説明

膨潤可能なコーティングを有する薬学的組成物

本発明は、含まれる薬学的活性剤成分を酸性胃液による分解から保護するコーティングを有する固形薬学的剤形に関する。特に、この剤形は、液体と接触すると同時に膨潤する物質を含むコーティングを有する。本発明により、薬学的活性剤および崩壊剤を含むコア、このコアを囲む膨潤可能なコーティング、およびこの膨潤可能なコーティングを囲む腸溶性コーティングを有する酸存在下では不安定な薬学的活性剤を含む薬学的剤形が提供される。本発明の好ましい態様は、この剤形が胃の中にある間は薬学的活性剤が実質的に保持されるが、この剤形が、pHが少なくとも約5である環境に入ると、薬学的活性剤が速やかに放出される剤形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願では、いくつかの特許および他の文書を説明する。これらの文書の内容は参照によって本明細書に引用される。
【0002】
本発明は、含まれる薬学的活性剤成分を酸性胃液による分解から保護するコーティングを有する固形薬学的剤形に関する。特に、この剤形は、液体と接触すると同時に膨潤する物質を含むコーティングを有する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
多くの薬学的活性剤成分は酸性環境において化学的に安定ではない。このため、胃液との接触から物質を保護するためのいくつかの手段なしでは、効果的な経口投与が困難である。しかしながら、このような手段を利用すると、形から物質が放出されるまで体内吸収が始まらないため、身体への物質の有効性を遅延させ、望ましくない影響を一般に及ぼす。
【0004】
酸性胃内容物により影響を受ける薬学的剤形を保護するためのいくつかのアプローチが発明され、その剤形が十二指腸、空腸、あるいは回腸などのよりアルカリ性の環境に入った後にのみ活性成分を利用できるようになった。これには、活性薬剤を含む剤形または粒子を、酸の攻撃には強いが、よりアルカリ性の環境中では溶解または浸透性となる材料でコーティングする工程が一般に含まれる。
【0005】
Lovgrenらは特許文献1で、酸攻撃に強いが、中性またはアルカリ性媒体中で速やかに溶解するオメプラゾールの安定な医薬品製剤について述べている。オメプラゾールの粒子は水溶性のアルカリ反応性物質と混合されている。この粒子は最終コーティング材料の中に存在する薬剤と酸性基の接触を予防するために、pH緩衝ゾーンとして作用する「分離層」が塗布されている。最終的に2層構成の組成物が酸と反応しない腸溶ポリマーコーティングで塗布される。
【0006】
Saekiらの特許文献2は胃酸との接触から保護され、酸に不安定である薬剤の組成物に関する。この薬剤を含むコアははじめに水溶性の低い材料の微粒子でコートされ、続いてエチルセルロースなど腸内で塗膜形成する成分が塗布される。
【0007】
Mazerらは特許文献3で、β−ラクタム抗生物質などの酸感受性薬剤のための徐放システムを開示している。薬剤を含むコアを形成し、プロラミンでコアを塗布し、メタクリル酸コポリマーなどの腸溶物質の最後に外面コーティングを施すことにより、シロップ剤あるいはその他の製剤への封入に適するコートされた薬剤粒子が調製される。任意に、腸溶性コーティング層の上にプロラミンの追加コーティングを施すことができる。コートされた粒子が高pH環境に入った後に薬剤の放出が開始され、長時間持続する。
【0008】
Oshlackらの特許文献4では、薬剤を含むコアを有する徐放製剤、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性細孔成形加工物質を任意に含むエチルセルロースの徐放疎水性コーティングを開示している。任意に、このコアは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの物質の中間「障壁」コーティングを有することができるが、最終生産物の溶出速度に影響しないことが好ましい。
【0009】
Meyerらの特許文献5では、薬剤物質の不快味をマスクするが、その薬剤は胃の酸性液体と接触すると同時に直ちに生物学的利用が可能である経口製剤について示している。この製剤は、薬剤を含むコア粒子にプロラミンおよび非重合性可塑剤の混合物を塗布することにより調製される。
【0010】
Friendらの特許文献6では、薬剤は上方胃腸管には放出されないが、結腸の疾患を直接治療するために下方胃腸管の中で放出される剤形の製剤を開示している。この剤形は薬剤および大量の植物由来の親水コロイドを含むコア錠剤を有し、任意に腸溶性物質のフィルムで塗布されている。
【0011】
Lernerらは、特許文献7において、胃腸管の特定部位に薬剤を送達する組成物を開示しており、薬剤を含むコアは、水不溶性の親水性物質の粒子が埋設された水不溶性の材料で塗布されている。この塗布されたコアには、任意に腸溶性ポリマーをさらに塗布することができる。
【0012】
Hsiaoらの特許文献8では、酸感受性薬剤のための経口製剤を開示しており、製剤原料が燐酸三ナトリウムなどのアルカリ性材料と混合され、錠剤などのコア上に塗布され、続いて腸溶性コーティングが製剤原料層に塗布される。
【0013】
ゼイン由来のフィルム、シート、および物品の製造方法が、Paduaらの特許文献9に開示されている。
【特許文献1】米国特許第4,786,505号明細書
【特許文献2】米国特許第5,035,899号明細書
【特許文献3】米国特許第5,160,742号明細書
【特許文献4】米国特許第5,472,712号明細書
【特許文献5】米国特許第5,609,909号明細書
【特許文献6】米国特許第5,811,388号明細書
【特許文献7】米国特許第5,840,332号明細書
【特許文献8】米国特許第6,346,269号明細書
【特許文献9】米国特許第6,635,206号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
製剤原料が胃中の酸とは接触しないが、剤形がよりアルカリ性の環境に入ると迅速に放出される薬剤を含む剤形が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
一実施態様において、本発明は薬学的剤形を含み、薬剤活性および崩壊剤を有する固体コアと、コアを囲む膨潤可能なコーティングと、膨潤可能なコーティングを包囲腸溶性コーティングとを有する。この剤形はコートされたペレットあるいはミニ錠剤を含むコートされた錠剤またはカプセルを含む別の実施態様を有してもよい。
【0016】
本発明の好ましい態様は、この剤形が胃の中にある間は薬学的活性剤が実質的に保持されるが、この剤形がpHが少なくとも約5である環境に入ると、薬学的活性剤が速やかに放出される剤形である。
【0017】
酸感受性の薬学的活性剤および崩壊剤を有する固体コアと、コアを囲む親水コロイド形成成分を有する膨潤可能なコーティングと、膨潤可能なコーティングを囲む腸溶性コーティングとを有する薬学的剤形が本発明にさらに含まれる。
【0018】
本発明は、ベンズイミダゾールと崩壊剤とを有する固体コアと、コアを囲むゼイン、クロスポビドン、およびヒドロキシプロピルセルロースから選択された1つ以上の親水コロイド形成剤を有する膨潤可能なコーティングと、膨潤可能なコーティングを囲むメタクリル酸とアクリル酸エチルとのコポリマーを有する腸溶性コーティングとを有する薬学的剤形をさらに含む。
【0019】
本発明の別の態様は、従前の態様および実施態様のうちの任意に従う経口投与薬学的剤形を有する医学的条件を治療する方法であって、胃を移行する間はこの剤形が実質的に無損傷である工程と、pH値が約5以上を有する消化器系環境内で腸溶性コーティングが除去される工程と、腸溶性コーティングが除去されている剤形領域を液体が浸透し、膨潤可能なコーティング内で親水コロイド形成を生じる工程と、コアを水和するために液体が親水コロイドを通過する工程と、水和コアが断片化され、この剤形から薬学的活性剤を放出する工程とを有する。
【0020】
本発明は、薬学的活性剤および崩壊剤を含む組成物を混合する工程と、固体コアを形成する工程と、親水コロイド形成成分を含む膨潤可能なコーティングでコアを塗布する工程と、耐酸性の腸溶性物質を含む外装コーティング塗布する工程とを有する薬剤の剤形を調製する方法をさらに含む。
【0021】
膨潤可能なコーティングにおいて好ましい膨潤剤としては、プロラミン、ビニルピロリドンポリマー、セルロース誘導体、デンプン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸塩、ペクチン、寒天およびゴムなどがある。ゼイン、クロスポビドン、またはヒドロキシプロピルセルロースは、膨潤可能なコーティングとしての使用にさらに好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、薬学的活性剤成分およびコアの周囲を囲む膨潤可能なコーティングを有するコアを含む薬学的剤形を提供する。このコアは、医薬品組成物全体の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも82.5%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、好ましくは少なくとも89%を有する。このコアは、医薬品組成物全体の少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、あるいは少なくとも93%を有してもよい。
