説明

自動分注装置

【課題】適性な分注性能を維持しながら有効に処理能力を向上し得る自動分注装置を提供する。
【解決手段】鉛直方向に立設された回転支柱11と、回転支柱11に上下動可能に配置構成された複数の昇降軸12と、回転支柱11の半径方向に延出するように各昇降軸12に支持された複数の分注アーム13と、回転支柱11の周囲に設定された複数の工程領域とを備える。回転支柱11の回転により各分注アーム13を順次、各工程領域に移動させ、それぞれの工程領域まで降下した分注アームが実質的に同時に、所定の作業工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の検体を分注する分注装置、特に多数の検体を同時に処理可能な自動分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血清あるいは血液等の検体検査を行う場合、その前処理工程で検査依頼に従って親検体(被検者から採血した検体等)を別の容器に必要項目ごとに取り分けて、検査項目ごとに子検体(取り分けられた検体)が作成される。
【0003】
従来、この種の分注装置において処理能力を向上するために、分注ノズルの移動速度、吸引・吐出速度、チップ取付および廃棄速度を上げ、あるいは各工程の位置配置の合理化が行われている。さらに、複数の分注ノズルを並行して分注動作を行う方法等が採用されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には親検体容器と必要数の子検体容器を同一のコンベアレーンに連ねて、検体の吸引後、ノズルを移動せずにコンベアを高速移動し、子検体容器をノズルの下へ搬送するようにしたものが開示されている。また、特許文献2には複数のノズルを用いて、分注を高速処理するものが開示されている。さらに、特許文献3には各Z軸が独自の回転軸(θ)を持ち、θ回転動作の合理化によって処理能力を向上させた分注装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−184086号公報
【特許文献2】特開平6−347467号公報
【特許文献3】特開昭64−63869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の分注装置もしくは方法等において、処理能力の向上を図ろうとしているが、つぎのような問題等があった。
i)ノズルの水平・垂直移動や分注ポンプの吸引・吐出動作の速度を上げるには、駆動系や機械系の部品が高価になる。
ii)ノズルを高速移動すると、液飛散によるコンタミネーションを発生する場合がある。
iii)高速な吸引動作と吐出動作は、分注精度の低下や気泡発生を招来するおそれがある。
iv)高速化したとしても、所定の工程順に従って行わなければならないため、時間短縮化には限界がある。
V)複数のノズルで並行に行う場合、ノズル移動機構が複雑になり、装置が大型化せざるを得ない。
【0007】
具体的な従来例においてもたとえば、特許文献1の発明では上記i),iii),iv)の問題がある。また、特許文献2の発明ではV)の問題があり、特許文献3の発明ではiv)の問題が解決できていない。
【0008】
本発明はかかる実情に鑑み、適性な分注性能を維持しながら有効に処理能力を向上し得る自動分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による自動分注装置は、鉛直方向に立設された回転支柱と、この回転支柱に上下動可能に配置構成された複数の昇降軸と、前記回転支柱の半径方向に延出するように各昇降軸に支持された複数の分注アームと、前記回転支柱の周囲に設定された複数の工程領域とを備え、前記回転支柱の回転により前記各分注アームを順次、前記各工程領域に移動させ、前記分注アームが実質的に同時に、所定の作業工程を実行するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明による自動分注装置において、前記各分注アームは、前記回転支柱の円周方向に等間隔で配置されるとともに、前記回転支柱の回転軸から等距離位置に分注ノズルを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明による自動分注装置において、前記工程領域として少なくとも検体吸引領域および検体吐出領域を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による自動分注装置において、前記分注