説明

脱顆粒抑制組成物

【課題】マスト細胞の脱顆粒反応によって引き起こされる、I型アレルギー(即時型アレルギー)の症状を改善または治療するための新規有効成分を提供する。
【解決手段】セロトニン誘導体を含有してなる、マスト細胞の脱顆粒抑制組成物。セロトニン誘導体は、N−(p−クマロイル)セロトニンおよびN−フェルロイルセロトニンを含み、植物組織などから抽出することができる。本発明の組成物は、I型アレルギーの症状を予防、緩和、改善または治療するため、医薬または食品として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱顆粒抑制組成物に関する。詳しくは、マスト細胞の脱顆粒を抑制する組成物、並びに当該組成物の医薬または食品用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会的問題になるほど、アレルギー性疾患の増加は著しいものがある。特に、花粉症、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギー反応は、I型アレルギー(即時型アレルギー)と呼ばれ、過剰な免疫反応が原因で起こるとされている。
【0003】
マスト細胞は、気道や腸管などの粘膜組織だけでなく、皮膚、血管など全身組織に広く存在し、細胞表面に高親和性IgE受容体(FcεRI)を発現しており、このFcεRIにはIgEが結合している。マスト細胞は、ダニ抗原や花粉抗原などの多価抗原が細胞表面のIgEに結合することによりFcεRIが架橋され、活性化される。活性化したマスト細胞は、細胞内顆粒を放出する脱顆粒反応を起こし、ヒスタミンなどの化学伝達物質、ロイコトリエンなどの脂質メディエーターやトリプターゼなどのプロテアーゼを放出し、結果としてI型アレルギー(即時型アレルギー)症状を引き起こす。
【0004】
このような花粉症などのアレルギー症状を治療するために、従来、抗アレルギー剤および抗ヒスタミン剤の内服、クロモグリク酸(クロモリン)および抗ヒスタミン剤の点鼻および点眼、糖質コルチコイド、コルチコステロイドの点鼻および吸入などによる治療が試みられている。前記薬剤は速やかに作用し、症状の軽減に有効であるが、抗ヒスタミン剤や糖質コルチコイド等は副作用の問題もあり、長期間にわたっての服用が敬遠されている。
【0005】
花粉症の症状を緩和する食品としては、発酵乳、ウーロン茶、甜茶等の効果が報告されている。これらの食品は、一般に花粉症を抑制するためには長期間摂取する必要があり、発症後に摂取しても効果が現れにくいことが多い。
【0006】
ベニバナ種子抽出物は、in vitroで低比重リポタンパク(LDL)の酸化を強力に抑制し、apoEノックアウト(KO)マウスにおける動脈硬化病変形成を抑制する作用(特許文献1)、動脈硬化モデルであるKHC(Kurosawa and Kusanagi-Hypercholesterolemic:遺伝性高コレステロール血症)ウサギや、ヒトボランティアにおける血圧・脈波改善作用(特許文献2)を有することが示されている。この抽出物中に含まれるヒドロキシ桂皮酸セロトニンアミド(セロトニン誘導体)は、apoE KOマウスにおける抗動脈硬化活性本体の少なくとも一つであると考えられる(特許文献1)。ベニバナ種子中のセロトニン誘導体としては、主としてN−(p−クマロイル)セロトニン(クマロイルセロトニンと同義であり、以下、「CS」または「クマロイルセロトニン」と略記する場合がある)およびN−フェルロイルセロトニン(フェルロイルセロトニンと同義であり、以下、「FS」または「フェルロイルセロトニン」と略記する場合がある)、ならびにそれらの配糖体の4種が知られている。CSとFSは、共にほぼ同レベルの抗酸化活性(DPPHラジカル消去活性、LDL酸化抑制作用など)を有することが示されている。これらのうち、CSについては、細菌のリポ多糖(LPS)で刺激されたヒト末梢血単球におけるTNF−α、IL−1、IL−6などの炎症性サイトカイン産生を抑制することがKawashimaらにより報告されている(非特許文献1)。またCSとFSはNF−κBの活性化を抑制し、VCAM−1およびMCP−1の発現を抑制することが示されている(特許文献3)。ただし、例えば花粉抗原と細胞膜上の特異的IgE抗体との反応によって引き起こされる、マスト細胞からの即時性のヒスタミン遊離にはNF−κBの活性化はほとんど関与しない。また、紅花種子抽出物を有効成分とする、抗糖尿病剤、血圧降下剤、抗腫瘍剤、抗アレルギー剤、インフルエンザウイルス感染阻害剤、抗欝・抗ストレス剤、薬物依存症治療薬、アディポネクチン産生促進剤、カルシウム吸収促進剤、抗骨粗鬆症剤、二日酔い予防または改善剤等、種々の薬学的効果が期待されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号第2003/086437号パンフレット
【特許文献2】国際公開番号第2007/032551号パンフレット
【特許文献3】国際公開番号第2007/129743号パンフレット
