脂肪由来幹細胞を利用した成長因子の大量生産方法
本発明は人間の脂肪由来幹細胞を利用して、人間の成長因子を大量に生産する方法に関する。具体的には、本発明は人間の脂肪細胞から抽出された脂肪由来幹細胞を、適正な培地及び条件で培養して、人間成長因子を著しく多い量で合成できるように操作する方法を提供する。さらに、本発明の方法により生産された幹細胞培養液及びそれより分離した人間成長因子は薬品及び化粧品の原料として有用に利用でき得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトの脂肪由来幹細胞を利用して、ヒトの成長因子を大量に生産する方法に関する。
より詳細には、本発明は、ヒトの成長因子、例えば、酸性繊維芽細胞成長因子(acidic FGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(basic FGF)、インシュリン-類似成長因子-1(IGF-1)、インシュリン-類似成長因子-2(IGF-2)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、ヒト形質転換成長因子-アルファ(TGF-α)、ヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、神経細胞成長因子(NGF)等を既存の幹細胞よりも著しく多量に合成できるように、ヒトの脂肪細胞より抽出された脂肪由来幹細胞を適正な培地及び条件で培養することを含む方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞とは、特定の細胞に分化が進行されていないまま維持され、必要な場合、神経、血液、軟骨等の身体を構成するすべての種類の細胞に分化する能力を有する細胞を言う。このような幹細胞が得られる方法は大きく2種あるが、第一は受精卵から発生した胚芽より得る方法(胚芽幹細胞)であり、第二は成人になった身体の各部分に保有されている幹細胞(成体幹細胞)を回収する方法である。機能的な面で差はあるものの、胚芽幹細胞や成体幹細胞はすべて多様な種類の細胞に分化できる特徴を有している。
【0003】
胚芽幹細胞は分化能力が極めて優れていて、テロメアが長いという長所はあるものの、倫理的な問題を抱えており、細胞を多量に得ることが難しい短所がある反面、成体幹細胞は細胞数を多く得られるものの、他人に移植する場合、感染の危険や分化能力が相対的に落ちる短所を有している。
【0004】
前記の短所にもかかわらず、成体幹細胞は医学的に適用することが極めて安全であることが特徴である。具体的に、臓器再生のため、体内に移植しても癌が発生せず、成人の体内にあったため、免疫拒否反応が発生しないことから、自分の細胞を用いる自己移植(autologous transplantation)が可能である。
【0005】
さらに、周辺組織の特性に自分を合わせて分化する組織特異的分化能力(site-specific differentiation)があり、未分化状態で注入しても癌を誘発しないことから、移植された後、直ぐに必要な細胞を作り出すこと以外にも、後で必要に応じて未分化状態の幹細胞を再び作って貯蔵する自己再生産(self-renewal)能力を有する長所がある。
【0006】
前記の長所により、成体幹細胞は最近その重要性が浮き彫りにされており、成体幹細胞を生体内で得るための多様な研究が進められている。
【0007】
脂肪組織は生体内で正常な成長と生理作用において重要な役割を果たしているものの、今まではその重要性が看過されていた。最も一般的な脂肪の形態は皮膚の下層(皮下脂肪)に位置し、腹腔内(内臓脂肪)に位置するか又は生殖器管周囲(生殖腺脂肪)に位置する白色脂肪組織である。成人における多少少ない一般的な形態は褐色脂肪組織であって、新生児の時期に熱を生成する重要な役割をする(Gimble, New Biol, 2(4):304-12, (1990))。
【0008】
しかしながら、事実、生殖能力と成熟過程は個体の脂肪組織貯蔵と密接に連関している。女性と男性の思春期は脂肪組織由来ホルモンの生成と分泌とに密接に関連し、体脂肪組成に密接に関連する。さらに、ブドウ糖代謝とエネルギー均衡においても重要な役割を果たす。
【0009】
過去数年間、生物質分野でかなりの進歩があった。現在これを基に多くの物質が開発され、かつ、使用されている。このような進歩にも拘らずヒトの脂肪組織の利用に対しては、多くの研究がなされていないのが事実である。しかしながら、最近、脂肪組織内に成体幹細胞が存在することが確認されて以来(Zuk PA, et al., Molecular Biology of Cell, 13:4279-4295(2002);Rodriguez AM, et al., Biochimie, 87:125-128(2005))、脂肪由来の幹細胞の活用に対する多くの研究等が進められ始めた。
【0010】
また、近年、生化学及び分子生物学の発展を基盤に、ヒトの生体内に存在する少量の信号物質(成長因子)等が発見されるようになり、これを基にした生体老化理論が再構築されている最中である(Stanley Cohen, Nobel Lecture 1986, Dec, 8)。さらに、この信号物質(成長因子)は年を取るにつれて生体内で減少し、この成長因子の減少がヒトの老化と密接な関係にあることが究明されつつある(Sporn M and Roberts A, Handbook of Experimental Pharmacology, Vol. 1, Vol. 95/1, 1990, Springer-Verlag, DE, Berlin., pp. 667-698)。
【0011】
従って、生体の成長因子を外部から供給すると成体の老化が抑制できることが研究されており、その物質の具体的な効果に対しても研究が進められている(GE Pierce and TA Mustoe, Annu Rev Med, 46. 467-481(1995))。具体的にこの信号物質(成長因子)の構造と合成に対する研究が進められたものの、大部分の成長因子は蛋白質の構造を有しており、その構造が3次元的で複雑なため、化学的に合成するにおいて多くの問題点が生じており、そのような合成に要する費用もまた極めて高価であることが現実である。
【0012】
ここに、本発明者等は人体内における活性を維持しながら、低廉な価格で活性型のヒトの成長因子を獲得する方法に対して研究を進めていた最中、脂肪由来成体幹細胞が成長因子を分泌するという事実に注目するに至った(Rehman, J. et al., Circulation, 109: 1292-1298(2004))。
【0013】
しかしながら、脂肪由来の成体幹細胞に関する研究は、大部分その細胞自体を利用するもの、もしくは分化に関する研究であり、これを利用した成長因子の合成法に関する方法については、研究が殆どなされていない状態であった。
【0014】
特許文献1「改善された脂肪細胞、分化された脂肪由来成体幹細胞及びこれの用途」では、脂肪由来成体幹細胞を用いて生体の生着率を増加させ得る方法が開示されているものの、成長因子の意味ある合成については開示されておらず、特許文献2「脂肪細胞分化調節機能を有するPBRリガンド及びその誘導体化合物、及びこれを含有する脂肪細胞分化調節用組成物」では、脂肪細胞を他の特定細胞に分化する方法に関する内容を開示しているのみである。
【0015】
さらに、特許文献3「ヒト幹細胞の無動物血清培養培地組成物及び肝細胞への分化誘導方法」では、無動物血清を用いたヒトの幹細胞の分化に対する方法について開示され、特許文献4「細胞移植のための細胞の生産方法」では、細胞移植のための幹細胞の利用に関して開示されている。
【0016】
このように脂肪由来成体幹細胞を利用した成長因子の合成に対する研究が不充分であることは、成体幹細胞の活用方法が他の細胞への分化を通じた利用にその焦点が絞られていて、幹細胞の細胞的差異点に対してはその研究が不十分な部分があったためと判断される。
【0017】
さらに、前述した通り、成長因子を合成した方法に対しては、特許文献5「組替えられたヒトの内皮細胞成長因子の製造方法」、特許文献6「遺伝子組替え技術によるヒト上皮成長因子の製造方法」、特許文献7「生物学的に活性であるヒト酸性繊維芽細胞成長因子の製造方法と脈管形成促進のためのその用途」等、遺伝子組替え技術による成長因子の製造方法に関してのみ研究されてきた。
【0018】
ここに、本発明者は脂肪由来成体幹細胞を通じた成長因子の大量生産方法に対して多年間研究し、その成果で適切な培養条件の確立、物理的及び/又は化学的刺激を通じて、脂肪由来成体幹細胞が特定した刺激を加えない脂肪由来成体幹細胞と比較するに、著しく有効な量の成長因子を合成して分泌することを見出した。
【特許文献1】韓国特許公開第2004−94910号
【特許文献2】韓国特許公開第2005−6408号
【特許文献3】韓国特許公開第2005−99274号
【特許文献4】韓国特許登録第484550号
【特許文献5】韓国特許登録第101436号
【特許文献6】韓国特許登録第62551号
【特許文献7】韓国特許公開第2003−45032号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は組替え又は化学的方法により合成された成長因子よりも、生体でより優れた活性を有するヒト成長因子を脂肪由来の成体幹細胞から大量に収得することを目的とする。
【0020】
本発明は脂肪由来幹細胞から多量に収得したヒト成長因子又は、その培養液を含む安全で効果的な医薬品又は化粧品を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、本発明は(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来の成体幹細胞を単離する段階;(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養して、無血清培地で継代培養する段階;(iii)脂肪由来幹細胞に低酸素培養、紫外線照射、栄養分欠乏及び機械的摩擦より選ばれるいずれか一つ以上の物理的刺激を加える段階;及び(iv)選択的にビタミンA、ビタミンB、ビタミンC及びビタミンDより選ばれる一つ以上のビタミンを培養液に添加する段階を含み、この際、(iii)段階と(iv)段階はヒト成長因子の最大生産が起こる条件で組合わせて進行する、脂肪由来幹細胞からヒト成長因子を大量に生産する方法を提供する。
【0022】
さらに、本発明は前記方法により収得したヒト成長因子を含有する機能性化粧料組成物を提供する。
【0023】
またさらに、本発明は前記方法により収得した脂肪由来成体幹細胞培養液を含有する機能性化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、脂肪由来成体幹細胞を利用してヒト成長因子を多量に生産することが可能であり、本発明に伴う生産方法で生産した成長因子が既存の生産方法と比較するに、より優れた安定性と活性を有し、ヒト生体の成長因子と同一形態の作用が可能であることが確認された。さらに、脂肪由来幹細胞の培養液及びそれより分離した成長因子を通じて皺改善及び治療、傷治療、傷跡の改善及び治療、等の医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用して有用に使用できるものと期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1形態は、脂肪由来幹細胞を利用した成長因子の大量生産方法に関する。
【0026】
脂肪由来幹細胞が含有している成長因子には、酸性繊維芽細胞成長因子(acidic FGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(basic FGF)、インシュリン-類似成長因子-1(IGF-1)、インシュリン-類似成長因子-2(IGF-2)、角質形成細胞成長因子 (KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、ヒト形質転換成長因子-アルファ(TGF-α)、ヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)、脈管内皮細胞成長因子(VEGF)、表皮細胞成長因子(EGF)、神経細胞成長因子(NGF)又はこれらの混合物からなる群の中で選ばれた成長因子が含まれる。
【0027】
本発明では、脂肪由来の幹細胞を用いて特異的に下記成長因子の合成促進を図ろうとした。
【0028】
1)塩基性繊維芽細胞成長因子(basic Fibroblast Growth Factor、以下「bFGF」という)
【0029】
bFGF又は、ヘパリンが結合された成長因子2(HBGF-2)は、7つの種類にアミノ酸水準で約30〜50%の相同性を有する要素等で構成されている(Burgess, W.H and Maciag, T., Annu. Rev. Biochem., 58:575-606(1989); Baird, A. and Klagsbrun, M., Cancer Cells, 3(6):239-43(1991))。bFGFは神経組織、脳下垂体、副腎皮質、黄体、胎盤から分離される。
【0030】
生体内から分離されたbFGFは約18kDaの大きさを有する。多くの研究からbFGFのさらに大きい形態の種類が存在することが究明され、その大きさは約24kDaで、AUG開始部位を含まない箇所における解読開始により蛋白質のアミノ終端部が延長されて表れる現象である(Burgess, W.H and Maciag, T., Annu. Rev. Biochem., 58:575-606(1989); Baird, A. and Klagsbrun, M., Cancer Cells, 3(6): 239-43(1991); Prats, H. et al., PNAS, 86:1836-1840(1989); Quarto, N. et al., J. Cell. Physiol., 147(2):311-8(1991); Bugler, B. et al., Mol. Cell. Biol., 11(1):573-7(1991))。このような現象は細胞質より細胞液にbFGFを位置させる結果を招き(Quarto, N. et al., J. Cell. Physiol., 147(2):311-8(1991); Bugler, B. et al., Mol. Cell. Biol., 11(1):573-7(1991))、一般的な組替え又は化学的方法により生産されるbFGF蛋白質は18kDa部位を基にして生産された。これはbFGFが形態学的に疎水性信号ペプチド塩基配列が欠乏している状態であることから、従来の方法とは違うように表出され得る(Mignatti, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:11007(1991))。
【0031】
2)脈管内皮細胞成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor、以下「VEGF」という)
【0032】
VEGF(Ferrara, N. and Hanzel, W.J. Biochem Biophys Res Commun, 161(2):851-8(1989)は血管透過性要素(Senger, D.R. st al., Science, 219(4587):983-5(1983))として知られており、これは同種二量体34-42kDaの分子量を有し、ヘパリンが結合されたグリコ蛋白質である。これは血管形成要素を有していて、内皮細胞の類似分裂促進と血管透過性能力を向上させ得る。
【0033】
VEGFは制限された塩基配列で知られた1次構造で表現され、これは血小板由来成長因子(PDGF)のA、B鎖と相同性を有する。このような成長因子等は保存された8個のシスティン残基を有し、二硫化結合外内部鎖に含まれる。VEGF蛋白質が暗号化しているcDNAは血小板由来成長因子(PDGF)と53%アミノ酸配列の相同性を有し、VEGFはヒト胎盤のcDNAライブラリーから分離したものである(Maglione, D. et al., PNAS, 88:9267(1991))。この蛋白質を胎盤成長因子(PGF)と称し、現在ではVEGFのファミリーの内の一つとして認識されている。VEGFとの相同性を基に、胎盤成長因子(PGF)は血管形成要素として提案されている。
【0034】
ヒトVEGFに対する遺伝子は8個のエキソン内で組合わされる。選択的な接合の結果として、4個の単量体的VEGFを暗号化している121、165、189、206アミノ酸塩基配列を含む。それぞれは26個の信号ペプチドアミノ酸残基を有していて、これにより検出することができる。VEGF121とVEGF165は細胞の基質として露出される拡散性蛋白質であって、VEGF189とVEGF206はヘパリンと高い親和力を有していて、細胞外脂質体内でヘパリンとプロテオグリカン結合をなす。VEGFはNと連結されたグリコシル部位を含んでいて、これは本来グリコ蛋白質である。
【0035】
一般的な組替え又は化学的方法により生産されるVEGF蛋白質は拡散性蛋白質であるVEGF121とVEGF165部位を基にして生産される。従来では、組替えられたヒトVEGFの大腸菌内発現がインビトロで本来のVEGFと生物学的役割の差がないものとして研究された(Connoliy, D.T. J. Cell. Biochem, 47(3):219-23(1991); Schott, R.J. and Morrow, L.A. Cardiovasc, Res., 27(7):1155-61(1993); Neufeld, G. et al., Prog. Growth Factor Res., 89-97(1994); Senger, D.R. et al., Cancer and Metastasis Reviews, 12(3-4): 303-24(1993))。
【0036】
3)ヒト形質転換成長因子-ベータ(Transforming Growth Factor-β、以下「TGF-β」という)
【0037】
腫瘍類似性表現型として分化される培養性の繊維芽細胞の形質転換を促進する要因である、ヒト形質転換成長因子(TGF)はTGF-αとTGF-βの二つの蛋白質の混合体で構成され、腫瘍促進要素より抑制要素と随伴して発見される(Lawrence, D.A. Eur. Cytokine Netw, 7(3): 363-74(1996); Cox, D.A. and Maurer, T., Clin. Immunol. Immunopathol, 83(1): 25-30(1997); Alevizopoulos. A. and Mermod, N., Bioessays. 19(7):581-91(1997))。
【0038】
この二つの分子等は、骨格形成蛋白質である5種類の活性体と不活性体を有するTGF-β1を含んでいるスーパーファミリーの一つの構成要素である(Kingsley, D.M., Genes Dev, 8:133(1994))。ヒトのTGF-β1は25kDaの分子量と二硫化結合、ビグリコシル同種二量体で構成されており、略大部分の哺乳動物種等間で100%保存的な遺伝子配列を有していると知られている。TGF-β1はサブチリシンと類似した蛋白質分解酵素により、前駆体で二硫化結合体が伝達されながら細胞内信号伝達を開始するようになり(Dubois, C.M. et al., J. Biol. Chem., 270:10618(1995))、一般的にこれは不活性体又は2種の複合体として分泌される(Gleizes, P-E. et al., Stem Cells, 15: 190-197(1997))。TGF-β1信号伝達過程は、2種の収容体を含んでいて(ten Dijke, P. Curr. Opin. Cell Biol, 8(2):139-45(1996); Derynck, R. and Feng X.H., Biochim. Biophys. Acta 1333(2): F105-50(1997); Padgett, R.W. et al., Bioessays, 20(5):382-90(1998))、75kDaのリガンド結合蛋白質であるTGF-β RII二量体は持続的に活性化される細胞内セリン-チレオニンキナーゼ酵素を有し、TGF-β1との結合によりTGF-β RIIは53kDaの信号伝達二量体蛋白質であるTGF-β RIを構成して、リン酸化させる。リン酸化されたTGF-β RIは蛋白質キナーゼを活性化させ、細胞内蛋白質であるSMADSを通じて年次的な信号開始を誘導する。
【0039】
信号伝達過程に関与するTGF収容体は全ての細胞から発現され、略大部分の生理学的な作用に影響を及ぼす。その体系的で細胞特異的な活性化は極めて複雑な機構ではあるものの、3種の基礎的活性を帯びている。TGF-β1は一般的に抑制要素のような細胞の増殖を調節し、蛋白質分解の阻害と合成の繰返しに伴い、細胞膜外に蛋白質分解物等の沈澱を図り、免疫抑制反応を多様な機構を通じて促進する。
【0040】
