説明

腹膜透析用カセット及び腹膜透析装置

【課題】患者自身が在宅(自宅)等で行うことができ、気泡が患者の腹腔に入ることがない腹膜膜透析用カセット及び腹膜透析装置の提供。
【解決手段】腹膜透析を行う腹膜透析装置の透析装置本体2に対して着脱可能に装着される腹膜透析装置用カセット8であって、カセット本体と、患者へ透析液を注液するための注液回路状態と、患者から透析液を排液するための排液回路状態とを切替可能な切替カセット部82と、切替カセット部に接続され、腹膜透析装置の加温手段9により内部の透析液が患者体温まで近傍まで加温される加温部と、切替カセット部に接続され、透析液を送液するポンプ手段とを備え、加温部の下流側の適所に中空糸膜を備えた気泡除去手段20を設けたことを特徴とする腹膜透析装置用カセットとそれを用いる腹膜透析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者自身が在宅(自宅)等で行うことができる腹膜透析用カセット及び腹膜透析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析法(continuous ambulatory peritoneal dialysis、以下、「CAPD」とも言う)は、患者自身が自宅や職場で透析液の容器(バッグ)の交換を行うことができるため、社会復帰が易く、大いに注目されている。このCAPDは、患者の腹腔内にカテーテルチューブ(腹膜カテーテル)を留置し、このカテーテルチューブの体外端にトランスファーチューブを接続し、これに透析液の入った透析液バッグ(注液バッグ)のバッグチューブを接続し、各チューブを通じてバッグ内の透析液を自動腹膜透析装置により、腹腔内に注液し、所定時間透析を行った後に、腹腔内の透析液排液を前記各チューブを通じて、排液バッグ内に回収するものである。なお、各チューブ同士の接続は、両チューブの端部にそれぞれ装着された雄、雌コネクタの嵌合により無菌的に行われる。
【0003】
透析液を充填した透析液容器は樹脂でできており、空気のみをゆっくりと透過させる。この空気が低温下で透析液に溶解し、加温して体温程度の温度になると溶けていた空気が析出して気泡となる。この空気は滅菌した後の透析液容器中の空気であること、析出空気量も少ないことからあまり問題視されてはいなかったこと、また、各透析液容器ごと体温になるまで加温部で加温していたため、加温された透析液容器の上部に析出した空気が集まるため、別の容器に空気を回収する工夫や、注液時に気泡検出手段で容易に所定値以上の空気を流路切替手段で切り替えて排液容器に回収する工夫等がなされていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透析液を充填して少なくとも一つの透析液容器と透析液を回収する少なくとも一つの排液容器をもつ透析液回路と、前記透析液容器を起点とし患者腹腔を終点とする送液を行う送液手段をもち、その送液過程で室温に保存された透析液を体温まで加温する加温手段をもつ腹膜透析装置においては、上限の検出はあるものの加温の過程で析出した細かい気泡をそのまま送っていた。この気泡は、通常人体の代謝機能で腹腔外に排出されるが、体質によっては長期間にわたって腹腔内に気泡が溜まり、肩痛(放散痛)が発生する場合がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−84070号公報
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、腹膜透析を行う腹膜透析装置の透析装置本体に対して着脱可能に装着される腹膜透析装置用カセットであって、カセット本体と、患者へ透析液を注液するための注液回路状態と、患者から透析液を排液するための排液回路状態とを切替可能な切替カセット部と、切替カセット部に接続され、腹膜透析装置の加温手段により内部の透析液が患者体温まで近傍まで加温される加温部と、切替カセット部に接続され、透析液を送液するポンプ手段とを備え、加温部の下流側の適所に中空糸膜を備えた気泡除去手段を設けたことを特徴とする。また、この腹膜透析装置用カセットと、この腹膜透析装置用カセットが着脱可能に装着される透析装置本体とを有することを特徴とする腹膜透析装置である。また、ポンプ手段は気泡除去手段のエアベント用の陰圧手段を兼ねることを特徴とする腹膜透析装置である。
【発明の効果】
【0006】
透析液中の気泡は、患者の体温まで加温された透析液が患者の腹腔へ注入される際に、透析液中の気泡は、ほぼ完全に除かれるので肩痛(放散痛)が発生する可能性が低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の腹膜透析装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0008】
