説明

自動分析装置およびその試薬管理方法

【課題】有効期限切れによる試薬の無駄を少なくすることができる自動分析装置とその試薬管理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】分析ユニット3〜5を備えた自動分析装置1は、分析の開始前に少なくとも試薬の液量、有効期限および予定使用量を含む管理情報を取得する取得部73aと、分析ユニット3〜5ごとに試薬に有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定する判定部73bと、試薬に有効期限切れとなる残量が生じる分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットを管理情報に基づいて算出する算出部73cと、算出部73cが算出した結果を出力するとともに、試薬に有効期限切れとなる残量が生じる旨を警報する出力部75と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応容器に分注し、この反応容器内で反応した反応液を測定することによって検体を分析する分析ユニットを複数備えた自動分析装置およびその試薬管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体と試薬とを反応容器に分注し、この反応容器内で生じる反応液を測定することによって検体を分析する分析ユニットを複数備えた自動分析装置が知られている。
【0003】
ところで、試薬容器の開封等による空気接触によって試薬の活性状態変化などの劣化を考慮し、自動分析装置に使用する各試薬には、有効期限がそれぞれ設けられている。分析処理の精度維持のためには、有効期限内の試薬を用いて測定しなければならない。このため、複数の分析ユニットを中央制御装置に接続し、この中央制御装置が各分析ユニットに収容された各々の試薬の有効期限を一括して管理する自動分析装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−315345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の自動分析装置は、分析ユニットごとに収容された試薬をこの分析ユニットで優先的に使用するため、分析終了後に残った試薬が有効期限切れとなり、試薬が無駄になる場合があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、有効期限切れによる試薬残量の無駄を少なくすることができる自動分析装置およびその試薬管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる自動分析装置は、検体と試薬とが反応した反応液を測定することによって前記検体を分析する分析ユニットを複数備えた自動分析装置において、前記分析の開始前に少なくとも前記試薬の液量、有効期限および予定使用量を含む管理情報を前記分析ユニットごとに取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記管理情報に基づいて、前記分析ユニットごとに前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定する判定手段と、前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる該分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットを、前記管理情報に基づいて算出する算出手段と、前記算出手段が算出した結果を出力するとともに、前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる旨を報知する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記算出手段が算出した結果をもとに、前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる該分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットに転送する転送手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記有効期限は、前記試薬が製造された日時に所定期間付加して設定される製造後有効期限または前記試薬を収容した試薬容器が開封された日時に所定時間付加して設定される開封後有効期限であることを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、検体と試薬とが反応した反応液を測定することによって前記検体を分析する分析ユニットを複数備えた自動分析装置の試薬管理方法において、前記分析の開始前に少なくとも前記試薬の液量、有効期限、予定使用量を含む管理情報を前記分析ユニットごとに取得する取得ステップと、前記取得ステップが取得した前記管理情報に基づいて、前記分析ユニットごとに前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