【0023】
本明細書では、用語「薬学的活性剤成分」、「薬学的活性剤」、および「活性」は、対象への投与により治療効果を提供する薬学的剤形成分を指すために区別なく使用される。本発明は、それらの光学活性な異性体を含むベンゾイミダゾール誘導体などの低pH環境において不安定となる酸感受性の薬学的活性剤に特に適用可能である。有効なベンズイミダゾール化合物の特定の事例としては、ラベプラゾール、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、およびパントプラゾールなどがある。本発明が有用と予想されるその他の薬剤としては、以下に限定されるものではないが、腸溶性コーティング成分と反応する薬学的活性剤成分がある。例えば、フルオキセチンとデュロキセチンなどの腸溶性コーティングと不溶性の複合体を形成する薬剤、およびジクロフェナクナトリウムおよびピロキシカムなどのコーティングの酸不溶性を減少させるために酸性基と反応することができる高アルカリ性薬剤などがある。
【0024】
本明細書で考察されているように「膨潤可能なコーティング」は、液体と接触すると体積を増加させるコーティングである。この膨潤は通常水の吸収により生じる。コアの重量に対して、0.1〜10%、0.5〜8%、0.7〜7%、1〜5%、1.3〜3%、1.5〜2%、約2%、あるいは約1.5%の膨潤可能なコーティングが添加される。別の実施形態では、コアの重量に対して0.1〜5%、0.1〜4%、0.1〜3%、0.1〜2%、あるいは0.1〜1%の膨潤可能なコーティングが添加される。
【0025】
一般に、膨潤可能なコーティングは、ぬれると親水コロイドになり、水中では微粒子のゼラチン状懸濁液である。好ましくは、親水コロイドはグリアダン、ホルデイン、あるいはより好ましくはゼインなどのプロラミンから形成される。ゼインは顆粒、麦わら色から淡黄色の非晶質の粉末、または微細なフレークとしてトウモロコシから抽出され、多様な市販の抽出物は、25,000〜35,000の範囲の分子量を有する。ゼインは水に不溶であり、アルコールに不溶であるが、水性アルコール溶液には可溶である。化学的にゼインは、グルタミンがかなり豊富であり、リジンおよびトリプトファンに乏しい。ゼインは約20〜22%のグルタミン酸およびグルタミン、17〜20%のロイシン、5〜9%のプロリン、8〜10%のアラニン、4〜7%のフェニルアラニン、3〜7%のイソロイシン、4〜6%のセリン、4〜5%のアスパラギニン、および3〜5%のチロシンを含む。ゼイン中のその他のアミノ酸は、それぞれすべて3%未満である。合衆国食品医薬品局によって1985年3月以来、ゼインは食物および医薬品への使用において一般に安全である(GRAS)と認定されている。ゼインは、Freeman Industries LLC,Tuckahoe,New York USAなどのいくつかの供給元より市販されており、この企業により販売されている市販のゼイン製のうち、ゼインF4000、ゼイン4400、ゼインF6000、ゼインG−10、アクアゼイン、およびアクアゼインナチュラルと呼ばれるものがある。
【0026】
現在本発明に好ましいゼインは、(キサントフィル由来の)着色レベルを低減させるために再抽出されたゼインF6000である。ゼインF6000はおよそ35,000分子量、および0.125〜0.21g/mlのバルク密度を有するごく淡黄色の顆粒状粉末である。これは、乾燥量基準で計算すると90〜96%のゼインタンパク質が含まれる。
【0027】
親水コロイドはヒドロキシプロピルメチルセルロースから形成することもできる。様々なヒドロキシプロピルメチルセルロース生成物2重量パーセント水溶液の粘度は、約4,000mPa・s〜約100,000mPa・sまでの範囲にある。一実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、約15,000mPa・sの粘度を有する、米国薬局方Substitution Type 2208別名ヒプロメロース2208であり、Methocel K15Mとして市販されている。別の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、約4,000 mPa・sの粘度を有する米国薬局方Substitution2910別名ハイパーメロースhypermelloseであり、Methocel E4Mとして市販されているMETHOCELは、ダウ・ケミカル社、ミッドランド、Michigan U.S.A.の商標である。
【0028】
親水コロイドを形成するための他の有用な物質としては、以下に制限されるものではないが、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、あるいはメチルセルロースなどのセルロース誘導体、海藻抽出物、植物抽出物、植物浸出物、植物種子抽出物、および微生物発酵生成物などゴム類、あらかじめゼラチン化され、改質されたデンプンを含むデンプン、およびカルボポルを含むカルボキシビニルポリマーなどの合成物などがある。さらなる特定の例としては、アルギン酸塩、ペクチン、低メトキシペクチン、寒天、カラゲナン、プラス、アラビアアカシア、トラガカントゴム、カラヤ、ガッチ、イナゴマメ(イナゴマメ)、グアー、デキストラン、キサンタン、カラゲナン、タラ、カーヤ・グランドフォリア、ゲラン、コンニャク・マンナン、ガラクトマンナン、フノラン、アセタン、ウェラン、ラムサン、フルセレラン、サクシノグリカン、シエログリカン、シゾフィラン、カードラン、プルラン、カラヤ、およびタマリンドゴムなどがある。
【0029】
薬学的活性剤に加えて、このコアは、水性環境中で、結合している任意の材料の物理的な断片化を補助する崩壊剤をさらに有する。崩壊剤は、断片化された材料中では溶解または化学変化を促進しない。有用な崩壊剤の事例は以下の通りである。すなわち、ジャガイモまたはタピオカ澱粉などのデンプン、改質されたデンプン(デンプングリコール酸ナトリウムなど)、および部分的にあらかじめゼラチン化されたデンプン(デンプン1500など)、改質されたポリビニルピロリドン(架橋を促進する条件下で重合されたクロスポビドンなど)を含むポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース、改質されたセルロース(低置換ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、およびカルシウムカルボキシメチルセルロースなど)などのセルロース、ホルムアルデヒド−カゼイン化合物(Esma−Spreng.RTMなど)、AMBERLITE IRP88の商標を使用するRohm and Haas Company,Philadelphia,Pennsylvania U.S.A.により市販されているポラクリリンカリウムなどの樹脂、脱脂大豆抽出物、アルギン酸、寒天、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、および炭酸ナトリウムである。Raultらの米国特許第6,696,085号明細書は、アクリルポリマーが錠剤崩壊剤として有用であることを示した。
【0030】
先のものに加えて、当業者において公知であるように、また以下のようにさらに開示されるように、コアは結合剤、潤滑剤、抗酸化剤などの任意の所望の成分を含むことができる。
【0031】
薬学的剤形は、膨潤可能なコーティングを囲む腸溶性コーティングをさらに有する。「腸溶性コーティング」は、胃の酸性pH条件では実質的に不溶性であるが、腸のより高いpH条件では実質的に可溶または水浸透性であるコーティングである。本発明では、腸溶性コーティングは胃の酸性環境との接触から膨潤可能なコーティングを保護するが、phが胃よりも高い腸の液体と膨潤可能なコーティングとの接触とができるようになっている。腸溶性コーティングは腸の特定のセクションをターゲットとした放出を提供するために選定することができる。例えば、腸溶性コーティングは、十二指腸(pH値>5.5)、空腸(pH値6〜7)、あるいは回腸(pH値7.5まで)までの送達を提供することができる。中間の送達点は、異なるコーティング材料を併用するか、あるいはコーティングの厚さを変更することにより達成することができる。腸溶性コーティング材料としては、酢酸フタル酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースベースのコーティング、メタクリル酸塩ベースのコーティング、ポリ酢酸ビニル、フタル酸塩ベースのコーティング、およびシェラックベースのコーティングなどがある。
