説明

自動分析装置

【課題】各種の測定項目で分析される複数の被検試料を共通のタイムチャートで順番に分注、撹拌、及び測定工程に導入させていく方式であっても、測定精度の悪化防止と撹拌時間の短縮を図ることのできる自動分析装置を提供する。
【解決手段】反応管内に分注された試薬の種類及び液量の組み合わせ、又は反応管内に分注された被検試料に割り当てられた測定項目に応じて、撹拌子を揺動させる圧電体に印加する交流電圧の周波数、電圧、及び撹拌子を反応管に挿入する深さを示す情報を記録したデータベースを記憶しておく。そして、データベースを参照し、撹拌手段に搬送されてきた反応管内の被検試料に割り当てられた測定項目、又は分注された試薬の種類及び液量から、深さの情報を取得し、その深さまで撹拌子を挿入する。同じくデータベースから周波数及び電圧の情報を取得し、その交流電圧を圧電体に印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検試料と試薬とを分注して撹拌し、被検試料に含まれる化学成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、被検試料と試薬とを分注してその混合液の反応を分析する装置である。生化学検査項目や免疫血清検査項目を測定項目とし、反応管に血清や尿等の被検試料と試薬とを分注する。そして、これらを撹拌して反応させた後、透過光を用いて色調や濁りの変化を測定することにより検体中の被測定物質の濃度や酵素の活性を測定する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に分析条件の設定により測定可能になった多数の検査項目の中から、検査に応じて選択された検査項目の測定が行われる。そして、この各種の測定対象である複数の被検試料が共通の一路上に載置され、それらがその一路上に配される試薬の分注、撹拌、測定、及び測定結果の出力の工程をタイムチャートに従って順番に巡る。載置された被検試料には、それぞれ測定項目が割り当てられており、その測定項目に応じた試薬が分注され、撹拌工程に回される。
【0004】
具体的には、分注工程が行われる位置に各反応管を次々と一定時間停止させ、その間に各反応管内に被検試料及びその被検試料を測定する測定項目に対応する試薬を分注する。次に、撹拌工程が行われる位置に各反応管を次々と一定時間停止させ、その間に反応管内の被検試料及び試薬の混合液を撹拌する。次に、測定工程が行われる位置を各反応管を次々と通過させ、反応管内の混合液を測定する。分注に用いられたプローブ、撹拌に用いられた撹拌子、及び反応管は、一本の反応管或いは一被検試料に対する処理の終了毎に洗浄され、洗浄終了毎に繰り返し測定に使用される。
【0005】
撹拌工程では、被検試料と試薬とを均一に反応させるために、被検試料と試薬とを十分に撹拌することが重要である。液体の撹拌方法としては、モータの回転軸に取り付けた撹拌子を反応管に挿入して液体中で回転させる方法がある(例えば、「特許文献1」参照)。また、根元にバイモルフ圧電体を取り付けた撹拌子を反応管に挿入して、液体中で撹拌子を振動させる方法がある(例えば、「特許文献2」参照。)。また、撹拌子に音波発生体を設けて、混合液中で音波を発生させて撹拌する方法も提案されている(特許文献3参照。)。
【0006】
近年、自動分析装置は、その処理能力が飛躍的に進歩しつつある。更なる処理能力の向上のためには、分注、撹拌、測定、及び測定結果の出力の工程のうち、撹拌工程に要する時間の短縮を達成することが待望されている。しかし、複数の被検試料が順に各工程を巡る方式の自動分析装置では、共通のタイムチャートに従って各工程を巡る方式が望ましい。従って、いずれの測定項目においてもその撹拌時間は一定とし、その撹拌時間は、混合液が均一になる時間が一番遅い測定項目に合わせて決定せざるを得ない。
【0007】
そのため、単に撹拌時間を短縮してしまうと、測定項目によっては混合液が十分に均一にならず、反応が不十分となり、測定精度が悪化してしまう場合がある。測定項目によって被検体試料や試薬の粘性や界面活性剤の含有量等の液特性が異なるため、被検試料と試薬とを均一に混合させるために要する時間が異なるからである。
【0008】
【特許文献1】特許第2862638号公報
【特許文献2】特許第3135605号公報
【特許文献3】特開2005−257406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各種の測定項目で分析される複数の被検試料を共通のタイムチャートで順番に分注、撹拌、及び測定工程に導入させていく方式であっても、測定精度の悪化防止と撹拌時間の短縮を図ることのできる自動分析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明に係る自動分析装置は、被検試料毎に各種の測定項目のうちの何れかを割り当てて、それら被検試料を順々に処理して分析する自動分析装置であって、複数の反応管が載置された搬送路を有し、複数の反応管を順に搬送する搬送手段と、前記搬送路上に位置し、前記反応管毎に一の被検試料を分注するとともに、分注した被検試料に割り当てられた測定項目に対応する種類の試薬を各種の液量で分注する分注プローブと、前記搬送路上に位置し、前記反応管内に挿入されて揺動する撹拌子及び交流電圧が印加されることで前記撹拌子を揺動させる圧電体を有する撹拌手段と、前記撹拌子の挿入及び揺動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記試薬の種類及び液量の組み合わせに応じて、前記交流電圧の周波数、電圧、及び前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを記憶する記憶手段と、前記分注される前記試薬の種類及び液量を前記被検試料毎に入力するための入力手段と、前記撹拌手段に搬送されてきた前記反応管内の被検試料に応じて、前記入力された前記試薬の種類及び液量を基に前記記憶手段を参照して得られた前記深さまで、前記撹拌子を前記反応管に挿入するアームと、前記撹拌手段に搬送されてきた被検試料に応じて、前記入力された前記試薬の種類及び液量を基に前記記憶手段を参照して得られた前記周波数及び前記電圧の前記交流電圧を前記圧電体に印加する印加手段と、を含むこと、を特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するために、請求項2記載の本発明に係る自動分析装置は、被検試料毎に各種の測定項目のうちの何れかを割り当てて、それら被検試料を順々に処理して分析する自動分析装置であって、複数の反応管が載置された搬送路を有し、複数の反応管を順に搬送する搬送手段と、前記搬送路上に位置し、前記反応管毎に一の被検試料を分注するとともに、分注した被検試料に割り当てられた測定項目に対応する種類の試薬を各種の液量で分注する分注プローブと、前記搬送路上に位置し、前記反応管内に挿入されて揺動する撹拌子及び交流電圧が印加されることで前記撹拌子を揺動させる圧電体を有する撹拌手段と、前記撹拌子の挿入及び揺動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、測定項目の種類に応じて、前記交流電圧の周波数、電圧、及び前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを記憶する記憶手段と、前記測定項目を前記被検試料毎に入力するための入力手段と、前記撹拌手段に搬送されてきた被検試料に応じて、前記入力された前記測定項目の種類を基に前記記憶手段を参照して得られた前記深さまで、前記撹拌子を前記反応管に挿入するアームと、前記撹拌手段に搬送されてきた被検試料に応じて、前記入力された前記測定項目の種類を基に前記記憶手段を参照して得られた前記周波数及び前記電圧の前記交流電圧を前記圧電体に印加する印加手段と、を含むこと、を特徴とする。
【0012】
前記記憶手段は、前記交流電圧の周波数、電圧、及び前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さに前記被検試料の種類を更に加えて記憶し、前記入力手段には、前記被検試料の種類が更に入力され、前記制御手段は、前記入力された前記被検試料の種類を含む情報を基に前記記憶手段を参照して、前記撹拌子の挿入及び揺動を制御するようにしてもよい(請求項3記載の発明に相当)。
【0013】
前記制御手段は、前記交流電圧の周波数、電圧、又は前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを、一つの前記反応管内の撹拌中に可変制御するようにしてもよい(請求項4記載の発明に相当)。
【0014】
前記制御手段は、前記交流電圧の周波数、電圧、又は前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを所定タイミングで切り替える時分割制御をするようにしてもよい(請求項5記載の発明に相当)。
【0015】
前記制御手段は、前記交流電圧の周波数若しくは電圧、又はこれらの双方を時間的に可変させる変調制御をするようにしてもよい(請求項6記載の発明に相当)。
【0016】
前記記憶手段は、前記切り替え前後の前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さをそれぞれ記憶し、前記制御手段は、前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを時間的に可変させるようにしてもよい(請求項7記載の発明に相当)。
【0017】
また、上記課題を解決するために、請求項8記載の本発明に係る自動分析装置は、被検試料毎に各種の測定項目のうちの何れかを割り当てて、それら被検試料を順々に処理して分析する自動分析装置であって、複数の反応管が載置された搬送路を有し、複数の反応管を順に搬送する搬送手段と、前記搬送路上に位置し、前記反応管毎に一の被検試料を分注するとともに、分注した被検試料に割り当てられた測定項目に対応する種類の試薬を各種の液量で分注する分注プローブと、前記搬送路上に位置し、前記反応管内の内容液を撹拌する撹拌手段と、前記試薬の種類及び液量の組み合わせ又は前記測定項目の種類に応じて、前記撹拌の周波数、振幅、及び前記反応管内の撹拌源の深さを記憶する記憶手段と、前記分注される前記試薬の種類及び液量又は前記測定項目の種類を前記被検試料毎に入力するための入力手段と、前記撹拌手段に搬送されてきた被検試料に応じて、前記撹拌手段による前記撹拌の周波数、振幅、及び前記撹拌源の深さを、前記入力された前記試薬の種類及び液量又は前記測定項目の種類を基に前記記憶手段を参照して制御する制御手段と、を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、それぞれの測定対象を測定項目、又は試薬の種類及び液量に応じた撹拌態様で撹拌をすることができるため、どのような試薬を分注したとしてもその撹拌に要する時間を短縮することができる。従って、自動分析装置の処理時間が短縮する。さらに、撹拌工程を基準に確保していた搬送停止時間を決定していた場合には、自動分析装置100の処理時間を飛躍的に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る自動分析装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
図1は、自動分析装置100の構成を示す図である。
【0021】
自動分析装置100は、被検試料と試薬とを分注してその混合液の反応を分析することにより、被検試料に含まれる化学成分を分析する装置である。被検試料は、分析対象であり、例えば血清や尿等である。試薬は、被検試料の成分を化学反応させる薬品である。試薬容器7は、この試薬を内容物として収容しておく器である。試薬容器7には、被検試料の測定項目に対して選択的に反応する各種の第1試薬や、第1試薬と対の各種の第2試薬が収容されている。
【0022】
この試薬容器7は、円形状の試薬ラック1に環状に並んで収納されている。第1試薬の入った試薬容器7を収納した試薬ラック1は、試薬庫2に収納され、第2試薬の入った試薬容器7を収容した試薬ラック1は、試薬庫3に収納される。被検試料は、被検試料容器17に複数収容される。この被検試料容器17は、ディスクサンプラ6にセットされている。
【0023】
試薬庫2の近傍には、第1試薬用分注プローブ14が配置される。試薬庫3の近傍には、第2試薬用分注プローブ15が配置される。ディスクサンプラ6の近傍には、被検試料用分注プローブ16が配置される。第1試薬用分注プローブ14は、試薬庫2上の所定吸引位置に存在する試薬容器7から1サイクル毎に第1試薬を吸引する。第2試薬用分注プローブ15は、試薬庫3上の所定吸引位置に存在する試薬容器7から1サイクル毎に第2試薬を吸引する。被検試料用分注プローブ16は、ディスクサンプラ6上の被検試料容器17から被検試料を吸引する。
【0024】