先ず、図1は、本発明の腹膜透析装置を使い捨てカセット(腹膜透析用回路)8とともに示した外観斜視図、図2は腹膜透析装置全体構成を示した模式図、図3は、腹膜透析装置のブロック図である。
【0009】
両図において、腹膜透析装置1は、透析装置本体2と、この透析装置本体2に対して着脱可能に装着される腹膜透析装置用のカセット8とを備えている。
【0010】
また、図1において透析装置本体2は、カセット8を前面から装着するための二点鎖線図示の開口部21aを有したカセット装着部21と、カセット装着部21を塞ぐ状態と開く状態にするために実線と破線図示の位置に把持部22aを持って回動される蓋部材22と、表示部23と、治療の開始操作を行うための操作部24aと、治療の停止操作を行うための操作部24bとを有している。
【0011】
操作部24aと操作部24bとの形状および色は、それらを区別し易いように互いに異なっており、開始用の操作部(開始ボタン)24aには一つの凸部がまた停止用の操作部(停止ボタン)24bには二つの凸部が形成されている。
【0012】
表示部23は、例えば、液晶(LCD)パネル等を備えたタッチパネルで構成されており、タッチパネルの押圧操作で透析に必要となる各種情報の表示と、装置の操作指示を破線図示のスピーカ400aから音声ガイドとともに行うようにして、操作性、利便性を確保している。
【0013】
蓋部材22が実線で示したように閉じた状態を検出するセンサ16aと、カセット8が装填されたことを検出するセンサ16bと、カセット8に接続された接続チューブ85内に所定量以上の気泡が存在したことを検出する気泡センサ14が図示の位置に配設されている。
【0014】
また、本体2のカバーにはフック部2aが収納可能に設けられており、チューブをこのフック部2aに引っ掛けるようにして送液を確実にしている。
【0015】
一方、透析装置本体2は、破線図示の主基部200と、副基部201とを取付用の基部としており、図示の樹脂製のカバーをそれぞれ設けるとともに、主基部200と、副基部201とを1〜2mm厚のアルミ金属板製としさらに随所に大型孔部を穿設することで軽量化を図っている。これらの基部に軽量樹脂製のカバーが固定される。また、例えば100メガバイト以上の記憶容量を有するメモリカード204が装置の背面から破線図示のカード読取装置203に対して装填可能に設けられており、表示部23の表示内容及び音声の変更や各国別の仕様変更を迅速に行えるように構成されている。また、患者データをメモリカード204に記録して、個別の患者に対応可能にしている。
【0016】
さらに、上記の二点鎖線図示のカセット装着部21の右側面側には遮蔽板202が破線図示の矢印方向に移動自在に設けられており、カセット8の接続チューブ85に対する機械的な干渉防止をすることでカセット8を装填位置にセットできるように構成されている。接続チューブ85のうち患者Kの腹膜内(腹腔内)へ接続される85cには中空糸膜を備えた気泡除去手段20が設けられ、透析液中に存在する気泡が除去できるようになっている。図4は、気泡除去手段20を示すもので、接続チューブ85cにオンラインで設けられた模式図である。図4(a)は、内部灌流方式の長手方向断面模式図、(b)外観斜視図、(c)は外部灌流方式の長手方向断面模式図である。20aはエアベント、20bは通気フィルタ、20cは中空糸膜、20dはポッティング部である。なお、この気泡除去手段20をカセット8内に内蔵させ、ダイヤフラム部を作動させる加圧/減圧手段(不図示)に連通させて陰圧状態にさせるため、気泡除去手段20のエアベント用の陰圧手段(陰圧発生手段)となるような構成としてもよい。
【0017】
一方、カセット8は、透析装置本体2のカセット装着部21に対して着脱可能な形状のカセット本体81と、カセット本体81から連続形成される下本体フレーム811と、この下本体フレーム811から間隙86を介して対向して設けられた上本体フレーム812とから構成されている。
【0018】
さらに、カセット本体81には送液用のダイアフラム87と加温部83と流路切換部とが図示のように一体的に形成されており、ダイアフラム87の周囲をフランジ部材815で取り囲むように構成されている。
【0019】
次に、図2において、腹膜透析装置1は、透析液回路ユニット3を備えており、透析液回路ユニット3は、患者Kの腹膜内(腹腔内)へ注入(注液)される透析液を収容(収納)する複数の透析液バッグ(透析液容器)4と、濃度の異なる透析液を収容する追加透析液バッグ5と、患者Kの腹膜内から排液される透析液を回収する排液タンク(排液容器)6と、患者Kの腹膜内に留置された透析カテーテル(カテーテルチューブ)7とを接続するように準備される。
【0020】