【特許文献4】特開2009−126786号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kawashima Sら、J. Interferon Cytokine Res. 18:423-428 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、I型アレルギー(即時型アレルギー)の症状を改善または治療するための新規有効成分を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、セロトニン誘導体、とりわけフェルロイルセロトニン、クマロイルセロトニンが花粉症などのI型アレルギー(即時型アレルギー)の症状を改善する作用があることを見出した。特に、これらのセロトニン誘導体がマスト細胞からの化学伝達物質の遊離に関する反応を抑制することで、アレルギー症状を改善することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本願発明は、以下に示す通りである。
【0011】
〔1〕セロトニン誘導体を含有してなる、マスト細胞の脱顆粒抑制組成物。
〔2〕前記セロトニン誘導体がフェルロイルセロトニンおよび/またはクマロイルセロトニンである、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記セロトニン誘導体が植物から抽出されたものである、前記〔1〕または〔2〕に記載の組成物。
〔4〕前記植物がベニバナの種子である、前記〔3〕に記載の組成物。
〔5〕I型アレルギーを予防、改善または治療するためのものである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1に記載の組成物。
〔6〕前記I型アレルギーが蕁麻疹、アナフィラキシー反応、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎または気管支喘息である、前記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕前記花粉症が、スギ花粉症、ヒノキ花粉症、オオアワガエリ花粉症、ブタクサ花粉症、カモガヤ花粉症、シラカバ花粉症、イネ花粉症、ケヤキ花粉症、イチゴ花粉症、コナラ花粉症、カナムグラ花粉症、ハンノキ花粉症、カバノキ花粉症、マツ属花粉症、ブナ花粉症、クヌギ花粉症、サワラ花粉症、スズメノテッポウ花粉症、ヒメガマ花粉症、ガマ花粉症、セイタカアキノキリンソウ花粉症、バラ花粉症、リンゴ花粉症、イタリアンライグラス花粉症、アカシア花粉症、ヤナギ花粉症、ウメ花粉症、ヤマモモ花粉症、ナシ花粉症、テンサイ花粉症、コスモス花粉症、ピーマン花粉症、キョウチクトウ花粉症、ブドウ花粉症、クリ花粉症、スズメノカタビラ花粉症、ハルジオン花粉症、サクランボ花粉症、サクラ花粉症、ヒメスイバギシギシ花粉症、ナデシコ花粉症、キク花粉症、アフリカキンセンカ花粉症、除虫菊花粉症、オオバヤシヤブシ花粉症、ツバキ花粉症、スターチス花粉症、アブラナ属花粉症、グロリオサ花粉症、クルミ花粉症、ミカン科花粉症、ネズ花粉症、モモ花粉症、オリーブ花粉症、イチイ花粉症、オオバコ属花粉症、マキ属花粉症、イチョウ属花粉症もしくはヨモギ花粉症またはこれらが合併した花粉症である前記〔6〕に記載の組成物。
〔8〕前記〔7〕に記載の花粉症の花粉抗原との交差反応性を有する食物抗原による口腔アレルギー症候群を抑制する、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1に記載の組成物。
〔9〕医薬である、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか1に記載の組成物。
〔10〕食品である、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか1に記載の組成物。
〔11〕食品が保健機能食品またはダイエタリーサプリメントである、前記〔10〕に記載の組成物。
〔12〕保健機能食品が特定保健用食品または栄養機能食品である、前記〔11〕に記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明品により、マスト細胞の脱顆粒抑制作用を介して広くI型アレルギー(即時型アレルギー)の予防、改善または治療が可能となる。また、本発明品は、医薬品としての使用のほか、食品への適用も可能である。なお、紅花種子抽出物を有効成分とする抗アレルギー剤に関しての先行特許文献(特許文献4)では、紅花種子抽出物の連続投与による好酸球の減少に基づいた作用を記載したものである。この記述からは、本発明で主張しているマスト細胞の脱顆粒抑制作用を推定することはできない。また、本発明に基づく効果は花粉などの抗原が暴露された直後に生じるアレルギー症状を抑制するものであり、紅花種子抽出物の連続投与による好酸球の減少とは効果の本質は全く異なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ラットのマスト細胞の脱顆粒に対するベニバナ種子抽出物およびセロトニン誘導体の影響を調べた結果を示すグラフである。
【図2】図2は、マウス皮膚アナフィラキシー反応に対するベニバナ種子抽出物の影響を調べた結果を示すグラフである。
【図3】図3は、マウス皮膚アナフィラキシー反応に対するベニバナ種子抽出物およびセロトニン誘導体の影響を調べた結果を示すグラフである。