ディスクサンプラ6は、図示しない駆動装置によって1サイクル毎に制御された角度回転する。試薬ラック1は、各々図示しない駆動装置によって1サイクル毎に、そのサイクルに対応した角度だけ回動する。具体的には、ディスクサンプラ6が回転したことで被検試料用分注プローブ16に吸引される被検試料の測定項目に使用される試薬の収容位置まで回動する。
【0025】
また、第1試薬用分注プローブ14、第2試薬用分注プローブ15、及び被検試料用分注プローブ16は、所謂ストローであり、図示しないポンプによって1サイクル毎に内部に負圧がかけられることで、第1試薬、第2試薬、及び被検試料を吸引する。
【0026】
吸引された第1試薬、第2試薬、及び被検試料は、吐出されることで、所定位置に存在する反応管4に分注される。反応管4は、円形状の反応ディスク5に環状に並んで収納されている。反応ディスク5も、図示しない駆動装置によって1サイクル毎に所定角度ずつ回動する。即ち、この反応ディスク5は、回動することで、反応管4とこれに収容された被検試料を順に搬送していく搬送手段となる。
【0027】
第1試薬用分注プローブ14は、分注アーム8に支持され、第2試薬用分注プローブ15は、分注アーム9に支持され、被検試料用分注プローブ16は、分注アーム10に支持される。分注アーム8、分注アーム9、及び分注アーム10は、図示しない駆動装置によって回動及び上下動が可能となっており、第1試薬用分注プローブ14、第2試薬用分注プローブ15、及び被検試料用分注プローブ16は、この分注アーム8、分注アーム9、及び分注アーム10の回動及び上下動によって試薬容器7及び被検試料容器17内に先端を突入させられ、内部の負圧により第1試薬、第2試薬、及び被検試料を吸引する。
【0028】
反応ディスク5の外周囲には、撹拌ユニット11と、測光ユニット13と、洗浄ユニット12が円周方向に沿って並べられている。撹拌ユニット11は、1サイクル毎に、撹拌位置に停止した反応管4内における被検試料+第1試薬や被検試料+第1試薬+第2試薬などの混合液を撹拌する。測光ユニット13は、混合液を収容した反応管4を測光位置から測定する測定手段である。測光ユニット13は、反応管4を挟んで配置される光源と受光部を有し、例えば、混合液の吸光度を測光する。洗浄ユニット12は、洗浄・乾燥位置に停止した反応管4内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応管4内を洗浄・乾燥する。
【0029】
図2は、撹拌ユニット11の構成を示す図である。
【0030】
撹拌ユニット11は、撹拌子110と圧電体111とを有する。撹拌子110は、板棒形状を有し、その長さ方向を反応管4の開口に向けて取り付けられており、撹拌源となる。圧電体111は、撹拌子110の根元側に取り付けられている。圧電体111は、振動面を撹拌子110の板面に接触させて取り付けられている。
【0031】
圧電体111は、2個の圧電素子112,113を対向させて貼り合わせた構造を有する。圧電素子112,113は、圧電効果を有する素材で形成されている。この圧電素子112,113は、それぞれ電極対で挟み込まれており、電極対で挟み込まれた面が振動面となる。電極対は、貼り合わされた圧電素子112,113の外面側に同極の電極114aが配置され、内面側に共通の電極114bが配置される。即ち、この圧電体111は、バイモルフ圧電体である。
【0032】
このような撹拌ユニット11において、撹拌子110は、アーム201により上下動可能に支持されている。上下とは、撹拌子110の延び方向、換言すると反応管4の開口に向けた方向である。アーム201は、図示しないギアモータを有しており、撹拌時には電源供給を受けて駆動し、撹拌子110の先端を反応管4の底から所定の高さP1まで下降させる。また、アーム201は、撹拌終了時には再び電源供給を受けて駆動し、撹拌子110の先端を反応管4から離脱させるまで上昇させる。
【0033】
また、圧電体111には、発振器202が電極対を介して電気的に接続されている。発振器202は、各種周波数及び各種電圧の交流を出力する電気回路である。パルスを出力するようにしても良い。この発振器202は、出力側に制御電圧が印加される可変抵抗を有して当該制御電圧を変化させる等によって交流電圧の大きさ、換言すると振幅が可変となっている。また、この発振器202は、制御電圧が印加される可変容量ダイオードを有して当該制御電圧を変化させる等により交流電圧の周波数が可変となっている。発振器202の一端から延びるリード線は、圧電体111の両外の電極114aに接続され、他端から延びるリード線は、圧電体111の内側の電極114bに接続されている。
【0034】
発振器202から交流電圧が出力されると、圧電体111の圧電素子112,113は、圧電横効果により電極114aと114bが向かい合う方向と直交する方向、即ち、撹拌子110の長さ方向に伸縮運動を繰り返す。上記リード線の取り付け方により、向かい合う圧電素子112と圧電素子113の伸縮運動の位相は交流電圧の位相のπだけずれることとなり、一方が伸張しているときには他方は収縮し、一方が収縮しているときは他方は伸張する。
【0035】
従って、圧電体111の圧電素子112が伸張しているときには圧電素子113が収縮して圧電体111が圧電素子112側に反り、圧電素子112が収縮しているときは圧電素子113が伸張して圧電体111が圧電素子113側に反る。即ち、圧電体111は、交流電圧の印加を受けて屈曲振動する。圧電体111は、その振動により撹拌子110の根元を間欠的に押圧し、結果、撹拌子110は、根元を基点に連続的に振り運動、換言すると揺動する。この撹拌子110は、発振器202が圧電体111に印加した交流電圧の周波数及び電圧に応じた周波数及び振幅で揺動する。
【0036】
アーム201が撹拌子110を反応管4内に挿入する深さ、発振器202が印加する交流電圧の周波数、及び電圧は、分析制御部20により制御される。
【0037】
図3は、この自動分析装置100における制御系を示すブロック図である。
【0038】
図3に示すように、自動分析装置100の制御系100aは、入力部18とシステム制御部19と分析制御部20とデータ処理部22と出力部23とを備えている。
【0039】