定する判定ステップと、前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる該分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットを、前記管理情報に基づいて算出する算出ステップと、前記算出ステップが算出した結果を出力するとともに、前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる旨を報知する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる自動分析装置は、分析の開始前に判定手段が、取得手段が取得した少なくとも試薬の液量、有効期限および予定使用量を含む管理情報に基づいて、分析ユニットごとに試薬に有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定し、出力手段が、算出手段によって試薬に有効期限切れとなる残量が生じる分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットを、管理情報に基づいて算出した結果を出力するとともに、試薬に有効期限切れとなる残量が生じる旨を報知するようにしているので、有効期限切れによる試薬残量の無駄を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、この発明にかかる自動分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によって発明が限定されるものではない。また、図面の記載においては、同一の部分には同一の符号を付している。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態1にかかる自動分析装置の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、自動分析装置1は、検体搬送機構2、分析ユニット3〜5、試薬転送機構6および中央制御装置7を備える。
【0014】
検体搬送機構2は、図1に示すように、サンプルラック供給部20、サンプルラック回収部21、サンプルラック収容部22、搬送部23および搬送制御部24を有する。サンプルラック供給部20は、血液や尿等の検体を収容した複数の検体容器25を保持するサンプルラック26を搬送部23に供給する。サンプルラック回収部21は、測定が終了した検体容器25を保持するサンプルラック26を回収する。サンプルラック収容部22は、サンプルラック回収部21によって回収されたサンプルラック26を収容する。
【0015】
搬送部23は、追い越しライン部23a、搬送ライン部23b、回収ライン部23cおよびラインチェンジャー部23dを有する。追い越しライン部23aおよび搬送ライン部23bは、ベルトコンベア等によって実現され、図中に示す矢印方向に向けてサンプルラック26を分析ユニット3〜5の所定位置まで搬送する。回収ライン部23cは、ベルトコンベア等によって実現され、測定が終了した検体容器25を保持するサンプルラック26をサンプルラック回収部21に搬送する。ラインチェンジャー部23dは、所定のサンプルラック26をそれぞれのライン部に搬送する。搬送制御部24は、CPU等によって実現され、中央制御装置7の制御のもとで検体搬送機構2の各部の処理および動作を制御する。
【0016】
分析ユニット3〜5は、検体搬送機構2に並列して設けられ、中央制御装置7の制御のもとに作動する。分析ユニット3〜5は、ユニット間で異なる項目を分析するように、たとえば、分析ユニット3および分析ユニット4が生化学項目、分析ユニット5が免疫学項目を分析するように構成する。なお、分析ユニット3〜5の構成は、同様の構成を有するため、分析ユニット3についてのみ説明する。
【0017】
分析ユニット3は、検体分注機構30、試薬庫31、試薬情報読取部32、試薬分注機構33、攪拌部34、測光部35、洗浄部36、反応テーブル37およびユニット制御部38を有する。
【0018】
検体分注機構30は、追い越しライン部23aまたは搬送ライン部23bの所定位置に停止するサンプルラック26内の検体容器25から反応容器39に検体を分注する。試薬庫31は、分析に用いる試薬が収容された試薬容器31aを複数収容する。試薬容器31aには、内部に収容する試薬の試薬情報をバーコード、2次元コードまたは無線ICタグ(RFIDタグ)等を記憶した情報記憶媒体(図示せず)が貼付されている。ここでいう試薬情報とは、試薬の種類、ロット番号、ボトル番号、ボトルの形状および試薬の有効期限等である。試薬情報読取部32は、バーコードリーダー等によって実現され、試薬容器31aに貼付された情報記録媒体を読み取り、ユニット制御部38を介して中央制御装置7の記憶部74に読み取った試薬情報を出力する。試薬分注機構33は、試薬庫31内の所定位置に停止した試薬容器31aから反応容器39に試薬を分注する。試薬分注機構33は、試薬容器31aに収容された試薬の液面を検知する液面検知手段(図示せず)を有しており、検知した液面信号を液面高さとしてユニット制御部38を介して中央制御装置7に出力する。
