不飽和度〔ASTM D-2849-69に準拠して測定され、ポリオール1g当たりの不飽和のミリ当量で記録される(meq/g)〕を有するポリオキシアルキレンポリオール、或いは、例えば、NaOH、KOH、CsOH、またはアルカリ金属アルコキシドなどのアニオン触媒を用いて調製される、より高い不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールのいずれかを用いることができる。
ポリオキシエチレンポリオール及びポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、及びポリオキシプロピレントリオールが特に適している。
特に適しているのは、0.02meq/g未満の不飽和度を有し、かつ1,000〜30,000g/molの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、ならびに400〜8,000g/molの分子量を有するポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレンジオール、及びポリオキシプロピレントリオールである。本明細書において「分子量」または「モル質量」とは、平均分子量Mnを意味するものとして常に理解される。
同様に、いわゆるエチレンオキシド末端化(「EOでエンドキャップされた」、エチレンオキシドでエンドキャップされた)のポリオキシプロピレンポリオールが特に適している。後者は、例えば純粋なポリオキシプロピレンポリオール、とりわけポリオキシプロピレンジオール及びポリオキシプロピレントリオールを、ポリプロポキシル化反応の終了後にさらにアルコキシル化した場合に得られ、結果的には第一級ヒドロキシル基を有する、特定のポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールである。この場合、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールが好ましい。
- スチレン-アクリロニトリル-またはアクリロニトリル-メチルメタクリレート-グラフト化ポリエーテルポリオール類。
- ポリエステルポリオール類、オリゴエステロール(oligoesterols)とも呼ばれ、例えば、二価または三価のアルコール(例えば、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、または上記のアルコール類の混合物)と、有機ジカルボン酸またはそれらの無水物またはエステル(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びヘキサヒドロフタル酸、または上記の酸類の混合物)とから調製されるもの、及びラクトン(例えば、ε-カプロラクトンなど)から得られるポリエステルポリオール、である。
- 例えば、上記のポリエステルポリオールを得るために使用されるアルコールを、ジアルキルカルボナート、ジアリールカルボナート、またはホスゲンと反応させることによって得られる、ポリカルボナートポリオール類。
- ポリアクリラートポリオール類及びポリ(メタ)アクリラートポリオール類。
- ポリヒドロキシ官能性脂肪及びオイル類(例えば、天然脂肪及び油、特にヒマシ油);または「オレオケミカルポリオール」と呼ばれ、天然脂肪及びオイルの化学的変性によって得られるポリオール類(例えば、不飽和オイルのエポキシ化、及びその後のカルボン酸またはアルコールを用いた開環によって得られるエポキシポリエステルまたはエポキシポリエーテル、或いは不飽和オイルのヒドロホルミル化及び水素化によって得られるポリオール);または、アルコール分解もしくはオゾン分解などの分解工程と、そうして得られた分解生成物またはその誘導体の例えばエステル交換または二量化による化学結合反応によって、天然脂肪及びオイルから得られるポリオール類。天然脂肪及びオイルの好適な分解生成物は、特に、脂肪酸及び脂肪アルコール及び脂肪酸エステル、特にそのメチルエステル(FAME)(これは、例えば、ヒドロホルミル化及び水素化によって誘導体化されてヒドロキシ脂肪酸エステルを生成することができる)である。
- ポリハイドロカーボンポリオール類、オリゴハイドロカーボノールとも呼ばれ、例えば、ポリヒドロキシ官能性のエチレン-プロピレン、エチレン-ブチレン、またはエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(例えば、Kraton Polymers社によって製造されているもの)、またはジエン(例えば、1,3-ブタジエンまたはジエン混合物)とビニルモノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリル、またはイソブチレン)とのポリヒドロキシ官能性コポリマー類、或いはポリヒドロキシ官能性ポリブタジエンポリオール類であって、例えば、これは1,3-ブタジエンとアリルアルコールとのコポリマー化によって調製され、かつ水素化されてもよい。
- ポリヒドロキシ官能性アセトニトリル/ブタジエンコポリマーであり、これは、例えば、エポキシド類またはアミノアルコール類と、カルボキシ末端のアクリロニトリル/ブタジエンコポリマー(Noveon社からHycar(登録商標)CTBNの名称で市販されている)とから調製できる。
これら上記のポリオール類は、好ましくは250〜30,000g/mol、特に1,000〜30,000g/molの平均分子量を有し、好ましくは1.6〜3の範囲で平均OH官能価を有する。
【0052】
とりわけ適当なポリオール類は、ポリエステルポリオール類及びポリエーテルポリオール類であり、特にポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールであり、好ましくは、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール、及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールである。
【0053】
これら上記のポリオール類に加えて、低分子量の二価または多価のアルコール類、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-及び1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールの異性体類、ブタンジオールの異性体類、ペンタンジオール類、ヘキサンジオール類、ヘプタンジオール類、オクタンジオール類、ノナンジオール類、デカンジオール類、ウンデカンジオール類、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、二量体の脂肪アルコール類1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、糖アルコール類(例えば、キシリトール、ソルビトール、またはマンニトール)、糖類(例えば、ショ糖)、その他の高級多価アルコール類、上記の二価または多価アルコール類の低分子アルコキシ化合物、及び上記アルコール類の混合物をさらに、ポリウレタンポリマーPの調製の際に少量用いてもよい。
【0054】
ポリウレタンポリマーPを調製するために使用する脂環式ジイソシアナート類は、特に、シクロヘキサン1,3-ジイソシアナート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアナート、1-イソシアナート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナートメチルシクロヘキサン(IPDI)、ペルヒドロ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,4-ジイソシアナート-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン、2-メチル-1,3-ジイソシアナートシクロヘキサン、及び4-メチル-1,3-ジイソシアナートシクロヘキサンから成る群から選択される市販の脂環式ジイソシアナート類であってもよく、とりわけ、IPDI、ペルヒドロ-2,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート及びペルヒドロ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナートであり、好ましくはIPDIである。
【0055】
さらには、ポリウレタンポリマー類Pの混合物を使用することも可能であり、とりわけ、室温で液体であるポリウレタンポリマーPと、室温で固体であるポリウレタンポリマーPとの混合物であってもよい。
【0056】
脂環式イソシアナート基を有するポリウレタンポリマーPの割合は、全組成物に対して、好ましくは10〜95質量%、とりわけ15〜80質量%である。
