説明

膜濾過による触媒の調整方法

本発明は、懸濁した触媒を調整する方法であって、触媒を含む反応媒体の少なくとも一部を1つ以上の反応器から取り出し、少なくとも一部が不活性化した懸濁した触媒を少なくとも1回の膜濾過によって分離及び浄化し、前記膜濾過の少なくとも1回はダイアフィルトレーションとして行うことを特徴とする調整方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁した触媒を調整する方法であって、触媒を含む反応媒体の少なくとも一部を1つ以上の反応器から取り出し、少なくとも一部が不活性化した懸濁した触媒を少なくとも1回の膜濾過によって分離及び浄化し、前記膜濾過の少なくとも1回はダイアフィルトレーションとして行うことを特徴とする調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明において、調整という用語は、材料として再使用又は廃棄するために調製することをいい、特に浄化又は浄化及び濃縮のことをいう。
【0003】
本発明を適用することより、非常に簡易な手法で、有毒な有機溶媒及び/又は反応生成物並びに出発材料を含み得る反応媒体から触媒を分離することができる。また、濃縮工程も本発明の方法に組み入れてよい。したがって、本発明の方法を行った後、不活性化した触媒は好ましくは濃縮した形態で水中に存在し、有機化合物を本質的に含まないので、材料としての再使用又は廃棄を更なる調整をせずに行うことができる。
【0004】
本発明の方法は用途が広く、様々な種類の触媒及び触媒で促進される様々な反応で使用可能な粒径の異なる触媒に使用することができる。本発明の上記特徴及び下記に記述する特徴は、各場合に示した特定の組み合わせだけでなく、本発明の範囲を超えずに他の組み合わせにおいても採用することができる。
【0005】
本発明は懸濁した触媒を調整する方法を記載しているので、以下において触媒という用語は懸濁した触媒に関するものである。
【0006】
触媒の活性は、例えば経時及び被毒に起因して使用中に徐々に低下することが知られている。反応を一定の水準に維持するためには新たな触媒を加えるのが普通である。しかしながら、反応懸濁液の触媒又は固形物含量が漸進的に増加することにより、この手法には厳しい制限が課される。このため、通常完全に又は部分的に不活性化した触媒の一部又は全部を排出し、これらを同じ種類又は異なる種類の新たな触媒と交換するために、費用のかかる反応の中断を一定間隔で行わなければならない。その後、不活性化した触媒は処分されるか、あるいは各触媒の構成成分、特にその貴金属を材料として再使用するために使用され得る。
【0007】
当業者は、触媒を反応媒体から分離し、必要に応じて濃縮し、合成に再循環させるのに用いられる様々な技術について知っている。
【0008】
特許文献1(WO99/01206)には、例えば、セラミックフィルターでのクロスフロー濾過によって懸濁した触媒を分離する方法が開示されている。フィルター上に厄介な被覆層が形成することが高い流速によって防止される。
【0009】
特許文献2(CN1394672A)及び特許文献3(CN1377875A)では、反応媒体は化学合成から取り出される。懸濁媒体をクロスフロー濾過により分離し、触媒を残りの懸濁媒体と共に反応器へ再循環させている。この方法では、反応器に再循環する触媒懸濁液は、触媒懸濁液の最大濃度の12重量%まで徐々に濃縮される。
【0010】
特許文献4(WO91/16294)は、触媒的酸化によるカルボン酸エーテルの調製において触媒を回収する方法を示している。この場合において、触媒はクロスフロー濾過によって最高30重量%の触媒懸濁液まで濃縮され、反応器に再循環される。酸化に使用される可溶化剤が濾過を補助することができることが開示されており、可溶化剤としてヒドロキシル基を有さないグリコールエーテルが記載されている。
【0011】
特許文献5(WO04/112957)は、必要により懸濁された均一系触媒を、半透過性膜で濾過することにより回収することに関するものである。反応媒体の1つの成分であるモノオレフィン性不飽和化合物を膜分離における助剤として使用することができることが述べられている。
【0012】
特許文献6(特開平6−23680号)には、フィルターによって反応器の内部で二酸化チタン触媒を保持する水の光酸化処理方法が記載されている。反応器を流通する水は紫外線照射に付させる。濾過に使用される逆浸透膜は逆流水によって一定間隔で洗浄される。併設された複数の反応器を使用することが開示されている。
【0013】
モットコーポレーションによる出版物、84 Spring Lane、Farmington、USA、1997年4月には、触媒を保持するために個別に又は平行に配置して使用することができるメンブレンフィルターが記載されている。触媒は反応媒体中で濃縮され、反応媒体に再循環させるか、あるいは濃縮物のバックフラッシュ及び排出によるデッドエンド濾過の間にプラントから除去される。触媒を連続的に除去することは、代わる代わる使用されるフィルターを用いることによってのみ可能である。排出された使用済触媒の更なる処理又は調整については記載されていない。
【0014】
完全に又は部分的に不活性化した触媒を処分又は材料として再使用することはその組成物に応じて行われる。毒性の有機溶媒又は反応生成物の残存する量により健康又は環境に有害な調製物として分類される触媒懸濁液は、処分しなければならないか、あるいは厳しい安全規制を受けるために費用のかかる方法によって再利用しなければならない。健康又は環境に有害な調製物として分類される場合には、取扱い、輸送及び焼却/灰化は、例えば、相当の安全性予防策及び/又は技術費用を伴ってのみ実施可能である。
【0015】
従って、問題となる有機化合物、例えば各有機出発材料、生成物又は溶媒をごく微量の残留含量で有する不活性化した触媒懸濁液に多大な経済的関心が存在する。極めて毒性の又は発がん性の(K1+K2)物質を0.1%以下に減少させることにより、健康又は環境に有害である調製物として分類されることを完全に回避することができる(Dangerous Materials Regulations, Directive for Preparations 1999/45EC)。しかしながら、問題となる有機化合物の残留含量を1%未満に減少させることはまた、例えば、分類がT+(極めて毒性)からXn(健康に有害)までの格下げにつながり、これにより取扱いが助けられる。
【0016】
また、更なる調整工程をせずに又は特別な安全対策を行わずに、初めの輸送及びその次の材料としての再使用又は処分が実施可能である状態で直接得られる各反応器から取り出された不活性化した触媒にも多大な関心が存在する。特に、不活性化した触媒は、有機化合物を含まないべきであり、非毒性の溶媒中に、好ましくは水中に存在すべきである。また、触媒は高濃度で存在することが有利である。
【0017】
