脱硫特性に優れた炭素繊維複合体およびその製造方法
【課題】完全脱硫時間が長くかつ定常脱硫率が高い、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】この発明の炭素繊維複合体1は、触媒6を微細析出させた多数のミクロポア4をもつ活性炭素繊維2の表面の表層を除去して、新たに形成した微小凹凸表面5に炭素ナノ繊維3を成長させてなることを特徴とする。また、この発明の炭素繊維複合体1の製造方法は、活性炭素繊維2のミクロポア4内に触媒6を微細析出させた後、活性炭素繊維2を酸素含有ガス中にて150〜450℃で加熱し、その後、炭素含有還元ガス雰囲気中にて350〜850℃で加熱後、所定時間保持し、次いで、還元ガス雰囲気中にて、950〜1150℃の高温で熱処理することを特徴とする。
【解決手段】この発明の炭素繊維複合体1は、触媒6を微細析出させた多数のミクロポア4をもつ活性炭素繊維2の表面の表層を除去して、新たに形成した微小凹凸表面5に炭素ナノ繊維3を成長させてなることを特徴とする。また、この発明の炭素繊維複合体1の製造方法は、活性炭素繊維2のミクロポア4内に触媒6を微細析出させた後、活性炭素繊維2を酸素含有ガス中にて150〜450℃で加熱し、その後、炭素含有還元ガス雰囲気中にて350〜850℃で加熱後、所定時間保持し、次いで、還元ガス雰囲気中にて、950〜1150℃の高温で熱処理することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭素繊維は、図13に示すように、表面上に、大気あるいは排煙中のSO2を含むSOxガスを凝集(吸着)させるとともに水蒸気と反応させて硫酸の形に変化させた後、この硫酸を溶出させるプロセスは既に知られている。
【0003】
また、活性炭素繊維のうち、特にピッチ系の活性炭素繊維は、アルゴン等の還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理することによって、活性炭素繊維の表面の疎水性が高められることによって、活性炭素繊維の表面上に生成した硫酸の分離・溶出が容易になる結果、脱硫特性が向上することも知られている。
【0004】
ここでいう「脱硫特性」とは、具体的には、大気中に存在するSOxの全てを炭素表面で捕捉することができる、いわゆる完全脱硫の時間が長いこと、および、時間の経過と共に、大気中に存在するSOxの全てを捕捉できなくなって脱硫率が減少していき脱硫率が定常状態になるときの、いわゆる定常脱硫率が高いことを意味する。
【0005】
上記したように、ピッチ系の活性炭素繊維を還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理することによって、ある程度の脱硫特性の向上効果は得られるものの、十分な脱硫特性であるとは言えず、改良の余地があった。
【0006】
一方、ナノ(10億分の1メートル)サイズの炭素ナノ繊維(カーボンナノファイバーともいう。)は、炭素ヘキサゴナル(六角)網面が繊維軸方向に対し一定角度の積層配列で構成され、高表面積をもち、しかも、それ自体表面活性がなく疎水性が高いため、上述したように、表面に吸着したSOxが反応して生成した硫酸を分離・溶出が容易であり、これは、脱硫特性を高める点で好ましい。
【0007】
しかしながら、炭素ナノ繊維は、通常、粉末状の形態を有するので、ハンドリング上の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維を活性炭素繊維の表面に適正に生成させることにより、完全脱硫時間が長くかつ定常脱硫率が高い、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)金属、合金またはこれらの化合物からなる触媒を微細析出させた多数のミクロポアをもつ活性炭素繊維表面の表層を除去して、新たに形成した微小凹凸表面に炭素ナノ繊維を成長させてなることを特徴とする、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体。
【0010】
(2)前記炭素ナノ繊維が、炭素六角網面の積層体からなる炭素ナノ繊維素を、前記炭素六角網面の少なくとも一端が炭素ナノ繊維の側周面を形成するように、繊維軸方向に沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群を、さらに、繊維軸方向に沿って複数積層して形成してなる上記(1)記載の炭素繊維複合体。
【0011】
(3)炭素ナノ繊維は、繊径が20〜150nm、表面積が100〜200m2/gである上記(1)または(2)記載の炭素繊維複合体。
【0012】
(4)活性炭素繊維はピッチ系活性炭素繊維である上記(1)、(2)又は(3)記載の炭素繊維複合体。
【0013】
(5)炭素繊維複合体を構成する活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の表面積の割合が0.5〜30%の範囲である上記(1)〜(4)のいずれか1項記載の炭素繊維複合体。
【0014】
(6)表面に多数のミクロポアをもつ活性炭素繊維を、金属塩含有溶液中に浸漬して、ミクロポア内に金属、合金または金属化合物からなる触媒を微細析出させる触媒析出工程と、触媒を微細析出させた活性炭素繊維を酸素含有ガス中にて150〜450℃で加熱して、前記活性炭素繊維のミクロポアを含む表面の層を酸化除去して微小凹凸表面にする第1表面改質工程と、表面を酸化除去した活性炭素繊維を、炭素含有還元ガス雰囲気中にて350〜850℃で加熱後、所定時間保持して、前記活性炭素繊維の微小凹凸表面上の触媒を核として炭素ナノ繊維を成長させる炭素ナノ繊維生成工程と、炭素ナノ繊維を成長形成させた活性炭素繊維を、還元ガス雰囲気中にて、950〜1150℃の高温で熱処理する第2表面改質工程とを有することを特徴とする、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体の製造方法。
【0015】
(7)前記金属塩含有溶液がFe−Ni硝酸溶液であり、前記触媒がFe−Ni合金触媒である上記(6)記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【0016】
(8)前記酸素含有ガスが空気である上記(6)又は(7)記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【0017】
(9)前記炭素含有還元ガスが、エチレンガスと水素ガスの混合ガスである上記(6)、(7)又は(8)記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【0018】
(9)前記炭素ナノ繊維生成工程での所定保持時間は、1〜360分間である上記(6)〜(9)のいずれか1項記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維を活性炭素繊維の表面に適正に生成させることにより、完全脱硫時間が長くかつ定常脱硫率が高い、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体の提供が可能になった。
