説明

脂肪物質及び金属イオン封鎖剤を含む、二成分からなる、ケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための剤

【課題】ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトのケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための、二成分型の剤を提供する。
【解決手段】ケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための剤であって、
・1又はそれ以上の塩基性化剤を含む第一の組成物(A);及び
・1又はそれ以上の酸化剤を含む第一の組成物(B)から構成され、
該2種の組成物(A)及び(B)の少なくとも一つが、如何なるカルボン酸官能基をも含まない、1種又はそれ以上の脂肪物質を含み、該組成物(A)及び(B)の混合物中の該脂肪物質の全量が、該混合物の全質量に対して、少なくとも20質量%に相当し、及び
該2種の組成物(A)及び(B)の少なくとも一つが、1又はそれ以上の、特定の金属イオン封鎖剤を含むことを特徴とする前記剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトのケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための、二成分型の剤に関するものである。
より正確には、本発明の課題の一つは、1種又はそれ以上の塩基性化剤及び場合により1種又はそれ以上の染料を含む第一の組成物(A)及び1種又はそれ以上の酸化剤を含む第二の組成物(B)で構成され、該2つの組成物(A)及び(B)の少なくとも一つが、1種又はそれ以上の、如何なるカルボン酸官能基をも含まない脂肪物質、及び1種又はそれ以上の金属イオン封鎖剤を含む、ケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための剤を提供することである。
本発明は、また本発明に係る該染色剤及び/又は脱色剤を含む、多区画デバイスにも関連する。
最後に、本発明の課題の一つは、本発明に係る該剤を使用する、ケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための方法を提供することである。
【背景技術】
【0002】
長い間、多くの人々が、その毛髪の色彩を変えようと試みており、また特に、該毛髪を脱色し、あるいは逆に、例えば白髪を隠蔽するために、毛髪を染色しようと試みてきた。
ケラチン繊維を染色するために、特に2つの型の染色法が開発されている。
その第一の型の染色法は、所謂「永久」染色又は酸化染色であり、そこでは、一般的には酸化塩基と呼ばれる、酸化染料プリカーサを含む染料組成物を使用する。これらの酸化塩基は、無色の又は僅かに着色した化合物であり、これらは酸化生成物と結合した場合に、酸化縮合過程によって、着色された化合物を生成し得る。
これらの酸化塩基によって得られる色合いは、これらとカプラー又は着色モデファイアーとの結合によって変えることができる。酸化塩基及びカプラーとして使用される様々な分子は、広い範囲に渡る色彩を得ることを可能とする。
【0003】
該第二の型の染色法は、「半永久」染色又は直接染色を呼ばれ、これは、該ケラチン繊維に対して、該繊維に対する親和性を持つ、着色された、かつ着色性の分子である、直接染料を適用し、所定期間そこに維持し、次いで該繊維をリンスすることからなる。
これらの着色を実施するために、一般的に使用される該直接染料は、ニトロベンゼン、アンスラキノン、ニトロピリジン、アゾ、キサンテン、アクリジン、アジン及びトリアリールメタンニトロ直接染料から選択される。
このタイプの方法は、その色を発現させるのに酸化剤の使用を必要としない。しかし、このような剤を、着色を伴う淡色化効果を得るために使用することが可能である。従って、これは淡色化条件下での、直接又は半永久染色法と呼ばれている。
従って、淡色化条件下での永久又は半永久染色方法は、大多数の場合において、該染料組成物と共に、少なくとも1種の酸化剤を含有する水性組成物を、アルカリpHの下で使用することを必要とする。
【0004】
ヒトのケラチン繊維を脱色するための従来の方法は、一般的にはアルカリ性pH条件において、少なくとも1種の酸化剤を含む水性組成物を使用することからなっている。この酸化剤の役割は、毛髪中のメラニンを分解することであり、これは、存在する該酸化剤の特性に依存して、多少とも顕著な該繊維の淡色化へと導く。従って、比較的僅かな淡色化を行うためには、該酸化剤は、一般的には過酸化水素である。より高い淡色化が必要な場合には、通常過酸化された塩、例えば過硫酸塩が、過酸化水素の存在下で使用される。
公知技術の染色及び脱色法を適用する際に遭遇する難点の一つは、これら方法がアルカリ性条件の下で使用されるという事実に起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒトケラチン繊維を染色及び/又は脱色する方法の性能を改善し、またアルカリ試薬及び酸化剤の使用に関連する該欠点を制限するために、該染料組成物中にかなりの量の、1種又はそれ以上の脂肪物質を使用することが提案されている。
しかし、脂肪物質に富む条件下で、アルカリ試薬を含む組成物及び酸化剤を含む組成物を混合する際に、該混合物の膨潤が、酸素の発生のために起る。
この現象は、これら成分の混合を、該繊維に適用する直前に行う場合、さらに一層不都合なものとなり、時間の経過に伴う該混合物の漸増的な膨潤は、該混合物の該繊維への適用を妨害し、かつその適用の正確性を低下させる。このことは、また染色及び/又は脱色の、貧弱な均一性をももたらす恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は、幾つかの特定の金属イオン封鎖剤の使用が、この膨潤現象を減じ、またケラチン繊維への適用中を含めて、時間が経過しても殆ど変化しない混合物を生成することを今や見出した。
そこで、本発明の目的の一つは、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトのケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための、二成分型剤を提供することにある。本発明の目的は、さらに本発明は、また本発明に係る該染色剤及び/又は脱色剤を含む、多区画デバイス及び本発明に係る該剤を使用する、ケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための方法を提供することにある。
従って、本発明は、ケラチン繊維を染色及び/又は脱色するための剤に係り、該剤は、以下の成分によって構成され:
・1又はそれ以上の塩基性化剤を含む第一の組成物(A);及び
・1又はそれ以上の酸化剤を含む第二の組成物(B)、
該2種の組成物(A)及び(B)の少なくとも一つが、如何なるカルボン酸官能基をも含まない、1種又はそれ以上の脂肪物質を含み、該組成物(A)及び(B)の混合物中の該脂肪物質の全量が、該混合物の全質量に対して、少なくとも20質量%に相当し、及び
該2種の組成物(A)及び(B)の少なくとも一つが、以下の一般式(I)で表される1又はそれ以上の金属イオン封鎖剤を含むことを特徴とする:
【0007】
【化1】

【0008】
ここで、
pは、0又は1に等しい整数であり;
n及びmは、相互に独立に、0、1又は2に等しい整数であり、和n+mは、少なくとも1に等しく;
R1、R2、R3及びR4は、相互に独立に、水素原子、基:-CH2CO2M1又は基:-CH(CO2M2)(CH2CO2M3)を表し;
Yは、基:NCH2CO2M4を表し;
M1〜M4は、相互に独立に、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属由来のカチオン、場合によりヒドロキシル化された有機アミン由来のカチオン、又はアンモニウムカチオンを表し;
但し、pが0である場合には、R1及びR3両者は、水素原子を表し、かつR2及びR4両者は、基:-CH(CO2M2)(CH2CO2M3)を表し、またpが1である場合には、n及びmは各々少なくとも1であることを条件とする。
本発明による該剤が、ケラチン繊維を染色するためのものである場合、該組成物(A)は、1又はそれ以上の酸化染料及び/又は1又はそれ以上の直接染料をも含む。
【0009】
逆に、本発明による該剤が、ケラチン繊維を単に脱色するためのものである場合、該組成物(A)及び(B)は、如何なる直接染料も如何なる酸化性染料(塩基及びカプラー)をも含まず、あるいはこれらが存在する場合には、その全含有率は、各組成物の質量に対して、0.005質量%を越えない。具体的には、このような含有率において、該組成物のみが染色され、即ち該ケラチン繊維に対する如何なる着色効果も観測されないであろう。
本発明による該染色及び/又は脱色剤は、該2種の組成物(A)及び(B)の混合中又はこれら2つの組成物を該ケラチン繊維に継続的に適用する際にも、経時により殆ど変化しない。従って、該剤は適用の容易性及び、とりわけ該染色及び/又は脱色の性能及び均一性に関して極めて良好な効能を示す。
さらに、染色を目的とする場合、本発明の該剤は、達成される染色力に関して特に効果的であり、また色度、及び同一の繊維の、あるいは様々に増感された繊維間の染色感度に関してとりわけ効果的である。
脱色を目的とする場合、本発明の剤は、既存の組成物、特に水酸化アンモニウムを主成分とする組成物によって達成されるものと等価な又はそれ以上の淡色化性能をも呈する。
本発明の剤は、またこれを調製する際、又はこれを繊維に適用する際における、刺激性の臭いの発生を制限するという利点をも持つ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のその他の特徴並びに利点は、以下に与えられる説明及び実施例を読むことにより一層明らかとなるであろう。
本明細書の以下の説明において、特に断らない限り、数値範囲の限界は、その範囲内に含まれる。
本発明の方法によって処置されるヒトケラチン繊維は、好ましくは毛髪である。
本発明によれば、該組成物(A)は、1種又はそれ以上の塩基性化剤を含む。
本発明の目的にとって該用語「塩基性化剤」は、該剤が組成物(A)に存在して、少なくとも0.05pH単位で、好ましくは少なくとも0.1pH単位でこの組成物のpHを増加させる全ての化合物を意味する。
該塩基性化剤は、特に無機又は有機塩基であってよい。
好ましくは、該塩基性化剤は、アンモニア水、アルカリ金属炭酸塩、アルカノールアミン及びその誘導体、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び以下の一般式(II)で表される化合物から選択される:
【0011】
【化2】