入力部18は、例えばGUI画面による操作の場合にはマウスやキーボードやタッチパネルとモニタとを含む。この入力部18は、測定項目の登録に用いられ、測定項目毎の分析条件が予め入力される。具体的には、測定項目に対して、分注される第1試薬の種類及び液量、分注される第2試薬の種類及び液量等が入力される。この試薬の種類は、試薬の種類は、試薬メーカによっても区別される。また、この入力部18は、被検試料に対する測定項目の割り当てに用いられ、ディスクサンプラ6の載置位置で特定される被検試料のそれぞれに対する測定項目の選択が入力される。即ち、実際にはディスクサンプラ6の載置位置に測定項目が関連づけられる。尚、測定項目は、上述のように試薬の種類及び液量をも特定するものであるから、この測定項目の入力は、分注する試薬の種類及び液量の入力と言い換えることもできる。但し、ディスクサンプラ6の載置位置で特定される被検試料のそれぞれに対して、直接、分注する試薬の種類及び液量を入力してもよい。
【0040】
分析制御部20は、試薬ラック1、試薬庫2,3、反応ディスク5、ディスクサンプラ6、分注アーム8、分注アーム9、分注アーム10、撹拌ユニット11、洗浄ユニット12、及び測光ユニット13で構成される分析部21の測定動作の制御を行う。データ処理部22は、例えば、演算制御装置等を含み構成され、分析部21から出力された被検試料データを演算処理して検量線データや分析データを生成する。出力部23は、例えばモニタ231やプリンタ232であり、データ処理部22からの検量線データや分析データを出力する。システム制御部19は、例えば演算制御装置を含み構成され、上述したこれらのユニットを統括して制御する。
【0041】
さらに、分析制御部20は、分析部21の各ユニットの駆動機構である機構部と機構部を制御する制御部204とを備えている。撹拌ユニット11に対しては、アーム201、発振器202、及び記憶部203を備えている。
【0042】
制御部204は、機構部に所定のサイクル単位で信号を出力する。各機構部は、この信号の入力ごとに、試薬ラック1、試薬庫2,3、反応ディスク5、ディスクサンプラ6、分注アーム8、分注アーム9、分注アーム10、撹拌ユニット11、洗浄ユニット12、及び測光ユニット13を駆動する。
【0043】
具体的には、制御部204は、反応ディスク5とディスクサンプラ6を1サイクル毎に所定角度ずつ回動させ、ディスクサンプラ6の被検試料吸引位置に存在する被検試料に対して選択された試薬を吸引位置に位置するように試薬ラック1を回動させる。
【0044】
また、制御部204は、撹拌についての制御も行い、発振器202が印加する交流電圧の電圧及び周波数と、アーム201が挿入させる撹拌子110の深さを制御する。この撹拌の制御は、分注する試薬の種類及び液量に応じて行い、記憶部203に記憶されているデータベースが参照される。
【0045】
図4は、記憶部203に記憶されているデータベースを示すデータ構造図である。
【0046】
データベースには、試薬の種類を示す試薬情報301及び試薬の液量を示す液量情報302との各組み合わせに対して、制御パラメータが記憶されている。制御パラメータは、圧電体111に印加する交流電圧の大きさを示す電圧情報304、この交流電圧の周波数を示す周波数情報305、撹拌子110を挿入する深さを示す深さ情報306、及びこれらパラメータを可変させる方式を示す制御方式情報303である。深さは、反応管4の底から撹拌子110の先端までの距離で定義される。
【0047】
このデータベースには、例えば、試薬情報301として「A社○○○R1」なる試薬の種類とその試薬の液量情報302として「100(μL)」なる液量とが組にして登録されており、これらに制御方式情報303として「固定」、電圧情報として「10(V)」、周波数情報として「100(Hz)」、深さ情報として「0.5(mm)」が対応づけて記憶されている。
【0048】
尚、制御方式情報303としては、「固定」、「時分割」、「周波数変調」、「振幅変調」、「周波数・振幅変調」、「深さ可変」等の方式が存在する。「固定」は、撹拌処理中に交流電圧や撹拌子110を挿入する深さを不変とする制御方式である。「時分割」は、撹拌処理中に撹拌開始から一定時間が経過したタイミングで交流電圧及び撹拌子110を挿入する深さを変更する制御方式である。「周波数変調」は、撹拌処理中に撹拌開始から一定時間が経過したタイミングで交流電圧の周波数を変更する制御方式である。「振幅変調」は、撹拌処理中に撹拌開始から一定時間が経過したタイミングで交流電圧の大きさを変更する制御方式である。「周波数・振幅変調」は、撹拌処理中に撹拌開始から一定時間が経過したタイミングで交流電圧の周波数と大きさを変更する制御方式である。「深さ可変」は、撹拌処理中に撹拌開始から一定時間が経過したタイミングで撹拌子110を挿入する深さを変更する制御方式である。
【0049】
制御方式情報303が「時分割」、「周波数変調」、「振幅変調」、「周波数・振幅変調」、又は「深さ可変」である場合には、データベースには、変更前後の電圧情報304、周波数情報305、深さ情報306が記録されている。
【0050】
このデータベースは、予め実験上の結果として作成されている。図5は、各種試薬及び各種液量に対して各種撹拌態様で撹拌した場合の結果を示す表である。発明者は、鋭意研究の結果、図5に示すように、試薬の粘性の程度、界面活性剤の含有の有無、試薬の液量、圧電体111に印加する交流電圧の大きさ、周波数、及び撹拌子110を挿入する深さの違いによって、その撹拌性能に相違が生ずることを見出した。撹拌性能は、被検試料と試薬とが均一に混ざり合ったときに進む反応の進行度を表わした理想曲線からの乖離の程度を表現したものである。理想曲線は、被検試料と試薬の濃度及び環境温度を一定とし、縦軸を反応が完全に終了した場合の結果物の全量に対する生成割合、横軸を時間とした場合にプロットされる曲線である。乖離の程度は、図5においては、理想曲線にどれだけ近いかを「良好」、「可」、及び「不良」の3段階で表現している。
【0051】
図5に示すように、試薬の粘性が高くなるにつれ、交流電圧の大きさ又は周波数を上げれば、撹拌性能が良くなるというわけではない。また、試薬に界面活性剤が含有している場合、交流電圧の大きさ又は周波数を上げれば、撹拌性能が良くなるというわけではない。また、試薬の液量が多くなるにつれ、交流電圧の大きさ又は周波数を上げれば、撹拌性能が良くなるというわけではない。さらに、撹拌子110を挿入する深さについても試薬の粘性、界面活性剤の有無、及び液量に応じてもその最適な箇所は様々である。例えば、周波数が高くなっても、撹拌子110の周囲が気相膜で覆われてしまえば、撹拌性能は落ちるからである。但し、図5に示す知見に基づき、圧電体111に印加する交流電圧の大きさ、周波数、及び撹拌子110の深さを、分注された試薬の粘性及び界面活性剤の有無、即ち試薬の種類、及び試薬の液量に応じて変更することで、撹拌性能が改善されることを示唆している。