従来技術に記載されている方法は、元々触媒を取り囲んでいる反応媒体中の触媒をそのままにしている。したがって、反応媒体の粘着性及び場合により有害な成分から触媒を除去する問題又はこれを有機溶媒から除去する問題は未だ解決されていない。また、これらの成分は、再生及び後処理が経済的に有利である価値のある材料であり得る。触媒は通常単に濃縮されるにすぎないが、これはその後の処分又は後処理のために準備された方法では行われない。すなわち調整がなされない。更に、濃縮した触媒懸濁液は、従来の方法では、タンクに又は直接反応器に再循環させることが通常であったため、分離することはできない。触媒の排出及び調整を同時に行って反応器を連続的に稼働させることは結果として不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】WO99/01206
【特許文献2】CN1394672A
【特許文献3】CN1377875A
【特許文献4】WO91/16294
【特許文献5】WO04/112957
【特許文献6】特開平6−23680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、懸濁触媒作用による反応から全量又は部分量で取り出し(除去)が行われた触媒を、反応媒体から実質的に完全に分離することができ、液体の非毒性相又は反応媒体よりも重篤性が低い相において非常に高い濃度で利用することができる方法を開発することにある。また、この方法は柔軟に使用することができるべきであり、調整は非連続的に又は連続的に行うことができるべきである。特に、この方法は、触媒の交換のための費用のかかる中断を行わずにすむことができるよう、触媒を含む懸濁液の一部の除去及び各場合に必要とされる量の活性触媒の添加によって、本質的に不変の反応器のスループットで連続的稼働が可能となるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
驚くべきことに、触媒を含む反応媒体の少なくとも一部を1つ以上の反応器から取り出し、少なくとも一部が不活性化した懸濁した触媒を少なくとも1回の膜濾過によって分離及び浄化し、前記膜濾過の少なくとも1回はダイアフィルトレーションとして行うことを特徴とする懸濁した触媒を調整する方法により、反応媒体からの相当量の残存有機化合物を含まずに、非毒性溶媒又は反応媒体よりも重篤性が小さい溶媒中の不活性化した触媒を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】濾過ユニットを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ダイアフィルトレーションという用語は、ダイアフィルトレーション媒体を膜濾過の前又は間に保持液に加える膜濾過のことをいう。ダイアフィルトレーション媒体は通常、先の懸濁媒体とは異なる液相を含む。ダイアフィルトレーション媒体の添加は通常、触媒の濃度を変化させない。先の懸濁媒体は、異なる種類の懸濁媒体で交換されることが好ましい。ダイアフィルトレーション媒体は先の懸濁媒体と相の境界なく混和することが好ましい。ダイアフィルトレーション媒体は先の懸濁媒体と、相の境界なくあらゆる比で混和することが特に好ましい。ここで、相の境界なく混和とは、各場合における一般的な圧力及び温度条件下において、また採用する混合比において、例えばエマルションの形態で相の境界が形成されないことを意味する。
【0023】
保持液(retentate)という用語は膜を通過しない流れのことをいい、一方、透過液(permeate)という用語は膜を通過する流れのことをいう。結果として生じる膜の単位面積当たりの質量流は透過流束と称し、通常kg/m2/hで示される。保持液及び透過液の定義に従って、保持液側は膜の触媒懸濁液が存在する側であり、透過液側はこれに対応して、膜の本質的に触媒を含まない液相が存在する側である。
【0024】
濃縮工程という用語は、触媒が濾過の前よりも小さい体積の懸濁媒体中に存在する当該濾過のこという。例えば、懸濁した触媒は、膜を介して懸濁媒体の一部を除去することにより濃縮することができ、懸濁した触媒はより小さい体積の懸濁媒体で残存している。
【0025】
膜濾過という用語は、クロスフロー濾過としても知られている精密濾過、限外濾過又はナノ濾過のことをいう。
【0026】
懸濁した触媒という用語は、液相中に固体として存在する触媒のことをいう。液相は、純粋な若しくは本質的に純粋な液体又は液体の混合物からなってよい。液相は、例えば触媒により促進される反応の場合、出発材料、生成物、溶媒あるいは他の溶媒及び溶解した出発材料及び/又は生成物成分等の反応媒体の液体成分を含んでよい。液相の組成は、本発明の方法の間に必然的に変化する。
【0027】
懸濁媒体という用語は、懸濁した触媒が存在する液相のことをいう。
【0028】
触媒懸濁液という用語は、懸濁媒体とこれに懸濁した触媒の全体のことをいう。他の固形物が触媒に加えて触媒懸濁液中に存在していてよい。触媒懸濁液は他の固形物を含まないことが好ましい。
【0029】
本発明によれば、本発明の方法により調整されるべき触媒は、初めは液体反応媒体において懸濁液中に存在する。懸濁媒体は1回以上のダイアフィルトレーション工程を行うことにより交換されてよい。
【0030】
懸濁媒体の交換の進行又は程度は交換係数により示される。交換係数は、取り出された透過液の量又は導入されたダイアフィルトレーション媒体の量(ダイアフィルトレーションの場合には、分離された透過液の量又は導入されたダイアフィルトレーション媒体の量は同一である。)を保持液の量で除したものである。ここで、これらの量は、一貫して体積で又は一貫して重量で決定される。新たなダイアフィルトレーション媒体は液体又は固体の形態で導入される。固体の形態の場合、例えば、結晶状態又は凍結状態で存在していてよく、本方法を行っている間に液化し又は液化されてよい。
【0031】
本発明の方法を行った後、即ち最後の濾過の後、触媒は、液体懸濁媒体中に、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール及びエチレングリコール等のアルコール、アセトン等のケトン、ジオキサン等のエーテル、アセトニトリル等のニトリル、ジメチルホルムアミド等の酸アミド及び特に好ましくは非毒性の水中に存在することが好ましい。元の懸濁媒体(反応媒体)が水と混和しない場合、これをまず、元の懸濁媒体と水の両方に混和する懸濁媒体で交換する必要があり、次いで更なるダイアフィルトレーション工程において水に交換する必要がある。この中間段階に好適な懸濁媒体は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びエチレングリコール等のアルコール、アセトン等のケトン、ジオキサン等のエーテル、アセトニトリル等のニトリル、ジメチルホルムアミド等の酸アミドである。
【0032】
従って、本発明の方法は、少なくとも1回のダイアフィルトレーション工程を含む。不活性化した触媒が調整の最後において水中に存在すべきであり且つ反応媒体が水と混和しないことが意図される場合には、1〜3回、特に1又は2回のダイアフィルトレーションを用いることが好ましい。
【0033】
本発明の方法は、少なくとも1回、特に好ましくは2回の濃縮工程を更に含むことが好ましい。最初の濃縮工程は通常、最初のダイアフィルトレーション工程の前に行う。この場合、触媒を反応媒体中で濃縮する。結果として、濃縮していない触媒懸濁液を直接ダイアフィルトレーションする場合よりも、消費されるダイアフィルトレーション媒体がより少なくなるか、あるいは透過液が必要な枯渇のために次のダイアフィルトレーション工程において生成する。2回目の濃縮工程は通常、最後のダイアフィルトレーション工程の後に行う。ここで、最後の濃縮は、必要に応じて1種以上の好適な助剤を用いて行う。