また、炭素繊維複合体は、炭素ナノ繊維生成前の活性炭素繊維とほぼ同一形状を有するため、設計変更することなく、活性炭素繊維が使用されるあらゆる用途に適用することができる。
さらに、本発明では、炭素ナノ繊維は、活性炭素繊維の表面上に一体的に生成されるので、取り扱い(ハンドリンク性)にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に従う炭素繊維複合体の実施形態の図面を参照しながら以下に説明する。
図1(a)は、本発明に従う炭素繊維複合体1の形状を模式的に示したものであり、図1(b)は、図1(a)の円で囲んだ表面部分の断面拡大図である。
図1(a)、(b)に示す炭素繊維複合体1は、活性炭素繊維2と炭素ナノ繊維3とで主に構成されており、活性炭素繊維2は、その表面に、0.4〜2.0nmのサイズのスリット型(窒素BET法測定、BJH式で計算)をもつ多数のミクロポア4を含む表面の層を酸化除去することによって得られた微小凹凸表面5を有する。
【0021】
そして、本発明に従う炭素繊維複合体1の主な特徴は、活性炭素繊維(ACF)2の表面に、その表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維(CNF)を適正に成長させることにあり、より具体的には、金属、合金またはこれらの化合物からなる触媒6を微細析出させた微細金属化合物粒子を用いて多数のミクロポア4をもつ活性炭素繊維表面の表層をガス化除去して、新たに形成した微小凹凸表面5にさらにガス化に用いた金属化合物微粒子を今度は還元して炭素ナノ繊維の生成触媒に用いることによって、炭素ナノ繊維3を成長させることにあり、この構成を採用することにより、完全脱硫時間が長くかつ定常脱硫率が、図8に示したように、活性炭素繊維(OG15A)のままのもの(従来例1)、図2の条件(A)で製造したもの(従来例2)、1100℃の熱処理を施さないこと以外は本発明例と同様に製造したもの(比較例1)に比べて5%以上高い、優れた脱硫特性を得ることができる。
【0022】
以下、この発明を完成させるに至って経緯を作用とともに説明する。
まず、従来の知見として、活性炭素繊維は、アルゴン等の還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理すること(図2の条件(A))によって、表面における疎水性が高められることが知られている。しかしながら、かかる条件(A)を適用した活性炭素繊維(従来例2)は、図8で示したように、脱硫条件によるが定常脱硫率が60〜80%と低く、まだ十分な脱硫まで至っていないので、さらに脱硫率の向上が要求される。
【0023】
そこで、発明者らは、高表面積をもち、しかも、それ自体活性がなく疎水性に優れる炭素ナノ繊維を活性炭素の表面に生成させれば、図13に示した脱硫反応において律速となっている硫酸の活性炭素繊維の表面からの除去速度を速め、全体脱硫反応速度を高めることができると考え、検討を行った。
【0024】
活性炭素繊維の表面に炭素ナノ繊維を成長させるには、その表面に、金属、合金またはこれらの化合物からなる触媒を微細析出させ、適切な成長条件を与えることが必要である。また、こうした活性炭素繊維の表面に前記触媒を微細析出させる段階で活性炭素繊維による脱硫反応の活性点である活性炭素繊維のミクロ気孔の量と気孔サイズの減少させない工夫が要求される。一般的に、金属化合物の溶液を活性炭または活性炭素繊維の表面に、イオン交換法または沈澱法を用いて微粒子として析出させる場合、表1に示すように本来の活性炭また活性炭素繊維の表面積は表面に析出された金属化合物微粒子によって気孔が閉塞され、表面積が急激に減少する。この場合、脱硫の主な反応サイトであるミクロ気孔の利用率が急激に減少し、脱硫活性は減少する。
【0025】
このため、本発明者らはまず、活性炭素繊維の表面に有するミクロポア4(図3(a))内に、触媒6を分散析出させた後(図3(b))、これら触媒6を核として炭素ナノ繊維3を成長させてから(図3(c))、アルゴン等の還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理して(図2の条件(B))、炭素繊維複合体を製造してみた。
【0026】
しかしながら、条件(B)で製造した炭素繊維複合体100は、ミクロポア4が深いため、析出させた触媒6の大部分が、高温の還元雰囲気で活性炭素繊維2の内部に浸透する結果、炭素ナノ繊維3を活性炭素繊維2の表面に露出するように成長させるのには時間がかかり、この状態で、炭素ナノ繊維3を長時間させると、成長した炭素ナノ繊維3が活性炭素繊維2の表面を覆い隠すようになる結果、炭素繊維複合体100としての表面積が大幅に減少する結果、脱硫特性を十分に高めることはできないことが判明した。
【0027】
このため、本発明者がさらに検討を重ねた結果、活性炭素繊維2の表面(図4(a))に、触媒6を析出させた(図4(b))後、所定の酸化によるガス化処理を行って、活性炭素繊維2の表面の層を除去し(図4(c))、その後、炭素ナノ繊維3を活性炭素繊維2の表面に成長させてから、アルゴン等の還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理すれば(図2の条件(c))、炭素繊維複合体1としての表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維3を活性炭素繊維2の表面に有効に形成することができること(図4(d))を見出し、この発明を完成させるに至ったのである。
【0028】
一例として、(表面改質処理を行っていない)ピッチ系活性炭素繊維2の表面状態(図4(a))、触媒6を析出させたときの表面状態(図4(b))、活性炭素繊維2の表面の層を酸化除去して新たな微小凹凸表面を形成したときの表面状態(図4(c))、および、活性炭素繊維2の表面に炭素ナノ繊維3を適正に生成させたときの表面状態(図4(d))において、比表面積を測定したときの結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示す結果から、比表面積は、(表面改質処理を行っていない)ピッチ系活性炭素繊維と比較して、酸化ガス化による除去後の表面状態では、表面積が大幅に増加し、その後に炭素ナノ繊維を適正に生成させると表面積は減少する傾向を示すものの、(表面改質処理を行っていない)ピッチ系活性炭素繊維の比表面積と同じ程度にすることができることがわかる。
【0031】
成長させる炭素ナノ繊維3としては、図5に示すように、2〜12層の炭素六角網面7の積層体からなる炭素ナノ繊維素8を、前記炭素六角網面7の少なくとも一端が炭素ナノ繊維3の側周面3aを形成するように、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群9を、さらに、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成されていることが、大きな表面積を有する上で好ましい。
【0032】