【0052】
データベースは、この図5に示す知見に基づき作成され、記憶部203に記憶される。制御部204は、撹拌ユニット11が配されている位置に搬送されてきた反応管4に分注された試薬の種類及び液量に対する電圧情報304、周波数情報305、深さ情報306、及び制御方式情報303をデータベースから読み出し、これら制御パラメータに応じて撹拌ユニット11を制御する。
【0053】
具体的には、制御部204は、例えば可変抵抗の抵抗値を変化させて電源から供給される電圧を変化させる等により、電圧情報304で示された交流電圧を発振器202に印加させる。また、例えば、発振器202に含まれる可変容量ダイオードに印加する制御電圧を変化させる等により、周波数情報305で示された周波数の交流電圧を発振器202に印加させる。また、シーケンス制御等により、深さ情報306で示される深さまで撹拌子110が下降するまでアーム201を駆動させる。また、1サイクルタイムを計測するための図示しないクロック等から出力されるタイミング信号をカウントして、所定のカウント数に到達すると、制御方式情報303で示された方式に従い、交流電圧や撹拌子110の深さを、変更後の電圧情報304、周波数情報305、又は深さ情報306で示される値に変化させる。
【0054】
分注された試薬の種類及び液量については、制御部204は、搬送されてきた反応管4に分注された被検試料に対して入力部18を用いて割り当てられた試薬の種類及び液量を示す情報で特定する。撹拌ユニット11の下に到達した反応ディスク上の載置位置に対して、入力部18を用いた割り当て操作によって対応づけられた試薬の種類及び液量を示す情報で特定する。
【0055】
制御部204は、第1試薬を分注した後の撹拌時には、入力により割り当てられた試薬の種類及び液量を示す情報に対応する電圧情報304、周波数情報305、深さ情報306、及び制御方式情報303をデータベースから読み出し、これら制御パラメータに応じて撹拌ユニット11を制御する。また、制御部204は、第2試薬を分注した後の撹拌時には、入力により割り当てられた試薬の種類及び液量を示す情報に対応する電圧情報304、周波数情報305、深さ情報306、及び制御方式情報303をデータベースから読み出し、これら制御パラメータに応じて撹拌ユニット11を制御する。
【0056】
被検試料に対して入力部18を用いて測定項目を示す情報が割り当てられている場合には、制御部204は、図6に示す測定項目の登録情報を参照して、試薬の種類及び液量を特定する。
【0057】
図6に示すように、測定項目の登録によって、記憶部203には、測定項目を示す測定項目情報307と、この測定項目において用いられる第1試薬の種類と液量を示す第1試薬情報308とが関連づけた測定項目登録テーブルが記憶されている。又は第2試薬を更に加える場合には、この第2試薬の種類と液量を示す第2試薬情報309が更に関連づけられて記憶されている。
【0058】
制御部204は、第1試薬を分注した後の撹拌時には、割り当てられた測定項目を示す測定項目情報307に関連づけられている第1試薬情報308が表わす試薬情報301及び液量情報302に対応する電圧情報304、周波数情報305、深さ情報306、及び制御方式情報303をデータベースから読み出し、これら制御パラメータに応じて撹拌ユニット11を制御する。また、制御部204は、第2試薬を分注した後の撹拌時には、割り当てられた測定項目を示す測定項目情報307に関連づけられている第2試薬情報309が表わす試薬情報301及び液量情報302に対応する電圧情報304、周波数情報305、深さ情報306、及び制御方式情報303をデータベースから読み出し、これら制御パラメータに応じて撹拌ユニット11を制御する。
【0059】
尚、図7に示すように、測定項目登録テーブルを介さずとも、データベースにおいて直接的に測定項目情報307と、その測定項目情報307で示される第1試薬に対する制御パラメータと、その測定項目情報307で示される第2試薬に対する制御パラメータとを結びつけるようにしてもよい。
【0060】
図8は、このような自動分析装置100の撹拌制御を示すフローチャートである。
【0061】
ここで、予め、一例として、測定項目Bが登録されたものとする。そして、この測定項目Bに対応する測定項目情報307に関連づけて、第1試薬の分注後に対する制御方式情報303として「周波数変調」、電圧情報304として「15V」、周波数情報305として変更前が「100Hz」、変更後が「120Hz」、深さ情報306として「0.5mm」がデータベースに記録されているものとする。また、反応ディスク5のX番目で特定される載置位置に被検試料Aが載置され、測定項目Bが割り当てられたものとする。尚、第2試薬の分注後に対する制御パラメータについては説明を省略する。
【0062】
まず、反応ディスク5上に被検試料が載置される(S01)。システム制御部19は、被検試料に対する測定項目の割り当て画面をモニタ231に表示し(S02)、操作者により入力部18を用いてその被検試料に対する測定項目が入力されると(S03)、その被検試料に対する測定項目情報307を記憶部203に記憶させる(S04)。
【0063】
具体的には、被検試料Aが載置されたX番目を示す載置位置情報に対しては、測定項目Bを示す測定項目情報307が関連づけられて記憶部203に記憶される。
【0064】
反応ディスク5を所定角度ずつ回動させることにより、載置された被検試料が搬送され、撹拌ユニット11の下で停止すると、制御部204は、その被検試料に対する測定項目情報307を記憶部203から読み出す(S05)。そして、データベースを参照して、読み出した測定項目情報307の第1試薬分注後に対して関連づけられている制御方式情報303、電圧情報304、周波数情報305、及び深さ情報306を読み出す(S06)。制御方式情報303が「固定」以外の場合は、変更前後の制御パラメータを読み出す。
【0065】
具体的には、制御部204の制御により、次のサイクルタイムで撹拌ユニット11の下に存在する反応ディスク5上の載置箇所をX−1番目からX番目に移動させると、制御部204は、X番目を示す載置位置情報に関連づけられて記憶されている「測定項目B」なる測定項目情報307を記憶部203から読み出す。そして、この測定項目Bを表わす測定項目情報307にデータベース上で関連づけられている「周波数変調」なる制御方式情報303、「15V」なる電圧情報304、変更前が「100Hz」なる周波数情報305、変更後が「120Hz」なる周波数情報305、及び「0.5mm」なる深さ情報306を読み出す。