【図4】図4は、ベニバナ種子抽出物粉末摂取が花粉症症状に及ぼす影響評価について調べた結果を示す。試験実施地域の試験実施日の花粉飛散量データと、同日の症状スコア変化量(=カプセル摂取前のスコア−カプセル摂取後のスコア)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、有効成分としてセロトニン誘導体を含有する、マスト細胞の脱顆粒抑制組成物に関するものである。既に背景技術の欄でも述べたように、I型アレルギー(即時型アレルギー)発症の過程には、花粉抗原などの多価抗原とマスト細胞などの細胞膜上の特異的IgE抗体との反応、並びにそれに伴うマスト細胞の脱顆粒による各種の化学伝達物質の遊離が関与している。したがって、この一連の反応を抑制する物質は、I型アレルギー(即時型アレルギー)の症状を抑制する作用を有する。
【0015】
本発明は、I型アレルギー(即時型アレルギー)に深く関与していると考えられる上記マスト細胞の脱顆粒を抑制するために、セロトニン誘導体または製品化上許容し得るその塩を用いる方法を提供するものである。
【0016】
本発明のマスト細胞の脱顆粒抑制組成物に含まれるセロトニン誘導体としては、ヒドロキシ桂皮酸のセロトニンアミドが好適なものとして例示され、例えば下記の式で表される化合物(I)が例示される。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、または糖を表し、n、m、およびlは0または1を表す)本明細書において、炭素数1〜3のアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルがあげられる。糖としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、ラムノース、アラビノース、キシロース、フルクトース、ルチノース、ガラクツロン酸、グルクロン酸、ネオヘスペリドースなどがあげられる。
【0019】
ヒドロキシ桂皮酸としては、p−クマル酸、フェルラ酸、カフェ酸が好適なものとしてあげられ、そのセロトニンアミドとしては、クマロイルセロトニン、フェルロイルセロトニン、カフェオイルセロトニンが例示される。
【0020】
本発明で使用されるセロトニン誘導体は配糖体であってもよい。ここで配糖体とは、化合物IにおけるRにグルコースがβグルコシド結合したO−β−D−グルコピラノシドなどが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0021】
セロトニン誘導体の塩としては、例えば金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等があげられる。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等があげられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン等との塩があげられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩があげられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩があげられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチン等との塩があげられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩があげられる。
このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合には好ましくは、アルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)等の無機塩、アンモニウム塩等が、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には好ましくは、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
セロトニン誘導体は、上記化合物の1種を単独で、あるいは2種以上の化合物を併用して、使用することができる。
【0023】
セロトニン誘導体は、化学的に合成することにより、また天然物から抽出することにより調製可能である。
【0024】
当該化合物は自体既知のものであり、その合成には自体既知の方法を採用すればよい。好適な具体例としては、後述の試験例1に記載の方法があげられる。
【0025】
天然物から抽出する場合には、原料としては様々な植物組織が用いられる。例えば、ベニバナやヤグルマギクをはじめとするキク科植物の種子、クロヒエやコンニャクイモ等の穀粒、塊茎などがあげられるが、好ましくはベニバナの種子、あるいはその脱脂粕である。本発明において植物種子とは、植物種子を構成する全体、あるいはその一部、例えば、種皮、胚乳、胚芽等を取り出したものでもよく、それらの混合物であってもよい。これらのものからの抽出方法としては、例えば、下記の如き方法があげられる。
【0026】
