説明

脳脊髄圧不安定症候群治療剤

【課題】 脳脊髄圧不安定症候群治療剤を提供する。
【解決手段】 本発明者は、脳脊髄圧の変動が健常人に比べて大きく、不安定であるために起こる病態が存在することを突き止め、係る病態を脳脊髄圧不安定症候群と命名した。本発明は、係る脳脊髄圧不安定症候群に対して効果的な治療剤に関し、炭酸脱水酵素阻害薬を有効成分として含有する。当該炭酸脱水酵素阻害薬は炭酸脱水酵素の酵素活性を適度に抑制するので、脳脊髄圧の安定化が図れ、その結果、脳脊髄圧不安定症候群を予防・治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脳脊髄圧不安定症候群治療剤に関する。より詳細には、本発明者は、現在まで医学的にほとんど知られていなかった、脳脊髄圧の変動が健常人に比べて大きく、不安定であるために起こる病態が存在することを突き止め、係る病態を脳脊髄圧不安定症候群と命名した。本発明は、係る脳脊髄圧不安定症候群に対して効果的な治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脳脊髄圧とは脳膜と脊髄膜に覆われた空間の圧力を意味しているが、より正確にはクモ膜下腔を循環する脳脊髄液の圧力を意味している。脳脊髄液は脳室内にある脈絡叢と呼ばれる組織で産生され、脳や脊髄を被うクモ膜下腔を循環した後、クモ膜下腔に広く存在するクモ膜顆粒に於いて吸収され、その後静脈に合流している。クモ膜下腔に存在する脳脊髄液総量は健常成人では125〜150mlほどであり、脳脊髄液の産生量は24時間あたり500mlと推測されている。また特徴的なことは脳脊髄液中の重炭酸塩の濃度が21mEq/lで、血漿中の濃度23mEq/lと比較して10%程度低値を示すということである。脳脊髄液は、脳脊髄膜を介して脳脊髄を浮遊した状態で保持し、中枢神経を危険にさらす外力を吸収し分散させる液体の緩衝器として機能しており、物理的に中枢神経を保護している。その他、栄養物や代謝産物の運搬に関する役割を果たしていると考えられている(非特許文献1参照)。
脳脊髄膜は内側より軟膜、クモ膜、硬膜の三つの薄膜から構成された柔軟性に富んだ膜組織である。クモ膜下腔内に脳脊髄液を保持しているため、身体のダイナミックな動きや体位変化に伴い、各部位に於ける脳脊髄圧はダイナミックに変化する。具体的には、身体が側臥位で静止状態にある時の正常脳脊髄圧は4〜14mmHgとされているが、側臥位や仰臥位から立位に体位を変換した際には、重力の影響で脳内に於ける脳脊髄圧は低下し始め、反対に脊髄圧は上昇し始める。より具体的には心臓の位置を0点とすると、体位変換直後には頭蓋内圧は陰圧になり、クモ膜下腔でもっとも下方に位置する腰椎部のクモ膜下腔内圧は40mmHgまで上昇することが知られている。一方でこれとは反対に立位から仰臥位への体位の転換時には、脳内のクモ膜下腔の圧力は上がり始め、脊髄中に於ける脳脊髄圧は降下し始める。
これまで脳内に於ける脳脊髄圧(頭蓋内圧)は、脳の腫瘍・浮腫、血管床の増大、或いは炎症などに基づく圧力の亢進という観点からのみ検討されてきており(非特許文献2参照)、正常な状態に於ける脳脊髄圧の変化(必ずしも圧力の亢進だけではなく、圧力の低下も含めて)に対する考察はほとんど皆無であった。唯一、例外的に低脊髄圧症候群と呼ばれる病態がこれまで報告されているに過ぎない。
【非特許文献1】書籍「標準脳神経外科学」第5版、竹内一夫監修、医学書院発行、53〜55頁
【非特許文献2】書籍「標準脳神経外科学」第5版、竹内一夫監修、医学書院発行、129〜133頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、従来は脳脊髄液の作用・機能の主体は物理的な中枢神経の保護と考えられており、また脳脊髄圧については脳内の器質的病変や炎症性病変との関係だけでとらえられてきた。
しかし、本発明者は、脳脊髄液の産生及び吸収が、交感神経又は副交感神経の緊張亢進又は緊張低下に関与していることから、脳脊髄圧の不安定性が自律神経を介して様々な病態を引き起こす要因であることを想起した。そして、脳脊髄圧の変動が健常人に比べて大きく、不安定であるために起こる脳脊髄圧不安定症候群という病態が存在し、また脳脊髄圧の安定化を図ることにより、これらの症候群の改善を図れること、更に脳脊髄圧の安定化には炭酸脱水酵素阻害薬の微量投与が有効であることを見出して、本発明を完成した。
以下、脳脊髄圧と自律神経との関係、並びに種々の疾患との関係を詳細に説明する。
【0004】
脳脊髄圧と自律神経の関係