【0066】
各種の制御パラメータを読み出すと、制御部204は、アーム201を制御して撹拌子110を深さ情報306で示される深さまで下降させる(S07)。
【0067】
次に、制御部204は、発振器202を制御して電圧情報304で示される電圧の交流電圧を周波数情報305で示される周波数で圧電体111に印加させる(S08)。そして、制御部204は、読み出した制御方式情報303に従って撹拌制御を変更していく(S09)。
【0068】
具体的には、アーム201の図示しないモータをシーケンス制御により駆動させる等して、撹拌子110の先端を反応管4の底から0.5mmに位置させる。また、発振器202の可変抵抗の抵抗値を変更する等して、発振器202に15Vの交流電圧を出力させる。また、発振器202の可変容量ダイオードに印加する制御電圧を変更する等して、発振器202に100Hzの交流電圧を出力させる。そして、発振器202に出力させている交流電圧を徐々に120Hzに変更させていき、さらに100Hzまで徐々に変更していく。
【0069】
1サイクルタイムが経過すると(S10,Yes)、制御部204は、アーム201を制御して撹拌子110を反応管4から取り出させて(S11)、当該反応管4に収納された内容液に対する撹拌を終了し、反応ディスク5を所定角度回動させる(S12)。そして、ディスクサンプラ6に載置された全ての被検試料の分析が終了するまで(S13,Yes)、撹拌ユニット11の下に停止した新たな被検試料に対して、S05〜S11を繰り返し、S12に移る。
【0070】
図9は、このような自動分析装置100の撹拌制御の具体例を示すタイムチャートである。
【0071】
図9に示すように、ディスクサンプラ6には、任意の載置位置に被検試料Aが載置され、その次の載置位置に被検試料Bが載置され、さらにその次の載置位置に被検試料Cが載置されている。そして、入力部18を用いて、被検試料Aには、測定項目Aが割り当てられ、被検試料Bには、測定項目Bが割り当てられ、測定項目Cには、測定項目Cが割り当てられている。
【0072】
このとき、まず、被検試料Aが被検試料用分注プローブ16の吸引位置まで搬送されて、被検試料Aが反応ディスク5上の第M番目の反応管4に分注される。反応管4への分注へは、その次に被検試料Bが第M+1番目の反応管4に分注される。また、その次に被検試料Cが第M+2番目の反応管4に分注される。
【0073】
被検試料Aが分注された第M番目の反応管4が、第1試薬用分注プローブ14の吐出位置に停止すると、測定項目Aで登録されている第1試薬A1がこのM番目の反応管4に、同じく測定項目Aで登録されている液量だけ分注される。
【0074】
第1試薬A1が分注された後、第M番目の反応管4が撹拌位置で停止すると、制御部204は、M番目の反応管4に収容された被検試料Aに対する測定項目Aに関連づけられた「固定」なる制御方式情報303、「V1」なる電圧情報304、「F1」なる周波数情報305、及び「P1」なる深さ情報306をデータベースから読み出す。そして、アーム201を制御して撹拌子110の深さをP1まで下降させ、発振器202を制御して周波数F1及び電圧V1の交流電圧を1サイクルタイムの間印加させる。
【0075】
次に、被検試料Aが分注された第M番目の反応管4が、第2試薬用分注プローブ15の吐出位置に停止すると、測定項目Aで登録されている第2試薬A2がこのM番目の反応管4に、同じく測定項目Aで登録されている液量だけ分注される。
【0076】
第2試薬A2が分注された後、第M番目の反応管4が撹拌位置で停止すると、制御部204は、M番目の反応管4に収容された被検試料Aに対する測定項目Aに関連づけられた「時分割」なる制御方式情報303、変更前が「V1」で変更後が「V2」なる電圧情報304、変更前が「F1」で変更後が「F2」なる周波数情報305、及び「P1」なる深さ情報306をデータベースから読み出す。そして、アーム201を制御して撹拌子110の深さをP1まで下降させ、発振器202を制御して最初は周波数F1及び電圧V1の交流電圧を印加させる。所定タイミングが到達すると、制御部204は、発振器202を制御して1サイクルタイムの終了まで周波数F2及び電圧V2の交流電圧を印加させる。
【0077】
次に、被検試料Bが分注された第M+1番目の反応管4が、第1試薬用分注プローブ14の吐出位置に停止する。そうすると、測定項目Bで登録されている第1試薬B1がこのM+1番目の反応管4に、同じく測定項目Bで登録されている液量だけ分注される。
【0078】
第1試薬B1が分注された後、第M番目の反応管4の次に、第M+1番目の反応管4が撹拌位置で停止する。そうすると、制御部204は、M+1番目の反応管4に収容された被検試料Bに対する測定項目Bに関連づけられた「周波数変調」なる制御方式情報303、「V1」なる電圧情報304、変更前が「F1」で変更後が「F2」なる周波数情報305、及び「P1」なる深さ情報306をデータベースから読み出す。そして、アーム201を制御して撹拌子110の深さをP1まで下降させ、発振器202を制御して最初は周波数F1及び電圧V1の交流電圧を印加させる。さらに、制御部204は、1サイクルタイムの間に、発振器202を制御して交流電圧を徐々に周波数F2に変更していき、それから徐々に周波数F1に戻していく。
【0079】
次に、被検試料Bが分注された第M+1番目の反応管4が、第2試薬用分注プローブ15の吐出位置に停止すると、測定項目Bで登録されている第2試薬B2がこのM+1番目の反応管4に、同じく測定項目Bで登録されている液量だけ分注される。
【0080】
第2試薬A2が分注された後、第M+1番目の反応管4が撹拌位置で停止すると、制御部204は、M+1番目の反応管4に収容された被検試料Bに対する測定項目Bに関連づけられた「振幅変調」なる制御方式情報303、変更前が「V1」で変更後が「V2」なる電圧情報304、「F1」なる周波数情報305、及び「P1」なる深さ情報306をデータベースから読み出す。そして、アーム201を制御して撹拌子110の深さをP1まで下降させ、発振器202を制御して最初は周波数F1及び電圧V1の交流電圧を印加させる。さらに、制御部204は、1サイクルタイムの間に、発振器202を制御して交流電圧の大きさを徐々に電圧V2に変更していき、それから徐々に電圧V1に戻していく。
【0081】
次に、被検試料Cが分注された第M+2番目の反応管4が、第1試薬用分注プローブ14の吐出位置に停止する。そうすると、測定項目Cで登録されている第1試薬C1がこのM+2番目の反応管4に、同じく測定項目Cで登録されている液量だけ分注される。