【0057】
式(I)の脂環式ジアルジミンの割合は、アルジミノ基とポリウレタンポリマーPのイソシアナート基との比率が、0.1〜1.1、特に0.15〜1.0、好ましくは0.2〜0.9であることが好ましい。
【0058】
この組成物はフィラーをさらに含んでいる。このフィラーは、硬化されていない組成物のレオロジー特性と、硬化された組成物の機械特性及び表面特性との両方に影響を及ぼす。適当なフィラーは、無機または有機フィラーであり、例えば、天然の粉砕または沈降の炭酸カルシウム(任意に、脂肪酸、特にステアレートで被覆されているもの)、硫酸バリウム〔BaSO4、バライト(barite)または重晶石とも知られている〕、焼成カオリン、微粉砕石英、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ(特に、熱分解工程からの高分散シリカ)、カーボンブラック(特に、工業的に生産されたカーボンブラック)、PVC粉末、または中空ビーズである。好適なフィラーは、硫酸バリウム及び炭酸カルシウム、カーボンブラック、ならびに水酸化物または水和物などの難燃性のフィラーであり、特に、アルミニウムの水酸化物または水和物であり、好ましくは水酸化アルミニウムである。
【0059】
異なるフィラーの混合物を使用することも可能であるし、また有利である。
【0060】
適当なフィラーの量は、例えば、全組成物に対して、10〜70質量%、好ましくは20〜60質量%の範囲である。
【0061】
この組成物は、溶媒を含んでもよく、或いは含まなくてもよい。組成物が溶媒を含むとき、この溶媒はイソシアナート基との反応性を有する如何なる基を含んではならず、より具体的には、ヒドロキシ基及び活性水素を有するその他の基を含んではならない。
【0062】
適当な溶媒は、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、メシチルオキシド、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノン);エステル類〔例えば、アセテート類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなど)、ホルマート類、プロピオナート類、及びマロナート類(ジエチルマロナートなど)〕;エーテル類〔ジアルキルエーテル類、ケトンエーテル類、及びエステルエーテル類(例えば、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及びエチレングリコールジエチルエーテル)〕;脂環式及び芳香族炭化水素類〔例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、及び鉱油留分(例えば、ナフサ、ホワイト・スピリット(white spirit)、石油エーテル、及びガソリン)〕;水素化炭化水素類(例えば、塩化メチレン);及びN-アルキル化ラクタム類(例えば、N-メチルピロリドン)から成る群からとりわけ選択される。
【0063】
好ましくは、キシレン、トルエン、ホワイト・スピリット、及び100℃〜200℃の沸点を有する鉱油留分である。
【0064】
適当な溶媒の量は、典型的には、全組成物に対して、1〜50質量%であり、とりわけ1〜25質量%の範囲である。
【0065】
組成物は、さらなる成分を含んでもよい。さらなる成分は、特に以下の補助剤及び添加剤が挙げられる:
- 可塑剤。例えば、有機カルボン酸のエステル類またはそれらの無水物であり、例えば、フタラート類(例えば、ジオクチルフタラート、ジイソノニルフタラート、またはジイソデシルフタラートなど)、アジパート類(例えば、ジオクチルアジパート)、アゼラート類及びセバカート類、有機リン酸エステル類及び有機スルホン酸エステル類、ポリブテン類、及びポリイソブテン類;
- 触媒はポリウレタン化学で通常使用されるものであり、特に、錫及びビスマス化合物、第三級アミン類、有機カルボン酸及び有機スルホン酸;
- 繊維。例えば、ポリエチレン繊維;
- 顔料。例えば、二酸化チタンまたは酸化鉄;
- レオロジー改質剤。例えば、増粘剤またはチキソ性付与剤(例えば尿素化合物、ポリアミドワックス、ベントナイト、またはヒュームドシリカ);
- 反応性希釈剤または架橋剤。例えば、低分子量のオリゴマー類、及び
ジイソシアナート類(例えば、MDI、PMDI、TDI、HDI、1,12-ドデカメチレンジイソシアナート、シクロヘキサン1,3-または1,4-ジイソシアナート、IPDI、ペルヒドロ-2,4’-及び-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3-及び1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアナート)の誘導体、とりわけ、上記ジイソシアナートのイソシアヌラート類、カルボジイミド類、ウレトンイミン類、ビウレット類、アロファナート類、及びイミノオキサジアジンジオン類;ジイソシアナートと短鎖ポリオールとの付加体;アジピン酸ジヒドラジド及びその他のジヒドラジド類;及びポリアルジミン、ポリケチミン、オキサゾリジン、またはポリオキサゾリジンの形態のキャップされたアミン類;
- 乾燥剤。例えば、モレキュラーシーブ、酸化カルシウム、高反応性イソシアナート類(例えば、p-トシルイソシアナート)、オルトギ酸エステル類、アルコキシシラン類(例えば、テトラエトキシシラン)、有機アルコキシシラン類(例えば、ビニルトリメトキシシラン)、及びケイ素基のα位に官能基を有する有機アルコキシシラン類;
- 接着促進剤。特に、例えば、エポキシシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリルシラン、イソシアナートシラン、カルバマートシラン、S-(アルキルカルボニル)メルカプトシラン、及びアルジミノシラン、これらのシランのオリゴマー形態のもの、ならびにポリイソシアナートとアミノシラン類及び/またはメルカプトシラン類との付加体などの有機アルコキシシラン類。以下、「シラン」と称する;
- 非反応性熱可塑性ポリマー。例えば、不飽和モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであり、特に、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニルまたはその高級エステル、及び(メタ)アクリラートから成る群から選択される不飽和モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであり、とりわけ適当な例として、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、アタクティックポリ-α-オレフィン類(APAO)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレン(PE)が挙げられる;
- 反応性熱可塑性ポリマー。特に、イソシアナート末端ポリウレタンポリマー類であり、そのポリマーは、ポリエステルポリオール、好ましくは室温において固体であるポリエステルポリオールであり、かつ融点が、ウォームメルト型接着剤としての組成物の適用温度の範囲にあり、好ましくは40℃〜80℃であるポリエステルポリオールを用いて調製する;
- 熱、光、及びUV放射に対する安定剤;
- 難燃剤;
- 界面活性剤。例えば、湿潤剤、流動性制御剤、脱気剤、または脱泡剤;
-殺生物剤。例えば、殺藻剤、殺真菌剤、または真菌増殖阻害剤;
-ならびに、ポリウレタン組成物に習慣的に用いられるさらなる物質。
【0066】
また有利には、組成物は、アルジミン基の加水分解及び/またはイソシアナート基の反応を促進する、少なくとも1つの触媒を含んでいる。
【0067】
ジアルジミンの加水分解を促進する触媒は、例えば、有機カルボン酸類(例えば、安息香酸、またはサリチル酸)、有機カルボン酸無水物類(フタル酸無水物、またはヘキサヒドロフタル酸無水物)、有機カルボン酸のシリルエーテル類、有機スルホン酸類(例えば、p-トルエンスルホン酸、または4-ドデシルベンゼンスルホン酸)、スルホン酸エステル類、その他の有機酸または無機酸、或いは上記酸または酸エステルの混合物である。
【0068】
イソシアナート基と水との反応を促進する触媒として、例えば、有機錫化合物(例えば、ジブチル錫ジラウラート、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート)、有機ビスマス化合物もしくはビスマス錯体、またはアミン含有化合物(例えば、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテルもしくは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、或いはポリウレタン化学においてイソシアナート基の反応のために習慣的に用いられるその他の触媒が含まれる。