また、炭素ナノ繊維3は、繊径が20〜150nm、表面積が100〜200m2/gであることが好ましい。繊径が20nm未満だと、炭素ナノ繊維により被覆される活性炭素繊維の表面から生成された硫酸が排除されにくくなるからであり、繊径が150nm超えだと、炭素ナノ繊維により被覆される活性炭素繊維の表面が十分に炭素ナノ繊維による疎水特性の増加を与えないからであり、また、表面積が100m2/g未満だと、炭素ナノ繊維の直径が比較的大きいので表面被覆による疎水性化の効率が低くなる傾向があるからあり、200m2/g超えだと、活性炭素繊維の表面から生成された硫酸が2次的に炭素ナノ繊維の表面に吸着され、素早い排除がし難くなるからである。
【0033】
活性炭素繊維2として、特にピッチ系活性炭素繊維を用いることが、脱硫特性の向上効果が顕著に得られる上で好ましい。
【0034】
炭素繊維複合体1を構成する活性炭素繊維2に対する炭素ナノ繊維3の表面積の割合が0.5〜30%の範囲であることが好ましい。前記割合が0.5%未満だと、炭素ナノ繊維複合被覆による活性炭素繊維の表面の疎水性増加効果が殆ど認められないだからであり、前記割合が30%超えだと、脱硫反応の主なサイトである活性炭素繊維のミクロ気孔の割合が減少し、炭素ナノ繊維の被覆による活性向上効果が認められないだからである。
【0035】
図6は、ピッチ系活性炭素繊維を用い、0〜100%の範囲で比表面積を変化させて種々の炭素繊維複合体を製造し、活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の面積割合(重量比)と炭素繊維複合体の比表面積(m2/g)との関係を示した図である。なお、図6で製造した炭素繊維複合体は、図2に示す条件Cで製造した。ここで、「比表面積」とは、液体窒素温度でのBET吸着等温式から得られる単分子層吸着量を用いる表面積であって、本発明では、吸着質として窒素を用いた場合の表面積(m2/g)とする。
【0036】
図6に示す結果から、活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の表面積の割合が大きくなるにつれて、炭素繊維複合体の比表面積が減少する傾向があり、特に、CNFの重量割合が50%を超えると、比表面積が急激に減少するのがわかる。
【0037】
また、この発明では、触媒としては、Fe、Ni及びFe-Ni合金の化合物(例えば窒化物)等を用いることができるが、特に、ACF表面に析出された金属微粒子がACFのガス化触媒と同時にCNFの生成・成長触媒である等の点から、酸化と還元が比較的起こりやすい鉄(Fe)−ニッケル(Ni)合金窒化物を用いることが好ましい。なお、触媒として鉄(Fe)−ニッケル(Ni)合金触媒を用いる場合には、FeとNiの合金割合を、質量比で、Fe:Ni=80〜10:20〜90とすることがより好適である。
【0038】
次に、本発明に従う炭素繊維複合体の製造方法の一例について以下で説明する。
本発明の方法は、触媒析出工程と、第1表面改質工程と、炭素ナノ繊維生成工程と、第2表面改質工程とで主に構成されている。
【0039】
まず、コールタールピッチ系の活性炭素繊維(本実験では大阪ガス製造のOG15A(市販品))2を、金属塩含有溶液中、好適にはFe−Ni硝酸溶液中に浸漬して、図4(b)に示すように、ミクロポア4内に金属、合金または金属化合物からなる触媒6を微細析出させる(触媒析出工程)。
【0040】
次に、触媒6を微細析出させた活性炭素繊維2を酸素含有ガス中、好適には空気中にて150℃〜450℃で加熱して、前記活性炭素繊維2のミクロポア4を含む表面の層を酸化除去して、図4(c)に示すように、微小凹凸表面5にする(第1表面改質工程)。加熱温度は、150℃未満だとガス化による酸化効果が殆ど認められないだからであり、450℃超えだと、酸化が激しく活性炭素繊維が燃焼により無くなるだからである。なお、加熱温度での保持時間については特に限定はしないが、1分〜72時間程度行えば十分である。
【0041】
第1表面改質工程の後、表面の層を酸化除去した活性炭素繊維2を、炭素含有還元ガス雰囲気中にて350〜850℃で加熱後、所定時間保持して、図4(d)に示すように、前記活性炭素繊維2の微小凹凸表面5上の触媒6を核として炭素ナノ繊維3を成長させる(炭素ナノ繊維生成工程)。
【0042】
加熱温度は、350℃未満だと炭素ナノ繊維の生成と成長が遅く経済的でないだからであり、850℃超えだと、炭素ナノ繊維の生成と共に減量炭化水素の分解による非結晶質熱分解炭素の生成が激しくなり、ACFの表面がこれによって被覆される危険性があるだからである。また、上記所定保持時間は、1分〜360分間が好ましい。
【0043】
前記炭素含有還元ガスは、炭素を含有するガスであればよく、例えば、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、エチレン(C2H4)等の炭化水素ガスが挙げられるが、特に、エチレンガスと水素ガスの混合ガスを用いることが炭素ナノ繊維の成長を速めるの点で好ましい。なお、エチレンガスと水素ガスの混合ガスを用いる場合には、エチレンガスと水素ガスの混合比率を、体積百分率で99:1〜20:80の範囲にすることがより好適である。
【0044】
次に、炭素ナノ繊維3を成長形成させた活性炭素繊維2を、還元ガス雰囲気中にて、950〜1150℃の高温で熱処理すること(第2表面改質工程)によって、本発明の炭素繊維複合体1を製造することができる。
【0045】
尚、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0046】
次に、この発明の製造方法に従って炭素繊維複合体を製造し、脱硫特性を評価したので以下で説明する。
【0047】
まず、大阪ガス製の活性炭素繊維(商品名:OG15A)を、Fe−Ni硝酸溶液中に浸漬して、ミクロポア内に20質量%Fe−80質量%Ni合金触媒を微細析出させ、次いで、この活性炭素繊維を空気中にて350℃で2時間加熱して活性炭素繊維のミクロポアを含む表面の層を酸化除去した後、図7に示すように、この活性炭素繊維(500mg)を石英製のボート(長さ10mm、幅2.5mm、深さ1.5mm)に載せ、内径4.5cmの石英管の中で、触媒活性化のため、水素とヘリウムの混合ガス(水素分圧20%)を100sccm(cc/min)流しながら500℃で2時間還元し、次いで、50体積%C2H4−50体積%H2の炭素含有還元ガス雰囲気中にて600℃で加熱後、20分間保持し、その後、1100℃、0時間の熱処理を施して炭素繊維複合体(本発明例)を製造した。
【0048】
参考のため、活性炭素繊維(OG15A)のままのもの(従来例1)、図2の条件(A)で製造したもの(従来例2)、1100℃の熱処理を施さないこと以外は本発明例と同様に製造したもの(比較例1)、炭素含有還元ガス雰囲気中の保持時間を60分間とし1100℃の熱処理を施さないこと以外は本発明例と同様に製造したもの(比較例2)、そして、炭素含有還元ガス雰囲気中の保持時間を60分間とすること以外は本発明例と同様に製造したもの(比較例3)についても製造し、同様に脱硫特性の評価を行った。図8にそれらの評価結果を示す。
【0049】