脳脊髄圧と交感神経、副交感神経のバランスとその緊張度との間には密接な関係がある。これをより正確に表現すると、脳脊髄圧の変化勾配(変化速度)と交感神経、副交感神経のバランスとその緊張度との間には厳密な相関関係があるということになる。つまり脳脊髄圧がより大きな速度で正負の方向へ変化するとき、より大きな影響を自律神経にもたらすのである。これを具体的に説明すると次のようになる。脳室内に存在する脈絡叢では、常時、基礎産生速度で脳脊髄液が産生されているが、脳脊髄圧の上昇は脳室内に存在する脈絡叢に於いて脳脊髄液が基礎産生速度よりも大きな速度で産生され始めることにより起こされる。この脳脊髄液の産生速度の亢進は交感神経を刺激し、その刺激の大きさは脳脊髄液の産生速度、或いは脳脊髄圧の上昇速度の大きさに正の相関を持つ。反対に脳脊髄液の産生速度、或いは脳脊髄圧の低下、若しくは停止は副交感神経を相応の強さで刺激する。このように脳脊髄液産生速度や脳脊髄圧の変化の大きさは交感神経、副交感神経への刺激の大きさと相関し、交感神経、副交感神経の緊張の強さに大きな影響を与える。
脳脊髄液産生速度、或いは脳脊髄圧の変化は交感神経、副交感神経のバランスやその緊張度の変化に大きな影響を及ぼすことは判明しているが、脳脊髄圧産生速度の変化は何を介して自律神経に影響を与えているかは未だ不明である。即ち、脳脊髄液産生速度が増大するため脳脊髄圧の上昇勾配(上昇速度)そのものが影響しているのか、脳脊髄液が産生される時の重炭酸イオンの減少によるものか、或いはこれら以外の原因によるものか、これらについては未だ解明されていない。しかしながら、脳脊髄液産生速度や吸収速度の異常亢進が交感神経や副交感神経の異常な興奮をもたらすことは良く理解されている。
【0005】
体位と自律神経のバランスについて
前述の体位の変化によって各部位に於ける脳脊髄圧の変化が起こるメカニズムを考察する時、これまで良く知られている立位と仰臥位に於ける交感神経、副交感神経のバランスと緊張度の変化は、脳内に於ける脳脊髄圧の急速な変化が引き金になって引き起こされていることが良く理解できる。これを具体的に説明すると次のようになる。仰臥位から立位に体位変換するとき、前述したように重力の影響の変化により、脳内のクモ膜下腔内圧(脳脊髄圧)は急速に低下し始める。すると、脳内のクモ膜下腔内圧を一定に維持しようとする仕組みにより、脳室内の脈絡叢では脳脊髄液の産生速度が急速に亢進し始める。このとき脳脊髄液産生速度は脳室内の脈絡叢に存在する下記の化学平衡式(1)の化学反応速度を促進する「炭酸脱水酵素」と呼ばれる酵素の活性度に大きく依存している。
【0006】
【化1】

【0007】
この化学平衡が右から左に向かって高速度で移動するとき、脳脊髄液産生速度は亢進し、同時に交感神経の緊張度が高まることになる。このときの交感神経の緊張度の強さは、この化学反応速度に正の相関を示す。換言するなら、脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素活性と交感神経の緊張度の強さは正の相関をすることになる。その反対に上記化学平衡が左から右に向けて高速度で移動するとき、脳脊髄液産生速度は基礎産生速度を大きく下回ることになる。場合によっては脳脊髄液の吸収が起こり、クモ膜下腔内圧は急速に低下し、その結果、副交感神経が強く緊張することになる。このとき炭酸脱水酵素活性が高いほどクモ膜下腔内圧の低下速度は大きくなり、副交感神経の緊張度も大きく亢進することになる。
脳室内の脈絡叢に於ける上記化学平衡(1)は時と場合によって左右どちらへでも移動するが、通常は右から左への移動が起こり、脳脊髄液は常時基礎産生速度で産生されている。結果的に脳脊髄液の重炭酸イオン濃度は血漿中よりも10〜20%程度低くなる。
【0008】
脳脊髄圧不安定症候群−1
自律神経症状
脳脊髄圧不安定症候群とは様々な原因により、脳室内の脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素の活性度が異常に高い状態にあり、前記化学平衡式(1)の化学平衡速度が非常に大きくなっているため、脳脊髄液産生速度や吸収速度が大きくなっており、その結果、交感神経、副交感神経の緊張度がともに極めて高い状態を呈し、そのバランスは極めて不安定であり、多彩で強い自律神経症状を呈する症候群である。