従前の方法である組替え又は化学的合成により生産されるTGF-β1蛋白質は、25kDaの大きさを有する活性化状態の蛋白質であるため、インビトロで本来のTGF-β1蛋白質と類似した生物学的活性を有しているものの、これはTGF-β1蛋白質固有の性質の一部のみを含む。
【0041】
本発明の第1形態に伴う方法は(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来の成体幹細胞を単離する段階;(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養段階;(iii)脂肪由来幹細胞に低酸素培養、紫外線照射、栄養分欠乏及び機械的摩擦より選ばれるいずれか一つの物理的刺激を加える段階;及び(iv)選択的にビタミンA、ビタミンB、ビタミンC及びビタミンDより選ばれる一つ以上のビタミンを培養液に添加する段階を含み、この際、(iii)段階と(iv)段階はヒト成長因子の最大生産が行われる条件で組合わせて進行させる。
【0042】
幹細胞の収得
本発明に伴う脂肪由来の成体幹細胞は、脂肪組織内に存在する細胞の内で精製過程を経て収得することが可能である。好ましくは、ヒトの脂肪由来の成体幹細胞を収得することであって、このためにヒトの脂肪組織から脂肪由来幹細胞を分離する。
【0043】
脂肪組織は皮下、網膜、内臓、乳房生殖腺又はその他の脂肪組織部位に由来する褐色又は白色脂肪組織であり、皮膚の下層にある白色脂肪組織は脂肪吸引術を用いて容易に得られる。
【0044】
脂肪組織は、一般に施行される脂肪吸引術の過程で廃棄されていた脂肪組織を利用することが可能なことから、追加的に侵襲的施術をする必要が無いという点でもその有用性が倍増する利点がある。分離した脂肪吸引物を洗浄して脂肪組織のみを分離し、脂肪組織の細胞外基質(extracellular matrix)をコラゲナーゼで酵素処理した後、遠心分離し、高密度の幹細胞を含むストロマ性血管分画を収得する。このようにして得たペレットを洗浄した後、細胞濾過器を通過させ、その他の組織を除去し、単核球分離溶液で赤血球を含む細胞破片と単核細胞のみを分離する。分離された単核細胞を非誘導性培養液で培養後、非接着性細胞等が除去される。
【0045】
幹細胞の培養
本発明では、前記過程で獲得した脂肪由来幹細胞を利用した後続作業である試験管内における培養のため固有の培養培地を確立した。
【0046】
細胞培養の開始に先立って供給源から抽出した生検は、一般的な抗生剤を含む洗浄培地を利用した反復的な洗浄過程を通じて後続培養にあり得る汚染の可能性を最小限に減少させ得る。
【0047】
本発明では、脂肪由来幹細胞において、成長因子の最大合成と分泌とを誘導するように培養培地を最適化する。
【0048】
具体的には、脂肪由来幹細胞の試験管内培養を、血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階を順次進行させることにより、成長因子の合成量を極大化する。
【0049】
血清を含む初期段階細胞培養のための培地は、脂肪由来幹細胞のような細胞型を維持して保管するに適した目的の培地であることが好ましい。
【0050】
本発明では、当業界で一般的に細胞培養に使用するDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)を基本にして、細胞培養に一般的に使用される血清を含む。
【0051】
この際、初期培地に7〜10%のジメチールスルホキシード(DMSO; dimethyl sulfoxide)を添加すれば凍結培地であることも有り得、従って、幹細胞を凍結した後、必要な場合に解凍して使用できる。
【0052】
血清は0.1〜20%の牛の胎児血清(FBS)を添加するのが好ましく、抗生剤、抗真菌剤及び汚染を引起すマイコプラスマの成長を予防する試薬を添加するのがより好ましい。
【0053】
抗生剤にはペニシリン-ストレプトマイシン等、通常細胞培養に使用される抗生剤が全て使用可能であり、抗真菌剤としては、アンポテリシンB、マイコプラスマ抑制剤にはタイロシンを利用するのが好ましく、ゼンタマイシン、シプロプロキサシン、アジトロマイシン等でマイコプラスマ汚染を防止することができ、必要に応じてグルタミン等の酸化栄養素と、ソジウムピルベート等のエネルギー代謝物質をさらに添加することができる。
【0054】
より好ましい培地は1〜2mMのグルタミン、0.5〜1mMソジウムピルベート、0.1〜10%FBS、1%抗生剤(100 IU/ml)で補充されたグルコース及びDMEMを含有し、これを完全培地と称する。この際、グルコースの濃度範囲は約1g/L〜4.5g/Lである。前記完全血清培地は脂肪由来幹細胞の保管と維持及び試験管内の安定した基本培養条件を提供し、効果的な細胞の安定化を呈する。
【0055】
初期培養の一般的培養条件は細胞培養に最も適した条件を適用して、湿度90〜95%、温度35〜39℃、5〜10% CO2培養器で培養し、5〜10% CO2培養の際には最終濃度が0.17〜0.22%になるようにソジウムバイカボネート等の炭素調節源が添加される。
【0056】
初期培養段階の間、組織断片は培養容器の底に付着された状態を維持させることが好ましく、細胞培養の標準技術に伴い、トリプシン-EDTA処理による短い刺激で成長を促進することができる。
【0057】
累積集団倍増時間(doubling time)はフラスコ内培養中の細胞が75〜85%合流時(confluence)に到達するまで維持し、好ましくは80%合流時期に細胞を採取して、後期培養の無血清培地で継代培養を行う。
【0058】
本発明では脂肪由来幹細胞において、成長因子の分化を促進する成長因子分化用無血清培地を提供する。
【0059】
成長因子分化用無血清培地を利用した継代培養は、培養液を除去したフラスコをリン酸化緩衝溶液で洗浄し、トリプシン-EDTAに細胞を落とした後、細胞浮遊液を遠心分離して得たペレットをリン酸化緩衝溶液で洗浄するが、洗浄過程は2〜3回繰返すのが好ましい。洗浄されたペレットは本発明で開発された無血清培地により浮遊させ、細胞培養フラスコに約3倍に継代させる。
【0060】
本発明で開発された無血清培地は、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMを基本にし、Ham’s F-12栄養素混合液(SIGMA, Cancer Research Vol47, Issue 1 275-280)を約1:0.5〜2の比率で添加する。この際、L-グルタミン等の酸化栄養源、ソジウムピルベート等のエネルギー代謝物質、ソジウムバイカボネート等の炭素調節源を添加することが可能で、その他に本発明で目的とする成長因子ではない他の成長因子等や成長ホルモン等も添加することができる。
【0061】
本発明で開発された無血清培地の固有性は、Ham’s F-12栄養素混合液から見い出せる。本混合液は細胞の成長と恒常性維持を助け、脂肪由来幹細胞の初期培養後、後期培養において、細胞の安定性と維持力増進に関与される種々の無機質とアミノ酸等、脂肪由来幹細胞から分泌される成長因子の、より高い生産が促進できるビタミン系列の栄養素等と異なる因子等が一定の比率で混合される。本発明で確立化されたHam’s F-12混合液を含む無血清培地で、脂肪由来幹細胞の培養と成長因子の生産力は一般的な動物血清を含んでいる血清培地の条件と比較した場合、減少された現象又は否定的な効果が全く見られず、一部成長因子は無血清培地でより高い生産力を呈し、血清による未知の成分を有する血清培地とは別に培養培地の全ての成分含量が確認できる。
【0062】
これは、血清培地に含まれた動物血清から、もたらされ得る種々の変数等を最小化し得ることの示唆であり、約50%程度の少ない費用で本発明が目的とする効能が達成できるという利点がある。
【0063】
下記表1は本発明で確立した無血清培地に混合されるHam’s F-12栄養素混合液各構成成分等の成分と含量を示したものである。
【0064】
【表1】
【0065】
前記無血清培地のアミノ酸、ビタミン、無機塩の成分と含量は本発明の目的を損なわない条件下で当業者により変更可能なことは明らかである。
【0066】
本発明の目的を達成するため、前記方法で培養した脂肪由来成体幹細胞を、特定刺激を通じて活性化させることにより、目的とする成長因子の合成を促進することが可能である。この際、成長及び刺激条件において物理的条件と化学的条件に区分して刺激することが可能である。
【0067】
物理的刺激には、紫外線、栄養分、酸素等をその例として挙げられ、化学的条件としては細胞培地組成物において、ビタミンとその他の活性化化合物等がその例として挙げられる。
【0068】
物理的刺激
既存の脂肪由来成体幹細胞培養方法に比べて著しく多い量の成長因子を収得するために、低酸素反応(Circulation. 2004 Mar 16;109(10):1292-8.)、紫外線照射(FASEB J. 2003 Mar;17(3):446-8)、栄養分欠乏反応(Blood. 2004 Nov 1;104(9):2886-92. epub 2004 Jun 24)、機械的摩擦等の物理的刺激を適用することができ、このような物理的刺激で本発明の目的とする成長因子を選択的又は総合的に増加させ得る。
【0069】
物理的刺激が成長因子の合成及び分泌を促進するか否かを確認するために、本発明では前記の通り、脂肪由来幹細胞を血清培地及び無血清培地を順次的に利用して試験管内培養した後、細胞を収去して培養液を完全に除去した状態で、それぞれ低酸素培養、紫外線照射、栄養分欠乏又は機械的摩擦を行った後、再度正常的に培養して、脂肪由来幹細胞の培養液に分離された成長因子の濃度を測定した。
【0070】
具体的には、低酸素培養は成長因子の最大合成のために、約5%二酸化炭素に1〜5%の酸素条件で36〜48時間培養するのが好ましい。紫外線照射は280〜320nm波長の紫外線Bを80〜120mJ/cm2の照射量で照射するのが好ましい。栄養分欠乏反応にはMg2+とCa2+が添加されたDulbecco’s phosphate buffered salineに細胞が落ちる手前状態の最大4時間まで培養した後、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMにHam’s F-12栄養素混合液を約1:1の比率で添加して混合した培地で正常培養をするのが好ましい。機械的摩擦は、細胞培地に格子状に掻いてくれるスクラッチ刺激を加えるのが好ましい。
【0071】
その結果、bFGFの場合には、低酸素刺激を与えた場合、1.74倍増加し、紫外線刺激を与えた場合2.71倍増加した。さらに、前記物理的刺激の内低酸素刺激と、紫外線刺激を並行した場合、その相乗効果が増大された(図9参照)。
【0072】
VEGFの場合には、低酸素刺激を与えた場合2.53倍増加し、紫外線刺激を与えた場合1.36倍増加し、機械的摩擦を利用したスクラッチ刺激を与えた場合1.30倍増加した。さらに、前記物理的刺激の内低酸素刺激、紫外線刺激、スクラッチ刺激を並行した場合その相乗効果が増大された(図10参照)。
【0073】
TGFβ-1の場合には、低酸素刺激を与えた場合1.64倍増加し、紫外線刺激を与えた場合1.75倍増加し、機械的摩擦を利用したスクラッチ刺激を与えた場合2.13倍増加し、栄養分欠乏刺激を与えた場合2.01倍増加した。さらに、物理的刺激の内低酸素刺激と紫外線刺激を並行した場合、その相乗効果が増大された(図11参照)。
【0074】
化学的刺激
化学的な条件では、一般的に広く知られた多様な活性化化合物等を個体に直接的又は間接的に露出させるのが好ましい。
【0075】
本発明に伴う脂肪由来幹細胞に添加し得る活性化化合物には、細胞老化と関連したレチノ酸と、その前段階の産物であるビンポセチンと、このようなサイクルの補助役割をするピカミロンがあり、蛋白質キナーゼの役割を行うキナサンとキナサン塩がある。その他にアデニンジヌクレオチド、アセチル-L-カルニチン等、新陳代謝に関与する炭水化物合成の因子等は細胞に重要な栄養作用をし、アポトーシス(apoptosis)中止役割をするジメチルアニモエタノール、細胞増殖に関与するL-リポ酸、L-ヒドロキシ酸、さらに、アミノ酸生産に関与する補助酵素Q-10のような異なる促進性添加剤等を含む。上述した通り、これら活性化化合物等は、脂肪由来幹細胞培養の際、同時に又は個別的に添加することもできる。
【0076】
多様な活性化化合物の内、本発明ではビタミン系列を利用した刺激効果に焦点を絞った。
【0077】
一般的に、ビタミンAは1次的な免疫反応と、これに関連した細胞発達過程等、計画化されたアポトーシス(apoptosis)の一連反応等に関与するとして知られており、代表的な物質としはレチノイン酸(retinoic acid)が知られており、これはレチノイン酸レセプター(retinoic acid receptor;RAR)に結合し、これに関連した代謝過程を調節して活性化させる。その内RAR-alpha、RXR-alpha、RXR-betaに結合された複合体等は、主要免疫細胞であるT lymphocyteの発達に関与する128個余りの遺伝子の発現を促進又は抑制すると発表された。特に、アポトーシス(apoptosis)の機構で代表的な抗アポトーシス蛋白質(anti-apoptotic protein)として知られたbc12 family遺伝子等が確かに増加することを見せてくれる(Rasooly, R. et al., J. Immunol., 175:7916-7929(2005); Spilianakis, C.G. et al., Eur. J. Immunol., 35(12):3400-4 (2005);Evans T, Exp. Hematol., 33(9):1055-61(2005))。これは、ビタミンAがアポトーシス(apoptosis)反応を抑制する効果を示しうることを示唆している。
【0078】
ビタミンBは広くリボフラビン(riboflavin)として知られており、ヒトの健康維持に重要な役割をし、スウェーデンのある研究チームはこの物質の処理によって、好中球遊送(neutrophil migration)の効果を呈することにより、増加された1次的免疫反応を引起すとして発表した(Verdrengh, M. and Tarkowski, A., Inflamm. Res., 54(9):390-3(2005))。これは、1次的免疫細胞等の移動による拡張された初期免疫反応効果が期待できることと予想される。
【0079】
ビタミンCの細胞内最も重要な機能は、コラーゲン合成と新しい繊維芽細胞の合成の促進であり、代表的なものとしてアスコルビン酸(ascorbic acid)がある。他のサイトカインであるTGF-βとIFN-γと同時処理はその効果を倍加させる(Chung, J.H. et al., J. Dermatol. Sci., 15(3): 188-200(1997))。他のビタミン等より細胞発達と分化に影響を及ぼすものとして知られており、多く使用されてきたビタミンD3は細胞成長と分化発達過程、特に、表皮(epidermis)の角質形成細胞(keratinocytes)と、骨格形成細胞である骨芽細胞(osteoblasts)と破骨細胞(osteoclasts)等の形成過程に重要な信号伝達体系を媒介している。さらに、炎症反応に含まれた種々のサイトカインである例えば、IL-1α、IL-6、IL-8等に抑制効果を有する(Alper, G. et al., Endocr. Rev., 23: 763(2002))。
【0080】
本発明では、化学的な条件でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDをそれぞれ又は、混合して細胞毒性が無い以下の有効水準で培養液に添加して培養した。
【0081】
ビタミンを利用した化学的刺激が成長因子の合成及び分泌を促進するか否かを確認するために、本発明では前記の通り、脂肪由来幹細胞を血清培地及び無血清培地を順次的に利用して試験管内培養し、細胞をよく収去してリン酸化緩衝溶液を利用した洗浄過程で培養液を完全に除去し、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMにHam’s F-12栄養素混合液を約1:1の比率で添加して混合し、選択的にL-グルタミン等の酸化栄養源、ソジウムピルベート等のエネルギー代謝物質、ソジウムバイカボネート等の炭素調節源を添加した培地に適量のビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDをそれぞれ又は、混合して培養液に添加し、脂肪由来幹細胞の培養液に分泌された成長因子の濃度を測定した。
【0082】
具体的に、ビタミンAの最適濃度は2〜5μM、ビタミンB2の最適濃度は50〜100μM、ビタミンCの最適濃度は10〜100μM、ビタミンDの最適濃度は5〜10μMであり、ビタミンを添加して48時間以上培養するのが好ましい。ビタミンを成分別に混合する場合にも最適濃度は同一である。
【0083】
その結果、bFGFの場合、ビタミンAの場合には1.62倍増加し、ビタミンBの場合には1.33倍増加し、ビタミンCの場合には2.33倍増加し、ビタミンDの場合には2.80倍増加することを確認した。
【0084】
VEGFの場合、ビタミンAの場合には1.59倍増加し、ビタミンCの場合には1.68倍増加し、ビタミンDの場合には1.30倍増加することを確認した。
【0085】
TGFβ-1の場合は、ビタミンAの場合には1.20倍増加し、ビタミンBの場合には1.56倍増加し、ビタミンCの場合には1.20倍増加し、ビタミンDの場合1.16倍増加することを確認した。
【0086】
ビタミンを混合して培養する場合、ビタミン等の濃度を上述のように最適化した状態でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDが混合された培養液下では、bFGFの場合には3.62倍、VEGFの場合には2.03倍及びTGFβ-1の場合には1.68倍に増加することを確認した。
【0087】
刺激の結合
bFGFの場合、物理的刺激と化学的刺激を同時に与えた場合には、紫外線光を照射し、直ぐにビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば4.11倍に増加した。
【0088】
VEGFの場合、紫外線光を照射した後、スクラッチ刺激を与え、直ぐにビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば、3.92倍に増加した。
【0089】
TGFβ-1の場合、紫外線光を照射して、スクラッチ刺激を与え、栄養分欠乏刺激を与えた後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば、2.35倍に増加した。
【0090】
さらに、bFGF、VEGF及びTGFβ-1を得るためには、低酸素刺激と紫外線刺激及びビタミンA、B、C、Dを添加して組合わせるのが最も好ましい。具体的に紫外線光量を与えた後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば、bFGFが4.11倍、VEGFが3.8倍及びTGFβ-1が1.9倍で生産される。
【0091】
本発明の第2形態は、本発明の第1形態に伴う方法で収得した培養液、又はこれより精製したヒト成長因子の新たな用途を提供する。
【0092】
具体的には、本発明により収得した脂肪由来幹細胞培養液又はヒト成長因子は皺改善及び治療、傷治療、傷跡改善及び治療のための用途に使用される医薬品、医薬部外品、医薬補助品、化粧品等に利用できる。
【0093】
本発明により収得した脂肪由来幹細胞培養液は、i)脂肪由来幹細胞を無血清培地で培養するか又は、ii)血清培地で安定化させた後、無血清培地で培養した場合、又は、iii)培養の際、物理的刺激又は化学的刺激を通じて細胞を活性化させた場合を全て含み、本発明に伴うヒト成長因子は前記培養から得られた細胞又は培養液を精製して収得したヒト成長因子を全て含む。
【0094】
好ましくは、本発明の第1形態によって最適化された方法で、血清培地と無血清培地を順次適用して培養した培養液又はこれより精製したヒト成長因子を利用することである。
【0095】
より好ましくは、本発明の第1形態によって最適化された方法で、血清培地と無血清培地を順次適用して培養し、この際、物理的刺激又は化学的刺激を通じて細胞を活性化させて収得した培養液又はこれより精製したヒト成長因子を利用することである。
【0096】
脂肪由来成体幹細胞から生産された成長因子は、既存の合成方法、即ち、化学的合成法でアミノ酸を使用した成長因子の合成、遺伝子組替え方法による成長因子の合成と区別され、このような遺伝子組替え方法や化学的合成法で生産された成長因子と比較するに、生体内本来の成長因子と構造的により類似することから、皮膚適合性に優れ、安全性が確保される利点がある。
【0097】
さらに、機能的な面でも異性体や3次元構造的に立体特異性が表れない生体内の成長因子と同一形態の成長因子であって、組替え方法や化学的合成法で生産された成長因子と比較するに、より優れた活性が確保される利点がある。
【0098】
具体的に、繊維芽細胞増殖能力を比較した結果、本発明により脂肪由来幹細胞を利用して生産された成長因子が、既存の合成法で生産された成長因子よりその活性が優れていることを確認した(図6参照)。
【0099】