【0032】
本発明では、メタクリル酸塩ベースのコーティングが好ましく、また商標Rohm GmbH&Co.、ダルムシュタット、ドイツより商標EUDRAGITで種々の有用な製品が市販されている。Eudragit L100−55は特に好ましい。Eudragit L 100−55は粉末であり、再構成することができる噴霧乾燥させたEudragit L30 D−55である。Eudragit L30 D−55は、pH5.5以上で可溶性を示すpH依存性ポリマーの水性分散物で、十二指腸内をターゲットとする送達に用いられる、Eudragit L 100−55は、Eudragit L30 D−55のpH値依存性を保持し、pH値5.5以上で可溶性を示し、十二指腸への送達を提供する。Eudragit L 100−55およびEudragit L 30 D−55はメタクリル酸とアクリル酸エチルの1:1比率のコポリマーである。これらは(C−Cの分子式を有し、ケミカルアブストラクト登録番号25212−88−8に登録されている。Eudragit L100−55は、メタクリル酸コポリマータイプCの米国薬局方規格にさらに適合する。
【0033】
一実施形態において、腸溶性コーティングは総組成物の1〜40%、3〜35%、5〜30%、6〜20%、あるいは7〜10%、あるいは8%を有する。別の実施形態において、腸溶性コーティングは、総組成物の多くとも20%、多くとも17.5%、多くとも15%、多くとも12.5%、多くとも10%、多くとも9%、多くとも8%、多くとも7%、多くとも6%、多くとも5%、あるいは多くとも4%を有する。
【0034】
任意に、薬学的活性剤の放出を調節する賦形剤が膨潤可能なコーティングに添加される。コアへの水のアクセスを促進または妨害することにより調節をすることができる。有用な賦形剤としては、乳酸、乳酸アセトアミド、グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、トリアセチン、ソルビトール、クエン酸トリエチル、ポリビニルピロリドン、トリエチレングリコール、リン酸トリクレジル、酒石酸ジブチル、エチレングリコールモノオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリドなどの可塑剤、およびその他のオイルおよびワックス類、ならびにポリエチレングリコール300、400、600、1450、3350、および8000などがある。活性体の放出の割合を調節するさらなる賦形剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムおよびドキュセートナトリウムなどの水可溶性界面活性剤、およびEudragit L 100−55などの腸溶性コーティング材料などがあり、これらは膨潤可能なコーティングへ混合される。
【0035】
作用の任意の単一の理論に限定されないが、膨潤可能なコーティングに組み込まれた腸溶性コーティング材料は、腸の液体と接触すると同時に溶解し、膨潤可能なコーティング内でコア内に腸液体の導入を促進するチャネルが形成されると考えられている。一実施形態において、腸溶性コーティング材料は、膨潤可能なコーティングの約0.1〜30%、0.5〜20%、1〜17.5%、好ましくは5〜15%、さらに好ましくは5〜10%で構成される。別の実施形態において、腸溶性コーティング材料は、膨潤可能なコーティングの10〜50%、15〜40%、好ましくは20〜30%を含む。
【0036】
やはり任意の理論には限定されないが、水溶性界面活性剤は、腸液体と接触すると膨潤可能なコーティングの急速な湿潤を引き起し、これによりコアへの液体の導入を補助すると仮定されている。水溶性界面活性剤が存在する場合、これは、膨潤可能なコーティング重量の約0.001〜30%、0.005〜20%、0.01〜10%、0.03〜8%、0.05〜6%、0.07〜4%、0.09〜2%、あるいは0.1〜1%を構成する。好ましい範囲は0.01〜10%である。
【0037】
例えば、膨潤可能なコーティング中にゼインが存在する場合、膨潤の度合いによりその透過性がコントロールされ、最大の浸透が最大の膨潤容積で達成される。水和ゼインフィルムを介した拡散に関する追加情報については、Y.K.Oh et al.,“Swelling and Permeability Characteristics of Zein Membranes,”PDA Journal of Pharmaceutical Science and Technology,Vol.57,pages 208−217(2003)参照。
【0038】
ゼインへの可塑剤の添加は、その水への透過性に影響する。ゼインのグリセロール、triethyeleneグリコール、およびレブリン酸などの吸湿性可塑剤との組み合わせは、可塑化されていないゼイン中よりも多くの水分吸収を生じる。しかしながら、酒石酸ジブチルおよびオレイン酸などの疎水性可塑剤をゼインに導入すると、可塑化されていないゼインよりも水分吸収が少なくなる。水浸透度が大きいほど、引張強度が弱くなりコーティングは単に薬学的活性剤の十分な放出を提供する道を開く。可塑化されたゼインキャストフィルムの水分吸収特性の考察は、J.W.Lawton,“Plasticizers for Zein: Their Effect on Tensile Properties and Water Absorption of Zein Films,” Cereal Chemistry,Vol.81,pages 1−5 (2004)を参照。
【0039】
可塑剤などの賦形剤による薬学的活性剤の放出プロファイルの調節は、ゼインに限定されない。一般に可塑剤の量および種類を変更するとコーティングの引張強度に影響を及ぼす。ゼインに関して考察される場合と同様に、吸湿性対疎水性賦形剤の使用も放出プロファイルに影響する。
【0040】
本発明のコアを形成するために、薬学的活性剤は水、生理食塩水、クエン酸ナトリウム、あるいはリン酸二カルシウム、および/または以下に示す任意のもの、すなわちデンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、あるいはケイ酸などの充填剤あるいは希釈剤、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、コポリビドナム(International Specialty Products,Wayne,ニュージャーシー 米国により市販されるN−ビニル−2−ピロリドンおよび酢酸ビニルのコポリマーPLASDONE(登録商標)S−630など)、Poloxamer407などのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマーなどの結合剤、ショ糖、あるいはアカシア、グリセロールなどの湿潤剤、デンプン、ポリビニルピロリドン、セルロース、ホルムアルデヒドカゼイン化合物、脱脂大豆抽出物、アルギン酸、寒天、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカ澱粉、あるいは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、あるいは固形ポリエチレングリコールなどの潤滑剤、パラフィンなどの溶液遅延剤、第四アンモニウム化合物などの吸収促進剤、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、ラウリル硫酸ナトリウムまたはドキュセートナトリウムなどの界面活性剤、カオリンまたはベントナイト粘土などの吸収剤、および安定化剤などの1つ以上の薬剤的に許容可能な担体と混合される。薬学的活性剤をアルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属酸化物などの緩衝剤と混合してもよい。このリストはすべてを網羅したものではなく、当業者において公知のその他の多くの機能成分が本発明に有用であろう。
【0041】
本発明のコアは、錠剤、ミニ錠剤、顆粒、微粒子、あるいはペレットの形態でもよい。錠剤およびミニ錠剤は、当業者に公知の直接圧縮あるいは他のプロセスによって製造することができる。乾式造粒法、湿式造粒法、溶融造粒法、あるいは当業者に知られた他のプロセスを顆粒を形成するために使用してもよい。微粒子およびペレットは、押出成形または球状成形(spheronization)などの当業者に公知の任意の方法によって製造してもよい。ペレットは溶融球状化により、あるいはノンパレルシードの塗布によりさらに製造してもよい。風乾などの従来の乾燥手法、あるいは加熱および/または減圧条件下での乾燥により湿潤コアを乾燥させる。
【0042】