【0082】
第1試薬C1が分注された後、第M+1番目の反応管4の次に、第M+2番目の反応管4が撹拌位置で停止する。そうすると、制御部204は、M+2番目の反応管4に収容された被検試料Cに対する測定項目Cに関連づけられた「深さ可変」なる制御方式情報303、「V1」なる電圧情報304、「F1」なる周波数情報305、及び変更前が「P1」で変更後が「P2」なる深さ情報306をデータベースから読み出す。そして、アーム201を制御して最初は撹拌子110の深さをP1まで下降させ、発振器202を制御して周波数F1及び電圧V1の交流電圧を印加させる。さらに、制御部204は、1サイクルタイムの間に、アーム201を制御して撹拌子110の深さを徐々にP2に変更していき、それから徐々に深さP1に戻していく。
【0083】
次に、被検試料Cが分注された第M+2番目の反応管4が、第2試薬用分注プローブ15の吐出位置に停止すると、測定項目Cで登録されている第2試薬C2がこのM+2番目の反応管4に、同じく測定項目Cで登録されている液量だけ分注される。
【0084】
第2試薬C2が分注された後、第M+2番目の反応管4が撹拌位置で停止すると、制御部204は、M+2番目の反応管4に収容された被検試料Cに対する測定項目Cに関連づけられた「周波数・振幅変調」なる制御方式情報303、変更前が「V1」で変更後が「V2」なる電圧情報304、変更前が「F1」で変更後が「F2」なる周波数情報305、及び「P1」なる深さ情報306をデータベースから読み出す。そして、アーム201を制御して撹拌子110の深さをP1まで下降させ、発振器202を制御して最初は周波数F1及び電圧V1の交流電圧を印加させる。さらに、制御部204は、1サイクルタイムの間に、発振器202を制御して交流電圧を周波数F2及び電圧V2に変更していき、それから徐々に周波数F1及び電圧V1に戻していく。
【0085】
このように、本実施形態に係る自動分析装置100によれば、測定対象である複数の被検試料が共通の一路上に載置され、それらがその一路上に配される試薬の分注、撹拌、測定、及び測定結果の出力の工程を共通のタイムチャートに従って順番に巡るシステムレイアウトを採っても、それぞれの測定対象を測定項目、又は試薬の種類及び液量に応じて最適な撹拌態様で撹拌をすることができるため、どのような試薬を分注したとしてもその撹拌に要する時間を短縮することができる。従って、自動分析装置100の処理時間が短縮する。さらに、撹拌工程を基準に確保していた搬送停止時間を決定していた場合には、自動分析装置100の処理時間を飛躍的に短縮することができる。
【0086】
反応管4に収容した内容液、即ち被検試料と試薬の混合液の粘性や液量は、被検試料の粘性や液量によっても異なってくる。従って、被検試料の種類によっても撹拌態様を異ならせるようにしてもよい。この場合、データベースに被検試料の種類の項目も追加する。
【0087】
図10は、データベースの第3の態様を示すデータ構造図である。図10に示すように、データベースには、被検試料の種類を示す被検試料情報310と被検試料の液量を示す液量情報311の項目が追加される。被検試料の種類は、例えば、尿や血清等である。このデータベースにおいて、制御部204は、撹拌ユニット11の下に到達した反応管4内の試薬の種類や液量の他に、被検試料の種類を示す被検試料情報310と液量情報311を取得する。そして、被検試料情報310と液量情報311と試薬情報301と液量情報302との組み合わせに関連づけられた制御方式情報303、電圧情報304、周波数情報305、及び深さ情報306に従って、交流電圧と撹拌子110の深さを制御する。
【0088】
この態様によれば、さらに撹拌時間を短縮することができると共に、測定精度の向上を図ることができる。
【0089】
尚、本実施形態では、圧電体111により撹拌子110を揺動させることで反応管4内を撹拌させる例により説明したが、その他、混合液中で音波を発生させて撹拌する態様についても本発明を適用することが可能である。即ち、制御する撹拌源の深さは、超音波のフォーカス位置である。制御する周波数は、超音波の周波数であり、換言すると圧電体に印加するパルスの周波数である。制御する電圧は、圧電体に印加する電圧であり、換言すると制御する振幅は、超音波の振幅である。制御部204は、データベースを参照して発振器202を制御することで、超音波を反応管4内に送波する圧電体に印加する電圧及び周波数を試薬の種類及び液量又は測定項目毎に変更させ、またデータベースを参照して図示しない遅延回路を制御する等して、超音波のフォーカス位置を変更させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】自動分析装置の構成を示す図である。
【図2】撹拌ユニットの構成を示す図である。
【図3】自動分析装置における制御系を示すブロック図である。
【図4】データベースを示すデータ構造図である。
【図5】各種試薬及び各種液量に対して各種撹拌態様で撹拌した場合の結果を示す表である。
【図6】測定項目の登録テーブルを示す図である。
【図7】データベースの第2の態様を示すデータ構造図である。
【図8】自動分析装置の撹拌制御を示すフローチャートである。
【図9】自動分析装置の撹拌制御の具体例を示すタイムチャートである。
【図10】データベースの第3の態様を示すデータ構造図である。
【符号の説明】
【0091】
1 試薬ラック
2 試薬庫
3 試薬庫
4 反応管
5 反応ディスク
6 ディスクサンプラ
7 試薬容器
8 分注アーム
9 分注アーム
10 分注アーム
11 撹拌ユニット
110 撹拌子
111 圧電体
112 圧電素子
113 圧電素子
114a 電極
114b 電極
12 洗浄ユニット
13 測光ユニット
14 第1試薬用分注プローブ
15 第2試薬用分注プローブ
16 被検試料用分注プローブ
17 被検試料容器
18 入力部
19 システム制御部
20 分析制御部
201 アーム
202 発振器
203 記憶部
204 制御部
21 分析部
22 データ処理部
23 出力部
231 モニタ
232 プリンタ
100 自動分析装置
100a 制御系
301 試薬情報
302 液量情報
303 制御方式情報
304 電圧情報
305 周波数情報
306 深さ情報
307 測定項目情報
308 第1試薬情報
309 第2試薬情報
310 被検試料情報