ノズルは、前記分注アームから着脱自在なディスポーザブルチップとして構成され、前記工程領域としてさらに、チップ装着領域およびチップ廃棄領域を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による自動分注装置において、前記分注ノズルは、前記分注アームに固定のノン・ディスポーザブルチップとして構成され、前記工程領域としてさらに、ノズル洗浄領域を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による自動分注装置において、前記チップ装着領域に前記ディスポーザブルチップを供給するためのチップ供給搬送ライン、前記検体吸引領域に検体吸引元容器を供給するための吸引元容器搬送ラインおよび前記検体吐出領域に検体吐出先容器を供給するための吐出先容器搬送ラインを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明による自動分注装置において、前記チップ廃棄領域において前記分注アームから前記ディスポーザブルチップを取り外すチップリムーバを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による自動分注装置において、前記検体吸引領域に検体吸引元容器を供給するための吸引元容器搬送ラインおよび前記検体吐出領域に検体吐出先容器を供給するための吐出先容器搬送ラインを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、同一回転軸を持ち、この回転軸に対して独立に上下動可能に支持された複数の分注アームを有する。各分注アームが各分注工程を同時に進行し、それぞれの分注工程終了後、回転軸が回転することで各分注ノズルをつぎの分注工程へと移動する。各分注ノズルはそれぞれつぎの分注動作を行い、このように複数の分注動作が順次同時に行われるため装置の処理能力を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明による自動分注装置の好適な実施の形態を説明する。
図1および図2は、本発明の自動分注装置の概略構成を示している。この実施形態において、血清あるいは血液等の検体検査を行うに際して、その前処理工程に本発明装置を適用し、親検体を別の容器に必要項目ごとに取り分けて、検査項目ごとに子検体を作成するものとする。
【0019】
本発明の自動分注装置10において、基台(図示せず)上において鉛直方向に立設された回転支柱11と、この回転支柱11に上下動可能に配置構成された複数(1〜n)の昇降軸12(Z1n軸)と、回転支柱11の半径方向に延出するように各昇降軸12に支持された複数の分注アーム13(1n)と、回転支柱11の周囲に設定された複数の工程領域14とを備える。
【0020】
また、各分注アーム13は、回転支柱11の円周方向に沿って等間隔で配置されるとともに、回転支柱11の回転軸11a(Θ軸)から等距離位置に配置された分注ノズル15を有する。この実施形態において分注ノズル15は、分注アーム13から着脱自在なディスポーザブルチップとして構成される。
【0021】
この例では4つの分注アーム13(14)を有し、したがってこれらの分注アーム13は相互に円周4分割(90°)して配置される。また、工程領域として分注アーム13に分注ノズル15(ディスポーザブルチップ)を取り付けるチップ装着領域14A、親検体の入った吸引元容器から分注ノズル15で検体を吸引する検体吸引領域14B、子検体が注入される吐出先容器に検体を吐出する検体吐出領域14Cおよび分注アーム13から分注ノズル15を取り外すチップ廃棄領域14Dを含んでいる。
【0022】
また、チップ装着領域14Aにディスポーザブルチップを供給するためのチップ供給搬送ライン16A、検体吸引領域14Bに検体吸引元容器を供給するための吸引元容器搬送ライン16Bおよび検体吐出領域14Cに検体吐出先容器を供給するための吐出先容器搬送ライン16Cを備える。さらに、チップ廃棄領域14Dにおいて分注アーム13からディスポーザブルチップ(分注ノズル15)を取り外すチップリムーバ17を備える。
【0023】
チップ供給搬送ライン16A、吸引元容器搬送ライン16Bおよび吐出先容器搬送ライン16Cは図2に示されるように、それぞれが回転支柱11からオフセットすなわちズレて、かつ相互に並行して配置される。各搬送ライン16A〜D上に設定されるチップ装着領域14A、検体吸引領域14B、検体吐出領域14Cおよびチップ廃棄領域14Dは、それぞれ回転支柱11から等距離位置(すなわち回転支柱11の回転軸11aおよび分注ノズル15間距離)に設定され、したがって各分注アーム13の分注ノズル15は、各工程領域に対して正しく位置合せされるようになっている。