【0019】
攪拌部34は、反応容器39内に分注された検体と試薬とを攪拌し反応を促進させる。測光部35は、反応容器39内に分注された液体の吸光度を測定し、ユニット制御部38を介して測定結果を中央制御装置7に出力する。洗浄部36は、測光部35による測定が終了した反応容器39を洗浄する。反応テーブル37は、複数の反応容器39を円周方向に沿って保持し、回転することにより反応容器39への検体や試薬の分注、攪拌、測光および洗浄を行うために反応容器39を所定の位置まで移送する。
【0020】
ユニット制御部38は、CPU等によって実現され、中央制御装置7の制御のもとで分析ユニット3の各部の処理および動作を制御する。ユニット制御部38は、測光部35が測定した測定結果、分析項目等を含む情報を中央制御装置7に出力する。
【0021】
試薬転送機構6は、分析ユニット3〜5に沿って設けられており、搬送部60、試薬転送部61および転送制御部62を有する。搬送部60は、試薬搬送ライン部60aおよび試薬搬送ライン部60bを有する。試薬搬送ライン部60aおよび試薬搬送ライン部60bは、ベルトコンベア等の搬送手段によって実現され、互いに異なる方向へ試薬容器31aを搬送し、試薬容器31aを分析ユニット3〜5の所定位置まで搬送する。
【0022】
試薬転送部61は、チャック等によって実現され、分析ユニット3〜5の各試薬庫31に対応して設けられる。試薬転送部61は、たとえば、分析ユニット3の試薬庫31の搬送部60側に設けられた取出し口部(図示せず)から試薬容器31aを把持し、搬送部60に引出す。そして、この引出された試薬容器31aは、搬送部60によって分析ユニット4まで搬送される。その後、分析ユニット4の試薬転送部61は、試薬容器31aを前記と同様の取出し口部(図示せず)から分析ユニット4の試薬庫31に押し込む。転送制御部62は、CPU等によって実現され、中央制御装置7の制御のもとで試薬転送機構6の各部の処理および動作を制御する。
【0023】
中央制御装置7は、制御部71、入力部72、試薬管理部73、記憶部74、出力部75および送受信部76を有する。制御部71は、CPU等によって実現され、自動分析装置1全体の処理および動作を制御する。制御部71は、試薬分注機構33の液面検知手段が検知した各試薬容器31aの液面高さをもとに各々の試薬容器31a内の液量を算出し、この算出した液量、有効期限および予定使用量と共に管理情報として記憶部74に出力する。
【0024】
入力部72は、キーボード、マウス、入出力機能を備えたタッチパネル等によって実現され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等が入力される。入力部72は、制御部71を介して操作者によって入力される分析ユニット3〜5の分析項目ごとに対応して設定されるそれぞれの試薬の予定使用量を管理情報として記憶部74に出力する。入力部72は、制御部71を介して操作者によって入力される分析の日時を記憶部74に出力する。
【0025】
試薬管理部73は、取得部73a、判定部73bおよび算出部73cを有する。取得部73aは、分析の開始前に制御部71を介して分析ユニット3〜5の各試薬庫31に収容される各々の試薬容器31aが保持する試薬の液量、有効期限および予定使用量にかかる管理情報を記憶部74から取得する。判定部73bは、取得部73aが取得した各々の試薬の管理情報に基づいて、分析ユニット3〜5の各試薬庫31に収容した各々の試薬に有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定する。算出部73cは、試薬に有効期限切れとなる残量が生じる分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析を、管理情報に基づいて算出する。
【0026】
ここでいう分析の開始前とは、自動分析装置1の電源が投入された状態であって、一連の分析処理が停止されているときをいい、たとえば、一連の分析処理に伴う前処理を行っているときをいう。また、試薬の有効期限とは、試薬が製造された日時に所定期間付加して設定される製造後有効期限、または試薬を収容した試薬容器が開封された日時に所定期間付加して設定される開封後有効期限(オンボードスタビリティ)をいい、分析の日時とは、操作者によって入力される分析の予定開始日時から予定終了日時までの予定分析時間をいう。
【0027】
記憶部74は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にこの処理にかかる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて実現される。記憶部74は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。記憶部74は、検体の分析結果、分析ユニット3〜5の各試薬庫31に収容される各々の試薬の液量、分析ユニット3〜5の分析項目ごとに対応して設定されるそれぞれの試薬の予定使用量および有効期限にかかる管理情報等を含む諸情報を記憶する。
【0028】
