説明

腰掛

【課題】十分なリラックス効果を奏するように遠赤外線を放射可能な腰掛を提供する。
【解決手段】この腰掛1は、多量にしかも使用者の近傍で遠赤外線を放射可能にするように、黒鉛又は黒鉛化した炭化物が焼成された炭素プレート11Aを上面に有する座面11と、黒鉛又は黒鉛化した炭化物が焼成された炭素プレート12Aを前面に有する背もたれ12と、を備え、炭素プレート11A、12Aの裏面には発熱体11C、12Cが当接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子、座椅子、車の座席、便座などの腰掛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人間が腰掛けて使用するものに関して快適性を高めるため種々の提案がなされている。例えば、特許文献1では、椅子の座面等に木炭粉末を含有する発泡体からなるクッション材を用いることで、汗や臭いの吸着により防臭性、遠赤外線放射により保温性を高めることができるとしている。また、特許文献2では、合成樹脂に導電性カーボンを含ませた面状発熱体を便座に設置することで、暖房時の温度の立ち上がりが早くなり快適性が高まるとしている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−165260号公報
【特許文献2】特開平11−244198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、腰掛けた人間の姿勢はほぼ一定であるので時間が経つと血行が阻害され易く、そのためにリラックスし難い場合も多くある。本願発明者は、炭素材が人間が腰掛けて使用するものに設置されれば、放射される遠赤外線により、使用者の血液の循環が促進され、リラックス効果を奏することに着目し鋭意研究を行った。なお、以下、本願において、人間が腰掛けて使用するものを腰掛と称し、具体的には椅子、座椅子、車の座席、便座などを指すものとする。
【0005】
特許文献1の椅子の木炭は炭素材であり遠赤外線放射は期待できるけれど、木炭の機械的な強度は低いために粉末にせざるを得ず、それを所定の割合で発泡体に含有させている。そのため、人体まで届く遠赤外線の放射量の点で、リラックス効果を奏するには必ずしも十分とは言えない。また、特許文献2の便座の導電性カーボンも炭素材であり遠赤外線放射があるかもしれないけれど、粉末状或いは繊維状のカーボンを所定の割合で合成樹脂に含ませているため、人体まで届く遠赤外線の放射量の点で、リラックス効果を奏するには必ずしも十分とは言えない。
【0006】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は十分なリラックス効果を奏するように遠赤外線を放射可能な腰掛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の腰掛は、黒鉛又は黒鉛化した炭化物が焼成された炭素プレートを上面に有する座面を備えてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の腰掛は、黒鉛又は黒鉛化した炭化物が焼成された炭素プレートを前面に有する背もたれを備えてなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の腰掛は、請求項1又は2に記載された腰掛において、前記腰掛は椅子であって、前記炭素プレートの裏面には発熱体が当接されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の腰掛は、請求項1に記載された腰掛において、前記腰掛は便座であって、前記炭素プレートの裏面の背部側の一部には発熱体が当接されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の腰掛は、請求項1乃至4のいずれかに記載された腰掛において、前記黒鉛又は黒鉛化した炭化物はポーラス状に焼成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の腰掛は、請求項1乃至5のいずれかに記載された腰掛において、前記炭素プレートは銀を含有することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の腰掛は、請求項1乃至6のいずれかに記載された腰掛において、前記炭素プレートはフタロシアニンを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の腰掛によれば、黒鉛又は黒鉛化した炭化物が焼成された炭素プレートを使用者の近傍に配しているので、放射する遠赤外線により十分なリラックス効果を奏することが可能である。しかも、機械的な強度が高いので、使用者の体重及び着席時の衝撃に対して十分な耐久性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る腰掛である椅子1を示すものであり、(a)は平面視断面図、(b)はA−A線で切断した正面視断面図である。この椅子1は、座面11と、背もたれ12と、脚13と、から成る。
【0016】
座面11は、上面の中央に設けられた後に詳述する炭素プレート11Aとそれを陥没部に嵌め込む座面本体11Bから成る。座面本体11Bは、陥没部が形成可能であれば素材や形状は特に限定されないが、例えば、素材は合成樹脂、金属、木材等であり、形状は角を丸くした四角形状である。座り心地改善や美観等のために、炭素プレート11Aと座面本体11Bの上面に薄い緩衝材を載置し、更にその上面を皮、ビニール、布等で覆ってもよい。また、肘置きを取り付けることもできる。
