説明

臨界警報装置およびその試験方法

【課題】警報発生回路の試験時にも常に臨界警報機能が維持される臨界警報装置およびその試験方法を提供する。
【解決手段】複数の放射線検出器1a,1b,1cと、前記複数の放射線検出器に接続され前記複数の放射線検出器のうち所定数のものが検出信号を生じたときに信号を出力する複数の論理回路2a,2b,2cと、前記複数の論理回路2a,2b,2cに接続され前記複数の論理回路のうちの所定数のものが信号を生じたときに警報信号を出力する2台の警報発生回路3a,3bと、前記警報発生回路の試験を行う試験回路6とを備え、前記警報発生回路の健全性試験時あるいは交換時に所定の1台の警報出力を遮断する際に他の1台が不動作状態か否かを検知し他の1台が動作状態の場合のみ警報出力を遮断するようにした構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料等の放射性物質取扱い施設における臨界事故検出のために用いられる臨界警報装置およびその試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再処理工場、核燃料廃棄物処理工場等においては、臨界警報装置を設置して、施設内に集められた核燃料から放出される放射線量を監視して核燃料が臨界に達するのを未然に防止している(特許文献1)。
【0003】
従来の臨界警報装置は一般に、図6に示すように、監視対象機器の周辺に設置した3台一組の放射線検出器1a,1b,1cと、3台一組の2/3論理回路2a,2b,2cと、1台の警報発生回路3と、1式の警告灯4およびホーンブロア5と、1台の試験回路6から構成されている(特許文献2)。
【0004】
放射線検出器1a,1b,1cで検出される放射線のレベルがある一定量を超えた場合、放射線検出器1a,1b,1cから2/3論理回路2a,2b,2cに信号が出力される。2/3論理回路2a,2b,2cは、3台の検出器1a,1b,1cの内2台以上の検出器からの信号出力が同時に一定時間継続した場合、臨界事象として判断し、警報発生回路3に出力する。この場合、放射線検出器1台だけの事象は無視される。これは、臨界警報の発報は、関係者の避難を促す重要な警報であり、ノイズなどによる誤警報は極力排除する必要があるためである。同様の理由で、警報発生回路3は、2/3論理回路3台のうち2台以上からの信号出力が同時に一定時間継続した場合、臨界事象と判断してホーンブロア5および警告灯4を動作させる。
【特許文献1】特許第3046434号公報
【特許文献2】特開2000-131488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の臨界警報装置においては、警報発生回路3が1台であるため、回路の健全性を確認する試験時に一時的に警報出力を遮断する場合、又は、故障などのため回路を交換する場合、2/3論理回路の出力を直接警告灯4等に接続し人間系で対応している。
【0006】
警報発生回路2を2台とし、冗長化して健全性試験の自動化を行う場合には、一時的に人間系で臨界警報に対応する必要はないが、下記の問題がある。
すなわち、健全性試験対象の警報発生回路の入力部信号ラインを遮断し、模擬信号を入力する場合、他の1台の警報発生回路が電源断などの不動作状態の場合、試験の間臨界警報機能を喪失する。
【0007】
また、誤操作などにより、試験時2台同時に、警報発生回路の入出力信号ラインが遮断された場合、試験の間、臨界警報機能が喪失する。
さらにまた、一方の警報発生回路の健全性を検査する場合、他方の警報発生回路の電源は正常だが機能に異常がある場合、試験の間一時的に臨界警報機能を喪失する。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、警報発生回路の試験時にも常に臨界警報機能が維持される臨界警報装置およびその試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、複数の放射線検出器と、前記複数の放射線検出器に接続され前記複数の放射線検出器のうち所定数のものが検出信号を生じたときに信号を出力する複数の論理回路と、前記複数の論理回路に接続され前記複数の論理回路のうちの所定数のものが信号を生じたときに警報信号を出力する2台の警報発生回路と、前記警報発生回路の試験を行う試験回路とを備え、前記警報発生回路の健全性試験時あるいは交換時に所定の1台の警報出力を遮