具体的症状として交感神経の過緊張状態のもとで起こる高血圧症(不安定高血圧症)、高血糖症(不安定高血糖症)、不安定型狭心症、血液凝固亢進症、不整脈、筋緊張性頭痛などがあり、反対に副交感神経の過緊張状態のもとで起きる低血圧症、低血糖症、頻脈、パニック症候群、うつ症状、ナルコレプシー、メニエル症候群、睡眠時無呼吸症候群などがある。更にリウマチなどの自己免疫疾患も脳脊髄圧不安定症候群の範疇で捉えることができる。これは脳脊髄圧の不安定性は自律神経システムの不安定性につながり、更には免疫システムの不安定性につながるからである。
これらのように相反する自律神経症状は一方向性にだけ現れることはなく、交感神経が過剰に緊張した状態のもとで現れる症状と、副交感神経が過剰に緊張した状態のもとで現れる症状が複雑に交錯して、これまでの医学理論だけでは説明しにくい複雑な症状を呈するのである。例えば不安定高血糖症では検査時に血糖が驚くほど高い値を示しているにもかかわらず、平均的な血糖値を表現するHbA1cの値はさほど大きなものではなく、随時血糖値とHbA1c(ヘモグロビンA1c)値の間に整合性のない結果が出ることが多い。つまり検査時には非常に高い値を示す血糖であるにもかかわらず、いつも高い状態が持続しているわけではなく、時には低血糖症状を呈することもあり、そのためHbA1c値はさほど高値にはならず、血糖値とHbA1c値が矛盾したデータに見えることがある。このような場合は血糖コントロールを直接的な治療目標にすると、血糖が不安定であるためそのコントロールは非常に難しくなる。このような症例に対して血糖降下剤やインスリンを通常量処方すると低血糖発作を繰り返すことが多い。しかし自律神経の安定化、つまり脳脊髄圧の安定化を目標にすると血糖コントロールは極めて良好なものになる。
【0009】
脳脊髄圧不安定症候群−2
感覚神経症状
脳脊髄圧の変化は自律神経だけでなく、脊髄に於いても運動神経や感覚神経に大きな影響をもたらすことがある。脊髄膜を介して感覚神経(前根)と運動神経(後根)が脊髄に出入りしているため、脊髄のクモ膜下腔内圧の急激な変化はそれぞれの神経線維の膜電位に大きな影響を与え、四肢や体幹のしびれ感や痛みとなって現れることがある。末梢神経の知覚異常や腰痛、五十肩、肋間神経痛などの各部位の神経痛などがこれに相当している。そのため脳脊髄圧の安定化はこれら整形外科領域の疾患群にも大きな効果をもたらす。これまで知られている炭酸脱水酵素阻害薬の通常量(500〜1500mg)投与後に経験する手足のしびれや感覚異常は上記のメカニズムによって発現するのである。現在に至るまでこの副作用はカリウムの喪失により起こると一般的には考えられている。
【0010】
脳脊髄圧が不安定になる原因
前述したように脳室内の脈絡叢には、前記化学平衡式(1)の平衡移動速度を促進する炭酸脱水酵素と呼ばれる酵素が存在する。そして脈絡叢で産生される脳脊髄液の産生速度や吸収速度はこの炭酸脱水酵素の活性度の高さに大きく依存している。何らかの理由で血液中の二酸化炭素(CO2)が急速に血液中から排出されると、上記の化学平衡が左の方向へ進み血液中のCO2の補充が行われることになる。このとき大量の水(H2O)が同時に産生されるため脳脊髄液の産生量が増加し、脳脊髄圧は上昇することになる。このように急速な血液中のCO2濃度の変化(低下)にいつも晒されているヒトは炭酸脱水酵素の活性度が次第に高くなる傾向があり、そのため脳脊髄液産生速度や吸収速度が大きくなり、交感神経や副交感神経の緊張度が異常に亢進することになる。つまり脳脊髄圧とともに自律神経が極めて不安定なものとなり、強い自律神経症状に悩まされることになる。
過剰な精神的ストレスにさらされるとヒトの呼吸数は増加することが知られている。呼吸数が増加するとより多くの酸素が摂取できるため都合が良いように思われるが、健常人では呼吸数を増加させても血液中の酸素濃度はほとんど上がらない。呼吸器に異常がなければ、普通に呼吸をしている状態で酸素飽和度はすでに98%以上になっており、ほぼ飽和状態にある。むしろ大きく変化が起こるのは血液中の二酸化炭素濃度である。呼吸数が増加すると血液中の酸素濃度に大きな変化は起こらないが、二酸化炭素の濃度は非常に低くなるのである。この状態を過換気状態と呼んでいる。
【0011】
精神的ストレスと脳脊髄液産生速度の異常
過剰な精神的なストレスの結果、過換気がおこり血液中の二酸化炭素濃度が急速に低下してくると、(1)の化学平衡は左側に移動することになり、前記で説明したメカニズムを介して脳脊髄液産生速度は亢進することになる。そのため交感神経が過剰に緊張した状態に陥ることになる。