【0069】
ポリウレタン組成物中に複数の触媒の混合物、とりわけ、酸と有機金属化合物または金属錯体との混合物、酸とアミン含有化合物との混合物、または酸と、有機金属化合物または金属錯体と、アミノ含有化合物との混合物が存在するとき有利であり得る。
【0070】
典型的な触媒の含有量は、一般的には、全組成物に対して、0.005〜2質量%であり、当業者においてはどの触媒を使用するときにどれくらいの量が適当であるか明白である。
【0071】
組成物中の成分の存在によって組成物の貯蔵安定性に悪影響を及ぼすことがないように、すわわち、貯蔵の際に、組成物の特性、とりわけ適用特性及び硬化特性が、仮にあったとしても、若干の変化が生じる程度であるように、組成物中に存在し得る前記成分のすべて、とりわけフィラー及び触媒を選択することが有利である。このことは、上記組成物、とりわけイソシアナート基による化学的硬化をもたらす反応が、貯蔵時に有意な量で生じるべきではないことを意味する。それ故に、上記成分が、多くても微量の水しか含まないか、或いは貯蔵時において、多くても微量の水しか放出しないことが特に有利である。したがって、一部の成分は組成物に混合する前に化学的又は物理的に乾燥させることが好都合であり適切であり得る。
【0072】
記載されている組成物は、湿気の不存在下で調製され、かつ貯蔵される。その組成物は、貯蔵時に安定であり、すなわち、適当なパックまたはアレンジメント(例えば、ドラム(vat)、バッグ、またはカートリッジ)の中で、数ヶ月から一年以上の期間にわたって、その性能特性またはその硬化後の特性をその使用に関連する程度には変えることなく、湿気の不存在下で貯蔵できることを意味する。一般的には、貯蔵安定性は、粘土或いは押出力(pressing-out force)の測定によって得られる。
【0073】
組成物が湿気と接触すると、アルジミノ基とイソシアナート基との化学反応により硬化が始まり、それ故に、その末端力(end strength)が増大する。したがって、本発明のさらなる実施態様は、上記組成物と、水、特に大気中の湿気の形態の水との反応によって得られる硬化組成物に関する。式(I)の脂環式ジアルジミンのアルジミノ基は、湿気と接触して加水分解する特性を有する。この方法で生成するフリーのアミノ基は、組成物中に存在するイソシアナート基と反応してウレア基を生成し、かつ式(III)のアルデヒドが遊離する。
【0074】
イソシアナート基は、好ましくはアルジミノ基に対して化学量論的に過剰である。これら組成物の過剰なイソシアナート基は、湿気と直接反応し、二酸化炭素の脱離を伴ってウレア基を形成する。これらの反応、及びさらなるイソシアナート基の反応の結果として、組成物は硬化する。この過程は、架橋ともいわれる。式(I)の脂環式ジアルジミンは、硬化された硬化する過程で硬化したポリウレタンマトリックス中に組み込まれ、調製するのに用いられたアルデヒドが遊離する。イソシアナート基と加水分解性ジアルジミンとの反応は、フリーのアミノ基を介して起こる必要性は必ずしもない。加水分解反応による中間体との反応も同様に可能であると考えられる。例えば、ヘミアミナールの形態の、式(I)の脂環式ジアルジミン中の加水分解されるアルジミノ基が、イソシアナート基と直接反応することが考えられる。
【0075】
本組成物は、特に一成分系組成物として用いられ、かつ湿気硬化型である。硬化反応に必要な水は空気(大気中の湿気)由来でもよく、或いは例えば平滑剤とともに塗装することによって、またはスプレーすることによって、上記組成物を含水成分と接触させてもよく、或いは適用時の組成物に、例えばスタティックミキサーで混合した、例えば含水ペーストの形態で、水含有成分を添加してもよい。大気中の湿度によって硬化する場合、本組成物は外側から内側に向かって硬化する。硬化速度は、様々な要因、例えば、水の拡散速度、温度、周囲湿度、及び接着形状に起因し、一般的に硬化速度は、硬化が進行するにつれて低下する。
【0076】
組成物が硬化する際には、上述した無臭のアルデヒド類のみが遊離するため、組成物の硬化によって不快な臭気を発生することはなく、これは大きな利点となり、多くの用途、特に密閉された空間における用途においてはまさに必須条件となりうる。
【0077】
上記組成物は、湿気、例えば水と接触して、気泡を形成することなく速やかに硬化する。硬化した組成物は、光及び熱の影響下であっても実質的に黄変しない。これにより、外観が透明であるか、淡い色合いであり、それ故に色彩安定性を有するべきものに、接着剤、シーラント、及びコーティングを使用することが可能となる。
【0078】
組成物の硬化の過程において、その表面粘着性は、非常に速やかに低減する。これは、脂環式イソシアナート基を有するポリウレタンポリマーから形成されるポリウレタン組成物、特にIPDIに基づく該ポリマーから形成されるポリウレタン組成物では、異常で驚くべきことである。特に弾性接着剤またはシーラントとしての用途では、この種の通常の組成物の粘着性は、非常に顕著である場合が多く、適用した後、数日または数週間も低減せず、このために、組成物が、特にダストによって汚れやすくなる。
【0079】
硬化した後、上記の組成物は、伸展性が同様に良好であり、同時に硬度及び強度も極めて大きいが、これは、脂環式イソシアネート基を有するポリウレタンポリマー、特にIPDIに基づく該ポリマーから形成されたポリウレタン組成物では、驚くべきことである。それらの引張強度及びショア硬度は、脂環式イソシアネート基、及び非脂環式ジアミンに由来するジアルジミンを有するポリウレタンポリマーから形成された類似のポリウレタン組成物よりも有意に大きい。式(I)の脂環式ジアルジミンの使用に由来する強度及び硬度のかかる改良は、従来の技術からは予測できなかった。
【0080】
さらには、上記の組成物は、その硬化後もポリマー内に結合せずに存在する液体成分、特に、式(I)の脂環式ジアルジミンの調製に使用された式(III)、(IV)及び/または(V)のアルデヒド、及び任意選択で存在する可塑剤がマイグレーションの結果としてしみ出す傾向が低い。これは、当業者にとっては驚くべきことである。というのは、非脂環式ジアルジミンを含む、またはジアルジミンを全く含まない従来技術の類似の組成物の場合には、マイグレーションする成分のしみ出しがはるかに多いことが観察されるからである。これは、特に、式(I)のジアルジミンと同じアルデヒド、すなわち、式(III)、(IV)及び/または(V)のアルデヒドに基づくアルジミンを含む類似の組成物においてもあてはまる場合がある。上記の組成物では、マイグレーション成分のしみ出す傾向がより低いのは、後者、特にアルデヒドが、ポリマーマトリックス、特に脂環式ウレア基に対して有意に良好な適合性を有するという事実に起因することが推察される。
【0081】
マイグレーション成分のしみ出しがより低く、合わせて上記の組成物の硬化が速やかなので、適用後長期間、組成物の表面に粘着性が残存することが実質的に防止され、それ故に土壌及びダストが組成物上に付着するのも防止される。さらには、組成物の表面上、及び組成物が適用された基材上のスポット及び染みの数は、たとえあったとしても、従来技術の組成物より少ない。「ブリーディング(Bleeding)」とも呼ばれる、マイグレーション成分に由来する基材上のスポット及び染みは、特に、細孔材料、特にコンクリート、セメント、または大理石及び花こう岩などの天然岩石を接合するジョイント部をシールする場合に生じる。というのは、こうした基材は、その微細孔のためにかかるマイグレーション成分を容易に吸収することができるからである。さらには、マイグレーション成分のしみ出しは、続いてシールされることになっているコーティングの場合にも問題である。というのは、可塑剤様の物質が表面シール内にまたはそれを貫通してマイグレーションすると、コーティング全体の目に見える外観がひどく損なわれるのみならず、シールが実質的に破壊される程度まで、シールが軟化する恐れさえあるからである。さらには、マイグレーション成分のしみ出しは、塗料または接着被覆剤が続いて接着ジョイント部に適用されることになっているジョイント部の場合にも問題である。というのは、しみ出したフィルムがジョイント部における塗料または接着剤に対する接着を損なう恐れがあるからである。
【0082】
構成成分及びそれらの量に応じて、組成物は、未硬化及び硬化状態において、異なるコンシステンシー及び異なる特性を有している。これは、上記の組成物の特定の用途についてそれぞれ特有である。
【0083】
本願発明は、建設及び工業用途向けの接着剤、シーラント及び/またはコーティングとしての上記組成物の使用をさらに包含する。
【0084】
1つの実施形態では、本組成物は、室温において良好なレベリング特性(leveling property)を備えた流体コンシステンシーを有している。結果として、その組成物は、大部分が平滑である表面に対するセルフレベリングコーティングとして、例えば、床カバリングとして容易に適用することができる。通常、層当たりの層厚さ0.5乃至3mm、とりわけ0.5乃至2mmで適用される。