さらに、本発明に伴う脂肪由来幹細胞の培養液又はこれより精製したヒト成長因子は、細胞内コラーゲン合成を増加させ、繊維芽細胞の増殖を促進させる活性があり、紫外線による角質形成細胞の増殖を抑制し、皮膚過角化を緩和させて、皺を改善する活性がある(表4、6、7、8及び図6、12、13、14、15、16参照)。
【0100】
従って、本発明に伴う脂肪由来幹細胞の培養液又はこれより精製したヒト成長因子は、皺改善及び治療、傷治療、傷跡改善及び治療のための用途に使用される医薬品、医薬部外品、医薬補助品、化粧品の原料として有効に利用できる。特に、本発明の方法によれば、ヒト成長因子を多量に収得することができ、従って、他の操作無しに脂肪由来成体幹細胞で合成される成長因子では、産業的に有効な量を収得することが殆ど不可能である問題を解決するという利点がある。
【0101】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳しく記述するものの、本発明の範囲がこれらの実施例により限定されのではなく、請求範囲に記載された本発明の保護範囲内で多様な補完及び変形が可能であることは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者には明らかなことである。
【実施例】
【0102】
[実施例1]
(1-1) 脂肪由来幹細胞の単離
病医院(リーダス皮膚科、ソウル)で収得したヒトの脂肪吸引物を同一量のリン酸化緩衝溶液で洗浄して、脂肪組織のみを分離した。
【0103】
脂肪組織の細胞外基質を37℃、5%CO2培養器で45分間0.075%コラゲナーゼで酵素処理し、最適の酵素処理された脂肪組織を1200gで5分間遠心分離させ、高密度の幹細胞を含むストロマ性血管分画を収得した。ぺレットをリン酸化緩衝溶液で洗浄して、70μmナイロン細胞濾過器を通じて、その他の組織を除去し、Histopaque-1077(SIGMA)で赤血球を含む細胞破片と単核細胞のみを分離した。
【0104】
分離された単核細胞をDulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM)、10% fetalbovine serum(FBS)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin streptomycin)、0.17% 重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)を含む非誘導性培養液で37℃、5%CO2培養器で24時間培養後、非接着性細胞等を除去することにより幹細胞を単離した(図1参照)。
【0105】
(1-2)脂肪由来幹細胞の培養
脂肪組織から分離された幹細胞の初期細胞培養はDMEMを使用し、10%FBSを添加して使用した。さらに、抗生剤として1%のペニシリン-ストレプトマイシン(100 IU/ml, GIBCO)を添加し、抗眞菌剤としてアンポテリシンB(O.5μg/ml, Amresco)、マイコプラスマ抑制剤としてタイロシン(10μg/ml, Serva, Heidelberg)、さらに、2mMグルタミンと1mMピルビン酸ナトリウムをさらに添加した。培養条件は湿度95%,37℃、5%CO2培養器で培養し、5%CO2培養時には最終濃度が0.17%になるように重炭酸ナトリウムを添加した。
【0106】
前記(1-1)で単離した幹細胞を104cells/mlになるように細胞浮遊液10mlをT25フラスコ(面積25cm2容量50ml)に移して、前記条件で培養した。
【0107】
累積集団倍増時間(doubling time)はフラスコ内培養中の細胞が80%合流(confluence)時まで維持して、80%合流時期に継代培養を行った。
【0108】
継代培養は培養液を除去したフラスコをPBSで洗浄し、0.25% Trypsin-EDTA(GIBCO)で細胞を落とした後、細胞浮遊液を遠心分離した後、組織数測定と生存能力検査(viability)後再度3倍に継代培養した。継代培養時に使用した無血清培地はフェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMを基本に、Ham’s F-12栄養素混合液(SIGMA)を1:1の比率で添加し、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムを添加した後、0.1重量%になるように重炭酸ナトリウムを添加して使用し、前記過程を3回繰返した。
【0109】
細胞数の測定と、生存能力検査(viability)は0.1mlの細胞浮遊液と同量の0.2% トリパンブルー(trypan blue;SIGMA)を混合した後、血球計(hemocytometer)を利用して顕微鏡視野で染色された細胞と染色されない細胞とを数えて全体細胞中の百分率を求めた。
【0110】
(1-3)幹細胞の確認
脂肪由来幹細胞は多数の癒着及び表面蛋白質を発現する。これらの蛋白質としてSH-2とSH-3とSH-4単クローン抗体は、ヒト中葉幹細胞の細胞表面エピトープを認識する。ペプチド塩基配列と吸光度分析結果、SH-3とSH-4はCD73(ecto-5'-nucleotidase)で識別され、SH-2はCD105(エンドグリン)で識別される。これらの細胞表面マーカ−は脂肪由来幹細胞により共有される(Barry, F. et al., Biochem Biophys Res Commun., 289(2):519-24(2001))。
【0111】
幹細胞の確認は、培養された脂肪組織由来幹細胞を初期、1継代、2継代培養別に蛍光活性化細胞選別装置(Fluorescence Activated Cell Sorter ;Beckman Coulter)で乳細胞分析を行った。具体的には、細胞を0.25%トリプシン-EDTAで採取し、PBSで洗浄した後、105cells/mlになるように合わせ、中葉幹細胞の特異性マーカーであるCD73-PE、CD105-FITC(BD science)抗体で反応させ、488nmのアルゴンレーザーで分析した。
【0112】
その結果、脂肪組織から分離されたPLA細胞の乳細胞分析結果は、初期単離されたストロマ性血管分画では、5.27%の幹細胞相同性を表し(図2参照)、2次継代培養以降にはCD73-PEに対しては92.32%、CD105-FITCに対しては90.67%の幹細胞相同性を呈した(図3参照)。
【0113】
[実施例2]
脂肪由来幹細胞の活性化された成長因子の確認
脂肪由来幹細胞が成長因子を合成するか否かを確認するために、先ず脂肪由来幹細胞を実施例(1-2)の培養培地と培養条件下で培養し、逆転写-核酸重合酵素増幅反応を通じて幹細胞内にあるRNAを確認した。
【0114】
具体的には、脂肪由来幹細胞の全体RNAをRNeasy Plus Minikit(QIAGEN Corp., Valencia, California)で抽出し、RNAをMMLV-reverse transferase(Promega Corp., U.S.A)を使用してPCRで37℃で45分間反応後、65℃で15分間MMLV-逆転写酵素を不活性化させた。特異検出PCR反応液は総量50μlとし、各試薬等の濃度は1.5mM MgCl2と0.25mM dNTP、2.5unit Taq ポリメラーゼ(polymerase)(QIAGEN)であった。PCR反応はTGRADIENT(BIOMETRA)で行い、cDNAの変性のため、94℃で3分を行った後、94℃で30秒(DNA変性)、60℃で30秒(アニーリング)、72℃で30秒(伸長反応)を30回繰返した後、最終伸長のため72℃で5分をさらに延ばして増幅遂行した。上記の通り、逆転写反応を行い、cDNAを合成し、VEGF-β、bFGF、TGFβ-1のプライマー(表2)を利用して逆転写PCRを行った。
【0115】
【表2】
【0116】
その結果、配列番号7に該当する482bpのbFGFの産物(1522bp〜2003bp)と配列番号8に該当する343bpのVEGF産物(1080bp〜1422bp)と配列番号9に該当する212bpのTGFβ-1 産物(2119bp〜2330bp)を脂肪由来幹細胞内の成長因子で確認した(図4参照)。
【0117】
さらに、培養液の中でも成長因子が存在するか否かを確認するため、免疫酵素重合反応(Enzyme-linked immunosorbent assay)を実施した。
【0118】
具体的には、脂肪由来幹細胞を実施例(1-2)の条件下で3継代で培養した培養液1mlを1200gで5分間遠心分離した後、0.22mmフィルターで濾過して細胞残余物を濾過した後、濾過物を段階別に希釈して非特異反応が生じない最適条件を設定し、VEGF、bFGF、TGFβ-1それぞれをサンドイッチELISA キット(Quantikine Human FGF basic Immunoassay, R&D systems)を利用して培養液に分泌された成長因子の濃度を測定した。
【0119】
最適に希釈された成長因子の濃度を調べるために、キット内補正希釈液で同じ濃度比で連続的な希釈をしてスタンダード曲線範囲に入ってくる吸光度での濃度を確認し、スタンダード曲線吸光度範囲に入ってくる値等をデータとして作成した。成長因子が含有された培養液と成長因子の標準溶液をそれぞれの成長因子に対する抗体(Quantikine Human FGF basic Immunoassay, R&D systems)がコーティングされているウェル(well)に100mlずつ入れて、常温で2時間培養した。抗原抗体結合反応が終わった後、各ウェルを洗浄液で4回洗浄し、各成長因子の2次抗体が結合された溶液(Quantikine Human FGF basic Immunoassay, R&D systems)200mlを入れた後、常温で2時間培養した。2次抗体結合反応が終わった後、各ウェルを洗浄液で4回洗浄し、発色試薬200ml(テトラメチルベンジジン、 R&D system)を入れ、450nmでELISA readerにより吸光度を測定した。
【0120】
その結果、bFGFは12時間後54.96pg/ml、24時間後76.393pg/mlの増加量を表し、VEGFは12時間後87.021pg/ml、24時間後163.52pg/mlの増加量を呈した(図5参照)。
【0121】
[実施例3]
繊維芽細胞のコラーゲン生成に及ぼす脂肪由来幹細胞培養液の活性
皮膚皺の発生原因の内の一つとして、皮膚膠原質(コラーゲン)の欠乏が挙げられている。コラーゲンは皮膚真皮を構成する主要蛋白質にして、皮膚構造と弾力を維持する役割を果たしている。コラーゲンは年を取るにつれて生成の減少を呈し、分解も増加され、皮膚真皮層の陥没を誘導して、皮膚の皺を生成するものと知られている。従って、コラーゲンの生成、分解程度を実験して、皮膚皺改善物質の効力を裏付けることができる。
【0122】
(3-1)脂肪由来幹細胞と繊維芽細胞の混合培養
脂肪由来幹細胞と繊維芽細胞の混合培養(coculture)を通じて、繊維芽細胞のコラーゲン生成に脂肪由来幹細胞が及ぼす影響を評価する。試験方法は、脂肪由来幹細胞と繊維芽細胞(fibroblast)をtranswell insert(Costar, Corning)に一緒に培養する際、繊維芽細胞内コラーゲン生成増加程度を繊維芽細胞単独培養と比較することである。
【0123】
a)混合培養
繊維芽細胞(primary cell line)はヒトの皮膚組織の一部(漢江聖心病院診断検査医学科、9歳 circumcison破片)をPBS浮遊状態で細切して、トリプシン50〜100mlで20分間撹拌して遠心分離後、70umナイロン濾過器で濾過して収得した。
【0124】
濾過された細胞浮遊物の繊維芽細胞を培養皿の底に接種し、ぺニシリン(100 IU/mL)、ストレプトマイシン(100g/mL)、10%FBSを含有するDMEM培地を入れ、37℃、5%二酸化炭素を含む培養器内で培養した。80%合流に達した繊維芽細胞を6ウェルプレートにウェル当り5×104個に分株後、継代培養(subculture)の時と同じ細胞培養条件で24時間培養した。
【0125】
実施例(1-1)で単離した脂肪由来幹細胞も繊維芽細胞と同一条件でtranswell insertに24時間培養した後でtranswell insertを繊維芽細胞が培養中の6ウェルプレートによく挿入して混合培養(coculture)した。この際、transwell insertの下方培地を捨てて、PBSで洗浄し、新たな培地を入れて、繊維芽細胞と脂肪由来幹細胞を一緒に培養した。
【0126】
混合培養した培養液を培養24時間、72時間後1mlを取り、培養液中に存在するコラーゲン量を測定した。
【0127】
対照群実験で合流点に達した繊維芽細胞を6ウェルプレートにウェル当り5×104個に分株した後、24時間培養して、脂肪由来幹細胞を接種(seeding)しないtranswell insertのみをtranswell plateによく挿入して培養した。
【0128】
b)コラーゲン生成に対する活性確認
1) Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)を利用したコラーゲン量の測定
コラーゲン量の測定は、Procolagen type I peptide EIA キット (TAKARA BIOMEDICAL Co.)を利用した。Antibody-PoD 複合体溶液(conjugate solution) 100mlをウェルに入れ、コラーゲンスタンダード曲線範囲に入ってくるように補正希釈液に最適に希釈された繊維芽細胞及び、脂肪由来幹細胞と混合培養された繊維芽細胞培養液20μlを入れ、37℃で3時間放置した。次いでウェルを洗浄液で4回洗浄後、発色試薬100μlを入れ、常温で15分間培養後、450nmでELISA readerにより吸光度を測定した。
【0129】
2) Semi-quantity PCRを利用した細胞内コラーゲン量の測定
RNeasy plus mini キット(QIAGEN)を利用し、幹細胞と混合培養された繊維芽細胞の全体RNAを抽出し、抽出された3μgのRNAはMMLV-逆転写酵素(Promega) 200unit、50mM Tris-HCL(pH8.3)、75mM KCl、3mM MgCl2、10mM DTT、10mM dNTP、RNaseinhibitor 25unit、20pmole Oligo-dTを使用した。PCR反応はT-GRADIENT(BIOMETRA)で行い、37℃で45分間反応させた後、65℃で15分間MMLV-逆転写酵素を不活性化させた。コラーゲンI型(GenBank No.NM-000089)の確認のための、特異塩基配列はNCBIのGenbankに登録された塩基配列を基盤に作成し、これを表3に提示した。
【0130】
【表3】
【0131】
その結果、図6に図示した通り、細胞内コラーゲン合成量は対照群に比べて1日培養の際2.17倍増加し、3日培養の際1.27倍増加し、全体コラーゲン合成量は1日培養の際、1.44倍増加し、3日培養の際1.14倍増加したことを確認した。
【0132】
(3-2)脂肪由来幹細胞培養液による繊維芽細胞のコラーゲン合成
脂肪由来幹細胞培養液(conditioned media)が繊維芽細胞のコラーゲン合成に及ぼす影響を確認するために、western blot analysis(特殊蛋白質検出)を行った。
【0133】
脂肪由来幹細胞の培養液を収集するために、継代培養(subculture)後、T75 flaskに5×105の脂肪由来幹細胞を接種(seeding)した。この時、培地はserum free DMEMを使用した。3日間37℃、5% CO2 incubator(培養器)で培養した後、培地を収穫して、0.22um シリンジフィルターで濾過した後、これをserum free conditioned mediaとして実験に使用した。
【0134】
繊維芽細胞は継代培養(subculture)後、6ウェルプレートに5×104で0.1% FBSが含まれたDMEMに接種(seeding)した。24時間培養した後、前記serum free conditioned mediaに替えて、controlでserum free DMEMを使用した。12時間後、2%に血清(serum)を補正し、30時間培養した後、培養液を収穫してwestern blot analysisを実施した。
【0135】
電気泳動(electrophoresis)はSDS-PAGE法を応用して施行し、電気泳動装置はBio-rad社の電気泳動キットを使用した。ゲル(gel)は8%ポリアクリルアミドを使用し、PVDF membrane(bio-rad)を利用して転移(transfer)した。その後、blotを5% nonfat dry milk(脱脂粉乳)が含まれたTBST(50mM Tris, pH8.0, 138mM NaCl, 2.7mM KCl, 0.1% (w/v) tween20)でblockした。1次抗体(primary antibody)はcollagen type I(santacruz)を夜通し反応させ、2次抗体(secondary antibody)はperoxidase-Rabbit anti-goat IgG(Zymed)で30分間反応させた。最後に、抗体を探知するためのdetection reagent(ECL, milipore)に1分間反応させて結果を確認した。
【0136】
その結果、図16に示した通り、脂肪由来幹細胞培養液を繊維芽細胞に処理した時、処理しない培養液よりもコラーゲン量が2倍以上増加した(gene tool softwareで定量;2.16倍増加)。これは、脂肪由来幹細胞の培養液が繊維芽細胞のコラーゲン合成を増加させることを証明しており、従って、脂肪由来幹細胞の培養液が皮膚老化を防ぐ皺改善物質として使用できることを示唆している。
【0137】
[実施例4]
脂肪由来幹細胞培養液の繊維芽細胞の増殖促進確認
実施例(1-2)のように、脂肪組織から分離された幹細胞を3継代した後、106個の細胞をT175フラスコ(面積175cm2, 容量500ml)に塗布して、3日間培養後、培養液を収去して、9歳の男性皮膚組織(漢江聖心病院診断検査医学科9歳circumcison破片)繊維芽細胞4継代細胞が25,000個ずつ分株された6ウェルプレートに幹細胞培養液を10%、25%、50%、100%になるように培養液を添加した。
【0138】
3日経過後、繊維芽細胞の増殖程度を細胞生存力測定キット(cell counting kit-8, Dojindo Molecular Technologies, Inc.)で反応させ、ELISA readerで450nm吸光度を測定した。
【0139】
分析結果、表4に示すように、脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子が繊維芽細胞の増殖を促進することが立証され、脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子の濃度が高くなるほど、このような繊維芽細胞の増殖は比例して促進されることが確認された(図7参照)。
【0140】
【表4】
【0141】
<実施例5>
脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子と、大腸菌(E.coli)から発現された組替え成長因子の比較
実施例(1-2)での通り、脂肪組織から分離された幹細胞を3継代後、106個の細胞をT175フラスコ(面積175cm2, 容量500ml)に塗布して3日間培養後、培養液を収去して9歳の男性皮膚組織繊維芽細胞4継代細胞が5000個ずつ分株された6ウェルプレートに100%濃度の幹細胞培養液を添加し、対照群として大腸菌(E.coli)から発現された同じ濃度の組替え成長因子VEGF、bFGF(Santa Cruz.)を添加した培地と繊維芽細胞の細胞生存力測定キットで比較して見た。
【0142】
その結果、遺伝子組替え法を利用した大腸菌内成長因子遺伝子の過発現と純粋分離を通じて得られた成長因子と、成体幹細胞を利用して合成した成長因子とを比較するに、脂肪由来成体幹細胞を利用して合成した成長因子が、既存の合成方法を通じて作られた成長因子よりその効果に優れることが立証された。分析結果は表5に示す通りである。
【0143】
【表5】
【0144】
<実施例6>
成長因子分泌量を増加させた脂肪由来幹細胞の培養方法
(6-1)物理的刺激
実施例(1-2)での通り、脂肪組織由来幹細胞を3継代した後、培養した細胞が80%合流された時、トリプシン/EDTAで細胞をよく収去したあと、25,000個ずつの細胞を6ウェルプレートに正確に分株した。
【0145】
分株して24時間後、細胞が全て付着された時、培養液を完全に除去して物理的な条件で二酸化炭素5%、酸素1%のマルチガス培養器(sanyo)で培養させ、280〜320nm(model BEX-800; Ultra-Lum, Inc.)波長の紫外線Bを90mJ/cm2の照射量で照射した。栄養分欠乏反応としてはMg2+とCa2+が添加されたDulbecco's phosphate buffered salineに細胞が落ちる直前の状態である最大4時間まで培養した後、実施例(1-2)の無血清培地に替えた。機械的な摩擦を利用したスクラッチは接着し、培養された細胞培地にブレードを利用して縦、横1mmの格子状に掻いてくれるスクラッチ刺激を加えた。