つまり精神的なストレスが過換気状態を生み、過換気により血液中の二酸化炭素濃度の低下をもたらされ、その結果、脳脊髄液産生速度に急速な亢進状態が生じ、交感神経を更に強く緊張させるという悪循環を招くことになる。幸いなことにこのような不都合な連鎖が健常人で起こることは稀である。しかし何らかの理由で脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素の活性度が異常に亢進しているとき、この悪循環は容易に起こることになる。過換気に起因する急速な血液中の二酸化炭素濃度が大きく変化する機会が多いヒトや、常に血液中の二酸化炭素濃度が低く抑えられているヒトでは、脈絡膜に於ける炭酸脱水酵素活性が異常に亢進していることが多く、そのため脳脊髄液産生速度や吸収速度が健常人に比べ異常に亢進している。
【0012】
大気圧と脳脊髄圧の関係
これまで述べて来たように、脳脊髄圧は自律神経に対して大きな影響を与えているが、脳脊髄圧の絶対値が重要なのではなく、脳脊髄圧の変化速度や脳脊髄液が産生される速度が重要なのであり、これらが自律神経に対して大きな影響を与えるのである。
脳脊髄圧は人体がさらされている大気圧に大きな影響を受けている。大気圧はヒトの血管内圧を介して脳脊髄圧に影響を与える。例えば、周囲の大気圧が徐々に低下してくると脳脊髄圧は大気圧に対して相対的に高くなり始めるため、脳脊髄圧を一定に維持しようとする働きにより、脳脊髄液産生速度を低下させる反応が起こる。その結果、副交感神経の緊張が起こることになる。これは立位から仰臥位へ体位変換したときと同様の変化である。反対に大気圧が徐々に上がってくるとき、同様のメカニズムで脳脊髄液産生速度は亢進し、交感神経の緊張度は亢進することになる。これは仰臥位から立位へ体位変換したときと同様の変化である。
気圧の低下がリウマチやメニエル病を増悪させるということが、ここ最近になり医学統計学的に証明された。大気圧の大幅な低下が脳脊髄液産生速度を低下させ、副交感神経を刺激するのである。その結果、免疫システムに対しても大きな影響を与えていることが理解される。正常な脳脊髄圧は4〜14 mmHg (5.3〜18.6
hPa)であるから、例えば1.9〜4.9 hPa (20〜50 mmH2O)の気圧低下は脳脊髄圧に対して十分大きな影響になり得るのである。
【0013】
エコノミー症候群と脳脊髄圧不安定症候群
飛行中の航空機内で発生するエコノミー症候群は、離陸から巡航高度に至る過程での急速な機内圧の減圧が引き金となり、自律神経失調状態になるものと考えられる。通常一万メートル以上を飛行する旅客機の気内圧は0.8気圧(約800 hPa)程度に与圧されている。地上に比べて0.2気圧(約200 hPa)もの圧力が20分くらいの間に急速に減圧されると、脳脊髄圧に大きな影響を与える。健常人では周囲環境の気圧に対する相対的な脳脊髄圧を一定に保つべく脳脊髄液の産生は停止し、脳脊髄圧の吸収が始まる。このとき強い副交感神経の緊張が起こり急な眠気や血圧の低下などが起こることがある。しかし気圧の低下が収まり、ヒトの身体が航空機の機内圧に順応してくると脳脊髄液の基礎産生は再開される。これらは外気圧に対して相対的に脳脊髄圧を一定に保とうとする仕組みのためである。しかし脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素活性が異常に亢進しているヒトでは、急速な周囲環境の気圧の変化(低下)により脳脊髄圧はその正常なコントロールを失い、過剰な交感神経、副交感神経の緊張をともに起こし易いのである。このことが血液凝固亢進状態や不安定な血圧、不安定型狭心症、不整脈、筋緊張性頭痛、低血糖症、頻脈、パニック症候群などを引き起こすのである。現在、エコノミー症候群として問題になっている深部静脈血栓症は上記した様々な症状の一発症型に過ぎない狭義のものである。脳脊髄圧不安定症候群の概念を理解すれば、航空機内で比較的頻度高く現れる狭心症や不整脈、パニック症候群などもエコノミー症候群の一環と考えることができる。これらは単に交感神経の過剰な緊張がもたらす症状だけではなく、副交感神経が過剰に緊張した結果現れる症状も含んでおり、これらが複雑に交錯した症状を呈することが一般的である。これらの複雑で多彩な症状に対して、これまでの医学理論では説明は困難であった。
【0014】
正常眼圧緑内障と脳脊髄圧不安定症候群
現在、緑内障に罹患している人の数は40才以上で人口の約3.8%とも言われており、その数も次第に増加している。これまで緑内障とは眼圧の亢進が根本的な原因となり視神経障害を起こす疾患と考えられてきたが、ここ最近の調査の中で正常眼圧緑内障と呼ばれる、眼圧が正常範囲内にありながら緑内障と同様の病態を呈する疾患が増加していることが判明している。正常眼圧緑内障についてもこれまでの緑内障同様に眼圧の亢進が原因とされ、正常である眼圧を更に低くコントロールすることが唯一の治療法として信じられ、これまで治療が行われてきたが、正常眼圧緑内障の進行には全く歯止めがかからないことが周知の事実になっている。現在では全緑内障の中で正常眼圧緑内障の占める割合は70〜80%以上にも上ると報告されている。