植物組織は、通常脱脂物(ミール)として抽出に供される。脱脂物は自体公知の方法により、例えば植物種子等の植物組織を脱脂して得ることができるが、例えば種子を圧搾抽出するかまたは種子の破砕物にn−ヘキサン等を加えて抽出した後、抽出系から固形分を取り出し、該固形分を乾燥して得ることができる。脱脂程度は通常60重量%以上、好ましくは80重量%以上である。
【0027】
また、抽出方法としては、例えば以下の、原料である脱脂後の植物種子を水で洗浄後,有機溶媒で抽出する方法が例示される。
【0028】
水は、特に限定されず、例えば蒸留水、水道水、工業用水およびこれらの混合水等のいずれも用いることができる。水には、本発明の効果が得られる限り、他の物質、例えば無機塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等)、酸(例えば塩化水素、酢酸、炭酸、過酸化水素、リン酸等)、アルカリ(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等)等を含んでいてもよい。洗浄の際のpHは通常2〜9であり、好ましくは5〜7である。
【0029】
水の使用量は、総量として、原料である脱脂後の植物種子に対して、通常2〜100倍量(水容量/脱脂後の植物種子重量、以下同様)、好ましくは10〜40倍量である。
【0030】
洗浄は、自体公知の方法で、原料である脱脂後の植物種子と水とを接触させて行うことができる。例えば、脱脂後の植物種子を水に懸濁後、濾過して固形の洗浄処理物を回収する方法等があげられる。洗浄は、上記の量の水を、脱脂後の植物種子に一度にまたは複数回に分けて、または連続的に接触させて行ってもよい。接触させる際の温度は通常5〜45℃、好ましくは25〜35℃である。接触させる時間は通常10〜240分であり、好ましくは15〜60分である。
【0031】
上記のようにして得られた脱脂後の植物種子等の洗浄処理物から有機溶媒で抽出して植物種子等の抽出物を得ることができる。
【0032】
有機溶媒として、例えば、低級アルコール、アセトン、アセトニトリルおよびそれらの混合溶媒等があげられるが、それらに限定されない。有機溶媒は、水を含んでいてもよく、無水物であってもよい。有機溶媒の濃度は、通常20〜95重量%、好ましくは50〜90重量%である。有機溶媒は抽出後の抽出物の濃縮、乾燥および食品製造の点からは低級アルコールが好ましい。低級アルコールとして、例えば炭素数1〜4のアルコールがあげられ、具体的には例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等があげられるが、これらに限定されない。低級アルコールは、食品製造の点からは、エタノールが好ましい。エタノールは、エタノール分を50重量%以上含む含水エタノールあるいは無水エタノールが好ましい。
【0033】
有機溶媒の使用量は、原料である脱脂後の植物種子の通常2〜40倍量(有機溶媒容量/脱脂後の植物種子重量、以下同様)、好ましくは2〜10倍量である。抽出温度は通常20〜75℃、好ましくは50〜70℃である。抽出時間は通常10〜240分、好ましくは60〜120分である。
また、植物種子等の植物組織は、未脱脂のまま上述の有機溶媒などで抽出することによって抽出物を得ることもできる。
【0034】
抽出後、懸濁液より濾過等により固形分を分離して得られた抽出液は、そのまま、または必要により濃縮、乾燥して本発明の植物種子抽出物として用いることができる。濃縮、乾燥は抽出液そのままを濃縮、乾燥してもよく、賦形剤(例えば乳糖、ショ糖、デンプン、サイクロデキストリン等)を添加して実施してもよい。上記の溶媒で抽出された抽出物は、その純度で、本発明に供してもよいが、更に自体公知の方法により精製しても良い。
【0035】
更に純度を上げるための一例を記載するが、これに限定されない。上述の溶媒抽出物の有機溶媒を減圧留去し、水を加え、抽出物を水に懸濁し、水相を非極性溶媒、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等で、好ましくはn−ヘキサンで洗浄し、洗浄後の水層を、二層に分かれて目的の組成物を抽出できる溶媒、例えば、酢酸エステルやn−ブタノールなど、好ましくは、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル等で抽出する。次いで、抽出液を飽和食塩水等で洗浄し、有機層を得る。酢酸エステルで抽出した場合、該有機層を、例えば、無水硫酸マグネシウム等で、脱水し、次いで減圧濃縮して、固形物(組成物)を得る。以上のどの段階で、精製を止めても良いし、いずれかの工程を省いても良いし、改変を加えても良いし、更に精製を進めても良い。上記溶媒の種類を変えることも含めて多段抽出法や向流分配法なども用いることができる。
【0036】
このようにして得られるセロトニン誘導体、とりわけクマロイルセロトニン、およびフェルロイルセロトニンは、抗原とマスト細胞などの細胞膜上の特異的IgE抗体との反応ならびにマスト細胞の脱顆粒による化学伝達物質の遊離に関する反応を抑制することで、I型アレルギー(即時型アレルギー)の症状を改善すると考えられる。
【0037】
本発明におけるI型アレルギーとは、蕁麻疹、アナフィラキシー反応、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息などの即時型アレルギー反応を示すものをいうが、これらに限定されない。