【0146】
(6-2)化学的条件
実施例(1-2)の無血清培地、すなわち、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMにHam’s F-12栄養素混合液を1:1の比率で添加して混合し、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.17%重炭酸ナトリウムが添加された無血清培地に、ビタミンA,ビタミンB,ビタミンC,ビタミンDを細胞毒性のない以下の有効水準で添加して培養した。
【0147】
条件別に37℃、5%二酸化炭素培養器で48時間以上培養した後、培養液上澄液200μlを3,000rpmで遠心分離後、0.22μm濾過紙に濾過後、実施例2の酵素免疫測定法(ELISA)でbFGF、VEGF、TGFβ1の濃度を測定した。
【0148】
検査されたビタミンAの最適濃度は2〜10μM、ビタミンB2の最適濃度は50〜100μM、ビタミンCの最適濃度は10〜100μM、ビタミンDの最適濃度は5〜10μMでMTT assay結果細胞毒性が無く、本発明で望むそれぞれの成長因子の合成が増加することを確認した。
【0149】
(6-3)対照群培養条件
物理的刺激と化学的条件を与えない正常状態の培養を対照群とし、物理的刺激と化学的条件を与えた培養培地と成長因子の増加程度を比較した。
【0150】
培養条件として継代培養後、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMにHam′s F-12栄養素混合液を1:1の比率で添加して混合し、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.17%重炭酸ナトリウムが添加された無血清培地に、37℃、5%二酸化炭素培養器で48時間以上培養した後、培養液上澄液200μlを3,000rpmで遠心分離後、0.22μm濾過紙に濾過後、実施例2の酵素免疫測定法(ELISA)でbFGF、VEGF、TGFβ1の濃度を測定した。
【0151】
(6-4)刺激の併合
bFGFの場合、物理的刺激と化学的刺激を一緒に与えた場合には、紫外線光を照射し、直ちにビタミンA 2μM、ビタミンB 50μM、ビタミンC 10μM、ビタミンD 10μMの濃度で最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて1%酸素、5%二酸化炭素の低酸素刺激で48時間培養した。
【0152】
VEGFの場合、紫外線光を照射した後、スクラッチ刺激を与え、直ちにビタミンA 2μM、ビタミンB 50μM、ビタミンC 10μM、ビタミンD 10μMの濃度で最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、1%酸素、5%二酸化炭素の低酸素刺激で48時間培養した。
【0153】
TGFβ-1の場合、紫外線光を照射した後、スクラッチ刺激を与え、栄養分欠乏刺激を与えた後、ビタミンA 2μM、ビタミンB 50μM、ビタミンC 10μM、ビタミンD 10μMの濃度で最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて1%酸素、5%二酸化炭素の低酸素刺激で48時間培養した。
【0154】
さらに、bFGF、VEGF及びTGFβ-1の総括的最大量を得るために、紫外線光を照射した後、ビタミンA 2μM、ビタミンB 50μM、ビタミンC 10μM、ビタミンD 10μMの濃度で最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、1%酸素、5%二酸化炭素の低酸素刺激で48時間培養した。
【0155】
(6-5)結果
bFGFの場合には、図9に図示した通り、対照群と比較した時、低酸素刺激与えた場合1.74倍増加し、紫外線刺激を与えた場合2.71倍増加した。化学的刺激の場合には、ビタミンAの場合1.62倍増加し、ビタミンBの場合1.33倍増加し、ビタミンCの場合2.33倍増加し、ビタミンDの場合2.80倍増加することを確認した。
【0156】
前記刺激の内で、刺激効果が優れた物理的刺激原因である低酸素刺激と紫外線刺激を併用した場合には、相乗効果が増加し、化学的刺激の場合にもビタミン等の濃度を最適化した状態でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDが混合された培養液下では3.62倍に増加することを確認した。物理的刺激と化学的刺激を共に与えた場合には、低酸素刺激を最適化して投与しながら、紫外線光を照射してビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した場合には4.11倍に増加することができた。
【0157】
VEGFの場合には、図10に図示した通り、対照群と比較した時、低酸素刺激を与えた場合2.53倍増加し、紫外線刺激を与えた場合1.36倍増加し、機械的摩擦を利用したスクラッチ刺激を与えた場合1.30倍増加した。脈管内皮細胞成長因子(VEGF)の場合、化学的刺激の場合には、ビタミンAの場合、1.59倍増加し、ビタミンCの場合1.68倍増加し、ビタミンDの場合1.30倍増加することを確認した。
【0158】
前記刺激の内で、刺激効果が優れた物理的刺激源である低酸素刺激と紫外線刺激、スクラッチを並行した場合には、その相乗効果が増加され、化学的刺激の場合にもビタミン等の濃度を最適化した状態でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDが混合された培養液下では2.03倍に増加することを確認した。
【0159】
物理的刺激と化学的刺激を共に与えた場合には、低酸素刺激を最適化して投与しながら、紫外線刺激とスクラッチ刺激を与え、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した場合には3.92倍に増加することができる。
【0160】
TGFβ-1の場合には、図11に図示した通り、対照群と比較した時、低酸素刺激を与えた場合1.64倍増加し、紫外線刺激を与えた場合1.75倍増加し、機械的摩擦を利用したスクラッチ刺激を与えた場合2.13倍増加し、栄養分欠乏刺激を与えた場合2.01倍増加した。ヒト形質転換成長因子-ベータ(TGFβ-1)の場合、化学的刺激の場合には、ビタミンAの場合1.20倍増加し、ビタミンBの場合1.56倍増加し、ビタミンCの場合1.20倍増加し、ビタミンDの場合、1.16倍増加することを確認した。
【0161】
前記の刺激の内で、刺激効果が優れた物理的刺激原である低酸素刺激と紫外線刺激を併用した場合には、その相乗効果が増加し、化学的刺激の場合にもビタミン等の濃度を最適化した状態でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDが混合された培養液下では1.68倍に増加することを確認した。
【0162】
物理的刺激と化学的な刺激を共に与えた場合には、低酸素刺激を最適化して投与しながら、紫外線照射とスクラッチ刺激と栄養分欠乏刺激を与え、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した場合には2.35倍に増加することができた。
【0163】
さらに、bFGF、VEGF及びTGFβ-1の総括的最大量を得るためには、低酸素刺激と紫外線刺激、およびビタミンA、B、C、Dを添加した培地の組合わせの場合が最も好ましい。具体的には、紫外線光を照射した後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば、対照群と比較したとき、bFGFが4.11倍、VEGFが3.8倍及びTGBβ-1が1.9倍で生産される。
【0164】
<実施例7>
脂肪由来幹細胞成長因子の紫外線に対する角質形成細胞防禦効果
脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子の紫外線に対する角質形成細胞防禦効果は次のような方法で試験した。
【0165】
角質形成細胞を適正細胞濃度6ウェルプレートに分株し、37℃、5%二酸化炭素の濃度に合わせた培養器においてKGM (karatinocyte growth media; Clonetics.)の培地条件下で、ADSC 3 passage 3日培養液100%2.5ccを添加して5ccに合わせ、レチノール2μMをKGM 5ccに添加、若しくはKGM 5ccのみをそれぞれ投与して、4時間安定化させ、原料が十分に分散するようにした。その後、無菌実験室で40Wダブルランプで8分間紫外線を照射した。24時間後に、何の処理もせずに8分間紫外線照射した陰性対照群またはレチノールと比較して、細胞の生存率を求めて原料に対する紫外線防禦機能を測定した。
【0166】
測定結果、下記表6のように実施例(1-2)の通り、培養してVEGF、bFGF、TGFβ-1を含有した培養液を投与した細胞群は67%、レチノールを投与した細胞群は54%、さらに陰性対照群は55%に表れた。これは、レチノールは紫外線に対する防禦効果が落ちるのに反して、脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子は、紫外線防御効果がより高いことを呈している。
【0167】
【表6】
【0168】
<実施例8>
脱毛鼠から紫外線照射で誘発された皮膚光老化現象に対して脂肪由来幹細胞成長因子の改善効果
実施例(1-2)のように培養して、VEGF、bFGF、TGBβ-1を含有した培養液の活性を評価するために、生後15〜20週令の脱毛鼠30匹ずつを利用して次のような実験を行った。
【0169】
脱毛鼠の背部位に紫外線照射器(UV Simulator)を利用して、2mJ/cm2の照射量で照射することを週当り2回の頻度で4週間実施することにより、皮膚の非正常的過角化を誘発させた。その後、化学的合成法による成長因子、遺伝子組替え方法による成長因子、脂肪由来成体幹細胞で合成した成長因子を脱毛鼠背部位の片側に1日2回、2週間1ccずつ塗布する反面、他の片側には比較のため、処理せずに比較した。2週後に老化緩化効果を肉眼観察して評価(Jin Ho Chung et al. Archives of Dermatology, 137, 8(2001))した。その結果を表7に示した。
【0170】
【表7】
【0171】
人為的に老化が誘発された脱毛鼠に成長因子をそれぞれ作用した結果、脂肪由来成体幹細胞を使用して合成した成長因子の場合に30匹の動物全てから、非正常的な皮膚過角化の緩化効果が表れたことを観察することができたものの、化学的合成方法や遺伝子組替え方法で合成した成長因子の場合と比較して見るに優れた結果であることが分かる。
【0172】
<実施例9>
ヒトにおいて自己脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子の皺改善効果
30〜50歳の女性を対象に脂肪由来成体幹細胞を通じて合成された成長因子の皺緩化効果を検証するため、各実験群当り20名を選択して次のような実験を行った。
【0173】
1日2回の頻度で8週間女性の眉間又は目の周囲に脂肪由来幹細胞培養液でVEGF 30ng、bFGF 30ng、TGBβ-1 70ng含量に精製した培養液1ccを塗布し、他方の目の周囲には比較のため、陰性対照群(基本溶液として生理食塩水1cc)を塗布した。4週後及び8週後、皺緩化効果を肉眼観察して、その結果を下記の通りまとめた。
【0174】
【表8】
【0175】
前記表と図12〜15の結果から分かるように、成体幹細胞を利用して合成した成長因子を適用した場合、皺緩化効果が優れたものと確認された。
【0176】
[配列番号プリテスト]
本発明に伴う配列番号1〜6及び10〜11はそれぞれ特定の蛋白質検出のための増幅用プライマー対であり、配列番号7〜9はヒト成長因子をコーディングする増幅産物である。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明に伴う方法で生産したヒト成長因子は、安定性と生理活性が確保された物質であって、これを利用して皺改善及び治療、傷治療、傷跡改善及び治療等を目的とする医薬品、医薬部外品、化粧品等を開発することができる。
【0178】
さらに、本発明に伴う脂肪由来幹細胞の培養液は多様な成長因子を多量に含有していることから、それ自体でもって皺改善及び治療、傷治療、傷跡改善及び治療等の医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用して有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は脂肪組織から単離された幹細胞の光学顕微鏡写真である。
【図2】図2は最初単離されたPLA細胞の乳細胞分析結果を示したグラフである。
【図3】図3は継代培養以後の乳細胞分析結果を示したグラフである。
【図4】図4は脂肪由来幹細胞から逆転写PCRを通じて確認したTGFβ-1、bFGF及びVEGFの電気泳動写真である。
【図5】図5は脂肪由来幹細胞培養の際、培養液に分泌されたbFGFとVEGFの濃度を確認したグラフである。
【図6】図6は繊維芽細胞と脂肪由来幹細胞の混合培養を通じた繊維芽細胞のコラーゲン合成程度を測定したグラフである。
【図7】図7は脂肪由来幹細胞培養液の濃度別繊維芽細胞の細胞数を示したグラフである。
【図8】図8は脂肪由来幹細胞培養培地と組替え成長因子添加培地との細胞増殖力を比較したグラフである。
【図9】図9は本発明に伴う物理的、化学的条件により培養した脂肪細胞由来幹細胞の塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)の分泌量を比較したグラフである。
【図10】図10は脈管内皮細胞成長因子(VEGF)の分泌量を比較したグラフである。
【図11】図11はヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)の分泌量を比較したグラフである。
【図12】図12は自己脂肪由来成体幹細胞から分離した成長因子含有組成物の皺改善活性を確認した写真である。
【図13】図13は自己脂肪由来成体幹細胞から分離した成長因子含有組成物の皺改善活性を確認した写真である。
【図14】図14は自己脂肪由来成体幹細胞から分離した成長因子含有組成物の皺改善活性を確認した写真である。
【図15】図15は自己脂肪由来成体幹細胞から分離した成長因子含有組成物の皺改善活性を確認した写真である。
【図16】図16は脂肪由来幹細胞培養液による繊維芽細胞のコラーゲン合成程度を確認したウェスタンブロットの写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトの脂肪由来幹細胞を利用して、ヒトの成長因子を大量に生産する方法に関する。
より詳細には、本発明は、ヒトの成長因子、例えば、酸性繊維芽細胞成長因子(acidic FGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(basic FGF)、インシュリン-類似成長因子-1(IGF-1)、インシュリン-類似成長因子-2(IGF-2)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、ヒト形質転換成長因子-アルファ(TGF-α)、ヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、神経細胞成長因子(NGF)等を既存の幹細胞よりも著しく多量に合成できるように、ヒトの脂肪細胞より抽出された脂肪由来幹細胞を適正な培地及び条件で培養することを含む方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞とは、特定の細胞に分化が進行されていないまま維持され、必要な場合、神経、血液、軟骨等の身体を構成するすべての種類の細胞に分化する能力を有する細胞を言う。このような幹細胞が得られる方法は大きく2種あるが、第一は受精卵から発生した胚芽より得る方法(胚芽幹細胞)であり、第二は成人になった身体の各部分に保有されている幹細胞(成体幹細胞)を回収する方法である。機能的な面で差はあるものの、胚芽幹細胞や成体幹細胞はすべて多様な種類の細胞に分化できる特徴を有している。
【0003】
胚芽幹細胞は分化能力が極めて優れていて、テロメアが長いという長所はあるものの、倫理的な問題を抱えており、細胞を多量に得ることが難しい短所がある反面、成体幹細胞は細胞数を多く得られるものの、他人に移植する場合、感染の危険や分化能力が相対的に落ちる短所を有している。
【0004】
前記の短所にもかかわらず、成体幹細胞は医学的に適用することが極めて安全であることが特徴である。具体的に、臓器再生のため、体内に移植しても癌が発生せず、成人の体内にあったため、免疫拒否反応が発生しないことから、自分の細胞を用いる自己移植(autologous transplantation)が可能である。
【0005】
さらに、周辺組織の特性に自分を合わせて分化する組織特異的分化能力(site-specific differentiation)があり、未分化状態で注入しても癌を誘発しないことから、移植された後、直ぐに必要な細胞を作り出すこと以外にも、後で必要に応じて未分化状態の幹細胞を再び作って貯蔵する自己再生産(self-renewal)能力を有する長所がある。
【0006】
前記の長所により、成体幹細胞は最近その重要性が浮き彫りにされており、成体幹細胞を生体内で得るための多様な研究が進められている。
【0007】
脂肪組織は生体内で正常な成長と生理作用において重要な役割を果たしているものの、今まではその重要性が看過されていた。最も一般的な脂肪の形態は皮膚の下層(皮下脂肪)に位置し、腹腔内(内臓脂肪)に位置するか又は生殖器管周囲(生殖腺脂肪)に位置する白色脂肪組織である。成人における多少少ない一般的な形態は褐色脂肪組織であって、新生児の時期に熱を生成する重要な役割をする(Gimble, New Biol, 2(4):304-12, (1990))。
【0008】
しかしながら、事実、生殖能力と成熟過程は個体の脂肪組織貯蔵と密接に連関している。女性と男性の思春期は脂肪組織由来ホルモンの生成と分泌とに密接に関連し、体脂肪組成に密接に関連する。さらに、ブドウ糖代謝とエネルギー均衡においても重要な役割を果たす。
【0009】
過去数年間、生物質分野でかなりの進歩があった。現在これを基に多くの物質が開発され、かつ、使用されている。このような進歩にも拘らずヒトの脂肪組織の利用に対しては、多くの研究がなされていないのが事実である。しかしながら、最近、脂肪組織内に成体幹細胞が存在することが確認されて以来(Zuk PA, et al., Molecular Biology of Cell, 13:4279-4295(2002);Rodriguez AM, et al., Biochimie, 87:125-128(2005))、脂肪由来の幹細胞の活用に対する多くの研究等が進められ始めた。
【0010】
また、近年、生化学及び分子生物学の発展を基盤に、ヒトの生体内に存在する少量の信号物質(成長因子)等が発見されるようになり、これを基にした生体老化理論が再構築されている最中である(Stanley Cohen, Nobel Lecture 1986, Dec, 8)。さらに、この信号物質(成長因子)は年を取るにつれて生体内で減少し、この成長因子の減少がヒトの老化と密接な関係にあることが究明されつつある(Sporn M and Roberts A, Handbook of Experimental Pharmacology, Vol. 1, Vol. 95/1, 1990, Springer-Verlag, DE, Berlin., pp. 667-698)。
【0011】
従って、生体の成長因子を外部から供給すると成体の老化が抑制できることが研究されており、その物質の具体的な効果に対しても研究が進められている(GE Pierce and TA Mustoe, Annu Rev Med, 46. 467-481(1995))。具体的にこの信号物質(成長因子)の構造と合成に対する研究が進められたものの、大部分の成長因子は蛋白質の構造を有しており、その構造が3次元的で複雑なため、化学的に合成するにおいて多くの問題点が生じており、そのような合成に要する費用もまた極めて高価であることが現実である。
【0012】
ここに、本発明者等は人体内における活性を維持しながら、低廉な価格で活性型のヒトの成長因子を獲得する方法に対して研究を進めていた最中、脂肪由来成体幹細胞が成長因子を分泌するという事実に注目するに至った(Rehman, J. et al., Circulation, 109: 1292-1298(2004))。
【0013】
しかしながら、脂肪由来の成体幹細胞に関する研究は、大部分その細胞自体を利用するもの、もしくは分化に関する研究であり、これを利用した成長因子の合成法に関する方法については、研究が殆どなされていない状態であった。
【0014】