【0034】
本方法の間、ダイアフィルトレーション及び濃縮工程はあらゆる好適な数及び順番で連続して組み立てることができる。
【0035】
ダイアフィルトレーション及び濃縮工程の最適な数は、不純物の種類及び量に応じて、それぞれの触媒について当業者により決定することができる。
【0036】
例えば、ダイアフィルトレーション及び濃縮工程は、次のように設定することができる:
濃度c、量m並びにMC及びMA値は連続流体相(懸濁媒体)に関するものであり;懸濁した触媒成分は考慮していない。保持度R=1−(C透過液/C保持液)は懸濁媒体の成分についてはゼロ(R=0)であるが、これらは通常膜を制限なく通過するからである。触媒は本質的に完全に留められる(R=1)。
【0037】
X(t)=時間tにおける値;X(t=0)=時間t=0における値
濃縮:c(t)=c(t=0)×MC(t)R
c(t)=c(t=0) [R=0の場合]
MC(t)=m(t=0)保持液/m(t)保持液 [濃縮因子]
収率保持液=MC(t)(R-1)
収率保持液=MC(t)(-1) [R=0の場合]
ダイアフィルトレーション:c(t)=c(t=0)×e-MA(t)×(1-R)
c(t)=c(t=0)×e-MA(t) [R=0の場合]
MA(t)=m(t)透過液/m保持液 [ダイアフィルトレーショ
ン係数]
保持液=一定、時間に依存しない
収率保持液=e-MA(t)×(1-R)
収率保持液=e-MA(t) [R=0の場合]
【0038】
一般に、各濾過で生じる保持液は次の濾過に持ち越される。それぞれの個々の濾過から得られる本質的に触媒を含まない透過液は、別々に又は集められた透過液として後処理し、例えば生成物、懸濁媒体、ダイアフィルトレーション媒体及び/又は助剤を回収することができる。個々の透過液又は集められた透過液から回収される材料、例えばダイアフィルトレーション媒体は、膜濾過ユニットに好適なポイントで再供給するか、あるいは別の方法で利用するか又は処分することができる。当然ながら、透過液は更なる後処理をせずに廃棄することもできる。
【0039】
本発明の方法の後の触媒懸濁液は、反応媒体の問題となる成分(生成物、出発材料及び/又は有機溶媒等の不純物)の濃度が、懸濁液に対して、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、特に0.1重量%未満であることが有利である。
【0040】
本発明の方法を行った後、触媒懸濁液は、触媒濃度が懸濁液に対して1〜60%、好ましくは5〜50%、特に10〜40%であることが有利である。
【0041】
不活性化した触媒は、本発明の方法を行った後に水溶液中に存在していることが特に好ましい。
【0042】
膜濾過処理は、調整されるべき触媒の粒子サイズによるが、精密濾過(クロスフロー濾過)、限外濾過又はナノ濾過として行うことが有利である。
【0043】
調整は、不活性化した触媒について行うことが有利である。不活性化した触媒は、平均して、その触媒活性の損失が少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも10%である触媒である。当業者は、例えば経済的分析によって、不活性の程度がどのくらい超えた場合に調整を行うべきか、又は各触媒の消費量に基づいて、どの程度まで連続的調整を行うべきか決定することができる。触媒の消費量は典型的には生成物1メートルトン当たり10〜1000gの範囲である。
【0044】
本発明の方法は、広い範囲の様々な種類、グレード及びサイズの懸濁可能な触媒に適用することができる。触媒のサイズは広い範囲内で多様であってよい。そのため、平均粒子径が非常に小さい、例えばナノメートルの範囲である触媒を使用することができる。例えば、最大で0.5mmの平均粒子径を有する大きな触媒を使用することもできる。1nm〜500μm、好ましくは2nm〜100μm、特に好ましくは3nm〜50μmの粒子径を有する触媒は通常、本発明の方法により調整することができる。粒子径について示されている値は、粒子の50%が表示値よりも小さく、粒子の50%が表示値よりも大きいことを示すd50.0値である。粒子が凝集体で存在する場合には、凝集体の径を粒子径の代わりに用いることができる。d50.0値を測定する方法は当業者に知られている。
【0045】
触媒の活性組成物は通常、IUPACの元素の周期表の遷移元素群I.〜VIII.の元素を1種以上含んでいる。銅、クロム、モリブテン、鉄、ニッケル、白金、パラジウム、マンガン、ロジウム、ルテニウム、コバルト、イリジウム、バナジウム、オスミウム、銀、亜鉛、カドミウム、タングステン又はこれらの元素の混合物であることが好ましい。銅、コバルト、鉄、ニッケル、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、白金又はパラジウムの中から選択される少なくとも1種の元素を含む触媒が特に好ましい。触媒の金属含有量は通常、触媒の全重量に対して0.1〜100重量%、好ましくは0.2〜95重量%、特に好ましくは0.5〜95重量%である。
【0046】
触媒の活性組成物は更に、活性を高めるための促進剤として、元素の周期表の主族元素II.、III.、IV.及びVI、遷移元素群II.、III.、IV.及びV並びにランタノイドの中から選択される少なくとも1種の元素を含んでいることが好ましい。触媒の促進剤含量は通常5重量%以下、好ましくは0.001〜5重量%、特に好ましくは0.01〜3重量%である。触媒の促進剤含量は、使用される促進剤の種類により決められる分析方法により測定される。
【0047】
触媒は、全活性(all-active)触媒でも担持触媒でもよい。本質的に活性組成物からなる全活性触媒は、Raney(登録商標)、金属スポンジ、金属酸化物又は金属酸化物水和物の種類の触媒が特に好ましい。このような触媒の例は、Raney(登録商標)ニッケル、Raney(登録商標)銅、Raney(登録商標)コバルト、Raney(登録商標)ニッケル/モリブテン、Raney(登録商標)ニッケル/銅、Raney(登録商標)ニッケル/クロム、Raney(登録商標)ニッケル/クロム/鉄、酸化鉄、酸化コバルト又は金属ロジウムスポンジである。担持触媒の場合、活性組成物は、固体担体粒子の表面上に又は多孔質の担体粒子の表面上及び/又は内部に沈着している。例えば、白金、パラジウム、ニッケル又は他の活性組成物がドープされた酸化物セラミックス又はカーボンから構成される触媒担体である。
【0048】
触媒の製造は当業者に知られており、当業者に知られている方法で行うことができる。
【0049】
本発明の方法は、触媒により促進される様々な反応において使用される材料を回収するため、懸濁した触媒を調整するのに使用することができる。以下の表は例示にすぎないが、その反応の一部、例えば水素化、酸化、異性化及び水素化異性化、並びに各反応に好ましく使用される触媒を示している。
【0050】
【表1】