【0012】
ここで、Wは場合によりヒドロキシル基又はC1-C6アルキル基により置換されていてもよい、C1-C6アルキレン残基を表し;Rx、Ry、Rz及びRtは、同一又は異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル基、C1-C6ヒドロキシアルキル基、又はC1-C6アミノアルキル基を表す。
該式(II)の化合物の例としては、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、スペルミン及びスペルミジンを挙げることができる。
特に好ましい該塩基性化剤は、アルカノールアミン及び特にモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンである。
本発明の好ましい一変形において、該塩基性化剤はモノエタノールアミンである。
【0013】
特定の一態様によれば、該組成物(A)は、塩基性化剤として、少なくとも1種の有機アミン、及び好ましくは少なくとも1種のアルカノールアミンを含む。該組成物(A)が、アルカノールアミン及びアンモニア水又はその塩を含む数種の塩基性化剤を含む場合、該有機アミン又はアミン類は、好ましくは、質量基準で、該組成物(A)中に存在するアンモニアの量に対して、支配的である。
本発明の好ましい一態様によれば、該組成物(A)は、アンモニア水を全く含まない。
同様に好ましい本発明の一態様によれば、該組成物(A)が、アンモニア水又はその塩を含む場合、該組成物は、1種又はそれ以上のアルカノールアミンをも含み、また該組成物(A)内の該アルカノールアミンの質量%で表した量は、この同一の組成物中のアンモニアの質量%で表した量よりも多い。
一般に、該組成物(A)は、該組成物の質量に対して、0.1〜40質量%なる範囲、好ましくは0.5〜20質量%なる範囲の、塩基性化剤の含有率を持つ。
【0014】
好ましくは、該組成物(A)は、8に等しいかあるいはそれ以上のpH、及びより好ましくは8.5〜11.5なる範囲内のpH値を持つ。
このpH値は、また該塩基性化剤に加えて、1種又はそれ以上の酸性化剤を使用することによって、所定の値に調節することができる。
該酸性化剤としては、例えば無機又は有機酸、例えば塩酸、オルトリン酸又は硫酸;カルボン酸、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸又は乳酸;及びスルホン酸を挙げることができる。
本発明によれば、該組成物(B)は、1種又はそれ以上の酸化剤を含む。
この酸化剤は、ケラチン繊維の脱色及び酸化染色のために従来使用されていた酸化剤から選択することができ、その中で、過酸化水素、過酸化ウレア、アルカリ金属の臭素酸塩又はフェリシアン化物、及び過酸化された塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の過硫酸塩、過硼酸塩及び過炭酸塩を挙げることができる。また、場合により1種又はそれ以上の酸化還元酵素のドナー又は補因子の存在下における、前記酸化還元酵素、例えばラッカーゼ、パーオキシダーゼ及び2-電子オキシドレダクターゼ(例えば、ウリカーゼ)を、該酸化剤として使用することも可能である。
【0015】
過酸化水素の使用が、特に好ましい。これは、有利には水性溶液(過酸化水素水性溶液)として用いることができ、その濃度は、より特定的には、該組成物(B)の全質量に対して、0.1〜50質量%なる範囲、より一層好ましくは0.5〜20質量%なる範囲及びさらに一層好ましくは1〜15質量%なる範囲で変えることができる。
所望の脱色度に応じて、該酸化剤は、また好ましくは過酸化された塩から選択される、1種又はそれ以上の化合物をも含むことができる。
好ましくは、該組成物(B)のpH値は、7未満である。このpH値は、1種又はそれ以上の酸性化剤を用いることにより、所望の値に調節することができる。該酸性化剤は、特に前に記載したものから選択することができる。
本発明によれば、これら2つの組成物(A)及び(B)の一方及び/又は他方は、1種又はそれ以上の、上記式(I)で表される金属イオン封鎖剤を含む。
該一般式(I)において、M1〜M4は、相互に独立に、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属由来のカチオン、場合によりヒドロキシル化された有機アミン由来のカチオン、又はアンモニウムカチオンを表す。
【0016】
アルカリ金属カチオンの例としては、特にナトリウム(Na+)及びカリウム(K+)を挙げることができ;ルカリ土類金属カチオンの例としては、特にカルシウム(Ca2+)及びマグネシウム(Mg2+)を挙げることができる。
有機アミンのカチオンとしては、一級、二級又は三級アミンのカチオン、あるいはまたアルカノールアミンのカチオンを挙げることができる。
該アミンは、1種又はそれ以上のラジカルを含み、該ラジカルは、同一又は異なっていてもよく、直鎖又は分岐したC1-C20アルキル基又はヒドロキシアルキル型のラジカルであり得る。
好ましくは、M1〜M4は同一であり、またナトリウムカチオン又はカリウムカチオンを表す。
本発明によれば、特に好ましい該金属イオン封鎖剤は、以下に列挙するものである:
・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びその塩;及び
・エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)及びその塩。
これら2つの化合物の塩としては、アルカリ金属塩、及び特にナトリウム及びカリウム塩が好ましい。
【0017】
本発明によれば、該金属イオン封鎖剤は、該組成物(A)又は該組成物(B)あるいはこれら組成物両者中に存在し得る。
好ましい一態様によれば、該組成物(A)は、1又はそれ以上の上で定義した如き金属イオン封鎖剤を含む。
特定の一態様によれば、該金属イオン封鎖剤は、該組成物(A)においてのみ存在する。
該金属イオン封鎖剤が、該組成物(A)及び(B)の一方、他方又は両方の何れに存在しようとも、これら2つの組成物の混合物における上記式(I)の金属イオン封鎖剤の全量は、該2種の組成物(A)及び(B)の混合物の全質量に対して、有利には0.001〜10質量%なる範囲、好ましくは0.01〜5質量%なる範囲及びより一層好ましくは0.05〜1質量%なる範囲内にある。これら重量%は、該式(I)の化合物の酸型に対する値として表されている。
既に述べたように、該2種の組成物(A)及び(B)の少なくとも一つは、如何なるカルボン酸官能基をも含まない、1種又はそれ以上の脂肪物質を含み、該組成物(A)及び(B)の混合物におけるこのような脂肪物質の全量は、これら2つの組成物の混合物の全質量に対して、少なくとも20質量%に相当する。
【0018】
従って、該如何なるカルボン酸官能基をも含まない脂肪物質は、該組成物(A)又は該組成物(B)あるいはこれら組成物両者中に存在し得る。但し、該2つの組成物(A)及び(B)の混合物中に存在するこれら脂肪物質の全量は、該2つの組成物(A)及び(B)の混合物の全質量に対して、少なくとも20質量%に等しい。
好ましくは、該2つの組成物(A)及び(B)の混合物中に存在する該如何なるカルボン酸官能基をも含まない脂肪物質の全量は、該混合物の全量に対して、少なくとも25質量%に相当し、またより好ましくは少なくとも30質量%に相当する。
該組成物(A)及び(B)の混合物中に存在する、該如何なるカルボン酸官能基をも含まない脂肪物質の全量は、該混合物の全質量に対して、有利には90質量%に等しいか又はそれ以下、及び好ましくは70質量%に等しいか又はそれ以下である。
好ましい一態様によれば、該組成物(A)は、如何なるカルボン酸官能基をも含まない、1種又はそれ以上の脂肪物質を含む。
【0019】
本発明において、該用語「脂肪物質」とは、常温(25℃)及び大気圧(1.013×105Pa(760mmHg))において水に対して不溶性の有機化合物を意味する。即ち、該脂肪物質は、5%未満、好ましくは1%未満及びより一層好ましくは0.1%未満の、水に対する質量基準の溶解度を持つ有機化合物である。該脂肪物質は、その構造内に、少なくとも2つのシロキサン基又は少なくとも6個の炭素原子を含む炭化水素を基本とする鎖を持つ、少なくとも一つの配列を含む。さらに、該脂肪物質は、上記と同一の温度及び圧力条件下で、有機溶媒、例えばクロロホルム、エタノール、ベンゼン、液状石油ゼリー又はデカメチルシクロペンタシロキサンに対して、一般的に可溶性である。
本発明との関連で、水、特にアルカリ性媒体に対して幾分かの溶解度を示す、1又はそれ以上の末端カルボン酸官能基を含む脂肪物質、例えば脂肪酸は排除される。該用語「如何なるカルボン酸官能基をも含まない脂肪物質」とは、如何なる-COOH基又は如何なる-COO-基をも含まない脂肪物質を意味する。
本発明によれば、該如何なるカルボン酸官能基をも含まない脂肪物質は、室温及び大気圧において、液体又はペースト状態にある化合物、及び好ましくは液状化合物から選択される。
【0020】
該如何なるカルボン酸官能基をも含まない脂肪物質は、特に、C6-C16低級アルカン、無機物、植物、動物又は合成起源の非-シリコーン系オイル、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、非-シリコーン系ワックス及びシリコーンから選択される。
本発明の目的にとって、該脂肪アルコール及び脂肪酸は、より特定的には、直鎖又は分岐した、飽和又は不飽和の、6〜30個の炭素原子を含む、場合により、特に1種又はそれ以上の(特に1〜4個の)ヒドロキシル基で置換された、1又はそれ以上の炭化水素を基本とする基を含むことを指摘しておくべきである。これらが不飽和である場合、これら化合物は、1〜3個の共役又は非-共役の炭素-炭素二重結合を含むことができる。
上記C6-C16低級アルカンに関連して、これらは、直鎖又は分岐しており、又は環式であってもよいアルカンである。列挙可能なその例は、ヘキサン、ドデカン及びイソパラフィン、例えばイソヘキサデカン及びイソデカンを含む。
【0021】
本発明の組成物において使用できる、無機物、植物、動物又は合成起源のオイルとして列挙可能な例は、以下のものを包含する:
・動物起源の炭化水素を基本とするオイル、例えばパーヒドロスクアレン;
・植物又は合成起源のトリグリセライドオイル、例えば6〜30個の炭素原子を含む、液状脂肪酸トリグリセライド、例えばヘプタン酸又はオクタン酸トリグリセライド、あるいはまた、例えばヒマワリ油、玉蜀黍油、大豆油、インゲン豆オイル、グレープシード油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、杏仁油、マカダミアナッツ油、アララ(arara)油、蓖麻子油、アボカド油、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセライド、例えばステアリナリーデュボア(Stearineries Dubois)社により市販されているもの、又はダイナマイトノーベル(Dynamit Nobel)社によりミグリオール(MiglyolTM) 810、812及び818なる名称の下に市販されているもの、ホホバ油及びシアバターオイル等;
・16を越える炭素原子を含む無機物又は合成起源の直鎖又は分岐した炭化水素、例えば流動パラフィン、石油ゼリー、液状石油ゼリー、ポリデセン、及び水添ポリイソブテン、例えばパーリーム(ParleamTM);
・フッ素化オイル、例えばBNFLフルオロケミカルズ(BNFL Fluorochemicals)社によりフルテック(FLUTECTM) PC1及びフルテック(FLUTECTM) PC3なる名称の下に市販されている、パーフルオロメチルシクロペンタン及びパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン;パーフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン;パーフルオロアルカン、例えば3M社によりPF 5050TM及びPF 5060TMなる名称の下に市販されている、ドデカフルオロペンタン及びテトラデカフルオロヘキサン;又はアトケム(Atochem)社によりフォラルキル(FORALKYLTM)なる名称の下に市販されている、ブロモパーフルオロオクチル;ノナフルオロメトキシブタン及びノナフルオロエトキシイソブタン;パーフルオロモルホリン誘導体、例えば3M社によりPF 5052TMなる名称の下に市販されている、4-トリフルオロメチルパーフルオロモルホリン。
【0022】
本発明において使用するのに適した該脂肪アルコールは、より特定的には、8〜30個の炭素原子を持つ、直鎖又は分岐した、飽和又は不飽和のアルコールから選択される。その例としては、例えばセチルアルコール、ステアリルアルコール及びその混合物(セチルステアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレインアルコール又はリノールアルコールを挙げることができる。
有利には、上記トリグリセライドとは異なる、脂肪酸及び/又は脂肪アルコールのエステルに関連して、特に飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐したC1-C26脂肪族モノ-又は多酸の、及び飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐したC1-C26脂肪族モノ-又は多価アルコールのエステルを挙げることができ、該エステルの全炭素原子数は、10に等しいかそれ以上である。
【0023】
モノエステルとしては、ジヒドロアビエチルベヘネート;オクチルドデシルベヘネート;イソセチルベヘネート;セチルラクテート;C12-C15アルキルラクテート;イソステアリルラクテート;ラウリルラクテート;リノレイルラクテート;オレイルラクテート;(イソ)ステアリルオクタノエート;イソセチルオクタノエート;オクチルオクタノエート;セチルオクタノエート;デシルオレエート;イソセチルイソステアレート;イソセチルラウレート;イソセチルステアレート;イソデシルオクタノエート;イソデシルオレエート;イソノニルイソノナノエート;イソステアリルパルミテート;メチルアセチルリシノレエート;ミリスチルステアレート;オクチルイソノナノエート;2-エチルヘキシルイソノネート;オクチルパルミテート;オクチルペラルゴネート;オクチルステアレート;オクチルドデシルエルケート;オレイルエルケート;エチル及びイソプロピルパルミテート;2-エチルヘキシルパルミテート;2-オクチルデシルパルミテート;アルキルミリステート、例えばイソプロピル、ブチル、セチル、2-オクチルドデシル、ミリスチル又はステアリルミリステート;ヘキシルステアレート;ブチルステアレート;イソブチルステアレート;ジオクチルマレエート;ヘキシルラウレート;2-ヘキシルデシルラウレートを挙げることができる。
さらにこの変形の範囲内において、C4-C22ジ-又はトリ-カルボン酸と、C1-C22アルコールとのエステル及びモノ-、ジ-又はトリ-カルボン酸と、C2-C26ジ-、トリ-、テトラ-又はペンタ-ヒドロキシアルコールとのエステルを使用することも可能である。
【0024】
特に、以下に列挙するものを例示することができる:ジエチルセバケート;ジイソプロピルセバケート;ジイソプロピルアジペート;ジ-n-プロピルアジペート;ジオクチルアジペート;ジイソステアリルアジペート;ジオクチルマレエート;グリセリルウンデシレネート;オクチルドデシルステアロイルステアレート;ペンタエリスリチルモノリシノレエート;ペンタエリスリチルテトライソノナノエート;ペンタエリスリチルテトラペラルゴネート;ペンタエリスリチルテトライソステアレート;ペンタエリスリチルテトラオクタノエート;プロピレングリコールジカプリレート;プロピレングリコールジカプレート;トリデシルエルケート;トリイソプロピルシトレート;トリイソステアリルシトレート;グリセリルトリラクテート;グリセリルトリオクタノエート;トリオクチルドデシルシトレート;トリオレイルシトレート;プロピレングリコールジオクタノエート;ネオペンチルグリコールジヘプタノエート;ジエチレングリコールジイサノネート;及びポリエチレングリコールジステアレート。
上記エステルとしては、以下のものを使用することが好ましい:エチル、イソプロピル、ミリスチル、セチル又はステアリルパルミテート、2-エチルヘキシルパルミテート、2-オクチルデシルパルミテート、アルキルミリステート、例えばイソプロピル、ブチル、セチル又は2-オクチルドデシルミリステート、ヘキシルステアレート、ブチルステアレート、イソブチルステアレート、ジオクチルマレート、ヘキシルラウレート、2-ヘキシルデシルラウレート及びイソノニルイソノナノエート、セチルオクタノエート。
【0025】
本発明の組成物は、また脂肪エステルとして、C6-C30及び好ましくはC12-C22脂肪酸の糖とのエステル及びジエステルを含むこともできる。ここで、「糖」とは、数個のアルコール官能基を持ち、アルデヒド又はケトン官能基を持つ又は持たない、また少なくとも4個の炭素原子を持つ、酸素-含有炭化水素を基本とする化合物を意味する。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖であり得る。
適当な糖としては、例えばスクロース(又はサッカロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フルクトース、マルトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、及びこれらの誘導体、特にアルキル化誘導体、例えばメチルグルコース等のメチル化誘導体を挙げることができる。
該脂肪酸の糖エステルは、特に前に記載した糖と、C6-C30及び好ましくはC12-C22の、直鎖又は分岐した、飽和又は不飽和の脂肪酸とのエステル又はエステル混合物を含む群から選択することができる。これらが不飽和である場合、これら化合物は、共役又は非-共役の、1〜3個の炭素-炭素二重結合を含むことができる。
【0026】
本態様による該エステルは、またモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-エステル及びポリエステル及びこれらの混合物から選択することができる。
これらのエステルは、例えばオレエート、ラウレート、パルミテート、ミリステート、ベヘネート、ココエート、ステアレート、リノレエート、リノレネート、カプレート及びアラキドネート、又はこれらの混合物、例えば特にオレオ-パルミテート、オレオ-ステアレート及びパルミト-ステアレート混合エステルであり得る。
より詳しくは、モノ-及びジエステルを使用することが好ましく、また特にスクロース、グルコース又はメチルグルコースのモノ又はジ-オレエート、ステアレート、ベヘネート、オレオ-パルミテート、リノレエート、リノレネート及びオレオ-ステアレートが使用することが好ましい。
例えば、メチルグルコースジオレエートである、アマーコール(Amerchol)社によりグルケート(GlucateTM) DOなる名称の下で市販されている製品を挙げることができる。
【0027】
また、列挙することのできる、糖と脂肪酸とのエステル又はエステル混合物の例としては、以下のようなものである:
・クロデスタ(Crodesta)社により、F160、F140、F110、F90、F70及びSL40なる名称の下で市販されている製品、これらは夫々73%のモノエステル及び27%のジ-及びトリ-エステル、61%のモノエステル及び39%のジ-、トリ-及びテトラ-エステル、52%のモノエステル及び48%のジ-、トリ-及びテトラ-エステル、45%のモノエステル及び55%のジ-、トリ-及びテトラ-エステル、39%のモノエステル及び61%のジ-、トリ-及びテトラ-エステルから形成されたスクロースのパルミトステアレート、及びスクロースモノラウレートであるとされている;
・例えば、参照番号B370が付され、また20%のモノエステル及び80%のジ/トリ-エステル/ポリエステルから製造されたスクロースベヘネートに相当する、リョウトウシュガーエステル(Ryoto Sugar Esters)なる名称の下で市販されている製品;及び
・ゴールドシュミット(Goldschmidt)社によりテゴソフト(TegosoftTM) PSEなる名称の下に市販されている、スクロースモノ/ジパルミトステアレート。
【0028】
上記非-シリコーン系ワックス又はワックス類は、特にカルナウバロウ、キャンデリラロウ、エスパルトガラスワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、植物ワックス、例えばオリーブワックス、ライスワックス、水添ホホバワックス、又は花の無水ワックス、例えばベルタン(BERTIN)(フランス)社により市販されているクロフサスグリの花の精ワックス、動物性ワックス、例えばミツロウ、又は変性ミツロウ[セラベリナ(Cera Bellina)]から選択され;本発明に従って使用できる他のワックス又はワックス性原料物質は、特に海洋性ワックス、例えばソフィム(SOPHIM)社によりM82なる名称の下で市販されているもの、ポリエチレン又は一般的にはポリオレフィンのワックスである。
本発明において使用できる上記シリコーンは、揮発性又は不揮発性の、環状、直鎖又は分岐鎖の、未変性又は有機基で変性され、5×10-6〜2.5m2/sなる範囲及び好ましくは1×10-5〜1m2/sなる範囲の25℃における粘度を持つシリコーンである。
本発明に従って使用できる該シリコーンは、オイル、ワックス、樹脂又はガム状態にあるものであり得る。
【0029】
好ましくは、該シリコーンは、ポリジアルキルシロキサン、特にポリジメチルシロキサン(PDMS)、及びポリ(オキシアルキレン)基、アミノ基及びアルコキシ基から選択される少なくとも一つの官能基を含む有機-変性ポリシロキサンから選択される。
該オルガノポリシロキサンは、Walter NOLLの「シリコーンに関する化学及び技術(Chemistry and Technology of Silicones)」と題する研究(1968),アカデミックプレス(Academic Press)刊においてより詳細に定義されている。これらは、揮発性又は不揮発性であり得る。
これらが揮発性である場合、該シリコーンは、より特定的には、60〜260℃なる範囲内の沸点を持つシリコーンから選択され、またより一層具体的には以下に列挙するものから選択される:
(i) 3〜7個、好ましくは4〜5個のケイ素原子を持つ環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば特にユニオンカーバイド(UNION CARBIDE)社によりボラタイルシリコーン(VOLATILE SILICONETM) 7207又はロディア(RHODIA)社によりシルビオン(SILBIONETM) 70045 V2なる名称の下で市販されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、ユニオンカーバイド社によりボラタイルシリコーン(VOLATILE SILICONETM) 7158及びロディア社によりシルビオン(SILBIONETM) 70045 V5なる名称の下で市販されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びこれらの混合物である。
同様に、以下の式で表される、ユニオンカーバイド社により市販されている、ボラタイルシリコーン(VOLATILE SILICONETM) FZ3109等のジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン型のシクロコポリマーを挙げることができ:
【0030】
【化3】