出力部75は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ等によって実現され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。出力部75は、算出部73cが算出した結果を出力するとともに、分析ユニット3〜5の各試薬庫31に収容した各々の試薬に有効期限切れとなる残量が生じる旨を報知する。送受信部76は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがって情報の送受信を行うインターフェースとしての機能を有する。
【0029】
以上のように構成された自動分析装置1は、分析ユニット3〜5のそれぞれにおいて、反応テーブル37上を順次移送してくる複数の反応容器39に対して、検体分注機構30が搬送部23上の検体吸引位置に停止した検体容器25から検体を分注し、試薬分注機構33が試薬庫31内の試薬容器31aから試薬を分注する。その後、測光部35が検体と試薬とを反応させた反応液を測定し、この測定結果をもとに検体の成分分析等が自動的に行われる。そして、測光部35による測定が終了した反応容器39を搬送させながら洗浄部36が洗浄し、ユニット制御部38が検体の分析結果を中央制御装置7に出力する。
【0030】
ここで、図2に示すフローチャートを参照して、分析の開始前に制御部71が行う試薬転送情報表示処理について説明する。なお、以下では、一つの分析項目に対応して設定される試薬の試薬転送表示処理を行う場合の一連の処理を説明する。
【0031】
まず、制御部71は、記憶部74に記憶された試薬容器31aに収容された試薬の液量を取得部73aに取得させる(ステップS101)。その後、制御部71は、記憶部74に記憶された試薬の予定使用量を取得部73aに取得させる(ステップS102)。
【0032】
その後、制御部71は、判定部73bに試薬管理部73が取得した試薬容器31aに収容された試薬の液量と試薬の予定使用量とに基づいて、試薬容器31aに試薬の残量が生じるか否かを判定させる(ステップS103)。判定部73bが試薬容器31aに試薬の残量が生じると判定した場合(ステップS103:Yes)、制御部71は、記憶部74に記憶された分析の日時を取得部73aに取得させる(ステップS104)。その後、制御部71は、記憶部74に記憶された試薬の製造後有効期限を取得部73aに取得させる(ステップ105)。一方、判定部73bが試薬容器31aに試薬の残量が生じないと判定した場合(ステップS103:No)、ステップS111に移行する。
【0033】
その後、制御部71は、判定部73bに取得部73aが取得した分析の日時と試薬の製造後有効期限とに基づいて、試薬容器31aに収容された試薬に製造後有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定させる(ステップS106)。判定部73bが試薬容器31aに収容された試薬に製造後有効期限切れとなる残量が生じると判定した場合(ステップS106:Yes)、制御部71は、出力部75に試薬容器31aに収容された試薬に製造後有効期限切れとなる残量が生じる旨、たとえば、図3に示す製造後有効期限切れメッセージM1を出力させるとともに、この旨を報知させる(ステップS107)。一方、判定部73bが試薬容器31aに収容された試薬に製造後有効期限切れとなる残量が生じないと判定した場合(ステップS106:No)、制御部71は、記憶部74に記憶された試薬の開封後有効期限を試薬管理部73に取得させる(ステップS108)。
【0034】
その後、制御部71は、判定部73bに取得部73aが取得した分析の日時と試薬の開封後有効期限とに基づいて、試薬容器31aに収容された試薬に開封後有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定させる(ステップS109)。判定部73bが試薬容器31aに収容された試薬に開封後有効期限切れとなる残量が生じると判定した場合(ステップS109:Yes)、制御部71は、出力部75に試薬容器31aに収容された試薬に開封後有効期限切れとなる残量が生じる旨、たとえば、図4に示す開封後有効期限切れメッセージM2を出力させるとともに、この旨を報知させる(ステップS110)。一方、判定部73bが試薬容器31aに収容された試薬に開封後有効期限切れとなる残量が生じないと判定した場合(ステップS109:No)、ステップS111に移行する。
【0035】
その後、制御部71は、判定部73bによる判定処理が全ての分析ユニットで終了したか否かを判定する(ステップS111)。判定部73bによる判定処理が全ての分析ユニットで終了した場合(ステップS111:Yes)、ステップS112に移行する。一方、判定部73bによる判定処理が全ての分析ユニットで終了していない場合(ステップS111:No)、ステップS101に移行し、上述したステップS101〜ステップS110の処理を繰り返す。
【0036】