発明のコアは膨潤可能なコーティングで塗布され、続いて外側に腸溶性コーティングが塗布が行われる。一般に、コーティングはパンコーティング(穿孔処理された閉鎖系パンコーティングを含む)、コアセルベーション、あるいは流動床コーティングなどの当業者において公知の任意の技術により塗布される。流動床はロータインサートおよび/またはビュルスターカラムインサートを含んでもよい。このコーティングは、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルフタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース;カラゲナンなどのセルロースベース、メタクリル酸、メタクリレート、アクリレート、メタクリレート、エタクリレート、メチルメタクリレート、あるいはその共重合体などのメタクリレートまたはメタクリル酸ベース、またはポリ酢酸フタル酸ビニルベースなどのポリマーベースにより一般に分類することができる。このポリマーは水などの溶媒、およびポリエチレングリコール、乳酸、乳酸、アセトアミド、グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、トリアセチン、ソルビトール、クエン酸トリエチル、ポリビニルピロリドン、トリエチレングリコール、リン酸トリクレジル、酒石酸ジブチル、エチレングリコールモノオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、あるいはセバシン酸ジブチルなどの可塑剤と一般に併用される。任意に以下のような成分を添加してもよい。すなわち、粘着防止剤、消泡剤、充填剤、界面活性剤、着色剤、香料、およびこれらの任意の組み合わせ。
【0043】
腸溶性コーティングの塗布の後、この医薬品組成物は、インク、オフセットグラビア印刷およびなどの当業者において公知の手法を用いて、その組成物上に印刷された確認情報を有する場合がある。オフセットグラビア印刷に使用してもよい薬剤的に許容可能なインクとしては、Markem(登録商標)2200、2202、2212、および2222、Markem Corporation,Keene,New Hampshire USAなどがある。これらのインクは一般にシェラックベースであり、かつ色素を含んでいる。乾燥速度を増加または減少させるために、あるいは粘度を変更するために、シンナーをこれらのインクの任意に添加してもよい。塗布後、これらのインクは通常風乾される。その他の薬剤的に許容可能なインクとしては、色素、二酸化チタン、および溶媒を含み、Colorcon,West Point,Pennsylvania USAより販売されているOpacode(登録商標)およびOpacode(登録商標)WBとして販売されている製品などがある。その他の多くの印刷インクが当業者に知られており、これらのうちのいずれも本発明の剤形に有用と予想される。
【0044】
任意に、腸溶性剤形はフィルムをさらに塗布することができる。このフィルムには製剤の確認を促進するためおよび外観向上のために着色されることが多く、例えば、フィルムコーティングが施された後、任意の所望の情報の印刷が行われる。OPADRYおよびOPAGLOSの商標でColorcon,West Point,Pennsylvania USAにより販売されている多くの適切なフィルムコーティング製品が市販されている。Colorcon供給のこれらの製品は、ポリマー、可塑剤、および色素を含むドライ粉末であり、水あるいはアルコールなどの溶媒と混合され、錠剤あるいはその他の固形剤形上に噴霧される。このフィルムコーティング手法、およびその他のフィルムコーティング製品は当業者において公知である。
【0045】
コーティング錠剤、ペレット、顆粒、あるいは微粒子を投与の容易なカプセル中に充填してもよい。充填は、あらかじめ成形されたカプセルへの充填などの当業者において公知の任意の方法により達成される。このようなカプセルは、当業者に既知のゼラチンあるいはその他の材料で構成される。
【0046】
任意の理論に限定されないが、腸溶性コーティングが腸内で溶解後、膨潤可能なコーティングが腸液体を吸収し、外側に拡大すると考えられる。したがって、はじめは膨潤可能なコーティングは膨張した気球のように拡大するが、破裂しない。コーティングが膨潤するとともに、水へのその透過性が増大する。膨潤可能なコーティングはマイクロチャネルを含み、水が拡散により浸入し、コアに達すると仮定される。水はコアを断片化させる。これらのフラグメントのいくつかは膨潤可能なコーティングをパンクさせ、より多量の水の浸入が起こる。追加の水は、膨潤可能なコーティングをパンクさせ、さらに多くの断片を生じると考えられる。このサイクルが薬学的活性剤が完全に放出されるまで、あるいはコーティングが破裂する吸水により膨潤可能なコーティングが十分弱まるまで連続すると考えられている。
【0047】
やはり任意の理論に限定されないが、腸溶性コーティングの存在以外のいくつかの要因によりこの活性の放出が調節されると考えられている。このような因子の1つは、膨潤可能なコーティング内での親水コロイドを生ずる物質の選択である。親水コロイドはその膨潤能力を変化させ、このため腸液体へのその透過性が変わる。親水コロイドの透過性は、コアの水和率に影響を及ぼし、その結果コアの断片化を引き起こすと考えられる。親水コロイドは引張強度も異なり、断片化の際に膨潤可能なコーティングを破裂させることができるコアフラグメントの割合に影響を及ぼすと考えられる。出現を達成することができるフラグメントの数は、薬学的活性剤の放出に直接影響を及ぼす。膨潤可能なコーティングに生成する開口の数は、コア内により多くの腸液体を許容し、より多くの断片化が生じることにより活性の放出にさらに影響を及ぼすとも考えられている。引張強度は、吸水により生じる軟化のため、その結果活性の完全な放出を引き起こす膨潤可能なコーティングが破裂するかどうか、およびいつ破裂するかにさらに影響を及ぼす。さらに、いくつかの親水コロイドは膨潤すると浸食され、コアフラグメントが膨潤可能なコーティングを破裂させることができる容易さに影響を及ぼす。
【0048】
その他の因子が、薬学的活性剤の放出を調節する膨潤可能なコーティングへの賦形剤の任意の追加となりえる。このような薬剤は、腸液体への親水コロイドの透過性を増加または減少させることができる。この透過性は、コアに接触しさらに断片化を引き起こす腸液体の量に影響する。フラグメントは、断片化と同時に膨潤可能なコーティングを破裂させ、これにより薬学的活性剤の放出に影響を及ぼすと仮定されている。膨潤可能なコーティングに生じた開口は、コア内へのさらなる腸液体の侵入のための導管を提供し、さらに断片化を促進するとさらに考えられている。
【0049】
第3因子はコア中での崩壊剤の使用である。崩壊剤の利用はコアの断片化率を増加させ、これはフラグメントが膨潤可能なコーティングで空隙を作る頻度を上昇させると考えられる。膨潤可能なコーティングを介して存在するフラグメントにおける急激な増加により、薬学的活性剤の放出割合が増加する。また膨潤可能なコーティングに生じたより多くの空隙により、より多くの水がコアに侵入でき、活性のさらに大きな断片化を引き起こすと考えられている。さらに、崩壊剤は、コアフラグメントが膨潤可能なコーティングに衝撃を与える力を増大させ、その結果より良好に膨潤可能なコーティング内に空隙が生じる。これらのより強力な崩壊により、より多くのコアフラグメントが膨潤可能なコーティングを通過することが可能となることで薬学的活性剤の放出割合がさらに増加する。このような崩壊剤により、水和し、活性を断片化する腸液体のさらなる開口を生じ、その活性のさらなる放出を引き起こす。
【0050】
上述のように薬学的活性剤の放出割合を調節することができるが、本発明は徐放製剤を産生し、これにより12時間あるいは24時間などの長期間にわたり制御された割合で薬学的活性剤が放出されることを目的としたものではない。より正確に言えば本発明の特徴は、剤形が腸管に達するまで、経口摂取された薬学的活性剤を遅延放出させ、アルカリ性pH条件に酸感受性の薬学的活性剤が影響を受けずに、体内吸収において薬学的活性剤の急速で本質的に完全な放出を促進することである。
【0051】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提供されるもので、添付された特許請求の範囲で定義されるように本発明の任意の様式を限定することを意図するものではなく、またそのように解釈されるべきものではない。実施例において、乾燥中に揮発し、したがって最終製品には存在しない成分は、表リストには含まれていない。しかしながらこのような成分は調製手順の記載において、溶媒などとして記載される。さらに、完成剤形において、印刷情報により追加された重量は有意ではなく、したがって最終の累積重量には含まれていない。その前後において明瞭な指示がない場合は、割合パーセントは重量ベースで表現されている。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
20あるいは40mgのパントプラゾールを含む錠剤を下記成分および手順を使用して調製した。
【0053】
【表1】