ここで、チップ供給搬送ライン16A、吸引元容器搬送ライン16Bおよび吐出先容器搬送ライン16Cは図2に示すような直線ラインではなく、円形ラインまたはV字形ライン等で構成してもよい。
【0024】
ここで図3は、本発明装置の駆動機構の例を示している。たとえば回転支柱11の周囲に取り付けたホイールギヤ18とこれに噛合するピニオンギヤ19を有し、ピニオンギヤ19は駆動モータ20により回転駆動されるようになっている。図4は、装置の制御駆動系を示しており、制御部21に接続されたΘ軸駆動部22によって駆動モータ20を駆動制御し、ホイールギヤ18およびピニオンギヤ19を介して回転支柱11を所望の回転速度および所望のタイミングで回転させることができる。
【0025】
また、各昇降軸12(Zi軸)は回転方向には規制されるとともに、上下方向には移動可能に回転支柱11によってガイドされ、たとえば下端部付近でリードスクリュ23と螺合する。リードスクリュ23は駆動モータ24により回転駆動されるようになっている。制御部21に接続されたZi軸駆動部25によって駆動モータ24を駆動制御し、リードスクリュ23を介して昇降軸12を所望の速度および所望のタイミングで昇降させることができる。
【0026】
分注アーム13の端部には分注ノズル15を取り付けるための装着部26が設けられ、この装着部26まで配管27が引き回され、接続される。そして、装着部26に装着された分注ノズル15は、配管27と連通するようになっている。また、この例では配管27の端部に接続するシリンジポンプ28を有し、リードスクリュ29によってシリンジポンプ28のポンプ軸30(P1n軸)を駆動するようにしている。この場合、リードスクリュ29は駆動モータ31により回転駆動されるようになっており、制御部21に接続されたPi軸駆動部32によって駆動モータ31を駆動制御し、リードスクリュ29を介してシリンジポンプ28を所望の速度および所望のタイミングで作動させることができる。
【0027】
チップリムーバ17は、図示しないアクチュエータによって水平方向および垂直方向に移動可能に支持されている。水平方向に移動することで分注ノズル15の装着部26に対して進退し、垂直方向に移動することで上下動することができる。なお、チップリムーバ17に使用するアクチュエータとしては、たとえばモータや空圧シリンダ等を用いてもよい。このアクチュエータは、制御部21に接続されたチップリムーバ駆動部33によって駆動制御されるようになっている。分注アーム13から分注ノズル15を取り外す場合、チップリムーバ17が装着部26に進入し、この後さらに下降することで分注ノズル15を引き降ろすように取り外すことができる。
また、チップリムーバ17を水平方向にのみ移動可能に構成し、装着部26への進入後に分注アーム13をZ軸方向へ上昇させることにより、分注ノズル15を取り外すようにしてもよい。
【0028】
チップ装着領域14Aにはチップ供給搬送ライン16Aに沿って、分注ノズル15が搬送されてくる。この場合、図1のようにチップラック34内に複数の分注ノズル15が収容され、順次搬送される。分注ノズル15は、分注アーム13の装着部26に装着されるように垂直姿勢で、かつ所定ピッチ間隔で収容される。チップ供給搬送ライン16A上には搬送レール(図示せず)が敷設されており、この搬送レール上をチップラック34が移動する。
【0029】
チップラック34は、図示しないアクチュエータによって、搬送レール上を搬送される。このアクチュエータとしては、たとえばモータや空圧シリンダ等を用いてもよいが、制御部21に接続されたチップ搬送ライン駆動部35によって駆動制御されるようになっている。アクチュエータの作動によりチップラック34を介して、分注ノズル15を所望のタイミングでチップ装着領域14Aまで搬送し、このチップ装着領域14Aに正確に位置決めして静止させることができる。
【0030】
検体吸引領域14Bには吸引元容器搬送ライン16Bに沿って、吸引元容器36が搬送されてくる。この場合、図1のように親検体ラック37内に複数の吸引元容器36が収容され、順次搬送される。吸引元容器36は下端が閉塞するとともに、上端が開放された細長の円筒状容器であり、親検体ラック37内に垂直姿勢で、かつ所定ピッチ間隔で収容される。吸引元容器搬送ライン16B上には搬送レール(図示せず)が敷設されており、この搬送レール上を親検体ラック37が移動する。