【0031】
また、環状ポリジアルキルシロキサンと有機珪素化合物との混合物、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物を挙げることができ;
(ii) 2〜9個のケイ素原子を含み、かつ5×10-6m2/sに等しいか又はそれ未満の25℃における粘度を持つ、直鎖で揮発性のポリジアルキルシロキサン。その一例は、特にトーレシリコーン(TORAY SILICONE)社によりSH 200なる名称の下で市販されている、デカメチルテトラシロキサンである。この範疇に属するシリコーンは、コスメチックス&トワレトリーズ(Cosmetics and Toiletries), Vol.91, 1976,1月, pp.27-32, トッド&バイエルス(TODD & BYERS)「化粧品用の揮発性シリコーン流体(Volatile Silicone fluids for cosmetics)」において公開された文献にも記載されている。
不揮発性ポリジアルキルシロキサン、ポリジアルキルシロキサンのガム及び樹脂、上記の有機官能基によって変性されたポリオルガノシロキサン、及びこれらの混合物を使用することが好ましい。
【0032】
これらシリコーンは、より特定的には、ポリジアルキルシロキサンから選択され、なかでも主としてトリメチルシリル末端基を持つポリジメチルシロキサンを挙げることができる。該シリコーンの粘度は、標準規格ASTM 445アペンディックス(Appendix) Cに従って測定される。
これらのポリジアルキルシロキサンとしては、非-限定例として、以下に列挙する市販品を挙げることができる:
・ロディア社により市販されている、シルビオン(SILBIONETM)オイルシリーズ47及び70 047又はミラシル(MIRASILTM)オイル、例えばオイル70 047 V 500 000;
・ロディア社により市販されている、ミラシル(MIRASILTM)シリーズのオイル;
・ダウコーニング社により市販されている、200シリーズのオイル、例えば粘度60 000mm2/sを持つDC200;
・ゼネラルエレクトリック(GENERAL ELECTRIC)社から入手できる、ビスカシル(VISCASILTM)オイル及びゼネラルエレクトリック社から入手できる、幾つかのSFシリーズのオイル(SF 96、SF 18)。
また、ジメチコノール(Dimethiconol)(CTFA)なる名称の下で知られている、ジメチルシラノール末端基を持つポリジメチルシロキサン、例えばロディア社から入手できる、48シリーズのオイルを挙げることもできる。
【0033】
この範疇のポリジアルキルシロキサンにおいては、またゴールドシュミット社によりアビルワックス(ABIL WAX TM) 9800及び9801なる名称の下に市販されている製品を挙げることもでき、これはポリ(C1-C20)ジアルキルシロキサンである。
本発明により使用できる該シリコーンガムは、特にポリジアルキルシロキサン、及び好ましくは200,000〜1,000,000なる範囲の高い数平均分子量をもつ、溶媒中で単独で又は混合物として使用される、ポリジメチルシロキサンである。該溶媒は、揮発性シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)オイル、ポリフェニルメチルシロキサン(PPMS)オイル、イソパラフィン、ポリイソブチレン、塩化メチレン、ペンタン、ドデカン及びトリデカン又はこれらの混合物から選択することができる。
本発明により使用できるより具体的な製品は、以下に列挙するような混合物である:
・連鎖末端がヒドロキシル化されている、ポリジメチルシロキサン、又はジメチコノール(CTFA)及びシクロメチコーン(CTFA)とも呼ばれる環状ポリジメチルシロキサン、例えばダウコーニング社により市販されている製品Q2 1401から生成された混合物;
・ポリジメチルシロキサンガム及び環状シリコーンから生成された混合物、例えばゼネラルエレクトリック社からの製品SF 1214シリコーンフルード(SILICONE FLUID)。ここで該製品は、デカメチルシクロペンタシロキサンに相当するオイルSF 1202シリコーンフルード中に溶解された、数平均分子量500,000を持つ、ジメチコーンに相当するSF 30ガムである;
・異なる粘度を持つ2種のPDMSの混合物、及びより具体的には、PDMSガムとPDMSオイルとの混合物、例えばゼネラルエレクトリック社から入手できる製品SF 1236。該製品SF 1236は、20 m2/sなる粘度を持つ、上で定義したSE 30ガムと、5×10-6m2/sなる粘度を持つSF 96オイルとの混合物である。この製品は、好ましくは15%のSE 30ガム及び85%のSF 96オイルを含む。
【0034】
本発明により使用できる該オルガノポリシロキサンの樹脂は、以下のような単位を含む、架橋されたシロキサン系である:
R2SiO2/2、R3SiO1/2、RSiO3/2及びSiO4/2
ここで、Rは、1〜16個の炭素原子を持つアルキル基を表す。これらの製品として特に好ましいものは、RがC1-C4低級アルキル基、より具体的にはメチル等を表すものである。
これらの樹脂としては、ダウコーニング(DOW CORNING) 593なる名称の下で市販されているもの、又はゼネラルエレクトリック社によりシリコーンフルード(SILICONE FLUID) SS 4230及びSS 4267なる名称の下で市販されているものを挙げることができ、これらは、ジメチル/トリメチルシロキサン構造を持つシリコーンである。
同様に、トリメチルシロキシシリケート型の樹脂、特にシン-エツ(SHIN-ETSU)社によりX22-4914、X21-5034及びX21-5037なる名称の下に市販されている樹脂を挙げることができる。
本発明に従って使用できる該有機変性シリコーンは、前に定義したような、またその構造内に、炭化水素を基本とする基を介して結合された、1又はそれ以上の有機官能基を含むシリコーンである。
上記したシリコーンとは別に、該有機変性シリコーンは、ポリジアリールシロキサン、特に前に述べた有機官能基で官能化された、ポリジフェニルシロキサン、及びポリアルキルアリールシロキサンであり得る。
【0035】
ポリアルキルアリールシロキサンは、特に25℃において1×10-5〜5×10-2m2/sなる範囲の粘度を持つ、直鎖及び/又は分岐したポリジメチル/メチルフェニルシロキサン及びポリジメチル/ジフェニルシロキサンから選択される。
これらのポリアルキルアリールシロキサンとしては、例えば以下に列挙するような名称の下に市販されている製品を挙げることができる:
・ロディア社からのシルビオン(SILBIONETM)オイルシリーズ70 641;
・ロディア社からのオイル、ロドルシル(RHODORSILTM)シリーズ70 633及び763;
・ダウコーニング社からのオイル、ダウコーニング(DOW CORNING) 556コスメティックグレードフルード(COSMETIC GRADE FLUID);
・バイエル(BAYER)社からのPKシリーズのシリコーン、例えば製品PK20;
・バイエル社からのPN及びPHシリーズのシリコーン、例えば製品PN1000及びPH1000;
・ゼネラルエレクトリック社からのSFシリーズの幾つかのオイル、例えばSF1023、SF1154、SF1250及びSF1265。
【0036】
有機変性シリコーンとしては、以下に列挙するものを含むポリオルガノシロキサンを挙げることができる:
・置換又は無置換のアミノ基、例えばジェネシー(GENESEE)社によりGP 4シリコーンフルード(Silicone Fluid)及びGP 7100なる名称の下に市販されている製品又はダウコーニング社によりQ2 8220及びダウコーニング(DOW CORNING) 929又は939なる名称の下に市販されている製品。該置換アミノ基は、特にC1-C4アミノアルキル基である;
・アルコキシル化された基、例えばSWSシリコーンズ(SILICONES)社によりシリコーンコポリマー(SILICONE COPOLYMER) F-755及びゴールドシュミット社からアビルワックス(ABIL WAXTM) 2428、2434及び2440なる名称の下に市販されている製品。
好ましくは、該脂肪物質は、如何なるオキシアルキレン単位又は如何なるグリセロール化単位をも含まない。
如何なるカルボン酸官能基をも含まない該脂肪物質は、C6-C16低級アルカン、鉱物、植物又は合成起源の非-シリコーン系オイル、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル及びシリコーンから選択される。
好ましくは、本発明の組成物の該脂肪物質は、非-シリコーン系のものである。
好ましい一態様によれば、該脂肪物質は、液状石油ゼリー、ポリデセン、及び脂肪酸及び/又は脂肪アルコールの液状エステル、及びこれらの混合物から選択される。
一特定の好ましい態様によれば、該脂肪物質は、液状石油ゼリーである。
本発明による該組成物(A)及び/又は(B)は、さらに1種又はそれ以上の界面活性剤を含むことができる。
この場合、該界面活性剤又は界面活性剤類は、好ましくはノニオン性界面活性剤、又はアニオン性界面活性剤から選択される。
【0037】
該アニオン性界面活性剤は、より特定的には、以下の化合物の塩(とりわけ、アルカリ金属、特にナトリウムの塩、アンモニウム塩、アミンの塩、例えばアミノアルコールの塩又はマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩)から選択される:
・アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルアミドエーテルサルフェート、アルキルアリールポリエーテルサルフェート、モノグリセライド硫酸塩;
・アルキルスルホネート、アルキルアミドスルホネート、アルキルアリールスルホネート、α-オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート;
・アルキルホスホネート、アルキルエーテルホスホネート;
・アルキルスルホサクシネート、アルキルエーテルスルホサクシネート、アルキルアミドスルホサクシネート、アルキルスルホサクシナメート;
・アルキルスルホアセテート;
・アシルサルコシネート、アシルイセチオネート及びN-アシルタウレート;
・脂肪酸、例えばオレイン酸、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ココナッツオイル酸又は水添ココナッツオイル酸等の塩;
・アルキル-D-ガラクトシドのウロン酸塩;
・アシルラクチレート;
・ポリオキシアルキレン化アルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシアルキレン化アルキルアリールエーテルカルボン酸、ポリオキシアルキレン化アルキルアミドエーテルカルボン酸、特に2〜50個のエチレンオキサイド基を持つものの塩;及び
・これらの混合物。
【0038】
これら様々な化合物のアルキル基又はアシル基は、有利には6〜24個の炭素原子及び好ましくは8〜24個の炭素原子を含み、該アリール基は、好ましくはフェニル基又はベンジル基を表すことに注意すべきである。
該ノニオン性界面活性剤は、より特定的には、上記のノニオン性界面活性剤とは異なるモノ-又はポリオキシアルキレン化された、又はモノ-又はポリグリセロール化された、ノニオン性界面活性剤から選択される。該オキシアルキレン単位は、より具体的にはオキシエチレン又はオキシプロピレン単位、又はこれらの組合せであり、好ましくはオキシエチレン単位である。
オキシアルキレン化ノニオン性界面活性剤の例としては、以下に列挙するものを挙げることができる:
・オキシアルキレン化(C8-C24)アルキルフェノール;
・飽和又は不飽和で、直鎖又は分岐鎖の、オキシアルキレン化された、C8-C30アルコール;
・飽和又は不飽和で、直鎖又は分岐鎖の、オキシアルキレン化C8-C30アミド;
・飽和又は不飽和で、直鎖又は分岐鎖の、C8-C30酸とポリエチレングリコールとのエステル;
・飽和又は不飽和で、直鎖又は分岐鎖の、C8-C30酸とソルビトールとのポリオキシエチレン化エステル;
・飽和又は不飽和の、オキシエチレン化植物オイル;
・特に、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの縮合体;及び
・これらの混合物。
【0039】
これらの界面活性剤は、1〜100なる範囲、好ましくは2〜50なる範囲のモル数の、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを含む。有利には、該ノニオン性界面活性剤は、オキシプロピレン単位を含まない。
本発明の好ましい一態様によれば、該オキシアルキレン化ノニオン性界面活性剤は、オキシエチレン化C8-C30アルコール、飽和又は不飽和で、直鎖又は分岐鎖の、C8-C30酸とソルビトールとのポリオキシエチレン化エステルから選択される。
モノ-又はポリグリセロール化ノニオン性界面活性剤の例としては、モノ-又はポリグリセロール化C8-C40アルコールが、好ましく使用される。
特に、該モノ又はポリグリセロール化C8-C40アルコールは、以下の一般式に相当するものである:
RO-[CH2-CH(CH2OH)-O]m-H
ここで、Rは、直鎖又は分岐した、C8-C40、好ましくはC8-C30アルキル基又はアルケニル基を表し、またmは、1〜30なる範囲及び好ましくは1〜10なる範囲内の数を表す。
【0040】
本発明との関連において適した化合物の例としては、4モルのグリセロールを含むラウリルアルコール(INCI名:ポリグリセリル-4ラウリルエーテル(POLYGLYCERYL-4 LAURYL ETHER))、1.5モルのグリセロールを含むラウリルアルコール、4モルのグリセロールを含むオレインアルコール(INCI名:ポリグリセリル-4オレイルエーテル(POLYGLYCERYL-4 OLEYL ETHER))、2モルのグリセロールを含むオレインアルコール(INCI名:ポリグリセリル-2オレイルエーテル(POLYGLYCERYL-2 OLEYL ETHER))、2モルのグリセロールを含むセテアリルアルコール、6モルのグリセロールを含むセテアリルアルコール、6モルのグリセロールを含むオレオセチルアルコール、及び6モルのグリセロールを含むオクタデカノールを挙げることができる。
該アルコールは、該mの値が、丁度統計値を表すような、アルコールの混合物に相当するものであり得、このことは、市販の製品においては、数種のポリグリセロール化脂肪アルコールが、混合物として共存できることを示している。
該モノ-又はポリグリセロール化アルコールとしては、より一層好ましく使用されるものは、特に1モルのグリセロールを含むC8/C10アルコール、1モルのグリセロールを含むC10/C12アルコール、及び1.5モルのグリセロールを含むC12アルコールである。
本発明によれば、1種又はそれ以上のノニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0041】
好ましい一態様によれば、該組成物(A)は、1種又はそれ以上の界面活性剤を含む。
該界面活性剤又は界面活性剤類は、これらが含まれている各組成物の全質量に対して、0.1〜50質量%なる範囲及び好ましくは0.5〜30質量%なる範囲の割合で存在し得る。
本発明による該組成物(A)及び/又は(B)は、また親有機性クレイ、ヒュームドシリカ、又はこれらの混合物から選択される、1種又はそれ以上の無機増粘剤をも含むことができる。
該親有機性クレイは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト及びセピオライト、並びにこれらの混合物から選択することができる。該クレイは、好ましくはベントナイト又はヘクトライトである。
これらのクレイは、四級アミン、三級アミン、アミノアセテート、イミダゾリン、アミン型ソープ、脂肪硫酸塩、アルカリールスルホネート、アミンオキサイド、及びこれらの混合物から選択される化合物で変性することができる。
【0042】
該親有機性クレイとしては、クオータニウム(quaternium)-18ベントナイト、例えばレオックス(Rheox)社によりベントン(Bentone) 3、ベントン38、ベントン38V、ユナイテッドキャタリスト(United Catalyst)社によりチキソゲル(Tixogel) VP、サザンクレイ(Southern Clay)社によりクレイトン(Claytone) 34、クレイトン40及びクレイトンXLなる名称の下で市販されているもの;ステアラルコニウム(stearalkonium)ベントナイト、例えばレオックス社によりベントン27、ユナイテッドキャタリスト社によりチキソゲルLG、サザンクレイ社によりクレイトンAF及びクレイトンAPAなる名称の下で市販されているもの;クオータニウム-18/ベンザルコニウムベントナイト、例えばサザンクレイ社によりクレイトンHT及びクレイトンPSなる名称の下で市販されているものを挙げることができる。
