脚式ロボット
【課題】手部の指部の把持面が4足歩行時に損傷するのを回避し、4足歩行時に圧覚センサを用いた制御によってロボット本体の姿勢の安定性の向上を図る。
【解決手段】4つの肢部をもつ脚式ロボットの上肢部に設けられた手部209,212を用いて、ナックル歩行により安定な4足歩行を行う。右手部209には、2本の指部101a,102aの指背面125a,126aに接地検出用の手部圧覚センサ107a,112aが設けられている。また、左手部212には、2本の指部101b,102bの指背面125b,126bに接地検出用の手部圧覚センサ107b,112bが設けられている。これら手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bを用いてナックル歩行時の姿勢が制御される。
【解決手段】4つの肢部をもつ脚式ロボットの上肢部に設けられた手部209,212を用いて、ナックル歩行により安定な4足歩行を行う。右手部209には、2本の指部101a,102aの指背面125a,126aに接地検出用の手部圧覚センサ107a,112aが設けられている。また、左手部212には、2本の指部101b,102bの指背面125b,126bに接地検出用の手部圧覚センサ107b,112bが設けられている。これら手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bを用いてナックル歩行時の姿勢が制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4肢を有し、2足歩行及び4足歩行を行う脚式ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2足歩行、4足歩行を行う様々な脚式の移動ロボットが開発されている。その中で、2足歩行、4足歩行、梯子登り、枝渡りと多くの移動形態をとれるロボットの研究が進められている(非特許文献1参照)。1つのロボットで多くの移動形態をとれることで、様々な環境での移動が可能となる。
【0003】
人間の生活を支援するロボットの1つの形態として、人の側に常にあり、物を持ってきたり、片付けたり等の軽作業を行うことが考えられる。移動手段は車輪型では階段等段差の移動が難しいため、脚式が望ましい。また、グリッパでは軽作業が限られるため、手には多指ハンドを備えることが望ましい。多指ハンドを備えることで、ドアノブを把持してドアの開閉等にも対応できる。
【0004】
脚式ロボットとしては2足歩行ロボットが開発され、既にホビーロボットとして市販されている。安定して2足歩行を行うためには、ロボット、環境(床面等)のモデル化とそれに基づく運動生成が必要である。動力学を考慮しないで済む静歩行でさえ、支持脚の足裏に重心の投影点を置く制御は、床に置いてある物、表面状態が異なる床面、階段等に対応することは簡単ではない。一方、4足歩行では重心の投影点は3脚の支持多角形内に置けば良いので制御はより2足歩行に比べて大幅に容易である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】米田裕成、関山浩介、長谷川泰久、福田敏男、「マルチロコモーションロボットの角運動量考慮による垂直梯子登り動作」、第26回日本ロボット学会講演会、RSJ2008AC1D2−01、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人間、類人猿の掌側にあたる指の把持面は敏感である。ロボットの把持機能の高い多指ハンドの指先も同様である。脚式ロボットが4足歩行で上肢部の手部を接地する場合は、手部における指部の把持面を保護する必要がある。
【0007】
また、4足歩行は2足歩行に比較して制御が安定な分容易ではあるが、重心の把握が必要である。そのため、4足歩行を行う脚式ロボットでは、ジャイロ、加速度センサ等の姿勢制御センサ、4肢の力覚センサの他、足部及び手部に地面等の歩行面に接触する圧覚センサを設ける必要がある。しかしながら、これまでの多指ハンドを備えて4足歩行を行う脚式ロボットの例は無く、また、指部の接地時の圧覚センサによる接地検出も行われていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、手部の指部の把持面が4足歩行時に損傷するのを回避し、4足歩行時に圧覚センサを用いた制御によってロボット本体の姿勢の安定性の向上を図る脚式ロボットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、体幹部と、前記体幹部に連結された2つの下肢部と、前記体幹部に連結された2つの上肢部と、を有するロボット本体を備え、前記各下肢部は、歩行の際に歩行面に接する足部を有し、前記各上肢部は、腕部と、前記腕部に連結され、把持対象物を把持可能な手部とを有し、前記2つの下肢部を用いて2足歩行が可能であり、前記2つの下肢部及び前記2つの上肢部を用いて4足歩行が可能な脚式ロボットにおいて、前記各手部が歩行面に接地したか否かを検出する手部圧覚センサと、前記各足部が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサと、前記手部圧覚センサ及び前記足部圧覚センサの検出結果により前記ロボット本体の重心を求めて前記ロボット本体の姿勢を制御する制御部と、を備え、前記各手部は、4足歩行時に指関節を屈曲させて把持面とは反対側の指背面を歩行面に接地させる指部を有し、前記手部圧覚センサは、前記各手部の指部の指背面に設置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、体幹部と、前記体幹部に連結された2つの下肢部と、前記体幹部に連結された2つの上肢部と、を有するロボット本体を備え、前記各下肢部は、歩行の際に歩行面に接する足部を有し、前記各上肢部は、腕部と、前記腕部に連結され、把持対象物を把持可能な手部とを有し、前記2つの下肢部を用いて2足歩行が可能であり、前記2つの下肢部及び前記2つの上肢部を用いて4足歩行が可能な脚式ロボットにおいて、前記各手部が歩行面に接地したか否かを検出する手部圧覚センサと、前記各足部が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサと、前記手部圧覚センサ及び前記足部圧覚センサの検出結果により前記ロボット本体の重心を求めて前記ロボット本体の姿勢を制御する制御部と、を備え、前記各手部は、4足歩行時に指関節を屈曲させて把持面とは反対側の指背面を歩行面に接地させる指部を複数有し、前記手部圧覚センサは、前記各手部の各指部の指背面に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各手部の指部の指背面を歩行面に接地させて4足歩行を行うようにしている。これにより、4足歩行時に手部の指部の把持面が損傷するのを回避することができる。そして、4足歩行時は、各圧覚センサを用いたロボット本体の姿勢制御によりロボット本体の姿勢の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る脚式ロボットの概略構成を示す斜視図である。
【図2】各手部の構成を示す斜視図であり、(a)は左手部の斜視図、(b)は右手部の斜視図である。
【図3】脚式ロボットの移動動作を示す図であり、(a)はナックル歩行、(b)は2足歩行、(c)は3足歩行、(d)はよじ登り動作を示す図である。
【図4】脚式ロボットの制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】制御システムの上肢ユニットにおける接続状態を示すブロック図である。
【図6】静歩行での歩行安定性を説明するために脚式ロボットを上方から見た模式図である。(a)はナックル歩行での4脚支持状態である。(b)はナックル歩行あるいは物を運ぶ3足歩行での3脚支持状態である。(c)は物を運ぶ3足歩行での2脚支持状態あるいは2足歩行での2脚支持状態である。(d)は2足歩行での1脚支持状態である。
【図7】4足歩行(ナックル歩行)での歩行制御を説明するフローチャートである。
【図8】3足歩行での歩行制御を説明するフローチャートである。
【図9】第1実施形態に係る脚式ロボットの手部の接地制御を行ったときの接地状態を示す図であり、(a)は手部の接地制御前の状態、(b)は手部の接地制御後の状態を示している。
【図10】第1実施形態に係る脚式ロボットの制御システムによる接地制御のフローチャートである。
【図11】第2実施形態に係る脚式ロボットの手部の接地制御を行ったときの接地状態を示す図であり、(a)は手部の接地制御前の状態、(b)は手部の接地制御後の状態を示している。
【図12】第2実施形態に係る脚式ロボットの制御システムによる接地制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る脚式ロボットの概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、脚式ロボット100のロボット本体100Aは、体幹部205と、体幹部205に連結された頭部206と、体幹部205に連結された2つの上肢部201,202と、体幹部205に連結された2つの下肢部203,204と、を備えている。脚式ロボット100は、2つの下肢部203,204を用いて2足歩行が可能であり、2つの下肢部203,204及び2つの上肢部201,202を用いて4足歩行が可能に構成されている。
【0015】
体幹部205の右側には、右上肢部201及び右下肢部203が設けられ、体幹部205の左側には、左上肢部202及び左下肢部204が設けられている。つまり、右上肢部201と左上肢部202とが、X−Z面に対して互いに対称配置されている。また、右下肢部203と左下肢部204とが、X−Z面に対して互いに対称配置されている。体幹部205は、胸部219と、腹部220と、腰部221とからなり、胸部219の上部に頭部206が連結されている。
【0016】
各上肢部201,202は、腕部231,232と手部209,212とを有して構成される。具体的に説明すると、右上肢部201は、体幹部205の胸部219の右側に基端部が連結された右上腕207と右上腕207の先端部に基端部が連結された右前腕208とからなる右腕部231を有している。また、右上肢部201は、右腕部231の右前腕208に、右腕部231の軸回りに回転可能に連結された右手部209を有している。また、右手部209は、右腕部231に対して揺動可能に連結されている。
【0017】
また、左上肢部202は、体幹部205の胸部219の左側に基端部が連結された左上腕210と左上腕210の先端部に基端部が連結された左前腕211とからなる左腕部232を有している。また、左上肢部202は、左腕部232の左前腕211に、左腕部232の軸回りに回転可能に連結された左手部212を有している。また、左手部212は、左腕部232に対して揺動可能に連結されている。各手部209、212は、把持対象物を把持可能に複数(本第1実施形態では、3つ)の指を有している多指ハンドである。
【0018】
また、各下肢部203,204は、歩行の際に地面又は床面等の歩行面に接する各足部215,218を有している。具体的に説明すると、右下肢部203は、体幹部205の腰部221の下部に基端部が連結された右大腿部213と、右大腿部213の先端部に基端部が連結された右下腿部214と、右下腿部214の先端部に連結された右足部215とを有している。また、左下肢部204は、体幹部205の腰部221の下部に基端部が連結された左大腿部216と、左大腿部216の先端部に基端部が連結された左下腿部217と、左下腿部217の先端部に連結された左足部218とを有している。