【0051】
本発明の方法は、1つ以上の反応器から触媒含有反応媒体の全部又は一部を連続的又は非連続的に取り出すことにより行うことが有利である。本発明の方法は連続的に行うことが好ましい。想定される反応器は、例えば、撹拌反応器、ループ型反応器、気泡塔反応器又はこれらの改良品若しくは組み合わせたものである。
【0052】
当業者は、例えば生成物1メートルトン当たりの触媒の消費量から、また経済的分析を用いて、取り出されるべき部分の最適なサイズを決定することができる。
【0053】
取り出された触媒懸濁液は、取り出された後、少なくとも一部の時間、固定した方法で反応器に連結された膜濾過ユニットで濾過することができる。膜濾過ユニットは、1つのみの濾過ユニット部材又は複数の濾過ユニット部材から構成することができるが、少なくとも1つのメンブレンフィルターを含んでいる。これは通常、1つ以上の反応器から調整された触媒の取り出し点まで及んでいる。
【0054】
選択される濾過ユニット部材の数及び種類は、当業者によって各々のニーズに合わせることができる。このようにして、複合構造を有する膜濾過ユニットを得ることができる。簡素が故に安価である膜単位ユニットであることが好ましい。本発明において、膜濾過ユニット部材はそれぞれ、膜濾過ユニットにおいて機能を発揮する膜濾過ユニットの取り外し可能な部分である。個々の濾過ユニット部材は、例えば、パイプ及び/又はホース連結部、シール材、圧力及び温度計並びに調節器、ポンプ、弁、フィルター及び更に供給ライン及び排出ラインを含んでいる。適当な膜濾過ユニットは、上記例示した部材を1つ、1つ超又は全て含んでおり、それぞれの1つ以上は好適な態様及び順序で存在する。膜濾過ユニットはまた、同時に又は交互に稼働し得る平行ライン、フィルター及び濾過路を含んでいてもよい。
【0055】
使用するメンブレンフィルターは、濾過の各条件下で安定であるフィルターハウジングを含んでいる。このような条件は、例えば、圧力、温度又は触媒懸濁液の種類及び組成である。フィルターハウジングは1つ以上の膜を含んでいてよい。フィルターハウジングは、好適な適応においては1つ以上の膜を含む容器であり、少なくとも一部の時間、固定した方法で1つ以上の他の濾過ユニット部材に連結されていてよい。膜は、フィルターハウジング内で恒久的に固定されていてよく、又は取り外し可能であってよい。膜は、平面状、ディスク状、管状、細長状又はロール状の形状を有していてよい。必要とされる面積によるが、フィルターは平行に又は連続して配置された複数の膜を含んでいてよい。好ましい実施の形態では、金属のフィルターハウジング内にエラストマーシール材を用いて挿入されることが好ましいセラミック膜、又はフィルターハウジング内に固定されることが好ましい金属膜を使用する。セラミック膜は、管状又は多流路の形状を有することが好ましく、金属膜は管状の形状を有していることが好ましい。
【0056】
膜は通常、1つのみの分離層(同質の自己支持膜)又は分離層及び少なくとも1つの支持構造体(複層複合膜)を含んでいる。機械的に安定でない薄い分離層を単層又は複層の多孔質支持構造体上に使用すると、透過流束が増大し、膜の機械的強度が確保される。この支持構造体は、分離層と同じ材料又は少なくとも1種の異なる材料からなってよい。支持構造体は通常、分離層よりも粗い細孔を有する。
【0057】
使用可能な分離層及び支持構造体の材料の組み合わせは、例えば:金属−金属、セラミック−金属、セラミック−セラミック、セラミック−カーボン、ポリマー−ポリマー、ポリマー−金属、ポリマー−セラミック、金属上のポリマー−セラミック、カーボン−カーボン、カーボン−金属、カーボン−セラミックであってよい。ポリマー、カーボン、セラミック又は金属を基礎とする同質の自己支持膜も使用することができる。
【0058】
有機分離層及び/又は支持構造体の材料として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、再生セルロース、シリコーン、ポリイミド又は同等の機能を有する材料を使用することができる。
【0059】
無機分離層及び/又は支持構造の材料の例は:α−Al23、γ−Al23、ZrO2、TiO2、SiC、混合セラミック材料、ステンレス鋼、ニッケル、金属合金及びカーボンである。例えば、(MF=精密濾過膜、UF=限外濾過膜、NF=ナノ濾過膜):
【0060】
【表2】