【0031】
親検体ラック37は、図示しないアクチュエータによって、搬送レール上を搬送される。このアクチュエータとしては、たとえばモータや空圧シリンダ等を用いてもよいが、制御部21に接続された吸引元容器搬送ライン駆動部38によって駆動制御されるようになっている。アクチュエータの作動により親検体ラック37を介して、吸引元容器36を所望のタイミングで検体吸引領域14Bまで搬送し、この検体吸引領域14Bに正確に位置決めして静止させることができる。
【0032】
検体吐出領域14Cには吐出先容器搬送ライン16Cに沿って、吐出先容器39が搬送されてくる。この場合、図1のように子検体ラック40内に複数の吐出先容器39が収容され、順次搬送される。吐出先容器39は下端が閉塞するとともに、上端が開放された細長の円筒状容器であり、子検体ラック40内に垂直姿勢で、かつ所定ピッチ間隔で収容される。吐出先容器搬送ライン16C上には搬送レール(図示せず)が敷設されており、この搬送レール上を子検体ラック40が移動する。
【0033】
子検体ラック40は、図示しないアクチュエータによって、搬送レール上を搬送される。このアクチュエータとしては、たとえばモータや空圧シリンダ等を用いてもよいが、制御部21に接続された吐出先容器搬送ライン駆動部41によって駆動制御されるようになっている。アクチュエータの作動により子検体ラック40を介して、吐出先容器39を所望のタイミングで検体吐出領域14Cまで搬送し、この検体吐出領域14Cに正確に位置決めして静止させることができる。
【0034】
なお、上記の場合チップ廃棄領域14Dには、使用済みの分注ノズル15(ディスポーザブルチップ)を回収するチップ受け42が配置されている。チップリムーバ17によって分注アーム13から取り外された分注ノズル15は、チップ受け42内に落下し、回収されるようになっている。
【0035】
つぎに、上記構成において本実施形態の作用について説明する。図5は装置全体の作動例を示すフローチャート、図6〜図9は各工程領域(14A〜14D)における作動例を示すフローチャートである。
まずスタート後、装置の初期化を行う(ステップS0)。この場合、各分注アーム13(1n)を支持する昇降軸12(Z1n軸)を原点位置に移動する。すなわち、制御部21の指令により各駆動モータ24を駆動し、昇降軸12を上端位置まで上昇させる。
【0036】
つぎに、チップ装着領域14Aには新規の分注ノズル15が、検体吸引領域14Bには新規の吸引元容器36が、検体吐出領域14Cには新規の吐出先容器39がそれぞれ搬送され、所定位置に正確に位置決め保持される。なお、チップ廃棄領域14Dではチップリムーバ17は後退して待機している。
【0037】
つぎに、Θ軸駆動部22により駆動モータ20を駆動制御し、各分注アーム13がそれぞれ工程領域に移動するように回転支柱11を回転させる。この場合、たとえば図1あるいは図2に示されるように分注アーム13(14)をチップ装着領域14A、検体吸引領域14B、検体吐出領域14Cおよびチップ廃棄領域14Dに対応配置する。
【0038】
初期化時には上記のように分注アーム13等、装置をスタート状態にするが、この時点では各分注アーム13とも分注ノズル15は未装着である。このためつぎにステップS1の予備工程において分注アーム13(14)に対して順次、分注ノズル15を装着する。ここで図10を参照して、予備工程を概略説明する。ステップS101で、まずチップ装着領域14Aにある分注アーム13(1)に分注ノズル15を装着する。この際、分注アーム13(24)は原点位置(上端位置)で待機している。
【0039】
予備工程のステップS102で回転支柱11が90°回転し、分注アーム13(1)が検体吸引領域14Bに移動するとともに、分注アーム13(4)がチップ装着領域14Aに移動する。
ステップS103において分注アーム13(1)の分注ノズル15が吸引元容器36から検体を吸引するとともに、チップ装着領域14Aにある分注アーム13(4)に分注ノズル15を装着する。この際、分注アーム13(2,3)は原点位置で待機している。
【0040】
ステップS104で回転支柱11がさらに90°回転し、分注アーム13(1)が検体吐出領域14Cに移動する。同時に分注アーム13(4)が検体吸引領域14Bに移動するとともに、分注アーム13(3)がチップ装着領域14Aに移動する。