【0019】
なお、図示は省略するが、各部は以下の自由度を持ち、その駆動、制御に必要なアクチュエータ及びセンサを備えている。頭部206は、自由度が3(内訳:ヨー軸、ピッチ軸、ロール軸)、体幹部205は、自由度が3(内訳:ヨー軸、ピッチ軸、ロール軸)である。また、各上肢部201,202は、自由度が7(内訳:肩ピッチ軸、肩ロール軸、上腕ヨー軸、肘ピッチ軸、前腕ヨー軸、手首ピッチ軸、手首ロール軸)である。また、各下肢部203,204は、自由度が6(内訳:股ヨー軸、股ピッチ軸、股ロール軸、膝ピッチ軸、足首ピッチ軸、足首ロール軸)である。また、各手部209,212は自由度が6、各足部215,218は自由度が6である。これらの自由度は一例である。なお、足部215,218はよじ登りにより適した形態にするため冗長であるが、ロール軸とピッチ軸の自由度2とすることも可能である。また、上腕部207,210と前腕部208,211のヨー軸はどちらか一方を省略することも可能である。
【0020】
次に、各手部209,212の構成について詳細に説明する。図2は、各手部209,212の構成を示す斜視図であり、図2(a)は左手部212の斜視図、図2(b)は右手部209の斜視図である。
【0021】
図2(a)に示すように、左手部212は、手首105bを介して左前腕211に連結されている。左手部212は、人差指101b、中指102b及び拇指103bの3本の指を有している。各指101b,102bは、把持対象物を把持する際に、掌104b側に各指関節で屈曲する。
【0022】
各指101b,102b,103bは2関節になっており、各指関節に1自由度を備える。人差指101bは、先端に配置された第1リンク108bと、第1指関節109bで第1リンク108bに連結されるとともに、第2指関節111bで手部本体106bに連結された第2リンク110bとを有している。中指102bは、先端に配置された第1リンク113bと、第1指関節114bで第1リンク113bに連結されるとともに、第2指関節116bで手部本体106bに連結された第2リンク115bとを有している。拇指103bは、先端に配置された第1リンク117bと、第1指関節118bで第1リンク117bに連結されるとともに、第2指関節120bで手部本体106bに連結された第2リンク119bとを有している。
【0023】
図2(a)中に示した座標系で、人差指101bの第1指関節109b、第2指関節111b、中指102bの第1指関節114b、第2指関節116bは、ロール軸の自由度をもっている。拇指103bの第1指関節118bはピッチ軸の自由度をもっている。第2指関節120bはヨー軸の自由度をもっている。この図2(a)は左手部212を示しており、右手部209はX−Z平面で左手部212と左右対称となり、図2(b)に示している。
【0024】
図2(b)に示すように、右手部209は、手首105aを介して右前腕208に連結されている。右手部209は、人差指101a、中指102a及び拇指103aの3本の指を有している。各指101a,102aは、把持対象物を把持する際に、掌104a側に各指関節で屈曲する。
【0025】
各指101a,102a,103aは2関節になっており、各指関節に1自由度を備える。人差指101aは、先端に配置された第1リンク108aと、第1指関節109aで第1リンク108aに連結されるとともに、第2指関節111aで手部本体106aに連結された第2リンク110aとを有している。中指102aは、先端に配置された第1リンク113aと、第1指関節114aで第1リンク113aに連結されるとともに、第2指関節116aで手部本体106aに連結された第2リンク115aとを有している。拇指103aは、先端に配置された第1リンク117aと、第1指関節118aで第1リンク117aに連結されるとともに、第2指関節120aで手部本体106aに連結された第2リンク119aとを有している。
【0026】
右手部209で把持対象物を把持する際には、人差指101aの第1リンク108aの把持面121aと第2リンク110aの把持面122aとを把持対象物に接触させる。また、中指102aの第1リンク113aの把持面123aと第2リンク115aの把持面124aとを把持対象物に接触させる。
【0027】
左手部212で把持対象物を把持する際には、人差指101bの第1リンク108bの把持面121bと第2リンク110bの把持面122bとを把持対象物に圧接させる。また、中指102bの第1リンク113bの把持面123bと第2リンク115bの把持面124bとを把持対象物に圧接させる。
【0028】
ところで、把持動作可能な指をもつ類人猿では、4足歩行時に手の指背面を地面につける。これはナックル歩行と呼ばれる。本第1実施形態では、脚式ロボット100は、状況に応じて2足歩行と4足歩行を使い分け、4足歩行時は、立ち気味の姿勢の方が姿勢の差が少なく、手の指への荷重を減らすことができるため、ナックル歩行としている。ナックル歩行は、4足歩行時の上肢部の実質的な長さに手部の一部を含められるようになるため、立ち気味の姿勢に適している。また、邪魔にならないサイズを考えた時、ロボット本体100Aの身長に対する手部209,212の長さの割合は大きくなる。これは、多指ハンドである手部209,212の指関節数が多く、機構が複雑になるためである。ナックル歩行を用いることで、手部209,212の長さを上述の立ち気味の姿勢に活かすことができる。
【0029】
具体的に説明すると、本第1実施形態では、4足歩行時に、図2に示すように、各手部209,212の人差指101a,101bを第1指関節109a,109bで屈曲させるとともに、中指102a,102bを第1指関節114a,114bで屈曲させる。そして、右手部209の人差指101aの第1リンク108aの把持面121aとは反対側の指背面125aを歩行面に接地させるとともに、中指102aの第1リンク113aの把持面123aとは反対側の指背面126aを歩行面に接地させる。同様に、左手部212の人差指101bの第1リンク108bの把持面121bとは反対側の指背面125bを地面や床面等の歩行面に接地させるとともに、中指102bの第1リンク113bの把持面123bとは反対側の指背面126bを歩行面に接地させる。なお、本第1実施形態では、拇指103a,103bは、4足歩行時には使用しない。つまり、人差指101a,101b及び中指102a,102bが、4足歩行時に使用する指部となる。
【0030】
ところで、手部209,212は、上肢部で最も細いリンクである。従って、本第1実施形態では、各手部209,212は、4足歩行時に使用する指部を複数有しており、複数の指部を接地させることで、荷重を分散し、指部を保護している。各手部209,212は、各指部101a,101b,102a,102bの第1指関節における関節角度を約90度とし、掌104a,104bを後方に向けた姿勢に設定される。
【0031】
本第1実施形態の脚式ロボット100は、4足歩行(ナックル歩行)の他、2足歩行、3足歩行、よじ登り等の移動動作が可能である。図3を用いて脚式ロボット100の移動動作について説明する。図3(a)はナックル歩行、図3(b)は2足歩行、図3(c)は物を運ぶ3足歩行、図3(d)はよじ登り動作を示している。図3(c)ではロボットは右手部209で物501を持っている。図3(d)では脚式ロボット100は右手部209、左手部212、右足部215及び左足部218で棒502をよじ登っている。
【0032】
ナックル歩行又は3足歩行で支持脚となる上肢部201,202における手部209,212は、上述した通り、人差指101a,101bと中指102a,102bを第1指関節で約90度、手部209,212の内側に折り曲げる。そして、掌104a,104bをロボット本体100Aの後方に向ける。ここで、ロボット本体100Aの頭部206の顔が向いている方向を前方とし、その反対方向を後方としている。
【0033】
こうすることで、右手部209の指部である人差指101a及び中指102aにおける第2リンク110a,115aと掌104aを有する手部本体106aを上肢部の長さの一部とすることができる。また、左手部212の指部である人差指101b及び中指102bにおける第2リンク110b,115bと掌104bを有する手部本体106bを上肢部の長さの一部とすることができる。したがって、上腕部及び前腕部からなる腕部231,232の長さを下肢部203,204に比較してそれ程長くしなくても、極端な前傾姿勢をとらずに済み、4足歩行から2足歩行、2足立ちの移行が容易になる。また、各指101a,102a,101b,102bへの荷重も小さくなる。
【0034】
さらに、把持面121a,123a,121b,123bとは反対側の指背面125a,126a,125b,126bを歩行面に接地させるようにしている。したがって、掌104a,104b及び各指101a,102a,101b,102bの把持面121a,122a,123a,124a,121b,122b,123b,124bが損傷するのを回避することができる。
【0035】
上記の移動動作を人間の生活環境の大きな部分である屋内に当てはめてみる。ナックル歩行は最も多用される。物が置いてある床面、カーペット、畳等の柔らかさ、表面状態の異なる床面、段差、階段においても、安定に転倒することなく、移動することができる。2足歩行は、フローリング等の歩行制御が容易な床面の移動、両手で持つ必要のある物の持ち運びに用いる。但し、安定に歩行するため、制御は複雑になり、場合によっては転倒の可能性がある。尚、ドアの開閉時も2足立ちになる。片手で物を運ぶ3足歩行は、小物の持ち運びを、上記の状況において、2足歩行に比べて安定に行うことができる。よじ登りは歩行では移動できない場合に用いられる。手足の把持により体を支え、3点支持により移動する。高い台や机の上へ(あるいはその逆)が一例である。
【0036】
ところで、図3(a)に示すように、右足部215の足裏面には、歩行制御のため、右足部215が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサ241が設置されている。同様に、左足部218の足裏面には、左足部218が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサ242が設置されている。
【0037】
更に、本第1実施形態では、手部209,212を用いてナックル歩行を安定して行うために、図2に示すように、各指背面125a,126a,125b,126bに各手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bが設置されている。手部圧覚センサ107a,112aは、右手部209が歩行面に接地したか否かを検出するためのものであり、手部圧覚センサ107b,112bは、左手部212が歩行面に接地したか否かを検出するためのものである。
【0038】
これら圧覚センサ107a,112a,107b,112b,241,242は、ロボット本体100Aの重心を求めるのに用いられる。本第1実施形態では、ロボット本体100Aの重心を求めるのに必要な手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bを各手部209,212の指部の指背面125a,126a,125b,126bに設置している。したがって、手部209,212による把持動作では、手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bが把持対象物に接触するのを回避できるので、手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bによる誤検出を回避することができる。