【0061】
分離層の細孔径は通常、主に最小の触媒粒子の各サイズに依存する。分離層の好適な細孔サイズが選択された場合には、混濁流出に起因する触媒の損失を無視することができる。本発明において、混濁流出という用語は、分離層の細孔サイズが悪く選択された場合に膜を通過可能となることにより、透過液中に現れる触媒粒子のことをいう。この混濁流出及び関連する濾過媒体のブロッキング(遮断)は、固形物を除去するための標準的な濾過法を使用する場合に、例えば、フィルタープレス、加圧フィルター、キャンドルフィルター、遠心分離及びディスクフィルターを使用する場合に、更に固形物を濃縮するための標準的な濾過法を使用する場合に、例えば、分離機、遠心分離機及びデカンターを使用する場合に、高い範囲まで生じる。触媒粒子は通常、工業用反応器内で摩耗し、1μmよりもずっと小さい径の粒子画分が形成し、またD50.0が<1μmである非常に微細な触媒の場合には必然的に存在するので、上記問題はD50.0が<50μmである触媒粒子の場合に特に明白である。理想的には、これら触媒の損失は、適切な細孔サイズを有する膜を使用した場合には完全に回避される。
【0062】
触媒粒子のサイズ分布によるが、使用する分離層は0.5nm〜10μm、特に1nm〜5μm、好ましくは2nm〜2μmの細孔径を有することが好ましい。分離層の細孔サイズは、有利には、最小の触媒粒子のサイズよりも小さいべきである。触媒粒子が凝集形態で存在する場合、好ましい細孔サイズは、最小の触媒粒子のサイズではなく、最小の凝集体のサイズに依存する。示された分離層の細孔サイズは通常、その細孔の90%が示された細孔径よりも小さい径に基づくものである。膜の分離層は、膜の最も小さい細孔を含む膜の層である。膜の細孔サイズ又は分離限度は、当業者に知られている方法で測定することができる。
【0063】
膜を選択する場合、分離層の細孔サイズ及び触媒粒子のサイズ分布だけでなく、懸濁媒体又は液相の組成、圧力条件、温度及び存在するあらゆる助剤等の濾過条件を考慮する必要がある。好適な膜は、有利には、その分離特性、すなわちその分離限度が上記例示した要素のいずれかにおいて著しく変化しないことが有利である。
【0064】
分離限度kDは、90%の保持度(R)を有する溶解した試験物質の分子量である。ここで、Rは、透過液中の濃度を保持液中の濃度で除した値を1から引いたものである。
【0065】
分離限度kDと細孔径の間の相関性は当業者に知られている。そのため、例えば、2.0〜1.2μmの細孔サイズは、1000kDよりも高い分子量に使用され、0.6μmの細孔サイズは1000kDに使用され、0.2μmは400kDに使用され、0.1μmは200kDに使用され、0.05μmは100kDに使用され、0.01μmは20kDに使用され、0.05μmは10kDに使用される。
【0066】
本発明の方法において、濾過の条件、例えば圧力、温度又は流速は、必要があれば、反応システムにおける条件とは関係なく選択することができる。この無関係性により、条件を各濾過用に最適化することができる。例えば、温度及び/又は圧力は上昇又は低下させることができ、流速は最適に選択することができ、懸濁媒体は交換することができ、また/あるいは保持液及び/又は透過液の性質及び組成は助剤の添加により最適化することができる。当業者は、各場合において最適である濾過条件を選択することができる。この点に関する更なる情報は技術文献で得ることができる。
【0067】
濾過は様々な圧力で行うことができ、本方法の各濾過において個別に選択及び最適化することができる。そのため、圧力は前の又は後の濾過中の圧力と同一でも異なっていてもよく、本方法の各々の濾過用に濾過中であっても変化し又は変更することができる。
【0068】
異なる名称がつけられる種々の圧力は通常、濾過中にフィルターに用いられる。透過圧は膜の透過側の圧力であり、保持圧は膜の保持側の圧力である。濾過は1〜100bar、好ましくは1〜50barの範囲の保持圧で行うことができる。膜透過圧は、フィルターへの流入部及びフィルターからの流出部での圧力の保持側の算術平均である。膜透過圧は同様に各々の濾過用に最適化することができ、本方法の他の濾過における膜透過圧と同一でも異なっていてもよい。膜透過圧は、例えば、0.1bar以上、特に0.2〜50bar、好ましくは0.5〜25barであってよい。選択すべき圧力条件は本質的に膜の種類、膜の細孔径、触媒濃度、膜モジュールにおける流体力学的条件及び全ての濾過ユニット部材の機械的安定性に依存する。通常は膜透過圧が高くなると透過流束が増加する。必要とされる圧力はポンプ機能及び/又は重力により生じさせることができる。
【0069】
温度は、本発明の方法の間に行われる各濾過用に独立して選択及び最適化することができる。通常は温度が高いと透過流束が増加する。そのため、温度は、前の及び/又は後の濾過工程における温度と同一でも異なっていてもよい。選択される値は主に、各場合に用いられる圧力条件下において存在する各々の材料の溶解性並びに融点及び沸点に依存する。0〜200℃の範囲、有利には10〜180℃の範囲、好ましくは20〜150℃の範囲、特に好ましくは30〜120℃の範囲の温度を選択することができる。
【0070】
濾過においては、ごく薄いか又は目立たない被覆層しか膜上に形成されないように条件を設定することが好ましい。被覆層は、膜の上及び/又は中に沈着する固体物質又はゲルを含み、濾過に不利な影響を与え得る。この物質は触媒懸濁液中に存在するあらゆる固体物質又はゲルであり得る。例えば、その物質は触媒を含み得る。ゲル状沈着物は、例えば膜によって保持される高分子量の溶解成分から形成され、これにより膜上に蓄積する。平面状又はディスク状の膜の形状を有するフィルター及び膜の場合には、撹拌及び/又はせん断要素、及び/又は例えば回転若しくは振動モジュールによる膜若しくはフィルターの動作を被覆層を防止するために用いることもできる。
【0071】
また、膜表面における触媒懸濁液の高い流速及び関連するせん断を用いることができる。一般に、0.2〜20m/sの範囲の流速が選択される。適切な流速は使用するフィルター及び使用する膜によって決まる。
【0072】
ロール状の形状を有するフィルター及び膜は、0.2〜2m/sの流速で使用することが好ましい。管状の形状を有するフィルター及び膜は、1〜6m/sの好ましい流速で使用する。ロータリーフィルターは5〜20m/sの流速で使用することが好ましい。
【0073】
場合により異なる複数のフィルターを使用する場合、流速はそれぞれのフィルターに適合させてよい。
【0074】
当業者は、流速を測定及び制御する利用可能な好適な手段を有しているであろう。被覆層を除去するために、本発明の方法はまた逆流を生じさせてよく、これは透過圧を保持圧よりも上昇させることにより引き起こすことができる(透過液バックフラッシュ)。
【0075】
被覆層を減少させるため又は防止するための上記手段は、個々に、組み合わせて又は交互に使用することができる。被覆層は、同一の若しくは異なる手段又は同一の若しくは異なる手段の組み合わせによって、膜濾過ユニットの各フィルターに影響を受け得る。
【0076】
本発明の方法の更なる好ましい実施の形態は、1種以上の好適な助剤を添加することを含む。本発明において、助剤という用語は、濾過の前又は間に触媒懸濁液に添加され且つ濾過にプラスの影響を与えるために好適である全ての固体、液体又は気体のことをいう。濾過は、例えば、粘度を低下させることにより好都合な影響を受け得る。同様に、助剤又は複数の助剤は触媒懸濁液を安定化させるために使用することができる。ここで、触媒懸濁液の安定化は、触媒粒子の沈降速度等の物理的パラメータ及び/又はpH等の化学的パラメータに関するものであり得る。少なくとも1種の助剤を本発明において使用することにより、例えば、保持液中の触媒の最終濃度がより高くなる。本発明において、触媒の最終濃度は、保持液中の触媒濃度が、選択した濾過条件下では更に高くなり得ない触媒濃度である。
【0077】
特に保持液側の触媒濃度がより高い場合には、助剤を使用しない場合よりも1種以上の助剤を使用した方がより高い特有の透過流束を得ることができる。1種以上の助剤を保持液中の触媒濃度が低い場合に使用するときは、助剤を使用しない場合よりも透過流速がより低くなることが生じ得る。助剤を使用しないときよりも助剤を使用する場合に高い透過流速が得られる保持液中の触媒濃度は限界濃度と称する。
【0078】
同様に、膜濾過ユニット内部の沈着を防止するために1種以上の助剤を使用することができ、これにより膜濾過ユニットのメンテナンス間隔及び寿命を長くすることができる。このような沈着物には、例えば、個々の材料若しくは材料の混合物又は触媒懸濁液中に初めから存在する構成成分、例えば反応生成物、出発材料又は無機塩を含み得る。これらはまた本方法を行っている間に形成し又は添加され得る。
【0079】
界面活性剤、湿潤剤及び分散剤かなる群から選択される少なくとも1種の助剤の存在下で少なくとも1回の濾過を行うことが有利である。好適な助剤は原理的には、懸濁した触媒の濾過特性に対して有利な影響を有するイオン性及び非イオン性分子の及び高分子の化合物である。
【0080】
好適な助剤は、例えば、非イオン性分子の又は高分子の界面活性剤又は分散剤であり、例えばエトキシル化脂肪アルコール、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールブロックのサイズにより性質を調整することができるポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックポリマーである。
【0081】
他の好適な助剤は、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、第4級アンモニウム基を有するイオン性分子の又は高分子の界面活性剤又は湿潤剤又は分散剤である。これらとしては、例えば:C12−C18−アルキルスルホン酸及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸若しくはアルキルナフタレンスルホン酸又はその塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0082】
少なくとも1種のα、β−不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、メサコン酸及びイタコン酸を基礎とするポリカルボン酸又はその塩が好ましい。アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はこれらの混合物を基礎とするポリアクリレートを使用することが好ましい。更なる好適な共重合可能な化合物は、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−ビニル−4−メチルイミダゾール、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソブテン及びスチレンである。
【0083】
ポリビニルホスホン酸及び加水分解したポリビニルホルムアミド若しくはエチレンイミンを基礎とする高分子アミンもまた好適である。他の好適な共重合可能な化合物は、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−ビニル−4−メチルイミダゾール、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソブテン及びスチレンである。
【0084】
好適な助剤の例は:
【0085】
【表3】