その後、制御部71は、記憶部74から試薬の転送情報表示の指示があるか否かを判定する(ステップS112)。具体的には、図5に示す試薬情報メニューM3に基づいて、試薬の転送情報表示の指示があるか否かを判定する。試薬の転送情報表示の指示がある場合(ステップS112:Yes)、制御部71は、算出部73cに試薬に有効期限切れとなる残量が生じる分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットを管理情報に基づいて算出させる(ステップS113)。一方、試薬の転送情報表示の指示がない場合(ステップS112:No)、本処理を終了する。
【0037】
その後、制御部71は、出力部75に算出部73cが算出した試薬に有効期限切れとなる残量が生じる分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニット、たとえば、図6に示す試薬転送メッセージM4を出力させ(ステップS114)、本処理を終了する。
【0038】
ここで、算出部73cが行う算出の概要について詳細に説明する。算出部73cは、図5に示す試薬情報メニューM3の分析情報と管理情報とに基づいて、試薬に有効期限切れとなる残量が生じる分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットを算出する。具体的には、分析項目「CHOLESTEROL」において、現在日時2008年7月17日(木)における分析ユニット3の試薬予定使用量が10mlであるのに対して、試薬庫31に収容された試薬番号「0001」の試薬容器31aは、試薬の残量が30mlである。このため、分析ユニット3は、分析終了後に試薬の残量が20ml生じるが、この残量の有効期限が2008年8月30日であるため、試薬の残量が有効期限切れとならない。
【0039】
これに対して、分析ユニット4は、試薬予定使用量が40mlであるのに対して、試薬庫31に収容された試薬番号「0002」,「0003」,「0004」の試薬容器31aは、試薬の残量がそれぞれ25ml,5ml,15mlである。このとき、分析ユニット4は、分析終了後に試薬の残量が5ml生じ、この残量の有効期限が2008年7月17日18時00分である。このため、このまま分析を実行すると、分析ユニット4における試薬の残量5mlが有効期限切れとなる。そこで、分析ユニット4の試薬番号「0003」の試薬容器31aを分析ユニット3に移動すると、分析終了後に分析ユニット3における試薬の残量が25mlとなるが、有効期限が2008年8月30日であるため、試薬の無駄が生じない。このため、算出部73cは、分析ユニット4の残量が有効期限切れとなる試薬を収容した試薬番号「0003」の試薬容器31aを消費可能な分析ユニットを分析ユニット3として算出する。この場合、分析ユニット3は、試薬番号「0003」、試薬番号「0001」の試薬容器31aの順に試薬を使用する。
【0040】
ここで、図6に示す試薬転送メッセージM4に基づいて分析の開始前に自動分析装置1が実行する試薬転送処理の概要を説明する。制御部71は、算出部73cの上述した算出結果に基づいて転送制御部62に制御信号を入力し、この制御信号もとに転送制御部62が各部の動作を制御する。試薬転送部61は、分析ユニット4の試薬庫31に収容された試薬番号「0003」の試薬容器31aを試薬搬送ライン部60b上に引出し、搬送部60は、試薬搬送ライン部60bを駆動し、試薬番号「0003」の試薬容器31aを分析ユニット3に搬送する。その後、試薬転送部61は、所定の位置に停止した試薬番号「0003」の試薬容器31aを分析ユニット3の試薬庫31へ押し込む。このようにして、自動分析装置1は、残量が有効期限切れとなる試薬を消費可能な他の分析ユニットへ転送して使い切るよう試薬転送処理を分析の開始前に実行する。なお、自動分析装置1は、試薬を移動させた場合には、分析の開始前に分析精度を確保するため、移動させた試薬に対してキャリブレーションを行う。
【0041】
この実施の形態1では、分析の開始前に判定部73bが、取得部73aが取得した少なくとも試薬の液量、有効期限および予定使用量を含む管理情報に基づいて、分析ユニット3〜5ごとに試薬に有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定し、出力部75が、算出部73cによって試薬に有効期限切れとなる残量が生じる分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットを管理情報に基づいて算出した結果を出力するとともに、試薬に有効期限切れとなる残量が生じる旨を報知するようにしているので、有効期限切れによる試薬残量の無駄を少なくすることができる。
【0042】
また、この実施の形態1では、残量が有効期限切れとなる試薬を消費可能な他の分析ユニットを管理情報に基づいて算出し、残量が有効期限切れとなる試薬を複数収容した分析ユニットから他の分析ユニットで使用するようにしているので、試薬に有効期限切れとなる残量を生じることを防止するために1つの分析ユニットで分析処理を集中させて行う必要がないため、自動分析装置全体の分析処理の処理能力を落とすことなく効率的に分析処理を行うことができる。
【0043】
(実施の形態2)