【0039】
圧覚センサ107a,112a,107b,112b,241,242としては、感圧導電性ゴムの表面に電極を設け抵抗変化を検出するもの、ピエゾ抵抗を用いたもの、圧電体を用いたもの、静電容量検出型のものを用いることができる。
【0040】
この構成により、人差指101a,101bと中指102a,102bの関節角度を制御し、指背面の圧覚センサ107a,112a,107b,112bを接地させ、その信号をもとに安定してナックル歩行を行うことができる。
【0041】
また、把持動作においては、掌104a,104b、人差指101a,101b、中指102a,102b、拇指103a,103bを用いて様々な把持を行うことができる。指関節の関節角度を調整することで把持対象との接触点を多くできるため、安定な把持が可能である。
【0042】
なお、指の本数、関節数、自由度数は一例であり、これに限られるものではない。本数、関節数、自由度数が多くなれば、把持形態が増え、さらに操り等も可能になる。また、把持動作においては、既存の多指ハンドと同様に指、掌の把持面に圧覚センサを備えることで、把持制御の制御性を向上させることができる。
【0043】
次に、脚式ロボット100の全体の制御システムの概略について図4を用いて説明する。図4に示すように、制御部としての制御システム300は、コントローラユニット301、右上肢ユニット302、左上肢ユニット303、右下肢ユニット304、左下肢ユニット305、頭ユニット306、体幹ユニット307で構成される。各ユニットはそれぞれコントローラを備え、内部にあるアクチュエータの駆動制御、センサの駆動・検出制御、信号処理を行う。
【0044】
コントローラユニット301は各ユニットと制御信号を介して制御を行い、脚式ロボット全体の制御を行う。コントローラユニット301は内部の運動に係るプログラムと各ユニットからの制御信号に基づき各ユニットを制御し、ロボットを運動させる。運動に係るプログラムは予めコントローラユニット301に記憶されている他、外部からの通信により入力される。制御信号のインターフェース、通信プロトコルとしては、USB(Universal Serial Bus)、CAN(Controller Area Network)等を用いることができる。
【0045】
なお、この例ではコントローラユニット301に接続される各ユニットがコントローラを内蔵したが、各ユニットがコントローラを内蔵せず、コントローラユニット301から直接、各ユニットのアクチュエータの駆動、センサ信号の検出を行う構成も可能である。
【0046】
図5を用いて上肢ユニット302,303の指背面接地制御に係る制御システムの概要を説明する。上肢ユニット302は、上肢コントローラ401aを備え、上肢コントローラ401aに、手部圧覚センサ107a,112a、人差指アクチュエータ404a、中指アクチュエータ405a、手首アクチュエータ406aが接続されて構成される。同様に、上肢ユニット303は、上肢コントローラ401bを備え、上肢コントローラ401bに、手部圧覚センサ107b,112b、人差指アクチュエータ404b、中指アクチュエータ405b、手首アクチュエータ406bが接続されて構成される。
【0047】
手部圧覚センサ107a,112a(107b,112b)からは検出結果であるセンサ信号が上肢コントローラ401a(401b)に出力される。上肢コントローラ401a(401b)からは駆動信号が、人差指アクチュエータ404a(401b)、中指アクチュエータ405a(405b)、手首アクチュエータ406a(406b)に出力される。
【0048】
ナックル歩行時には、上肢コントローラ401a(401b)は手部圧覚センサ107a,112a(107b,112b)の信号をもとに指アクチュエータ、手首アクチュエータを駆動する。尚、上肢ユニット302,303にはこれ以外のセンサ、アクチュエータがあるが、指背面接地制御には直接関係しないため、ここでは省略した。
【0049】
次に、図6を用いて脚式ロボット100の静歩行の安定性について説明する。図6は脚式ロボット100を上方から見た模式図であり、4肢部201,202,203,204の接地状態(4肢部での支持状態)を模式的に示している。図6(a)はナックル歩行での4脚支持状態である。図6(b)はナックル歩行あるいは物を運ぶ3足歩行での3脚支持状態である。図6(c)は物を運ぶ3足歩行での2脚支持状態あるいは2足歩行での2脚支持状態である。図6(d)は2足歩行での1脚支持状態である。
【0050】
接地部(支持部)となるのは、右指背面601(指背面125a,126a)、左指背面602(指背面125b,126b)、右足裏面603、左足裏面604であり、斜線で示されている。指背面601,602の接地面積は足裏面603,604の接地面積よりも小さい。支持多角形605は接地部(支持部)の外周を結ぶものであり、破線で示されている。なお、見やすくするため、接地部(支持部)と重なる部分は若干外にずらして図示している。重心投影点606は、ロボット本体100Aの重心の歩行面への投影点である。制御システム300は、重心投影点606が静歩行時に支持多角形605内に位置するように、各圧覚センサ107a,112a,107b,112b,241,242の検出結果によりロボット本体100Aの姿勢を制御する。
【0051】
図6からわかるように、支持脚が少なくなる程、支持多角形605は小さくなり、ロボット本体100Aの重心を支持多角形605上に維持したままの歩行制御は難しくなる。したがって、図6(b)に示すナックル歩行は支持多角形605が図6(c)に示す2足歩行時の支持多角形605よりも大きくなるため、歩行安定性の点で優れている。
【0052】
また、床面等の歩行面の状況(凸凹、傾斜等)によっては、重心投影点606をロボット本体100Aの姿勢から単純に求めることが難しくなる。その場合、全ての支持脚の接地圧力を圧覚センサ107a,112a,107b,112b,241,242で検出することにより、ナックル歩行での重心投影点606を容易に求めることができ、様々な状態な床面等の歩行面でも安定に移動することができる。
【0053】
次に、図7を用いて制御システム300による4足歩行(ナックル歩行)で歩行制御について説明する。ここでは、下肢足裏の足部圧覚センサ241,242と、上肢の指背面の手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bからの信号を歩行制御に用いる。
【0054】
圧覚センサのセンサ信号が所定の閾値を上回ったことにより接地、そして支持脚となったことを検出する。また、圧覚センサのセンサ信号が閾値を下回ったことにより遊脚になったことを検出する。圧覚センサの信号が大きくなるよう姿勢を制御することで、重心投影点606をその脚に近づける。圧覚センサの信号が小さくなるように姿勢を制御することで、重心投影点606をその脚から遠ざける。4足の静歩行では支持脚は3あるいは4なので、支持多角形605は三角形あるいは四角形に近い形になる。
【0055】
右上肢部201が遊脚、他の肢部202,203,204が支持脚になっている状態を説明での制御サイクルの始めとする。以下、ロボット本体100Aが前進する場合、次の処理が順次行われる。
【0056】
まず、右上肢部201を進行方向前方に移動し接地する(S1)。次に、重心投影点606を左下肢部204から離れるように移動し、左下肢部204を遊脚にする(S2)。次に、左下肢部204を左上肢部202よりに移動し接地する(S3)。次に、重心投影点606を左上肢部202から離れるように移動し、左上肢部202を遊脚にする(S4)。次に、左上肢部202を進行方向に移動し接地する(S5)。次に、重心投影点606を右下肢部203から離れるように移動し、右下肢部203を遊脚にする(S6)。次に右下肢部203を右上肢部201よりに移動し接地する(S7)。次に、重心投影点606を右上肢部201から離れるように移動し、右上肢部201を遊脚にする(S8)。以降、初めに戻り、移動が完了するまで繰り返す。
【0057】
各上肢部の各手部の圧覚センサ107a,112a,107b,112bの検出結果であるセンサ信号を用いることで、各肢部201,202,203,204の接地制御、重心投影点606の移動制御を行うことができ、安定して歩行することができる。
【0058】
図8を用いて制御システム300による3足歩行(物を持って3足歩行)での歩行制御について説明する。圧覚センサの信号の扱いについては図7の説明と同様なので省略する。3足歩行の静歩行では支持脚は2あるいは3なので、支持多角形605は、幅をもった直線あるいは三角形に近い形になる。直線に近い支持多角形605では重心投影点606が支持多角形605の外に出やすくなるため、支持脚が2つになる期間はできるだけ短くする。
【0059】
右上肢部201で物を持ち、他の肢部202,203,204が支持脚になっている状態を、説明での制御サイクルの始めとする。以下の処理が順じ行われる。まず、重心投影点606を左下肢部204から離れるように移動し、左下肢部204を遊脚にする(S11)。次に、左下肢部204を進行方向に移動し接地する(S12)。重心投影点606を右下肢部203から離れるように移動し、右下肢部203を遊脚にする(S13)。右下肢部203を進行方向に移動し、接地する(S14)。重心投影点606を左上肢部202から離れるように移動し、左上肢部202を遊脚にする(S15)。左上肢部202を進行方向に移動し接地する(S16)。以降、初めに戻り、移動が完了するまで繰り返す。
【0060】
左上肢部202を用いて支持多角形605が大きくなる期間を設けることで、物を持った移動を2足歩行比べて安定に行うことができる。なお、右上肢部201で物を持った例を示したが、左上肢部202で物を持った場合は、上記の説明で左上肢部202を右上肢部201に置き換えればよいので、説明は省略する。
【0061】
なお、右手部209の人差指101a及び中指102aのうちのいずれか1つの指部にのみ手部圧覚センサを設ける場合であってもよいが、本第1実施形態では、人差指101a及び中指102aのそれぞれに手部圧覚センサを設けている。また、左手部212の人差指101b及び中指102bのうちのいずれか1つの指部にのみ手部圧覚センサを設ける場合であってもよいが、本第1実施形態では、人差指101b及び中指102bのそれぞれに手部圧覚センサを設けている。
【0062】
従って、本第1実施形態では、図2に示した3指ハンドである手部209(212)において、人差指101a(101b)と中指102a(102b)を共に接地させるために指関節角度を制御する。
【0063】
以下、図9を参照して、手部の接地制御を行ったときの接地状態について説明する。図9(a)は手部の接地制御前の状態、図9(b)は手部の接地制御後の状態を示している。なお、図9には、右手部209を示しているが、左手部212についても同様に動作する。
【0064】