断する際に他の1台が不動作状態か否かを検知し他の1台が動作状態の場合のみ警報出力を遮断するようにした構成とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、複数の放射線検出器と、前記複数の放射線検出器に接続され前記複数の放射線検出器のうち所定数のものが検出信号を生じたときに信号を出力する複数の論理回路と、前記複数の論理回路に接続され前記複数の論理回路のうち所定数のものが検出信号を生じたときに警報信号を出力する警報発生回路と、前記警報発生回路に並列に接続されたバックアップ回路と、前記警報発生回路の試験を行う試験回路とを備えた臨界警報装置の試験方法において、前記バックアップ回路の動作の健全性を確認し、その後前記警報発生回路の警報出力を遮断して前記警報発生回路の健全性試験を行う方法とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、警報発生回路の試験時にも常に臨界警報機能が維持される臨界警報装置およびその試験方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る臨界警報装置およびその試験方法の2つの実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
本実施の形態の臨界警報装置は、図1に示すように、放射線検出器1a,1b,1c、2/3論理回路2a,2b,2c、警報発生回路3a,3b、試験回路6、OR回路7、警告灯4およびホーンブロア5から構成されている。
【0013】
図2に、警報発生回路3a,3bおよび試験回路6の構成を示す。
警報発生回路3a,3bはそれぞれ、入力部AND回路21a,21b、2/3臨界判定回路22a,22b、出力部AND回路23a,23b、NOT回路24a,24b、および電源25a,25bを備えている。
【0014】
試験回路6は、模擬信号発生回路35、模擬信号発生回路入力切換スイッチ31、模擬信号発生回路出力切換スイッチ32、警報発生回路入出力遮断信号切換スイッチ33、警報発生回路電源モニタ信号切換スイッチ34、タイマー36,37、警報発生回路切換スイッチ38、2/3臨界判定回路試験スイッチ39、および試験条件判定AND回路40を備えている。
【0015】
以上のような構成において、警報発生回路3aの健全性を確認する場合、試験回路6からの模擬信号を2/3臨界判定回路22aに入力し、同回路が正常に動作するか否かを検査する。その場合、次のように操作する。
【0016】
すなわち模擬信号で臨界警報が出ないように、試験回路6から信号を出し、警報発生回路3aの出力部に設けたAND回路23aで信号の遮断を行う。
また、警報発生回路3aの2/3臨界判定回路22aの入力側からの信号で試験が妨害されることのないように、入力側からの信号をAND回路21aを使用して遮断する。
【0017】
警報発生回路3a,3bの健全性試験を行うとき、他方の警報発生回路3a,3bが電源断等の不動作の場合、試験のため当該警報発生回路3a,3bの信号を遮断すると、一時的に臨界警報機能を喪失する。そのため、下記のようになっている。
【0018】
すなわち他方の警報発生回路の電源が断している場合、2/3臨界判定回路22a,22bの入出力部は遮断できない。
また、切換スイッチ31により、警報発生回路3a,3bの試験は、2台のうちどちらか一方しか実施できない回路構成であり、同時に2系統の入出力信号が遮断されることはなく、臨界警報機能が喪失することはない。
【0019】
動作の詳細を説明すると、まず試験回路6において切換スイッチ38で、警報発生回路3a,3bのどちらの試験を行うか選択する。スイッチ選択により、試験回路6は切換スイッチ31,32,33,34を介して、例えば警報発生回路3aに接続される。切換スイッチ34は、試験回路6を警報発生回路3bの電源25bの状態を示す信号線に接続する。その後、タイマー37で設定された切換終了時間ののちに2/3臨界判定回路試験スイッチ39がONとなり、試験条件判定AND回路40において試験開始条件と電源25bがONのANDから、電源25bがONの場合のみ試験が開始できる。ON信号は切換スイッチ33を介して、NOT回路24aで反転し、警報発生回路3aの入力部AND回路21aおよび出力部AND回路23aに導かれ、信号ラインを遮断する。
【0020】