つぎに、この実施の形態2について説明する。図7は、この実施の形態2にかかる自動分析装置を含む自動分析システム100の概要を示す模式図である。自動分析システム100は、図7に示すように、自動分析装置A1〜Am(mは4以上の正の整数)が通信ネットワークNを介して管理サーバH1に接続されている。このとき、自動分析装置A1〜Amは、たとえば、分析センター等の同一の施設内に設置されている。なお、その他の構成で実施の形態1と同一構成部分には同一符号を付している。
【0044】
自動分析装置A1は、分析ユニット3、検体搬送機構80および制御機構81を備える。また、その他の自動分析装置A2〜Amは、自動分析装置A1と同様の構成であるため、自動分析装置A1のみ説明する。なお、自動分析装置A1〜Amの分析項目は、互いに同じである必要はなく、生化学項目、免疫学項目または遺伝学項目等の各種分析項目が異なる自動分析装置が含まれていてもよい。
【0045】
検体搬送機構80は、ベルトコンベア等の駆動手段によって実現され、複数の検体容器25を保持するサンプルラック26を少なくとも1つ以上収容し、収容したサンプルラック26を図中の矢印方向に順次移送する。
【0046】
制御機構81は、制御部81a、入力部81b、分析部81c、記憶部81d、出力部81eおよび送受信部81fを有する。制御部81aは、CPU等によって実現され、自動分析装置A1の各部の処理および動作を制御する。制御部81aは、試薬分注機構33の液面検知手段が検知した各試薬容器31aの液面高さをもとに各々の試薬容器31a内の液量を算出し、この算出した液量、有効期限および予定使用量にかかる管理情報を記憶部81dに出力する。
【0047】
入力部81bは、キーボード、マウス、入出力機能を備えたタッチパネル等によって実現され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等が入力される。分析部81cは、測光部35によって測定された測定結果に基づいて検体の成分分析等を行う。
【0048】
記憶部81dは、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置A1が処理を実行する際にこの処理にかかる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて実現され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部81dは、制御部81aが算出した各々の試薬容器31a内の液量、予定使用量および有効期限にかかる管理情報を記憶する。
【0049】
出力部81eは、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ等によって実現され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。送受信部81fは、通信ネットワークNを介して所定の形式にしたがって情報の送受信を行うインターフェースとしての機構を有する。送受信部81fは、通信ネットワークNを介して試薬庫31に収容される各々の試薬容器31a内の液量、有効期限および予定使用量にかかる管理情報を管理サーバH1に出力する。
【0050】
管理サーバH1は、上述した実施の形態1にかかる自動分析装置1が備える中央制御装置7の構成と同じである。そこで、管理サーバH1で中央制御装置7が有する部位と対応する部位については、中央制御装置7とそれぞれ同じ符号を付してある。管理サーバH1の試薬管理部73は、通信ネットワークNを介して自動分析装置A1〜Amそれぞれの記憶部81dに記憶された各々の試薬容器31a内の試薬の管理情報および試薬情報を取得する。
【0051】
この実施の形態2では、分析の開始前に、管理サーバH1の判定部73bが、試薬管理部73が取得した少なくとも試薬の液量、有効期限および予定使用量を含む管理情報に基づいて、図2に示したフローチャートの下に処理する。即ち、自動分析システム100は、自動分析装置A1〜Amごとに試薬に有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定する。そして、判定部73bが有効期限切れとなる残量が生じると判定した場合、管理サーバH1の出力部75が、算出部73cによって残量が有効期限切れとなる試薬の液量と自動分析装置A1〜Amごとの試薬の予定使用量とに基づいて、消費可能な他の自動分析装置を算出した結果を出力するとともに、試薬に有効期限切れとなる残量が生じる旨を報知するようにしているので、有効期限切れによる試薬の無駄を少なくすることができる。
【0052】
また、この実施の形態2では、出力部75が出力する情報に基づいて、操作者が消費可能な他の自動分析装置に残量が有効期限切れとなる試薬を転送することにより、1つの自動分析装置で分析処理を集中させて行う必要がないため、各自動分析装置の処理能力を落とすことなく効率的に分析処理を行うことができる。
【0053】
また、この実施の形態2では、複数の自動分析装置の試薬を管理サーバH1で一元的に管理するため、大規模な分析センターなどにおいて有効期限切れによる試薬の無駄を少なくすることができ、試薬を効率よく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1にかかる自動分析装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1にかかる自動分析装置が行う試薬転送情報表示処理の概要を示すフローチャートである。