【0038】
本発明における蕁麻疹としては、食物性蕁麻疹または薬剤性蕁麻疹などのアレルギー性蕁麻疹があげられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明におけるアナフィラキシー反応とは、特定の原因物質によって生じる過剰なアレルギー反応であり、重症の場合、血圧低下を伴うアナフィラキシーショックと呼ばれる症状を引き起こし、死に至る場合もある。本発明のアナフィラキシー反応の原因物質としては、ペニシリンなど薬剤の内服や注射による「薬剤性アレルゲン」、虫刺されなどによる「刺咬性アレルゲン」、特定の食品などによる「食餌性アレルゲン」などがあげられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明における花粉症とは、植物の花粉が鼻や目などの粘膜に接触することによって引き起こされ、発作性反復性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの一連の症状が特徴的な症候群である。花粉症としては、スギ花粉症、ヒノキ花粉症、オオアワガエリ花粉症、ブタクサ花粉症、カモガヤ花粉症、シラカバ花粉症、イネ花粉症、ケヤキ花粉症、イチゴ花粉症、コナラ花粉症、カナムグラ花粉症、ハンノキ花粉症、カバノキ花粉症、マツ属花粉症、ブナ花粉症、クヌギ花粉症、サワラ花粉症、スズメノテッポウ花粉症、ヒメガマ花粉症、ガマ花粉症、セイタカアキノキリンソウ花粉症、バラ花粉症、リンゴ花粉症、イタリアンライグラス花粉症、アカシア花粉症、ヤナギ花粉症、ウメ花粉症、ヤマモモ花粉症、ナシ花粉症、テンサイ花粉症、コスモス花粉症、ピーマン花粉症、キョウチクトウ花粉症、ブドウ花粉症、クリ花粉症、スズメノカタビラ花粉症、ハルジオン花粉症、サクランボ花粉症、サクラ花粉症、ヒメスイバギシギシ花粉症、ナデシコ花粉症、キク花粉症、アフリカキンセンカ花粉症、除虫菊花粉症、オオバヤシヤブシ花粉症、ツバキ花粉症、スターチス花粉症、アブラナ属花粉症、グロリオサ花粉症、クルミ花粉症、ミカン科花粉症、ネズ花粉症、モモ花粉症、オリーブ花粉症、イチイ花粉症、オオバコ属花粉症、マキ属花粉症、イチョウ属花粉症もしくはヨモギ花粉症またはこれらが合併した花粉症などがあげられるが、これらに限定されない。
【0041】
花粉症患者において、前記花粉症の花粉抗原と交差反応性を有する食物抗原によるアレルギー反応を起こすことがある。本発明においては、かかる食物抗原による口腔アレルギー症候群も対象とすることができる。口腔アレルギー症候群としては、シラカバ花粉に対するバラ科果物、ブタクサ花粉に対するウリ科果物、スギ花粉に対するナス科植物などを原因とする食物アレルギーがあげられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明におけるアレルギー性鼻炎とは、発作性反復性のくしゃみ、水性鼻汁、鼻づまりを主徴とする鼻粘膜のアレルギー反応によって起こる通年性の鼻の疾患である。原因物質としては、ハウスダスト(ヒトやペットの皮屑、ダニ、埃、カビなどが混ざったもの)があげられ、花粉をアレルゲンとする季節性アレルギー性鼻炎の花粉症とは区別される。
【0043】
本発明におけるアレルギー性結膜炎とは、眼のかゆみ・充血・異物感・目やに、流涙を主徴として生じる通年性の結膜の炎症である。原因物質としては、ハウスダストがあげられ、花粉をアレルゲンとする花粉症の結膜炎症状とは区別される。
【0044】
本発明における気管支喘息とは、各種アレルゲンなどに対する過敏反応の過程で、気管支平滑筋収縮、気道粘膜の浮腫、気道分泌亢進などにより引き起こされる呼吸器疾患である。気管支喘息発作の原因物質としては、ウイルス感染、ハウスダスト、食物、薬剤などのアレルゲンに加え、過労または精神的要因などもあげられる。
【0045】
本発明の組成物は、前記セロトニン誘導体を有効成分とし、賦形剤(例えば、乳糖、ショ糖、デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素等)、場合によっては、香料、色素、調味料、安定剤、防腐剤等も含有するものであり、錠剤、丸剤、顆粒、細粒、粉末、ペレット、カプセル、溶液、乳液、懸濁液、シロップおよびトローチ等に製剤化して、食品や医薬製剤(医薬組成物)として用いることができる。
【0046】
本発明の組成物中に含まれるセロトニン誘導体の量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、通常、0.0001〜99.9重量%であり、好ましくは0.001〜99.5重量%であり、より好ましくは0.05〜99重量%であり、さらにより好ましくは0.1〜97重量%であり、さらに一層好ましくは0.5〜95重量%であり、さらに一層好ましくは0.6〜95重量%である。
【0047】