ナックル歩行では3指101a,102a,103aを図9(a)のような姿勢にする。人差指101aの第2指関節111aと中指102aの第2指関節116aは伸びている。人差指101aの第1指関節109aと中指102aの第1指関節114aは約90度に手部209の内側に曲がっている。この状態で人差指101aの指背面125aと中指102aの指背面126aを床面等の歩行面901側に向ける。掌は進行方向と逆を向いている(手の甲は進行方向を向いている)。こうすることで、2本の指101a,102aの歩行面901への平均的な距離が等しくなるため、接地制御が容易になる。図9では人差指101aが先に接地している例である。人差指101a、中指102aの関節角度は、上記角度から極端に離れていなければ、動作させることは可能である。
【0065】
図10を用いて接地制御のフローを説明する。指背面の接地状態の検出は上述の移動制御と同様である。上肢部が接地されその後、遊脚となるまでの間、以下の制御が行われる。まず、制御システム300のコントローラユニット301は、各手部圧覚センサ107a,112aの検出結果により、人差指101a及び中指102aのうちのいずれかの指部が接地したか否かを判断する(S21)。次に、コントローラユニット301は、接地した指部が人差指101aか中指102aかを判別する(S22)。つまり、コントローラユニット301は、手部圧覚センサ107a,112aのうちいずれかの手部圧覚センサにより歩行面に接地したことが検出されたかを判別する。
【0066】
コントローラユニット301は、人差指101aが先に接地した指部であると判別した場合、手部209の他の指部である中指102aの手部圧覚センサ112aが歩行面に接地するように先に接地した人差指101aの関節角度を調整する(S23)。
【0067】
続いて、コントローラユニット301は、中指102aが接地したか否かを判断する(S24)。コントローラユニット301は、中指102aが接地していない場合は、ステップS23の処理に戻る。コントローラユニット301は、中指102aが接地した場合は、人差指101aの関節角度を固定する(S25)。
【0068】
つまり、図9(a)に示すように、人差指101aだけが歩行面901に接地している場合には、人差指101aの関節角度を調整し、図9(b)に示すように、中指102aを歩行面901に接地させる。
【0069】
またステップS22でコントローラユニット301は、中指102aが先に接地した指部であると判別した場合、他の指部である人差指101aの手部圧覚センサ107aが歩行面に接地するように先に接地した中指102aの関節角度を調整する(S26)。
【0070】
続いて、コントローラユニット301は、人差指101aが接地したか否かを判断する(S27)。コントローラユニット301は、人差指101aが接地していない場合は、ステップS26の処理に戻る。コントローラユニット301は、人差指101aが接地した場合は、中指102aの関節角度を固定する(S28)。ステップS25,S28に続いて、コントローラユニット301は、人差指101aと中指102aが接地していないか、つまり床面等の歩行面から離れたか否かを判断する(S29)。このステップS29の処理は、人差指101aと中指102aが歩行面から離れるまで繰り返される。コントローラユニット301は、接地しなくなった場合は、指部101a,102aの関節角度を接地制御前の角度に戻す(S30)。
【0071】
以上の接地制御を行うことにより、2本の指部101a,102aを確実に接地させ、2本の指部101a,102aで上肢部201に掛かった荷重をほぼ均等に支えることができるため、指部101a,102aへの負担が減少し、損傷等を防ぐことができる。また、個々の指部101a,102aを細くできるため、指を用いた把持、操作の機能を向上することができる。
【0072】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る脚式ロボットについて説明する。ロボット本体の構成は、上記第1実施形態と同様であるので、同一符号を用いて説明する。本第2実施形態では、制御部である制御システムの制御動作が異なるものである。
【0073】
図11は、本第2実施形態に係る脚式ロボットの手部の接地制御を行ったときの接地状態を示す図である。図11(a)は手部の接地制御前の状態、図11(b)は手部の接地制御後の状態を示している。なお、図11には、右手部209を示しているが、左手部212についても同様に動作する。
【0074】
本第2実施形態では、手部209の人差指101aと中指102aを共に接地させるために手首105a(腕部231に対する手部209)の角度を制御する。手首105aの角度を変更することにより、人差指101aの指背面125aと中指102aの指背面126aを共に接地させている。
【0075】
図12を用いて接地制御のフローを説明する。指背面の接地状態の検出は上述の移動制御と同様である。上肢が接地されその後、遊脚となるまでの間、以下の制御が行われる。まず、制御システム300のコントローラユニット301は、各手部圧覚センサ107a,112aの検出結果により、人差指101a及び中指102aのうちのいずれかの指部が接地したか否かを判断する(S31)。次に、コントローラユニット301は、接地した指部が人差指101aか中指102aかを判別する(S32)。つまり、コントローラユニット301は、手部圧覚センサ107a,112aのうちいずれかの手部圧覚センサにより歩行面に接地したことが検出されたかを判別する。
【0076】
コントローラユニット301は、人差指101aが先に接地した指部であると判別した場合、手部209の他の指部である中指102aの手部圧覚センサ112aが歩行面に接地するように手首105a(腕部231に対する手部209)の角度を調整する。具体的には、手首105aを人差指101aが腕部231に近づく方向に回転させる(S33)。
【0077】
続いて、コントローラユニット301は、中指102aが接地したか否かを判断する(S34)。コントローラユニット301は、中指102aが接地していない場合は、ステップS33の処理に戻る。コントローラユニット301は、中指102aが接地した場合は、手首105aの角度を固定する(S35)。
【0078】
つまり、図11(a)に示すように、人差指101aだけが歩行面901に接地している場合には、手首105aの角度を調整し、図11(b)に示すように、中指102aを歩行面901に接地させる。
【0079】
またステップS32でコントローラユニット301は、中指102aが先に接地した指部であると判別した場合、他の指部である人差指101aの手部圧覚センサ107aが歩行面に接地するように手首105a(腕部231に対する手部209)の角度を調整する。具体的には、手首105aを中指102aが腕部231に近づく方向に回転させる(S36)。
【0080】
続いて、コントローラユニット301は、人差指101aが接地したか否かを判断する(S37)。コントローラユニット301は、人差指101aが接地していない場合は、ステップS36の処理に戻る。コントローラユニット301は、人差指101aが接地した場合は、中指102aの関節角度を固定する(S35)。
【0081】
ステップS35に続いて、コントローラユニット301は、人差指101aと中指102aが接地していないか、つまり床面等の歩行面から離れたか否かを判断する(S38)。このステップS38の処理は、人差指101aと中指102aが歩行面から離れるまで繰り返される。コントローラユニット301は、接地しなくなった場合は、手首105aの角度を接地制御前の角度に戻す(S39)。
【0082】
以上の接地制御を行うことにより、2本の指部101a,102aを確実に接地させ、2本の指部101a,102aで上肢部201に掛かった荷重をほぼ均等に支えることができるため、指部101a,102aへの負担が減少し、損傷等を防ぐことができる。また、個々の指部101a,102aを細くできるため、指を用いた把持、操作の機能を向上することができる。
【0083】
なお、上記第1、第2実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記実施形態では、3指ハンドで2指を接地する場合について説明したが、他の形態のハンドに適用することも可能である。例えば、4指ハンドで3指を接地してもよい。また、接地させる指部が1本の場合でもよく、この場合は、図10及び図12に示した制御処理は行われない。
【0084】
また、上記実施形態では、接地制御において、指部の関節角度を制御するか、手首の角度を制御する場合について説明したが、指関節と手首関節の両方を組合せての指背面の接地制御を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0085】
100…脚式ロボット、100A…ロボット本体、101a,101b…人差指(指部)、102a,102b…中指(指部)、106a,106b…手部本体、107a,112a…手部圧覚センサ、107b,112b…手部圧覚センサ、121a,121b,123a,123b…把持面、125a,125b,126a,126b…指背面、201,202…上肢部、203,204…下肢部、205…体幹部、209,212…手部、215,218…足部、241,242…足部圧覚センサ、300…制御システム(制御部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、4肢を有し、2足歩行及び4足歩行を行う脚式ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2足歩行、4足歩行を行う様々な脚式の移動ロボットが開発されている。その中で、2足歩行、4足歩行、梯子登り、枝渡りと多くの移動形態をとれるロボットの研究が進められている(非特許文献1参照)。1つのロボットで多くの移動形態をとれることで、様々な環境での移動が可能となる。
【0003】
人間の生活を支援するロボットの1つの形態として、人の側に常にあり、物を持ってきたり、片付けたり等の軽作業を行うことが考えられる。移動手段は車輪型では階段等段差の移動が難しいため、脚式が望ましい。また、グリッパでは軽作業が限られるため、手には多指ハンドを備えることが望ましい。多指ハンドを備えることで、ドアノブを把持してドアの開閉等にも対応できる。
【0004】
脚式ロボットとしては2足歩行ロボットが開発され、既にホビーロボットとして市販されている。安定して2足歩行を行うためには、ロボット、環境(床面等)のモデル化とそれに基づく運動生成が必要である。動力学を考慮しないで済む静歩行でさえ、支持脚の足裏に重心の投影点を置く制御は、床に置いてある物、表面状態が異なる床面、階段等に対応することは簡単ではない。一方、4足歩行では重心の投影点は3脚の支持多角形内に置けば良いので制御はより2足歩行に比べて大幅に容易である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】米田裕成、関山浩介、長谷川泰久、福田敏男、「マルチロコモーションロボットの角運動量考慮による垂直梯子登り動作」、第26回日本ロボット学会講演会、RSJ2008AC1D2−01、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人間、類人猿の掌側にあたる指の把持面は敏感である。ロボットの把持機能の高い多指ハンドの指先も同様である。脚式ロボットが4足歩行で上肢部の手部を接地する場合は、手部における指部の把持面を保護する必要がある。
【0007】