解剖学的に見るとクモ膜下腔は視神経にまで及び、眼球の篩板部に至るまでこれを取り巻いている。視神経に対する血液の循環は視神経を包んでいる硬膜やクモ膜、軟膜を内外から貫く動、静脈により維持されている。そのため過剰な脳脊髄圧(クモ膜下腔内圧)の亢進は、視神経を包んでいるクモ膜下腔内圧が亢進することを同様に意味しているため、眼圧とは全く関係することなく、硬膜やクモ膜、軟膜の外側からの視神経に対する血液の供給及び、内側から外へ向けての血液の還流を障害する。とくに網膜中心動脈以外の循環圧の低い短後毛様体動脈などに由来し、軟膜血管叢を介して視神経の外側を栄養する血液の循環システムを障害することになる。網膜中心動脈のように強い駆動圧と大きな口径の動脈をもつ循環システムであれば、多少のクモ膜下腔内圧の上昇もその障害原因にはなりにくいが、循環圧の低い短後毛様体動脈などの細い動、静脈に由来する循環系は多大な影響を被ることになる。そのためこれらの循環系が栄養する周辺部視神経が障害を受けやすく、その結果、周辺部視野が欠損することになる。一方で大きな駆動圧を持つ網膜中心動脈から直接血液の供給を受ける中心部視神経は最後まで温存されやすく、中心視力は最後まで保たれることになるのである。
【0015】
これまで説明して来たように精神ストレスなどが原因となって、過剰な換気が起こり血液中の二酸化炭素濃度が大きく低下すると、脳脊髄液が過剰に産生され高脳脊髄圧をもたらすことになる。この高脳脊髄圧が視神経を取り巻くクモ膜下腔に及び、視神経の血液循環に障害を与えるのである。このように考えると正常眼圧緑内障は脳脊髄圧不安定症候群の一環をなしていると理解される。正常眼圧緑内障の患者に於いては慢性的な低CO2血症に陥っていることが多く、脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素活性が大きく亢進していることが多いと考えられる。一般的に正常眼圧緑内障の患者は視神経障害だけではなく、様々な自律神経症状に悩まされていることが多いこともこの事実を裏付けている。これまでも炭酸脱水酵素阻害薬は緑内障の治療に用いられてきたが、その用法・用量は眼圧を低下させる目的で使われてきたため、脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素活性に対しては強すぎる効果を持ち、脳脊髄圧を過剰に抑制することになり、緑内障に対して効果が得られないだけではなく、むしろ自律神経システムに対する副作用のため重篤な副作用に悩まされることになる。正常眼圧緑内障に対しては眼圧ではなく、脳脊髄圧をそのコントロールの対象とした治療がなされなくてはならない。そのために必要十分な炭酸脱水酵素阻害薬の投与量は、これまで眼圧降下を目的とした使用量の1/10以下が適当量と考えられる。より具体的な処方量についての説明は後述する。
【0016】
補足すると、眼圧に関係する房水の産生量も毛様体に於ける炭酸脱水酵素活性が関係すると考えられるが、房水の産生量はわずかに24時間あたり3〜9ml程度しかなく、脳脊髄液の産生量が24時間あたり500mlであることを考えると、脈絡叢と毛様体に於ける炭酸脱水酵素活性には極めて大きな開きがある。過換気などにより引き起こされる房水や脳脊髄液の産生速度の変化を考えてみる時、また体位の変化による房水や脳脊髄液の産生量に対するそれぞれの影響の有無を考える時、視神経を包んでいるクモ膜下腔の圧力変化は眼圧とは比較にならないほど大きく上昇・降下を繰り返していると考えられる。この大きな圧力変化こそが視神経に対する血液循環システムに障害を与えていると考えられるのである。
【0017】
上述してきたように、脳脊髄圧の変動が健常人に比べて大きく、不安定であるために起こる病態が存在し、これらの病態に対して脳脊髄圧不安定症候群と本発明者は命名した。この脳脊髄圧不安定症候群の中にはこれまで知られている数多くの疾患群が含まれている。これらは現在の医学理論では説明できない、相反する症状を呈することも多い。