【0017】
背もたれ12は、前面の中央に設けられた後に詳述する炭素プレート12Aとそれを陥没部に嵌め込む背もたれ本体12Bから成る。背もたれ本体12Bは、陥没部が形成可能であれば素材や形状は特に限定されないが、例えば、素材は合成樹脂、金属、木材等であり、形状は角を丸くした四角形状である。座り心地改善や美観等のために、炭素プレート12Aと背もたれ本体12Bの前面に薄い緩衝材を載置し、更にその前面を皮、ビニール、布等で覆ってもよい。
【0018】
脚13は、素材や形状は特に限定されないが、例えば、素材は合成樹脂、金属、木材等であり、形状は図1のカウンター椅子形状やダイニングチェアーのように4本脚としてもよい。また、椅子1は様々に変形可能であり、例えば、肘置きを取り付けたり、脚13を省略して座椅子や車の座席としたりすることもできる。また、背もたれ12を省略することも可能である。
【0019】
次に、座面11の炭素プレート11Aと背もたれ12の炭素プレート12Aについて詳細に説明する。炭素プレート11Aと炭素プレート12Aは、形状は同じ(例えば、直径20cm、厚さ1cm程度の円盤状)であっても異なっていてもよい。
【0020】
炭素プレート11A、12Aは、高密度で整った結晶構造の炭素焼成体である。この炭素焼成体は、以下のようにして製造することができる。すなわち、黒鉛、又は竹炭などの炭化物の炭素粉にフェノール系接着剤、ピッチ又はタールなどのバインダを5重量%程度加えて固め、所定の塊(例えば方形もの)に加圧成形する。そして、酸素が欠乏した状態で加熱し、2000〜3000℃程度で焼成する。竹炭などの炭化物は黒鉛化している。この状態で、原料の炭素粉同士は結合し所定の塊全体が一体に結晶化する。なお、フェノール成分、ピッチ又はタールは昇温途中の約1200℃程度で揮発している。その後、加熱を止め、炭素プレート11A、12Aの形状に加工する。この炭素焼成体は、バインダが揮発しているので、ほぼ100%(99%以上)が炭素材となっている。
【0021】
結晶構造の炭素焼成体は、結晶構造であるために、炭素材でありながら機械的な強度が高い。従って、炭素プレート11A、12Aは、使用者の体重及び着席時の衝撃に対して十分な耐久性を有する。炭素プレート11A、12Aはほぼ100%が炭素材であるので、外部の熱や光などの形で吸収したエネルギにより多量の遠赤外線を放射し、炭素プレート11A、12Aに衣服を介して接する使用者の臀部又は背中の皮下組織、血管などに作用して血液の循環を促進し、もってリラックス効果或いは健康増進効果を奏する。人体に到達する遠赤外線の量は、炭素プレート11A、12Aの放射量、人体までの距離などから頗る多い。また、炭素材は脳のα波を増加させる効果があることが本願発明者により確認されており、それによってもリラックス効果或いは健康増進効果が期待できる。
【0022】
炭素プレート11A、12Aの表面は、細かな摩耗や欠損を防止するために、水性樹脂等でコーティングするのが望ましい。
【0023】
炭素プレート11A、12Aは常温でも遠赤外線を放射するが、体温により温められると遠赤外線の量は増加する。望ましくは、炭素プレート11A、12Aの裏面に、発熱体(例えば、面状或いは紐状のヒータ、場合によっては化学物質を充てんした温熱具)11C、12Cを当接する。炭素プレート11A、12Aの熱伝導性は高く(例えば約3W/m・K)、たとえ発熱体11C、12Cが小さいものであっても炭素プレート11A、12A全体が素早く均一に暖められる。それにより、更に遠赤外線の放射量も増加する。
【0024】
また、炭素焼成体の抵抗率は1×10−3Ω・cm程度であり、導電性は導体の下位くらいである。炭素プレート11A、12Aの接地(図示せず)等により、使用者の衣服と腰掛との摩擦等により静電気が発生しても、電荷は常に放電される。それにより、人体に帯電すると疲労を蓄積し易い静電気が除去されることで疲れ難くなる。
【0025】
炭素プレート11A、12Aの炭素焼成体は、ポーラス状とすることも可能である。ポーラス状の炭素焼成体は、炭化物自体ほどではないが、多くの空隙を有する(多孔質である)。具体的には、原料の炭素粉にバインダを加えて固めるときに、繊維状又は粒子の集合状にすることでポーラス状とすることができる。
【0026】
ポーラス状の炭素焼成体は、汗自体や汗やタバコなどの臭い等を吸着(脱臭作用)することができ、椅子1を更に快適なものとする。なお、ポーラス状の炭素焼成体は、ポーラス状でないものよりも若干機械的な強度が低い。しかし、炭素プレート11A、12Aとして有すべき前述の機械的な強度は十分に有している。
【0027】
ポーラス状の炭素焼成体は、銀を含有する(例えば約1重量%)ことが望ましい。人間の汗の臭いは、主に、雑菌が汗を分解することにより生じることが知られている。銀は、その抗菌作用により雑菌を抑えて吸着した汗から臭いが生じるのを防止することができる。また、炭素焼成体の表面の銀が皮膚の雑菌に対して直接抗菌作用を及ぼす効果もある。なお、銀は、溶液に溶解又は分散させ、含浸させることにより炭素焼成体に含ませることができる。
【0028】