【0086】
PEG=ポリエチレングリコール、PPG=ポリプロピレングリコール
【0087】
好適な助剤の濃度は、触媒に対して、0.1〜50重量%、0.2〜40重量%、特に好ましくは0.25〜30重量%、特に0.5〜20重量%である。
【0088】
好適な助剤の種類及び濃度は、各場合における条件に依存し、各濾過のために最適化しなければならない。使用可能な助剤の性質についての情報は当業者に知られており、適切なデータバンク及び/又は技術文献から得ることができる。
【0089】
ある実施の形態では、界面活性剤又は分散剤Tamol(登録商標)NH7519、Sokalan(登録商標)CP9及びPuronic(登録商標)6100は、水中のカーボンに担持された触媒(例えばNorit(登録商標)SXに担持された貴金属)に好適である。他の担持触媒、例えば酸化物セラミックを基礎とするもの、又はRaney(登録商標)Ni等の全活性触媒、又は水以外の溶媒の場合には、他の界面活性剤又は分散剤が有利であり得る。
【0090】
従って、本発明はまた、懸濁した触媒の調整において、界面活性剤、湿潤剤及び/又は分散剤を、特に粘度を低下させるため、触媒懸濁液を安定化させるため及び/又は膜濾過ユニット内部での沈着を防止するために使用する方法を提供し、これにより著しく高い最終濃度が達成されるという利点が得られる。そのため、これらは最後の濾過段階、例えば最終濃縮段階で使用することが好ましい。
【0091】
本発明の方法は連続的又は非連続的に行うことができる。非連続的稼働においては、反応システムから取り出された触媒懸濁液を、1つ以上のフィルターが組み入れられたポンプ式循環路において循環容器として機能する容器内に仕込む。触媒懸濁液はポンプによって循環することができ、透過液は取り出すことができ、必要に応じて助剤や懸濁媒体等の液体又は固体材料をポンプ式循環路の好適な位置で導入することができる。このために好適な位置は、例えば、フィルターの上流のライン又は容器あるいはフィルターそれ自体である。所望とする触媒の濃度及び/又は所望とする懸濁媒体の組成が得られるまで、触媒懸濁液をポンプにより循環する。そのため、例えば、濾過によって又は懸濁媒体の一部又は全ての成分を同一又は異なる組成で添加することによって液体の成分を除去することにより、触媒濃度を変更することができる。更に、性質の変化は、例えば、触媒懸濁液の化学的又は物理的性質、例えばpH又は粘度を変更することによって、1種以上の助剤を添加することによって生じさせることができる。また、温度又は圧力等のパラメータを変更することもできる。これらの変更は、いずれの場合においても単独で又は組み合わせて行うことができる。
【0092】
本方法を連続的に行う場合、反応システムから取り出された触媒懸濁液を膜濾過ユニットの1つ以上のフィルターを通して又は沿って1度流通させる。ここで、触媒の濃度又は触媒懸濁液の濃度若しくは性質を変えるために、上記で例示した全ての手法を単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0093】
更に、触媒は、1つ以上の連続的に稼働する反応器から有利に取り出すことができる。
【0094】
要約すると、調整された使用済触媒は、触媒懸濁液、好ましくは水性触媒懸濁液として、特に好ましくは本質的に触媒と水、及び必要により添加された分散剤又は界面活性剤からなる触媒懸濁液として、最後の濾過の後に膜濾過ユニットから取り出すことができ、そして後処理及び/又は処分を直接又は乾燥後に行うことができる。
【0095】
従って、本発明は、全ての好ましくは連続的に稼動された懸濁液触媒作用による反応において万能な手法で使用することができる、使用済の懸濁した、特に微細な触媒を調整及び排出する簡易で安価な方法を提供する。
【0096】
反応システムにおける触媒を保持し、理想的に触媒を含まない濾過液を生成するフィルターが、例えば、対応する反応器において形成し得るD50.0が<5μmである触媒粒子を有する特に微細な触媒又は磨耗した触媒画分を好ましく保持することができるメンブレンフィルター、例えば精密フィルター、クロスフローフィルター、限外フィルター又はナノフィルターである場合に本発明の方法は特に有利である。
【0097】
触媒を排出する既存の方法と比較して、本発明は、濾過条件を反応器における条件とは独立して選択することができ、効果的な調整のために最適化することができるという特別な利点を有する。これは、触媒濃度、ダイアフィルトレーション媒体、圧力、流量及び温度等のパラメータと、膜の材料、膜の面積、表面張力又は触媒懸濁液の、保持液の及び/又は透過液のイオン強度等のパラメータの両方に適用される。パラメータが本発明の方法において最適に選択される場合、本方法は、慣用の方法の場合と比べてより小さい濾過ユニットを使用することが可能となり、濾過ユニットの入手及び定期的な交換にかかる費用が低減される。また、本方法により、使用済触媒を本質的に損失なく調整することができる。同様に、膜濾過ユニットは、例えば、反応器に付属させることができるため、完全に又は部分的に不活性化した触媒を、反応器から連続的又は非連続的に取り出すことが可能となる。これにより、一定の又は凡そ一定の能率で反応器を連続的に稼動させることができ、これにより費用のかかる反応の中断を回避することができる。
【0098】
ダイアフィルトレーションの要素により、膜濾過ユニットからあらゆる所望とする懸濁媒体中の触媒を高純度で得ることができる。ヒト及び動物の健康及び環境に対して害のない懸濁媒体を選択した場合には、触媒の取扱いが助けられ、触媒をその後の後処理のために調製して材料の回収又は処分をすることができる。
【0099】
図1の説明:
図1は濾過ユニットの略図を示している。この濾過ユニットは、循環容器(K)、ポンプ(Pu1)、サーモスタット(Th)、メンブレンフィルター(M)、弁(V1、V2、V3)及び圧力調節弁(D1、D2)を含むポンプ式循環路を含む。温度計(T)、流量計(F1)及び圧力計(P1)がメンブレンフィルターの上流の循環路に組み込まれている。ポンプ式循環路に加えて、濾過ユニットは、ポンプ(Pu2)により循環容器(K)に計量導入することができるダイアフィルトレーション媒体用の貯留タンク(Vb)を含む。メンブレンフィルターの下流の保持液の圧力は圧力計(P2)により測定され、圧力計(P3)により測定され、そして圧力調節弁(D2)により調節される。メンブレンフィルター(M)の下流の濾過液流は流量計(F2)により測定される。得られた濾過液を濾過液流出部(A)を介して濾過液コンテナ(B)に排出し、天秤(W)により計量する。
【実施例】
【0100】
膜濾過によって触媒懸濁液を調整する実施例を、図1に示す濾過ユニットを使用して行った。
【0101】
様々なメンブレンフィルターを膜濾過ユニットに使用した。例えば、異なる分離限度を有するセラミックの単流路管(外径=10mm、内径6〜7mm、長さ=1000mm)を有するメンブレンフィルターを使用した。メンブレンフィルターにおける触媒懸濁液の平均流速を1〜6m/sに設定し、膜透過圧を0.5〜4barに設定し、温度は、濾過によるが40〜90℃に設定した。通常、触媒懸濁液を循環路に導入し、膜濾過ユニットを透過液流出部(A)を閉じて稼働させた。触媒濃度を増加させる場合には、透過液流出部(A)を介して膜濾過ユニットから透過液を取り出した。ダイアフィルトレーションの場合には、透過液を膜濾過ユニットから取り出し、ダイアフィルトレーション媒体を取り出された透過液の量に対応する量で導入した。助剤、例えば界面活性剤又は湿潤剤又は分散剤を触媒懸濁液に任意に添加した。
【0102】
実施例で示す重量百分率(重量%)は、他に示さない限り、触媒懸濁液の全重量に対するものである。
【0103】
実施例1
約3重量%の懸濁した触媒(担体としてのカーボンに担持されたPd)、約50重量%の水素化生成物及び約47重量%のメタノールを含む、懸濁触媒作用による二重結合の水素化(3−[4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロペナールの3−[4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナールへの水素化)で生じた反応媒体を、3段階の濃縮及びダイアフィルトレーション処理に付した。このため、上記した反応媒体を、40℃、膜透過圧1bar及び流速4m/sで、細孔径が100nmであるAtech Innovations製Al23膜での濾過に付した。
【0104】
第一段階において、触媒を、約60kg/m2/hの平均透過流束で反応媒体中で約3重量%から約20重量%に濃縮した。第二段階において、反応媒体を交換係数3で一定の触媒濃度でメタノールに交換した。第三段階において、メタノールを同様に交換係数3で一定の触媒濃度で水に交換した。これにより、触媒濃度が20重量%であり、生成物濃度が約0.2重量%である水に懸濁した触媒懸濁液を得た。この3つの段階において測定した透過流束を以下の表に示す。
【0105】
段階1(濃縮):
1bar及び40℃
【0106】
【表4】