また、4足歩行は2足歩行に比較して制御が安定な分容易ではあるが、重心の把握が必要である。そのため、4足歩行を行う脚式ロボットでは、ジャイロ、加速度センサ等の姿勢制御センサ、4肢の力覚センサの他、足部及び手部に地面等の歩行面に接触する圧覚センサを設ける必要がある。しかしながら、これまでの多指ハンドを備えて4足歩行を行う脚式ロボットの例は無く、また、指部の接地時の圧覚センサによる接地検出も行われていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、手部の指部の把持面が4足歩行時に損傷するのを回避し、4足歩行時に圧覚センサを用いた制御によってロボット本体の姿勢の安定性の向上を図る脚式ロボットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、体幹部と、前記体幹部に連結された2つの下肢部と、前記体幹部に連結された2つの上肢部と、を有するロボット本体を備え、前記各下肢部は、歩行の際に歩行面に接する足部を有し、前記各上肢部は、腕部と、前記腕部に連結され、把持対象物を把持可能な手部とを有し、前記2つの下肢部を用いて2足歩行が可能であり、前記2つの下肢部及び前記2つの上肢部を用いて4足歩行が可能な脚式ロボットにおいて、前記各手部が歩行面に接地したか否かを検出する手部圧覚センサと、前記各足部が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサと、前記手部圧覚センサ及び前記足部圧覚センサの検出結果により前記ロボット本体の重心を求めて前記ロボット本体の姿勢を制御する制御部と、を備え、前記各手部は、4足歩行時に指関節を屈曲させて把持面とは反対側の指背面を歩行面に接地させる指部を有し、前記手部圧覚センサは、前記各手部の指部の指背面に設置されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、体幹部と、前記体幹部に連結された2つの下肢部と、前記体幹部に連結された2つの上肢部と、を有するロボット本体を備え、前記各下肢部は、歩行の際に歩行面に接する足部を有し、前記各上肢部は、腕部と、前記腕部に連結され、把持対象物を把持可能な手部とを有し、前記2つの下肢部を用いて2足歩行が可能であり、前記2つの下肢部及び前記2つの上肢部を用いて4足歩行が可能な脚式ロボットにおいて、前記各手部が歩行面に接地したか否かを検出する手部圧覚センサと、前記各足部が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサと、前記手部圧覚センサ及び前記足部圧覚センサの検出結果により前記ロボット本体の重心を求めて前記ロボット本体の姿勢を制御する制御部と、を備え、前記各手部は、4足歩行時に指関節を屈曲させて把持面とは反対側の指背面を歩行面に接地させる指部を複数有し、前記手部圧覚センサは、前記各手部の各指部の指背面に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各手部の指部の指背面を歩行面に接地させて4足歩行を行うようにしている。これにより、4足歩行時に手部の指部の把持面が損傷するのを回避することができる。そして、4足歩行時は、各圧覚センサを用いたロボット本体の姿勢制御によりロボット本体の姿勢の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る脚式ロボットの概略構成を示す斜視図である。
【図2】各手部の構成を示す斜視図であり、(a)は左手部の斜視図、(b)は右手部の斜視図である。
【図3】脚式ロボットの移動動作を示す図であり、(a)はナックル歩行、(b)は2足歩行、(c)は3足歩行、(d)はよじ登り動作を示す図である。
【図4】脚式ロボットの制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】制御システムの上肢ユニットにおける接続状態を示すブロック図である。
【図6】静歩行での歩行安定性を説明するために脚式ロボットを上方から見た模式図である。(a)はナックル歩行での4脚支持状態である。(b)はナックル歩行あるいは物を運ぶ3足歩行での3脚支持状態である。(c)は物を運ぶ3足歩行での2脚支持状態あるいは2足歩行での2脚支持状態である。(d)は2足歩行での1脚支持状態である。
【図7】4足歩行(ナックル歩行)での歩行制御を説明するフローチャートである。
【図8】3足歩行での歩行制御を説明するフローチャートである。
【図9】第1実施形態に係る脚式ロボットの手部の接地制御を行ったときの接地状態を示す図であり、(a)は手部の接地制御前の状態、(b)は手部の接地制御後の状態を示している。
【図10】第1実施形態に係る脚式ロボットの制御システムによる接地制御のフローチャートである。
【図11】第2実施形態に係る脚式ロボットの手部の接地制御を行ったときの接地状態を示す図であり、(a)は手部の接地制御前の状態、(b)は手部の接地制御後の状態を示している。
【図12】第2実施形態に係る脚式ロボットの制御システムによる接地制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る脚式ロボットの概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、脚式ロボット100のロボット本体100Aは、体幹部205と、体幹部205に連結された頭部206と、体幹部205に連結された2つの上肢部201,202と、体幹部205に連結された2つの下肢部203,204と、を備えている。脚式ロボット100は、2つの下肢部203,204を用いて2足歩行が可能であり、2つの下肢部203,204及び2つの上肢部201,202を用いて4足歩行が可能に構成されている。
【0015】
体幹部205の右側には、右上肢部201及び右下肢部203が設けられ、体幹部205の左側には、左上肢部202及び左下肢部204が設けられている。つまり、右上肢部201と左上肢部202とが、X−Z面に対して互いに対称配置されている。また、右下肢部203と左下肢部204とが、X−Z面に対して互いに対称配置されている。体幹部205は、胸部219と、腹部220と、腰部221とからなり、胸部219の上部に頭部206が連結されている。
【0016】
各上肢部201,202は、腕部231,232と手部209,212とを有して構成される。具体的に説明すると、右上肢部201は、体幹部205の胸部219の右側に基端部が連結された右上腕207と右上腕207の先端部に基端部が連結された右前腕208とからなる右腕部231を有している。また、右上肢部201は、右腕部231の右前腕208に、右腕部231の軸回りに回転可能に連結された右手部209を有している。また、右手部209は、右腕部231に対して揺動可能に連結されている。
【0017】
また、左上肢部202は、体幹部205の胸部219の左側に基端部が連結された左上腕210と左上腕210の先端部に基端部が連結された左前腕211とからなる左腕部232を有している。また、左上肢部202は、左腕部232の左前腕211に、左腕部232の軸回りに回転可能に連結された左手部212を有している。また、左手部212は、左腕部232に対して揺動可能に連結されている。各手部209、212は、把持対象物を把持可能に複数(本第1実施形態では、3つ)の指を有している多指ハンドである。
【0018】
また、各下肢部203,204は、歩行の際に地面又は床面等の歩行面に接する各足部215,218を有している。具体的に説明すると、右下肢部203は、体幹部205の腰部221の下部に基端部が連結された右大腿部213と、右大腿部213の先端部に基端部が連結された右下腿部214と、右下腿部214の先端部に連結された右足部215とを有している。また、左下肢部204は、体幹部205の腰部221の下部に基端部が連結された左大腿部216と、左大腿部216の先端部に基端部が連結された左下腿部217と、左下腿部217の先端部に連結された左足部218とを有している。
【0019】
なお、図示は省略するが、各部は以下の自由度を持ち、その駆動、制御に必要なアクチュエータ及びセンサを備えている。頭部206は、自由度が3(内訳:ヨー軸、ピッチ軸、ロール軸)、体幹部205は、自由度が3(内訳:ヨー軸、ピッチ軸、ロール軸)である。また、各上肢部201,202は、自由度が7(内訳:肩ピッチ軸、肩ロール軸、上腕ヨー軸、肘ピッチ軸、前腕ヨー軸、手首ピッチ軸、手首ロール軸)である。また、各下肢部203,204は、自由度が6(内訳:股ヨー軸、股ピッチ軸、股ロール軸、膝ピッチ軸、足首ピッチ軸、足首ロール軸)である。また、各手部209,212は自由度が6、各足部215,218は自由度が6である。これらの自由度は一例である。なお、足部215,218はよじ登りにより適した形態にするため冗長であるが、ロール軸とピッチ軸の自由度2とすることも可能である。また、上腕部207,210と前腕部208,211のヨー軸はどちらか一方を省略することも可能である。
【0020】
次に、各手部209,212の構成について詳細に説明する。図2は、各手部209,212の構成を示す斜視図であり、図2(a)は左手部212の斜視図、図2(b)は右手部209の斜視図である。
【0021】
図2(a)に示すように、左手部212は、手首105bを介して左前腕211に連結されている。左手部212は、人差指101b、中指102b及び拇指103bの3本の指を有している。各指101b,102bは、把持対象物を把持する際に、掌104b側に各指関節で屈曲する。
【0022】
各指101b,102b,103bは2関節になっており、各指関節に1自由度を備える。人差指101bは、先端に配置された第1リンク108bと、第1指関節109bで第1リンク108bに連結されるとともに、第2指関節111bで手部本体106bに連結された第2リンク110bとを有している。中指102bは、先端に配置された第1リンク113bと、第1指関節114bで第1リンク113bに連結されるとともに、第2指関節116bで手部本体106bに連結された第2リンク115bとを有している。拇指103bは、先端に配置された第1リンク117bと、第1指関節118bで第1リンク117bに連結されるとともに、第2指関節120bで手部本体106bに連結された第2リンク119bとを有している。
【0023】
図2(a)中に示した座標系で、人差指101bの第1指関節109b、第2指関節111b、中指102bの第1指関節114b、第2指関節116bは、ロール軸の自由度をもっている。拇指103bの第1指関節118bはピッチ軸の自由度をもっている。第2指関節120bはヨー軸の自由度をもっている。この図2(a)は左手部212を示しており、右手部209はX−Z平面で左手部212と左右対称となり、図2(b)に示している。
【0024】
図2(b)に示すように、右手部209は、手首105aを介して右前腕208に連結されている。右手部209は、人差指101a、中指102a及び拇指103aの3本の指を有している。各指101a,102aは、把持対象物を把持する際に、掌104a側に各指関節で屈曲する。
【0025】
各指101a,102a,103aは2関節になっており、各指関節に1自由度を備える。人差指101aは、先端に配置された第1リンク108aと、第1指関節109aで第1リンク108aに連結されるとともに、第2指関節111aで手部本体106aに連結された第2リンク110aとを有している。中指102aは、先端に配置された第1リンク113aと、第1指関節114aで第1リンク113aに連結されるとともに、第2指関節116aで手部本体106aに連結された第2リンク115aとを有している。拇指103aは、先端に配置された第1リンク117aと、第1指関節118aで第1リンク117aに連結されるとともに、第2指関節120aで手部本体106aに連結された第2リンク119aとを有している。