特に、医薬として使用する場合、医薬として許容できる担体(添加剤も含む)と共に製剤化することができる。医薬として許容できる担体としては、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、ショ糖、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素等)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)、溶剤(例えば、水、食塩水、大豆油等)、保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エステル等)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の「食品」は、食品全般を意味するが、いわゆる健康食品を含む一般食品の他、厚生労働省の保健機能食品制度に規定される特定保健用食品や栄養機能食品等の保健機能食品をも含むものであり、さらにサプリメント、飼料、食品添加物等も本発明の食品に包含される。
【0049】
食品用途の場合、セロトニン誘導体を、例えば、ドレッシング、マヨネーズ等の一般食品(いわゆる健康食品を含む)に含有させて用いることもできる。また、セロトニン誘導体を、賦形剤(例えば、乳糖、ショ糖、デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素等)、場合によっては、香料、色素等と共に、錠剤、丸剤、顆粒、細粒、粉末、ペレット、カプセル、溶液、乳液、懸濁液、シロップおよびトローチ等に製剤化して、特定保健用食品や栄養機能食品等の保健機能食品、サプリメントとして用いることができる。また、本発明の組成物は、飼料用途にも適用することができ、家禽や家畜等には、通常の飼料に添加して摂取または投与することができる。
【0050】
本発明の脱顆粒抑制組成物は、含有するセロトニン誘導体の生物学的作用を有効に発揮させるためには、特定保健用食品または栄養機能食品として用いられることが好ましく、その際、「花粉によって引き起こされるくしゃみ、鼻漏、鼻閉の症状改善に用いられる」、「蕁麻疹によって引き起こされる痒みを伴う発疹の症状改善に用いられる」、「環境の変化に敏感な方に適する」、「季節の変わり目が気になる方の健康に役立つ」などという表示を付すことが推奨される。
【0051】
本発明の組成物の摂取または投与方法は、摂取または投与対象の年齢、体重、健康状態によって異なるが、例えば、健康の維持・増進や疾患の予防を目的とする場合は、通常、食品の形態にして経口的に摂取し、一方、疾患の治療や健康回復を目的とする場合には、通常、医薬品、または食品の形態にして、経口的、または注射、外用剤などにより投与する。用量としては、合成したセロトニン誘導体を投与する場合、成人1日当たり0.2mg〜2g、好ましくは20mg〜2gを1日1回から数回に分けて摂取、または服用することが好ましい。また、実施例1のベニバナ種子抽出物を経口的に摂取する場合、成人1日当たり1mg〜10g、好ましくは、5mg〜10g、より好ましくは10mg〜5gを1日1回から数回に分けて摂取、または服用することが好ましい。
【0052】
セロトニン誘導体は、様々な植物の種子や塊茎などに含まれており、とりわけベニバナ種子に多く含まれている。韓国では古来、ベニバナ種子は骨折治癒促進、骨粗鬆症予防などの用途で、民間で用いられており、安全性は高いと考えられる。実際にヒトを対象とした試験において、本発明の組成物の毒性が低く、副作用がほとんど認められないことが裏付けられている(鈴木ら、生活衛生53(2):100-109 (2009))。
【実施例】
【0053】
以下に実施例等をあげて本発明をより具体的に例示するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0054】
試験例1(セロトニン誘導体の合成)
クマロイルセロトニン(CS)、およびフェルロイルセロトニン(FS)を以下の方法で合成した。
【0055】
CS:セロトニン塩酸塩をジメチルホルムアミド(5mL/g vs.セロトニン塩酸塩、以下同様)およびジクロロメタン(20mL/g)で溶解後、trans−4−クマル酸(1.0モル/モル)、1−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt)、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−エチル−カルボジイミド ヒドロクロリド(EDC)およびトリエチルアミンを各1.1等量加え、室温で終夜攪拌し反応させた。反応液を減圧濃縮後、酢酸エチルと水(各40mL/g セロトニン量)を加え、酢酸エチル抽出を行った。3回の酢酸エチル抽出により得た抽出相を5% クエン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水した。乾燥剤を除去した抽出液を減圧濃縮し、酢酸エチル−エタノール(10:0.6)にて晶析後、得られた結晶を酢酸エチルで洗浄し、乾燥させ、CSを得た(収率69.8%)。
【0056】
FS:セロトニン塩酸塩とtrans−4−フェルラ酸より上記CSと同様の方法で合成したが、晶析はメタノール−クロロホルム(1:15)にて行った(収率69.2%)。
【0057】
実施例1(ベニバナ種子抽出物の調製)