上記ヒュームドシリカは、酸水素炎中で、揮発性ケイ素化合物を高温加水分解して、微粉砕されたシリカを生成することにより得ることができる。この方法は、特に親水性シリカを与え、これはその表面上に多数のシラノール基を持つ。このような親水性シリカは、例えばデグッサ(Degussa)社によりエーロシル(AEROSIL) 130TM、エーロシル200TM、エーロシル255TM、エーロシル300TM及びエーロシル380TM、及びカボット(Cabot)社によりカブ-O-シル(CAB-O-SIL) HS-5TM、カブ-O-シルEH-5TM、カブ-O-シルLM-130TM、カブ-O-シルMS-55TM及びカブ-O-シルM-5TMなる名称の下で市販されている。
【0043】
シラノール基の数を減じるために、該シリカの表面を、化学反応によって化学的に変性することが可能である。特に、シラノール基を、疎水性の基で置換することができる。このようにして、疎水性シリカが得られる。
該疎水性の基は、以下に列挙するものであり得る:
・トリメチルシロキシル基、これは特にヘキサメチルジシラザンの存在下で、ヒュームドシリカを処理することによって得られる。このようにして処理されたシリカは、CTFA(第6版、1995)によれば「シリカシリレート(Silica silylate)」と呼ばれている。これらは、例えばデグッサ社によりエーロシル(AEROSIL) R812TM、カボット社によりカブ-O-シル(CAB-O-SIL) TS-530TMなる名称の下に市販されている。
・ジメチルシリルオキシ又はポリジメチルシロキサン基、これらは特にポリジメチルシロキサン又はジメチルジクロロシランの存在下で、ヒュームドシリカを処理することによって得られる。このようにして処理されたシリカは、CTFA(第6版、1995)によれば「シリカジメチルシリレート(Silica dimethyl silylate)」と呼ばれている。これらは、例えばデグッサ社によりエーロシル(AEROSIL) R972TM及びエーロシルR974TM、及びカボット社によりカブ-O-シル(CAB-O-SIL) TS-610TM、カブ-O-シルTS-720TMなる名称の下に市販されている。
【0044】
該ヒュームドシリカは、好ましくはナノメートルからマイクロメートルなる範囲、例えば約5〜200nmなる範囲の粒径を持つ。
該好ましい無機増粘剤は、ヘクトライト、有機変性ベントナイト、及び場合により変性されたヒュームドリカから選択される。
該無機増粘剤が存在する場合、該無機増粘剤は、このものが存在する該組成物の全質量に対して、1〜30質量%なる範囲の量に相当する。
本発明による該組成物(A)及び/又は(B)は、また1種又はそれ以上の有機増粘剤を含むことができる。
これらの増粘剤は、脂肪酸のアミド(ココナッツのモノエタノールアミド又はジエタノールアミド、オキシエチレン化カルボン酸モノエタノールアミドアルキルエーテル)、ポリマー増粘剤、例えばセルロース系増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシメチルセルロース)、グアーガム及びその誘導体(ヒドロキシプロピルグアー)、微生物起源のガム(ザンタンガム、スクレログルカンガム)、アクリル酸又はアクリルアミドプロパンスルホン酸の架橋されたホモポリマー、及び会合性ポリマー(水性媒体中で相互に又は他の分子と可逆的に結合できる親水性領域及び疎水性領域(少なくとも10個の炭素原子を含むアルキル、アルケニル)を含むポリマー)から選択することができる。
【0045】
特定の一態様によれば、該有機増粘剤は、セルロース系増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシメチルセルロース)、グアーガム及びその誘導体(ヒドロキシプロピルグアー)、微生物起源のガム(ザンタンガム、スクレログルカンガム)、アクリル酸又はアクリルアミドプロパンスルホン酸の架橋されたホモポリマー、及び好ましくはセルロース系増粘剤から選択され、及び特にヒドロキシエチルセルロースである。
該有機増粘剤が存在する場合、これらの含有率は、通常、このものが存在する各組成物の質量に対して、0.01〜20質量%なる範囲、及び好ましくは0.1〜5質量%なる範囲内にある。
有利には、該組成物(A)は、ゲル又はクリームの形状にある。
有利には、該組成物(B)は、溶液、エマルション又はゲルの形状にある。
本発明の第一の態様によれば、該組成物(A)は、さらに1種又はそれ以上の酸化染料をも含む。
この場合、有利には、本発明の剤を、ケラチン繊維の酸化染色のために使用する。
【0046】
この態様では、該組成物(A)は、さらに1種又はそれ以上の直接染料をも含むことができる。
本発明の第二の態様によれば、該該組成物(A)は、さらに1種又はそれ以上の直接染料をも含む。
この場合及び該組成物(A)が酸化染料を含まない場合、有利には、本発明の剤は、淡色化を伴う、ケラチン繊維の直接染色のために使用される。
一般に、本発明において使用できる該酸化染料は、場合により1種又はそれ以上のカプラーと組合せて使用される、酸化塩基から選択される。
該酸化塩基は、特にp-フェニレンジアミン、ビス-フェニルアルキレンジアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、ヘテロ環式塩基及びその付加塩から選択することができる。
【0047】
p-フェニレンジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、p-トリレンジアミン、2-クロロ-p-フェニレンジアミン、2,3-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,6-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,6-ジエチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジプロピル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-N,N-ジエチル-3-メチルアニリン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、4-N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-メチルアニリン、4-N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-クロロアニリン、2-β-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、2-フルオロ-p-フェニレンジアミン、2-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-(β-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシメチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-3-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-N-(β-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、N-(β,γ-ジヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、N-(4'-アミノフェニル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、2-β-ヒドロキシエチルオキシ-p-フェニレンジアミン、2-β-アセチルアミノエチルオキシ-p-フェニレンジアミン、N-(β-メトキシエチル)-p-フェニレンジアミン、4-アミノフェニルピロリジン、2-チエニル-p-フェニレンジアミン、2-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-アミノトルエン及び3-ヒドロキシ-1-(4'-アミノフェニル)ピロリジン、及びこれらの酸との付加塩を挙げることができる。
【0048】
上記p-フェニレンジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、p-トリレンジアミン、2-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、2-β-ヒドロキシエトキシ-p-フェニレンジアミン、2-β-ヒドロキシエチルオキシ-p-フェニレンジアミン、2,6-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,6-ジエチル-p-フェニレンジアミン、2,3-ジメチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-クロロ-p-フェニレンジアミン及び2-β-アセチルアミノエチルオキシ-p-フェニレンジアミン、及びこれらの酸との付加塩類が、好ましく使用される。
上記ビス(フェニル)アルキレンジアミンとしては、例えばN,N'-ビス(β-ヒドロキシエチル)-N,N'-ビス(4'-アミノフェニル)-1,3-ジアミノプロパノール、N,N'-ビス(β-ヒドロキシエチル)-N,N'-ビス(4'-アミノフェニル)エチレンジアミン、N,N'-ビス(4-アミノフェニル)テトラメチレンジアミン、N,N'-ビス(β-ヒドロキシエチル)-N,N'-ビス(4-アミノフェニル)テトラメチレンジアミン、N,N'-ビス(4-メチルアミノフェニル)テトラメチレンジアミン、N,N'-ビス(エチル)-N,N'-ビス(4'-アミノ-3'-メチルフェニル)エチレンジアミン、1,8-ビス(2,5-ジアミノフェノキシ)-3,6-ジオキサオクタン及びこれらの付加塩を挙げることができる。
【0049】
上記p-アミノフェノールとしては、例えばp-アミノフェノール、4-アミノ-3-メチルフェノール、4-アミノ-3-フルオロフェノール、4-アミノ-3-クロロフェノール、4-アミノ-3-ヒドロキシメチルフェノール、4-アミノ-2-メチルフェノール、4-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェノール、4-アミノ-2-メトキシメチルフェノール、4-アミノ-2-アミノメチルフェノール、4-アミノ-2-(β-ヒドロキシエチルアミノメチル)フェノール及び4-アミノ-2-フルオロフェノール、及びこれらの酸との付加塩を挙げることができる。
上記o-アミノ-フェノールとしては、例えば2-アミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール及び5-アセタミド-2-アミノフェノール、及びこれらの付加塩類を挙げることができる。
上記ヘテロ環式塩基としては、例えばピリジン誘導体、ピリミジン誘導体及びピラゾール誘導体を挙げることができる。
該ピリジン誘導体としては、例えばGB 1,026,978及びGB 1,153,196に記載されている化合物、例えば2,5-ジアミノピリジン、2-(4-メトキシフェニル)アミノ-3-アミノピリジン及び3,4-ジアミノピリジン、及びこれらの付加塩類を挙げることができる。
【0050】
本発明において有用な他のピリジン酸化塩基は、例えば特許出願FR 2801308に記載されている、酸化塩基3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン又はその付加塩である。その例としては、ピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、2-アセチルアミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、2-モルホリン-4-イル-ピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-2-カルボン酸、2-メトキシ-ピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、(3-アミノ-ピラゾロ[1,5-a]ピリド-7-イル)-メタノール、2-(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-5-イル)-エタノール、2-(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-7-イル)-エタノール、(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-2-イル)-メタノール、3,6-ジアミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン、3,4-ジアミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3,7-ジアミン、7-モルホリン-4-イル-ピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3,5-ジアミン、5-モルホリン-4-イルピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、2-[(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-5-イル)-(2-ヒドロキシエチル)-アミノ]-エタノール、2-[(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-7-イル)-(2-ヒドロキシエチル)-アミノ]-エタノール、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-5-オール、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-4-オール、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-6-オール及び3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-7-オール、並びにこれらの付加塩類を挙げることができる。
【0051】
該ピリミジン誘導体としては、例えば特許DE 2359399、JP 88-169571、JP 05-63124、EP 0770375又は特許出願WO 96/15765に記載されている化合物、例えば2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、4-ヒドロキシ-2,5,6-トリアミノピリミジン、2-ヒドロキシ-4,5,6-トリアミノピリミジン、2,4-ジヒドロキシ-5,6-ジアミノピリミジン及び2,5,6-トリアミノピリミジン、及びこれらの付加塩類及び互変異性平衡が存在する場合には、その互変異性体を挙げることができる。
該ピラゾール誘導体としては、特許DE 3843892、DE 4133957及び特許出願WO 94/08969、WO 94/08970、FR-A-2,733,749及びDE 193 43 988に記載されている化合物、例えば4,5-ジアミノ-1-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチル)ピラゾール、3,4-ジアミノピラゾール、4,5-ジアミノ-1-(4'-クロロベンジル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1,3-ジメチルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-メチル-1-フェニルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-メチル-3-フェニルピラゾール、4-アミノ-1,3-ジメチル-5-ヒドラジノピラゾール、1-ベンジル-4,5-ジアミノ-3-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-t-ブチル-1-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-t-ブチル-3-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチル)-3-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-エチル-3-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-エチル-3-(4'-メトキシフェニル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1-エチル-3-ヒドロキシメチルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-ヒドロキシメチル-1-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-ヒドロキシメチル-1-イソプロピルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-メチル-1-イソプロピルピラゾール、4-アミノ-5-(2'-アミノエチル)アミノ-1,3-ジメチルピラゾール、3,4,5-トリアミノピラゾール、1-メチル-3,4,5-トリアミノピラゾール、3,5-ジアミノ-1-メチル-4-メチルアミノピラゾール及び3,5-ジアミノ-4-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-1-メチルピラゾール、並びにこれらの付加塩類を挙げることができる。また、4,5-ジアミノ-1-(β-メトキシエチル)ピラゾールを使用することもできる。