特許文献1「改善された脂肪細胞、分化された脂肪由来成体幹細胞及びこれの用途」では、脂肪由来成体幹細胞を用いて生体の生着率を増加させ得る方法が開示されているものの、成長因子の意味ある合成については開示されておらず、特許文献2「脂肪細胞分化調節機能を有するPBRリガンド及びその誘導体化合物、及びこれを含有する脂肪細胞分化調節用組成物」では、脂肪細胞を他の特定細胞に分化する方法に関する内容を開示しているのみである。
【0015】
さらに、特許文献3「ヒト幹細胞の無動物血清培養培地組成物及び肝細胞への分化誘導方法」では、無動物血清を用いたヒトの幹細胞の分化に対する方法について開示され、特許文献4「細胞移植のための細胞の生産方法」では、細胞移植のための幹細胞の利用に関して開示されている。
【0016】
このように脂肪由来成体幹細胞を利用した成長因子の合成に対する研究が不充分であることは、成体幹細胞の活用方法が他の細胞への分化を通じた利用にその焦点が絞られていて、幹細胞の細胞的差異点に対してはその研究が不十分な部分があったためと判断される。
【0017】
さらに、前述した通り、成長因子を合成した方法に対しては、特許文献5「組替えられたヒトの内皮細胞成長因子の製造方法」、特許文献6「遺伝子組替え技術によるヒト上皮成長因子の製造方法」、特許文献7「生物学的に活性であるヒト酸性繊維芽細胞成長因子の製造方法と脈管形成促進のためのその用途」等、遺伝子組替え技術による成長因子の製造方法に関してのみ研究されてきた。
【0018】
ここに、本発明者は脂肪由来成体幹細胞を通じた成長因子の大量生産方法に対して多年間研究し、その成果で適切な培養条件の確立、物理的及び/又は化学的刺激を通じて、脂肪由来成体幹細胞が特定した刺激を加えない脂肪由来成体幹細胞と比較するに、著しく有効な量の成長因子を合成して分泌することを見出した。
【特許文献1】韓国特許公開第2004−94910号
【特許文献2】韓国特許公開第2005−6408号
【特許文献3】韓国特許公開第2005−99274号
【特許文献4】韓国特許登録第484550号
【特許文献5】韓国特許登録第101436号
【特許文献6】韓国特許登録第62551号
【特許文献7】韓国特許公開第2003−45032号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は組替え又は化学的方法により合成された成長因子よりも、生体でより優れた活性を有するヒト成長因子を脂肪由来の成体幹細胞から大量に収得することを目的とする。
【0020】
本発明は脂肪由来幹細胞から多量に収得したヒト成長因子又は、その培養液を含む安全で効果的な医薬品又は化粧品を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、本発明は(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来の成体幹細胞を単離する段階;(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養して、無血清培地で継代培養する段階;(iii)脂肪由来幹細胞に低酸素培養、紫外線照射、栄養分欠乏及び機械的摩擦より選ばれるいずれか一つ以上の物理的刺激を加える段階;及び(iv)選択的にビタミンA、ビタミンB、ビタミンC及びビタミンDより選ばれる一つ以上のビタミンを培養液に添加する段階を含み、この際、(iii)段階と(iv)段階はヒト成長因子の最大生産が起こる条件で組合わせて進行する、脂肪由来幹細胞からヒト成長因子を大量に生産する方法を提供する。
【0022】
さらに、本発明は前記方法により収得したヒト成長因子を含有する機能性化粧料組成物を提供する。
【0023】
またさらに、本発明は前記方法により収得した脂肪由来成体幹細胞培養液を含有する機能性化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、脂肪由来成体幹細胞を利用してヒト成長因子を多量に生産することが可能であり、本発明に伴う生産方法で生産した成長因子が既存の生産方法と比較するに、より優れた安定性と活性を有し、ヒト生体の成長因子と同一形態の作用が可能であることが確認された。さらに、脂肪由来幹細胞の培養液及びそれより分離した成長因子を通じて皺改善及び治療、傷治療、傷跡の改善及び治療、等の医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用して有用に使用できるものと期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1形態は、脂肪由来幹細胞を利用した成長因子の大量生産方法に関する。
【0026】
脂肪由来幹細胞が含有している成長因子には、酸性繊維芽細胞成長因子(acidic FGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(basic FGF)、インシュリン-類似成長因子-1(IGF-1)、インシュリン-類似成長因子-2(IGF-2)、角質形成細胞成長因子 (KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、ヒト形質転換成長因子-アルファ(TGF-α)、ヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)、脈管内皮細胞成長因子(VEGF)、表皮細胞成長因子(EGF)、神経細胞成長因子(NGF)又はこれらの混合物からなる群の中で選ばれた成長因子が含まれる。
【0027】
本発明では、脂肪由来の幹細胞を用いて特異的に下記成長因子の合成促進を図ろうとした。
【0028】
1)塩基性繊維芽細胞成長因子(basic Fibroblast Growth Factor、以下「bFGF」という)
【0029】
bFGF又は、ヘパリンが結合された成長因子2(HBGF-2)は、7つの種類にアミノ酸水準で約30〜50%の相同性を有する要素等で構成されている(Burgess, W.H and Maciag, T., Annu. Rev. Biochem., 58:575-606(1989); Baird, A. and Klagsbrun, M., Cancer Cells, 3(6):239-43(1991))。bFGFは神経組織、脳下垂体、副腎皮質、黄体、胎盤から分離される。
【0030】
生体内から分離されたbFGFは約18kDaの大きさを有する。多くの研究からbFGFのさらに大きい形態の種類が存在することが究明され、その大きさは約24kDaで、AUG開始部位を含まない箇所における解読開始により蛋白質のアミノ終端部が延長されて表れる現象である(Burgess, W.H and Maciag, T., Annu. Rev. Biochem., 58:575-606(1989); Baird, A. and Klagsbrun, M., Cancer Cells, 3(6): 239-43(1991); Prats, H. et al., PNAS, 86:1836-1840(1989); Quarto, N. et al., J. Cell. Physiol., 147(2):311-8(1991); Bugler, B. et al., Mol. Cell. Biol., 11(1):573-7(1991))。このような現象は細胞質より細胞液にbFGFを位置させる結果を招き(Quarto, N. et al., J. Cell. Physiol., 147(2):311-8(1991); Bugler, B. et al., Mol. Cell. Biol., 11(1):573-7(1991))、一般的な組替え又は化学的方法により生産されるbFGF蛋白質は18kDa部位を基にして生産された。これはbFGFが形態学的に疎水性信号ペプチド塩基配列が欠乏している状態であることから、従来の方法とは違うように表出され得る(Mignatti, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:11007(1991))。
【0031】
2)脈管内皮細胞成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor、以下「VEGF」という)
【0032】
VEGF(Ferrara, N. and Hanzel, W.J. Biochem Biophys Res Commun, 161(2):851-8(1989)は血管透過性要素(Senger, D.R. st al., Science, 219(4587):983-5(1983))として知られており、これは同種二量体34-42kDaの分子量を有し、ヘパリンが結合されたグリコ蛋白質である。これは血管形成要素を有していて、内皮細胞の類似分裂促進と血管透過性能力を向上させ得る。
【0033】
VEGFは制限された塩基配列で知られた1次構造で表現され、これは血小板由来成長因子(PDGF)のA、B鎖と相同性を有する。このような成長因子等は保存された8個のシスティン残基を有し、二硫化結合外内部鎖に含まれる。VEGF蛋白質が暗号化しているcDNAは血小板由来成長因子(PDGF)と53%アミノ酸配列の相同性を有し、VEGFはヒト胎盤のcDNAライブラリーから分離したものである(Maglione, D. et al., PNAS, 88:9267(1991))。この蛋白質を胎盤成長因子(PGF)と称し、現在ではVEGFのファミリーの内の一つとして認識されている。VEGFとの相同性を基に、胎盤成長因子(PGF)は血管形成要素として提案されている。
【0034】
ヒトVEGFに対する遺伝子は8個のエキソン内で組合わされる。選択的な接合の結果として、4個の単量体的VEGFを暗号化している121、165、189、206アミノ酸塩基配列を含む。それぞれは26個の信号ペプチドアミノ酸残基を有していて、これにより検出することができる。VEGF121とVEGF165は細胞の基質として露出される拡散性蛋白質であって、VEGF189とVEGF206はヘパリンと高い親和力を有していて、細胞外脂質体内でヘパリンとプロテオグリカン結合をなす。VEGFはNと連結されたグリコシル部位を含んでいて、これは本来グリコ蛋白質である。
【0035】
一般的な組替え又は化学的方法により生産されるVEGF蛋白質は拡散性蛋白質であるVEGF121とVEGF165部位を基にして生産される。従来では、組替えられたヒトVEGFの大腸菌内発現がインビトロで本来のVEGFと生物学的役割の差がないものとして研究された(Connoliy, D.T. J. Cell. Biochem, 47(3):219-23(1991); Schott, R.J. and Morrow, L.A. Cardiovasc, Res., 27(7):1155-61(1993); Neufeld, G. et al., Prog. Growth Factor Res., 89-97(1994); Senger, D.R. et al., Cancer and Metastasis Reviews, 12(3-4): 303-24(1993))。
【0036】
3)ヒト形質転換成長因子-ベータ(Transforming Growth Factor-β、以下「TGF-β」という)
【0037】
腫瘍類似性表現型として分化される培養性の繊維芽細胞の形質転換を促進する要因である、ヒト形質転換成長因子(TGF)はTGF-αとTGF-βの二つの蛋白質の混合体で構成され、腫瘍促進要素より抑制要素と随伴して発見される(Lawrence, D.A. Eur. Cytokine Netw, 7(3): 363-74(1996); Cox, D.A. and Maurer, T., Clin. Immunol. Immunopathol, 83(1): 25-30(1997); Alevizopoulos. A. and Mermod, N., Bioessays. 19(7):581-91(1997))。
【0038】
この二つの分子等は、骨格形成蛋白質である5種類の活性体と不活性体を有するTGF-β1を含んでいるスーパーファミリーの一つの構成要素である(Kingsley, D.M., Genes Dev, 8:133(1994))。ヒトのTGF-β1は25kDaの分子量と二硫化結合、ビグリコシル同種二量体で構成されており、略大部分の哺乳動物種等間で100%保存的な遺伝子配列を有していると知られている。TGF-β1はサブチリシンと類似した蛋白質分解酵素により、前駆体で二硫化結合体が伝達されながら細胞内信号伝達を開始するようになり(Dubois, C.M. et al., J. Biol. Chem., 270:10618(1995))、一般的にこれは不活性体又は2種の複合体として分泌される(Gleizes, P-E. et al., Stem Cells, 15: 190-197(1997))。TGF-β1信号伝達過程は、2種の収容体を含んでいて(ten Dijke, P. Curr. Opin. Cell Biol, 8(2):139-45(1996); Derynck, R. and Feng X.H., Biochim. Biophys. Acta 1333(2): F105-50(1997); Padgett, R.W. et al., Bioessays, 20(5):382-90(1998))、75kDaのリガンド結合蛋白質であるTGF-β RII二量体は持続的に活性化される細胞内セリン-チレオニンキナーゼ酵素を有し、TGF-β1との結合によりTGF-β RIIは53kDaの信号伝達二量体蛋白質であるTGF-β RIを構成して、リン酸化させる。リン酸化されたTGF-β RIは蛋白質キナーゼを活性化させ、細胞内蛋白質であるSMADSを通じて年次的な信号開始を誘導する。
【0039】
信号伝達過程に関与するTGF収容体は全ての細胞から発現され、略大部分の生理学的な作用に影響を及ぼす。その体系的で細胞特異的な活性化は極めて複雑な機構ではあるものの、3種の基礎的活性を帯びている。TGF-β1は一般的に抑制要素のような細胞の増殖を調節し、蛋白質分解の阻害と合成の繰返しに伴い、細胞膜外に蛋白質分解物等の沈澱を図り、免疫抑制反応を多様な機構を通じて促進する。
【0040】
従前の方法である組替え又は化学的合成により生産されるTGF-β1蛋白質は、25kDaの大きさを有する活性化状態の蛋白質であるため、インビトロで本来のTGF-β1蛋白質と類似した生物学的活性を有しているものの、これはTGF-β1蛋白質固有の性質の一部のみを含む。
【0041】
本発明の第1形態に伴う方法は(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来の成体幹細胞を単離する段階;(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養段階;(iii)脂肪由来幹細胞に低酸素培養、紫外線照射、栄養分欠乏及び機械的摩擦より選ばれるいずれか一つの物理的刺激を加える段階;及び(iv)選択的にビタミンA、ビタミンB、ビタミンC及びビタミンDより選ばれる一つ以上のビタミンを培養液に添加する段階を含み、この際、(iii)段階と(iv)段階はヒト成長因子の最大生産が行われる条件で組合わせて進行させる。
【0042】
幹細胞の収得
本発明に伴う脂肪由来の成体幹細胞は、脂肪組織内に存在する細胞の内で精製過程を経て収得することが可能である。好ましくは、ヒトの脂肪由来の成体幹細胞を収得することであって、このためにヒトの脂肪組織から脂肪由来幹細胞を分離する。
【0043】
脂肪組織は皮下、網膜、内臓、乳房生殖腺又はその他の脂肪組織部位に由来する褐色又は白色脂肪組織であり、皮膚の下層にある白色脂肪組織は脂肪吸引術を用いて容易に得られる。
【0044】
脂肪組織は、一般に施行される脂肪吸引術の過程で廃棄されていた脂肪組織を利用することが可能なことから、追加的に侵襲的施術をする必要が無いという点でもその有用性が倍増する利点がある。分離した脂肪吸引物を洗浄して脂肪組織のみを分離し、脂肪組織の細胞外基質(extracellular matrix)をコラゲナーゼで酵素処理した後、遠心分離し、高密度の幹細胞を含むストロマ性血管分画を収得する。このようにして得たペレットを洗浄した後、細胞濾過器を通過させ、その他の組織を除去し、単核球分離溶液で赤血球を含む細胞破片と単核細胞のみを分離する。分離された単核細胞を非誘導性培養液で培養後、非接着性細胞等が除去される。
【0045】
幹細胞の培養
本発明では、前記過程で獲得した脂肪由来幹細胞を利用した後続作業である試験管内における培養のため固有の培養培地を確立した。
【0046】
細胞培養の開始に先立って供給源から抽出した生検は、一般的な抗生剤を含む洗浄培地を利用した反復的な洗浄過程を通じて後続培養にあり得る汚染の可能性を最小限に減少させ得る。
【0047】
本発明では、脂肪由来幹細胞において、成長因子の最大合成と分泌とを誘導するように培養培地を最適化する。
【0048】
具体的には、脂肪由来幹細胞の試験管内培養を、血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階を順次進行させることにより、成長因子の合成量を極大化する。
【0049】
血清を含む初期段階細胞培養のための培地は、脂肪由来幹細胞のような細胞型を維持して保管するに適した目的の培地であることが好ましい。
【0050】
本発明では、当業界で一般的に細胞培養に使用するDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)を基本にして、細胞培養に一般的に使用される血清を含む。
【0051】
この際、初期培地に7〜10%のジメチールスルホキシード(DMSO; dimethyl sulfoxide)を添加すれば凍結培地であることも有り得、従って、幹細胞を凍結した後、必要な場合に解凍して使用できる。
【0052】
血清は0.1〜20%の牛の胎児血清(FBS)を添加するのが好ましく、抗生剤、抗真菌剤及び汚染を引起すマイコプラスマの成長を予防する試薬を添加するのがより好ましい。
【0053】
抗生剤にはペニシリン-ストレプトマイシン等、通常細胞培養に使用される抗生剤が全て使用可能であり、抗真菌剤としては、アンポテリシンB、マイコプラスマ抑制剤にはタイロシンを利用するのが好ましく、ゼンタマイシン、シプロプロキサシン、アジトロマイシン等でマイコプラスマ汚染を防止することができ、必要に応じてグルタミン等の酸化栄養素と、ソジウムピルベート等のエネルギー代謝物質をさらに添加することができる。
【0054】
より好ましい培地は1〜2mMのグルタミン、0.5〜1mMソジウムピルベート、0.1〜10%FBS、1%抗生剤(100 IU/ml)で補充されたグルコース及びDMEMを含有し、これを完全培地と称する。この際、グルコースの濃度範囲は約1g/L〜4.5g/Lである。前記完全血清培地は脂肪由来幹細胞の保管と維持及び試験管内の安定した基本培養条件を提供し、効果的な細胞の安定化を呈する。
【0055】
初期培養の一般的培養条件は細胞培養に最も適した条件を適用して、湿度90〜95%、温度35〜39℃、5〜10% CO2培養器で培養し、5〜10% CO2培養の際には最終濃度が0.17〜0.22%になるようにソジウムバイカボネート等の炭素調節源が添加される。
【0056】
初期培養段階の間、組織断片は培養容器の底に付着された状態を維持させることが好ましく、細胞培養の標準技術に伴い、トリプシン-EDTA処理による短い刺激で成長を促進することができる。
【0057】
累積集団倍増時間(doubling time)はフラスコ内培養中の細胞が75〜85%合流時(confluence)に到達するまで維持し、好ましくは80%合流時期に細胞を採取して、後期培養の無血清培地で継代培養を行う。
【0058】
本発明では脂肪由来幹細胞において、成長因子の分化を促進する成長因子分化用無血清培地を提供する。
【0059】
成長因子分化用無血清培地を利用した継代培養は、培養液を除去したフラスコをリン酸化緩衝溶液で洗浄し、トリプシン-EDTAに細胞を落とした後、細胞浮遊液を遠心分離して得たペレットをリン酸化緩衝溶液で洗浄するが、洗浄過程は2〜3回繰返すのが好ましい。洗浄されたペレットは本発明で開発された無血清培地により浮遊させ、細胞培養フラスコに約3倍に継代させる。
【0060】
本発明で開発された無血清培地は、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMを基本にし、Ham’s F-12栄養素混合液(SIGMA, Cancer Research Vol47, Issue 1 275-280)を約1:0.5〜2の比率で添加する。この際、L-グルタミン等の酸化栄養源、ソジウムピルベート等のエネルギー代謝物質、ソジウムバイカボネート等の炭素調節源を添加することが可能で、その他に本発明で目的とする成長因子ではない他の成長因子等や成長ホルモン等も添加することができる。
【0061】
本発明で開発された無血清培地の固有性は、Ham’s F-12栄養素混合液から見い出せる。本混合液は細胞の成長と恒常性維持を助け、脂肪由来幹細胞の初期培養後、後期培養において、細胞の安定性と維持力増進に関与される種々の無機質とアミノ酸等、脂肪由来幹細胞から分泌される成長因子の、より高い生産が促進できるビタミン系列の栄養素等と異なる因子等が一定の比率で混合される。本発明で確立化されたHam’s F-12混合液を含む無血清培地で、脂肪由来幹細胞の培養と成長因子の生産力は一般的な動物血清を含んでいる血清培地の条件と比較した場合、減少された現象又は否定的な効果が全く見られず、一部成長因子は無血清培地でより高い生産力を呈し、血清による未知の成分を有する血清培地とは別に培養培地の全ての成分含量が確認できる。