【図3】出力部の出力画面の一例を示す図である。
【図4】出力部の出力画面の一例を示す図である。
【図5】出力部の出力画面の一例を示す図である。
【図6】出力部の出力画面の一例を示す図である。
【図7】実施の形態2にかかる自動分析装置を含む自動分析システムの概要を示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1,A1〜Am 自動分析装置
2,80 検体搬送機構
3,4,5 分析ユニット
6 試薬転送機構
7 中央制御装置
20 サンプルラック供給部
21 サンプルラック回収部
22 サンプルラック収容部
23 搬送部
23a 追い越しライン部
23b 搬送ライン部
23c 回収ライン部
23d ラインチェンジャー部
24 搬送制御部
25 検体容器
26 サンプルラック
30 検体分注機構
31 試薬庫
31a 試薬容器
32 試薬情報読取部
33 試薬分注機構
34 攪拌部
35 測光部
36 洗浄部
37 反応テーブル
38 ユニット制御部
39 反応容器
60 搬送部
60a,60b 試薬搬送ライン部
61 試薬転送部
62 転送制御部
71,81a 制御部
72,81b 入力部
73 試薬管理部
73a 取得部
73b 判定部
73c 算出部
74,81d 記憶部
75,81e 出力部
76,81f 送受信部
81c 分析部
H1 管理サーバ
N 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とが反応した反応液を測定することによって前記検体を分析する分析ユニットを複数備えた自動分析装置において、
前記分析の開始前に少なくとも前記試薬の液量、有効期限および予定使用量を含む管理情報を前記分析ユニットごとに取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記管理情報に基づいて、前記分析ユニットごとに前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定する判定手段と、
前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる該分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットを、前記管理情報に基づいて算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した結果を出力するとともに、前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる旨を報知する出力手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記算出手段が算出した結果をもとに、前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる該分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットに転送する転送手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記有効期限は、前記試薬が製造された日時に所定期間付加して設定される製造後有効期限または前記試薬を収容した試薬容器が開封された日時に所定時間付加して設定される開封後有効期限であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
検体と試薬とが反応した反応液を測定することによって前記検体を分析する分析ユニットを複数備えた自動分析装置の試薬管理方法において、
前記分析の開始前に少なくとも前記試薬の液量、有効期限、予定使用量を含む管理情報を前記分析ユニットごとに取得する取得ステップと、
前記取得ステップが取得した前記管理情報に基づいて、前記分析ユニットごとに前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じるか否かを判定する判定ステップと、
前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる該分析ユニットの試薬を消費可能な他の分析ユニットを、前記管理情報に基づいて算出する算出ステップと、
前記算出ステップが算出した結果を出力するとともに、前記試薬に有効期限切れとなる残量が生じる旨を報知する出力ステップと、
を含むことを特徴とする自動分析装置の試薬管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−164332(P2010−164332A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4777(P2009−4777)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】