なお、脱硫特性は、図9に示すように、反応炉内に活性炭素繊維または炭素繊維複合体の供試材を装入した後、SO2:1000体積ppm、O2:5体積%、H2O:10体積%、残部がN2である混合ガスを反応炉内に導入し、排出されるガス中のSO2量をGas Chromatography(Flame Photometric Detector)で測定し、この測定値から、C/CO比を算出することによって、脱硫特性を評価した。なお、C/CO比は、残量SOx濃度/初期SOx濃度を意味し、このC/CO比の値が小さいほど、脱硫特性が優れている。ちなみに、この場合の完全脱硫時間はC/CO比の値がゼロであるときの完全脱硫の継続時間であり、定常脱硫率は、破過が始まってから一定値になったとき、この一定値C/CO比の値を意味する。
【0050】
図8の結果から明らかなように、本発明例が最も脱硫特性に優れているのがわかる。
また、図10〜図12は、それぞれ従来例1の活性炭素繊維、比較例1および比較例2の炭素繊維複合体の表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき表面SEM写真を示したものである。なお、図10〜図12はいずれも、第2表面改質工程を行う前のものであるが、第2表面改質工程を行った後のもの、すなわち、それぞれ、従来例2、本発明例および比較例3の場合もほぼ同様な表面観察が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明によれば、表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維を活性炭素繊維の表面に適正に生成させることにより、完全脱硫時間が長くかつ定常脱硫率が高い、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体の提供が可能になった。
また、炭素繊維複合体は、炭素ナノ繊維生成前の活性炭素繊維とほぼ同一形状を有するため、設計変更することなく、活性炭素繊維が使用されるあらゆる用途に適用することができる。
さらに、本発明では、炭素ナノ繊維は、活性炭素繊維の表面上に一体的に生成されるので、取り扱い(ハンドリンク性)にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は、本発明に従う炭素繊維複合体1の形状を模式的に示したものであり、(b)は、(a)の円で囲んだ表面部分の断面拡大図である。
【図2】脱硫特性を高めるため3つの条件(A)〜(C)の工程を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2の条件(B)で製造したときの炭素繊維複合体の表面状態を各主要工程ごとに示した模式図である。
【図4】本発明に従う図2の条件(C)で製造したときの炭素繊維複合体の表面状態を各主要工程ごとに示した模式図である。
【図5】本発明の炭素繊維複合体に用いるのに好適な炭素ナノ繊維の構成を概念的に示す図である。
【図6】ピッチ系活性炭素繊維を用い、0〜100%の範囲で比表面積を変化させて種々の炭素繊維複合体を製造し、活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の面積割合(%)と炭素繊維複合体の比表面積(m2/g)との関係を示したグラフである。
【図7】本発明に従う炭素繊維複合体を製造するのに好適な装置の概略図である。
【図8】各供試材を用いて、脱硫特性を評価した時の結果を示すグラフである。
【図9】反応炉内に活性炭素繊維または炭素繊維複合体の供試材を装入した後、SO2を含有する混合ガスを反応炉内に導入し、排出されるガス中のSO2量をガス検出器で測定するのに好適な装置の概略図である。
【図10】従来例1の活性炭素繊維の表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき表面SEM写真である。
【図11】比較例1の活性炭素繊維の表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき表面SEM写真である。
【図12】比較例2の活性炭素繊維の表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき表面SEM写真である。
【図13】大気あるいは排煙中のSO2を含むSOxガスが活性炭素繊維表面上で凝集(吸着)・分離するプロセスを説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0053】
1 炭素繊維複合体
2 活性炭素繊維
3 炭素ナノ繊維
4 ミクロポア
5 微小凹凸表面
6 触媒
7 炭素ヘキサゴナル網面
8 炭素ナノ繊維素
9 炭素ナノ繊維素群
10 熱処理炉(水平炉)
11 石英管
12 石英ボート
13 活性炭素繊維
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭素繊維は、図13に示すように、表面上に、大気あるいは排煙中のSO2を含むSOxガスを凝集(吸着)させるとともに水蒸気と反応させて硫酸の形に変化させた後、この硫酸を溶出させるプロセスは既に知られている。
【0003】
また、活性炭素繊維のうち、特にピッチ系の活性炭素繊維は、アルゴン等の還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理することによって、活性炭素繊維の表面の疎水性が高められることによって、活性炭素繊維の表面上に生成した硫酸の分離・溶出が容易になる結果、脱硫特性が向上することも知られている。
【0004】
ここでいう「脱硫特性」とは、具体的には、大気中に存在するSOxの全てを炭素表面で捕捉することができる、いわゆる完全脱硫の時間が長いこと、および、時間の経過と共に、大気中に存在するSOxの全てを捕捉できなくなって脱硫率が減少していき脱硫率が定常状態になるときの、いわゆる定常脱硫率が高いことを意味する。
【0005】
上記したように、ピッチ系の活性炭素繊維を還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理することによって、ある程度の脱硫特性の向上効果は得られるものの、十分な脱硫特性であるとは言えず、改良の余地があった。
【0006】
一方、ナノ(10億分の1メートル)サイズの炭素ナノ繊維(カーボンナノファイバーともいう。)は、炭素ヘキサゴナル(六角)網面が繊維軸方向に対し一定角度の積層配列で構成され、高表面積をもち、しかも、それ自体表面活性がなく疎水性が高いため、上述したように、表面に吸着したSOxが反応して生成した硫酸を分離・溶出が容易であり、これは、脱硫特性を高める点で好ましい。
【0007】
しかしながら、炭素ナノ繊維は、通常、粉末状の形態を有するので、ハンドリング上の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維を活性炭素繊維の表面に適正に生成させることにより、完全脱硫時間が長くかつ定常脱硫率が高い、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)金属、合金またはこれらの化合物からなる触媒を微細析出させた多数のミクロポアをもつ活性炭素繊維表面の表層を除去して、新たに形成した微小凹凸表面に炭素ナノ繊維を成長させてなることを特徴とする、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体。