ベニバナ種子抽出物の調製を以下に記載した方法で実施した。ベニバナ種子1320kgに、50容積% エチルアルコール−水を約7800L加え、60℃に昇温後、同温にて12時間以上攪拌抽出した。得られた抽出液を固液分離し、5μmフィルターろ過後、減圧下50〜60℃にて濃縮した。得られた濃縮液を70℃、30分間加熱殺菌を実施し、カラム精製後、再度濃縮、殺菌し、凍結乾燥した。凍結乾燥後のサンプルを粉砕、篩分けし、ベニバナ種子抽出物粉末約6.8kgを得た。HPLCで分析したところ、総セロトニン誘導体含量は186.6mg/g 抽出物粉末(18.66重量%)であった。こうして調製したベニバナ種子抽出物粉末の一部をハードカプセル充填機にてハードカプセルに充填した(1カプセルあたり220mgのベニバナ種子抽出物粉末、セロトニン誘導体として約35mgを含む)。
【0058】
実施例2(ベニバナ種子抽出物(SSE:safflower seed extract)およびセロトニン誘導体(CS、FS)のマスト細胞からのヒスタミン遊離に及ぼす作用)
ラットマスト細胞(RBL−2H3)を10%FBS添加MEM増殖培地、37℃、5%炭酸ガス条件下で培養したものを実験に用いた。RBL−2H3細胞は2×10Cells/mLに調整し、100μLを96ウェルプレートに分注した。0.1μg/mLに調整したMonoclonal Anti−DNP抗体(Sigma社製)を100μL/well添加し、37℃5%炭酸ガス条件下で24時間培養後、培地を除去、PBSで洗浄後、一定濃度に調整したSSE、CSまたはFS添加培地180μLを添加した。サンプル無添加ウェルには20mM HEPES添加増殖培地を180μL添加した。30分培養後、20mM HEPES添加増殖培地にて2μg/mLに調整したDNP−BSAを20μL/well添加した。さらに60分培養後、上清200μLを回収し、上清中のヒスタミン含量をHistamine EIA Kit(SPI−BIO社製)を用いて定量した。陽性コントロールとして、デキサメタゾンとフマル酸ケトチフェンを用いた。
【0059】
表1に示すとおり、SSE、CSおよびFSはヒスタミン遊離を19%〜29%抑制した。抑制の強さは陽性コントロールとして用いたサンプルと同程度であった。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例3(ベニバナ種子抽出物(SSE)およびセロトニン誘導体(CS、FS)のマスト細胞の脱顆粒に及ぼす作用)
β−ヘキソサミニダーゼはマスト細胞の顆粒中に含まれ、ヒスタミン等と同様にアレルギー発症過程の早期(数十分)に細胞内から脱顆粒される物質である。従って、マスト細胞の細胞上清中のβ−ヘキソサミニダーゼの酵素活性を測定することで、脱顆粒に対する素材の作用を検討することができる。
RBL−2H3細胞を抗TNP−IgE抗体(BD Pharmingen社製)(0.2μg/ml)で感作させ、5.0×10個/wellとなるように96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩培養した。Tyrode's緩衝液にて細胞を洗浄後、一定濃度に調製したSSE、CSまたはFS、陽性対照としてフマル酸ケトチフェンを添加して37℃で30分間処理した。さらに、TNP−BSA(LSL社製)を加え37℃で30分反応させた後、各ウェルの培養上清を回収した。回収した各サンプルに基質液(p-nitrophenyl-N-acetyl-β-D-glucosaminide 1.3mg/ml)を加え、37℃にて40分反応させたに、405nmにおける吸光度を測定することでβ−ヘキソサミニダーゼの酵素活性を定量した。
【0062】
図1に示すとおり、TNP-BSA処理により培養上清中のβ−ヘキソサミニダーゼ活性が亢進したが、SSEおよびCS、FSの添加により活性の亢進が有意に抑制された。有意差検定には分散分析法(Tukey’s test)を用いた。
【0063】
実施例4(ベニバナ種子抽出物およびセロトニン誘導体のマウス受身皮膚アナフィラキシー反応に及ぼす作用)
ペントバルビタール麻酔下の雄性ICRマウス(6〜8週齢)の両耳介に抗DNP‐IgE溶液(10μg/ml)を10μl皮内投与した。対照群には抗DNP−IgEの代わりにPBSを投与した。2日後にSSE、CSまたはFS、陽性対照としてフマル酸ケトチフェンを所定の用量経口投与し、約1〜2時間後、1mg/ml DNP‐BSAと0.5% エバンスブルーの混液を250μl静脈投与した。投与30分後にマウスを頚椎脱臼によって致死至らしめ、両耳介を採取、アルカリ溶解にて色素(エバンスブルー)を抽出し、620nmの吸光度を測定した。
【0064】
図2および図3に示すとおり、DNP−BSAを投与することで引き起こされる、耳介での皮膚アナフィラキシー反応(血管透過性亢進、エバンスブルーの血管外漏出)に基づく吸光度の上昇が観察された。SSEおよびCS、FSの摂取はこの上昇を有意に抑制する作用あるいはその傾向を示した。有意差検定には分散分析法(Tukey’s test)を用いた。
【0065】
実施例5(ベニバナ種子抽出物粉末摂取による、花粉症症状に及ぼす影響)