【0052】
好ましくは、4,5-ジアミノピラゾールが、またより一層好ましくは4,5-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチル)-ピラゾールが使用される。
ピラゾール誘導体としては、さらにジアミノ-N,N-ジヒドロピラゾロピラゾロン及び、特に特許出願FR-A-2 886 136に記載されているもの、例えば以下に列挙する化合物及びその付加塩類をも挙げることができる:2,3-ジアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2-アミノ-3-エチルアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2-アミノ-3-イソプロピルアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2-アミノ-3-(ピロリジン-1-イル-)-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、4,5-ジアミノ-1,2-ジメチル-1,2-ジヒドロ-ピラゾール-3-オン、4,5-ジアミノ-1,2-ジエチル-1,2-ジヒドロ-ピラゾール-3-オン、4,5-ジアミノ-1,2-ジ-(2-ヒドロキシエチル)-1,2-ジヒドロ-ピラゾール-3-オン、2-アミノ-3-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2-アミノ-3-ジメチルアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2,3-ジアミノ-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H,6H-ピリダジノ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、4-アミノ-1,2-ジエチル-5-(ピロリジン-1-イル)-1,2-ジヒドロ-ピラゾール-3-オン、4-アミノ-5-(3-ジメチルアミノ-ピロリジン-1-イル)-1,2-ジエチル-1,2-ジヒドロ-ピラゾール-3-オン及び2,3-ジアミノ-6-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン。
2,3-ジアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン及び/又はその塩の一種を好ましく使用することができる。
ヘテロ環式塩基としては、4,5-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチル)ピラゾール及び/又は2,3-ジアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン及び/又はその塩を使用することが好ましい。
【0053】
本発明において使用できるカプラーは、従来からケラチン繊維を染色するために使用されているものから選択することができる。
これらのカプラーとしては、特にm-フェニレンジアミン、m-アミノフェノール、m-ジフェノール、ナフタレン系カプラー及びヘテロ環式カプラー並びにこれらの付加塩類を挙げることができる。
その例としては、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシ‐2-メチルベンゼン、4-クロロ-1,3-ジヒドロキシベンゼン、2,4-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチルオキシ)ベンゼン、2-アミノ-4-(β-ヒドロキシエチルアミノ)-1-メトキシベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、3-ウレイドアニリン、3-ウレイド-1-ジメチルアミノベンゼン、セサモール、1-β-ヒドロキシエチルアミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、α-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、6-ヒドロキシインドール、4-ヒドロキシインドール、4-ヒドロキシ-N-メチルインドール、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,5-ジアミノ-2,6-ジメトキシピリジン、1-N-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ビス(β-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、6-ヒドロキシインドリン、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルピリジン、1-H-3-メチルピラゾール-5-オン、1-フェニル-3-メチル-ピラゾール-5-オン、2,6-ジメチル-ピラゾロ[1,5-b]-1,2,4-トリアゾール、2,6-ジメチル[3,2-c]-1,2,4-トリアゾール及び6-メチル-ピラゾロ[1,5-a]-ベンズイミダゾール、これらの酸との付加塩類、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0054】
一般に、本発明との関連で使用できる、該酸化塩基及び該カプラーの付加塩類は、特に、酸との付加塩類、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、トシレート、ベンゼンスルホネート、リン酸塩及び酢酸塩から選択される。
該酸化塩基又は酸化塩基類は、各々、該組成物(A)の全質量に対して、有利には0.001〜10質量%なる範囲、及び好ましくは該組成物の全質量に対して0.005〜5質量%なる範囲の量に相当するものであり得る。
該カプラー又はカプラー類は、これらが存在する場合には、各々、該組成物(A)の全質量に対して、有利には0.001〜10質量%なる範囲、及び好ましくは該組成物の全質量に対して0.005〜5質量%なる範囲の量に相当するものであり得る。
該組成物(A)において使用できる上記直接染料は、より具体的には、イオン性又はノニオン性の種、好ましくはカチオン性又はノニオン性のものから選択される。
適当な直接染料の例としては、アゾ、メチン、カルボニル、アジン、ニトロ(ヘテロ)アリール、トリ(ヘテロ)アリールメタン、ポルフィリン、フタロシアニン直接染料、及び天然直接染料を挙げることができ、これらは単独で、又は混合物として使用できる。
【0055】
より具体的には、該アゾ染料は、官能基-N=N-を含み、ここで該2つの窒素原子は、同時に一つのリング内に組込まれることはない。しかし、該-N=N-鎖の2つの窒素原子の内の一つが、リング内に組込まれることを排除するものではない。
該メチン群の染料は、より具体的には、>C=C<及びN=C<から選択される少なくとも一つの配列を含む化合物であり、そこで該2つの原子は、同時に一つのリング内に組込まれることはない。しかし、該配列の窒素又は炭素原子の一つを、リング内に組込み得ることを明記しておく。より詳しくは、この群に属する染料は、メチン、アゾメチン、モノ-及びジ-アリールメタン、インドアミン(又はジフェニルアミン)、インドフェノール、インドアニリン、カルボシアニン、アザカルボシアニン及びこれらの異性体、ジアザカルボシアニン及びこれらの異性体、テトラアザカルボシアニン及びヘミシアニン等の化合物から誘導される。
該カルボニル群に属する染料に関しては、例えばアクリドン、ベンゾキノン、アンスラキノン、ナフトキノン、ベンズアンスロン、アンスラアントロン、ピラントロン、ピラゾールアントロン、ピリミジノアントロン、フラバントロン、インダントロン、フラボン、(イソ)ビオラントロン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、イソキノリノン、アンスラピリドン、ピラゾロキナゾロン、ペリノン、キナクリドン、キノフタロン、インジゴイド、チオインジゴ、ナフタルイミド、アンスラピリミジン、ジケトピロロピロール及びクマリンを挙げることができる。
【0056】
上記環式アジン群の染料に関しては、特にアジン、キサンテン、チオキサンテン、フルオリンジン、アクリジン、(ジ)オキサジン、(ジ)チアジン及びピロニンを挙げることができる。
上記ニトロ(ヘテロ)芳香族染料は、より具体的には、ニトロベンゼン又はニトロピリジン型直接染料である。
上記ポルフィリン又はフタロシアニン染料に関しては、場合により、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属、亜鉛及びケイ素等の1種又はそれ以上の金属又は金属イオンを含む、カチオン性又は非-カチオン性化合物を使用することが可能である。
特に適した直接染料の例としては、ニトロベンゼン系染料、アゾ直接染料、アゾメチン直接染料、メチン直接染料、アゾカルボシアニン直接染料、例えばテトラアザカルボシアニン(テトラアザペンタメチン)、キノン直接染料及び特にアンスラキノン、ナフトキノン又はベンゾキノン直接染料、アジン、キサンテン、トリアリールメタン、インドアミン、インジゴイド、フタロシアニン直接染料、ポルフィリン及び天然直接染料等を挙げることができ、これらは単独で、又は混合物として使用できる。
【0057】
これらの染料は、単発色団型の染料(即ち、単一の染料のみを含む)又は多発色団型の染料、好ましくは2-又は3-発色団型の染料であり得、また該発色団は、同一又は異なっており、同一又は異なる化学薬品群に属するものであり得る。多発色団型の染料は、各々400〜800nmなる範囲内の可視領域における光を吸収する分子を由来とする、幾つかのラジカルを含むことに注意すべきである。さらに、該染料のこの吸光度は、該染料の予備的な酸化も、また他の化学種との結合をも必要としない。
多発色団型の染料の場合、その発色団は、少なくとも一つのリンカーによって一緒に結合されており、該リンカーはカチオン性又は非-カチオン性何れであってもよい。
好ましくは、該リンカーは、直鎖又は分岐鎖の又は環状のC1-C20アルキル鎖であり、該アルキル鎖は、少なくとも一つのヘテロ原子(例えば、窒素又は酸素)及び/又はこのような原子を含む少なくとも一つの基(CO、SO2)によって場合により中断されており、フェニル核と縮合していても縮合していなくてもよい少なくとも一つのヘテロ環によって場合により中断されており、該ヘテロ環はリング内に組込まれた少なくとも一つの四級化窒素原子及び場合により少なくとも一つの他のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素又は硫黄)を含み、さらに該アルキル鎖は、場合により置換された2つのC1-C15アルキル基で置換された、少なくとも一つの四級アンモニウム基を場合により持つ、置換又は無置換の少なくとも一つのフェニル基又はナフチル基によって場合により中断されている。該リンカーは、ニトロ、ニトロソ又はパーオキシ基を含まない。
【0058】
該ヘテロ環又は芳香族リングが置換されている場合、これらは、例えば場合によりヒドロキシル基、C1〜C2アルコキシ基、C2〜C4ヒドロキシアルコキシ基、アセチルアミノ基、又は場合により少なくとも一つのヒドロキシル基を持つ、1又は2個のC1〜C4アルキル基で置換されたアミノ基(ここで該2つのアルキル基は、これらが結合している窒素原子と共に、5-又は6-員のヘテロ環を形成してもよく、該環は、場合により窒素又は窒素以外のもう一つのヘテロ原子を含む)で置換された1種又はそれ以上のC1〜C8アルキル基;ハロゲン原子;ヒドロキシル基;C1〜C2アルコキシ基;C2〜C4ヒドロキシアルコキシ基;アミノ基;同一又は異なっていてもよく、場合により少なくとも一つのヒドロキシル基を持つ、1又は2個のC1〜C4アルキル基で置換されたアミノ基により置換されている。
【0059】
本発明に従って使用できるベンゼン系の直接染料としては、以下に列挙する化合物を挙げることができる:
・1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゼン;
・1-アミノ-2-ニトロ-4-β-ヒドロキシエチルアミノベンゼン;
・1-アミノ-2-ニトロ-4-ビス(β-ヒドロキシエチル)-アミノベンゼン;
・1,4-ビス(β-ヒドロキシエチルアミノ)-2-ニトロベンゼン;
・1-β-ヒドロキシエチルアミノ-2-ニトロ-4-ビス(β-ヒドロキシエチルアミノ)-ベンゼン;
・1-β-ヒドロキシエチルアミノ-2-ニトロ-4-アミノベンゼン;
・1-β-ヒドロキシエチルアミノ-2-ニトロ-4-(エチル)(β-ヒドロキシエチル)-アミノベンゼン;
・1-アミノ-3-メチル-4-β-ヒドロキシエチルアミノ-6-ニトロベンゼン;
・1-アミノ-2-ニトロ-4-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-クロロベンゼン;
・1,2-ジアミノ-4-ニトロベンゼン;
・1-アミノ-2-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-ニトロベンゼン;
・1,2-ビス(β-ヒドロキシエチルアミノ)-4-ニトロベンゼン;
・1-アミノ-2-トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ-5-ニトロベンゼン;
・1-ヒドロキシ-2-アミノ-5-ニトロベンゼン;
・1-ヒドロキシ-2-アミノ-4-ニトロベンゼン;
・1-ヒドロキシ-3-ニトロ-4-アミノベンゼン;
・1-ヒドロキシ-2-アミノ-4,6-ジニトロベンゼン;
・1-β-ヒドロキシエチルオキシ-2-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-ニトロベンゼン;
・1-メトキシ-2-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-ニトロベンゼン;
・1-β-ヒドロキシエチルオキシ-3-メチルアミノ-4-ニトロベンゼン;
・1-β,γ-ジヒドロキシプロピルオキシ-3-メチルアミノ-4-ニトロベンゼン;
・1-β-ヒドロキシエチルアミノ-4-β,γ-ジヒドロキシプロピルオキシ-2-ニトロベンゼン;
・1-β,γ-ジヒドロキシプロピルアミノ-4-トリフルオロメチル-2-ニトロベンゼン;
・1-β-ヒドロキシエチルアミノ-4-トリフルオロメチル-2-ニトロベンゼン;
・1-β-ヒドロキシエチルアミノ-3-メチル-2-ニトロベンゼン;
・1-β-アミノエチルアミノ-5-メトキシ-2-ニトロベンゼン;
・1-ヒドロキシ-2-クロロ-6-エチルアミノ-4-ニトロベンゼン;
・1-ヒドロキシ-2-クロロ-6-アミノ-4-ニトロベンゼン;
・1-ヒドロキシ-6-ビス(β-ヒドロキシエチル)-アミノ-3-ニトロベンゼン;
・1-β-ヒドロキシエチルアミノ-2-ニトロベンゼン;
・1-ヒドロキシ-4-β-ヒドロキシエチルアミノ-3-ニトロベンゼン。
【0060】
本発明に従って使用可能な、該アゾ、アゾメチン、メチン又はテトラアザペンタメチン直接染料としては、特許出願WO 95/15144、WO 95/01772及びEP 714954;FR 2189006、FR 2285851、FR-2140205、EP 1378544、EP 1674073に記載されているカチオン性染料を挙げることができる。
従って、特に、以下の一般式(I)〜(IV)で示される下記染料、及び好ましくは以下の一般式(I)〜(III)で示される化合物を挙げることができる:
【0061】
【化4】