【0085】
他の実施形態では、本組成物は、室温において構造的な粘性特性を備えたペースト状コンシステンシーを有し、一般的には、接着剤、及び/またはシーラント、特に弾性接着剤またはシーラントとして適切である。
【0086】
特定の実施形態では、組成物は、好ましくは、上記したような反応性または非反応性熱可塑性ポリマーである室温で固体の溶融性成分を有し、より良好なハンドリングのために、好ましくは、温かい状態、すなわち溶融性成分の融点を超える温度で適用される。結果として、硬化は2種類の作用によって実施される。第一に、組成物は、溶融性成分、特にポリウレタンポリマーPの効果による冷却、特に結晶化の結果としての固化という過程で固化し、こうして組成物の粘度が有意に増加する。こうした物理硬化によって、一定時間後からオープンタイムが終了し、組成物の初期強度が生じる。平行して、組成物の化学硬化が、すでに述べたように水分によって実施され、それとともに最終強度の発達がもたらされる。
【0087】
上記の実施形態によれば、本組成物は、接着剤またはシーラント、特に弾性接着剤またはシーラントとして用いることが好ましい。
【0088】
完全に硬化した状態において、上記組成物は、高い強度を持つ弾性特性を備えている。これは、第一に、高い伸張性、具体的には>300%の伸張性を有しており、第二に、高い引張強度、具体的には>2MPaの引張強度を有していることを意味する。
【0089】
本願発明は、基材S1を基材S2に接着結合する方法もさらに包含する。このような接着結合する方法は、
i) 上述した組成物を基材S1及び/または基材S2に適用する工程と、
ii) 適用した組成物を介して基材S1とS2とを接触させる工程と、
iii) 前記組成物を、水、特に空気中の湿気の形態での水で硬化させる工程と
を含み、前記基材S1及びS2は、互いに同一であるかまたは互いに異なる。
【0090】
接着剤は、特にいわゆる三角ビードの形状で適用する。一定の初期強度を発現するそれらのコンシステンシーによって、接着剤及びシーラントの両方を、あらゆる空間的整合性の表面に適用することができ、すなわち、垂直面及び突出面に適用することが可能である。適用の過程における良好な取扱い性を得るために、本組成物は、チキソトロピックな性質及び短い糸引きもまた有することが好ましい。
【0091】
記載の組成物をウォームメルト接着剤として使用することも可能である。
【0092】
ウォームメルト接着剤として適用する際には、本組成物を適用前にポリウレタンポリマーPまたは固体成分の融点より高い温度、特に40℃〜100℃の範囲の温度に加熱する。その後の接着接合は、上記の方法により達成される。
【0093】
本願発明は、さらには、シールをするための方法もまた備える。この方法は、
i') 上述した組成物を、基材S1と基材S2との間に適用する工程と、
ii') 前記組成物を、水、特に空気中の湿気の形態での水で硬化させる工程と
を含み、前記基材S1及びS2は、互いに同一であるかまたは互いに異なる。
【0094】
本願発明は、さらには、コーティング、とりわけ床カバリングの製造方法もまた備える。この方法は、
i'') 上述した組成物を基材S1に適用する工程と、
ii'') 前記組成物を、水、特に湿気の形態の水によって硬化させる工程と
を備える。
【0095】
湿気による本組成物の化学的硬化に係るiii)、ii')、またはii'')の工程に関しては、硬化反応が、使用する組成物、基材、温度、周囲湿度、及び接着剤の形状などの要因に依存するが、本組成物を適用し次第すぐに開始し得ることは、当業者であれば理解される。しかしながら、化学的硬化は主に本組成物の適用後に生じる。
【0096】
適当な基材S1及び/またはS2は、特に、コンクリート、セメント、モルタル、煉瓦、タイル、石こう、天然石、アスファルト、金属、金属合金、木材、セラミック、ガラス、プラスチック、粉体塗装、塗料、及びラッカーから成る群から選択される基材である。
【0097】
必要に応じて、上述した組成物を適用する前に、基材S1及び/またはS2を前処理することができる。この種の前処理には、特に物理的及び/または化学的クリーニング法を含み、例えば、グラインディング、サンドブラスト、ブラッシングなど、或いは洗剤または溶媒での処理、或いはフレーム処理(flame treatment)またはプラズマ処理(とりわけ、大気圧での空気プラズマ処理)などを含む。有用な下塗剤の例として、接着促進組成物またはプライマー剤が挙げられる。
【0098】
本組成物は臭気がないことを必要とする用途にとりわけ適当であり、例えば、建物内部のジョイントのシーリング、内装のコーティング及び床の製造、及び車両の内装の構成部品のジョイント部のシーリングなどが挙げられる。好適なコーティングは、保護塗料、シール、保護コーティング、及びプライマーコーティングである。好ましいカバリングは、具体的には床カバリングである。例えば、この床カバリングは、事務所、生活領域、病院、学校、倉庫、車庫、及びその他の私的または工業的用途に使用される。このような用途は、大面積を包括するため、屋外用途の場合でも、カバリングからの物質のわずかな発散も職業的衛生に関する問題及び/または不快な臭気をもたらし得る。しかしながら、床用カバリングの大部分は、室内領域で適用される。それ故に、床カバリングにおける臭気はとりわけ重要な問題ではあるが、本願発明の組成物によって軽減される。
【0099】
基材S1及び/またはS2を接着接合かつ/或いは封止するための上記組成物は、一般的には市販のカートリッジを用いて適用し、より小さな適用の場合には、手によって適用することが好ましい。同様に、圧縮空気によるカートリッジからの適用、或いは送風ポンプまたは押出機、場合によっては適用ロボットによるドラムまたはホブボック(hobbock)からの適用も可能である。このような適用方法は、工業生産における適用、或いは広範囲の適用の際に特に好ましい。
【0100】
被膜を調製するための上記組成物の適用は、一般的にはコーティングする基材S1上、特に床面上に注ぐことによって達成され、例えば、コーティングナイフまたは切り欠けこて(notched trowel)を用いて液体状態で均一的に分散させる。さらには、スパイクローラーを用いて物質を水平に、かつ空気を除去することができる。その一方で、例えばスプレー塗布の形態などの機械的適用も可能である。
【0101】
上記組成物を適用する前に、さらなるフィラー、特に石英砂と混合することも可能である。同様に、まだ液体である組成物の表面上、または表面内部にのみ石英砂を散乱させてもよい。両方とも同様に、良好な横滑り防止効果を有するざらざらした耐摩耗性表面を得ることができ、必要に応じて封止することが可能である。
【0102】
さらには、本組成物を1以上の層に適用してもよい。複数層に適用する場合には、適用する工程を、連続してまたは一定時間間隔をおいて、数回繰り返す。
【0103】
最後に、上記組成物の適用の後にシールの適用が続いてもよく、当該シールは、薄い層、例えば、数マイクロメートルから数十分の1ミリメートルの厚さの層であり、床カバリングの表面特性に影響を及ぼす。これは、透明であっても着色したシールであってもよい。また、本願発明に係る組成物の硬化された層に、高い破断伸度を有する耐摩耗性層をさらに適用することも可能である。これによって良好な動的クラック橋架け(dynamic crack bridging)及び高い表面硬度を有するカバリングがもたらされ、クラック橋架けを確実にする高い弾性、及び高い表面硬度を与える耐摩耗性層を有する本組成物が得られる。同様に、耐摩耗性層もまた必要に応じてシールされてもよい。このようにして、床構造を、ドイツ鉄筋コンクリート委員会の「Richtlinie fur Schutz und Instandsetzung von Betonbauteilen(コンクリート成分の保護及び整備に関するガイドライン)」のOS 11(OSは、「Oberflachenschutzsystem(表面保護システム)」を表す)に従って整備することができる。
【0104】
本願発明は、上記組成物を用いて接着接合、シール、かつ/或いはコーティングされた物品をさらに含み、上記の方法の1つによって得られる。
【0105】
これらの物品は、建物または、建設もしくは土木における建築構造体、工業用物品または一般消費物品〔特に、窓、室内用器具、または輸送モード(特に、自動車)、または自動車の取り付け可能な部品〕であってもよい。
【0106】
これらの物品は床面に適しており、具体的には、建物または建築構造体の室内及び外部、例えば、事務所、産業会館、体育館、冷蔵室、バルコニー、テラス、駐車場のフロア、またはスポーツグラウンド及びプレイグラウンドの床面を挙げることができる。
【0107】
[実施例]
[試験方法の説明]