ここで、透析液回路ユニット3は、注液チューブ回路(ライン)31と、追加注液チューブ回路(ライン)32と、注液/排液チューブ回路(ライン)33と、排液チューブ回路(ライン)34とを有している。さらに、透析液回路ユニット3は、カセット8のカセット本体81に設けられた切替カセット回路82と、加温カセット回路83と、バイパス回路(患者側チューブ回路)84とを有しており、切替カセット回路82は、注液回路821と、追加注液回路822と、注液/排液回路823と、排液回路824とで構成されている。
【0021】
そして、図2において、注液チューブ回路31の一端側は、複数の分岐チューブ回路35が分岐接続されており、各分岐チューブ回路35の一端は、透析液バッグ4に接続されており、注液チューブ回路31の他端は、注液回路821の一端に接続チューブ85aを介して接続されている。
【0022】
追加チューブ回路32の一端は、追加透析液バッグ5に接続されており、追加チューブ回路32の他端は、追加注液回路822の一端に前記接続チューブ85bを介して接続されている。
【0023】
また、注液/排液チューブ回路33の一端は、注液/排液回路823の他端に接続チューブ85cを介して接続されており、注液/排液チューブ回路33の他端は、透析カテーテル7にトランスファーチューブセット36を介して接続されている。排液チューブ回路34の一端は、排液回路824の他端に接続チューブ85dを介して接続されており、排液チューブ回路34の他端は、排液タンク6に接続されている。
【0024】
流路切換部を形成する切替カセット回路82に接続されている注液チューブ回路31、追加注液チューブ回路32、注液/排液チューブ回路33および排液チューブ回路34は、カセット8を透析装置本体2に装着したとき、透析装置本体2の前面または前方側側面に位置するようになっている。
【0025】
カセット本体81を透析装置本体2のカセット装着部21に装着したときに、加温カセット回路83の出口側(下流側)は、最終注液回路状態と、戻り回路状態との間で切替可能に構成されている。ここで、最終注液回路状態とは、加温カセット回路83の出口側が、注液/排液回路823に連通し、かつバイパス回路84に連通しない状態のことを言う。また、戻り回路状態とは、加温カセット回路83の出口側が、バイパス回路84に連通し、かつ注液/排液回路823に連通しない状態のことを言う。
【0026】
前記切替カセット回路82、加温カセット回路83、バイパス回路84およびダイヤフラムポンプ87の構成材料としては、それぞれ、軟質の樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ−(4−メチルペンテンー1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の各種熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
【0027】
一方、透析装置本体2内には、カセット8の加温カセット回路83を加温する加温手段9が設けられており、加温手段9、板状(層状)の下部面ヒータ(不図示)と、板状(層状)の上部面ヒータ(不図示)と、板状(層状)の中間面ヒータ(不図示)とを有している。
【0028】
これにより、透析液は、上部面ヒータと中間面ヒータとで挟まれた状態で加温される。よって、加温手段による加温カセット回路の内部の透析液の加温効率が向上し、透析装置本体2およびカセット8の小型化、軽量化に有利となる。一方、図2に示すように、腹膜透析装置1は、透析液の温度管理等のために、種々のセンサを備えている。
【0029】
すなわち、透析装置本体2の、加温カセット回路83の下流側には、加温カセット回路83の出口側(下流側)を流れる透析液の温度(出口液温)を測温(検出)する出口液温用温度センサ12Aが設置され、加温カセット回路83の上流側には、加温カセット回路83の入口側(上流側)を流れる透析液の温度(入口液温)を測温(検出)する入口液温用温度センサ12Bが設置されている。
【0030】
ここで、出口液温用温度センサ12Aおよび入口液温用温度センサ12Bとしては、それぞれ、応答速度が極めて速いサーモパイル型赤外線センサ(非接触型の温度センサ)を用いるのが好ましい。これにより、各面ヒータの温度を高精度に制御することができる。
【0031】
また、図5に示すように各面ヒータには、それぞれ、その温度を測温(検出)するためのサーミスタなどのヒータ用温度センサ13が設けられている。さらに、透析装置本体2には、切替カセット回路82の入口側および出口側の気泡を検知する気泡センサ14がそれぞれ設けられている。なお、腹膜透過装置1は、回路の閉塞を検出する閉塞センサ、その他、種々のセンサ(各種センサ16)を備えている。加温部の下流側の適所に中空糸膜を備えた気泡除去手段20を設けることで、気泡センサ14は必ずしも必要としないが、安全性を確保するために気泡検出の感度を低下させて作動させてもよい。