【0010】
(2)前記炭素ナノ繊維が、炭素六角網面の積層体からなる炭素ナノ繊維素を、前記炭素六角網面の少なくとも一端が炭素ナノ繊維の側周面を形成するように、繊維軸方向に沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群を、さらに、繊維軸方向に沿って複数積層して形成してなる上記(1)記載の炭素繊維複合体。
【0011】
(3)炭素ナノ繊維は、繊径が20〜150nm、表面積が100〜200m2/gである上記(1)または(2)記載の炭素繊維複合体。
【0012】
(4)活性炭素繊維はピッチ系活性炭素繊維である上記(1)、(2)又は(3)記載の炭素繊維複合体。
【0013】
(5)炭素繊維複合体を構成する活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の表面積の割合が0.5〜30%の範囲である上記(1)〜(4)のいずれか1項記載の炭素繊維複合体。
【0014】
(6)表面に多数のミクロポアをもつ活性炭素繊維を、金属塩含有溶液中に浸漬して、ミクロポア内に金属、合金または金属化合物からなる触媒を微細析出させる触媒析出工程と、触媒を微細析出させた活性炭素繊維を酸素含有ガス中にて150〜450℃で加熱して、前記活性炭素繊維のミクロポアを含む表面の層を酸化除去して微小凹凸表面にする第1表面改質工程と、表面を酸化除去した活性炭素繊維を、炭素含有還元ガス雰囲気中にて350〜850℃で加熱後、所定時間保持して、前記活性炭素繊維の微小凹凸表面上の触媒を核として炭素ナノ繊維を成長させる炭素ナノ繊維生成工程と、炭素ナノ繊維を成長形成させた活性炭素繊維を、還元ガス雰囲気中にて、950〜1150℃の高温で熱処理する第2表面改質工程とを有することを特徴とする、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体の製造方法。
【0015】
(7)前記金属塩含有溶液がFe−Ni硝酸溶液であり、前記触媒がFe−Ni合金触媒である上記(6)記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【0016】
(8)前記酸素含有ガスが空気である上記(6)又は(7)記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【0017】
(9)前記炭素含有還元ガスが、エチレンガスと水素ガスの混合ガスである上記(6)、(7)又は(8)記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【0018】
(9)前記炭素ナノ繊維生成工程での所定保持時間は、1〜360分間である上記(6)〜(9)のいずれか1項記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維を活性炭素繊維の表面に適正に生成させることにより、完全脱硫時間が長くかつ定常脱硫率が高い、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体の提供が可能になった。
また、炭素繊維複合体は、炭素ナノ繊維生成前の活性炭素繊維とほぼ同一形状を有するため、設計変更することなく、活性炭素繊維が使用されるあらゆる用途に適用することができる。
さらに、本発明では、炭素ナノ繊維は、活性炭素繊維の表面上に一体的に生成されるので、取り扱い(ハンドリンク性)にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に従う炭素繊維複合体の実施形態の図面を参照しながら以下に説明する。
図1(a)は、本発明に従う炭素繊維複合体1の形状を模式的に示したものであり、図1(b)は、図1(a)の円で囲んだ表面部分の断面拡大図である。
図1(a)、(b)に示す炭素繊維複合体1は、活性炭素繊維2と炭素ナノ繊維3とで主に構成されており、活性炭素繊維2は、その表面に、0.4〜2.0nmのサイズのスリット型(窒素BET法測定、BJH式で計算)をもつ多数のミクロポア4を含む表面の層を酸化除去することによって得られた微小凹凸表面5を有する。
【0021】
そして、本発明に従う炭素繊維複合体1の主な特徴は、活性炭素繊維(ACF)2の表面に、その表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維(CNF)を適正に成長させることにあり、より具体的には、金属、合金またはこれらの化合物からなる触媒6を微細析出させた微細金属化合物粒子を用いて多数のミクロポア4をもつ活性炭素繊維表面の表層をガス化除去して、新たに形成した微小凹凸表面5にさらにガス化に用いた金属化合物微粒子を今度は還元して炭素ナノ繊維の生成触媒に用いることによって、炭素ナノ繊維3を成長させることにあり、この構成を採用することにより、完全脱硫時間が長くかつ定常脱硫率が、図8に示したように、活性炭素繊維(OG15A)のままのもの(従来例1)、図2の条件(A)で製造したもの(従来例2)、1100℃の熱処理を施さないこと以外は本発明例と同様に製造したもの(比較例1)に比べて5%以上高い、優れた脱硫特性を得ることができる。
【0022】
以下、この発明を完成させるに至って経緯を作用とともに説明する。
まず、従来の知見として、活性炭素繊維は、アルゴン等の還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理すること(図2の条件(A))によって、表面における疎水性が高められることが知られている。しかしながら、かかる条件(A)を適用した活性炭素繊維(従来例2)は、図8で示したように、脱硫条件によるが定常脱硫率が60〜80%と低く、まだ十分な脱硫まで至っていないので、さらに脱硫率の向上が要求される。
【0023】
そこで、発明者らは、高表面積をもち、しかも、それ自体活性がなく疎水性に優れる炭素ナノ繊維を活性炭素の表面に生成させれば、図13に示した脱硫反応において律速となっている硫酸の活性炭素繊維の表面からの除去速度を速め、全体脱硫反応速度を高めることができると考え、検討を行った。
【0024】
活性炭素繊維の表面に炭素ナノ繊維を成長させるには、その表面に、金属、合金またはこれらの化合物からなる触媒を微細析出させ、適切な成長条件を与えることが必要である。また、こうした活性炭素繊維の表面に前記触媒を微細析出させる段階で活性炭素繊維による脱硫反応の活性点である活性炭素繊維のミクロ気孔の量と気孔サイズの減少させない工夫が要求される。一般的に、金属化合物の溶液を活性炭または活性炭素繊維の表面に、イオン交換法または沈澱法を用いて微粒子として析出させる場合、表1に示すように本来の活性炭また活性炭素繊維の表面積は表面に析出された金属化合物微粒子によって気孔が閉塞され、表面積が急激に減少する。この場合、脱硫の主な反応サイトであるミクロ気孔の利用率が急激に減少し、脱硫活性は減少する。
【0025】