赤外スペクトルは、Perkin-Elmer社製のFT-IR 1600装置を用いて測定し(ZnSe結晶を有する水平ATR測定ユニット);試料は希釈せずに薄膜フィルムとして適用した。吸収バンドは波数(cm-1)で記す(測定範囲:4000-650cm-1)。
【0108】
1H-NMRスペクトルは、Bruker DPX-300の分光計で300.13MHzにて測定した;化学シフトδは、テトラメチルシラン(TMS)に対するppmで記し、カップリング定数JはHzで記す。真のカップリングパターン(true coupling patterns)と擬カップリングパターン(pseudo coupling patterns)との区別はしていない。
【0109】
粘度は、温度調節したPhysica UM コーンプレート粘度計(コーン直径:20mm、コーン角度:1°、コーンの先端からプレートまでの距離:0.05mm、せん断速度:10〜1000s-1)で測定した。
【0110】
調製したジアルジミン類のアミン含有量、すなわち、アルジミノ基の形態におけるキャップされたアミノ基の含有量は、滴定(氷酢酸中0.1N HClO4を用い、クリスタルバイオレットに対して)によって測定し、常にmmol N/gで記す。
【0111】
a) ジアルジミン類の調製
ジアルジミンA-1(式(I)に対応する)
55.0g(0.19mol)の蒸留した2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを、窒素雰囲気下、丸底フラスコ中に最初に導入した。激しく撹拌しながら、15.6g(0.18molのN)の1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(= イソホロンジアミン、IPDA;Vestamin(登録商標)IPD、Degussa社製;アミン含量 11.68mmol N/g)を滴下漏斗からゆっくり添加し、その過程で混合物は温かくなり、次第に曇った。その後、揮発成分を減圧下(10mbar、80℃)で除去した。収量:67.1gの、2.37mmol N/gのアミン含量を有し、かつ20℃で190mPa・sの粘度を有する無色透明のオイル。
IR: 2952, 2922, 2852, 2819sh, 1738 (C=O), 1666 (C=N), 1464, 1418, 1394, 1378, 1364, 1350, 1298, 1248, 1236sh, 1158, 1112, 1048, 1020, 1000, 938, 928, 910, 894, 868, 772, 722。
1H NMR (CDCl3, 300 K):δ 7.59 及び 7.57 (2×s, total 1H, CH=N ([異性体]), 7.47 (s, 1H, CH=N), 4.03 及び 4.01 (2×s, 2×2H, C(CH3)2-CH2-O), 3.37 (m, 1H, N-CHCy), 3.08 (dd, 2H, J = 11.1, N-CH2-CCy), 2.30 (t, 4H, J = 7.5, OC(O)-CH2-CH2), 1.61 (m, 4H, OC(O)-CH2-CH2), 1.60-0.85 (m, 65 H, 残りのCH)。
【0112】
ジアルジミンA-2(式(I)に対応する)
50.0g(0.18mol)の蒸留した2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを、窒素雰囲気下、丸底フラスコ中に最初に導入し、室温で、17.9g(0.17molのN)の固体のビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(H12MDA;異性体混合物;アミン含量 9.37mmol N/g)と共に混合した。この混合物は、短時間で完全に溶液となり、混合物は温かくなり、次第に曇った。その後、揮発成分を減圧下(10mbar、80℃)で除去した。収量:64.7gの、2.60mmol N/gのアミン含量を有し、20℃で460mPa・sの粘度を有する透明で橙褐色のオイル。
IR: 2952sh, 2920, 2851, 2818sh, 1737 (C=O), 1665 (C=N), 1466, 1449, 1418, 1394, 1375, 1345, 1300, 1248, 1233, 1159, 1112, 1056, 1019, 1000, 938, 913, 896, 766, 721。
1H NMR (CDCl3, 300 K):δ 7.55 及び7.53 (2×s, 比率 約7/3; 2H, CH=N), 4.02 and 4.00 (2×s, 比率 約3/7; 4H, C(CH3)2-CH2-O), 3.09 and 2.88 (2×m, 比率 約3/7; 2H, N-CHCy), 2.29 (t, 4H, J = 7.5, OC(O)-CH2-CH2), 1.89 and 1.75 (2×m, 比率 約3/7; 4 Cy-H), 1.65-1.40 (m, 16H, 12 Cy-H and OC(O)-CH2-CH2), 1.35-0.90 (m, 36H, 4 Cy-H and CH3-(CH2)8-CH2-CH2-CO), 1.08 (s, 12H, C(CH3)2-CH2-O), 0.88 (t, 6H, J = 6.9, CH3-(CH2)10-CO)。
【0113】
ジアルジミンA-3(式(I)に対応する)
60.5g(0.21mol)の蒸留した2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを、窒素雰囲気下、丸底フラスコ中に最初に添加した。激しく攪拌しながら、11.6g(0.20molのN)の1,2-ジアミノシクロヘキサン(DCH;Dytek(登録商標)DCH-99、Invista社製;アミン含量 17.34 mmol N/g)を滴下漏斗からゆっくり添加し、その過程で混合物は温かくなり、次第に曇った。その後、揮発成分を減圧下(10mbar、80℃)で除去した。収量:68.2gの、2.94mmol N/gのアミン含量を有し、かつ20℃で80mPa・sの粘度を有する、透明でほぼ無色のオイル。
IR: 2952sh, 2922, 2852, 1738 (C=O), 1666 (C=N), 1466, 1418, 1392, 1374, 1344, 1300, 1246, 1234, 1158, 1112, 1082, 1018, 1000, 932, 858, 846, 830, 802, 766, 722, 676。
【0114】
ジアルジミンA-4(式(I)に対応する)
50.0g(0.18mol)の蒸留した2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを、窒素雰囲気下、丸底フラスコ中に最初に導入した。激しく撹拌しながら、19.8g(0.17molのN)のビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(Laromin(登録商標)C 260、BASF社製;アミン含量 8.46mmol N/g)を滴下漏斗からゆっくり添加し、その過程で混合物は温かくなり、次第に曇った。その後、揮発成分を減圧下(10mbar、80℃)で除去した。収量:66.5gの、2.50mmol N/gのアミン含量を有する無色透明オイル。
IR: 2952sh, 2920, 2852, 2815sh, 1738 (C=O), 1666 (C=N), 1456, 1418, 1394, 1370, 1344, 1299, 1248, 1234, 1158, 1112, 1046, 1020, 1000, 936, 922, 875, 863, 850, 764, 722。
【0115】
ジアルジミンA-5(式(I)に対応する)
80.9g(0.27mol)の蒸留した2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを、窒素雰囲気下、丸底フラスコ中に最初に導入した。激しく攪拌しながら、25.2g(0.26molのN)の3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(TCD-ジアミン、celanese社製;アミン含量 10.23mmol N/g)を滴下漏斗からゆっくり添加し、その過程で混合物は温かくなり、次第に曇った。その後、揮発成分を減圧下(10mbar、80℃)で除去した。収量:100.8gの、2.56mmol N/gのアミン含量を有する透明でほぼ無色のオイル。
【0116】
ジアルジミンA-6(式(I)に対応する)