【0032】
さらに、図3のブロック図に示すように、腹膜透析装置1は、透析液の注液、排液等の各制御を行う制御システム(制御手段)15を備えている。
【0033】
すなわち、制御システム15は、CPU(中央制御部)150と、記憶部152とを備えており、CPU150には、複数のクランプ111〜118を制御するクランプ制御ブ153、複数の面ヒータの温度を制御するヒータ制御部154、ポンピング作動手段10を制御するポンピング作動制御部155が、それぞれ、電気的に接続されている。また、CPU150には、それぞれ、出口液温用温度センサ12A、入口液温用温度センサ12B、各ヒータ用温度センサ13、各気泡センサ14、表示部23、操作部24a、24bが、それぞれ、電気的に接続されている。なお、CPU150には、電源回路156、バッテリー回路157と音声発生回路400とカセット装填手段300を制御するカセット装填制御部301とが電気的に接続されている。また、表示部23には上記のメモリカードを装填可能にしたカード読取装置203が電気的に接続されている。また、記憶媒体読取部170でフレキシブルディスク,CD−ROM等、各種制御プログラムを記憶した記憶媒体170aを読取るものである。また、外部通信部171により、LAN,インターネツト,赤外線等の無線等を介して、携帯端末(不図示),医療サイト等との相互通信可能となっている。
【0034】
この制御システム15は、出口液温用温度センサ12Aにより測温された温度が予め設定された所定の温度(本実施形態においては39℃)以上になると、クランプ制御部153により、第7クランプ117を制御してクランプ状態に切り替え、第8クランプ118を制御してアンクランプ状態に切り替えるとともに、ヒータ制御部154により、複数の面ヒータの駆動を停止させるオフ状態に切り替える。
【0035】
また、各面ヒータの出力(出力値)は、透析液の温度制御フロー、透析液の温度に基づいて選択される。すなわち、制御システム15は、出口液温用温度センサ12Aにより側温された温度と、入口液温用温度センサ12Bにより測温された温度とに基づいて、注液される透析液の温度が所定の温度範囲内になるように複数の面ヒータの出力(駆動)を制御する。そして、クランプ制御部153により、第1クランプ111(あるいは第2クランプ112)、第4クランプ114、第6クランプ116、第7クランプ117を制御してアンクランプ状態に切り替えるとともに、第2クランプ112(あるいは第1クランプ111)、第5クランプ115、第8クランプ118を制御してクランプ状態に切り替える。これにより、切替カセット回路82を注液回路状態に切り替えることができる。また、ヒータ制御部154により、複数の面ヒータに電力(出力)を供給するように制御する。これにより、加温カセット回路83を流れる透析液を加温する加温工程、換言すれば、透析液の温度制御フローが予熱工程に入る。
【0036】
複数の面ヒータに電力の供給を開始してからT1時間経過すると、予熱工程が終了する。この予熱工程が終了すると、ポンピング作動制御部155により、ポンピング作動手段10を制御してポンプ室内の加圧、減圧を交互に繰り返す。また、クランプ制御部153により、第4クランプ114を制御してクランプ状態、アンクランプ状態の切り替えをチャンバー(不図示)内の加圧、減圧に合わせて交互に繰り返すとともに、第3クランプ113を制御してクランプ状態、アンクランプ状態の切り替えをチャンバー814内の加圧、減圧に合わせて交互に繰り返す。これにより、ダイヤフラムポンプ87をポンピング作動(収縮、膨張)させて、透析液バッグ4から透析カテーテル7に向かって透析液を送液し、注液する。
【0037】
また、前記予熱工程が終了すると、透析液の温度制御フローが初期加温工程に入る。初期加温工程が終了すると、透析液の温度制御フローは通常加温工程に入る。通常加温工程においては、複数の面ヒータの出力制御は、出口液温用温度センサ12Aにより測温された温度が33℃未満の場合には、P制御によるヒータの出力値を複数の面ヒータに出力する。
【0038】
一方、出口液温用温度センサ12Aにより測温された温度が33℃以上39℃未満の場合には、PI制御によるヒータの出力値を複数の面ヒータに出力する。
【0039】