このため、本発明者らはまず、活性炭素繊維の表面に有するミクロポア4(図3(a))内に、触媒6を分散析出させた後(図3(b))、これら触媒6を核として炭素ナノ繊維3を成長させてから(図3(c))、アルゴン等の還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理して(図2の条件(B))、炭素繊維複合体を製造してみた。
【0026】
しかしながら、条件(B)で製造した炭素繊維複合体100は、ミクロポア4が深いため、析出させた触媒6の大部分が、高温の還元雰囲気で活性炭素繊維2の内部に浸透する結果、炭素ナノ繊維3を活性炭素繊維2の表面に露出するように成長させるのには時間がかかり、この状態で、炭素ナノ繊維3を長時間させると、成長した炭素ナノ繊維3が活性炭素繊維2の表面を覆い隠すようになる結果、炭素繊維複合体100としての表面積が大幅に減少する結果、脱硫特性を十分に高めることはできないことが判明した。
【0027】
このため、本発明者がさらに検討を重ねた結果、活性炭素繊維2の表面(図4(a))に、触媒6を析出させた(図4(b))後、所定の酸化によるガス化処理を行って、活性炭素繊維2の表面の層を除去し(図4(c))、その後、炭素ナノ繊維3を活性炭素繊維2の表面に成長させてから、アルゴン等の還元ガス雰囲気中で1100℃で熱処理すれば(図2の条件(c))、炭素繊維複合体1としての表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維3を活性炭素繊維2の表面に有効に形成することができること(図4(d))を見出し、この発明を完成させるに至ったのである。
【0028】
一例として、(表面改質処理を行っていない)ピッチ系活性炭素繊維2の表面状態(図4(a))、触媒6を析出させたときの表面状態(図4(b))、活性炭素繊維2の表面の層を酸化除去して新たな微小凹凸表面を形成したときの表面状態(図4(c))、および、活性炭素繊維2の表面に炭素ナノ繊維3を適正に生成させたときの表面状態(図4(d))において、比表面積を測定したときの結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示す結果から、比表面積は、(表面改質処理を行っていない)ピッチ系活性炭素繊維と比較して、酸化ガス化による除去後の表面状態では、表面積が大幅に増加し、その後に炭素ナノ繊維を適正に生成させると表面積は減少する傾向を示すものの、(表面改質処理を行っていない)ピッチ系活性炭素繊維の比表面積と同じ程度にすることができることがわかる。
【0031】
成長させる炭素ナノ繊維3としては、図5に示すように、2〜12層の炭素六角網面7の積層体からなる炭素ナノ繊維素8を、前記炭素六角網面7の少なくとも一端が炭素ナノ繊維3の側周面3aを形成するように、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群9を、さらに、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成されていることが、大きな表面積を有する上で好ましい。
【0032】
また、炭素ナノ繊維3は、繊径が20〜150nm、表面積が100〜200m2/gであることが好ましい。繊径が20nm未満だと、炭素ナノ繊維により被覆される活性炭素繊維の表面から生成された硫酸が排除されにくくなるからであり、繊径が150nm超えだと、炭素ナノ繊維により被覆される活性炭素繊維の表面が十分に炭素ナノ繊維による疎水特性の増加を与えないからであり、また、表面積が100m2/g未満だと、炭素ナノ繊維の直径が比較的大きいので表面被覆による疎水性化の効率が低くなる傾向があるからあり、200m2/g超えだと、活性炭素繊維の表面から生成された硫酸が2次的に炭素ナノ繊維の表面に吸着され、素早い排除がし難くなるからである。
【0033】
活性炭素繊維2として、特にピッチ系活性炭素繊維を用いることが、脱硫特性の向上効果が顕著に得られる上で好ましい。
【0034】
炭素繊維複合体1を構成する活性炭素繊維2に対する炭素ナノ繊維3の表面積の割合が0.5〜30%の範囲であることが好ましい。前記割合が0.5%未満だと、炭素ナノ繊維複合被覆による活性炭素繊維の表面の疎水性増加効果が殆ど認められないだからであり、前記割合が30%超えだと、脱硫反応の主なサイトである活性炭素繊維のミクロ気孔の割合が減少し、炭素ナノ繊維の被覆による活性向上効果が認められないだからである。
【0035】
図6は、ピッチ系活性炭素繊維を用い、0〜100%の範囲で比表面積を変化させて種々の炭素繊維複合体を製造し、活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の面積割合(重量比)と炭素繊維複合体の比表面積(m2/g)との関係を示した図である。なお、図6で製造した炭素繊維複合体は、図2に示す条件Cで製造した。ここで、「比表面積」とは、液体窒素温度でのBET吸着等温式から得られる単分子層吸着量を用いる表面積であって、本発明では、吸着質として窒素を用いた場合の表面積(m2/g)とする。
【0036】
図6に示す結果から、活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の表面積の割合が大きくなるにつれて、炭素繊維複合体の比表面積が減少する傾向があり、特に、CNFの重量割合が50%を超えると、比表面積が急激に減少するのがわかる。
【0037】
また、この発明では、触媒としては、Fe、Ni及びFe-Ni合金の化合物(例えば窒化物)等を用いることができるが、特に、ACF表面に析出された金属微粒子がACFのガス化触媒と同時にCNFの生成・成長触媒である等の点から、酸化と還元が比較的起こりやすい鉄(Fe)−ニッケル(Ni)合金窒化物を用いることが好ましい。なお、触媒として鉄(Fe)−ニッケル(Ni)合金触媒を用いる場合には、FeとNiの合金割合を、質量比で、Fe:Ni=80〜10:20〜90とすることがより好適である。
【0038】
次に、本発明に従う炭素繊維複合体の製造方法の一例について以下で説明する。
本発明の方法は、触媒析出工程と、第1表面改質工程と、炭素ナノ繊維生成工程と、第2表面改質工程とで主に構成されている。
【0039】
まず、コールタールピッチ系の活性炭素繊維(本実験では大阪ガス製造のOG15A(市販品))2を、金属塩含有溶液中、好適にはFe−Ni硝酸溶液中に浸漬して、図4(b)に示すように、ミクロポア4内に金属、合金または金属化合物からなる触媒6を微細析出させる(触媒析出工程)。
【0040】
次に、触媒6を微細析出させた活性炭素繊維2を酸素含有ガス中、好適には空気中にて150℃〜450℃で加熱して、前記活性炭素繊維2のミクロポア4を含む表面の層を酸化除去して、図4(c)に示すように、微小凹凸表面5にする(第1表面改質工程)。加熱温度は、150℃未満だとガス化による酸化効果が殆ど認められないだからであり、450℃超えだと、酸化が激しく活性炭素繊維が燃焼により無くなるだからである。なお、加熱温度での保持時間については特に限定はしないが、1分〜72時間程度行えば十分である。
【0041】
第1表面改質工程の後、表面の層を酸化除去した活性炭素繊維2を、炭素含有還元ガス雰囲気中にて350〜850℃で加熱後、所定時間保持して、図4(d)に示すように、前記活性炭素繊維2の微小凹凸表面5上の触媒6を核として炭素ナノ繊維3を成長させる(炭素ナノ繊維生成工程)。