【0062】
ここで、Dは、窒素原子又はCH基を表し;
R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子;-CH、-OH又はNH2基で置換されていてもよく、また該ベンゼンリングの炭素原子と共に、場合により酸素原子-含有又は窒素原子-含有ヘテロ環(これは、1又はそれ以上のC1-C4アルキル基で置換されていてもよい)を形成することができるC1-C4アルキル基;4'-アミノフェニル基を表し;
R3及びR3'は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素原子から選択されるハロゲン原子、シアノ、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基又はアセチルオキシ基を表し;
X-は、好ましくは塩素、メチル硫酸及びアセテートから選択されるアニオンを表し;
Aは、以下に列挙する構造A1〜A18、好ましくはA1、A4、A7、A13及びA18から選択される基を表し:
【0063】
【化5】

【0064】
ここで、R4は、ヒドロキシル基で置換されていてもよいC1-C4アルキル基を表し、R5は、C1-C4アルコキシ基を表す;
【0065】
【化6】

【0066】
ここで、R6は、水素原子又はC1-C4アルキル基を表し、
R7は、水素原子、-CN基又はアミノ基で置換されていてもよいアルキル基、4'-アミノフェニル基を表し、あるいはR6と共に、場合により酸素原子及び/又は窒素原子含有ヘテロ環であって、C1-C4アルキル基で置換されていてもよいヘテロ環を形成し;
R8及びR9は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、例えば臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子又はフッ素原子、C1-C4アルキル基又はC1-C4アルコキシ基、又はCN基を表し;
X-は、好ましくは塩素、メチル硫酸及びアセテートから選択されるアニオンを表し;
Bは以下に列挙する構造B1〜B6から選択される基を表す:
【0067】
【化7】

【0068】
ここで、R10は、C1-C4アルキル基を表し、R11及びR12は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又はC1-C4アルキル基を表す;
【0069】
【化8】

【0070】
ここで、R13は、水素原子、C1-C4アルコキシ基、ハロゲン原子、例えば臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子又はフッ素原子、又はアミノ基を表し;
R14は、水素原子、C1-C4アルキル基を表し、あるいは該ベンゼン環の炭素原子と共に、場合により酸素原子を含み及び/又は1又はそれ以上のC1-C4アルキル基で置換されたヘテロ環を形成し、
R15は、水素原子又はハロゲン原子、例えば臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子又はフッ素原子を表し、
R16及びR17は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はC1-C4アルキル基を表し、
D1及びD2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又はCH基を表し、
mは、0又は1、好ましくは1であり、
ここで、R13が、無置換のアミノ基を表す場合には、D1及びD2は、同時に-CHを表し、かつm=0であるものと理解すべきであり、
X-は、好ましくは塩素、メチル硫酸及びアセテートから選択されるアニオンを表し、
Eは、以下に列挙する構造E1〜E8から選択される基、より特定的にはE1、E2及びE7から選択される基を表す:
【0071】
【化9】

【0072】
ここで、R'は、C1-C4アルキル基を表し、
m=0かつD1が窒素原子を表す場合、Eは、また以下の構造E9で示される基を表し;
【0073】
【化10】

【0074】
ここでR'は、C1-C4アルキル基を表す。
【0075】
【化11】

【0076】
ここで、記号Gは、以下に列挙する構造G1〜G3から選択される基を表し、
【0077】
【化12】

【0078】
これら構造G1〜G3において、
R18は、C1-C4アルキル基、C1-C4アルキル基で置換されていてもよいフェニル基又は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びフッ素原子から選択されるハロゲン原子を表し、
R19は、C1-C4アルキル基又はフェニル基を表し、
R20及びR21は、同一でも異なっていてもよく、C1-C4アルキル基又はフェニル基を表し、あるいはG1においては、一緒に、1又はそれ以上のC1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基又はNO2基で置換されたベンゼンリングを形成し、あるいはG2においては、一緒に、場合により1又はそれ以上のC1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基又はNO2基で置換されたベンゼンリングを形成し、
R20は、さらに水素原子を表すこともでき、
Zは、酸素原子、硫黄原子又は基:-NR19を表し、
Mは、-CH、-CR基(RはC1-C4アルキル基を表す)又はNR22(X-)rを表し、
Kは、-CH、-CR基(RはC1-C4アルキル基を表す)又はNR22(X-)rを表し、
Pは、-CH、-CR基(RはC1-C4アルキル基を表す)又はNR22(X-)rを表し;rは、0又は1を表し、
【0079】
R22は、O-原子、C1-C4アルコキシ基、又はC1-C4アルキル基を表し、
R23及びR24は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びフッ素原子から選択されるハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、-NO2基を表し、
X-は、好ましくは塩素、ヨウ素、メチル硫酸、エチル硫酸、アセテート及びパークロレートから選択されるアニオンを表し、
但し、
R22がO-を表す場合には、rは0を表し、
K又はP又はMが、-N-(C1-C4)アルキルX-を表す場合には、R23又はR24は、好ましくは水素原子以外であり、
Kが-NR22(X-)rを表す場合には、M=P=-CH、-CRであり、
Mが-NR22(X-)rを表す場合には、K=P=-CH、-CRであり、
Pが-NR22(X-)rを表す場合には、K=Mであり、かつこれらは-CH又はCRを表し、
Zが硫黄原子であり、R21がC1-C4アルキル基を表す場合には、R20は水素原子以外であり、
Zが-NR22であり、かつR19がC1-C4アルキル基を表す場合には、該構造G2の基R18、R20又はR21の少なくとも一つは、C1-C4アルキル基以外であり、
記号Jは以下に列挙するものを表し:
・(a) 以下の構造J1を持つ基:
【0080】
【化13】