また、ポーラス状の炭素焼成体は、フタロシアニンを含有する(例えば約1重量%)のが望ましい。フタロシアニンは、臭いの成分の酸化反応を触媒することで、消臭作用を発揮する。炭素焼成体は、フタロシアニンを含有することで、空隙に吸着した臭いの成分を別の物質に変えることができるので、脱臭作用の飽和を防ぎつつ、それに加えて消臭作用も奏することができる。このフタロシアニンは、常温でもよく反応し、サイクル反応を行うので寿命が長い。これにより、長い期間、脱臭機能を維持することができる。なお、フタロシアニンは、例えば金属フタロシアニンポリカルボン酸(具体的には、テトラカルボン酸コバルトフタロシアニン、テトラカルボン酸鉄フタロシアニン、オクタカルボン酸コバルトフタロシアニン、又はオクタカルボン酸鉄フタロシアニン等)などの化合物として存在する。また、フタロシアニンの化合物は、溶液に溶解又は分散させ、含浸させることにより炭素焼成体に含ませることができる。
【0029】
なお、コスト低減のため、座面11の炭素プレート11Aと背もたれ12の炭素プレート12Aのいずれかを省略することも可能である。
【0030】
次に、本発明の別の実施形態に係る腰掛である便座2を説明する。図2は便座2を示すものであり、(a)は平面視断面図、(b)はB−B線で切断した正面視断面図である。この便座2は上面と下面が略平坦で、平面視略円環状(或いは馬蹄形状でも構わない)であり、便器本体(図示せず)に開閉自在に取り付けられる。
【0031】
便座2は座面21から成り、座面21は背部側に設けられた平面視馬蹄形状の炭素プレート21Aとそれを陥没部に嵌め込む座面本体21Bから成る。座面本体21Bの素材は硬質の合成樹脂である。炭素プレート21Aとそれが嵌め込まれた座面本体21Bの上面には、僅かな隙間を埋めるために水性アクリル等でコーティングされるのが望ましい。
【0032】
炭素プレート21Aの大きさは使用者の臀部に接触できる程度であれば特に限定はされないが、例えば、幅5cm、厚さ1cmである。炭素プレート21Aの製造法や構造は、上記の炭素プレート11A、11Bと同様である。作用効果も、炭素プレート11A、11Bと同様であるが、特に、遠赤外線を臀部に受けることにより、排尿の促進、痔痛の改善に効果的である。
【0033】
暖房便座とする場合は、発熱体(例えば、面状或いは紐状のヒータ)を便座2に埋め込むことになるが、炭素プレート21Aの熱伝導性は高いため、発熱体を引き回す必要はなく、背部側の一部に炭素プレート21Aに接触していればよい。それにより、コストを低減したり便座が厚くならないようにしたりすることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態に係る腰掛について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、炭素プレート11A、12A、21Aは、それぞれ複数に分割して特に必要な部分のみ残すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る腰掛である椅子を示すものであり、(a)は平面視断面図、(b)はA−A線で切断した正面視断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る腰掛である便座を示すものであり、(a)は平面視断面図、(b)はB−B線で切断した正面視断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 椅子(腰掛の実施形態)
2 便座(腰掛の別の実施形態)
11、21 座面
12 背もたれ
11A、12A、21A 炭素プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛又は黒鉛化した炭化物が焼成された炭素プレートを上面に有する座面を備えてなることを特徴とする腰掛。
【請求項2】
黒鉛又は黒鉛化した炭化物が焼成された炭素プレートを前面に有する背もたれを備えてなることを特徴とする腰掛。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された腰掛において、
前記腰掛は椅子であって、前記炭素プレートの裏面には発熱体が当接されていることを特徴とする腰掛。
【請求項4】
請求項1に記載された腰掛において、
前記腰掛は便座であって、前記炭素プレートの裏面の背部側の一部には発熱体が当接されていることを特徴とする腰掛。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された腰掛において、
前記黒鉛又は黒鉛化した炭化物はポーラス状に焼成されていることを特徴とする腰掛。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された腰掛において、
前記炭素プレートは銀を含有することを特徴とする腰掛。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された腰掛において、
前記炭素プレートはフタロシアニンを含有することを特徴とする腰掛。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−228832(P2008−228832A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69514(P2007−69514)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(593151572)
【出願人】(506138476)
【Fターム(参考)】