その理解のために、脳脊髄圧制御システムと自律神経システムの関係を図1に示す。図1に示されるように、脳脊髄圧制御システムと自律神経システムは相互に密接な関係を有し、Auto-regulationとFeed-backを繰り返し、生体の維持が図られている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述のように、脳脊髄圧不安定症候群は脳脊髄圧が不安定であるために起こるので、脳脊髄圧を安定化されることにより、これらの症状を改善することができるが、脳脊髄圧を安定化させるためには炭酸脱水酵素阻害薬の微量投与が効果的であることを本発明者は見出した。
即ち、本発明は、炭酸脱水酵素阻害薬を有効成分として含有する脳脊髄圧不安定症候群治療剤であり、当該炭酸脱水酵素阻害薬としては、アセタゾラミドが好適に使用される。
また、脳脊髄圧不安定症候群としては、正常眼圧緑内障、エコノミー症候群、高血圧症、高血糖症、狭心症、非器質的不整脈、血液凝固亢進症、筋緊張性頭痛、低血圧症、低血糖症、頻脈、パニック症候群、うつ症状、ナルコレプシー、メニエル症候群、リウマチ、睡眠時無呼吸症候群などが例示される。
【発明の効果】
【0019】
脳脊髄圧不安定症候群の根本的な原因はさまざまな理由により脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素活性が異常に高くなっていることに起因する。本発明の治療剤の有効成分である炭酸脱水酵素阻害薬は、主に脳室内に存在する脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素の酵素活性を適度に抑制するので、脳脊髄圧の安定化が図れ、その結果、脳脊髄圧不安定症候群を予防・治療することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上述のように、本発明の治療剤の有効成分は炭酸脱水酵素阻害薬である。係る炭酸脱水酵素阻害薬は、古典的な利尿剤であり、これまで眼圧降下剤としても使用されてきた薬剤である。しかしこの薬剤は利尿剤や眼圧降下剤として働くだけではなく、脳室内に存在する脈絡叢と呼ばれる組織に於ける炭酸脱水酵素の働きを阻害することにより脈絡叢での脳脊髄液の産生を抑制する働きを持つことが知られている。このメカニズムを利用して脳脊髄液の産生をわずかに抑制することにより、脳脊髄圧の安定化を図ることが可能であることが判明した。
上述の炭酸脱水酵素阻害薬は、炭酸脱水酵素阻害作用を有する薬物を意味し、当該作用を有する薬物であれば何れの薬物も使用できる。既に、炭酸脱水酵素阻害薬として市販されている薬物を使用することもでき、例えば、アセタゾラミド、メタゾラミドなどが例示され、具体的にはダイアモックス(商品名、ワイスレダリー−武田薬品製)が挙げられる。
なお、本発明の治療剤において、その投与経路は特に限定されず、経口投与及び非経口投与(例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与等)の何れであってもよい。従って、本発明の治療剤の製剤形態も特に限定されず、粉末剤、顆粒剤、錠剤、注射剤、貼付剤、吸引剤、座剤などを例示することができる。係る製剤は、必要に応じて、製剤化に必要な添加物、例えば、賦形剤、安定化剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤などを添加し、常法に準じて調製することができる。
【0021】
本発明の治療剤においては、炭酸脱水酵素阻害薬の用量が極めて重要なポイントになる。これまでのような通常の利尿剤や眼圧降下剤としての炭酸脱水酵素阻害薬の用量や用法では脳脊髄圧の安定化を図ることはできず、脳脊髄圧不安定症候群に対しては全く無効であるだけでなく、むしろ脳脊髄圧の不安定化をもたらす原因となる。またこれまでの用量を長期間にわたり続けることにより重篤な肝障害も懸念される。
【0022】
より具体的には、これまで使われて来た炭酸脱水酵素阻害薬の処方は利尿剤として腎臓の尿細管に存在する炭酸脱水酵素活性や、眼圧降下を目的として眼球内の毛様体に存在する炭酸脱水酵素活性を抑えるために必要と考えられた処方量であった。しかし脳室内の脈絡叢に存在する炭酸脱水酵素はわずかな量の阻害剤を使用するだけで大きく抑制され、大きな効果を上げることができる。炭酸脱水酵素阻害薬を通常の処方量で用いると、脈絡叢に存在する炭酸脱水酵素活性に対して過剰な抑制を起こし、反って低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)とよく似た症状を起こすことが知られている。脳脊髄圧不安定症候群に対して最適な処方量は通常量の1/5〜1/20程度となる。具体的には症状に合わせて通常250〜1500mg/dayを処方するところ、10〜200mg/day程度、好ましくは25〜100mg/day程度の処方となる。より好ましくは30〜80mg/day程度、更に好ましくは40〜60 mg/day程度で投与される。10mg/day未満では効果が発現しがたく、また200mg/dayを超えた処方は反って症状を悪化させることになる。この用法・用量は脳脊髄圧安定化剤としてのものであり、脳脊髄圧低下剤として用いられるのではない。炭酸脱水酵素阻害薬は脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素の感度を適度に抑制することにより、脳脊髄圧の安定化をもたらすものである。