ステップS105において分注アーム13(1)の分注ノズル15が吐出先容器39に検体を吐出する。同時に分注アーム13(4)の分注ノズル15が吸引元容器36から検体を吸引するとともに、チップ装着領域14Aにある分注アーム13(3)に分注ノズル15を装着する。
【0041】
ステップS106で回転支柱11がさらに90°回転し、分注アーム13(1)がチップ廃棄領域14Dに移動するとともに、分注アーム13(4)が検体吐出領域14Cに移動する。同時に分注アーム13(3)が検体吸引領域14Bに移動するとともに、分注アーム13(2)がチップ装着領域14Aに移動する。
ステップS107においてチップリムーバ17によって分注アーム13(1)から分注ノズル15が取り外されるとともに、分注アーム13(4)が吐出先容器39に検体を吐出する。同時に分注アーム13(3)が吸引元容器36から検体を吸引するとともに、チップ装着領域14Aにある分注アーム13(2)に分注ノズル15を装着する。
【0042】
ステップS108で回転支柱11がさらに90°回転し、分注アーム13(14)がチップ装着領域14A、検体吸引領域14B、検体吐出領域14Cおよびチップ廃棄領域14Dに移動する。このように予備工程では回転支柱11が1回転するうちに順次、各分注アーム13(14)に分注ノズル15を装着する。
【0043】
本工程では回転支柱11の回転によりすべての分注アーム13(14)を順次、各工程領域に移動させ、それぞれの工程領域で所定の作業工程が実行される。
図5のステップS2において、チップ装着領域14Aにある分注アーム13(1)に分注ノズル15を装着する。図6は、チップ装着もしくは取付工程を示すフローチャートである。分注アーム13(1)は原点位置(上端位置)で待機している。分注する場合(ステップS11)、ステップS12において分注アーム13(1)を降下させる。この場合、制御部21の指令でZ1軸駆動部25により駆動モータ24を駆動し、昇降軸12(Z1軸)を降下させる。
【0044】
チップ装着領域14Aでは分注アーム13(1)の下方で、チップ供給搬送ライン16Aによって搬送されてきたチップラック34内に、新規の分注ノズル15が位置決め保持されている。分注アーム13(1)を所定の高さ位置まで降下させると、分注ノズル15が装着部26に嵌着し、これにより分注アーム13(1)に分注ノズル15が取り付けられる(ステップS13)。その後、ステップS14において駆動モータ24を逆転させることで、昇降軸12したがって分注アーム13(1)が上昇し、原点位置で待機状態となる。
【0045】
ステップS2においてまた、検体吸引領域14Bにある分注アーム13(2)の分注ノズル15が、吸引元容器36から検体を吸引する。図7は、検体吸引工程を示すフローチャートである。分注アーム13(2)には、前述したように予備工程で既に分注ノズル15が装着されており、原点位置で待機している(ステップS21)。ステップS22において分注アーム13(2)を降下させる。この場合、制御部21の指令でZ2軸駆動部25により駆動モータ24を駆動し、昇降軸12(Z2軸)を降下させる。
【0046】
検体吸引領域14Bでは分注アーム13(2)の下方で、親検体ラック37内に吸引元容器36が位置決め保持されている。分注アーム13(2)が降下することで、その分注ノズル15が吸引元容器36に挿入される。ステップS23において、P2軸駆動部32によって駆動モータ31を駆動制御し、シリンジポンプ28を作動させることで、分注ノズル15が検体を吸引する。その後、ステップS24において駆動モータ24を逆転させることで、昇降軸12したがって分注アーム13(2)が上昇し、原点位置で待機状態となる。
【0047】
ステップS2においてまた、検体吐出領域14Cにある分注アーム13(3)の分注ノズル15が吐出先容器39に検体を吐出する。図8は、検体吐出工程を示すフローチャートである。この分注アーム13(3)の分注ノズル15には、予備工程で既に検体が吸引されており、原点位置で待機している(ステップS31)。ステップS32において分注アーム13(3)を降下させる。この場合、制御部21の指令でZ3軸駆動部25により駆動モータ24を駆動し、昇降軸12(Z3軸)を降下させる(ステップS32)。
【0048】
検体吐出領域14Cでは分注アーム13(3)の下方で、子検体ラック40内に吐出先容器39が位置決め保持されている。分注アーム13(2)が降下することで、その分注ノズル15が吐出先容器39に挿入される。ステップS33において、P3軸駆動部32によって駆動モータ31を駆動制御し、シリンジポンプ28を作動させることで、分注ノズル15が検体を吐出する。その後、ステップS34において駆動モータ24を逆転させることで、昇降軸12したがって分注アーム13(3)が上昇し、原点位置で待機状態となる。