例年スギ花粉症の症状を呈する24歳〜55歳の19名の男女ボランティアに、実施例1にて調製したベニバナ種子抽出物粉末カプセル(1カプセルあたり約35mgのセロトニン誘導体含有)を、セロトニン誘導体として1日70mgを目安量として、任意の期間摂取してもらった。摂取期間中、自覚症状に関するコメントを所定のアンケート用紙に記入してもらった。さらに鼻アレルギー診療ガイドライン2005年版収載のQOL調査表をもとにして、表2の項目に関するアンケート(0(なし)〜4(ひどい)の5段階のスコア付け)を摂取開始直前および摂取を終了した時点に実施した。
【0066】
摂取期間中のコメントとして、即効性があるとのコメントや症状が軽い日に効果を実感する旨のコメントがあった。実際にベニバナ種子抽出物粉末カプセルを比較的長期間摂取した被験者11名において、環境省花粉観測システムによる試験実施地域の試験実施日の花粉飛散量データと、同日のカプセル摂取前後の「現在のあなたの状況」スコア変化量(症状スコア)との関係をみると、花粉飛散量が少ない方が、よりスコアの改善を示す傾向が認められた(図4)。また、ベニバナ種子抽出物粉末カプセル摂取開始直前および摂取終了時の鼻アレルギー診療ガイドラインのQOL調査表に基づくアンケートについては、13名より回答があり、結果を表2に示した。鼻・眼の症状、QOL項目のほとんどは摂取前より摂取後の方が低いスコアを示した。「現在のあなたの状況」も、摂取前より摂取後の方がスコアは低く、症状緩和の方向を示した。また摂取期間中、特にベニバナ種子抽出物粉末カプセルの摂取に基づくと思われる有害な事象についてのコメントは認めなかった。以上の結果はベニバナ種子抽出物粉末またはそれに含有されるセロトニン誘導体が、安全に摂取することでき、かつ花粉症に対して効果があることを示している。
【0067】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロトニン誘導体を含有してなる、マスト細胞の脱顆粒抑制組成物。
【請求項2】
前記セロトニン誘導体がフェルロイルセロトニンおよび/またはクマロイルセロトニンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記セロトニン誘導体が植物から抽出されたものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記植物がベニバナの種子である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
I型アレルギーを予防、改善または治療するためのものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記I型アレルギーが蕁麻疹、アナフィラキシー反応、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎または気管支喘息である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記花粉症が、スギ花粉症、ヒノキ花粉症、オオアワガエリ花粉症、ブタクサ花粉症、カモガヤ花粉症、シラカバ花粉症、イネ花粉症、ケヤキ花粉症、イチゴ花粉症、コナラ花粉症、カナムグラ花粉症、ハンノキ花粉症、カバノキ花粉症、マツ属花粉症、ブナ花粉症、クヌギ花粉症、サワラ花粉症、スズメノテッポウ花粉症、ヒメガマ花粉症、ガマ花粉症、セイタカアキノキリンソウ花粉症、バラ花粉症、リンゴ花粉症、イタリアンライグラス花粉症、アカシア花粉症、ヤナギ花粉症、ウメ花粉症、ヤマモモ花粉症、ナシ花粉症、テンサイ花粉症、コスモス花粉症、ピーマン花粉症、キョウチクトウ花粉症、ブドウ花粉症、クリ花粉症、スズメノカタビラ花粉症、ハルジオン花粉症、サクランボ花粉症、サクラ花粉症、ヒメスイバギシギシ花粉症、ナデシコ花粉症、キク花粉症、アフリカキンセンカ花粉症、除虫菊花粉症、オオバヤシヤブシ花粉症、ツバキ花粉症、スターチス花粉症、アブラナ属花粉症、グロリオサ花粉症、クルミ花粉症、ミカン科花粉症、ネズ花粉症、モモ花粉症、オリーブ花粉症、イチイ花粉症、オオバコ属花粉症、マキ属花粉症、イチョウ属花粉症もしくはヨモギ花粉症またはこれらが合併した花粉症である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の花粉症の花粉抗原との交差反応性を有する食物抗原による口腔アレルギー症候群を抑制する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
医薬である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
食品である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
食品が保健機能食品またはダイエタリーサプリメントである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
保健機能食品が特定保健用食品または栄養機能食品である、請求項11に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−93857(P2011−93857A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250897(P2009−250897)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】