45.0g(0.16mol)の蒸留した2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを、窒素雰囲気下、丸底フラスコ中に最初に導入した。激しく攪拌しながら、19.2g(0.15molのN)の4,4’-イソプロピリデン-ビシクロヘキシルアミン(IPCD;BASF社製、工業規格、異性体混合物;アミン含量 7.77mmol N/g)を加熱した滴下漏斗からゆっくり添加し、その過程で混合物は温かくなり、次第に曇った。その後、揮発成分を減圧下(10mbar、80℃)で除去した。収量:61.0gの、2.47mmol N/gのアミン含量を有する、透明で淡褐色のオイル。
IR: 2954sh, 2921, 2852, 2822sh, 1737 (C=O), 1666 (C=N), 1466, 1448sh, 1418, 1393sh, 1377sh, 1343, 1300, 1249, 1234, 1159, 1112, 1085, 1058, 1021, 999, 974sh, 937, 898, 871sh, 761br, 721, 685。
【0117】
ジアルジミンA-7(式(I)に対応する)
25.8g(0.09mol)の蒸留した2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを、窒素雰囲気下、丸底フラスコ中に最初に導入した。激しく攪拌しながら、5g(0.09molのN)の固体のtrans-1,4-ジアミノシクロヘキサン(Invista社製;アミン含量 17.25mmol N/g)を複数回に分けて添加し、生じた懸濁液を80℃に加熱し、揮発成分を減圧下(10mbar、80℃)で除去した。収量:28.7gの、2.92mmol N/gのアミン含量を有する、透明で薄茶色であり、静置しておくと数分で白色の結晶塊に変質する。
IR: 2953sh, 2922, 2852, 2824sh, 1736 (C=O), 1664 (C=N), 1466, 1454sh, 1418, 1394, 1376, 1364sh, 1346, 1304, 1248, 1232, 1158, 1110, 1086, 1020, 1000, 942, 894, 887sh, 769, 722, 668。
【0118】
ジアルジミンA-8
50.9g(0.18mol)の蒸留した2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを、窒素雰囲気下、丸底フラスコ中に最初に導入した。激しく撹拌しながら、10.0g(0.17molのN)の1,6-ヘキサメチレンジアミン(BASF社製;アミン含量 17.04mmol N/g)を加熱した滴下漏斗からゆっくり添加し、その過程で混合物は温かくなり、次第に曇った。その後、揮発成分を減圧下(10mbar、80℃)で除去した。収量:57.7gの、2.94mmol N/gのアミン含量を有する、透明で淡黄色のオイル。
【0119】
ジアルジミンA-9
74.3g(0.26mol)の蒸留した2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを、窒素雰囲気下、丸底フラスコ中に最初に導入した。激しく撹拌しながら、30.0g(0.25molのN)のポリエーテルジアミン(約240g/molの平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン;Jeffamine(登録商標)D-230、Huntsman社製;アミン含量 8.29mmol N/g)を滴下漏斗からゆっくり添加し、その過程で混合物は温かくなり、次第に曇った。その後、揮発成分を減圧下(10mbar、80℃)で除去した。収量:99.5gの、2.50mmol N/gのアミン含量を有する、透明で淡黄色のオイル。
【0120】
b) ポリウレタン組成物の製造
実施例1及び2、ならびに比較例3:コーティング物質
それぞれの例について、表1に記載の各コーティング物質成分を、事前に乾燥させることなく記載の質量部だけ秤量し、ネジ式密封口を有するポリプロピレンビーカー中に導入し、遠心ミキサー〔SpeedMixer(商標)DAC 150、FlackTek Inc.製;2,500rpmで1分間〕で混合して、混合物をその後直ちに内部コーティングされたアルミニウム管に充填し、そのアルミニウム管を気密密閉した。
【0121】
ポリウレタンポリマーP1を以下のとおりに調製した。
1060gのポリオキシプロピレンジオール〔Desmophen(登録商標)1111 BD、Bayer社製;OH数:111.4mg KOH/g〕、650gのポリオキシプロピレンジオール〔Desmophen(登録商標)2061 BD、Bayer社製;OH数:56.1mg KOH/g〕、770gのイソホロンジイソシアナート〔Vestanat(登録商標)IPDI、Degussa社製〕、及び0.25gのジブチル錫ジラウラートを80℃で反応させて、フリーイソシアナート基の含有量が6.8質量%であるNCO末端ポリウレタンポリマーを得た。
【0122】
【表1】

【0123】
このようにして得られたコーティング物質を、スキン層形成時間、硬化後の機械特性、及び黄変について試験を行った。
【0124】
スキン層形成(skin-formation)時間(不粘着時間)を測定するために、40℃で2時間貯蔵し、その後室温に保たれているコーティング物質の小部分を、約2mmの層厚さで厚紙に塗布して、LDPEピペットを用いて接触したときに、残留物がピペットに残らなくなるまでの時間を、23℃、50%の相対湿度で測定した。
【0125】
硬化後の機械特性を測定するために、ショアA硬度、引張強度、破断伸度、及び弾性度を測定した。ショアA硬度は、標準的な気候条件下(23℃、50%相対湿度)で28日間硬化させた試料について、DIN 53505に準拠して測定した。さらなる機械特性を試験するために、製造後2時間経過後のコーティング物質を、平面のPTFEモールド上に約2mm厚さのフィルムとしてキャストし、このフィルムを標準的な気候条件下で21日間硬化させて、引張強度、破断伸度、及び弾性度(引張速度:200mm/min)に関して、DIN EN 53504に準拠して試験した。
【0126】
黄変は、完全に硬化されたコーティング物質の試験片を、太陽に照らされた窓の後ろに、日中の間4ヶ月配置し、次いで、暗闇に保管しておいた同じ素材の試験片の色と比較することによって定性的に試験した。この比較において色合いに明確な変化がみられなかったとき、当該コーティングは黄変しなかったと見なす。
【0127】
また、(膜の硬化中に生じた気泡の量に基づく)気泡形成、及び(硬化した膜から10cmの距離において鼻で嗅ぐことによる)臭気形成を定性的に評価した。
【0128】
これら試験の結果を表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
表2から明白であるように、本発明に係る実施例1及び2のコーティング物質は、少なくとも同程度に良好な破断伸度を伴う比較例3と比較すると、極めて優れた引張強度及び優れた弾性度を有している。
【0131】
実施例4〜7及び比較例8及び9:
弾性接着剤
それぞれの例について、表3に記載する各成分の質量部を、湿気を除去した真空ミキサーにて処理することで均質なペーストを形成し、その後直ちに内部コーティングされたアルミニウムカートリッジに充填し、そのアルミニウムカートリッジを気密密閉した。
【0132】
ポリウレタンポリマーP2を以下のように調製した。
590gのAcclaim(登録商標)4200 N Polyol(ポリプロピレンオキシドジオール;OH数:28.5mg KOH/g;Bayer社製)、1180gのCaradol(登録商標)MD34-02 Polyol(ポリプロプレンオキシド-ポリエチレンオキシドトリオール;OH数:35.0mg KOH/g;Shell社製)、及び230gのイソホロンジイソシアナート〔IPDI;Vestanat(登録商標)IPDI、Degussa社製〕を既知の方法を用いて80℃で反応させて、滴定測定されたフリーイソシアナート基の含有量が2.1質量%であり、かつ20℃における粘度が22Pa・sであるNCO末端ポリウレタンポリマーを得た。
【0133】
尿素増粘剤を以下のように調製した。
まず、3000gのジイソデシルフタラート〔DIDP;Palatinol(登録商標)Z、BASF社製〕及び480gの4,4’-メチレンジフェニルジイソシアナート〔MDI;Desmodur(登録商標)44 MC L、Bayer社製〕を真空ミキサーに導入し、穏やかに加熱した。次いで、激しく撹拌しながら、270gのモノブチルアミンをゆっくり滴下した。生成したペーストを、冷却しながら減圧下でさらに1時間撹拌した。
【0134】
【表3】

【0135】
すべての例について、ポリウレタンポリマーP2中のイソシアナート基と、式(I)のジアルジミン中の反応基(アルジミノ基+ヒドロキシ基)との比率は1.0/0.52である。
【0136】
このようにして得られた弾性接着剤を、クリープレジスタンス性、スレディング(threading)、スキン層形成時間、硬化速度、硬化後の機械特性、粘着性、及び染色性について試験を行った。