次に、タイマー36で設定された遅れ時間ののちに模擬信号発生回路35から、試験用信号を切換える切換スイッチ32を介して警報発生回路3aの2/3臨界判定回路22aに入力する。そして2/3臨界判定回路22aの出力を切換スイッチ31を経由して模擬信号発生回路35に入力し、図3に示すように健全性を判定する。図3(a)は、3ラインのうちの1ラインだけの信号では所定の時間(ΔT)内に2/3臨界判定回路22aから出力信号(破線)が出ないことを示し、図3(b)は、3ライン内いずれか2ライン以上(図の場合a.bライン)の信号出力が出た場合、所定の時間(ΔT)内に、2/3臨界判定回路22aから出力信号(破線)が出ることを示し、これによって警報発生回路3aが正常であると判断する。
【0021】
このように、他の臨界警報発生回路3bの電源25bのON,OFFを確認し、警報発生回路3aの健全性試験を実施する。
警報発生回路3bの健全性は、切換スイッチ38で、bを選択することにより、警報発生回路3aと同様に健全性試験が実施される。
【0022】
本実施の形態の臨界警報装置においては、警報発生回路3a,3bの健全性試験時、他の警報発生回路の電源がダウンしている場合には、当該の警報発生回路の試験を行わず、2/3臨界判定回路22a,22bの入出力部分の信号を維持して、試験時の一時的な臨界警報機能の喪失を防ぐことができる。
【0023】
また、切換スイッチ31,32,33,34により、2台の警報発生回路3a,3bの試験を同時に行うことはできず、誤操作などにより同時に2台の入出力信号が遮断して一時的に臨界警報機能が喪失することを防ぐことができる。
【0024】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る臨界警報装置およびその試験方法の第2の実施の形態を図4、図5を用いて説明する。なお第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
第2の実施形態の臨界警報装置は、図4に示すように、第1の実施の形態の臨界警報装置に比べて、警報発生回路3aがさらにタイマー27を備え、バックアップ回路26および出力部OR回路28が接続される。
また、試験回路6は第1の実施の形態の臨界警報装置に比べて、さらにバックアップ回路試験スイッチ41およびバックアップ回路試験AND回路42を備えている。
【0026】
第2の実施の形態の臨界警報装置は、警報発生回路3aの健全性試験を実施する場合、バックアップ回路26を並列接続した後、一連の健全性試験を第1の実施の形態と同様に行う。バックアップ回路26の出力は、出力部OR回路28によって警報発生回路3aからの信号とのORを取って出力される。バックアップ回路26は、警報発生回路3aのみに設置する。この理由は、警報発生回路3aの健全性が確認された場合、警報発生回路3bの健全性試験は、健全性の確認された警報発生回路3aを使用して行うことができるためである。
【0027】
バックアップ回路26の健全性は、試験の前に確認することにより、臨界警報機能は確保されており、2台のうちの他の警報発生回路3bの健全性如何に関係なく試験が実施できる。
【0028】
以下に各回路の動作を説明する。
試験回路6の切換スイッチ38で、警報発生回路3a,3bのどちらの試験を行うか選択する。このスイッチ選択により、試験回路6は切換スイッチ31,32,33,34で、例えば、警報発生回路3aに接続される。その後、タイマー37に設定された切換終了時間ののちに2/3臨界判定回路試験スイッチ39がONとなり、切換スイッチ33を経由して、バックアップ回路26が動作状態になる。すなわち、図5(a)に示すバックアップ回路26で、入力部AND回路50と出力部AND回路52がON状態になり動作状態となる。図5(b)の回路構成でも、同様に動作状態になる。
【0029】
次にタイマー27で設定された時間ののちNOT回路24aを経由して、警報発生回路3aの入力部AND回路21aおよび出力部AND回路23aに信号を送り、信号ラインを遮断状態にする。さらにタイマー36で設定した時間ののちに試験回路6の模擬信号発生回路35からの信号を、警報発生回路3aの2/3臨界判定回路22aに入力する。そして2/3臨界判定回路22aの出力を切換スイッチ31を経由して模擬信号発生回路35に入力し、図3に示したように健全性を判定する。
【0030】
バックアップ回路26の健全性試験は、事前に実施するものとし、バックアップ回路試験スイッチ41をONし、バックアップ回路26の信号ラインが遮断状態の時だけ(この動作はAND回路42で行う。)模擬信号発生回路35をONにして試験を行う。