【0026】
右手部209で把持対象物を把持する際には、人差指101aの第1リンク108aの把持面121aと第2リンク110aの把持面122aとを把持対象物に接触させる。また、中指102aの第1リンク113aの把持面123aと第2リンク115aの把持面124aとを把持対象物に接触させる。
【0027】
左手部212で把持対象物を把持する際には、人差指101bの第1リンク108bの把持面121bと第2リンク110bの把持面122bとを把持対象物に圧接させる。また、中指102bの第1リンク113bの把持面123bと第2リンク115bの把持面124bとを把持対象物に圧接させる。
【0028】
ところで、把持動作可能な指をもつ類人猿では、4足歩行時に手の指背面を地面につける。これはナックル歩行と呼ばれる。本第1実施形態では、脚式ロボット100は、状況に応じて2足歩行と4足歩行を使い分け、4足歩行時は、立ち気味の姿勢の方が姿勢の差が少なく、手の指への荷重を減らすことができるため、ナックル歩行としている。ナックル歩行は、4足歩行時の上肢部の実質的な長さに手部の一部を含められるようになるため、立ち気味の姿勢に適している。また、邪魔にならないサイズを考えた時、ロボット本体100Aの身長に対する手部209,212の長さの割合は大きくなる。これは、多指ハンドである手部209,212の指関節数が多く、機構が複雑になるためである。ナックル歩行を用いることで、手部209,212の長さを上述の立ち気味の姿勢に活かすことができる。
【0029】
具体的に説明すると、本第1実施形態では、4足歩行時に、図2に示すように、各手部209,212の人差指101a,101bを第1指関節109a,109bで屈曲させるとともに、中指102a,102bを第1指関節114a,114bで屈曲させる。そして、右手部209の人差指101aの第1リンク108aの把持面121aとは反対側の指背面125aを歩行面に接地させるとともに、中指102aの第1リンク113aの把持面123aとは反対側の指背面126aを歩行面に接地させる。同様に、左手部212の人差指101bの第1リンク108bの把持面121bとは反対側の指背面125bを地面や床面等の歩行面に接地させるとともに、中指102bの第1リンク113bの把持面123bとは反対側の指背面126bを歩行面に接地させる。なお、本第1実施形態では、拇指103a,103bは、4足歩行時には使用しない。つまり、人差指101a,101b及び中指102a,102bが、4足歩行時に使用する指部となる。
【0030】
ところで、手部209,212は、上肢部で最も細いリンクである。従って、本第1実施形態では、各手部209,212は、4足歩行時に使用する指部を複数有しており、複数の指部を接地させることで、荷重を分散し、指部を保護している。各手部209,212は、各指部101a,101b,102a,102bの第1指関節における関節角度を約90度とし、掌104a,104bを後方に向けた姿勢に設定される。
【0031】
本第1実施形態の脚式ロボット100は、4足歩行(ナックル歩行)の他、2足歩行、3足歩行、よじ登り等の移動動作が可能である。図3を用いて脚式ロボット100の移動動作について説明する。図3(a)はナックル歩行、図3(b)は2足歩行、図3(c)は物を運ぶ3足歩行、図3(d)はよじ登り動作を示している。図3(c)ではロボットは右手部209で物501を持っている。図3(d)では脚式ロボット100は右手部209、左手部212、右足部215及び左足部218で棒502をよじ登っている。
【0032】
ナックル歩行又は3足歩行で支持脚となる上肢部201,202における手部209,212は、上述した通り、人差指101a,101bと中指102a,102bを第1指関節で約90度、手部209,212の内側に折り曲げる。そして、掌104a,104bをロボット本体100Aの後方に向ける。ここで、ロボット本体100Aの頭部206の顔が向いている方向を前方とし、その反対方向を後方としている。
【0033】
こうすることで、右手部209の指部である人差指101a及び中指102aにおける第2リンク110a,115aと掌104aを有する手部本体106aを上肢部の長さの一部とすることができる。また、左手部212の指部である人差指101b及び中指102bにおける第2リンク110b,115bと掌104bを有する手部本体106bを上肢部の長さの一部とすることができる。したがって、上腕部及び前腕部からなる腕部231,232の長さを下肢部203,204に比較してそれ程長くしなくても、極端な前傾姿勢をとらずに済み、4足歩行から2足歩行、2足立ちの移行が容易になる。また、各指101a,102a,101b,102bへの荷重も小さくなる。
【0034】
さらに、把持面121a,123a,121b,123bとは反対側の指背面125a,126a,125b,126bを歩行面に接地させるようにしている。したがって、掌104a,104b及び各指101a,102a,101b,102bの把持面121a,122a,123a,124a,121b,122b,123b,124bが損傷するのを回避することができる。
【0035】
上記の移動動作を人間の生活環境の大きな部分である屋内に当てはめてみる。ナックル歩行は最も多用される。物が置いてある床面、カーペット、畳等の柔らかさ、表面状態の異なる床面、段差、階段においても、安定に転倒することなく、移動することができる。2足歩行は、フローリング等の歩行制御が容易な床面の移動、両手で持つ必要のある物の持ち運びに用いる。但し、安定に歩行するため、制御は複雑になり、場合によっては転倒の可能性がある。尚、ドアの開閉時も2足立ちになる。片手で物を運ぶ3足歩行は、小物の持ち運びを、上記の状況において、2足歩行に比べて安定に行うことができる。よじ登りは歩行では移動できない場合に用いられる。手足の把持により体を支え、3点支持により移動する。高い台や机の上へ(あるいはその逆)が一例である。
【0036】
ところで、図3(a)に示すように、右足部215の足裏面には、歩行制御のため、右足部215が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサ241が設置されている。同様に、左足部218の足裏面には、左足部218が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサ242が設置されている。
【0037】
更に、本第1実施形態では、手部209,212を用いてナックル歩行を安定して行うために、図2に示すように、各指背面125a,126a,125b,126bに各手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bが設置されている。手部圧覚センサ107a,112aは、右手部209が歩行面に接地したか否かを検出するためのものであり、手部圧覚センサ107b,112bは、左手部212が歩行面に接地したか否かを検出するためのものである。
【0038】
これら圧覚センサ107a,112a,107b,112b,241,242は、ロボット本体100Aの重心を求めるのに用いられる。本第1実施形態では、ロボット本体100Aの重心を求めるのに必要な手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bを各手部209,212の指部の指背面125a,126a,125b,126bに設置している。したがって、手部209,212による把持動作では、手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bが把持対象物に接触するのを回避できるので、手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bによる誤検出を回避することができる。
【0039】
圧覚センサ107a,112a,107b,112b,241,242としては、感圧導電性ゴムの表面に電極を設け抵抗変化を検出するもの、ピエゾ抵抗を用いたもの、圧電体を用いたもの、静電容量検出型のものを用いることができる。
【0040】
この構成により、人差指101a,101bと中指102a,102bの関節角度を制御し、指背面の圧覚センサ107a,112a,107b,112bを接地させ、その信号をもとに安定してナックル歩行を行うことができる。
【0041】
また、把持動作においては、掌104a,104b、人差指101a,101b、中指102a,102b、拇指103a,103bを用いて様々な把持を行うことができる。指関節の関節角度を調整することで把持対象との接触点を多くできるため、安定な把持が可能である。
【0042】
なお、指の本数、関節数、自由度数は一例であり、これに限られるものではない。本数、関節数、自由度数が多くなれば、把持形態が増え、さらに操り等も可能になる。また、把持動作においては、既存の多指ハンドと同様に指、掌の把持面に圧覚センサを備えることで、把持制御の制御性を向上させることができる。
【0043】
次に、脚式ロボット100の全体の制御システムの概略について図4を用いて説明する。図4に示すように、制御部としての制御システム300は、コントローラユニット301、右上肢ユニット302、左上肢ユニット303、右下肢ユニット304、左下肢ユニット305、頭ユニット306、体幹ユニット307で構成される。各ユニットはそれぞれコントローラを備え、内部にあるアクチュエータの駆動制御、センサの駆動・検出制御、信号処理を行う。
【0044】
コントローラユニット301は各ユニットと制御信号を介して制御を行い、脚式ロボット全体の制御を行う。コントローラユニット301は内部の運動に係るプログラムと各ユニットからの制御信号に基づき各ユニットを制御し、ロボットを運動させる。運動に係るプログラムは予めコントローラユニット301に記憶されている他、外部からの通信により入力される。制御信号のインターフェース、通信プロトコルとしては、USB(Universal Serial Bus)、CAN(Controller Area Network)等を用いることができる。
【0045】
なお、この例ではコントローラユニット301に接続される各ユニットがコントローラを内蔵したが、各ユニットがコントローラを内蔵せず、コントローラユニット301から直接、各ユニットのアクチュエータの駆動、センサ信号の検出を行う構成も可能である。
【0046】
図5を用いて上肢ユニット302,303の指背面接地制御に係る制御システムの概要を説明する。上肢ユニット302は、上肢コントローラ401aを備え、上肢コントローラ401aに、手部圧覚センサ107a,112a、人差指アクチュエータ404a、中指アクチュエータ405a、手首アクチュエータ406aが接続されて構成される。同様に、上肢ユニット303は、上肢コントローラ401bを備え、上肢コントローラ401bに、手部圧覚センサ107b,112b、人差指アクチュエータ404b、中指アクチュエータ405b、手首アクチュエータ406bが接続されて構成される。
【0047】
手部圧覚センサ107a,112a(107b,112b)からは検出結果であるセンサ信号が上肢コントローラ401a(401b)に出力される。上肢コントローラ401a(401b)からは駆動信号が、人差指アクチュエータ404a(401b)、中指アクチュエータ405a(405b)、手首アクチュエータ406a(406b)に出力される。
【0048】