【0107】
段階2(メタノールを用いたダイアフィルトレーション)
1bar、40℃及び触媒濃度約20重量%
【0108】
【表5】

【0109】
段階3(水を用いたダイアフィルトレーション)
1bar、40℃及び触媒濃度約20重量%
【0110】
【表6】

【0111】
実施例2:
約6重量%の懸濁した触媒(担体としてのカーボンに担持されたRu)、約70重量%の水素化生成物、約6重量%の溶解した助剤ベース及び約18重量%のメタノール(溶媒)を含む、アルデヒドのアルコールへの懸濁触媒作用による水素化(シトラールのゲラニオール/ネオラールへの水素化)で生じた反応媒体を2段階のダイアフィルトレーション処理に付した。このため、上記反応媒体を60℃、膜透過圧1bar及び流速4m/sにおいて、細孔径が100nmであるAtech Innovations製Al23膜での濾過に付した。
【0112】
最初に、反応媒体を交換係数3で一定の触媒濃度でメタノールに交換した。これにより、透過流束が約80kg/m2/hから約240kg/m2/hに増え、懸濁液に対する生成物濃度は約70重量%から約2.9重量%に減少した。次に、メタノールを同様に交換係数3で一定の触媒濃度で水に交換した。これにより、透過流束が約240kg/m2/hから約460kg/m2/hに増え、懸濁液に対する生成物濃度は約2.9重量%から約0.1重量%に減少した。これにより、約0.1重量%の生成物しか含まない約6重量%濃度の水に懸濁した触媒懸濁液を得た。
【0113】
【表7】

【0114】
実施例3:
約5重量%の懸濁した触媒(Ni担持ZrO2担体)、約60重量%の水素化生成物及び約35重量%の水を含む、ニトロ芳香族の懸濁触媒作用による水素化(ジニトロトルエンのジアミノトルエンへの水素化)で生じた反応媒体を膜濾過処理に付した。このため、上記反応媒体を、80℃、膜透過圧1bar及び流速4m/sにおいて、細孔径が100nmのAtech Innovations製Al23膜での濾過に付した。
【0115】
最初に、反応媒体を交換係数5で一定の触媒濃度で水に交換した。これにより、透過流束が約190kg/m2/hから約680kg/m2/hに増え、懸濁液に対する生成物濃度は約60重量%から約0.3重量%に減少した。次に、触媒を約5重量%から約30重量%に濃縮した。これにより、透過流束が約680kg/m2/hから約180kg/m2/hに減少した。これにより、反応生成物を約0.3重量%しか含まない約30重量%濃度の水に懸濁した触媒懸濁液を得た。
【0116】
段階1(ダイアフィルトレーション)
【0117】
【表8】

【0118】
段階2(水中での濃縮)
【0119】
【表9】

【0120】
実施例4:
約25重量%の懸濁した触媒(Raney(登録商標)Ni)、約75重量%の水素化生成物を含む、ニトリルの懸濁触媒作用による水素化(アジポニトリルのヘキサメチレンジアミンへの水素化)で生じた反応媒体を2段階のダイアフィルトレーション及び濃縮処理に付した。このため、反応媒体を60℃、膜透過圧1.5bar及び流速4m/sにおいて、細孔径が100nmであるAtech Innovations製Al23膜上での濾過に付した。
【0121】
第一段階において、反応媒体を交換係数5で一定の触媒濃度で水に交換した。これにより、透過流束が60kg/m2/hから1600kg/m2/hに増え、懸濁液に対する生成物濃度は約75重量%から約0.1重量%に減少した。第二段階において、触媒を約25重量%から約40重量%に濃縮した。これにより、透過流束が1600kg/m2/hから1200kg/m2/hに減少した。これにより、水素化生成物を約0.1重量%しか含まない約40重量%濃度の水に懸濁した触媒懸濁液を得た。
【0122】
実施例5:
様々な種類の触媒及び様々な懸濁媒体と組み合わせての種々の助剤の適性は、粘度を測定することにより決定することができる。ここで、試験すべき助剤を触媒懸濁液に添加することにより粘度が低下することは、助剤の適性の程度が高いことを示している。
【0123】
約17重量%濃度のNoritSX−水懸濁液について、粘度を40℃において助剤の濃度に応じて測定した。NoritSXは貴金属触媒用の典型的なカーボン担体であるため、触媒をシミュレートするのに好適である。使用したNoritSXは平均径が約50μmであった。懸濁液中のNoritSXの量は懸濁液全重量を基準として17重量%に設定した。
【0124】
助剤としてBASF Aktiengesellschaft製の次の製品を使用した。
【0125】
Tamol(登録商標)NH 7519(ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物Na塩)
Sokalan(登録商標)CP9(マレイン酸−オレフィン共重合体Na塩)
Sokaran(登録商標)CP10(変性ポリアクリル酸Na塩)
Pluronic(登録商標)6100(10%のPEGを含むブロック重合体:PEG−PPG−PEG)
Pluronic(登録商標)10500(50%のPEGを含むブロック重合体:PEG−PPG−PEG)
Pluronic(登録商標)6800(80%のPEGを含むブロック重合体:PEG−PPG−PEG)
PEG=ポリエチレングリコール、PPG=ポリプロピレングリコール
【0126】
粘度をHacke製ViscotesterVT01を使用して測定した。
【0127】
【表10】

【0128】
【表11】

【0129】
【表12】

【0130】
【表13】

【0131】
【表14】

【0132】
【表15】

【0133】
次の評価は、NoritSXの濃度に対するTamol(登録商標)NH4519の添加又は非添加でのNoritSX−水懸濁液の粘度の依存関係を示している。ここで、NoritSX1kg当たりのTamol(登録商標)NH7519のg数で評価されるTamol(登録商標)NH7519のNoritSXに対する比は55に設定した。
【0134】
粘度はHacke製ViscotesterVT01を用いて測定した。
【0135】
【表16】