パントプラゾールナトリウム、マンニトール、クロスポビドン、および炭酸ナトリウムのドライミックスをヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF)および無水炭酸ナトリウムの水溶液と共に顆粒化することにより錠剤コアを調製した。顆粒を従来の乾燥技術を使用して乾燥させた。続いて乾燥させた顆粒をクロスポビドン、タルク、およびステアリン酸カルシウムで潤滑させた。潤滑された顆粒を圧縮してコアにした。コアにゼイン、Eudragit L100−55、水、およびイソプロピルアルコールの混合物をサブコートし、乾燥させた。溶媒としてイソプロピルアルコール、および可塑剤としてクエン酸トリエチルを有するEudragit L100−55を使用して、サブコート上の腸溶性コーティングを施した。タルクおよび二酸化チタンをそれぞれ潤滑剤および不透明化剤(opaquent)として使用した。乾燥後、腸溶錠剤をOpadry Yellow OY−52945を使用してフィルム塗装し、Opacode Black S−1−8152 HVにより印刷した。
【0054】
(実施例2)
20あるいは40mgのパントプラゾールを含む錠剤を下記成分および手順を使用して調製した。
【0055】
【表2】

パントプラゾールナトリウム、マンニトール、クロスポビドン、および炭酸ナトリウムのドライミックスをヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF)および無水炭酸ナトリウムの水溶液と共に顆粒化することにより錠剤コアを調製した。顆粒を従来の乾燥技術を使用して乾燥させた。続いて乾燥させた顆粒をクロスポビドン、タルク、およびステアリン酸カルシウムで潤滑させた。潤滑された顆粒をコア内へ圧縮充填した。コアにゼイン、Eudragit L100−55、水、およびイソプロピルアルコールの混合物をサブコートし乾燥した。溶媒としてイソプロピルアルコール、および可塑剤としてクエン酸トリエチルを有するEudragit L100−55を使用して、サブコート上の腸溶性コーティングを施した。タルクおよび二酸化チタンをそれぞれ潤滑およびopaquentとして使用した。続いて、乾燥した腸溶錠剤をOpadry Yellow OY−52945を使用してフィルム塗装し、Opacode Black S−1−8152 HVによりその上に印刷した。
【0056】
(実施例3)
40mgのオメプラゾールを含むカプセル剤を下記成分および手順を使用して調製した。
【0057】
【表3】