【0023】
脳脊髄圧不安定症候群とは、脈絡叢に於ける炭酸脱水酵素活性が異常な亢進状態にあるため脳脊髄圧が不安定となり、これが原因して交感神経と副交感神経のバランスとその緊張度の強さに大きな影響を及ぼし、過剰で不安定な自律神経症状を発症する症候群である。これまで自律神経をコントロールするためには、それぞれ交感神経作動薬、或いは交感神経拮抗剤、中枢性交感神経作動薬など交感神経に一方向性に働きかける薬物と、その反対に副交感神経作動薬や副交感神経拮抗剤など副交感神経に一方向性に働きかける薬物の両方が必要で、同時に交感神経と副交感神経を同時に両方向性にコントロールできる薬物はなかった。実際の臨床で注意を必要とするのは、交感神経の緊張が亢進して様々な症状を呈している患者に於いては、常に交感神経の緊張だけが亢進しているわけではなく、時として副交感神経の異常な緊張亢進に起因する症状が出現することが観察されることである。交感神経と副交感神経のバランスとその緊張度の強さは常に変化しているため、時々で出現する症状も複雑に変化し得るのである。これに対してその局面、局面で薬物を使い分けて行くことは現実的にはほとんど不可能なことである。しかし脳脊髄不安定症候群という概念を導入することにより脳脊髄圧と自律神経の関係を理解すれば、それぞれ交感神経と副交感神経の過剰な緊張亢進からもたらされる両側面の様々な症状に対して極めて効果的に治療、ならびに予防することができるようになる。つまり自律神経のバランスとその緊張の強さは脳脊髄圧を安定化することによりコントロールすることもできるようになるのである。
【0024】
このように脳脊髄圧不安定症候群を理解することは、自律神経をコントロールする上でまったく新しい脳脊髄圧というパラメータを加えたことに他ならない。脳脊髄圧を安定させることにより、これまでのように交感神経と副交感神経の各々のアゴニスト、アンタゴニストを局面、局面で使い分けて行くことが不要になることを意味する。これまで述べて来たように、自律神経システムの不安定性に起因する、又はそれにより惹起される種々の疾患、具体的には、正常眼圧緑内障、エコノミー症候群、高血圧症、高血糖症、狭心症、非器質的不整脈、血液凝固亢進症、筋緊張性頭痛、低血圧症、低血糖症、頻脈、パニック症候群、うつ症状、ナルコレプシー、メニエル症候群、リウマチ、睡眠時無呼吸症候群などは全て脳脊髄圧不安定症候群という概念ひとつで説明できるだけでなく、治療や予防までも可能になる。この中で例示した疾患には相反する症状や病名が入っていることが脳脊髄圧不安定症候群の特徴なのである。これまでの薬剤は一方向性の効果だけを狙ったものでしたが、もう少し深いレベルで効果をもたらす薬剤は両方向性にその効果を現すことができるのである(前述の図1参照)。
【0025】
付言ながら、脳脊髄圧のモニタリングについて説明すると、通常、脳脊髄圧は硬膜外に圧力プローブを挿入して測定されるが、侵襲が強く簡単に実行できる方法ではない。そこで脳脊髄圧が最適な状態にコントロールされていることを確認する必要がある。この目的のために眼圧測定を行うことで便宜上、脳脊髄圧測定の代用とすることが可能である。なぜなら眼球内の毛様体にも脈絡膜同様に炭酸脱水酵素活性があるため眼圧の変化は脳脊髄圧の変化と連動する。絶対値としては信頼できる方法ではないが相対的な、また経時的な変化をモニターするには簡単で信頼できる方法である。現在、眼圧測定は電子眼圧計を用いる時、非侵襲的、簡便かつ経済的に実行できる検査であることを付け加えておく。
【実施例】
【0026】
以下、治験例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の治験例においては全て患者の了解を得て試験しており、また薬剤名は全て商品名(登録商標)である。
【0027】
治験例1(糖尿病、71才女性)
ベイスン+アマリールを各々3 tabs/dayの処方を受けていた患者であり、この時点でHbA1c:5.9%、FBS(空腹時血糖):137mg/dlであった。