【0049】
なお、吐出を続行する場合には(ステップS35)、検体吐出領域14Cに新規の吐出先容器39が搬送される(ステップS35)。
【0050】
ステップS2においてまた、チップ廃棄領域14Dにある分注アーム13(4)からチップリムーバ17によって分注ノズル15が取り外される。図9は、チップ廃棄工程を示すフローチャートである。分注アーム13(4)には使用済みの分注ノズル15が装着されており、原点位置で待機している。ステップS41において分注アーム13(4)を降下させる。この場合、制御部21の指令でZ4軸駆動部25により駆動モータ24を駆動し、昇降軸12(Z4軸)を降下させる。
【0051】
チップ廃棄領域14Dでは分注アーム13(4)の下方で、チップリムーバ17が後退して待機している。ステップS42において、チップリムーバ17は分注アーム13(4)の装着部26に進入し、この後さらに下降することで分注ノズル15を取り外す。その後、ステップS43において駆動モータ24を逆転させることで、昇降軸12したがって分注アーム13(4)が上昇し、原点位置で待機状態となる。
【0052】
ステップS3で回転支柱11が90°回転し、分注アーム13(1)が検体吸引領域14Bに、分注アーム13(2)が検体吐出領域14Cに、分注アーム13(3)がチップ廃棄領域14Dに、分注アーム13(4)がチップ装着領域14Aにそれぞれ移動する。ステップS4において、移動した各工程領域で上記と同様な処理が行われ、以下同様にして1サイクルの処理が完了する(ステップS9)。
【0053】
検体種類等に応じて設定される必要nサイクルの処理が完了すると、ステップS10において終了予備工程に移行する。この終了予備工程では前述した予備工程S1とは逆に、すなわちチップ廃棄領域14Dに到達した分注アーム13から順次、分注ノズル15が取り外され、以降の工程処理は行われない。
【0054】
このように本発明装置において、同一回転軸11aを持ち、この回転軸11aに対して独立に上下動可能に支持された複数の分注アーム13を有する。各分注アーム13が各分注工程を同時に進行し、それぞれの分注工程終了後、回転軸が回転することで各分注ノズル15をつぎの分注工程へと移動する。各分注ノズル15はそれぞれつぎの分注動作を行い、このように複数の分注動作が順次同時に行われるため装置の処理能力を大幅に向上することができる。
【0055】
上記の場合、各工程領域(14A〜14D)における工程は同時進行するが、それぞれの工程の所要時間は相違する。このため各工程の開始タイミング、特に検体吸引工程と検体吐出工程の開始タイミングを適度にずらしてほぼ同時に終了するようにするとよい。
【0056】
ここで、この例では分注アーム13(14)ごとにシリンジポンプ28を有し、すなわち4つのシリンジポンプ28を持っている。しかしながら、チップ装着領域14Aおよびチップ廃棄領域14Dでは原則的にシリンジポンプ28を使用しない。そこで、2つのシリンジポンプ28を用いて、たとえば電磁弁によってそれらを切り替え、検体吸引工程と検体吐出工程になる分注ノズル15と連通させるようにすることができる。
【0057】
たとえば図11に示すように2つのシリンジポンプ28(1,2)を使用し、これらのシリンジポンプ28が電磁弁V(18)を介してそれぞれ分注ノズル15(14)と接続される。なお、各電磁弁V(18)は制御部21によって開閉制御される。分注ノズル15(14)がたとえばチップ装着領域14A、検体吸引領域14B、検体吐出領域14Cおよびチップ廃棄領域14Dにあるものとする。
【0058】
このような場合、電磁弁V(1,2)を閉じて、これにより分注ノズル15(1)をシリンジポンプ28(1,2)から遮断するとともに、電磁弁V(7,8)を閉じて、これにより分注ノズル15(4)をシリンジポンプ28(1,2)から遮断する。また、電磁弁V(3)を閉じて電磁弁V(4)を開くことにより、分注ノズル15(2)がシリンジポンプ28(1)と連通する。このとき分注ノズル15(2)は、シリンジポンプ28(1)により検体吸引動作を行うことができる。一方また、電磁弁V(5)を開いて電磁弁V(6)を閉じ、これにより分注ノズル15(3)をシリンジポンプ28(2)と連通する。このとき分注ノズル15(3)はシリンジポンプ28(2)により検体吐出動作を行うことができる。
【0059】