オメプラゾール、マンニトール、クロスポビドン、メグルミン、およびpolaxomerを混合し、結合剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとともにこの混合物を顆粒化することによりオメプラゾールコアペレットを調製した。このように得られた顆粒を押出成形および球状成形(spheronization)し、球状ペレットを生成させた。その後、ペレットを従来の乾燥技術により乾燥させた。イソプロピルアルコールおよび水の混合物中に溶解させたゼインおよびラウリル硫酸ナトリウムを含む膨潤可能なコーティングをこのペレットに塗布し、その後乾燥した。ヒドロキプロピルメチルフタル酸セルロースおよびクエン酸トリエチルをイソプロピルアルコールおよびアセトンの混合液中に溶解させ、この溶液内でタルクを分散させることにより腸溶コートを調製し、その後、これを中間コーティング上に積層させた。
【0058】
コートされたペレットをゼラチンカプセル中に計量した。
【0059】
(実施例4)
40mgのオメプラゾールを含む錠剤を下記成分および手順を使用して調製した。
【0060】
【表4】

オメプラゾール、マンニトール、クロスポビドン、メグルミン、およびpolaxomerを混合し、結合剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとともにこの混合物を顆粒化することによりオメプラゾールコア錠剤を調製した。顆粒を流動床ドライヤー中で乾燥させ、乾燥した顆粒を錠剤またはミニ錠剤に圧縮成形した。イソプロピルアルコールおよび水の混合液に溶解されたゼインおよびラウリル硫酸ナトリウムを含む中間塗布液をこれらのコア錠剤あるいはミニ錠剤に塗布し、続いて乾燥させた。ヒドロキプロピルメチルフタル酸セルロースおよびクエン酸トリエチルをイソプロピルアルコールおよびアセトンの混合液中に溶解させ、この溶液内でタルクを分散させることにより腸溶コートを調製し、その後、これを中間コーティング上に積層させた。
【0061】
(実施例5)
40mgのパントプラゾールを含む錠剤を下記成分および手順を使用して調製した。
【0062】
【表5】

マンニトール、クロスポビドン、プラスドンPlasdone S630、タルク、およびステアリン酸マグネシウムにパントプラゾールナトリウムセスキ水和物を混合することによりコア錠剤を調製し、錠剤に直接圧縮成形した。これらのコア錠剤にイソプロピルアルコールおよび水の混合液に溶解させたゼインおよびラウリル硫酸ナトリウムを含む膨潤可能な塗布液を塗布し、続いて乾燥させた。ヒドロキプロピルメチルフタル酸セルロースおよびクエン酸トリエチルをイソプロピルアルコールおよびアセトンの混合液中に溶解させ、この溶液内でタルクを分散させることにより腸溶コートを調製し、その後、これを中間コーティング上に積層させた。
【0063】
(実施例6)
エソメプラゾールを含むカプセルを下記成分および手順を使用して調製した。
【0064】
【表6】

エソメプラゾールマグネシウム3水和物、マンニトール、クロスポビドン、およびラウリル硫酸ナトリウムを混合し、コポビドンの水溶液とともにこの混合物を顆粒化することによりコアを調製した。この顆粒を押出成形および球状成形(spheronization)し、球状ペレットを生成させた。このペレットを従来の乾燥技術により乾燥させた。イソプロピルアルコールおよび水の混合物中に溶解させたゼインおよびラウリル硫酸ナトリウムを含む膨潤可能なコーティングをこの乾燥ペレットに塗布し、その後乾燥した。イソプロピルアルコール中にC型メタクリル酸コポリマーおよびクエン酸トリエチルを溶解し、さらにこの溶液中でタルクおよび二酸化チタンを分散させることにより腸溶コートを調製した。
【0065】
コートされたペレットをゼラチンカプセルに充填し、各々40mgのエソメプラゾールを含む4000カプセルを与えた。
【0066】
(実施例7)
エソメプラゾール錠剤を下記成分および手順を使用して調製した。
【0067】
【表7】

エソメプラゾールマグネシウム3水和物、酸化マグネシウム、コポビドン、クロスポビドン、マンニトール、および二酸化ケイ素を混合し、次にステアリルフマル酸ナトリウムを加えさらに混合した。この混合物をコア錠剤中に圧縮充填した。この錠剤にゼインの水性アルコール溶液を塗布し、続いて乾燥させた。最後に腸溶性コーティング成分を水中に分散させ、ゼインをコートした錠剤上に塗布し、最終乾燥させた。
【0068】
(実施例8)
ラベプラゾールナトリウムを含む錠剤を下記成分と手順を使用して調製した。
【0069】
【表8】