【0137】
クリープレジスタンス性を測定するために、カートリッジ銃を用いて三角ノズルを介して、垂直の板紙上に底面直径8mm、高さ20mmの水平三角ビードとして接着剤を適用した。5分後に、ビードの先端が下降した程度、すなわち当初の三角ビードの中間位置から離れた程度を測定した。先端部の位置に変化がない或いはほぼ変化がないとき、「非常に良好」と評価し、先端部の位置が底部の中間部と末端部との間にあるとき、「良好」と評価した。
【0138】
スレディングは、壁に固定された板紙上にカートリッジ銃で少量の接着剤を適用し、適用終了直後にカートリッジ銃を後方へ引き戻すことによって適用した接着剤からカートリッジ銃を引き離し、切断された時点で残存した接着剤のスレッドの長さを測定することで、定性的に評価した。
【0139】
スキン層形成時間を実施例1と同じ方法で評価を行った。
【0140】
硬化速度〔総硬化(through-curing)〕は、カートリッジ銃を用いて、長さが約50mmであり、中間部の厚さが30mmである水平自由吊錐体としての円形先端(開口10mm)を介して壁に固定された厚紙に対して接着剤を適用し、それを標準的な気候条件下で7日間放置した後、中間部に沿って垂直に切断し、定規を用いて硬化した接着層の厚さを測定することによって、評価した。
【0141】
硬化後の機械特性を評価するために、ショアA硬度、引張強度、破断伸度、及び弾性度を測定した。ショアA硬度は、標準的な気候条件下で14日間硬化させた試料について、DIN53505に準拠して測定した。さらなる機械特性を試験するために、製造後2時間経過後の接着剤を、約2mmの厚さのフィルムにプレス機を用いてプレス成形し、前記フィルムを標準的な気候条件下で14日間硬化させて、引張強度、破断伸度、及び弾性度(引張速度:毎分200mm)についてDIN EN 53504に準拠して試験した。
【0142】
接着表面の粘着性は、その適用から1日経過後に硬化したショアA試験片を親指で押圧し、手を上昇するにつれ試験片が親指にどれくらいの期間付着し続けるか評価することによって試験する。次いで、粘着性を「高」(試験片が3秒以上付着し続ける)、「中」(試験片が約3秒付着し続ける)、「低」(試験片が1〜2秒付着し続ける)、及び「無」(試験片が1秒未満付着し続ける)と評価した。
【0143】
染色性(staining)は、試験片が適用された1枚の紙にショアA試験片を適用してから1週間後に形成されたグリースリング(グリースリング)のサイズ(大/中/小/無)を用いて評価した。
【0144】
試験の結果を表4に示す。
【0145】
【表4】

【0146】
表4から明らかであるように、それぞれが式(I)の脂環式第一級ジアルジミンを含有し、その他類似の特性を有する、本発明に係る実施例4〜7の弾性接着剤は、極めて優れたショアA硬度及び高い弾性度を有しており、非脂環式ジアルジミンを含む比較例8の接着剤と比較して1日経過後の粘着性は低く、かつ低い染色性を示す。ジアルジミンを全く含有しない比較例9の接着剤と比較して、本願発明に係る実施例4乃至7の弾性接着剤は、短いスキン層形成時間、気泡を含まない硬化、良好な機械特性、低粘着性、及び低染色性を備えている。
【0147】
実施例10及び11ならびに比較例12:
弾性シーラント
それぞれの例について、表5に記載する各成分の質量部を、湿気を除去した真空ミキサーにて処理することで均質なペーストを形成し、その後直ちに内部コーティングされたアルミニウムカートリッジに充填し、そのアルミニウムカートリッジを気密密閉した。
【0148】
ポリウレタンポリマーP3を以下のように調製した。
580gのAcclaim(登録商標)4200 N Polyol(ポリプロピレンオキシドジオール;OH数:28.5mg KOH/g;Bayer社製)、303gのCaradol(登録商標)MD34-02 Polyol(ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドトリオール;OH数:35.0mg KOH/g;Shell社製)、及び117gのイソホロンジイソシアナート(IPDI;Vestanat(登録商標)IPDI;Degussa社製)を既知の方法を用いて80℃で反応させて、滴定測定されたフリーイソシアナート基の含有量が2.25質量%であり、かつ20℃における粘度が10 Pa・sであるNCO末端ポリウレタンポリマーを得た。
【0149】
尿素増粘剤を実施例4と同様に調製した。
【0150】
すべての実施例について、ポリウレタンポリマーP3中のイソシアナート基と、式(I)のジアルジミン中の反応基(アルジミノ基+ヒドロキシ基)との比率は1.0/0.67である。
【0151】
【表5】

【0152】
このようにして得られた弾性シーラントを、クリープレジスタンス性、スレディング、スキン層形成時間、硬化速度、硬化後の機械特性、粘着性、及び染色性について試験を行った。
【0153】
機械特性は、弾性度のかわりに100%伸長されたときに伸び応力(extension stress)を評価した以外、実施例4に準じて評価した。
【0154】
残りの試験は、粘着性試験について3日経過したショアA試験片をさらに用いて実施した以外、実施例4に準じて評価した。
【0155】
すべてのシーラントは気泡が全く生じることなく硬化された。
【0156】
試験の結果を表6に示す。
【0157】
【表6】

【0158】
表6から明白であるように、それぞれが式(I)の脂環式第一級ジアルジミンを含有する、本願発明に係る実施例10及び11の弾性シーラントは、非脂環式ジアルジミンを含有する比較例12のシーラントと比較して、良好な機械特性及び1または3日経過後において極めて低い粘着性を有する。式(I)の脂環式ジアルジミンを含み、アルジミノ基の1つが脂環式環に直接結合している実施例10のシーラントは、式(I)の脂環式ジアルジミンを含み、式中、アルジミノ基のいずれもが脂環式環に直接結合していない実施例11のシーラントと比較して、機械特性、特に引張強度において著しい効果がみられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式イソシアナート基を有する、少なくとも1つのポリウレタンポリマーPと、
少なくとも1つの式(I):
【化1】

の脂環式ジアルジミンと
を含む、組成物。
[式中、
- R1及びR2基は、それぞれ独立して、1〜12個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であるか、或いは、R1とR2とが一緒になって形成された、4〜20個の炭素原子を有し、5〜8個、好ましくは6個の炭素原子を有する任意に置換された炭素環式環の一部である、二価の炭化水素基であり;
- R3基は、水素原子、またはアルキルもしくはアリールアルキル基であり、特に1〜12個の炭素原子を有する基であり;
- R4基は、6〜30個の炭素原子を有し、かつ任意にヘテロ原子を含む炭化水素基であるか、或いは式(II):
【化2】

で示される基であり、式中、R5は、
任意に環状要素を有しており、かつ任意に少なくとも1つのヘテロ原子、特にエーテル、エステル、またはアルデヒド基の形態で酸素を含む、6〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐したアルキル基であるか;
或いは、6〜30個の炭素原子を有する一価または多価不飽和の直鎖または分岐した炭化水素基であるか;
或いは、任意に置換された芳香族またはヘテロ芳香族の5または6員環であり;
- Aは、2つの第一級アミノ基が除去された脂環式第一級ジアミン基であって、前記基はイソシアナート基と反応性を有する官能基を有していない。]
【請求項2】
Aは、ヒドロキシ基、第一級または第二級アミノ基、メルカプト基、ウレア基、及び活性水素を有するその他の基を含有していないことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリウレタンポリマーPは、少なくとも1つのポリオールと、少なくとも1つの脂環式ジイソシアナートとから調製されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリオールは、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールであり、特にポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、またはポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールであることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