311 液量情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料毎に各種の測定項目のうちの何れかを割り当てて、それら被検試料を順々に処理して分析する自動分析装置であって、
複数の反応管が載置された搬送路を有し、複数の反応管を順に搬送する搬送手段と、
前記搬送路上に位置し、前記反応管毎に一の被検試料を分注するとともに、分注した被検試料に割り当てられた測定項目に対応する種類の試薬を各種の液量で分注する分注プローブと、
前記搬送路上に位置し、前記反応管内に挿入されて揺動する撹拌子及び交流電圧が印加されることで前記撹拌子を揺動させる圧電体を有する撹拌手段と、
前記撹拌子の挿入及び揺動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記試薬の種類及び液量の組み合わせに応じて、前記交流電圧の周波数、電圧、及び前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを記憶する記憶手段と、
前記分注される前記試薬の種類及び液量を前記被検試料毎に入力するための入力手段と、
前記撹拌手段に搬送されてきた前記反応管内の被検試料に応じて、前記入力された前記試薬の種類及び液量を基に前記記憶手段を参照して得られた前記深さまで、前記撹拌子を前記反応管に挿入するアームと、
前記撹拌手段に搬送されてきた被検試料に応じて、前記入力された前記試薬の種類及び液量を基に前記記憶手段を参照して得られた前記周波数及び前記電圧の前記交流電圧を前記圧電体に印加する印加手段と、
を含むこと、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
被検試料毎に各種の測定項目のうちの何れかを割り当てて、それら被検試料を順々に処理して分析する自動分析装置であって、
複数の反応管が載置された搬送路を有し、複数の反応管を順に搬送する搬送手段と、
前記搬送路上に位置し、前記反応管毎に一の被検試料を分注するとともに、分注した被検試料に割り当てられた測定項目に対応する種類の試薬を各種の液量で分注する分注プローブと、
前記搬送路上に位置し、前記反応管内に挿入されて揺動する撹拌子及び交流電圧が印加されることで前記撹拌子を揺動させる圧電体を有する撹拌手段と、
前記撹拌子の挿入及び揺動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
測定項目の種類に応じて、前記交流電圧の周波数、電圧、及び前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを記憶する記憶手段と、
前記測定項目を前記被検試料毎に入力するための入力手段と、
前記撹拌手段に搬送されてきた被検試料に応じて、前記入力された前記測定項目の種類を基に前記記憶手段を参照して得られた前記深さまで、前記撹拌子を前記反応管に挿入するアームと、
前記撹拌手段に搬送されてきた被検試料に応じて、前記入力された前記測定項目の種類を基に前記記憶手段を参照して得られた前記周波数及び前記電圧の前記交流電圧を前記圧電体に印加する印加手段と、
を含むこと、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、
前記交流電圧の周波数、電圧、及び前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さに前記被検試料の種類を更に加えて記憶し、
前記入力手段には、
前記被検試料の種類が更に入力され、
前記制御手段は、
前記入力された前記被検試料の種類を含む情報を基に前記記憶手段を参照して、前記撹拌子の挿入及び揺動を制御すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記交流電圧の周波数、電圧、又は前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを、一つの前記反応管内の撹拌中に可変制御すること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記交流電圧の周波数、電圧、又は前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを所定タイミングで切り替える時分割制御をすること、
を特徴とする請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記交流電圧の周波数若しくは電圧、又はこれらの双方を時間的に可変させる変調制御をすること、
を特徴とする請求項4記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記記憶手段は、
前記切り替え前後の前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さをそれぞれ記憶し、
前記制御手段は、
前記撹拌子を前記反応管に挿入する深さを時間的に可変させること、
を特徴とする請求項4記載の自動分析装置。
【請求項8】
被検試料毎に各種の測定項目のうちの何れかを割り当てて、それら被検試料を順々に処理して分析する自動分析装置であって、
複数の反応管が載置された搬送路を有し、複数の反応管を順に搬送する搬送手段と、
前記搬送路上に位置し、前記反応管毎に一の被検試料を分注するとともに、分注した被検試料に割り当てられた測定項目に対応する種類の試薬を各種の液量で分注する分注プローブと、
前記搬送路上に位置し、前記反応管内の内容液を撹拌する撹拌手段と、
前記試薬の種類及び液量の組み合わせ又は前記測定項目の種類に応じて、前記撹拌の周波数、振幅、及び前記反応管内の撹拌源の深さを記憶する記憶手段と、
前記分注される前記試薬の種類及び液量又は前記測定項目の種類を前記被検試料毎に入力するための入力手段と、
前記撹拌手段に搬送されてきた被検試料に応じて、前記撹拌手段による前記撹拌の周波数、振幅、及び前記撹拌源の深さを、前記入力された前記試薬の種類及び液量又は前記測定項目の種類を基に前記記憶手段を参照して制御する制御手段と、
を備えること、
を特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−127712(P2010−127712A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301529(P2008−301529)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】