ナックル歩行時には、上肢コントローラ401a(401b)は手部圧覚センサ107a,112a(107b,112b)の信号をもとに指アクチュエータ、手首アクチュエータを駆動する。尚、上肢ユニット302,303にはこれ以外のセンサ、アクチュエータがあるが、指背面接地制御には直接関係しないため、ここでは省略した。
【0049】
次に、図6を用いて脚式ロボット100の静歩行の安定性について説明する。図6は脚式ロボット100を上方から見た模式図であり、4肢部201,202,203,204の接地状態(4肢部での支持状態)を模式的に示している。図6(a)はナックル歩行での4脚支持状態である。図6(b)はナックル歩行あるいは物を運ぶ3足歩行での3脚支持状態である。図6(c)は物を運ぶ3足歩行での2脚支持状態あるいは2足歩行での2脚支持状態である。図6(d)は2足歩行での1脚支持状態である。
【0050】
接地部(支持部)となるのは、右指背面601(指背面125a,126a)、左指背面602(指背面125b,126b)、右足裏面603、左足裏面604であり、斜線で示されている。指背面601,602の接地面積は足裏面603,604の接地面積よりも小さい。支持多角形605は接地部(支持部)の外周を結ぶものであり、破線で示されている。なお、見やすくするため、接地部(支持部)と重なる部分は若干外にずらして図示している。重心投影点606は、ロボット本体100Aの重心の歩行面への投影点である。制御システム300は、重心投影点606が静歩行時に支持多角形605内に位置するように、各圧覚センサ107a,112a,107b,112b,241,242の検出結果によりロボット本体100Aの姿勢を制御する。
【0051】
図6からわかるように、支持脚が少なくなる程、支持多角形605は小さくなり、ロボット本体100Aの重心を支持多角形605上に維持したままの歩行制御は難しくなる。したがって、図6(b)に示すナックル歩行は支持多角形605が図6(c)に示す2足歩行時の支持多角形605よりも大きくなるため、歩行安定性の点で優れている。
【0052】
また、床面等の歩行面の状況(凸凹、傾斜等)によっては、重心投影点606をロボット本体100Aの姿勢から単純に求めることが難しくなる。その場合、全ての支持脚の接地圧力を圧覚センサ107a,112a,107b,112b,241,242で検出することにより、ナックル歩行での重心投影点606を容易に求めることができ、様々な状態な床面等の歩行面でも安定に移動することができる。
【0053】
次に、図7を用いて制御システム300による4足歩行(ナックル歩行)で歩行制御について説明する。ここでは、下肢足裏の足部圧覚センサ241,242と、上肢の指背面の手部圧覚センサ107a,112a,107b,112bからの信号を歩行制御に用いる。
【0054】
圧覚センサのセンサ信号が所定の閾値を上回ったことにより接地、そして支持脚となったことを検出する。また、圧覚センサのセンサ信号が閾値を下回ったことにより遊脚になったことを検出する。圧覚センサの信号が大きくなるよう姿勢を制御することで、重心投影点606をその脚に近づける。圧覚センサの信号が小さくなるように姿勢を制御することで、重心投影点606をその脚から遠ざける。4足の静歩行では支持脚は3あるいは4なので、支持多角形605は三角形あるいは四角形に近い形になる。
【0055】
右上肢部201が遊脚、他の肢部202,203,204が支持脚になっている状態を説明での制御サイクルの始めとする。以下、ロボット本体100Aが前進する場合、次の処理が順次行われる。
【0056】
まず、右上肢部201を進行方向前方に移動し接地する(S1)。次に、重心投影点606を左下肢部204から離れるように移動し、左下肢部204を遊脚にする(S2)。次に、左下肢部204を左上肢部202よりに移動し接地する(S3)。次に、重心投影点606を左上肢部202から離れるように移動し、左上肢部202を遊脚にする(S4)。次に、左上肢部202を進行方向に移動し接地する(S5)。次に、重心投影点606を右下肢部203から離れるように移動し、右下肢部203を遊脚にする(S6)。次に右下肢部203を右上肢部201よりに移動し接地する(S7)。次に、重心投影点606を右上肢部201から離れるように移動し、右上肢部201を遊脚にする(S8)。以降、初めに戻り、移動が完了するまで繰り返す。
【0057】
各上肢部の各手部の圧覚センサ107a,112a,107b,112bの検出結果であるセンサ信号を用いることで、各肢部201,202,203,204の接地制御、重心投影点606の移動制御を行うことができ、安定して歩行することができる。
【0058】
図8を用いて制御システム300による3足歩行(物を持って3足歩行)での歩行制御について説明する。圧覚センサの信号の扱いについては図7の説明と同様なので省略する。3足歩行の静歩行では支持脚は2あるいは3なので、支持多角形605は、幅をもった直線あるいは三角形に近い形になる。直線に近い支持多角形605では重心投影点606が支持多角形605の外に出やすくなるため、支持脚が2つになる期間はできるだけ短くする。
【0059】
右上肢部201で物を持ち、他の肢部202,203,204が支持脚になっている状態を、説明での制御サイクルの始めとする。以下の処理が順じ行われる。まず、重心投影点606を左下肢部204から離れるように移動し、左下肢部204を遊脚にする(S11)。次に、左下肢部204を進行方向に移動し接地する(S12)。重心投影点606を右下肢部203から離れるように移動し、右下肢部203を遊脚にする(S13)。右下肢部203を進行方向に移動し、接地する(S14)。重心投影点606を左上肢部202から離れるように移動し、左上肢部202を遊脚にする(S15)。左上肢部202を進行方向に移動し接地する(S16)。以降、初めに戻り、移動が完了するまで繰り返す。
【0060】
左上肢部202を用いて支持多角形605が大きくなる期間を設けることで、物を持った移動を2足歩行比べて安定に行うことができる。なお、右上肢部201で物を持った例を示したが、左上肢部202で物を持った場合は、上記の説明で左上肢部202を右上肢部201に置き換えればよいので、説明は省略する。
【0061】
なお、右手部209の人差指101a及び中指102aのうちのいずれか1つの指部にのみ手部圧覚センサを設ける場合であってもよいが、本第1実施形態では、人差指101a及び中指102aのそれぞれに手部圧覚センサを設けている。また、左手部212の人差指101b及び中指102bのうちのいずれか1つの指部にのみ手部圧覚センサを設ける場合であってもよいが、本第1実施形態では、人差指101b及び中指102bのそれぞれに手部圧覚センサを設けている。
【0062】
従って、本第1実施形態では、図2に示した3指ハンドである手部209(212)において、人差指101a(101b)と中指102a(102b)を共に接地させるために指関節角度を制御する。
【0063】
以下、図9を参照して、手部の接地制御を行ったときの接地状態について説明する。図9(a)は手部の接地制御前の状態、図9(b)は手部の接地制御後の状態を示している。なお、図9には、右手部209を示しているが、左手部212についても同様に動作する。
【0064】
ナックル歩行では3指101a,102a,103aを図9(a)のような姿勢にする。人差指101aの第2指関節111aと中指102aの第2指関節116aは伸びている。人差指101aの第1指関節109aと中指102aの第1指関節114aは約90度に手部209の内側に曲がっている。この状態で人差指101aの指背面125aと中指102aの指背面126aを床面等の歩行面901側に向ける。掌は進行方向と逆を向いている(手の甲は進行方向を向いている)。こうすることで、2本の指101a,102aの歩行面901への平均的な距離が等しくなるため、接地制御が容易になる。図9では人差指101aが先に接地している例である。人差指101a、中指102aの関節角度は、上記角度から極端に離れていなければ、動作させることは可能である。
【0065】
図10を用いて接地制御のフローを説明する。指背面の接地状態の検出は上述の移動制御と同様である。上肢部が接地されその後、遊脚となるまでの間、以下の制御が行われる。まず、制御システム300のコントローラユニット301は、各手部圧覚センサ107a,112aの検出結果により、人差指101a及び中指102aのうちのいずれかの指部が接地したか否かを判断する(S21)。次に、コントローラユニット301は、接地した指部が人差指101aか中指102aかを判別する(S22)。つまり、コントローラユニット301は、手部圧覚センサ107a,112aのうちいずれかの手部圧覚センサにより歩行面に接地したことが検出されたかを判別する。
【0066】
コントローラユニット301は、人差指101aが先に接地した指部であると判別した場合、手部209の他の指部である中指102aの手部圧覚センサ112aが歩行面に接地するように先に接地した人差指101aの関節角度を調整する(S23)。
【0067】
続いて、コントローラユニット301は、中指102aが接地したか否かを判断する(S24)。コントローラユニット301は、中指102aが接地していない場合は、ステップS23の処理に戻る。コントローラユニット301は、中指102aが接地した場合は、人差指101aの関節角度を固定する(S25)。
【0068】
つまり、図9(a)に示すように、人差指101aだけが歩行面901に接地している場合には、人差指101aの関節角度を調整し、図9(b)に示すように、中指102aを歩行面901に接地させる。
【0069】
またステップS22でコントローラユニット301は、中指102aが先に接地した指部であると判別した場合、他の指部である人差指101aの手部圧覚センサ107aが歩行面に接地するように先に接地した中指102aの関節角度を調整する(S26)。
【0070】
続いて、コントローラユニット301は、人差指101aが接地したか否かを判断する(S27)。コントローラユニット301は、人差指101aが接地していない場合は、ステップS26の処理に戻る。コントローラユニット301は、人差指101aが接地した場合は、中指102aの関節角度を固定する(S28)。ステップS25,S28に続いて、コントローラユニット301は、人差指101aと中指102aが接地していないか、つまり床面等の歩行面から離れたか否かを判断する(S29)。このステップS29の処理は、人差指101aと中指102aが歩行面から離れるまで繰り返される。コントローラユニット301は、接地しなくなった場合は、指部101a,102aの関節角度を接地制御前の角度に戻す(S30)。
【0071】
以上の接地制御を行うことにより、2本の指部101a,102aを確実に接地させ、2本の指部101a,102aで上肢部201に掛かった荷重をほぼ均等に支えることができるため、指部101a,102aへの負担が減少し、損傷等を防ぐことができる。また、個々の指部101a,102aを細くできるため、指を用いた把持、操作の機能を向上することができる。
【0072】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る脚式ロボットについて説明する。ロボット本体の構成は、上記第1実施形態と同様であるので、同一符号を用いて説明する。本第2実施形態では、制御部である制御システムの制御動作が異なるものである。
【0073】
図11は、本第2実施形態に係る脚式ロボットの手部の接地制御を行ったときの接地状態を示す図である。図11(a)は手部の接地制御前の状態、図11(b)は手部の接地制御後の状態を示している。なお、図11には、右手部209を示しているが、左手部212についても同様に動作する。