【0062】
これは、血清培地に含まれた動物血清から、もたらされ得る種々の変数等を最小化し得ることの示唆であり、約50%程度の少ない費用で本発明が目的とする効能が達成できるという利点がある。
【0063】
下記表1は本発明で確立した無血清培地に混合されるHam’s F-12栄養素混合液各構成成分等の成分と含量を示したものである。
【0064】
【表1】
【0065】
前記無血清培地のアミノ酸、ビタミン、無機塩の成分と含量は本発明の目的を損なわない条件下で当業者により変更可能なことは明らかである。
【0066】
本発明の目的を達成するため、前記方法で培養した脂肪由来成体幹細胞を、特定刺激を通じて活性化させることにより、目的とする成長因子の合成を促進することが可能である。この際、成長及び刺激条件において物理的条件と化学的条件に区分して刺激することが可能である。
【0067】
物理的刺激には、紫外線、栄養分、酸素等をその例として挙げられ、化学的条件としては細胞培地組成物において、ビタミンとその他の活性化化合物等がその例として挙げられる。
【0068】
物理的刺激
既存の脂肪由来成体幹細胞培養方法に比べて著しく多い量の成長因子を収得するために、低酸素反応(Circulation. 2004 Mar 16;109(10):1292-8.)、紫外線照射(FASEB J. 2003 Mar;17(3):446-8)、栄養分欠乏反応(Blood. 2004 Nov 1;104(9):2886-92. epub 2004 Jun 24)、機械的摩擦等の物理的刺激を適用することができ、このような物理的刺激で本発明の目的とする成長因子を選択的又は総合的に増加させ得る。
【0069】
物理的刺激が成長因子の合成及び分泌を促進するか否かを確認するために、本発明では前記の通り、脂肪由来幹細胞を血清培地及び無血清培地を順次的に利用して試験管内培養した後、細胞を収去して培養液を完全に除去した状態で、それぞれ低酸素培養、紫外線照射、栄養分欠乏又は機械的摩擦を行った後、再度正常的に培養して、脂肪由来幹細胞の培養液に分離された成長因子の濃度を測定した。
【0070】
具体的には、低酸素培養は成長因子の最大合成のために、約5%二酸化炭素に1〜5%の酸素条件で36〜48時間培養するのが好ましい。紫外線照射は280〜320nm波長の紫外線Bを80〜120mJ/cm2の照射量で照射するのが好ましい。栄養分欠乏反応にはMg2+とCa2+が添加されたDulbecco’s phosphate buffered salineに細胞が落ちる手前状態の最大4時間まで培養した後、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMにHam’s F-12栄養素混合液を約1:1の比率で添加して混合した培地で正常培養をするのが好ましい。機械的摩擦は、細胞培地に格子状に掻いてくれるスクラッチ刺激を加えるのが好ましい。
【0071】
その結果、bFGFの場合には、低酸素刺激を与えた場合、1.74倍増加し、紫外線刺激を与えた場合2.71倍増加した。さらに、前記物理的刺激の内低酸素刺激と、紫外線刺激を並行した場合、その相乗効果が増大された(図9参照)。
【0072】
VEGFの場合には、低酸素刺激を与えた場合2.53倍増加し、紫外線刺激を与えた場合1.36倍増加し、機械的摩擦を利用したスクラッチ刺激を与えた場合1.30倍増加した。さらに、前記物理的刺激の内低酸素刺激、紫外線刺激、スクラッチ刺激を並行した場合その相乗効果が増大された(図10参照)。
【0073】
TGFβ-1の場合には、低酸素刺激を与えた場合1.64倍増加し、紫外線刺激を与えた場合1.75倍増加し、機械的摩擦を利用したスクラッチ刺激を与えた場合2.13倍増加し、栄養分欠乏刺激を与えた場合2.01倍増加した。さらに、物理的刺激の内低酸素刺激と紫外線刺激を並行した場合、その相乗効果が増大された(図11参照)。
【0074】
化学的刺激
化学的な条件では、一般的に広く知られた多様な活性化化合物等を個体に直接的又は間接的に露出させるのが好ましい。
【0075】
本発明に伴う脂肪由来幹細胞に添加し得る活性化化合物には、細胞老化と関連したレチノ酸と、その前段階の産物であるビンポセチンと、このようなサイクルの補助役割をするピカミロンがあり、蛋白質キナーゼの役割を行うキナサンとキナサン塩がある。その他にアデニンジヌクレオチド、アセチル-L-カルニチン等、新陳代謝に関与する炭水化物合成の因子等は細胞に重要な栄養作用をし、アポトーシス(apoptosis)中止役割をするジメチルアニモエタノール、細胞増殖に関与するL-リポ酸、L-ヒドロキシ酸、さらに、アミノ酸生産に関与する補助酵素Q-10のような異なる促進性添加剤等を含む。上述した通り、これら活性化化合物等は、脂肪由来幹細胞培養の際、同時に又は個別的に添加することもできる。
【0076】
多様な活性化化合物の内、本発明ではビタミン系列を利用した刺激効果に焦点を絞った。
【0077】
一般的に、ビタミンAは1次的な免疫反応と、これに関連した細胞発達過程等、計画化されたアポトーシス(apoptosis)の一連反応等に関与するとして知られており、代表的な物質としはレチノイン酸(retinoic acid)が知られており、これはレチノイン酸レセプター(retinoic acid receptor;RAR)に結合し、これに関連した代謝過程を調節して活性化させる。その内RAR-alpha、RXR-alpha、RXR-betaに結合された複合体等は、主要免疫細胞であるT lymphocyteの発達に関与する128個余りの遺伝子の発現を促進又は抑制すると発表された。特に、アポトーシス(apoptosis)の機構で代表的な抗アポトーシス蛋白質(anti-apoptotic protein)として知られたbc12 family遺伝子等が確かに増加することを見せてくれる(Rasooly, R. et al., J. Immunol., 175:7916-7929(2005); Spilianakis, C.G. et al., Eur. J. Immunol., 35(12):3400-4 (2005);Evans T, Exp. Hematol., 33(9):1055-61(2005))。これは、ビタミンAがアポトーシス(apoptosis)反応を抑制する効果を示しうることを示唆している。
【0078】
ビタミンBは広くリボフラビン(riboflavin)として知られており、ヒトの健康維持に重要な役割をし、スウェーデンのある研究チームはこの物質の処理によって、好中球遊送(neutrophil migration)の効果を呈することにより、増加された1次的免疫反応を引起すとして発表した(Verdrengh, M. and Tarkowski, A., Inflamm. Res., 54(9):390-3(2005))。これは、1次的免疫細胞等の移動による拡張された初期免疫反応効果が期待できることと予想される。
【0079】
ビタミンCの細胞内最も重要な機能は、コラーゲン合成と新しい繊維芽細胞の合成の促進であり、代表的なものとしてアスコルビン酸(ascorbic acid)がある。他のサイトカインであるTGF-βとIFN-γと同時処理はその効果を倍加させる(Chung, J.H. et al., J. Dermatol. Sci., 15(3): 188-200(1997))。他のビタミン等より細胞発達と分化に影響を及ぼすものとして知られており、多く使用されてきたビタミンD3は細胞成長と分化発達過程、特に、表皮(epidermis)の角質形成細胞(keratinocytes)と、骨格形成細胞である骨芽細胞(osteoblasts)と破骨細胞(osteoclasts)等の形成過程に重要な信号伝達体系を媒介している。さらに、炎症反応に含まれた種々のサイトカインである例えば、IL-1α、IL-6、IL-8等に抑制効果を有する(Alper, G. et al., Endocr. Rev., 23: 763(2002))。
【0080】
本発明では、化学的な条件でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDをそれぞれ又は、混合して細胞毒性が無い以下の有効水準で培養液に添加して培養した。
【0081】
ビタミンを利用した化学的刺激が成長因子の合成及び分泌を促進するか否かを確認するために、本発明では前記の通り、脂肪由来幹細胞を血清培地及び無血清培地を順次的に利用して試験管内培養し、細胞をよく収去してリン酸化緩衝溶液を利用した洗浄過程で培養液を完全に除去し、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMにHam’s F-12栄養素混合液を約1:1の比率で添加して混合し、選択的にL-グルタミン等の酸化栄養源、ソジウムピルベート等のエネルギー代謝物質、ソジウムバイカボネート等の炭素調節源を添加した培地に適量のビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDをそれぞれ又は、混合して培養液に添加し、脂肪由来幹細胞の培養液に分泌された成長因子の濃度を測定した。
【0082】
具体的に、ビタミンAの最適濃度は2〜5μM、ビタミンB2の最適濃度は50〜100μM、ビタミンCの最適濃度は10〜100μM、ビタミンDの最適濃度は5〜10μMであり、ビタミンを添加して48時間以上培養するのが好ましい。ビタミンを成分別に混合する場合にも最適濃度は同一である。
【0083】
その結果、bFGFの場合、ビタミンAの場合には1.62倍増加し、ビタミンBの場合には1.33倍増加し、ビタミンCの場合には2.33倍増加し、ビタミンDの場合には2.80倍増加することを確認した。
【0084】
VEGFの場合、ビタミンAの場合には1.59倍増加し、ビタミンCの場合には1.68倍増加し、ビタミンDの場合には1.30倍増加することを確認した。
【0085】
TGFβ-1の場合は、ビタミンAの場合には1.20倍増加し、ビタミンBの場合には1.56倍増加し、ビタミンCの場合には1.20倍増加し、ビタミンDの場合1.16倍増加することを確認した。
【0086】
ビタミンを混合して培養する場合、ビタミン等の濃度を上述のように最適化した状態でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDが混合された培養液下では、bFGFの場合には3.62倍、VEGFの場合には2.03倍及びTGFβ-1の場合には1.68倍に増加することを確認した。
【0087】
刺激の結合
bFGFの場合、物理的刺激と化学的刺激を同時に与えた場合には、紫外線光を照射し、直ぐにビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば4.11倍に増加した。
【0088】
VEGFの場合、紫外線光を照射した後、スクラッチ刺激を与え、直ぐにビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば、3.92倍に増加した。
【0089】
TGFβ-1の場合、紫外線光を照射して、スクラッチ刺激を与え、栄養分欠乏刺激を与えた後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば、2.35倍に増加した。
【0090】
さらに、bFGF、VEGF及びTGFβ-1を得るためには、低酸素刺激と紫外線刺激及びビタミンA、B、C、Dを添加して組合わせるのが最も好ましい。具体的に紫外線光量を与えた後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば、bFGFが4.11倍、VEGFが3.8倍及びTGFβ-1が1.9倍で生産される。
【0091】
本発明の第2形態は、本発明の第1形態に伴う方法で収得した培養液、又はこれより精製したヒト成長因子の新たな用途を提供する。
【0092】
具体的には、本発明により収得した脂肪由来幹細胞培養液又はヒト成長因子は皺改善及び治療、傷治療、傷跡改善及び治療のための用途に使用される医薬品、医薬部外品、医薬補助品、化粧品等に利用できる。
【0093】
本発明により収得した脂肪由来幹細胞培養液は、i)脂肪由来幹細胞を無血清培地で培養するか又は、ii)血清培地で安定化させた後、無血清培地で培養した場合、又は、iii)培養の際、物理的刺激又は化学的刺激を通じて細胞を活性化させた場合を全て含み、本発明に伴うヒト成長因子は前記培養から得られた細胞又は培養液を精製して収得したヒト成長因子を全て含む。
【0094】
好ましくは、本発明の第1形態によって最適化された方法で、血清培地と無血清培地を順次適用して培養した培養液又はこれより精製したヒト成長因子を利用することである。
【0095】
より好ましくは、本発明の第1形態によって最適化された方法で、血清培地と無血清培地を順次適用して培養し、この際、物理的刺激又は化学的刺激を通じて細胞を活性化させて収得した培養液又はこれより精製したヒト成長因子を利用することである。
【0096】
脂肪由来成体幹細胞から生産された成長因子は、既存の合成方法、即ち、化学的合成法でアミノ酸を使用した成長因子の合成、遺伝子組替え方法による成長因子の合成と区別され、このような遺伝子組替え方法や化学的合成法で生産された成長因子と比較するに、生体内本来の成長因子と構造的により類似することから、皮膚適合性に優れ、安全性が確保される利点がある。
【0097】
さらに、機能的な面でも異性体や3次元構造的に立体特異性が表れない生体内の成長因子と同一形態の成長因子であって、組替え方法や化学的合成法で生産された成長因子と比較するに、より優れた活性が確保される利点がある。
【0098】
具体的に、繊維芽細胞増殖能力を比較した結果、本発明により脂肪由来幹細胞を利用して生産された成長因子が、既存の合成法で生産された成長因子よりその活性が優れていることを確認した(図6参照)。
【0099】
さらに、本発明に伴う脂肪由来幹細胞の培養液又はこれより精製したヒト成長因子は、細胞内コラーゲン合成を増加させ、繊維芽細胞の増殖を促進させる活性があり、紫外線による角質形成細胞の増殖を抑制し、皮膚過角化を緩和させて、皺を改善する活性がある(表4、6、7、8及び図6、12、13、14、15、16参照)。
【0100】
従って、本発明に伴う脂肪由来幹細胞の培養液又はこれより精製したヒト成長因子は、皺改善及び治療、傷治療、傷跡改善及び治療のための用途に使用される医薬品、医薬部外品、医薬補助品、化粧品の原料として有効に利用できる。特に、本発明の方法によれば、ヒト成長因子を多量に収得することができ、従って、他の操作無しに脂肪由来成体幹細胞で合成される成長因子では、産業的に有効な量を収得することが殆ど不可能である問題を解決するという利点がある。
【0101】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳しく記述するものの、本発明の範囲がこれらの実施例により限定されのではなく、請求範囲に記載された本発明の保護範囲内で多様な補完及び変形が可能であることは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者には明らかなことである。
【実施例】
【0102】
[実施例1]
(1-1) 脂肪由来幹細胞の単離
病医院(リーダス皮膚科、ソウル)で収得したヒトの脂肪吸引物を同一量のリン酸化緩衝溶液で洗浄して、脂肪組織のみを分離した。
【0103】
脂肪組織の細胞外基質を37℃、5%CO2培養器で45分間0.075%コラゲナーゼで酵素処理し、最適の酵素処理された脂肪組織を1200gで5分間遠心分離させ、高密度の幹細胞を含むストロマ性血管分画を収得した。ぺレットをリン酸化緩衝溶液で洗浄して、70μmナイロン細胞濾過器を通じて、その他の組織を除去し、Histopaque-1077(SIGMA)で赤血球を含む細胞破片と単核細胞のみを分離した。
【0104】
分離された単核細胞をDulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM)、10% fetalbovine serum(FBS)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin streptomycin)、0.17% 重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)を含む非誘導性培養液で37℃、5%CO2培養器で24時間培養後、非接着性細胞等を除去することにより幹細胞を単離した(図1参照)。
【0105】
(1-2)脂肪由来幹細胞の培養
脂肪組織から分離された幹細胞の初期細胞培養はDMEMを使用し、10%FBSを添加して使用した。さらに、抗生剤として1%のペニシリン-ストレプトマイシン(100 IU/ml, GIBCO)を添加し、抗眞菌剤としてアンポテリシンB(O.5μg/ml, Amresco)、マイコプラスマ抑制剤としてタイロシン(10μg/ml, Serva, Heidelberg)、さらに、2mMグルタミンと1mMピルビン酸ナトリウムをさらに添加した。培養条件は湿度95%,37℃、5%CO2培養器で培養し、5%CO2培養時には最終濃度が0.17%になるように重炭酸ナトリウムを添加した。
【0106】
前記(1-1)で単離した幹細胞を104cells/mlになるように細胞浮遊液10mlをT25フラスコ(面積25cm2容量50ml)に移して、前記条件で培養した。
【0107】
累積集団倍増時間(doubling time)はフラスコ内培養中の細胞が80%合流(confluence)時まで維持して、80%合流時期に継代培養を行った。
【0108】
継代培養は培養液を除去したフラスコをPBSで洗浄し、0.25% Trypsin-EDTA(GIBCO)で細胞を落とした後、細胞浮遊液を遠心分離した後、組織数測定と生存能力検査(viability)後再度3倍に継代培養した。継代培養時に使用した無血清培地はフェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMを基本に、Ham’s F-12栄養素混合液(SIGMA)を1:1の比率で添加し、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムを添加した後、0.1重量%になるように重炭酸ナトリウムを添加して使用し、前記過程を3回繰返した。
【0109】
細胞数の測定と、生存能力検査(viability)は0.1mlの細胞浮遊液と同量の0.2% トリパンブルー(trypan blue;SIGMA)を混合した後、血球計(hemocytometer)を利用して顕微鏡視野で染色された細胞と染色されない細胞とを数えて全体細胞中の百分率を求めた。
【0110】
(1-3)幹細胞の確認
脂肪由来幹細胞は多数の癒着及び表面蛋白質を発現する。これらの蛋白質としてSH-2とSH-3とSH-4単クローン抗体は、ヒト中葉幹細胞の細胞表面エピトープを認識する。ペプチド塩基配列と吸光度分析結果、SH-3とSH-4はCD73(ecto-5'-nucleotidase)で識別され、SH-2はCD105(エンドグリン)で識別される。これらの細胞表面マーカ−は脂肪由来幹細胞により共有される(Barry, F. et al., Biochem Biophys Res Commun., 289(2):519-24(2001))。
【0111】
幹細胞の確認は、培養された脂肪組織由来幹細胞を初期、1継代、2継代培養別に蛍光活性化細胞選別装置(Fluorescence Activated Cell Sorter ;Beckman Coulter)で乳細胞分析を行った。具体的には、細胞を0.25%トリプシン-EDTAで採取し、PBSで洗浄した後、105cells/mlになるように合わせ、中葉幹細胞の特異性マーカーであるCD73-PE、CD105-FITC(BD science)抗体で反応させ、488nmのアルゴンレーザーで分析した。
【0112】
その結果、脂肪組織から分離されたPLA細胞の乳細胞分析結果は、初期単離されたストロマ性血管分画では、5.27%の幹細胞相同性を表し(図2参照)、2次継代培養以降にはCD73-PEに対しては92.32%、CD105-FITCに対しては90.67%の幹細胞相同性を呈した(図3参照)。
【0113】
[実施例2]
脂肪由来幹細胞の活性化された成長因子の確認
脂肪由来幹細胞が成長因子を合成するか否かを確認するために、先ず脂肪由来幹細胞を実施例(1-2)の培養培地と培養条件下で培養し、逆転写-核酸重合酵素増幅反応を通じて幹細胞内にあるRNAを確認した。
【0114】