【0031】
本実施の形態の臨界警報装置の試験方法においては、事前に動作確認を行ったバックアップ回路26を並列接続するので、警報発生回路3a,3bの健全性を検査するとき、他の警報発生回路の機能に異常がある場合にも、試験中であっても、臨界警報機能を喪失することがなく、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態の臨界警報装置の構成を示す図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の臨界警報装置における警報発生回路および試験回路の構成を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の臨界警報装置の動作を説明する図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の臨界警報装置の試験方法の回路構成を示す図。
【図5】本発明の第2の実施の形態の臨界警報装置の試験方法におけるバックアップ回路の構成を示す図。
【図6】従来の臨界警報装置の構成を示す図。
【符号の説明】
【0033】
1a,1b,1c…放射線検出器、2a,2b,2c…2/3論理回路、3,3a,3b…警報発生回路、4…警告灯、5…ホーンブロア、6…試験回路、7…OR回路、21a,21b…入力部AND回路、22a,22b…2/3臨界判定回路、23a,23b…出力部AND回路、24a,24b…NOT回路、25a,25b…電源、26…バックアップ回路、27…タイマー、28…出力部OR回路、31…模擬信号発生回路入力切換スイッチ、32…模擬信号発生回路出力切換スイッチ、33…警報発生回路入出力遮断信号切換スイッチ、34…警報発生回路電源モニタ信号切換スイッチ、35…模擬信号発生回路、36…タイマー、37…タイマー、38…警報発生回路切換スイッチ、39…2/3臨界判定回路試験スイッチ、40…試験条件判定AND回路、41…バックアップ回路試験スイッチ、42…バックアップ回路試験AND回路、50…入力部AND回路、51…2/3臨界判定回路、52…出力部AND回路、53…表示用LED、54…出力部OR回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射線検出器と、前記複数の放射線検出器に接続され前記複数の放射線検出器のうち所定数のものが検出信号を生じたときに信号を出力する複数の論理回路と、前記複数の論理回路に接続され前記複数の論理回路のうちの所定数のものが信号を生じたときに警報信号を出力する複数台の警報発生回路と、前記警報発生回路の試験を行う試験回路とを備え、前記警報発生回路の所定の1台の警報出力を遮断する際に他の警報発生回路が不動作状態か否かを検知し少なくとも1台が動作状態の場合のみ警報出力を遮断するようにしたことを特徴とする臨界警報装置。
【請求項2】
前記警報出力の遮断は切換スイッチにより、同時に複数台の警報発生回路の出力を遮断できない回路構成としたことを特徴とする請求項1記載の臨界警報装置。
【請求項3】
複数の放射線検出器と、前記複数の放射線検出器に接続され前記複数の放射線検出器のうち所定数のものが検出信号を生じたときに信号を出力する複数の論理回路と、前記複数の論理回路に接続され前記複数の論理回路のうち所定数のものが検出信号を生じたときに警報信号を出力する警報発生回路と、前記警報発生回路に並列に接続されたバックアップ回路と、前記警報発生回路の試験を行う試験回路とを備えた臨界警報装置の試験方法において、前記バックアップ回路の動作の健全性を確認し、その後前記警報発生回路の警報出力を遮断して前記警報発生回路の健全性試験を行うことを特徴とする臨界警報装置の試験方法。
【請求項4】
前記バックアップ回路は2/3ロジック回路たまはOR回路を備えていることを特徴とする請求項3記載の臨界警報装置の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−33068(P2007−33068A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212876(P2005−212876)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】