脂環式ジイソシアナートは、シクロヘキサン1,3-ジイソシアナート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアナート、1-イソシアナート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナートメチルシクロヘキサン(IPDI)、ペルヒドロ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,4-ジイソシアナート-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン、2-メチル-1,3-ジイソシアナートシクロヘキサン、及び4-メチル-1,3-ジイソシアナートシクロヘキサンからなる群から選択される脂環式ジイソシアナートであり、特にIPDI、ペルヒドロ-2,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート及びペルヒドロ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナートであり、好ましくはIPDIであることを特徴とする、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
R1及びR2はそれぞれメチルであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
R3は水素原子であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
R4は、式(II)の基であり、式中、R5は、11〜30個の炭素原子を有するアルキル基であり、特に11個の炭素原子を有するアルキル基であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
R1及びR2基はそれぞれメチル基であり;
R3は水素原子であり;かつ
R4は式(II)の基であり、式中、R5は、11〜30個の炭素原子を有するアルキル基であり、特に11個の炭素原子を有するアルキル基であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
脂環式ジアルジミンは、式H2N-A-NH2で表される少なくとも1つの脂環式第一級ジアミンと、少なくとも1つの式(III):
【化3】

のアルデヒドとの縮合反応によって調製されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
脂環式第一級ジアミンは、1,2-ジアミノシクロヘキサン(DCH)、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(H12MDA)、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、2,2’-、2,4’-、及び4,4’-ジアミノビシクロヘキシル、2-及び4-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン、及び1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサンからなる群から選択され、特にDCH、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、IPDA、H12MDA、及びビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンであり、好ましくはIPDA及びH12MDAであることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ポリウレタンポリマーPの割合は、全組成物に対して、10〜95質量%、特に15〜80質量%であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
式(I)のジアルジミンのアルジミノ基と、ポリウレタンポリマーPのイソシアナート基との比率は、0.1〜1.1、特に0.15〜1.0、好ましくは0.2〜0.9の値を有することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物は少なくとも1つのフィラーを含んでおり、全組成物に対して、特に10〜70質量%の量、好ましくは20〜60質量%の量で含まれていることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
フィラーはカーボンブラック、特に、工業的に生産されたカーボンブラックであることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
フィラーは、硫酸バリウム(バライト)、微粉砕石英、または炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
フィラーは、難燃性のフィラーであり、特に水酸化物または水和物であり、好ましくはアルミニウムの水酸化物または水和物であり、より好ましくは水酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
組成物は室温においてセルフレベリング性であることを特徴とする、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の組成物と、水、特に空気中の湿気の形態での水とか反応することで得られる、硬化組成物。
【請求項20】
建設及び工業用途向けの接着剤、シーラント、及び/またはコーティングとしての、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項21】
基材S1と基材S2とを接着接合するための方法であって、
i) 請求項1乃至18のいずれか一項に記載の組成物を基材S1及び/または基材S2に適用する工程と、
ii) 適用した組成物を介して基材S1と基材S2とを接触させる工程と、
iii) 適用した組成物を、水、特に空気中の湿気の形態での水で硬化させる工程と
を含み、基材S1及びS2は、互いに同一であるかまたは互いに異なる、方法。
【請求項22】
i') 請求項1乃至18のいずれか一項に記載の組成物を、基材S1と基材S2との間に適用する工程と、
ii') 前記組成物を、水、特に空気中の湿気の形態での水で硬化させる工程と
を含み、基材S1及びS2は、互いに同一であるかまたは互いに異なる、シールをするための方法。
【請求項23】
コーティング、とりわけ床カバリングの製造方法であって、
i'') 請求項1乃至18のいずれか一項に記載の組成物を基材S1に適用する工程と、
ii'') 適用された前記組成物を、水、特に空気中の湿気の形態での水で硬化させる工程と
を含む、方法。
【請求項24】
基材S1及び/またはS2は、コンクリート、セメント、モルタル、煉瓦、タイル、石こう、天然石、アスファルト、金属、金属合金、木材、セラミック、ガラス、プラスチック、粉体塗装、塗料、及びラッカーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項21乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
基材S1及び/またはS2に下塗剤が施されていることを特徴とする、請求項21乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の組成物を適用するi'')の工程が連続して数回行われることを特徴とする、請求項23乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
シールを適用する工程を、組成物を適用する最後の工程i'')の後にさらに含むことを特徴とする、請求項23乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項21乃至27のいずれか一項に記載の方法によって、接着接合、シールリング、或いはコーティングされた物品。
【請求項29】
建物または、建設もしくは土木における建築構造体、工業用物品または一般消費物品、特に窓、室内用器具、または輸送モード、特に自動車、または自動車に取り付け可能な部品である、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
床面であり、特に建物または建造構造物の内部の床面である、請求項28に記載の物品。

【公表番号】特表2010−522789(P2010−522789A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500268(P2010−500268)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053631
【国際公開番号】WO2008/116900
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】