【0081】
この構造J1において、
R25は、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びフッ素原子から選択されるハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、基:-OH、-NO2、-NHR28、-NR29R30又はNHCO(C1-C4)アルキル基を表し、又はR26と共に、場合により窒素、酸素及び硫黄原子から選択される1又はそれ以上のヘテロ原子を含む、5-又は6-員のリングを形成し、
R26は、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びフッ素原子から選択されるハロゲン原子、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基を表し、あるいはR27又はR28と共に、場合により窒素、酸素及び硫黄原子から選択される1又はそれ以上のヘテロ原子を含む、5-又は6-員のリングを形成し、
R27は、水素原子、-OH基、-NHR28基又はNR29R30基を表し、
R28は、水素原子、C1-C4アルキル基、C1-C4モノヒドロキシアルキル基、C2-C4ポリヒドロキシアルキル基又はフェニル基を表し、
R29及びR30は、同一でも異なっていてもよく、C1-C4アルキル基、C1-C4モノヒドロキシアルキル基又はC2-C4ポリヒドロキシアルキル基を表し、
・(b) 5-又は6-員の、他のヘテロ原子及び/又はカルボニル化された基を含むことができ、また1又はそれ以上のC1-C4アルキル基、アミノ基又はフェニル基で置換されていてもよい、窒素原子-含有ヘテロ環式基、及び特に以下の構造J2を持つ基:
【0082】
【化14】

【0083】
該構造J2において、
R31及びR32は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C1-C4アルキル基又はフェニル基を表し、
Yは、-CO-基又は以下の式で示される基を表し:
【0084】
【化15】

【0085】
n=0又は1であり、またnが1を表す場合、Uは-CO-基を表す。
上で定義した如き染料(I)〜(IV)の構造において、該C1-C4アルキル基又はアルコキシ基は、好ましくはメチル、エチル、ブチル、メトキシ、エトキシ基を表す。
上記式(I)及び(III)で表される化合物としては、以下の式の化合物が好ましい:
【0086】
【化16】

【0087】
同様に、上記アゾ直接染料としては、カラーインデックスインターナショナル(COLOUR INDEX INTERNATIONAL), 第3版に記載されている、以下のような染料を挙げることができる:
・ディスパースレッド(Disperse Red) 17;
・ベーシックレッド(Basic Red) 22;
・ベーシックレッド(Basic Red) 76;
・ベーシックイエロー(Basic Yellow) 57;
・ベーシックブラウン(Basic Brown) 16;
・ベーシックブラウン(Basic Brown) 17;
・ディスパースブラック(Disperse Black) 9。
また、1-(4'-アミノジフェニルアゾ)-2-メチル-4-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノベンゼンを挙げることもできる。
【0088】
キノン直接染料としては、以下に列挙する染料を挙げることができる:
・ディスパースレッド(Disperse Red) 15;
・ソルベントバイオレット(Solvent Violet) 13;
・ディスパースバイオレット(Disperse Violet) 1;
・ディスパースバイオレット(Disperse Violet) 4;
・ディスパースブルー(Disperse Blue) 1;
・ディスパースバイオレット(Disperse Violet) 8;
・ディスパースブルー(Disperse Blue) 3;
・ディスパースレッド(Disperse Red) 11;
・ディスパースブルー(Disperse Blue) 7;
・ベーシックブルー(Basic Blue) 22;
・ディスパースバイオレット(Disperse Violet) 15;
・ベーシックブルー(Basic Blue) 99;
並びに以下に列挙する化合物:
・1-N-メチルモルホリニウムプロピルアミノ-4-ヒドロキシアンスラキノン;
・1-アミノプロピルアミノ-4-メチルアミノアンスラキノン;
・1-アミノプロピルアミノアンスラキノン;
・5-β-ヒドロキシエチル-1,4-ジアミノアンスラキノン;
・2-アミノエチルアミノアンスラキノン;
・1,4-ビス(β,γ-ジヒドロキシプロピルアミノ)-アンスラキノン。
【0089】
上記アジン染料としては、以下に列挙する化合物を挙げることができる:
・ベーシックブルー(Basic Blue) 17;
・ベーシックレッド(Basic Red) 2。
本発明に従って使用できる上記トリアリールメタン染料としては、以下に列挙する化合物を挙げることができる:
・ベーシックグリーン(Basic Green) 1;
・ベーシックバイオレット(Basic Violet) 3;
・ベーシックバイオレット(Basic Violet) 14;
・ベーシックブルー(Basic Blue) 7;
・ベーシックブルー(Basic Blue) 26。
【0090】
本発明に従って使用できる上記インドアミン染料としては、以下に列挙する化合物を挙げる事ができる:
・2-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-[ビス(β-4'-ヒドロキシエチル)アミノ]アニリノ-1,4-ベンゾキノン;
・2-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-(2'-メトキシ-4'-アミノ)-アニリノ-1,4-ベンゾキノン;
・3-N-(2'-クロロ-4'-ヒドロキシ)-フェニルアセチルアミノ-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノンイミン;
・3-N-(3'-クロロ-4'-メチルアミノ)フェニルウレイド-6-メチル-1,4-ベンゾキノンイミン;
・3-[4'-N-(エチル、カルバミルメチル)-アミノ]-フェニルウレイド-6-メチル-1,4-ベンゾキノンイミン。
本発明に従って使用できる上記テトラアザペンタメチン型の染料としては、以下の表に示す以下の化合物を挙げることができる:
【0091】
【表1】

【0092】
X-は、好ましくは塩素、ヨウ素、メチル硫酸、エチル硫酸、アセテート及びパークロレートから選択されるアニオンを表す。
上記多発色団型の染料としては、より特定的には、対称型又は非-対称型の、アゾ及び/又はアゾメチン(ヒドラゾン)型の2-又は3-発色団の染料を挙げることができ、該染料は、一方では、場合により融合された、5-又は6-員の芳香族ヘテロ環を少なくとも一つ含み、該ヘテロ環に組込まれた少なくとも一つの四級化された窒素原子及び場合により少なくとも一つの他のヘテロ原子(例えば、窒素、硫黄又は酸素)を含み、及び他方では、少なくとも1つの基OR(ここで、Rは、水素原子、場合により置換されたC1-C6アルキル基、場合により置換されたフェニル核を表す)又は少なくとも一つの基N(R')2(ここで、R'は、同一又は異なっており、水素原子、場合により置換されたC1-C6アルキル基又は場合により置換されたフェニル核を表す)を場合により持つ、場合により置換された少なくとも一つのフェニル又はナフチル基を含み;また2つの該基R'は、これらが結合している窒素原子と共に、5-又は6-員の飽和ヘテロ環を形成し、あるいはまた該基R'の一方及び/又は両者は、該窒素原子に対してo-位に位置する該芳香族リングの炭素原子と共に、5-又は6-員の飽和ヘテロ環を形成する。
【0093】
芳香族カチオン性ヘテロ環としては、好ましくは、1〜3個の窒素原子及び好ましくは1又は2個の窒素原子を含み、その一つが四級化されている、5-又は6-員環を挙げることができ、該ヘテロ環は、さらに、場合によりベンゼン核と融合されている。同様に、該ヘテロ環は、場合により窒素原子以外の他のヘテロ原子、例えば硫黄又は酸素原子を含むことができることを述べておくべきである。
該ヘテロ環又はフェニル若しくはナフチル基が置換されている場合、これらは、例えば1又はそれ以上の以下の基で置換されている:場合によりヒドロキシル基、C1-C2アルコキシ基、C2-C4ヒドロキシアルコキシ基、アセチルアミノ基又は1又は2個のC1-C4アルキル基で置換され、場合により少なくとも一つのヒドロキシル基を持つアミノ基で置換されたC1-C8アルキル基、ここでこれら2つの基は、それらの結合している窒素原子と共に、場合により窒素原子又はこれ以外のもう一つのヘテロ原子を含む、5-又は6-員のヘテロ環を形成することができ;ハロゲン原子;ヒドロキシル基;C1-C2アルコキシ基;C2-C4ヒドロキシアルコキシ基;アミノ基;場合により少なくとも一つのヒドロキシル基を持つ、同一又は異なっていてもよい、1又は2個のC1-C4アルキル基で置換されたアミノ基。
【0094】
これらの多発色団は、飽和又は不飽和の、場合により芳香族型の、ヘテロ環内に組込まれた、又は組込まれていない、少なくとも一つの四級化された窒素原子を場合により含む、少なくとも一つのリンカーによって一緒に結合されている。
好ましくは、該リンカーは、直鎖又は分岐鎖の又は環状のC1-C20アルキル鎖であり、該アルキル鎖は、少なくとも一つのヘテロ原子(例えば、窒素又は酸素)及び/又はこのような原子を含む少なくとも一つの基(CO、SO2)によって場合により中断されており、フェニル核と縮合していても縮合していなくてもよい少なくとも一つのヘテロ環によって場合により中断されており、該ヘテロ環はリング内に組込まれた少なくとも一つの四級化窒素原子及び場合により少なくとも一つの他のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素又は硫黄)を含み、さらに該アルキル鎖は、場合により置換された2つのC1-C15アルキル基で置換された、少なくとも一つの四級アンモニウム基を場合により持つ、置換又は無置換の少なくとも一つのフェニル基又はナフチル基によって場合により中断されている。該リンカーは、ニトロ、ニトロソ又はパーオキシ基を含まない。
該リンカーと各発色団との間の結合は、一般的には該フェニル又はナフチル核上のヘテロ原子の置換基を介して起り、あるいは該カチオン性ヘテロ環の該四級化窒素原子を介して起こる。
【0095】
該染料は、同一又は異なる発色団を含むことができる。
このような染料の例としては、特に以下の特許出願を参照することができる:EP 1637566、EP 1619221、EP 1634926、EP 1619220、EP 1672033、EP 1671954、EP 1671955、EP 1679312、EP 1671951、EP167952、EP167971、WO 06/063866、WO 06/063867、WO 06/063868、WO 06/063869、EP 1408919、EP 1377264、EP 1377262、EP 1377261、EP 1377263、EP 1399425、EP 1399117、EP 1416909、EP 1399116、EP 1671560。
特許出願EP 1006153において述べられている、カチオン性直接染料を使用することも可能であり、該特許出願は、カチオン型のリンカーによって接続された、アンスラキノン型の2つの発色団を含む染料を記載しており;EP 1433472、EP 1433474、EP 1433471及びEP 1433473は、カチオン性又は非-カチオン性のリンカーによって接続された、同一又は異なる複数の発色団型の染料を記載しており;並びにEP 6291333は、特に、3つの発色団を含む染料を記載しており、その一つは、アンスラキノン発色団であり、これにアゾ又はジアザカルボシアニン型又はその異性体の一種の、2つの発色団が結合している。
【0096】
本発明に従って使用できる天然の直接染料としては、ラウソン、ジュグロン、アリザリン、パープリン、カルミニン酸、ケルメス酸、プルプロガリン、プロトカテテュアルデヒド、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン、アピゲニジン、オルセイン(orceins)を挙げることができる。これら天然染料を含む抽出液又は浸出液及び特にヘンナを主成分とするシップ又は抽出液を使用することも可能である。
これらが存在する場合、該1又はそれ以上の直接染料は、有利には上記組成物(A)の全質量に対して、0.001〜10質量%なる範囲及び好ましくは0.005〜5質量%なる範囲に相当する量で存在する。
本発明の第三の態様によれば、該組成物(A)及び(B)は、直接染料も酸化性染料(塩基及びカプラー)も含まず、あるいはまたこれらが存在する場合には、その全含有率は、各組成物の全質量に対して、0.005質量%を越えない。
この態様において、本発明による剤は、有利にはケラチン繊維の脱色のために使用される。
【0097】
本態様において、該組成物(A)は、有利には1種又はそれ以上の固体状又はペースト状の助剤(これらは、好ましくは粉末状態にある)を含むことができる。これらの助剤は、クレイ、アンモニウム塩以外の塩、アニオン性、ノニオン性、カチオン性又は両性イオン型界面活性剤、天然又は合成増粘剤、場合により変性されたデンプン、ガラスビーズ、シリカ、ナイロン、アルミナ、二酸化チタン、ゼオライト、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、キトサン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、単糖又は二糖、例えばグルコース、スクロース、ソルビトール又はフルクトース、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、シリカビーズ、タルク、特にカルシウムのボロシリケート、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロース及びその誘導体、超吸収性化合物、マグネシウム又はカルシウムの炭酸塩、ポリアクリルアミド、多孔質ヒドロキシアパタイト、鋸屑、ヒバマタ属海草粉末、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸カルシウム、活性炭、ポリ(塩化ビニリデン/アクリロニトリル)粒子、特にアクゾノーベル(AKZO NOBEL)社によりエクスパンセル(ExpancelTM)なる一般名、特定の参照名エクスパンセル(ExpancelTM) WE又はDEとして市販されているもの及びこれらの混合物から選択することができる。
【0098】
一般に、該組成物(A)及び(B)は、化粧学的に許容される媒体中で処方され、該媒体は、一般的には水及び/又は1種又はそれ以上の有機溶媒を含む。
有機溶媒としては、例えば直鎖又は分岐したC2-C4アルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール;グリセロール;ポリオール及びポリオールエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールのモノメチルエーテル、ジエチレングリコールのモノエチルエーテル及びモノメチルエーテル、並びに芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール又はフェノキシエタノール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
これらの有機溶媒は、これらが含まれる各組成物の全質量に対して、好ましくは1〜40質量%なる範囲、及びより好ましくは5〜30質量%なる範囲の割合で存在し得る。
好ましくは、該組成物(A)及び(B)は水を含む。より好ましくは、該組成物(A)及び(B)の各々は、該組成物の全質量に対して、少なくとも5質量%の水、好ましくは少なくとも10質量%の水、及びより一層好ましくは少なくとも20質量%の水を含む。
【0099】
本発明による該組成物(A)及び(B)は、また従来からケラチン繊維の着色及び/又は脱色用の組成物において使用されているもの、例えばポリマーコンディショナー、特にカチオン性のポリマーコンディショナー、無機増粘剤、及び特にフィラー、例えばクレイ又はタルク;有機増粘剤、及び特にアニオン性、カチオン性、及びノニオン性ポリマー会合性増粘剤;酸化防止剤;浸透剤;上記式(I)のもの以外の金属イオン封鎖剤;香料;分散剤;フィルム-形成剤;セラミド;保存剤;乳白剤から選択される、1種又はそれ以上の助剤を含むことができる。
上記助剤は、一般的に、その各々につき、各組成物の質量に対して、0.01〜20質量%なる範囲の量で存在し得る。
好ましい一態様によれば、該組成物(A)は、水中油型エマルション(直接エマルションと呼ばれる)、又は油中水型エマルション(逆エマルションと呼ばれる)の形状にある。
本発明は、またケラチン繊維を染色及び/又は脱色する方法にも係り、該方法は、該繊維に対して、これまでに説明したような剤を適用する工程を含む。
本発明によれば、該ケラチン繊維に適用された該剤は、該組成物(A)及び(B)を混合することにより得られ、この混合は、該ケラチン繊維に適用する前に(その場での調製)又は直接該ケラチン繊維上で(中間的なリンスなしに、該組成物(A)及び(B)を連続的に適用)行われる。
【0100】
従って、本発明の方法の第一の変形によれば、該組成物(A)が、続いて該組成物(B)が、中間的なリンスなしに連続的に、乾燥状態にある又は湿潤状態にあるケラチン繊維に適用される。
本発明の方法の第二の変形によれば、本発明の該剤は、該組成物(A)及び(B)をその場で混合し、次いでこの混合物を乾燥状態にある又は湿潤状態にあるケラチン繊維に適用することによって、該ケラチン繊維に適用される。
この場合、好ましくは、該組成物(A)及び(B)の混合から、得られた混合物の毛髪に対する適用までの時間は、従って30分を越えてはならず、好ましくは10分を越えてはならず、またより好ましくは5分を越えてはならない。
使用する変法とは無関係に、使用する該組成物(A)の量対使用する該組成物(B)の量の質量比は、0.2〜3なる範囲及び好ましくは0.3〜1なる範囲とすることができる。
さらに、使用する変法とは無関係に、該繊維上の混合物(該組成物(A)及び(B)のその場での混合又はこれら組成物の連続的な適用により得られる)は、所定期間の間、一般的には約1分〜1時間なる範囲、好ましくは約5〜30分なる範囲の期間に渡り、所定位置に維持される。
【0101】
この方法を実施する際の温度は、通常は室温(15〜25℃なる範囲)〜80℃なる範囲及び好ましくは室温〜60℃なる範囲内にある。
この処置の終了後、該ヒトケラチン繊維は、乾燥され又は乾燥状態に置かれる前に、場合により水でリンスされ、場合によりシャンプーを用いた洗浄処理及びその後の水によるリンスに付される。
最後に、本発明は、さらに多区画染色及び/又は脱色用デバイス又は「キット」にも係り、該キットは、組成物(A)を含む第一の区画、及び組成物(B)を含む第二の区画で構成され、ここで該組成物(A)及び(B)は、これまでに説明した如きものである。
このデバイスは、有利には、該所定の混合物を毛髪上に分配するための手段、例えば特許FR 2586913に記載されているデバイス等を備えることができる。
このデバイスは、本発明による染色及び/又は脱色処理前後に適用するための、ケラチン繊維を洗浄し及び/又はコンディショニングするための、1又はそれ以上の組成物を備えていてもよい。
【実施例】
【0102】
以下に記載される実施例は、本発明を例示するのに役立つが、本発明を何ら限定するものではない。
以下の酸化染色剤を調製した(以下の表において、成分の量はグラム単位で表示されている)。
染色組成物(A):
【0103】
【表2】