ラベプラゾールナトリウム、クロスポビドン、プラスドンS630、およびマンニトール(PearlitolSD200)をマンニトール(Pearlitol DC 400)とともに20分間混合した。続いてタルクおよびステアリン酸マグネシウムを混合物に添加し5分間混合した。次にこの潤滑された混合物を錠剤に圧縮成形した。このコア錠剤をゼイン(重量増加2.5±0.5%)の水アルコール溶液でサブコートし、乾燥させた。このサブコートされた錠剤に、腸溶性コーティング溶液(重量増加8〜9%)を塗布した。
【0070】
(実施例9)
ラベプラゾールナトリウム錠剤を下記成分および手順を使用して調製した。
【0071】
【表9−1】

【0072】
【表9−2】

60メッシュ篩により酸化マグネシウムをふるいにかけた。ラベプラゾールナトリウム、L−HPC、マンニトール(SD200)、およびふるいにかけた酸化マグネシウムを40メッシュ篩によりふるいにかけられた。続いて、材料をラピッド撹拌造粒機中で30分間混合した。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を精製水に溶解させ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を温精製水中に溶解させた。ラベプラゾールナトリウム混合物をSLSおよびHPMC溶液と混合した。湿潤した塊状物を流動床ドライヤー中で乾燥し、乾燥させた顆粒を20メッシュ篩でふるいにかけた。ふるいにかけられた顆粒をダブルコーンブレンダー中で5分間L−HPCと混合した。ステアリン酸マグネシウム(60メッシュ篩でふるいにかけた)をこの混合物に添加し5分間混合した。続いて、潤滑された混合物をコア錠剤に圧縮成形した。コア剤に水−アルコールゼイン塗布液(重量増加2.5±0.5%)を塗布し乾燥した。コーティング錠剤に腸溶性コーティング溶液(重量増加8.0±1.0%)をさらに塗布した。重量増加が2.0±0.5%となるまで、腸溶錠にOpadry溶液でさらに塗布した。続いて、フィルムコーティング錠剤にOpacode黒インクを印刷した。
【0073】
(実施例10)
実施例5により調製されたパントプラゾールナトリウム錠剤をMethod 724 “Drug Release” of The United States Pharmacopeia 24,United States Pharmacopeial Convention,Inc.,Rockville,Maryland U.S.A.,pp.1944−1947,2000,using Method B and Apparatus 1(described in Method 711“Dissolution,”on page 1942)に従って試験を行った。錠剤をはじめに撹拌しながら37℃で2時間0.1N塩酸に浸した。続いて、錠剤を撹拌しながらpH6.8のリン酸緩衝液に浸し、錠剤から放出される薬剤の量を定量するための分析に定期的に緩衝液のサンプルを採取した。
【0074】
以下の表は試験を行った6つの錠剤から得られたデータである。この酸中に放出された薬剤の量は示していないが、その量は少なかった。腸溶性コーティング剤形では、一般に酸中への薬剤の10%以内の放出は許容できると考えられる。本発明の目的において、USP試験条件下で0.1N塩酸中に重量パーセントで約10%未満が放出される場合、薬学的活性剤は投与剤形内で実質的に保持されたと考えられる。
【0075】
【表10】

これらの結果は、pH6.8で60分以内に実質的に完全に薬剤が放出されたことを示す。
【0076】
(実施例11)
実施例10のように、実施例9に従って調製されたラベプラゾールナトリウム錠剤について、USP Drug Release Method 724により試験を行った。しかしながら、第2部の試験のためのアルカリ性溶液は、0.5重量パーセントのラウリル硫酸ナトリウムをさらに含むpH8.0に調整されたリン酸緩衝液である。結果は以下の通りであった。
【0077】
【表11】

これらの結果は、pH6.8で60分以内に実質的に完全に薬剤が放出されたことを示す。
【0078】
(実施例12)
エソメプラゾール錠剤を下記の成分および手順を使用して調製した。
【0079】
【表12】

エソメプラゾールマグネシウム3水和物、酸化マグネシウム、プラスドンS−630、二酸化ケイ素、およびマンニトールをふるいにかけ混合し、次にステアリルフマル酸ナトリウムを加え、混合物を混和し、この混合物を直接圧縮することにより最終錠剤を成形した。ゼインを水性アルコール中に溶解し、錠剤上に塗布した。続いてコーティング錠剤を乾燥させた。
【0080】
錠剤重量を一定に保つためにマンニトール量を相当する量に減少させ、コア組成物中に7mgあるいは10mgのいずれかの崩壊剤成分クロスポビドンをさらに含む追加の錠剤を同様に調製した。実施例10の手順(酸接触工程を省略したことを除く)を使用してpH6.8で、この錠剤について溶解特性の試験を行い、以下の結果を得た。
【0081】
【表13】