このように2つのシリンジポンプ28を用いて、それらを電磁弁によって適宜切替制御することにより、検体吸引領域14Bおよび検体吐出領域14Cで適性に検体吸引動作と検体吐出動作を行うことができる。これにより実質的に構成の簡素化を図り、ひいてはコスト低減を実現可能である。
【0060】
つぎに、図12に示す本発明による自動分注装置の第2の実施形態では分注ノズル15は、分注アーム13に固定のノン・ディスポーザブルチップとして構成される。なお、以下の説明において前述の実施形態と同一または対応する部材には同一符号を用いるものとする。
【0061】
この実施形態では工程領域として、前述の実施形態の場合と実質的に同様な検体吸引領域Bおよび検体吐出領域14Cを含み、さらにノズル洗浄領域14Eを含んでいる。装置の全体構成は、図1に示したものと略同一であり、すなわち回転支柱11の半径方向に延出するように3つの分注アーム13(13)を備える。
【0062】
また、各分注アーム13は、回転支柱11の円周方向に等間隔で配置されるとともに、回転支柱11の回転軸11aから等距離位置に配置された分注ノズル15を有する。この実施形態において分注ノズル15は前述したように、分注アーム13に固定される。これらの分注アーム13は相互に円周3分割(120°)して配置される。
【0063】
特に、ノズル洗浄領域14Eには図示しないアクチュエータによって、分注ノズル15に対して進退し、分注ノズル15に洗浄液を噴出するように構成された洗浄ユニットを有している。この洗浄ユニットは制御部21に接続され、所定タイミングで作動するように駆動制御されるようになっている。
【0064】
第2の実施形態において、ノズル洗浄領域14Eにおいて分注ノズル15は洗浄液によって洗浄され、その後検体吸引領域14Bおよび検体吐出領域14Cへ順次移動される。これらの工程領域では前述の実施形態の場合と同様に、検体吸引領域14Bで検体を吸引し、検体吐出領域14Cで検体の吐出が行われる。
【0065】
以上、本発明を種々の実施形態とともに説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。本発明の幾つかの変形例を以下に説明する。
【0066】
たとえば、第1の実施形態あるいは第2の実施形態における分注アーム13(1n)が図12に示すように、これを昇降軸12(Z1n軸)のまわりに回動可能にする回転軸θi(θ1n軸)を持ち、各分注アーム13(1n)に沿って分注ノズル15が水平移動可能にする回転軸Xi(X1n軸)を持つようにすることもできる。
【0067】
各分注アーム13をこのように構成することにより、各分注工程の配置位置に自由度を持たせ、必要に応じて新たな工程領域を追加配置することが可能になる。たとえば、分注アーム13(1)および分注アーム13(4)を、図13のようにそれぞれθ1およびθ4回転せることにより、緊急検体の吸引と吐出を吸引元容器搬送ライン16Bおよび吐出先容器搬送ライン16C外に別途設ける分注装置を構築することができる。
【0068】
また、前述の実施形態においてディスポーザブルチップの場合に4つの分注アーム13を用い、あるいはノン・ディスポーザブルチップの場合に3つの分注アーム13を用いた例を説明した。これらの場合、必要となる工程領域に応じて分注アーム13の数量は、適宜増減可能である。たとえば、ディスポーザブルチップの場合に8つの分注アーム13を用い、またノン・ディスポーザブルチップの場合に6つの分注アーム13を用いることもできる。
【0069】
また、チップ交換またはノズル洗浄をしなくともよい場合(たとえば、同一検体を何回も連続して吸引・吐出を行う場合)、吐出後Θ軸を逆回転し、吐出を行った分注アームを再び吸引位置に戻すように制御してもよい。このように制御することで、チップを節約するとともにノズル洗浄廃液を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態における自動分注装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における自動分注装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態における自動分注装置の駆動機構まわりを示す図である。