【0074】
本第2実施形態では、手部209の人差指101aと中指102aを共に接地させるために手首105a(腕部231に対する手部209)の角度を制御する。手首105aの角度を変更することにより、人差指101aの指背面125aと中指102aの指背面126aを共に接地させている。
【0075】
図12を用いて接地制御のフローを説明する。指背面の接地状態の検出は上述の移動制御と同様である。上肢が接地されその後、遊脚となるまでの間、以下の制御が行われる。まず、制御システム300のコントローラユニット301は、各手部圧覚センサ107a,112aの検出結果により、人差指101a及び中指102aのうちのいずれかの指部が接地したか否かを判断する(S31)。次に、コントローラユニット301は、接地した指部が人差指101aか中指102aかを判別する(S32)。つまり、コントローラユニット301は、手部圧覚センサ107a,112aのうちいずれかの手部圧覚センサにより歩行面に接地したことが検出されたかを判別する。
【0076】
コントローラユニット301は、人差指101aが先に接地した指部であると判別した場合、手部209の他の指部である中指102aの手部圧覚センサ112aが歩行面に接地するように手首105a(腕部231に対する手部209)の角度を調整する。具体的には、手首105aを人差指101aが腕部231に近づく方向に回転させる(S33)。
【0077】
続いて、コントローラユニット301は、中指102aが接地したか否かを判断する(S34)。コントローラユニット301は、中指102aが接地していない場合は、ステップS33の処理に戻る。コントローラユニット301は、中指102aが接地した場合は、手首105aの角度を固定する(S35)。
【0078】
つまり、図11(a)に示すように、人差指101aだけが歩行面901に接地している場合には、手首105aの角度を調整し、図11(b)に示すように、中指102aを歩行面901に接地させる。
【0079】
またステップS32でコントローラユニット301は、中指102aが先に接地した指部であると判別した場合、他の指部である人差指101aの手部圧覚センサ107aが歩行面に接地するように手首105a(腕部231に対する手部209)の角度を調整する。具体的には、手首105aを中指102aが腕部231に近づく方向に回転させる(S36)。
【0080】
続いて、コントローラユニット301は、人差指101aが接地したか否かを判断する(S37)。コントローラユニット301は、人差指101aが接地していない場合は、ステップS36の処理に戻る。コントローラユニット301は、人差指101aが接地した場合は、中指102aの関節角度を固定する(S35)。
【0081】
ステップS35に続いて、コントローラユニット301は、人差指101aと中指102aが接地していないか、つまり床面等の歩行面から離れたか否かを判断する(S38)。このステップS38の処理は、人差指101aと中指102aが歩行面から離れるまで繰り返される。コントローラユニット301は、接地しなくなった場合は、手首105aの角度を接地制御前の角度に戻す(S39)。
【0082】
以上の接地制御を行うことにより、2本の指部101a,102aを確実に接地させ、2本の指部101a,102aで上肢部201に掛かった荷重をほぼ均等に支えることができるため、指部101a,102aへの負担が減少し、損傷等を防ぐことができる。また、個々の指部101a,102aを細くできるため、指を用いた把持、操作の機能を向上することができる。
【0083】
なお、上記第1、第2実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記実施形態では、3指ハンドで2指を接地する場合について説明したが、他の形態のハンドに適用することも可能である。例えば、4指ハンドで3指を接地してもよい。また、接地させる指部が1本の場合でもよく、この場合は、図10及び図12に示した制御処理は行われない。
【0084】
また、上記実施形態では、接地制御において、指部の関節角度を制御するか、手首の角度を制御する場合について説明したが、指関節と手首関節の両方を組合せての指背面の接地制御を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0085】
100…脚式ロボット、100A…ロボット本体、101a,101b…人差指(指部)、102a,102b…中指(指部)、106a,106b…手部本体、107a,112a…手部圧覚センサ、107b,112b…手部圧覚センサ、121a,121b,123a,123b…把持面、125a,125b,126a,126b…指背面、201,202…上肢部、203,204…下肢部、205…体幹部、209,212…手部、215,218…足部、241,242…足部圧覚センサ、300…制御システム(制御部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体幹部と、前記体幹部に連結された2つの下肢部と、前記体幹部に連結された2つの上肢部と、を有するロボット本体を備え、前記各下肢部は、歩行の際に歩行面に接する足部を有し、前記各上肢部は、腕部と、前記腕部に連結され、把持対象物を把持可能な手部とを有し、前記2つの下肢部を用いて2足歩行が可能であり、前記2つの下肢部及び前記2つの上肢部を用いて4足歩行が可能な脚式ロボットにおいて、
前記各手部が歩行面に接地したか否かを検出する手部圧覚センサと、
前記各足部が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサと、
前記手部圧覚センサ及び前記足部圧覚センサの検出結果により前記ロボット本体の重心を求めて前記ロボット本体の姿勢を制御する制御部と、を備え、
前記各手部は、4足歩行時に指関節を屈曲させて把持面とは反対側の指背面を歩行面に接地させる指部を有し、
前記手部圧覚センサは、前記各手部の指部の指背面に設置されていることを特徴とする脚式ロボット。
【請求項2】
体幹部と、前記体幹部に連結された2つの下肢部と、前記体幹部に連結された2つの上肢部と、を有するロボット本体を備え、前記各下肢部は、歩行の際に歩行面に接する足部を有し、前記各上肢部は、腕部と、前記腕部に連結され、把持対象物を把持可能な手部とを有し、前記2つの下肢部を用いて2足歩行が可能であり、前記2つの下肢部及び前記2つの上肢部を用いて4足歩行が可能な脚式ロボットにおいて、
前記各手部が歩行面に接地したか否かを検出する手部圧覚センサと、
前記各足部が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサと、
前記手部圧覚センサ及び前記足部圧覚センサの検出結果により前記ロボット本体の重心を求めて前記ロボット本体の姿勢を制御する制御部と、を備え、
前記各手部は、4足歩行時に指関節を屈曲させて把持面とは反対側の指背面を歩行面に接地させる指部を複数有し、
前記手部圧覚センサは、前記各手部の各指部の指背面に設置されていることを特徴とする脚式ロボット。
【請求項3】
前記制御部は、前記手部の各指部の指背面に設置された手部圧覚センサのうちいずれかの手部圧覚センサにより歩行面に接地したことが検出された場合、前記手部の他の指部の指背面に設置された手部圧覚センサが歩行面に接地するように前記手部の先に接地した指部の関節角度を調整することを特徴とする請求項2に記載の脚式ロボット。
【請求項4】
前記制御部は、前記手部の各指部の指背面に設置された手部圧覚センサのうちいずれかの手部圧覚センサにより歩行面に接地したことが検出された場合、前記手部の他の指部の指背面に設置された手部圧覚センサが歩行面に接地するように前記腕部に対する前記手部の角度を調整することを特徴とする請求項2に記載の脚式ロボット。
【請求項5】
前記手部は、4足歩行時に掌が後方に向けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の脚式ロボット。
【請求項1】
体幹部と、前記体幹部に連結された2つの下肢部と、前記体幹部に連結された2つの上肢部と、を有するロボット本体を備え、前記各下肢部は、歩行の際に歩行面に接する足部を有し、前記各上肢部は、腕部と、前記腕部に連結され、把持対象物を把持可能な手部とを有し、前記2つの下肢部を用いて2足歩行が可能であり、前記2つの下肢部及び前記2つの上肢部を用いて4足歩行が可能な脚式ロボットにおいて、
前記各手部が歩行面に接地したか否かを検出する手部圧覚センサと、
前記各足部が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサと、
前記手部圧覚センサ及び前記足部圧覚センサの検出結果により前記ロボット本体の重心を求めて前記ロボット本体の姿勢を制御する制御部と、を備え、
前記各手部は、4足歩行時に指関節を屈曲させて把持面とは反対側の指背面を歩行面に接地させる指部を有し、
前記手部圧覚センサは、前記各手部の指部の指背面に設置されていることを特徴とする脚式ロボット。
【請求項2】
体幹部と、前記体幹部に連結された2つの下肢部と、前記体幹部に連結された2つの上肢部と、を有するロボット本体を備え、前記各下肢部は、歩行の際に歩行面に接する足部を有し、前記各上肢部は、腕部と、前記腕部に連結され、把持対象物を把持可能な手部とを有し、前記2つの下肢部を用いて2足歩行が可能であり、前記2つの下肢部及び前記2つの上肢部を用いて4足歩行が可能な脚式ロボットにおいて、
前記各手部が歩行面に接地したか否かを検出する手部圧覚センサと、
前記各足部が歩行面に接地したか否かを検出する足部圧覚センサと、
前記手部圧覚センサ及び前記足部圧覚センサの検出結果により前記ロボット本体の重心を求めて前記ロボット本体の姿勢を制御する制御部と、を備え、
前記各手部は、4足歩行時に指関節を屈曲させて把持面とは反対側の指背面を歩行面に接地させる指部を複数有し、
前記手部圧覚センサは、前記各手部の各指部の指背面に設置されていることを特徴とする脚式ロボット。
【請求項3】
前記制御部は、前記手部の各指部の指背面に設置された手部圧覚センサのうちいずれかの手部圧覚センサにより歩行面に接地したことが検出された場合、前記手部の他の指部の指背面に設置された手部圧覚センサが歩行面に接地するように前記手部の先に接地した指部の関節角度を調整することを特徴とする請求項2に記載の脚式ロボット。
【請求項4】
前記制御部は、前記手部の各指部の指背面に設置された手部圧覚センサのうちいずれかの手部圧覚センサにより歩行面に接地したことが検出された場合、前記手部の他の指部の指背面に設置された手部圧覚センサが歩行面に接地するように前記腕部に対する前記手部の角度を調整することを特徴とする請求項2に記載の脚式ロボット。
【請求項5】
前記手部は、4足歩行時に掌が後方に向けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の脚式ロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−91300(P2012−91300A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242170(P2010−242170)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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