【0104】
組成物A2は、本発明による組成物(A)に相当するが、組成物A1は、如何なる上記式(I)の化合物をも含まない比較用の組成物である。
酸化性組成物(B):
【0105】
【表3】

【0106】
上記組成物を、以下のように使用時点において混合した:
・一方で、10gの染色組成物A1を、10gの酸化性組成物Bと混合し、及び
・他方で、10gの染色組成物A2を、10gの酸化性組成物Bと混合した。
該組成物A2及びBから得た混合物は、該組成物A1及びBから得た混合物とは違って、経時に伴う如何なる早期の膨潤も示さなかった。
さらに、毛髪に適用した場合、該組成物A2及びBから得た混合物は、極めて均一な染色の結果を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための剤であって、
・1又はそれ以上の塩基性化剤を含む第一の組成物(A);及び
・1又はそれ以上の酸化剤を含む第二の組成物(B)から構成され、
該2種の組成物(A)及び(B)の少なくとも一つが、如何なるカルボン酸官能基をも含まない、1種又はそれ以上の脂肪物質を含み、該組成物(A)及び(B)の混合物中の該脂肪物質の全量が、該混合物の全質量に対して、少なくとも20質量%に相当し、及び
該2種の組成物(A)及び(B)の少なくとも一つが、以下の一般式(I)で表される1又はそれ以上の金属イオン封鎖剤を含むことを特徴とする前記剤:
【化1】

ここで、
pは、0又は1に等しい整数であり;
n及びmは、相互に独立に、0、1又は2に等しい整数であり、和n+mは、少なくとも1に等しく;
R1、R2、R3及びR4は、相互に独立に、水素原子、基:-CH2CO2M1又は基:-CH(CO2M2)(CH2CO2M3)を表し;
Yは、基:NCH2CO2M4を表し;
M1〜M4は、相互に独立に、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属由来のカチオン、場合によりヒドロキシル化された有機アミン由来のカチオン、又はアンモニウムカチオンを表し;
但し、pが0である場合には、R1及びR3両者は、水素原子を表し、かつR2及びR4両者は、基:-CH(CO2M2)(CH2CO2M3)を表し、またpが1である場合には、n及びmは各々少なくとも1であることを条件とする。
【請求項2】
前記塩基性化剤が、アンモニア水、アルカリ金属炭酸塩、アルカノールアミン及びその誘導体、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び以下の一般式(II)で表される化合物から選択され、好ましくはアルカノールアミンから選択される、請求項1記載の剤:
【化2】

該一般式(II)において、Wは場合によりヒドロキシル基又はC1-C6アルキル基により置換されていてもよい、C1-C6アルキレン残基を表し;Rx、Ry、Rz及びRtは、同一又は異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル基、C1-C6ヒドロキシアルキル基、又はC1-C6アミノアルキル基を表す。
【請求項3】
前記酸化剤が、過酸化水素、過酸化ウレア、アルカリ金属の臭素酸塩又はフェリシアン化物、過酸化された塩、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の過硫酸塩、過硼酸塩及び過炭酸塩、場合により酸化還元酵素のドナー又は補因子の存在下における前記酸化還元酵素、例えばラッカーゼ、パーオキシダーゼ及び2-電子オキシドレダクターゼから選択され、及び好ましくは過酸化水素である、請求項1又は2記載の剤。
【請求項4】
前記一般式(I)において、M1〜M4が同一であり、かつナトリウムカチオン又はカリウムカチオンを表す、請求項1〜3の何れか1項に記載の剤。
【請求項5】
前記一般式(I)の金属イオン封鎖剤が、
・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びその塩;
・エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)及びその塩;
から選択され、これら2つの化合物のアルカリ金属塩が好ましいものである、請求項1〜4の何れか1項に記載の剤。
【請求項6】
前記2つの組成物(A)及び(B)の混合物における、前記一般式(I)の金属イオン封鎖剤の全量が、該混合物の全質量に対して、0.001〜10質量%なる範囲、好ましくは0.01〜5質量%なる範囲及びより一層好ましくは0.05〜1質量%なる範囲内にあり、これら質量%で表された量が、該一般式(I)の化合物の酸型に対する値として表されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の剤。
【請求項7】
前記組成物(A)及び(B)の混合物における、如何なるカルボン酸官能基をも含まない前記脂肪物質の全量が、該混合物の全質量に対して、少なくとも25質量%及び好ましくは少なくとも30質量%に相当する、請求項1〜6の何れか1項に記載の剤。
【請求項8】
前記如何なるカルボン酸官能基をも含まない脂肪物質が、C6-C16低級アルカン、無機物、植物、動物又は合成起源の非-シリコーン系オイル、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、非-シリコーン系ワックス及びシリコーンから選択される、請求項1〜7の何れか1項に記載の剤。
【請求項9】
前記如何なるカルボン酸官能基をも含まない脂肪物質が、25℃なる温度及び大気圧下において液体の化合物であり、及び好ましくは流動ワセリン、ポリデセン、脂肪酸及び/又は脂肪アルコールの液状エステル、及びこれらの混合物から選択され、及びより好ましくは流動ワセリンである、請求項1〜8の何れか1項に記載の剤。
【請求項10】
前記組成物(A)が、さらに場合により1種又はそれ以上のカプラーと組合された酸化塩基、及び/又は1種又はそれ以上の直接染料から選択される、1種又はそれ以上酸化性染料をも含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の剤。
【請求項11】
前記組成物(A)及び(B)が、如何なる直接染料も如何なる酸化性染料(塩基及びカプラー)をも含まず、あるいはこれらが存在する場合には、その全含有率は、各組成物の全質量に対して、0.005質量%を越えない、請求項1〜9の何れか1項に記載の剤。
【請求項12】
前記組成物(A)が、水中油型又は油中水型エマルションの形状にある、請求項1〜11の何れか1項に記載の剤。
【請求項13】
ケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための方法であって、請求項1〜12の何れか1項に記載の前記組成物(A)及び(B)を、中間的なリンスなしに、湿潤又は乾燥状態にある該繊維に連続的に適用する工程を含む、前記方法。
【請求項14】
ケラチン繊維を染色し及び/又は脱色するための方法であって、請求項1〜12の何れか1項に記載の前記剤における、前記組成物(A)及び(B)をその場で混合し、次いで該混合物を湿潤又は乾燥状態にある該繊維に適用することによって、該剤を該繊維に適用する工程を含む、前記方法。
【請求項15】
組成物(A)を含む第一の区画、及び組成物(B)を含む第二の区画から構成され、該組成物(A)及び(B)が、請求項1〜12の何れか1項に記載のものである、多区画染色及び/又は脱色用デバイス又はキット。

【公開番号】特開2011−132240(P2011−132240A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−294804(P2010−294804)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】