これにより、複数の面ヒータの出力制御を高精度に行うことできる。初期加温工程、または通常加温工程において、出口液温用温度センサ12Aにより測温される温度が39℃以上になると、クランプ制御部153により、第7クランプ117を制御してクランプ状態に切り替えるとともに、第8クランプ118を制御してアンクランプ状態に切り替える。また、ヒータ制御部154により、複数の面ヒータ91、92、93への電力の供給を停止、換言すれば複数の面ヒータをオフに切り替える。これにより、加温カセット回路83の出口側を戻り回路状態に切り替えることができ、透析液は、加温カセット回路83から、透析カテーテル7へ向かって流れることなく、バイパス回路84へ向かって流れ、そのバイパス回路84を介して加温カセット回路83の上流側に戻り、バイパス回路84および加温カセット回路83の間を循環し、その間に温度が下がる(冷却される)。すなわち、透析液の加温制御フローは冷却工程に移行する。したがって、患者Kの体温よりもかなり高温(39℃以上の温度)の透析液が患者Kに注液されることがなく、安全な透析治療を行うことができる。
【0040】
そして、出口液温用温度センサ12Aにより測温される温度が39℃未満になると、クランプ制御部153により、第7クランプ117を制御してアンクランプ状態に切り替えるとともに、第8クランプ118を制御してクランプ状態に切り替える。さらに、複数の面ヒータをONに切り替える。これにより、加温カセット回路83の出口側を最終注液回路状態に復帰することでき、再び初期加温工程または通常加温工程へ移行する。患者Kの腹膜内に所定速度で所定量の透析液を注液(注入)すると、透析液の注液は終了する。
【0041】
この透析液の注入が終了した後に、クランプ制御部154により、第7クランプ117、第8クランプ118を制御してアンクランプ状態に切り替えるとともに、第4クランプ114、第6クランプ116を制御してクランプ状態に切り替える。これにより、切替カセット回路82を排液回路状態に切り替えることができる。
【0042】
そして、ポンピング作動制御部155により、ポンピング作動手段10を制御してチャンバーの減圧、加圧を交互に繰り返す。また、クランプ制御部により、第3クランプ113を制御してアンクランプ状態、クランプ状態の切り替えをチャンバ内の減圧、加圧に合わせて交互に繰り返すとともに、第5クランプ115を制御してクランプ状態、アンクランプ状態の切り替えをチャンバー内の減圧、加圧に合わせて交互に繰り返す。これにより、ダイヤフラムポンプ87をポンピング作動させて、透析カテーテル7から排液タンク6に向かって腹膜内の透析液を送液し、排液することができる。なお、本実施例に限定されるものでなく、様々変更が手利き可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の腹膜透析装置をカセットとともに示した外観斜視図である。
【図2】本発明の腹膜透析装置の実施形態を模式的に示す図である。
【図3】透析装置本体のブロック図である。
【図4】気泡除去手段の模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1…透析装置、2…装置本体、20…気泡除去手段、21…カセット装着部、22…蓋部材、23…表示部、24a,4b…操作部、3…透析液ユニット、31…注液チューブ回路、32…注液チューブ回路、3…/排液チューブ回路、34…排液チューブ回路、35…分岐チューブ回路、36…トランスファーチューブセット、37…クレンメ、4…透析液バッグ、5…追加透析液バッグ、6…排液タンク、7 …透析カテーテル、8…カセット、81…カセット本体、9…加温手段、14…気泡センサ、15…制御システム、16…各種センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析を行う腹膜透析装置の透析装置本体に対して着脱可能に装着される腹膜透析装置用カセットであって、
カセット本体と、患者へ透析液を注液するための注液回路状態と、患者から透析液を排液するための排液回路状態とを切替可能な切替カセット部と、前記切替カセット部に接続され、前記腹膜透析装置の加温手段により内部の透析液が患者体温まで近傍まで加温される加温部と、前記切替カセット部に接続され、前記透析液を送液するポンプ手段とを備え、前記加温部の下流側の適所に中空糸膜を備えた気泡除去手段を設けたことを特徴とする腹膜透析装置用カセット。
【請求項2】
請求項1に記載の腹膜透析装置用カセットと、該腹膜透析装置用カセットが着脱可能に装着される透析装置本体とを有することを特徴とする腹膜透析装置。
【請求項3】
前記ポンプ手段が前記気泡除去手段のエアベント用の陰圧手段を兼ねることを特徴とする請求項1ないし2の腹膜透析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−61525(P2007−61525A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254577(P2005−254577)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】