【0136】
【表17】

【0137】
懸濁液全重量を基準としてNoritSXの量が20重量%の場合において、添加により、粘度が130mPa・sから13.5mPa・sに減少した。すなわち、約10分の一に減少した。
【0138】
実施例6:
5重量%濃度のNoritSX触媒担体の水懸濁液を、界面活性剤を添加して又は添加せずに濃縮した。Tamol(登録商標)NH7519(BASF Aktiengesellschaftの製品)を界面活性剤として使用した。使用したNoritSXは初めに約50μmの平均径を有しており、工業用反応器での磨耗をシミュレートするために、実験室用鋸歯状リング分散装置(Ultra−Turrax)を用いて、水性懸濁液中で平均径約5μmまで粉砕した。膜濾過を60℃、膜透過圧1bar及び流速4m/sにおいて、細孔径が50nmであるAtech Innovations製ZrO2膜で行った。添加しなかった場合は最終濃度は約20重量%となった。この濃度においては、触媒懸濁液がもはや安定的手法で濾過することができないことが認められた。すなわち、膜上の被覆層の厚さが時間と共に増し、最終的には膜を完全に遮断することとなった。NoritSX1kg当たり60又は120gの界面活性剤を添加すると、得られる最終濃度を約20重量%から約32又は37重量%まで上昇させることが可能となった。NoritSX1kg当たり60又は120gの Tamol(登録商標)NH7519の助剤を添加した場合において約17重量%又は約11重量%のNoritSXの限界濃度を超える場合には、界面活性剤を含まない懸濁液と比較して時に非常に高い透過流束を得ることができた。例えば、20重量%濃度の触媒懸濁液の場合、NoritSX1kg当たり120gのTamol(登録商標)NH7519を添加することによって透過流束が約60kg/m2/hから約300kg/m2/hに増えた。
【0139】
NoritSX1kg当たりTamol(登録商標)NH7519が0g
【0140】
【表18】

【0141】
NoritSX1kg当たりTamol(登録商標)NH7519が60g
【0142】
【表19】

【0143】
NoritSX1kg当たりTamol(登録商標)NH7519が120g
【0144】
【表20】

【0145】
実施例7:
4段階の濃縮及びダイアフィルトレーション処理において、2重量%の触媒(Pd担持カーボン担体)を含む、懸濁した触媒による二重結合の水素化(プソイドイオノンのテトラヒドロゲラニルアセトンへの水素化)で生じた溶媒を含まない反応媒体を濃縮及び調整した。細孔径が50nmであるAtech Innovations製TiO2膜を膜として使用した。膜濾過を60℃、膜透過圧1bar及び流速4m/sで行った。
【0146】
第一段階において、触媒を2重量%から12重量%に濃縮した。これにより、透過流束が最初の値である約160kg/m2/hから55kg/m2/hまで減少した。第二段階において、一定の触媒濃度で交換係数3で反応媒体をイソプロパノールに交換し、第二段階の初めの透過流束が55kg/m2/h及び第二段階の終わりの透過流束が120kg/m2/hであった。第三段階において、そのプロパノールを一定の濃度で交換係数3に水に交換した。120kg/m2/hの透過流束が第三段階の初めで得られ、180kg/m2/hの透過流束が第三段階の終わりで得られた。これにより、約12重量%濃度の水に懸濁した触媒懸濁液が得られ、これは、第四段階で約12重量%から約15重量%まで濃縮され、第四段階の初めでは透過流束は180kg/m2/hであり、終わりでは55kg/m2/hであった。
【0147】
【表21】

【0148】
第四段階において、濃度が約15重量%である触媒懸濁液はもはや助剤の添加なしでは安定的手法で濾過することはできなかった。すなわち、膜上の被覆層の厚さが時間と共に増し、最終的に膜を完全に遮断することとなった。
【0149】
助剤の影響を確認するため、第四段階で生じた保持液を、この段階で分離された透過液で再度希釈して濃度を約12重量%(第四段階の前の値)とし、次に助剤Tamol(登録商標)NH7519を、触媒1kg当たり最大48gの濃度まで段階的に添加した。助剤の添加は定常条件下で行った。すなわち、透過液をポンプ式循環路に再供給した。
【0150】
【表22】

【0151】
ここで、透過流束は、触媒1kg当たり助剤を48g添加するまで減少したが、一方で、触媒懸濁液の性質は変化し、濃縮を再度行った場合に膜の遮断なしで得られた保持液中の触媒の最終濃度は約15重量%から30重量%近くまで増加した。
【0152】
またここで、限界濃度(この場合約14重量%)より低い場合は助剤(Tamol(登録商標)NH7519)を添加すると透過流束が減少したが、この限度濃度より高い場合は透過流束は著しく高くなり、更に、膜濾過ユニットがより問題なく稼動され、その結果、非常に高い最終触媒濃度が得られた。
【0153】
【表23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁した触媒を調整する方法であって、触媒を含む反応媒体の少なくとも一部を1つ以上の反応器から取り出し、少なくとも一部が不活性化した懸濁した触媒を少なくとも1回の膜濾過によって分離及び浄化し、前記膜濾過の少なくとも1回はダイアフィルトレーションとして行うことを特徴とする懸濁した触媒の調整方法。
【請求項2】
少なくとも一回の濃縮工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一回の濃縮工程を最初の膜濾過の前に行い、少なくとも一回の濃縮工程を最後の膜濾過の後に行う請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ダイアフィルトレーション媒体は、相の境界なく懸濁媒体と混和する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、最後の膜濾過の後に、アルコール、ケトン、エーテル、ニトリル、酸アミド及び水からなる群から選択される液体の懸濁媒体中に存在する請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
調整方法を行った後の触媒懸濁液は、不純物濃度が懸濁液に対して1重量%未満である請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一回の濾過を、界面活性剤、湿潤剤及び分散剤からなる群から選択される少なくとも1種の助剤の存在下で行う請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
触媒に対して0.1〜50重量%の助剤を使用する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
エトキシル化脂肪アルコール、ポリエチレングリコール−ポリプロレングリコールブロックポリマー、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基又は第4級アンモニウム基を有する化合物、ポリカルボン酸、ポリビニルホスホン酸及び/又は加水分解したポリビニルホルムアミド若しくはエチレンイミンを基礎とする高分子アミンを助剤として使用する請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
調整方法を行った後、触媒が水溶液中に存在する請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
触媒が、水素化、酸化、異性化及び/又は水素化異性化に使用されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
触媒を1つ以上の連続的に稼働された反応器から取り出す請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
懸濁した触媒の調整において、粘度を低下させるために、触媒懸濁液を安定化させるために、膜濾過ユニット内部での沈着を防止するために及び/又は最終触媒濃度を上昇させるために、界面活性剤、湿潤剤及び/又は分散剤を使用する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−525245(P2012−525245A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507706(P2012−507706)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055525
【国際公開番号】WO2010/125025
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】