【0042】
加熱温度は、350℃未満だと炭素ナノ繊維の生成と成長が遅く経済的でないだからであり、850℃超えだと、炭素ナノ繊維の生成と共に減量炭化水素の分解による非結晶質熱分解炭素の生成が激しくなり、ACFの表面がこれによって被覆される危険性があるだからである。また、上記所定保持時間は、1分〜360分間が好ましい。
【0043】
前記炭素含有還元ガスは、炭素を含有するガスであればよく、例えば、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、エチレン(C2H4)等の炭化水素ガスが挙げられるが、特に、エチレンガスと水素ガスの混合ガスを用いることが炭素ナノ繊維の成長を速めるの点で好ましい。なお、エチレンガスと水素ガスの混合ガスを用いる場合には、エチレンガスと水素ガスの混合比率を、体積百分率で99:1〜20:80の範囲にすることがより好適である。
【0044】
次に、炭素ナノ繊維3を成長形成させた活性炭素繊維2を、還元ガス雰囲気中にて、950〜1150℃の高温で熱処理すること(第2表面改質工程)によって、本発明の炭素繊維複合体1を製造することができる。
【0045】
尚、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0046】
次に、この発明の製造方法に従って炭素繊維複合体を製造し、脱硫特性を評価したので以下で説明する。
【0047】
まず、大阪ガス製の活性炭素繊維(商品名:OG15A)を、Fe−Ni硝酸溶液中に浸漬して、ミクロポア内に20質量%Fe−80質量%Ni合金触媒を微細析出させ、次いで、この活性炭素繊維を空気中にて350℃で2時間加熱して活性炭素繊維のミクロポアを含む表面の層を酸化除去した後、図7に示すように、この活性炭素繊維(500mg)を石英製のボート(長さ10mm、幅2.5mm、深さ1.5mm)に載せ、内径4.5cmの石英管の中で、触媒活性化のため、水素とヘリウムの混合ガス(水素分圧20%)を100sccm(cc/min)流しながら500℃で2時間還元し、次いで、50体積%C2H4−50体積%H2の炭素含有還元ガス雰囲気中にて600℃で加熱後、20分間保持し、その後、1100℃、0時間の熱処理を施して炭素繊維複合体(本発明例)を製造した。
【0048】
参考のため、活性炭素繊維(OG15A)のままのもの(従来例1)、図2の条件(A)で製造したもの(従来例2)、1100℃の熱処理を施さないこと以外は本発明例と同様に製造したもの(比較例1)、炭素含有還元ガス雰囲気中の保持時間を60分間とし1100℃の熱処理を施さないこと以外は本発明例と同様に製造したもの(比較例2)、そして、炭素含有還元ガス雰囲気中の保持時間を60分間とすること以外は本発明例と同様に製造したもの(比較例3)についても製造し、同様に脱硫特性の評価を行った。図8にそれらの評価結果を示す。
【0049】
なお、脱硫特性は、図9に示すように、反応炉内に活性炭素繊維または炭素繊維複合体の供試材を装入した後、SO2:1000体積ppm、O2:5体積%、H2O:10体積%、残部がN2である混合ガスを反応炉内に導入し、排出されるガス中のSO2量をGas Chromatography(Flame Photometric Detector)で測定し、この測定値から、C/CO比を算出することによって、脱硫特性を評価した。なお、C/CO比は、残量SOx濃度/初期SOx濃度を意味し、このC/CO比の値が小さいほど、脱硫特性が優れている。ちなみに、この場合の完全脱硫時間はC/CO比の値がゼロであるときの完全脱硫の継続時間であり、定常脱硫率は、破過が始まってから一定値になったとき、この一定値C/CO比の値を意味する。
【0050】
図8の結果から明らかなように、本発明例が最も脱硫特性に優れているのがわかる。
また、図10〜図12は、それぞれ従来例1の活性炭素繊維、比較例1および比較例2の炭素繊維複合体の表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき表面SEM写真を示したものである。なお、図10〜図12はいずれも、第2表面改質工程を行う前のものであるが、第2表面改質工程を行った後のもの、すなわち、それぞれ、従来例2、本発明例および比較例3の場合もほぼ同様な表面観察が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明によれば、表面積をさほど減少させることなく、疎水性に優れた炭素ナノ繊維を活性炭素繊維の表面に適正に生成させることにより、完全脱硫時間が長くかつ定常脱硫率が高い、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体の提供が可能になった。
また、炭素繊維複合体は、炭素ナノ繊維生成前の活性炭素繊維とほぼ同一形状を有するため、設計変更することなく、活性炭素繊維が使用されるあらゆる用途に適用することができる。
さらに、本発明では、炭素ナノ繊維は、活性炭素繊維の表面上に一体的に生成されるので、取り扱い(ハンドリンク性)にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は、本発明に従う炭素繊維複合体1の形状を模式的に示したものであり、(b)は、(a)の円で囲んだ表面部分の断面拡大図である。
【図2】脱硫特性を高めるため3つの条件(A)〜(C)の工程を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2の条件(B)で製造したときの炭素繊維複合体の表面状態を各主要工程ごとに示した模式図である。
【図4】本発明に従う図2の条件(C)で製造したときの炭素繊維複合体の表面状態を各主要工程ごとに示した模式図である。
【図5】本発明の炭素繊維複合体に用いるのに好適な炭素ナノ繊維の構成を概念的に示す図である。
【図6】ピッチ系活性炭素繊維を用い、0〜100%の範囲で比表面積を変化させて種々の炭素繊維複合体を製造し、活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の面積割合(%)と炭素繊維複合体の比表面積(m2/g)との関係を示したグラフである。
【図7】本発明に従う炭素繊維複合体を製造するのに好適な装置の概略図である。
【図8】各供試材を用いて、脱硫特性を評価した時の結果を示すグラフである。
【図9】反応炉内に活性炭素繊維または炭素繊維複合体の供試材を装入した後、SO2を含有する混合ガスを反応炉内に導入し、排出されるガス中のSO2量をガス検出器で測定するのに好適な装置の概略図である。
【図10】従来例1の活性炭素繊維の表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき表面SEM写真である。
【図11】比較例1の活性炭素繊維の表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき表面SEM写真である。
【図12】比較例2の活性炭素繊維の表面を走査型電子顕微鏡で観察したとき表面SEM写真である。