この特定の製剤において、10mgの崩壊剤によりpH6.8で所望の急速な薬剤放出を示した。しかしながら、他の製剤では、多様な処方成分の同一性、(錠剤のための圧縮圧力などの)コアを調製するために使用された物理的方法、およびに追加コーティングの存在に依存して、異なる崩壊剤濃度で所望の薬物放出を示した。したがって、所望の薬物放出特性を与える正確な製剤を確認するため、異なる量の選択された崩壊剤成分を使用して各々の提案された製剤について試験を行うべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的剤形であって、
a. 薬学的活性剤および崩壊剤を含む固体コア;
b. 該コアを囲む膨潤可能なコーティング;および
c. 該膨潤可能なコーティングを囲む腸溶性コーティング、
を含む、剤形。
【請求項2】
前記コアが錠剤である、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項3】
カプセル中に含まれるマルチコートされたコアを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項4】
前記薬学的活性剤が酸の存在下で不安定である、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項5】
前記薬学的活性剤が前記腸溶性コーティングの成分と反応性を有する、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項6】
前記薬学的活性剤がベンズイミダゾールを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項7】
前記ベンズイミダゾールが、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、およびパントプラゾールから成る群から選択される1つ以上のメンバーである、請求項6に記載の薬学的剤形。
【請求項8】
前記崩壊剤が、デンプン、ポリビニルピロリドン、ホルムアルデヒド−カゼイン化合物、樹脂、脱脂大豆抽出物、アルギン酸、寒天、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸ナトリウム、およびアクリルポリマーから成る群から選択される1つ以上のメンバーを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項9】
前記膨潤可能なコーティングが、プロラミン、ビニルピロリドンポリマー、セルロース誘導体、デンプン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸塩、ペクチン、寒天、およびゴムから成る群から選択される1つ以上の親水コロイド形成メンバーを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項10】
前記膨潤可能なコーティングがゼインを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項11】
前記膨潤可能なコーティングがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項12】
前記膨潤可能なコーティングは、水和したときに前記コアから薬学的活性剤の放出を調節する賦形剤を含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項13】
前記賦形剤が、可塑剤、水溶性界面活性剤、および腸溶性コーティング材料から成る群から選択される1つ以上のメンバーを含む、請求項12に記載の薬学的剤形。
【請求項14】
前記腸溶性コーティングが、セルロースベース、メタクリレートベース、ポリ酢酸ビニルフタレートベース、あるいはシェラックベースである成分を含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項15】
前記腸溶性コーティングがメタクリル酸とアクリル酸エチルとのコポリマーを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項16】
前記コアが、前記剤形の重量の少なくとも約50パーセントを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項17】
前記膨潤可能なコーティングが、前記剤形の重量の約0.1〜10パーセントを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項18】
前記腸溶性コーティングが、前記剤形の重量の約0.1〜30パーセントを含む、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項19】
前記薬学的活性剤は、剤形が胃の中にある間は剤形中に実質的に保持されるが、前記剤形が少なくとも約5のpH値を有する消化器系環境に入った後は速やかに放出される、請求項1に記載の薬学的剤形。
【請求項20】
薬学的剤形であって、
a. 酸感受性の薬学的活性剤および崩壊剤を含む固体コア;
b. 該コアを囲み、親水コロイド形成成分を含む膨潤可能なコーティング;および
c. 前記膨潤可能なコーティングを囲む腸溶性コーティング、
を含む、剤形。
【請求項21】
前記酸感受性の薬学的活性剤がベンズイミダゾールを含む、請求項20に記載の薬学的剤形。
【請求項22】
前記崩壊剤が、デンプン、ポリビニルピロリドン、ホルムアルデヒドカゼイン化合物、樹脂、脱脂大豆抽出物、アルギン酸、寒天、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸ナトリウム、およびアクリルポリマーから成る群から選択される1つ以上のメンバーを含む、請求項20に記載の薬学的剤形。
【請求項23】
前記親水コロイド形成成分が、プロラミン、ビニルピロリドンポリマー、セルロース誘導体、デンプン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸塩、ペクチン、寒天、およびゴムから成る群から選択される1つ以上のメンバーを含む、請求項20に記載の薬学的剤形。
【請求項24】
前記腸溶性コーティングが、セルロースベース、メタクリレートベース、ポリ酢酸ビニルフタレートベース、あるいはシェラックベースである成分を含む、請求項20に記載の薬学的剤形。
【請求項25】
前記腸溶性コーティングがメタクリル酸とアクリル酸エチルとのコポリマーを含む、請求項20に記載の薬学的剤形。
【請求項26】
薬学的剤形であって、
a. ベンズイミダゾールおよび崩壊剤を含む固体コア;
b. 該コアを囲み、ゼイン、クロスポビドン、およびヒドロキシプロピルセルロースから選択される1つ以上の親水コロイド形成剤を含む膨潤可能なコーティング;および
c. 該膨潤可能なコーティングを囲み、メタクリル酸とアクリル酸エチルとのコポリマーを含む腸溶性コーティングとを含む、剤形。
【請求項27】
前記崩壊剤が、デンプン、ポリビニルピロリドン、ホルムアルデヒドカゼイン化合物、樹脂、脱脂大豆抽出物、アルギン酸、寒天、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸ナトリウム、およびアクリルポリマーから成る群から選択される1つ以上のメンバーを含む、請求項26に記載の薬学的剤形。
【請求項28】
前記膨潤可能なコーティングがゼインを含む、請求項26に記載の薬学的剤形。
【請求項29】
前記膨潤可能なコーティングがクロスポビドンを含む、請求項26に記載の薬学的剤形。
【請求項30】
前記膨潤可能なコーティングがヒドロキシプロピルセルロースを含む、請求項26に記載の薬学的剤形。
【請求項31】
医学的状態を治療する方法であって、該方法は請求項1による薬学的剤形を経口的に投与する工程を包含し、ここで:
a. 該剤形は胃を通過する間は実質的に無損傷であり;
b. 前記腸溶性コーティングは約5以上のpH値を有する消化器系環境内で除去され;
c. 前記腸溶性コーティングが除去されている該剤形の領域を液体が浸透し、該膨潤可能なコーティング内で親水コロイド形成を生じ;
d. 液体が該親水コロイドを通過して、前記コアを水和し;そして
e. 該水和されたコアが断片化され、該剤形から前記薬学的活性剤を放出する、方法。
【請求項32】
医学的状態を治療する方法であって、該方法は請求項20による薬学的剤形を経口的に投与する工程を包含し、ここで:
a. 該剤形は胃を通過する間は実質的に無損傷であり;
b. 前記腸溶性コーティングは約5以上のpH値を有する消化器系環境内で除去され;
c. 前記腸溶性コーティングが除去されている該剤形の領域を液体が浸透し、該膨潤可能なコーティング内で親水コロイド形成を生じ;
d. 液体が該親水コロイドを通過して、前記コアを水和し;そして
e. 該水和されたコアが断片化され、該剤形から前記薬学的活性剤を放出する、方法。
【請求項33】
医学的状態を治療する方法であって、該方法は請求項26による薬学的剤形を経口的に投与する工程を包含し、ここで:
a. 該剤形は胃を通過する間は実質的に無損傷であり;
b. 前記腸溶性コーティングは約5以上のpH値を有する消化器系環境内で除去され;
c. 前記腸溶性コーティングが除去されている該剤形の領域を液体が浸透し、該膨潤可能なコーティング内で親水コロイド形成を生じ;
d. 液体が該親水コロイドを通過して、前記コアを水和し;そして
e. 該水和されたコアが断片化され、該剤形から前記薬学的活性剤を放出する、方法。
【請求項34】
前記薬学的活性剤の少なくとも約80パーセントが、前記剤形が約6.8のpH値を有する液体と接触した後、約1時間以内に放出される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
薬学的剤形を調製する方法であって、該方法は、
a. 薬学的活性剤および崩壊剤を含む成分を混合し、固体コアを形成する工程;
b. 親水コロイド形成成分を含む膨潤可能なコーティングで該コアをコーティングする工程;および
c. 耐酸性腸溶性物質を含む外側コーティングを塗布する工程、
を包含する、方法。
【請求項36】
前記固体コアが錠剤として形成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
マルチコートされたコアをカプセル内に充填する工程をさらに包含する、請求項35に記載の方法。

【公表番号】特表2007−524646(P2007−524646A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520372(P2006−520372)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/022910
【国際公開番号】WO2005/009410
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506017137)ドクター レディズ ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (24)
【出願人】(399131150)ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ・リミテッド (19)
【Fターム(参考)】