具体的には、脂肪由来幹細胞の全体RNAをRNeasy Plus Minikit(QIAGEN Corp., Valencia, California)で抽出し、RNAをMMLV-reverse transferase(Promega Corp., U.S.A)を使用してPCRで37℃で45分間反応後、65℃で15分間MMLV-逆転写酵素を不活性化させた。特異検出PCR反応液は総量50μlとし、各試薬等の濃度は1.5mM MgCl2と0.25mM dNTP、2.5unit Taq ポリメラーゼ(polymerase)(QIAGEN)であった。PCR反応はTGRADIENT(BIOMETRA)で行い、cDNAの変性のため、94℃で3分を行った後、94℃で30秒(DNA変性)、60℃で30秒(アニーリング)、72℃で30秒(伸長反応)を30回繰返した後、最終伸長のため72℃で5分をさらに延ばして増幅遂行した。上記の通り、逆転写反応を行い、cDNAを合成し、VEGF-β、bFGF、TGFβ-1のプライマー(表2)を利用して逆転写PCRを行った。
【0115】
【表2】
【0116】
その結果、配列番号7に該当する482bpのbFGFの産物(1522bp〜2003bp)と配列番号8に該当する343bpのVEGF産物(1080bp〜1422bp)と配列番号9に該当する212bpのTGFβ-1 産物(2119bp〜2330bp)を脂肪由来幹細胞内の成長因子で確認した(図4参照)。
【0117】
さらに、培養液の中でも成長因子が存在するか否かを確認するため、免疫酵素重合反応(Enzyme-linked immunosorbent assay)を実施した。
【0118】
具体的には、脂肪由来幹細胞を実施例(1-2)の条件下で3継代で培養した培養液1mlを1200gで5分間遠心分離した後、0.22mmフィルターで濾過して細胞残余物を濾過した後、濾過物を段階別に希釈して非特異反応が生じない最適条件を設定し、VEGF、bFGF、TGFβ-1それぞれをサンドイッチELISA キット(Quantikine Human FGF basic Immunoassay, R&D systems)を利用して培養液に分泌された成長因子の濃度を測定した。
【0119】
最適に希釈された成長因子の濃度を調べるために、キット内補正希釈液で同じ濃度比で連続的な希釈をしてスタンダード曲線範囲に入ってくる吸光度での濃度を確認し、スタンダード曲線吸光度範囲に入ってくる値等をデータとして作成した。成長因子が含有された培養液と成長因子の標準溶液をそれぞれの成長因子に対する抗体(Quantikine Human FGF basic Immunoassay, R&D systems)がコーティングされているウェル(well)に100mlずつ入れて、常温で2時間培養した。抗原抗体結合反応が終わった後、各ウェルを洗浄液で4回洗浄し、各成長因子の2次抗体が結合された溶液(Quantikine Human FGF basic Immunoassay, R&D systems)200mlを入れた後、常温で2時間培養した。2次抗体結合反応が終わった後、各ウェルを洗浄液で4回洗浄し、発色試薬200ml(テトラメチルベンジジン、 R&D system)を入れ、450nmでELISA readerにより吸光度を測定した。
【0120】
その結果、bFGFは12時間後54.96pg/ml、24時間後76.393pg/mlの増加量を表し、VEGFは12時間後87.021pg/ml、24時間後163.52pg/mlの増加量を呈した(図5参照)。
【0121】
[実施例3]
繊維芽細胞のコラーゲン生成に及ぼす脂肪由来幹細胞培養液の活性
皮膚皺の発生原因の内の一つとして、皮膚膠原質(コラーゲン)の欠乏が挙げられている。コラーゲンは皮膚真皮を構成する主要蛋白質にして、皮膚構造と弾力を維持する役割を果たしている。コラーゲンは年を取るにつれて生成の減少を呈し、分解も増加され、皮膚真皮層の陥没を誘導して、皮膚の皺を生成するものと知られている。従って、コラーゲンの生成、分解程度を実験して、皮膚皺改善物質の効力を裏付けることができる。
【0122】
(3-1)脂肪由来幹細胞と繊維芽細胞の混合培養
脂肪由来幹細胞と繊維芽細胞の混合培養(coculture)を通じて、繊維芽細胞のコラーゲン生成に脂肪由来幹細胞が及ぼす影響を評価する。試験方法は、脂肪由来幹細胞と繊維芽細胞(fibroblast)をtranswell insert(Costar, Corning)に一緒に培養する際、繊維芽細胞内コラーゲン生成増加程度を繊維芽細胞単独培養と比較することである。
【0123】
a)混合培養
繊維芽細胞(primary cell line)はヒトの皮膚組織の一部(漢江聖心病院診断検査医学科、9歳 circumcison破片)をPBS浮遊状態で細切して、トリプシン50〜100mlで20分間撹拌して遠心分離後、70umナイロン濾過器で濾過して収得した。
【0124】
濾過された細胞浮遊物の繊維芽細胞を培養皿の底に接種し、ぺニシリン(100 IU/mL)、ストレプトマイシン(100g/mL)、10%FBSを含有するDMEM培地を入れ、37℃、5%二酸化炭素を含む培養器内で培養した。80%合流に達した繊維芽細胞を6ウェルプレートにウェル当り5×104個に分株後、継代培養(subculture)の時と同じ細胞培養条件で24時間培養した。
【0125】
実施例(1-1)で単離した脂肪由来幹細胞も繊維芽細胞と同一条件でtranswell insertに24時間培養した後でtranswell insertを繊維芽細胞が培養中の6ウェルプレートによく挿入して混合培養(coculture)した。この際、transwell insertの下方培地を捨てて、PBSで洗浄し、新たな培地を入れて、繊維芽細胞と脂肪由来幹細胞を一緒に培養した。
【0126】
混合培養した培養液を培養24時間、72時間後1mlを取り、培養液中に存在するコラーゲン量を測定した。
【0127】
対照群実験で合流点に達した繊維芽細胞を6ウェルプレートにウェル当り5×104個に分株した後、24時間培養して、脂肪由来幹細胞を接種(seeding)しないtranswell insertのみをtranswell plateによく挿入して培養した。
【0128】
b)コラーゲン生成に対する活性確認
1) Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)を利用したコラーゲン量の測定
コラーゲン量の測定は、Procolagen type I peptide EIA キット (TAKARA BIOMEDICAL Co.)を利用した。Antibody-PoD 複合体溶液(conjugate solution) 100mlをウェルに入れ、コラーゲンスタンダード曲線範囲に入ってくるように補正希釈液に最適に希釈された繊維芽細胞及び、脂肪由来幹細胞と混合培養された繊維芽細胞培養液20μlを入れ、37℃で3時間放置した。次いでウェルを洗浄液で4回洗浄後、発色試薬100μlを入れ、常温で15分間培養後、450nmでELISA readerにより吸光度を測定した。
【0129】
2) Semi-quantity PCRを利用した細胞内コラーゲン量の測定
RNeasy plus mini キット(QIAGEN)を利用し、幹細胞と混合培養された繊維芽細胞の全体RNAを抽出し、抽出された3μgのRNAはMMLV-逆転写酵素(Promega) 200unit、50mM Tris-HCL(pH8.3)、75mM KCl、3mM MgCl2、10mM DTT、10mM dNTP、RNaseinhibitor 25unit、20pmole Oligo-dTを使用した。PCR反応はT-GRADIENT(BIOMETRA)で行い、37℃で45分間反応させた後、65℃で15分間MMLV-逆転写酵素を不活性化させた。コラーゲンI型(GenBank No.NM-000089)の確認のための、特異塩基配列はNCBIのGenbankに登録された塩基配列を基盤に作成し、これを表3に提示した。
【0130】
【表3】
【0131】
その結果、図6に図示した通り、細胞内コラーゲン合成量は対照群に比べて1日培養の際2.17倍増加し、3日培養の際1.27倍増加し、全体コラーゲン合成量は1日培養の際、1.44倍増加し、3日培養の際1.14倍増加したことを確認した。
【0132】
(3-2)脂肪由来幹細胞培養液による繊維芽細胞のコラーゲン合成
脂肪由来幹細胞培養液(conditioned media)が繊維芽細胞のコラーゲン合成に及ぼす影響を確認するために、western blot analysis(特殊蛋白質検出)を行った。
【0133】
脂肪由来幹細胞の培養液を収集するために、継代培養(subculture)後、T75 flaskに5×105の脂肪由来幹細胞を接種(seeding)した。この時、培地はserum free DMEMを使用した。3日間37℃、5% CO2 incubator(培養器)で培養した後、培地を収穫して、0.22um シリンジフィルターで濾過した後、これをserum free conditioned mediaとして実験に使用した。
【0134】
繊維芽細胞は継代培養(subculture)後、6ウェルプレートに5×104で0.1% FBSが含まれたDMEMに接種(seeding)した。24時間培養した後、前記serum free conditioned mediaに替えて、controlでserum free DMEMを使用した。12時間後、2%に血清(serum)を補正し、30時間培養した後、培養液を収穫してwestern blot analysisを実施した。
【0135】
電気泳動(electrophoresis)はSDS-PAGE法を応用して施行し、電気泳動装置はBio-rad社の電気泳動キットを使用した。ゲル(gel)は8%ポリアクリルアミドを使用し、PVDF membrane(bio-rad)を利用して転移(transfer)した。その後、blotを5% nonfat dry milk(脱脂粉乳)が含まれたTBST(50mM Tris, pH8.0, 138mM NaCl, 2.7mM KCl, 0.1% (w/v) tween20)でblockした。1次抗体(primary antibody)はcollagen type I(santacruz)を夜通し反応させ、2次抗体(secondary antibody)はperoxidase-Rabbit anti-goat IgG(Zymed)で30分間反応させた。最後に、抗体を探知するためのdetection reagent(ECL, milipore)に1分間反応させて結果を確認した。
【0136】
その結果、図16に示した通り、脂肪由来幹細胞培養液を繊維芽細胞に処理した時、処理しない培養液よりもコラーゲン量が2倍以上増加した(gene tool softwareで定量;2.16倍増加)。これは、脂肪由来幹細胞の培養液が繊維芽細胞のコラーゲン合成を増加させることを証明しており、従って、脂肪由来幹細胞の培養液が皮膚老化を防ぐ皺改善物質として使用できることを示唆している。
【0137】
[実施例4]
脂肪由来幹細胞培養液の繊維芽細胞の増殖促進確認
実施例(1-2)のように、脂肪組織から分離された幹細胞を3継代した後、106個の細胞をT175フラスコ(面積175cm2, 容量500ml)に塗布して、3日間培養後、培養液を収去して、9歳の男性皮膚組織(漢江聖心病院診断検査医学科9歳circumcison破片)繊維芽細胞4継代細胞が25,000個ずつ分株された6ウェルプレートに幹細胞培養液を10%、25%、50%、100%になるように培養液を添加した。
【0138】
3日経過後、繊維芽細胞の増殖程度を細胞生存力測定キット(cell counting kit-8, Dojindo Molecular Technologies, Inc.)で反応させ、ELISA readerで450nm吸光度を測定した。
【0139】
分析結果、表4に示すように、脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子が繊維芽細胞の増殖を促進することが立証され、脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子の濃度が高くなるほど、このような繊維芽細胞の増殖は比例して促進されることが確認された(図7参照)。
【0140】
【表4】
【0141】
<実施例5>
脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子と、大腸菌(E.coli)から発現された組替え成長因子の比較
実施例(1-2)での通り、脂肪組織から分離された幹細胞を3継代後、106個の細胞をT175フラスコ(面積175cm2, 容量500ml)に塗布して3日間培養後、培養液を収去して9歳の男性皮膚組織繊維芽細胞4継代細胞が5000個ずつ分株された6ウェルプレートに100%濃度の幹細胞培養液を添加し、対照群として大腸菌(E.coli)から発現された同じ濃度の組替え成長因子VEGF、bFGF(Santa Cruz.)を添加した培地と繊維芽細胞の細胞生存力測定キットで比較して見た。
【0142】
その結果、遺伝子組替え法を利用した大腸菌内成長因子遺伝子の過発現と純粋分離を通じて得られた成長因子と、成体幹細胞を利用して合成した成長因子とを比較するに、脂肪由来成体幹細胞を利用して合成した成長因子が、既存の合成方法を通じて作られた成長因子よりその効果に優れることが立証された。分析結果は表5に示す通りである。
【0143】
【表5】
【0144】
<実施例6>
成長因子分泌量を増加させた脂肪由来幹細胞の培養方法
(6-1)物理的刺激
実施例(1-2)での通り、脂肪組織由来幹細胞を3継代した後、培養した細胞が80%合流された時、トリプシン/EDTAで細胞をよく収去したあと、25,000個ずつの細胞を6ウェルプレートに正確に分株した。
【0145】
分株して24時間後、細胞が全て付着された時、培養液を完全に除去して物理的な条件で二酸化炭素5%、酸素1%のマルチガス培養器(sanyo)で培養させ、280〜320nm(model BEX-800; Ultra-Lum, Inc.)波長の紫外線Bを90mJ/cm2の照射量で照射した。栄養分欠乏反応としてはMg2+とCa2+が添加されたDulbecco's phosphate buffered salineに細胞が落ちる直前の状態である最大4時間まで培養した後、実施例(1-2)の無血清培地に替えた。機械的な摩擦を利用したスクラッチは接着し、培養された細胞培地にブレードを利用して縦、横1mmの格子状に掻いてくれるスクラッチ刺激を加えた。
【0146】
(6-2)化学的条件
実施例(1-2)の無血清培地、すなわち、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMにHam’s F-12栄養素混合液を1:1の比率で添加して混合し、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.17%重炭酸ナトリウムが添加された無血清培地に、ビタミンA,ビタミンB,ビタミンC,ビタミンDを細胞毒性のない以下の有効水準で添加して培養した。
【0147】
条件別に37℃、5%二酸化炭素培養器で48時間以上培養した後、培養液上澄液200μlを3,000rpmで遠心分離後、0.22μm濾過紙に濾過後、実施例2の酵素免疫測定法(ELISA)でbFGF、VEGF、TGFβ1の濃度を測定した。
【0148】
検査されたビタミンAの最適濃度は2〜10μM、ビタミンB2の最適濃度は50〜100μM、ビタミンCの最適濃度は10〜100μM、ビタミンDの最適濃度は5〜10μMでMTT assay結果細胞毒性が無く、本発明で望むそれぞれの成長因子の合成が増加することを確認した。
【0149】
(6-3)対照群培養条件
物理的刺激と化学的条件を与えない正常状態の培養を対照群とし、物理的刺激と化学的条件を与えた培養培地と成長因子の増加程度を比較した。
【0150】
培養条件として継代培養後、フェノールレッド等のpH指示薬が添加されないDMEMにHam′s F-12栄養素混合液を1:1の比率で添加して混合し、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.17%重炭酸ナトリウムが添加された無血清培地に、37℃、5%二酸化炭素培養器で48時間以上培養した後、培養液上澄液200μlを3,000rpmで遠心分離後、0.22μm濾過紙に濾過後、実施例2の酵素免疫測定法(ELISA)でbFGF、VEGF、TGFβ1の濃度を測定した。
【0151】
(6-4)刺激の併合
bFGFの場合、物理的刺激と化学的刺激を一緒に与えた場合には、紫外線光を照射し、直ちにビタミンA 2μM、ビタミンB 50μM、ビタミンC 10μM、ビタミンD 10μMの濃度で最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて1%酸素、5%二酸化炭素の低酸素刺激で48時間培養した。
【0152】
VEGFの場合、紫外線光を照射した後、スクラッチ刺激を与え、直ちにビタミンA 2μM、ビタミンB 50μM、ビタミンC 10μM、ビタミンD 10μMの濃度で最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、1%酸素、5%二酸化炭素の低酸素刺激で48時間培養した。
【0153】
TGFβ-1の場合、紫外線光を照射した後、スクラッチ刺激を与え、栄養分欠乏刺激を与えた後、ビタミンA 2μM、ビタミンB 50μM、ビタミンC 10μM、ビタミンD 10μMの濃度で最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて1%酸素、5%二酸化炭素の低酸素刺激で48時間培養した。
【0154】
さらに、bFGF、VEGF及びTGFβ-1の総括的最大量を得るために、紫外線光を照射した後、ビタミンA 2μM、ビタミンB 50μM、ビタミンC 10μM、ビタミンD 10μMの濃度で最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、1%酸素、5%二酸化炭素の低酸素刺激で48時間培養した。
【0155】
(6-5)結果
bFGFの場合には、図9に図示した通り、対照群と比較した時、低酸素刺激与えた場合1.74倍増加し、紫外線刺激を与えた場合2.71倍増加した。化学的刺激の場合には、ビタミンAの場合1.62倍増加し、ビタミンBの場合1.33倍増加し、ビタミンCの場合2.33倍増加し、ビタミンDの場合2.80倍増加することを確認した。
【0156】
前記刺激の内で、刺激効果が優れた物理的刺激原因である低酸素刺激と紫外線刺激を併用した場合には、相乗効果が増加し、化学的刺激の場合にもビタミン等の濃度を最適化した状態でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDが混合された培養液下では3.62倍に増加することを確認した。物理的刺激と化学的刺激を共に与えた場合には、低酸素刺激を最適化して投与しながら、紫外線光を照射してビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した場合には4.11倍に増加することができた。
【0157】
VEGFの場合には、図10に図示した通り、対照群と比較した時、低酸素刺激を与えた場合2.53倍増加し、紫外線刺激を与えた場合1.36倍増加し、機械的摩擦を利用したスクラッチ刺激を与えた場合1.30倍増加した。脈管内皮細胞成長因子(VEGF)の場合、化学的刺激の場合には、ビタミンAの場合、1.59倍増加し、ビタミンCの場合1.68倍増加し、ビタミンDの場合1.30倍増加することを確認した。
【0158】
前記刺激の内で、刺激効果が優れた物理的刺激源である低酸素刺激と紫外線刺激、スクラッチを並行した場合には、その相乗効果が増加され、化学的刺激の場合にもビタミン等の濃度を最適化した状態でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDが混合された培養液下では2.03倍に増加することを確認した。
【0159】
物理的刺激と化学的刺激を共に与えた場合には、低酸素刺激を最適化して投与しながら、紫外線刺激とスクラッチ刺激を与え、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した場合には3.92倍に増加することができる。
【0160】
TGFβ-1の場合には、図11に図示した通り、対照群と比較した時、低酸素刺激を与えた場合1.64倍増加し、紫外線刺激を与えた場合1.75倍増加し、機械的摩擦を利用したスクラッチ刺激を与えた場合2.13倍増加し、栄養分欠乏刺激を与えた場合2.01倍増加した。ヒト形質転換成長因子-ベータ(TGFβ-1)の場合、化学的刺激の場合には、ビタミンAの場合1.20倍増加し、ビタミンBの場合1.56倍増加し、ビタミンCの場合1.20倍増加し、ビタミンDの場合、1.16倍増加することを確認した。
【0161】
前記の刺激の内で、刺激効果が優れた物理的刺激原である低酸素刺激と紫外線刺激を併用した場合には、その相乗効果が増加し、化学的刺激の場合にもビタミン等の濃度を最適化した状態でビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDが混合された培養液下では1.68倍に増加することを確認した。
【0162】