【図13】大気あるいは排煙中のSO2を含むSOxガスが活性炭素繊維表面上で凝集(吸着)・分離するプロセスを説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0053】
1 炭素繊維複合体
2 活性炭素繊維
3 炭素ナノ繊維
4 ミクロポア
5 微小凹凸表面
6 触媒
7 炭素ヘキサゴナル網面
8 炭素ナノ繊維素
9 炭素ナノ繊維素群
10 熱処理炉(水平炉)
11 石英管
12 石英ボート
13 活性炭素繊維
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、合金またはこれらの化合物からなる触媒を微細析出させた多数のミクロポアをもつ活性炭素繊維表面の表層を除去して、新たに形成した微小凹凸表面に炭素ナノ繊維を成長させてなることを特徴とする、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体。
【請求項2】
前記炭素ナノ繊維が、炭素六角網面の積層体からなる炭素ナノ繊維素を、前記炭素六角網面の少なくとも一端が炭素ナノ繊維の側周面を形成するように、繊維軸方向に沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群を、さらに、繊維軸方向に沿って複数積層して形成してなる請求項1記載の炭素繊維複合体。
【請求項3】
炭素ナノ繊維は、繊径が20〜150nm、表面積が100〜200m2/gである請求項1または2記載の炭素繊維複合体。
【請求項4】
活性炭素繊維はピッチ系活性炭素繊維である請求項1、2又は3記載の炭素繊維複合体。
【請求項5】
炭素繊維複合体を構成する活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の表面積の割合が0.5〜30%の範囲である請求項1〜4のいずれか1項記載の炭素繊維複合体。
【請求項6】
表面に多数のミクロポアをもつ活性炭素繊維を、金属塩含有溶液中に浸漬して、ミクロポア内に金属、合金または金属化合物からなる触媒を微細析出させる触媒析出工程と、
触媒を微細析出させた活性炭素繊維を酸素含有ガス中にて150〜450℃で加熱して、前記活性炭素繊維のミクロポアを含む表面の層を酸化除去して微小凹凸表面にする第1表面改質工程と、
表面を酸化除去した活性炭素繊維を、炭素含有還元ガス雰囲気中にて350〜850℃で加熱後、所定時間保持して、前記活性炭素繊維の微小凹凸表面上の触媒を核として炭素ナノ繊維を成長させる炭素ナノ繊維生成工程と、
炭素ナノ繊維を成長形成させた活性炭素繊維を、還元ガス雰囲気中にて、950〜1150℃の高温で熱処理する第2表面改質工程と、
を有することを特徴とする、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体の製造方法。
【請求項7】
前記金属塩含有溶液がFe−Ni硝酸溶液であり、前記触媒がFe−Ni合金触媒である請求項6記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【請求項8】
前記酸素含有ガスが空気である請求項6又は7記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【請求項9】
前記炭素含有還元ガスが、エチレンガスと水素ガスの混合ガスである請求項6、7又は8記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【請求項10】
前記炭素ナノ繊維生成工程での所定保持時間は、1〜360分間である請求項6〜9のいずれか1項記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【請求項1】
金属、合金またはこれらの化合物からなる触媒を微細析出させた多数のミクロポアをもつ活性炭素繊維表面の表層を除去して、新たに形成した微小凹凸表面に炭素ナノ繊維を成長させてなることを特徴とする、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体。
【請求項2】
前記炭素ナノ繊維が、炭素六角網面の積層体からなる炭素ナノ繊維素を、前記炭素六角網面の少なくとも一端が炭素ナノ繊維の側周面を形成するように、繊維軸方向に沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群を、さらに、繊維軸方向に沿って複数積層して形成してなる請求項1記載の炭素繊維複合体。
【請求項3】
炭素ナノ繊維は、繊径が20〜150nm、表面積が100〜200m2/gである請求項1または2記載の炭素繊維複合体。
【請求項4】
活性炭素繊維はピッチ系活性炭素繊維である請求項1、2又は3記載の炭素繊維複合体。
【請求項5】
炭素繊維複合体を構成する活性炭素繊維に対する炭素ナノ繊維の表面積の割合が0.5〜30%の範囲である請求項1〜4のいずれか1項記載の炭素繊維複合体。
【請求項6】
表面に多数のミクロポアをもつ活性炭素繊維を、金属塩含有溶液中に浸漬して、ミクロポア内に金属、合金または金属化合物からなる触媒を微細析出させる触媒析出工程と、
触媒を微細析出させた活性炭素繊維を酸素含有ガス中にて150〜450℃で加熱して、前記活性炭素繊維のミクロポアを含む表面の層を酸化除去して微小凹凸表面にする第1表面改質工程と、
表面を酸化除去した活性炭素繊維を、炭素含有還元ガス雰囲気中にて350〜850℃で加熱後、所定時間保持して、前記活性炭素繊維の微小凹凸表面上の触媒を核として炭素ナノ繊維を成長させる炭素ナノ繊維生成工程と、
炭素ナノ繊維を成長形成させた活性炭素繊維を、還元ガス雰囲気中にて、950〜1150℃の高温で熱処理する第2表面改質工程と、
を有することを特徴とする、脱硫特性に優れた炭素繊維複合体の製造方法。
【請求項7】
前記金属塩含有溶液がFe−Ni硝酸溶液であり、前記触媒がFe−Ni合金触媒である請求項6記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【請求項8】
前記酸素含有ガスが空気である請求項6又は7記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【請求項9】
前記炭素含有還元ガスが、エチレンガスと水素ガスの混合ガスである請求項6、7又は8記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【請求項10】
前記炭素ナノ繊維生成工程での所定保持時間は、1〜360分間である請求項6〜9のいずれか1項記載の炭素繊維複合体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−38301(P2008−38301A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215899(P2006−215899)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
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