この患者に、ダイアモックス(粉末、以下同様)50mg/dayの追加処方を開始し、ベイスン+アマリールを各々1 tabs/dayに減量処方した。ダイアモックス処方開始後2ヶ月時点でHbA1c:5.4% FBS:113mg/dlとなった。また開始後3ヶ月時点でダイアモックス以外の薬物処方は中止された。この時点でHbA1c:5.2% FBS:109mg/dlとなった。この他、随時血糖値が大きく安定した。最高血糖値が大きく下がり、最低血糖値がやや上昇した。
【0028】
治験例2(高血圧症、45才男性)
Ca拮抗剤(ノルバスク5mg/day)+ AT3阻害剤(ディオバン80mg/day)の処方を受けていた患者であり、血圧は非常に不安定で150/80〜190/90mmHgの間で変動した。
この患者に、ダイアモックス80mg/day(2回の分服)の追加処方をした。なお、ノルバスク5mg/day+ディオバン80mg/dayは継続処方した。ダイアモックスの処方開始ともに血圧は安定化し、130/80〜160/90mmHgの間で推移した。収縮期血圧は平均して20〜30mmHgほど低下した。
【0029】
治験例3(パニック障害+気管支喘息、21才女性)
デパケン+パキシル+デプロメールの処方を受けていた患者であり、喘息発作時に気管支拡張剤の内服処方も受けていた。パニック障害を定期的に起こしていた。頻度は1〜2/Monthであり、喘息発作は起こさないもののいつも息苦しさを覚えていた。
この患者に、ダイアモックス50mg/dayの追加処方を開始し、パキシル+デプロメール処方を中止し、デパケンのみ継続処方した。ダイアモックス処方開始後3ヶ月時点で毎週のように発症していたパニック障害が全く起こらなくなった。また呼吸困難の自覚症状は完全に消失した。
【0030】
治験例4(正常眼圧緑内障、44才男性)
点眼薬ミケラン+キサラタンの点眼薬の処方を受けていたが、視野狭窄の進行は止まらなかった患者である。
この患者に、ダイアモックス50mg/dayの処方を開始した。ダイアモックス50mgの処方直後から網膜感度の上昇が観察された。また長期的な観察でも視野欠損の進行はなく、処方開始後6ヶ月の視野検査では網膜感度と視野欠損の一部に回復が観察された。
【0031】
治験例5(片頭痛、40才女性)
片頭痛発作時に鎮痛剤(ボルタレン25mg)を頓用内服していた患者で、長年にわたり週一回程度の片頭痛発作に悩まされていた。
この患者に、ダイアモックス50mg/dayの処方を開始したところ、ダイアモックス50mg/dayの処方が始まってから、ほとんど片頭痛発作は起こらなくなった。稀に起こったときもダイアモックス50mgを頓用内服すると完全に治まるようになった。
【0032】
治験例6(初期近視、乱視、11才女児)
近視整乱視で視力低下した患者である。
右眼視力=0.5P 左眼視力=0.5P
屈折:右眼
S-1.00 C-0.75 左眼 S-1.25 C-0.25
この患者に、ダイアモックス40mg/dayの処方を開始した。
二週間後検査データは以下のとおりであった。
右眼視力=0.9P 左眼視力=0.9P
屈折:右眼
S-0.75 C-1.00 左眼 S-1.00 C-0.50
なお、この治験例と同様のケースは多数確認された。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】脳脊髄圧制御システムと自律神経システムの関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸脱水酵素阻害薬を有効成分として含有する脳脊髄圧不安定症候群治療剤。
【請求項2】
炭酸脱水酵素阻害薬が、アセタゾラミドである請求項1記載の脳脊髄圧不安定症候群治療剤。
【請求項3】
脳脊髄圧不安定症候群が、正常眼圧緑内障、エコノミー症候群、高血圧症、高血糖症、狭心症、非器質的不整脈、血液凝固亢進症、筋緊張性頭痛、低血圧症、低血糖症、頻脈、パニック症候群、うつ症状、ナルコレプシー、メニエル症候群、リウマチ及び睡眠時無呼吸症候群である請求項1又は2記載の脳脊髄圧不安定症候群治療剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−145832(P2007−145832A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294154(P2006−294154)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(505134637)
【Fターム(参考)】