物理的刺激と化学的な刺激を共に与えた場合には、低酸素刺激を最適化して投与しながら、紫外線照射とスクラッチ刺激と栄養分欠乏刺激を与え、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した場合には2.35倍に増加することができた。
【0163】
さらに、bFGF、VEGF及びTGFβ-1の総括的最大量を得るためには、低酸素刺激と紫外線刺激、およびビタミンA、B、C、Dを添加した培地の組合わせの場合が最も好ましい。具体的には、紫外線光を照射した後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化したDMEMにHam’s F-12栄養素混合培地に替えて、低酸素刺激を最適化培養時間下で培養すれば、対照群と比較したとき、bFGFが4.11倍、VEGFが3.8倍及びTGBβ-1が1.9倍で生産される。
【0164】
<実施例7>
脂肪由来幹細胞成長因子の紫外線に対する角質形成細胞防禦効果
脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子の紫外線に対する角質形成細胞防禦効果は次のような方法で試験した。
【0165】
角質形成細胞を適正細胞濃度6ウェルプレートに分株し、37℃、5%二酸化炭素の濃度に合わせた培養器においてKGM (karatinocyte growth media; Clonetics.)の培地条件下で、ADSC 3 passage 3日培養液100%2.5ccを添加して5ccに合わせ、レチノール2μMをKGM 5ccに添加、若しくはKGM 5ccのみをそれぞれ投与して、4時間安定化させ、原料が十分に分散するようにした。その後、無菌実験室で40Wダブルランプで8分間紫外線を照射した。24時間後に、何の処理もせずに8分間紫外線照射した陰性対照群またはレチノールと比較して、細胞の生存率を求めて原料に対する紫外線防禦機能を測定した。
【0166】
測定結果、下記表6のように実施例(1-2)の通り、培養してVEGF、bFGF、TGFβ-1を含有した培養液を投与した細胞群は67%、レチノールを投与した細胞群は54%、さらに陰性対照群は55%に表れた。これは、レチノールは紫外線に対する防禦効果が落ちるのに反して、脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子は、紫外線防御効果がより高いことを呈している。
【0167】
【表6】
【0168】
<実施例8>
脱毛鼠から紫外線照射で誘発された皮膚光老化現象に対して脂肪由来幹細胞成長因子の改善効果
実施例(1-2)のように培養して、VEGF、bFGF、TGBβ-1を含有した培養液の活性を評価するために、生後15〜20週令の脱毛鼠30匹ずつを利用して次のような実験を行った。
【0169】
脱毛鼠の背部位に紫外線照射器(UV Simulator)を利用して、2mJ/cm2の照射量で照射することを週当り2回の頻度で4週間実施することにより、皮膚の非正常的過角化を誘発させた。その後、化学的合成法による成長因子、遺伝子組替え方法による成長因子、脂肪由来成体幹細胞で合成した成長因子を脱毛鼠背部位の片側に1日2回、2週間1ccずつ塗布する反面、他の片側には比較のため、処理せずに比較した。2週後に老化緩化効果を肉眼観察して評価(Jin Ho Chung et al. Archives of Dermatology, 137, 8(2001))した。その結果を表7に示した。
【0170】
【表7】
【0171】
人為的に老化が誘発された脱毛鼠に成長因子をそれぞれ作用した結果、脂肪由来成体幹細胞を使用して合成した成長因子の場合に30匹の動物全てから、非正常的な皮膚過角化の緩化効果が表れたことを観察することができたものの、化学的合成方法や遺伝子組替え方法で合成した成長因子の場合と比較して見るに優れた結果であることが分かる。
【0172】
<実施例9>
ヒトにおいて自己脂肪由来幹細胞から分泌された成長因子の皺改善効果
30〜50歳の女性を対象に脂肪由来成体幹細胞を通じて合成された成長因子の皺緩化効果を検証するため、各実験群当り20名を選択して次のような実験を行った。
【0173】
1日2回の頻度で8週間女性の眉間又は目の周囲に脂肪由来幹細胞培養液でVEGF 30ng、bFGF 30ng、TGBβ-1 70ng含量に精製した培養液1ccを塗布し、他方の目の周囲には比較のため、陰性対照群(基本溶液として生理食塩水1cc)を塗布した。4週後及び8週後、皺緩化効果を肉眼観察して、その結果を下記の通りまとめた。
【0174】
【表8】
【0175】
前記表と図12〜15の結果から分かるように、成体幹細胞を利用して合成した成長因子を適用した場合、皺緩化効果が優れたものと確認された。
【0176】
[配列番号プリテスト]
本発明に伴う配列番号1〜6及び10〜11はそれぞれ特定の蛋白質検出のための増幅用プライマー対であり、配列番号7〜9はヒト成長因子をコーディングする増幅産物である。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明に伴う方法で生産したヒト成長因子は、安定性と生理活性が確保された物質であって、これを利用して皺改善及び治療、傷治療、傷跡改善及び治療等を目的とする医薬品、医薬部外品、化粧品等を開発することができる。
【0178】
さらに、本発明に伴う脂肪由来幹細胞の培養液は多様な成長因子を多量に含有していることから、それ自体でもって皺改善及び治療、傷治療、傷跡改善及び治療等の医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用して有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は脂肪組織から単離された幹細胞の光学顕微鏡写真である。
【図2】図2は最初単離されたPLA細胞の乳細胞分析結果を示したグラフである。
【図3】図3は継代培養以後の乳細胞分析結果を示したグラフである。
【図4】図4は脂肪由来幹細胞から逆転写PCRを通じて確認したTGFβ-1、bFGF及びVEGFの電気泳動写真である。
【図5】図5は脂肪由来幹細胞培養の際、培養液に分泌されたbFGFとVEGFの濃度を確認したグラフである。
【図6】図6は繊維芽細胞と脂肪由来幹細胞の混合培養を通じた繊維芽細胞のコラーゲン合成程度を測定したグラフである。
【図7】図7は脂肪由来幹細胞培養液の濃度別繊維芽細胞の細胞数を示したグラフである。
【図8】図8は脂肪由来幹細胞培養培地と組替え成長因子添加培地との細胞増殖力を比較したグラフである。
【図9】図9は本発明に伴う物理的、化学的条件により培養した脂肪細胞由来幹細胞の塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)の分泌量を比較したグラフである。
【図10】図10は脈管内皮細胞成長因子(VEGF)の分泌量を比較したグラフである。
【図11】図11はヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)の分泌量を比較したグラフである。
【図12】図12は自己脂肪由来成体幹細胞から分離した成長因子含有組成物の皺改善活性を確認した写真である。
【図13】図13は自己脂肪由来成体幹細胞から分離した成長因子含有組成物の皺改善活性を確認した写真である。
【図14】図14は自己脂肪由来成体幹細胞から分離した成長因子含有組成物の皺改善活性を確認した写真である。
【図15】図15は自己脂肪由来成体幹細胞から分離した成長因子含有組成物の皺改善活性を確認した写真である。
【図16】図16は脂肪由来幹細胞培養液による繊維芽細胞のコラーゲン合成程度を確認したウェスタンブロットの写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来の成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;
(iii)脂肪由来成体幹細胞に低酸素培養、紫外線照射、栄養分欠乏及び機械的摩擦から選択されるいずれか一つ以上の物理的刺激を加える段階;及び
(iv)選択的にビタミンA、ビタミンB、ビタミンC及びビタミンDから選択される一つ以上のビタミンを培養液に添加する段階を含み、
この際、(iii)段階と(iv)段階はヒト成長因子の最大生産が起きる条件で組合わせて進行する脂肪由来幹細胞からヒト成長因子を大量に生産する方法。
【請求項2】
ヒト成長因子が塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、脈管内皮細胞成長因子(VEGF)及び/又はヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)である第1項記載の方法。
【請求項3】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;及び
(iii)脂肪由来幹細胞に紫外線照射後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した培地に替えて、低酸素刺激を与えて培養する段階を含む脂肪由来幹細胞から塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)を最大培養する方法。
【請求項4】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;及び
(iii)脂肪由来幹細胞に紫外線照射し、スクラッチ刺激を加えた後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した培地に替えて、低酸素刺激を与えて培養する段階を含む脂肪由来幹細胞から脈管内皮細胞成長因子(VEGF)を最大培養する方法。
【請求項5】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;及び
(iii)脂肪由来幹細胞に紫外線照射し、スクラッチ刺激を加えた後、栄養分欠乏刺激を与えた後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した培地に替え、低酸素刺激を与えて培養する段階を含む脂肪由来幹細胞からヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)を最大培養する方法。
【請求項6】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来の成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;及び
(iii)脂肪由来幹細胞に紫外線を照射し、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した培地に替えて、低酸素刺激を与えて培養する段階を含む脂肪由来幹細胞からヒト成長因子を大量生産する方法。
【請求項7】
血清培地が0.1〜20%の血清を含む第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項8】
無血清培地がHam's F-12栄養素混合液を含む第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項9】
低酸素培養は約5%炭素に1〜5%酸素条件で培養することである第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項10】
紫外線照射は280〜320nmの紫外線を80〜120mJの熱量で照射することである第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項11】
栄養分欠乏はMg2+とCa2+が添加された緩衝溶液で培養することである第1項又は第5項記載の方法。
【請求項12】
機械的摩擦は細胞培地にスクラッチ刺激を加える第1項記載の方法。
【請求項13】
ビタミンAの添加量は2〜5μMである第1項〜第6項記載の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項14】
ビタミンBの添加量は50〜100μMである第1項記載の方法。
【請求項15】
ビタミンCの添加量は10〜100μMである第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項16】
ビタミンDの添加量は5〜10μMである第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項17】
第1項により収得したヒト塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)。
【請求項18】
第1項により収得したヒト脈管内皮細胞成長因子 (VEGF)。
【請求項19】
第1項により収得したヒト形質転換成長因子-ベータ (TGF-β)。
【請求項20】
第1項により収得した脂肪由来成体幹細胞培養液を含有する機能性化粧料組成物。
【請求項21】
第1項により収得したヒト成長因子を含有する機能性化粧料組成物。
【請求項22】
機能性皺改善及び/又は老化緩和活性である第20項又は第21項記載の化粧料組成物。
【請求項23】
皺改善及び/又は老化緩和機能性化粧料組成物において、
幹細胞培養液を含み、
この際、幹細胞は(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来成体幹細胞を単離する段階;及び
(ii)幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;を含む方法で収得したことを特徴とする組成物。
【請求項1】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来の成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;
(iii)脂肪由来成体幹細胞に低酸素培養、紫外線照射、栄養分欠乏及び機械的摩擦から選択されるいずれか一つ以上の物理的刺激を加える段階;及び
(iv)選択的にビタミンA、ビタミンB、ビタミンC及びビタミンDから選択される一つ以上のビタミンを培養液に添加する段階を含み、
この際、(iii)段階と(iv)段階はヒト成長因子の最大生産が起きる条件で組合わせて進行する脂肪由来幹細胞からヒト成長因子を大量に生産する方法。
【請求項2】
ヒト成長因子が塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、脈管内皮細胞成長因子(VEGF)及び/又はヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)である第1項記載の方法。
【請求項3】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;及び
(iii)脂肪由来幹細胞に紫外線照射後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した培地に替えて、低酸素刺激を与えて培養する段階を含む脂肪由来幹細胞から塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)を最大培養する方法。
【請求項4】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;及び
(iii)脂肪由来幹細胞に紫外線照射し、スクラッチ刺激を加えた後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した培地に替えて、低酸素刺激を与えて培養する段階を含む脂肪由来幹細胞から脈管内皮細胞成長因子(VEGF)を最大培養する方法。
【請求項5】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;及び
(iii)脂肪由来幹細胞に紫外線照射し、スクラッチ刺激を加えた後、栄養分欠乏刺激を与えた後、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した培地に替え、低酸素刺激を与えて培養する段階を含む脂肪由来幹細胞からヒト形質転換成長因子-ベータ(TGF-β)を最大培養する方法。
【請求項6】
(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来の成体幹細胞を単離する段階;
(ii)選択的に幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;及び
(iii)脂肪由来幹細胞に紫外線を照射し、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンDの濃度を最適化した培地に替えて、低酸素刺激を与えて培養する段階を含む脂肪由来幹細胞からヒト成長因子を大量生産する方法。
【請求項7】
血清培地が0.1〜20%の血清を含む第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項8】
無血清培地がHam's F-12栄養素混合液を含む第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項9】
低酸素培養は約5%炭素に1〜5%酸素条件で培養することである第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項10】
紫外線照射は280〜320nmの紫外線を80〜120mJの熱量で照射することである第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項11】
栄養分欠乏はMg2+とCa2+が添加された緩衝溶液で培養することである第1項又は第5項記載の方法。
【請求項12】
機械的摩擦は細胞培地にスクラッチ刺激を加える第1項記載の方法。
【請求項13】
ビタミンAの添加量は2〜5μMである第1項〜第6項記載の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項14】
ビタミンBの添加量は50〜100μMである第1項記載の方法。
【請求項15】
ビタミンCの添加量は10〜100μMである第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項16】
ビタミンDの添加量は5〜10μMである第1項〜第6項の内いずれか一つの項に記載された方法。
【請求項17】
第1項により収得したヒト塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)。
【請求項18】
第1項により収得したヒト脈管内皮細胞成長因子 (VEGF)。
【請求項19】
第1項により収得したヒト形質転換成長因子-ベータ (TGF-β)。
【請求項20】
第1項により収得した脂肪由来成体幹細胞培養液を含有する機能性化粧料組成物。
【請求項21】
第1項により収得したヒト成長因子を含有する機能性化粧料組成物。
【請求項22】
機能性皺改善及び/又は老化緩和活性である第20項又は第21項記載の化粧料組成物。
【請求項23】
皺改善及び/又は老化緩和機能性化粧料組成物において、
幹細胞培養液を含み、
この際、幹細胞は(i)哺乳動物の脂肪細胞から抽出した脂肪由来成体幹細胞を単離する段階;及び
(ii)幹細胞を血清培地で培養した後、無血清培地で継代培養する段階;を含む方法で収得したことを特徴とする組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図16】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図16】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−524425(P2009−524425A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552206(P2008−552206)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004111
【国際公開番号】WO2007/086637
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508226861)プロスティミクス カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(508226872)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004111
【国際公開番号】WO2007/086637
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508226861)プロスティミクス カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(508226872)
【Fターム(参考)】
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