【図4】本発明の実施形態における自動分注装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態における自動分注装置の作動例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態におけるチップ装着工程の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態における検体吸引工程の例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態における検体吐出工程の例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態におけるチップ廃棄工程の例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態における予備工程の例を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係る2台のポンプによる作動例を示す図である。
【図12】本発明の別の実施形態における自動分注装置の概略構成を示す平面図である。
【図13】本発明に係る分注アームの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
10 自動分注装置
11 回転支柱
12 昇降軸
13 分注アーム
14 工程領域
15 分注ノズル
16A チップ供給搬送ライン
16B 吸引元容器搬送ライン
16C 吐出先容器搬送ライン
17 チップリムーバ
18 ホイールギヤ
20 駆動モータ
23 リードスクリュ
24 駆動モータ
25 Zi軸駆動部
26 装着部
27 配管
28 シリンジポンプ
30 ポンプ軸
31 駆動モータ
32 Pi軸駆動部
33 チップリムーバ駆動部
34 チップラック
35 チップ搬送ライン駆動部
36 吸引元容器
37 親検体ラック
38 吸引元容器搬送ライン駆動部
39 吐出先容器
40 子検体ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に立設された回転支柱と、この回転支柱に上下動可能に配置構成された複数の昇降軸と、前記回転支柱の半径方向に延出するように各昇降軸に支持された複数の分注アームと、前記回転支柱の周囲に設定された複数の工程領域とを備え、
前記回転支柱の回転により前記各分注アームを順次、前記各工程領域に移動させ、前記分注アームが実質的に同時に、所定の作業工程を実行するようにしたことを特徴とする自動分注装置。
【請求項2】
前記各分注アームは、前記回転支柱の円周方向に等間隔で配置されるとともに、前記回転支柱の回転軸から等距離位置に分注ノズルを有することを特徴とする請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項3】
前記工程領域として少なくとも検体吸引領域および検体吐出領域を含むことを特徴とする請求項2に記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記分注ノズルは、前記分注アームから着脱自在なディスポーザブルチップとして構成され、前記工程領域としてさらに、チップ装着領域およびチップ廃棄領域を含むことを特徴とする請求項3に記載の自動分注装置。
【請求項5】
前記分注ノズルは、前記分注アームに固定のノン・ディスポーザブルチップとして構成され、前記工程領域としてさらに、ノズル洗浄領域を含むことを特徴とする請求項3に記載の自動分注装置。
【請求項6】
前記チップ装着領域に前記ディスポーザブルチップを供給するためのチップ供給搬送ライン、前記検体吸引領域に検体吸引元容器を供給するための吸引元容器搬送ラインおよび前記検体吐出領域に検体吐出先容器を供給するための吐出先容器搬送ラインを備えたことを特徴とする請求項4に記載の自動分注装置。
【請求項7】
前記チップ廃棄領域において前記分注アームから前記ディスポーザブルチップを取り外すチップリムーバを備えたことを特徴とする請求項4または6に記載の自動分注装置。
【請求項8】
前記検体吸引領域に検体吸引元容器を供給するための吸引元容器搬送ラインおよび前記検体吐出領域に検体吐出先容器を供給するための吐出先容器搬送ラインを備えたことを特徴とする請求項5に記載の自動分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−317330(P2006−317330A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141214(P2005−141214)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】